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審決分類 |
審判 全部申し立て 特174条1項 G06F |
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管理番号 | 1028122 |
異議申立番号 | 異議2000-72395 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-06-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-13 |
確定日 | 2000-12-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2988879号「バス変換装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2988879号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 本件特許第2988879号(平成8年11月27日出願、平成11年10月8日設定登録。)の請求項1〜請求項3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜請求項3に記載された事項により特定された次のとおりのものである。 「【請求項1】 規格の異なる2つのバスに対してそれぞれ接続される2つのインタフェースと、 上記2つのバスについて、入力側とするバスと出力側とするバスの切り替えを行う入出力バス切替手段と、 上記入出力バス切替手段が入力側としたバスから入力された転送データをFIFOに書き込むデータ書き込み手段と、 前記FIFOに書き込まれた転送データを上記入出力バス切替手段が出力側としたバスに出力するデータ出力手段と、 起動時に、上記バスを介して接続されている装置に対して、該装置が接続されているバスの規格で規定されている最も遅い速度でアクセスして該装置がサポートしている上限のデータ転送速度を獲得する転送速度獲得手段と、 上記転送速度獲得手段で獲得した上限のデータ転送速度をバスに接続されている装置に対するアクセス速度として設定するアクセス速度設定手段と、 を備えたバス変換装置。 【請求項2】 一方のバスから入力されたコマンドを他方のバスの規格に適合するコマンドに変換するコマンド変換手段と、 上記コマンド変か手段で変換したコマンドを他方のバスに出力するコマンド出力手段と、 を備えた請求項1に記載のバス変換装置。 【請求項3】 前記バスの1つはSCSIバスであり、もう1つのバスはATA-2バスである請求項1または2に記載のバス変換装置。」 2.申立ての理由の概要 特許異議申立人坂井田直美は、本件特許の請求項1に係る発明は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものでない事項を含んでいるので、請求項1に係る発明の特許は特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものであり、請求項2、3に係る発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であるから、請求項2、3に係る発明の特許は特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものであり、本件の請求項1〜請求項3に係る発明の特許は特許法第113条第1号に該当するので、同法第114条第2項の規定により取消すべきものである旨主張する。 3.申立ての理由の詳細 特許異議申立人は、請求項1に係る発明を特定する事項について次のように主張する。 〔3-1〕「入出力バス切替手段」について 請求項1には「上記2つのバスについて、入力側とするバスと出力側とするバスの切替を行う入出力バス切替手段」と記載されており、このような記載では、例えば機械的な接点を手動で切り替えることにより、一方のバスを入力側に設定すると、接点の位置関係から必然的に、他方のバスが出力側として選択されるような入出力バス切替手段も包含されるものと考えられるが、かかる切替手段は出願当初の明細書又は図面に開示された事項の範囲内のものではない。 〔3-2〕「転送速度獲得手段」について 請求項1には「起動時に、上記バスを介して接続されている装置に対して、該装置が接続されているバスの規格で規定されている最も遅い速度でアクセスして該装置がサポートしている上限のデータ転送速度を獲得する転送速度獲得手段」と記載されており、次の2つの特徴は出願当初の明細書又は図面に開示された事項の範囲内のものではない。 4.当審の判断 〔4-1〕「入出力バス切替手段」について 本件の出願当初の明細書には、「以下、詳細にこの発明の実施形態であるバス変換装置3の動作について説明する。・・・19は、データの転送方向(パーソナルコンピュータ1からIDE機器4,または、IDE機器4からパーソナルコンピュータ1)を設定する転送方向設定部である。・・・32は、データを取り込むべきバスをSCSIバス、ATA-2バスで切り替える入力バス切替部である。33は、データを出力するバスをSCSIバス、ATA-2バスで切り替える出力バス切替部である。」(段落【0012】を参照。)と記載され、また、図2には、「転送方向設定部19」、「入力バス切換部32」、及び「出力バス切換部33」が記載されている。 上記の記載によれば、本件発明は、規格の異なる2つのインタフェースであるSCSIインタフェースとIDEインタフェースのバスについて、入力側とするバスと出力側とするバスの切り替えを「入力バス切換部32」及び「出力バス切換部33」で行うものであるから、請求項1に係る発明を特定する事項である「上記2つのバスについて、入力側とするバスと出力側とするバスの切り替えを行う入出力バス切替手段」は、その余の点を検討するまでもなく本件の出願当初の明細書に記載された事項の範囲内のものであることは明らかである。 〔4-2〕「転送速度獲得手段」について (4-2-1) 本件の出願当初の明細書には、次の事項が記載されている。 (i) 「この発明の目的は、規格の異なるバスに接続された装置間でのデータの入出力を高速に行えるバス変換装置を提供することにある。」(段落【0007】を参照。) (ii) 「バス変換装置3は、電源オン時にCPU11がATA-2バスで接続されているIDE機器4に対してIDENTIFY DEVICEコマンドを発行する。このコマンドは、IDEで規定されているものでIDE機器4のパラメタ情報を読み出すときに発行するものである。このとき、CPU11はデータの転送速度を最も遅いモード0でアクセスする。したがって、バス変換装置3とIDE機器4との通信は確実に行われる。バス変換装置3がこの時獲得するパラメタ情報には、接続されているIDE機器4のサポートしているデータ転送モードが含まれている。そこで、バス変換装置3は、PIOモード設定部16にこの転送モードを設定する。したがって、バス変換装置3とIDE機器4との通信は、これ以降この転送モードで行われるようになる。すなわち、バス変換装置3とIDE機器4とは、上限の転送モードで通信を行うことになる。」(段落【0016】を参照。) (iii)「IOW信号は、PIOモード設定部16に設定されているモードに基づく周波数で周期的に発生させられる。したがって、実際には、CPU11がIOW信号のパルス間隔に対応してデータ線に転送するコマンドを載せるとともに、アドレス発生部21に該当するI/Oレジスタを指定するアドレスを発生させている。」(段落【0020】を参照。) (iv) 「本発明のバス変換装置では、一方のバスから入力されたデータをFIFOに記憶させ、また、FIFOに記憶されたデータを他方のバスに出力するようにしたため、バス変換装置へのデータの入力と、バス変換装置からのデータの出力とを同期させることなく独立して実行することができる。このため、データの転送にかかる時間を大幅に短縮できるという効果を奏する。」(段落【0042】を参照。) 上記(i)〜(iv)の記載によれば、本件発明は所定の規格をもつバスに接続された装置間でのデータの入出力を高速に行うバス変換装置に関するものであって、CPU11はデータの転送速度を最も遅いモード0でアクセスするものであること、IOW信号は、PIOモード設定部16に設定されているモードに基づく周波数で周期的に発生させられるものであることが開示されている。この場合「モード0」とは、CPU11がアクセスするモードであることは明らかであり、CPU11は所定の規格を有するバスを介してアクセスすることになるから、「モード0」はバスの規格で規定されているものであることは当然のことである。 また、本件の発明はバスに接続された装置間でのデータの入出力を高速に行うバス変換装置に関するものであるから、CPU11がアクセスするモードである上記「モード0」はデータの転送速度に関連するモードであることは明らかであり、「最も遅いモード0」が最も遅い速度でアクセスするモードであることは、本件の出願当初の明細書に記載された事項の範囲内のものである。 上記(i)〜(iv)の記載によれば、本件の出願当初の明細書には、バス変換装置3は、接続されているIDE機器4のサポートしているデータ転送モードが含まれているパラメタ情報を獲得してこの転送モードを設定し、バス変換装置3とIDE機器4とは、上限の転送モードで通信を行うことが開示されており、この転送モードはデータの転送速度に関連するものであることは明らかであるから、本件請求項1に係る発明を特定する事項である「装置がサポートしている上限のデータ転送速度を獲得する転送速度獲得手段」は、その余の点を検討するまでもなく本件の出願当初の明細書に記載された事項の範囲内のものである。 〔4-3〕 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものでない事項を含んでいるということはできないので、請求項1に係る発明の特許は特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものであるということはできず、請求項2、3に係る発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であるから、請求項2、3に係る発明の特許は特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものであるということはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由によっては本件請求項1〜請求項3に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1〜請求項3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-11-20 |
出願番号 | 特願平8-315849 |
審決分類 |
P
1
651・
55-
Y
(G06F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 堀江 義隆 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
田口 英雄 今井 義男 |
登録日 | 1999-10-08 |
登録番号 | 特許第2988879号(P2988879) |
権利者 | 株式会社アイ・オー・データ機器 |
発明の名称 | バス変換装置 |