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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B62D
管理番号 1027418
異議申立番号 異議1999-71648  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-05-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-27 
確定日 2000-05-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第2816547号「乗用型田植機における油圧式パワーステアリングのリリーフ弁構造」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2816547号の特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯・本件発明
本件特許第2816547号発明(以下、「本件発明」という)は、昭和62年11月10日に出願された実願昭62ー171689号(以下、「原出願」という)を、平成8年9月24日に特許法第46条第1項の規定により特許出願(以下「本件出願」という)に変更したものであって、平成10年8月21日にその特許権の設定登録がなされ、その後、井関農機株式会社より特許異議の申立てがなされたものである。
本件発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「走行車輪を備える走行機体に植付け部を装着してなる乗用型田植機において、上部にステアリングホイールを取付たステアリングシャフトに油圧により回転力を発生するトルクジェネレータを介して、トランスミッションケースに収容された操向用変速機構の入力軸を連結し、これらステアリングシャフト、トルクジェネレータ、及び操向用変速機構の入力軸を後傾状態で一直線状に配設すると共に、前記トルクジェネレータの外周面に、プレッシャパイプ、リターンパイプをそれぞれ接続するためのポートブロックを、トルクジェネレータの外周後端縁よりは前方に位置するようにして取付け、該ポートブロックには、プレッシャポートとリターンポートとの間に弁座を有したリリーフ弁が形成されていることを特徴とする乗用型田植機における油圧式パワーステアリングのリリーフ弁構造。」
(2)特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は証拠として、
・甲第1号証:実開昭57ー24176号公報
・甲第2号証:特開昭62ー46788号公報
・参考資料1の1:原出願(実願昭62ー171689号)の出願経過
・参考資料1の2:本件出願の出願経過
・参考資料2:原出願の実用新案公報(実公平7ー6062号公報)
・参考資料3:本件出願の公開特許公報(特開平9ー118242号公報)
・参考資料4:原出願に係る登録異議の決定謄本の写し
・参考資料5の1:実開昭61ー134217号公報
・参考資料5の2:実開昭61ー134218号公報
・参考資料5の3:実開昭61ー134219号公報
・参考資料6:特公昭34ー7257号公報
を提出し、
本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。
(3)特許異議申立人が提出した甲号各証に記載された発明
甲第1号証には、本件発明の構成に対応させて表現すると、実質的に、「走行車輪を備える乗用型車両(農用トラクタ)において、上部にステアリング11を取付たステアリングシャフトに油圧により回転力を発生させるパワーシリンダ10の作動を制御するシリンダ制御部9を取付け、これらステアリングシャフト、シリンダ制御部9を後傾状態で一直線状に配設すると共に、前記シリンダ制御部9の外周面に、プレッシャパイプ、リターンパイプをそれぞれ接続するための付属ユニット29を、シリンダ制御部9の外周後端縁よりは前方に位置するようにして取付け、該付属ユニット29には、リリーフバルブ31が設けられている乗用型車両における油圧式パワーステアリングのリリーフバルブ」を構成とした発明が記載され、
甲第2号証には、本件発明の構成に対応させて表現すると、実質的に、「走行車輪を備える乗用型車両(鞍乗型四輪車)において、上部にバーハンドル116を取付た入力軸2(ステアリングシャフト)に油圧により回転力を発生する動力操向装置を介して、出力軸3と連結し、これら入力軸2、動力操向装置の外筒をなすハウジング1、及び出力軸3を後傾状態で一直線状に配設すると共に、前記動力操向装置のハウジング1の外周面に、管路85(プレッシャパイプ)、排出管路86(リターンパイプ)をそれぞれ接続するための部材を、動力操向装置のハウジング1の外周後端縁よりは前方に位置するようにして取付け(当該部材の取付位置に係る事項は第2図に記載の技術事項より認定)ている乗用型車両における油圧式パワーステアリング」を構成とした発明が記載されている。
(4)対比・判断
特許異議申立人は、原出願の出願経過・原出願に係る考案の内容、及び本件出願の出願経過・本件出願に係る発明の内容等について上記の参考資料1〜4を基に説明し、本件明細書は、特許法第64条(出願公告後の補正)の規定に違反した補正が含まれる旨の主張をもしている。
よって、まずはじめに、この主張について検討するに、実用新案登録出願が出願公告された後に、その実用新案登録出願を特許法第46条第1項の規定により特許出願に変更したとき、当該特許出願について出願公告がされているものとみなす如き特許法等の規定はないから、原出願が出願公告されたことによって本件出願についてまで出願公告されたことにならないことは明らかであるから、この主張は失当である。
次に、本件発明と各甲号証に記載された発明とを対比するに、甲第1号証に記載のシリンダ制御部9が本件発明のトルクジェネレータと同等なものであるとはいうことができず、このトルクジェネレータの働きからみて、甲第1号証においてのトルクジェネレータと同等なものとは、寧ろ、前記シリンダ制御部9にパワーシリンダ10を加えたものによって構成されているとみるべきであって、要するに、甲第1号証に記載の『ステアリングシャフト、シリンダ制御部9及びパワーシリンダ10(トルクジェネレータ)』は、後傾状態で一直線状に配設したものであるとはいえないし、また、甲第2号証に記載の動力操向装置が本件発明のトルクジェネレータに対応するものであることは認められるものの、同号証に記載の『入力軸2(ステアリングシャフト)』は、この動力操向装置を介してトランスミッションケースに収容された操向用変速機構の入力軸を連結したものであるとはいえないから、少なくとも、各甲号証に記載された発明には、本件発明の構成に欠くことができない「ステアリングシャフトに油圧により回転力を発生するトルクジェネレータを介して、トランスミッションケースに収容された操向用変速機構の入力軸を連結し、これらステアリングシャフト、トルクジェネレータ、及び操向用変速機構の入力軸を後傾状態で一直線状に配設する」という事項が具備されていない。
なお、特許異議申立人は、前記した本件発明の構成に欠くことができない事項は参考資料5の1〜3、及び参考資料6からみて周知若しくは公知技術にすぎない旨述べているので、その点について見てみるに、これら参考資料5の1〜3に記載された乗用型田植機は油圧式パワーステアリングであることを前提とするものではないし、また、参考資料6に記載された農用車両からは前記の構成に欠くことができない事項を見出すことができないから、これら参考資料の記載事項を参酌しても、「ステアリングシャフトに油圧により回転力を発生するトルクジェネレータを介して、トランスミッションケースに収容された操向用変速機構の入力軸を連結し、これらステアリングシャフト、トルクジェネレータ、及び操向用変速機構の入力軸を後傾状態で一直線状に配設する」という事項が、本件出願前に周知の事項であったものと認めることはできない。
そして、本件発明は、この構成に欠くことができない事項によって、「トルクジェネレータから入力軸への動力伝達負荷を軽減し、高トルクの回転を効率的に伝達でき操舵作動力のロスがなく、かつトランスミッションケースがトルクジェネレータからの出力支持をする部材になって構造の簡略化が図れる」という本件発明に特有の効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明のこれらの構成が甲号各証に記載されたものから当業者が容易に想到することができたものということはできない。
(5)むすび
したがって、本件発明は、甲号各証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできないから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-05-09 
出願番号 特願平8-274111
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B62D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大町 真義大谷 謙仁  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 大島 祥吾
鈴木 久雄
登録日 1998-08-21 
登録番号 特許第2816547号(P2816547)
権利者 三菱農機株式会社
発明の名称 乗用型田植機における油圧式パワーステアリングのリリーフ弁構造  

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