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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01L
管理番号 1024879
異議申立番号 異議2000-72657  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-07 
確定日 2000-10-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第2998696号「発光ダイオード」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2998696号の請求項1に係る発明の特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2998696号に係る出願は、平成5年9月28日に出願された特願平5年241449号を、実用新案法第10条第1項の規定により実用新案登録出願に変更し、さらに、この実願平9年2302号を、特許法第46条第1項の規定により平成9年5月17日に特許出願に変更したものであって、平成11年11月5日にその設定登録がなされ、その後、竹谷淳及び丸山綾司より特許異議の申立てがなされたものである。

2.特許異議申立てについて
(請求項に係る発明)
本件特許第2998696号の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「青色発光チップの発光を発光観測面側に反射するカップの底部に青色発光チップが載置された発光素子全体を、樹脂で封止してなる発光ダイオードであって、前記樹脂は前記カップの縁部の水平面よりも低く内部に充填されてなる第一の樹脂部と、その第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを有し、前記第一の樹脂部には前記青色発光チップの発光波長を、それよりも長波長の光に変換する蛍光物質が含有されていると共に第二の樹脂部は青色発光チップの発光波長をそれよりも長波長の光に変換する蛍光物質が含有されていないことを特徴する発光ダイオード。」

(特許異議申立人の主張の概要)
これに対して、特許異議申立人竹谷淳は、甲第1号証として特開昭49-122292号公報、甲第2号証として特開平5-152609号公報を提示して、a)本件明細書には記載不備があり、特許法第36条の規定により特許を受けることができないものであり、b)本件の平成11年5月14日付け手続補正書には新規事項の追加があったので、特許法第113条第1項第1号の規定により取り消されるべきであり、c)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、旨主張しており、また、特許異議申立人丸山綾司は、甲第1号証として特開昭49-122292号公報、甲第2号証として特開平1-179471号公報、甲第3号証として特開平5-152609号公報、甲第4号証として特開平10-91091号公報を提示して、d)本件の平成11年5月14日付け手続補正書は明細書の要旨を変更するものであるから、本件の出願日は手続補正書提出時の平成11年5月14日に繰り下がり、本件請求項1に係る発明は、甲第4号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、e)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、旨主張している。

(1)平成11年5月14日付け手続補正書に関する検討
特許異議申立人竹谷淳は、b)において、本件の平成11年5月14日付け手続補正書には新規事項の追加があった旨主張しているが、本件特許の出願日は平成5年9月28日であるから、平成5年改正特許法を適用されるものではなく、手続補正書が明細書の要旨を変更するものか否かが争点となるものであり、特許異議申立人丸山綾司のd)と同じ主張として検討する。
特許異議申立人竹谷淳及び特許異議申立人丸山綾司が、平成11年5月14日付け手続補正書は、明細書の要旨を変更するものであるとする理由は、特許請求の範囲の請求項1において、蛍光物質を「青色発光チップの発光波長を、それよりも長波長の光に変換する蛍光物質」と特定した点にある。
これについて検討すると、出願当初の明細書には次の記載がある。
「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の目的で波長変換材料5を樹脂4中に均一に分散させると、この図に示すように、波長変換された光、または不要な波長がカットされた光は樹脂4中で四方八方に散乱してしまい、集光が悪くなるという問題がある。図2の矢印は発光チップの光が波長変換材料5にあたり、波長変換された光が散乱する様子を模式的に示した図である。つまり、波長変換された光が散乱されることにより、発光観測面側の光量が減少して輝度が低くなるのである。
【0004】また、波長変換材料5を蛍光物質に限定した場合、新たな問題点として、異なる発光色のLEDを接近して設置した際に、他のLED発光による蛍光物質のよけいな発光の問題がある。例えば、青色発光チップで緑色発光が得られる蛍光物質を含む緑色LEDと、単なる青色発光チップのみからなる青色LEDとを同一平面上に水平に近接して並べた場合、緑色LEDを消灯して、青色LEDを点灯すると、青色LEDから洩れ出る光、つまり散乱する光により、緑色LEDの蛍光物質が励起され、消灯した緑色LEDがあたかも点灯したような状態となり、両LEDの混色が発生する。
【0005】従って本発明の目的とするところは、LEDの樹脂に波長変換材料を含有させて発光チップの波長変換を行う際、まず変換された発光の集光をよくしてLEDの輝度を高めることを目的とし、また蛍光顔料を使用した際、波長の異なるLEDを近接して設置しても混色の起こらないLEDを提供することをもう一つの目的とする。」
「【0013】・・・波長変換材料5を蛍光物質とした場合、その蛍光物質を含む第一の樹脂11がカップ3の縁部の水平面よりも低くなるように充填されており、カップ3からはみ出していないので、カップ3の縁部により蛍光物質を励起する外部光を遮断でき、LEDの混色を防止することができる。
【0014】【発明の効果】以上説明したように、本発明のLEDはカップ内部に波長変換材料を含有する第一の樹脂を充填しているため、変換光がカップ内部で反射して集光されるため、輝度は倍以上に向上する。また、蛍光顔料を第一の樹脂に含有させて波長変換を行う場合、カップ深さを深くして、第一の樹脂がカップからはみ出さないようにすることにより、LED間の混色が発生せず、例えばLEDで平面ディスプレイを実現した際には、非常に解像度のよい画像を得ることができる。」

以上の記載によれば、出願当初の明細書には、発光チップの発光波長を蛍光物質等の波長変換材料で変換するLEDにおいて、発光観測面側の輝度が低くなる、異なる発光色のLEDの混色が発生する、という二つの問題点を指摘し、これらの問題点を解決することを目的として、カップ内部に波長変換材料を含有する第一の樹脂を充填し、変換光をカップ内部で反射して集光することで輝度を倍以上に向上させ、また、カップ深さを第一の樹脂がカップからはみ出さない深さとすることにより、LED間の混色が発生しない、という作用効果を奏する発明が記載されているものと認められる。
そして、例えば青色発光チップで緑色発光が得られる蛍光物質を含む緑色LEDと、単なる青色発光チップのみからなる青色LEDとを同一平面上に水平に近接して並べた場合に、異なる発光色のLEDの混色が発生する、という従来技術の問題点が指摘されており、また、青色発光チップで緑色発光が得られる蛍光物質を含む緑色LEDにおいても、波長変換された光が散乱されることにより、発光観測面側の輝度が低くなるという、前記LEDと同じ問題点が存在することは自明である。
さらに、青色発光チップで緑色発光が得られる蛍光物質を含む緑色LEDは単なる例示であり、青色発光チップの発光波長をより長波長に変換する蛍光物質を含むLEDにおいても、前記二つの問題点が存在し、前記明細書記載の解決手段により、これら問題点が解消することは、出願当初の明細書の記載から明らかである。
よって、出願当初の明細書には、一般の発光チップの発光波長を蛍光物質等の波長変換材料で変換するLEDに関する発明のみならず、青色発光チップの発光波長をより長波長に変換する蛍光物質を含むLEDに関する発明が記載されていたものと認められ、特許請求の範囲の請求項1において、蛍光物質を「青色発光チップの発光波長を、それよりも長波長の光に変換する蛍光物質」と特定する補正は、明細書の要旨を変更する補正には該当しない。

以上のとおりであるから、本件の平成11年5月14日付け手続補正書は明細書の要旨を変更するものには該当せず、本件の出願日は繰り下がることはない。

(2)特許法第36条について
特許異議申立人竹谷淳の主張a)にいう本件明細書の記載不備は次のとおりのものである。
本件特許請求の範囲には、「青色発光チップの発光波長を、それよりも長波長の光に変換する蛍光物質」と記載されているが、実施例の何れをみても、当該特性を有する「蛍光物質」の「材料名」を特定する記載がない。また、段落【0010】には、「波長変換材料5は蛍光物質であれば蛍光染料、蛍光顔料、蛍光体等、発光チップの発光波長を他の波長に変換できる材料であればどのようなものを使用してもよい。」と、上記特許請求の範囲の記載よりも上位概念で記載しており当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。かつ、両者間に整合性がない。

これについて検討すると、上記(1)平成11年5月14日付け手続補正書に関する検討、で記したように、出願当初の明細書には、一般のLEDに関する発明のみならず、青色発光チップの発光波長をより長波長に変換する蛍光物質を含むLEDに関する発明が記載されていたものと認められ、また、「蛍光物質」の具体的な「材料名」は記載されていないが、例えばYAG:Ce3+のような周知の蛍光物質(特公昭49-1221号公報参照)を使用すればよいことは明らかであるから、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない、とすることはできない。
よって、本件明細書に記載不備があり、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない、との特許異議申立人竹谷淳の主張は採用できない。

(3)特許法第29条第2項について
上記の如く、本件出願の出願日は繰り下がることはないので、特許異議申立人丸山綾司の提示した甲第4号証は、本件出願前公知の文献ではない。

(引用例)
特許異議申立人竹谷淳の提示した甲第1号証(以下、引用例という。)には、
「ダイオードステムの中央部に円錐台形もしくは円錐台形に類似した形状の凹みを設け、凹みの底にp-n接合を含み赤外線を発光するペレットを装着し、一定量の赤外可視変換蛍光体を凹みに落とし、前記ペレットの周囲に一定の厚さの赤外可視変換蛍光体の層を形成せしめ、さらにその上に接着剤を滴下し、加熱し、赤外可視変換蛍光体を前記ペレットの周囲に固着せしめ、さらにレンズ封止あるいはモールドすることを特徴とする赤外可視変換発光ダイオードの製造方法。」(特許請求の範囲)、
「本発明によれば第3図に示すようにダイオードステムの中央部に円錐台形もしくは円錐台形に類似した形状の凹み3を持ったダイオードステム11を用いる。p-n接合を含み赤外線を放射するペレット6は第3図に示した円錐台形もしくは円錐台形に類似した凹み3の底に装着される。次に第3図に示すようにステム11の上方より適当量の赤外可視変換蛍光体を凹み3に落とし、ペレット6の周囲に蛍光体層7を形成する。この際蛍光体の量が一定であれば蛍光体層7の厚さは常に一定となる。次に蛍光体層7とペレット6との密着度をよくするために、第4図のごとく、例えばシリコン樹脂、またはエポキシ樹脂のような適当な粘度の熱硬化性樹脂5を適当量滴下する。第4図に示した熱硬化性樹脂5と蛍光体層7を徐熱し、熱硬化性樹脂5を蛍光体層7の中に浸透させ、さらに加熱硬化させた後レンズ封止あるいはエポキシ樹脂によるモールドを行なう。」(公報第2頁左上欄第18行〜右上欄第15行)、
「かかる手段によって作られた赤外可視変換発光ダイオードは赤外光が周囲の円錐台形もしくは円錐台形に類似した形状の凹み3によって反射されるために蛍光体に吸収される赤外光が増加する。従って可視光の出力が増大するという特徴をも有する。」(公報第2頁左下欄第12行〜第17行)と記載されている。
よって、引用例には、
「ダイオードステムの中央部に設けた円錐台形形状の凹みと、凹みの底に装着したp-n接合を含み赤外線を発光するペレットと、前記ペレットの周囲に熱硬化性樹脂にて固着せしめた赤外可視変換蛍光体とを具備し、該赤外可視変換蛍光体をエポキシ樹脂にてモールドした赤外可視変換発光ダイオード」
の発明(以下、引用発明という。)が記載されている。0
同じく甲第2号証には、
「ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、前記発光素子が、一般式GaXAl1-XN(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されてなることを特徴とする発光ダイオード。」(特許請求の範囲の請求項1)、
「【0008】図2は本発明のLEDの構造を示す一実施例である。11はサファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてなる青色発光素子、2および3は図1と同じくメタルステム、メタルポスト、4は発光素子を包囲する樹脂モールドである。・・・さらに樹脂モールド4には420〜440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されている。」(段落番号【0008】)と記載されている。
次に特許異議申立人丸山綾司の提示した甲第1号証は、特許異議申立人竹谷淳の提示した甲第1号証であるから、上記のとおり記載されている。
同じく甲第2号証には、
「紫外域にエネルギーギャップを有する窒化ガリウム、硫化亜鉛はp型を得ることができず、紫外域発光のp-n接合型発光素子は存在していない。」(公報第1頁右欄第5行〜第7行)、
「立方晶窒化ほう素を母結晶としたp-n接合型素子のp-n接合部に電流を通すと、赤外から紫外域で発光し、発光素子として優れたものであることを確認し得た。また、p-n接合部またはn側表面に蛍光体を附設すると任意の発光色に変化させ得られることを知見し得た。」(公報第1頁右欄第14行〜第19行)、
「第1図に示すように、p-n接合を挟むp型部とn型部に銀ペーストの電極4をつけ、p型側を正n型側を負にして70ボルトの順バイアス電圧をかけると、p型からn型に2ミリアンペアの電流が流れた。・・・2ミリアンペアの電流を通電中に実体顕微鏡でp-n接合素子を観察したところ、p-n接合部に沿ってその近くのn型側に青白い発光が観察された。・・・数ミリアンペア流せば肉眼でも発光を検知し得られる。・・・2000オングストロームの紫外域から青色にかけても発光することが確認された。・・・実施例1のp-n接合部、またはn側表面に、銀ドープ硫化亜鉛、銅ドープ硫化亜鉛、ユーロピウムドープイットリウムオキシサルファイドの蛍光体をそれぞれ塗布し、p-n接合に順方向の電流を流したところ、それぞれ青色、緑色、赤色の発光が得られた。」(公報第2頁右下欄第2行〜第3頁右上欄第1行)と記載されている。
同じく甲第3号証は、特許異議申立人竹谷淳の提示した甲第2号証であるから、上記のとおり記載されている。

(対比)
本件の請求項1に係る発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「赤外線を発光するペレット」は、本件の請求項1に係る発明の「発光チップ」に相当し、以下同様に引用発明の「円錐台形形状の凹み」、「樹脂にてモールド」、「熱硬化性樹脂」、「エポキシ樹脂」及び「赤外可視変換蛍光体」は、本件の請求項1に係る発明の「発光を発光観測面側に反射するカップ」、「樹脂で封止」、「第一の樹脂部」、「第二の樹脂部」及び「発光波長を変換する蛍光物質」に相当するから、両者は、
「発光チップの発光を発光観測面側に反射するカップの底部に発光チップが載置された発光素子全体を、樹脂で封止してなる発光ダイオードであって、前記樹脂は前記カップの内部に充填されてなる第一の樹脂部と、その第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを有し、前記第一の樹脂部には前記発光チップの発光波長を変換する蛍光物質が含有されていると共に第二の樹脂部は発光チップの発光波長を変換する蛍光物質が含有されていないことを特徴する発光ダイオード」
である点で一致しており、
i)発光チップが、本件の請求項1に係る発明では、青色発光チップであるのに対し、引用発明では、赤外発光チップである点、
ii)第1の樹脂部が、本件の請求項1に係る発明では、カップの縁部の水平面よりも低く内部に充填されてなるのに対し、引用発明では、「第4図のごとく・・・熱硬化性樹脂5を適当量滴下する。」と記載されているのみであり、第4図には、熱硬化性樹脂5が凹部に一杯になるまで滴下されることが示されている点、
iii)蛍光物質が、本件の請求項1に係る発明では、青色発光チップの発光波長を、それよりも長波長の光に変換するのに対し、引用発明では、赤外光を可視光に変換する点
で相違している。

(当審の判断)
上記相違点ii)について検討する。
本件明細書の【0004】の記載、
「青色発光チップで緑色発光が得られる蛍光物質を含む緑色LEDと、単なる青色発光チップのみからなる青色LEDとを同一平面上に水平に近接して並べた場合、緑色LEDを消灯して、青色LEDを点灯すると、青色LEDから洩れ出る光、つまり散乱する光により、緑色LEDの蛍光物質が励起され、消灯した緑色LEDがあたかも点灯したような状態となり、両LEDの混色が発生する。」
及び【0013】の記載、
「いずれの状態においても、波長変換材料5を蛍光物質とした場合、その蛍光物質を含む第一の樹脂11がカップ3の縁部の水平面よりも低くなるように充填されており、カップ3からはみ出していないので、カップ3の縁部により蛍光物質を励起する外部光を遮断でき、LEDの混色を防止することができる。」
によれば、本件の請求項1に係る発明は、同一平面上に近接して並べた二つのLEDの混色を防止するために、蛍光物質を含む第一の樹脂をカップの縁部の水平面よりも低くなるように充填したものである。
一方、引用例には、従来の蛍光体塗布作業は非常に困難で時間がかかり、蛍光体の厚さは再現性に乏しいため可視光出力のばらつきが大きく、赤外光が十分に利用されないため輝度が低いという問題点が指摘され、ステムの中央部に凹みを設け、その底に赤外発光ペレットを装着し、凹みに注射器のごとき注入装置を用いて、一定量の赤外可視光変換蛍光体、続いて適当量の熱硬化性樹脂を注入することにより、蛍光体塗布作業を自動化し、蛍光体層の厚さを一定に制御し、赤外光が凹みによって反射されるため可視光の出力が増大させる、ということは記載されているが、同一平面上に近接して二つのLEDを並べることの記載や示唆はなく、したがって該二つのLEDの混色を防止する、との問題点の指摘もない。また、ペレットから発光された赤外光が凹みにより反射される旨記載されているが、変換された光が凹みで反射する旨の記載や示唆はない。
よって、引用例の記載に基づいて、上記相違点ii)に係る構成要件を想到することは、当業者といえども容易ではない。
さらに、他の各特許異議申立人が提示した甲各号証にも、本件の請求項1に係る発明のごとき、同一平面上に近接して並べた二つのLEDの混色を防止するために、蛍光物質を含む第一の樹脂をカップの縁部の水平面よりも低くなるように充填することに関する記載や示唆はない。
これに関し、特許異議申立人丸山綾司は、引用例のエポキシ樹脂やシリコン樹脂は比重が1程度であり、蛍光体は比重が3から6であるから、熱硬化性樹脂5が蛍光体層7に浸透して硬化した後は蛍光体が凹み3の上部に浮き上がることはなく、したがって、第一の樹脂部である蛍光体を含む樹脂は、凹み3の縁部の水平面より低く内部に充填されてなる状態にある旨主張している。
しかしながら、前記したごとく、引用例には二つのLEDの混色を防止する、との問題点の指摘や、変換された光が凹みで反射する旨の記載や示唆はなく、第4図をみても、蛍光物質を含む第一の樹脂をカップの縁部の水平面よりも低くなるように充填している、とはいえない。また、蛍光体が凹み3の上部に浮き上がることはないとしても、熱硬化性樹脂を適当量滴下し、蛍光体層の中に浸透・加熱硬化させた状態において、蛍光体が凹みの縁部の水平面よりも低くなっているか否かは不明であり、さらに、本件の請求項1に係る発明は、蛍光物質が含有されている第一の樹脂はカップの縁部の水平面よりも低く内部に充填されてなる、と規定しているのであって、蛍光物質がカップの縁部の水平面よりも低く内部に充填されてなる、と規定しているのではないから、引用例において、上記構成要件との関連で問題となるのは、蛍光体と熱硬化性樹脂の総量であり、両者の比重関係は全く関係がないから、特許異議申立人丸山綾司の主張は採用できない。

(結論)
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件の請求項1に係る発明は、各特許異議申立人が提示した甲各号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(むすび)
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-09-08 
出願番号 特願平9-143157
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 531- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小原 博生  
特許庁審判長 豊岡 静男
特許庁審判官 町田 光信
稲積 義登
登録日 1999-11-05 
登録番号 特許第2998696号(P2998696)
権利者 日亜化学工業株式会社
発明の名称 発光ダイオード  

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