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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
管理番号 1028141
異議申立番号 異議1999-74713  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-05-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-17 
確定日 2000-12-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第2907079号「ナビゲーション装置,ナビゲート方法及び自動車」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2907079号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続きの経緯
本件特許第2907079号は、平成7年10月16日に特許出願され、平成11年4月2日に設定登録され、その後、特許異議申立てがなされ、取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年7月17日に訂正請求がなされた。これに対し、訂正拒絶理由が通知されたところ、平成12年10月2日付で意見書が提出されたものである。
II.訂正の適否
【1】訂正明細書の請求項1〜6に係る発明
訂正明細書の特許請求の範囲第1〜6項に係る発明(以下、「訂正発明1〜6」と言う。)は、その特許請求の範囲第1〜6項に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 音声信号入力手段と、
スイッチを操作したとき上記音声信号入力手段に入力された音声信号から、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識する処理を行う音声処理部と、
該音声処理部が認識可能な都道府県名と市区町村名毎に、特定の座標位置を記憶する記憶手段と、
上記音声処理部が認識した都道府県名又は市区町村名の音声に基づいて上記記憶手段が出力する特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させる制御を行う制御手段と、
上記制御データにより指示された道路地図を表示させる表示手段と、
上記スイッチの操作で上記音声処理部で認識した操作指示音声又は所定の操作に基づいて上記制御手段で生成された制御データにより、上記表示手段で表示された地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させ、この目的地までのルート設定を行うルート設定手段とを備えたナビゲーション装置。
【請求項2】 上記記憶手段が記憶する都道府県名と市区町村名毎の特定の座標位置は、それぞれの都道府県又は市区町村の役所の所在地の座標位置とした請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】 音声認識処理を実行させるスイッチの操作で入力した音声信号から都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識し、認識した都道府県名と市区町村名の音声を、それぞれの都道府県名と市区町村名毎に予め用意された特定の座標位置を示すデータとし、その特定の座標位置のデータに基づいて、その特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させると共に、上記スイッチの操作で認識した操作指示音声又は所定の操作により、表示された道路地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させ、この目的地までのルート設定を行うようにしたナビゲート方法。
【請求項4】 上記都道府県名と市区町村名毎に用意された特定の座標位置は、それぞれの都道府県又は市区町村の役所の所在地の座標位置とした請求項3記載のナビゲート方法。
【請求項5】 車内の所定位置に配された表示手段に、地図を表示させる装置を備えた自動車において、
音声信号入力手段と、
スイッチを操作したとき上記音声信号入力手段に入力された音声信号から、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識する処理を行う音声処理部と、
該音声処理部が認識可能な都道府県名と市区町村名毎に、特定の座標位置を記憶する記憶手段と、
上記音声処理部が認識した都道府県名又は市区町村名の音声に基づいて上記記憶手段が出力する特定の座標位置を中心とした道路地図を上記表示手段に表示させる制御を行う制御手段と、
上記スイッチの操作で上記音声処理部で認識した操作指示音声又は所定の操作に基づいて上記制御手段で生成された制御データにより、上記表示手段で表示された地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させ、この目的地までのルート設定を行うルート設定手段とを備えた自動車。
【請求項6】 上記記憶手段が記憶する都道府県名と市区町村名毎の特定の座標位置は、それぞれの都道府県又は市区町村の役所の所在地の座標位置とした請求項5記載の自動車。」
【2】引用刊行物記載の発明
訂正発明1〜6に対し、当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(特開平3ー175478号公報)は自動車用ナビゲーション装置に用いる地図表示装置に関するものであり、以下のことが記載されている。
a. 「ここで、音声認識装置(20)について説明すると、この音声認識装置(20)にはマイク(6)が接続してあり、このマイク(6)が拾った音声信号をアンプ(21)を介して認識処理回路(22)に供給する。」(公報第3頁右上欄第2行〜第5行)、
b.「この認識処理回路(22)には、音声データメモリ(23)が接続してあり、この音声データメモリ(23)から供給される音声データと入力音声信号とが一定の条件で一致するか否かを判断し、音声の認識作業を行う。」(第3頁右上欄第5行〜第9行)、
c.「即ち、音声データメモリ(23)には、第4図に示す如く、(略)このエリアA11に存在する町名、交差点名、駅名、目標物(主要建物)等の音声データが記憶される。(略)またエリアB11、B12、B13・・・に対応したブロックには、各エリア内に存在する都市名、主要な交差点名、主要な目標物等の音声データが記憶される。」(第3頁右上欄第12行〜左下欄第3行)、
d.「なお、エリアB11、B12、B13・・・よりもさらに広域表示が行われる道路地図データをCD ROMに記憶させたときには、このより広域の表示が行われるようにして、都道府県名等のより上位の地名の音声による検索を行うようにしても良い。」(第4頁左下欄第7行〜第11行)、
e.「なお、上述実施例においては、出発地や目的地の設定を音声認識で行うようにしたが、本例のナビゲーション装置が必要とするその他の操作を音声認識で行うようにしてもよい。」(第4頁右下欄第8行〜第11行)、
f.「即ち、例えば目標位置の検索を行うときには、自動車の運転者がマイク(6)に向かって目標位置の町名等をしゃべることで、認識処理回路(22)がこの音声を認識し、システムコントローラ(15)に目標地点等のデータが供給される。」(第4頁左上欄下から第2行〜右上欄第4行)、
g.「この場合、演算処理装置(10)には自車の走行開始時の位置、目標位置等の各種座標位置を設定するためのものとして、操作キー(5)及び音声認識装置(20)が接続してあり、この操作キー(5)の操作或いは音声認識装置(20)で認識した音声により設定された走行開始時の座標位置情報が、システムコントローラ(15)を介して現在位置演算回路(11)に供給される如くしてある。」(第3頁左上欄第10行〜第17行)、
h.「この状態で、例えば検索位置の都市名をしゃべって認識させ、この都市を中心とした表示をさせてから、再びエリアA11、A12、A13・・・の道路地図データに基づいた地図表示に戻させる。このときには、表示範囲が変化しても中心点は変化しないようにする。従って、検索した都市の詳細がエリアA11、A12、A13・・・の道路地図データに基づいて表示されるようになり、この状態で表示中の目標地点名(町名、交差点名)をしゃべって認識させることで、この目標地点を中心とした地図表示になる。」(第4頁右上欄第15行〜左下欄第6行)、
i.「このディスプレイコントローラ(14)は、システムコントローラ(15)からの指令に基づいて、ディスプレイ装置(4)で行う道路地図等の表示を制御する回路で、CD ROM装置(3)からバッファメモリ(12)を介してディスプレイコントローラ(14)に供給される道路地図情報により、道路地図をディスプレイ装置(4)に表示させると共に、‐‐」(第3頁右下欄第3行〜第10行)。
j.「この場合、地図の表示エリアの変化に連動して認識対象語が変化するので、音声認識装置として一度に認識できる音声は数十語程度に制限されていても、音声認識による操作だけで必要とする操作指令を行うことができる。」(第5頁9行〜第13行)。
以上の記載を参酌すると、刊行物1には次の発明が記載されている。
マイク(6)と、該マイク(6)に入力された音声信号から、都道府県名や都市名、町名等とナビゲーション装置が必要とするその他の操作を指示する音声を認識する処理を行う音声認識装置(20)と、
上記音声認識装置(20)が認識した都道府県名や都市名、町名等の音声に基づいてその都道府県名や都市名、町名等の所在地を中心とした道路地図を表示させる制御を行うシステムコントローラ(15)と、
上記システムコントローラ(15)からの指令により指示された道路地図を表示させるディスプレイ装置(4)と、
上記音声認識装置(20)で認識した音声又は操作キー(5)の操作に基づいて上記システムコントローラ(15)からの指令により、上記ディスプレイ装置(4)で表示された地図中の任意の座標位置を目標位置として設定させるようにしたナビゲーション装置。
同じく当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物2(特開平6ー250585号公報)は、刊行物1と同様、車載用ナビゲーション装置に関し、「6はCDーROMまたはROM等を用いた位置座標情報記憶手段で、領域を特定するための番号情報および文字列情報と、これに対応する領域の代表地点の座標もしくは当該領域を構成する座標とからなる位置座標情報の対応関係を表す情報等を格納している。」(公報第3頁第4欄第4行〜第9行)と記載されていることから、
地図領域を特定する文字列情報に対し、該領域の代表地点の座標を対応づけて記憶する位置座標情報記憶手段6(「記憶手段」に相当する)が、記載されていると言える。
【3】対比
訂正発明1について、
そこで、訂正発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1における、
「マイク(6)」、「都道府県名や都市名、町名等」、「ナビゲーション装置が必要とするその他の操作」、「音声認識装置(20)」、「システムコントローラ(15)」、「システムコントローラ(15)からの指令」、「ディスプレイ装置(4)」、「音声」、「操作キー(5)の操作」、「目標位置」
は、訂正発明1における、
「音声信号入力手段」、「都道府県名と市区町村名」、「特定の操作」、「音声処理部」、「制御手段」、「制御手段で生成された制御データ」、「表示装置」、「操作指示音声」、「所定の操作」、「目的地」に相当し、刊行物1における「その都道府県名や都市名、町名等の所在地」も、訂正発明1における「特定の座標位置」も共に「特定の位置」であるから、両者は、
音声信号入力手段と、
上記音声信号入力手段に入力された音声信号から、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声を認識する処理を行う音声処理部と、
上記音声処理部が認識した都道府県名又は市区町村名の音声に基づいて特定の位置を中心とした道路地図を表示させる制御を行う制御手段と、
上記制御データにより指示された道路地図を表示させる表示手段と、
上記音声処理部で認識した操作指示音声又は所定の操作に基づいて上記制御手段で生成された制御データにより、上記表示手段で表示された地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させるようにしたナビゲーション装置、
で一致し、次の点で相違する。
1.訂正発明1では、音声処理部は都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識するに対し、刊行物のものにおける音声処理部は、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声を認識するものの、認識対象となる音声をそれだけに限るものではない点。
2.訂正発明1では、音声処理部が認識可能な都道府県名と市区町村名毎に、特定の座標位置を記憶する記憶手段を有し、該記憶手段が出力する特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させる制御を行う構成を有するに対し、刊行物1のものではこのような記憶手段について明記されておらず、単に都道府県名と市区町村名の所在地を中心とした道路地図を表示している点。
3.訂正発明1では、目的地までのルート設定を行うルート設定手段を備えているに対し、刊行物1のものがルート設定手段を有するか否か、記載されていない点。
4.訂正発明1では、スイッチを有し、該スイッチを操作したとき音声認識を行うようにしているに対し、刊行物1のものは、そのようなスイッチを有しない点。
【4】当審の判断
そこで、上記相違点につき、以下に検討する。
相違点1について、
刊行物1のものも訂正発明1と同様、認識対象となる音声を必要なものに制限することにより、音声認識をし易くしているのであるから、刊行物1のものにおいても、音声認識を必要とする対象を都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声に限った点に、格別の創意を要し得たものとは認められない。
相違点2について、
ナビゲーション装置において、地名等の文字列情報に対して位置座標情報を対応づけて記憶する記憶手段を備え、該記憶手段から取得した位置座標情報に基づいて地図を表示するようにしたものは周知である(例えば、特開平6ー250585号公報、特開平7ー64480号公報参照)から、刊行物1のものにおいて、音声処理部が認識可能な都道府県名と市区町村名毎に、特定の座標位置を記憶する記憶手段を設け、該記憶手段が出力する特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させることは、当業者が容易になし得るところと認められる。
相違点3について、
ナビゲーション装置において、目的地までのルートを設定するルート設定手段を備えることは普通に行われていることに過ぎず、この点に何ら格別の創意を要し得たものとは認められない。
相違点4について、
音声認識装置において、いわゆるトークスイッチを設け、音声認識が必要な期間だけ、該トークスイッチを操作するようにしたものは、周知である(例えば、特開昭55ー77800号公報、第4頁左上欄、特開平5ー41894号公報、第4頁左欄参照)から、刊行物1のものにおいて、上記周知のトークスイッチを設けて訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得るところと認められる。
したがって訂正発明1は刊行物1に記載の発明及び周知事項から当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
なお、特許権者は平成12年10月2日付意見書において、訂正発明1は、
(1)音声処理部で認識する音声として、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけとし、音声処理部での認識率を向上させるようにしたと共に、
(2)その特定の音声だけを認識する処理が、スイッチを操作したときだけ実行される構成とし、音声認識が行われる期間のスイッチ操作による制限と、認識される音声そのものの制限との、二重の認識率の向上処理を施して、ナビゲーション装置の操作とは関係ない話し声による誤動作や、騒音などによる誤動作を確実かつ良好に防止することができるという本願発明に特有の効果を有するものであり、このような構成及び効果は、刊行物1及び刊行物2の記載及び周知技術からは示唆されていない旨、主張しているが、(1)で主張する「音声処理部での認識率の向上」という効果は、刊行物1のものから当業者が容易に予測し得る効果に過ぎず、(2)における、「ナビゲーション装置の操作とは関係ない話し声による誤動作や、騒音などによる誤動作を確実かつ良好に防止することができる」という効果は、例えば周知例として挙げた特開平5ー41894号公報の「当該音声認識回路13においては、音声の認識の際に、明確な開始タイミング及び終了タイミングがわかり、音声認識する範囲がソフトウエアで容易に判別可能となるため、この範囲外の雑音に対して無用な音声認識処理を行わなくても済むようになる。」(公報第4頁第5欄第12行〜第17行)との記載から、当業者が当然に予測し得る効果と認められる故、意見書の主張は採用し得ない。

訂正発明2について、
訂正発明2と刊行物1に記載の発明との相違点は上記1〜4以外に、
5.訂正発明2は、「記憶手段が記憶する都道府県名と市区町村名毎の特定の座標位置は、それぞれの都道府県又は市区町村の役所の所在地の座標位置とし」ているが、刊行物1のものでは、そのような構成を有しない点、
で相違するが、上記相違点1〜4に対する判断は訂正発明1における判断と同様であり、
また、相違点5については、刊行物2に、地図領域を特定する文字列情報に対し、該領域の代表地点の座標を対応づけて記憶する記憶手段を備えた車載用ナビゲーション装置が、記載されており、役所はその地域において政治的、行政的に中心をなす位置に建っているのが通例であることを考慮すると、代表地点として役所の所在地に着目した点に格別の創意を要し得たものとは認められない。
訂正発明3について、
刊行物1には次の発明が記載されている。
入力した音声信号から、都道府県名や都市名、町名等(訂正発明3における「都道府県名と市区町村名」に相当する)とナビゲーション装置が必要とするその他の操作(「特定の操作」に相当する)を指示する音声を認識し、該都道府県名や都市名、町名等の所在地を中心とした道路地図を表示させると共に、上記認識した音声又は操作キー(5)の操作(「所定の操作」に相当する)により、表示された道路地図中の任意の座標位置を、目標位置(「目的地」に相当する)として設定させるようにしたナビゲート方法。
訂正発明3と刊行物1の発明とを対比すると、刊行物1における「その都道府県名や都市名、町名等の所在地」も、訂正発明3における「特定の座標位置」も共に「特定の位置」であるから、両者は、
入力した音声信号から、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声を認識し、その特定の位置を中心とした道路地図を表示させると共に、上記認識した音声又は所定の操作により、表示された道路地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させるようにしたナビゲート方法、
で一致し、次の点で相違する。
6.訂正発明3では、入力した音声信号から都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識するに対し、刊行物1のものは、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声を認識するものの、認識対象となる音声をそれだけに限るものではない点。
7.訂正発明3では、
「それぞれの都道府県名と市区町村名毎に予め用意された特定の座標位置を示すデータとし、その特定の座標位置のデータに基づいて、その特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させる」に対し、
刊行物1のものでは、単に都道府県名や都市名、町名等を中心とした道路地図を表示させると記載されているのみで、「都道府県名と市区町村名毎に特定の座標位置を示すデータ」を予め用意し、「その特定の座標位置のデータに基づいて、その特定の座標位置を中心とした」道路地図を表示させる構成を有しない点。
8.訂正発明3では、目的地までのルート設定を行う構成を備えているに対し、刊行物1のものがルート設定を行うのか否か、記載されていない点。
9.訂正発明3では、スイッチを有し、該スイッチの操作で音声認識を行うようにしているに対し、刊行物1のものではそのようなスイッチを有しない点。
相違点6、8、9についての判断は、それぞれ相違点1、3、4についての判断と同様である。
以下、上記相違点7について、検討する。
相違点7について、
ナビゲーション技術分野において、地名等の文字列情報に対して位置座標情報を対応づけて記憶しておき、その特定の座標位置のデータに基づいて、地図を表示させるようにしたものは周知である(例えば、特開平6ー250585号公報、特開平7ー64480号公報参照)から、刊行物1のものにおいて、音声処理部が認識可能な都道府県名と市区町村名毎に、特定の座標位置を記憶しておき、その特定の座標位置のデータに基づいて、その特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させることは、当業者が容易になし得るところと認められる。
訂正発明4について、
訂正発明4と刊行物1に記載の発明との相違点は、上記6〜9及び上記5であって、それらに対する判断は、それぞれの相違点について、で述べたとおりである。
訂正発明5について、
刊行物1のものは自動車に搭載されるナビゲーション装置に関するものであるから、訂正発明5と刊行物1との相違点は、上記1〜4であって、それらに対する判断は、それぞれの相違点について、で述べたとおりである。
訂正発明6について、
訂正発明6と刊行物1との相違点は、上記1〜4及び上記5であって、それらに対する判断は、それぞれの相違点について、で述べたとおりである。
【5】むすび
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1、3、5に係る発明は、上記刊行物1に記載されたもの及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、訂正明細書の請求項2、4、6に係る発明は、刊行物1、2に記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正請求は認められない。
III.特許異議申立てについての判断
【1】請求項1〜6に係る発明
本件請求項1〜6に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 音声信号入力手段と、
該音声信号入力手段に入力された音声信号から、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識する処理を行う音声処理部と、
該音声処理部が認識可能な都道府県名と市区町村名毎に、特定の座標位置を記憶する記憶手段と、
上記音声処理部が認識した都道府県名又は市区町村名の音声に基づいて上記記憶手段が出力する特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させる制御を行う制御手段と、
該制御手段により指示された道路地図を表示させる表示手段と、
上記音声処理部で認識した操作指示音声又は所定の操作に基づいて上記制御手段で生成された制御データにより、上記表示手段で表示された地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させ、この目的地までのルート設定を行うルート設定手段とを備えたナビゲーション装置。
【請求項2】 上記記憶手段が記憶する都道府県名と市区町村名毎の特定の座標位置は、それぞれの都道府県又は市区町村の役所の所在地の座標位置とした請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】 入力した音声信号から都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識し、認識した都道府県名と市区町村名の音声を、それぞれの都道府県名と市区町村名毎に予め用意された特定の座標位置を示すデータとし、その特定の座標位置のデータに基づいて、その特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させると共に、上記認識した操作指示音声又は所定の操作により、表示された道路地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させ、この目的地までのルート設定を行うようにしたナビゲート方法。
【請求項4】 上記都道府県名と市区町村名毎に用意された特定の座標位置は、それぞれの都道府県又は市区町村の役所の所在地の座標位置とした請求項3記載のナビゲート方法。
【請求項5】 車内の所定位置に配された表示手段に、地図を表示させる装置を備えた自動車において、
音声信号入力手段と、
該音声信号入力手段に入力された音声信号から、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識する処理を行う音声処理部と、
該音声処理部が認識可能な都道府県名と市区町村名毎に、特定の座標位置を記憶する記憶手段と、
上記音声処理部が認識した都道府県名又は市区町村名の音声に基づいて上記記憶手段が出力する特定の座標位置を中心とした道路地図を上記表示手段に表示させる制御を行う制御手段と、
上記音声処理部で認識した操作指示音声又は所定の操作に基づいて上記制御手段で生成された制御データにより、上記表示手段で表示された地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させ、この目的地までのルート設定を行うルート設定手段とを備えた自動車。
【請求項6】 上記記憶手段が記憶する都道府県名と市区町村名毎の特定の座標位置は、それぞれの都道府県又は市区町村の役所の所在地の座標位置とした請求項5記載の自動車。」。

【2】引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開平3ー175478号公報)には、
「マイク(6)(請求項1に係る発明における「音声信号入力手段」に相当する)と、該マイク(6)に入力された音声信号から、都道府県名や都市名、町名等(「都道府県名と市区町村名」に相当する)とナビゲーション装置が必要とするその他の操作(「特定の操作」に相当する)を指示する音声を認識する処理を行う音声認識装置(20)(「音声処理部」に相当する)と、
上記音声認識装置(20)が認識した都道府県名や都市名、町名等の音声に基づいてその都道府県名や都市名、町名等の所在地を中心とした道路地図を表示させる制御を行うシステムコントローラ(15)(「制御手段」に相当する)と、
該システムコントローラ(15)により指示された道路地図を表示させるディスプレイ装置(4)(「表示装置」に相当する)と、
上記音声認識装置(20)で認識した音声(「操作指示音声」に相当する)又は操作キー(5)の操作(「所定の操作」に相当する)に基づいて上記システムコントローラ(15)からの指令(「制御手段で生成された制御データ」に相当する)により、上記ディスプレイ装置(4)で表示された地図中の任意の座標位置を目標位置(「目的地」に相当する)として設定させるようにしたナビゲーション装置。 」が記載されている。
同じく当審が通知した取消理由に引用した刊行物2(特開平6ー250585号公報)は、刊行物1と同様、車載用ナビゲーション装置に関し、地図領域を特定する文字列情報に対し、該領域の代表地点の座標を対応づけて記憶する位置座標情報記憶手段6(「記憶手段」に相当する)が、記載されている。
【3】対比
請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1における「その都道府県名や都市名、町名等の所在地」も、請求項1に係る発明における「特定の座標位置」も共に「特定の位置」であるから
音声信号入力手段と、
該音声信号入力手段に入力された音声信号から、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声を認識する処理を行う音声処理部と、
上記音声処理部が認識した都道府県名又は市区町村名の音声に基づいて特定の位置を中心とした道路地図を表示させる制御を行う制御手段と、
該制御手段により指示された道路地図を表示させる表示手段と、
上記音声処理部で認識した操作指示音声又は所定の操作に基づいて上記制御手段で生成された制御データにより、上記表示手段で表示された地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させるようにしたナビゲーション装置、で一致し、次の点で相違する。
1.請求項1に係る発明では、音声処理部は都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識するに対し、刊行物のものにおける音声処理部は、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声を認識するものの、認識対象となる音声をそれだけに限るものではない点。
2.請求項1に係る発明では、音声処理部が認識可能な都道府県名と市区町村名毎に、特定の座標位置を記憶する記憶手段を有し、該記憶手段が出力する特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させる制御を行う構成を有するに対し、刊行物1のものではこのような記憶手段を有せず、単に都道府県名と市区町村名の所在地を中心とした道路地図を表示している点。
3.請求項1に係る発明では、目的地までのルート設定を行うルート設定手段を備えているに対し、刊行物1のものがルート設定手段を有するか否か、記載されていない点。
【4】当審の判断
上記相違点についての判断は、上記II.【4】の相違点1について、〜相違点3について、における判断と同様である。
請求項2に係る発明について、
請求項2に係る発明と刊行物1に記載の発明との相違点は上記1〜3以外に、
4.請求項2に係る発明は、「記憶手段が記憶する都道府県名と市区町村名毎の特定の座標位置は、それぞれの都道府県又は市区町村の役所の所在地の座標位置とし」ているが、刊行物1のものでは、そのような構成を有しない点、
で相違するが、上記相違点1〜3に対する判断は請求項1に係る発明における判断と同様であり、また、相違点4については、上記II.【4】の相違点5について、における判断と同様である。
請求項3に係る発明について、
刊行物1には次の発明が記載されている。
入力した音声信号から、都道府県名や都市名、町名等(請求項3に係る発明における「都道府県名と市区町村名」に相当する)とナビゲーション装置が必要とするその他の操作(「特定の操作」に相当する)を指示する音声を認識し、該都道府県名や都市名、町名等の所在地を中心とした道路地図を表示させると共に、上記認識した音声又は操作キー(5)の操作(「所定の操作」に相当する)により、表示された道路地図中の任意の座標位置を、目標位置(「目的地」に相当する)として設定させるようにしたナビゲート方法。
請求項3に係る発明と刊行物1の発明とを対比すると、刊行物1における「その都道府県名や都市名、町名等の所在地」も、請求項3に係る発明における「特定の座標位置」も共に「特定の位置」であるから、両者は、
入力した音声信号から、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声を認識し、その特定の位置を中心とした道路地図を表示させると共に、上記認識した音声又は所定の操作により、表示された道路地図中の任意の座標位置を、目的地として設定させるようにしたナビゲート方法、
で一致し、次の点で相違する。
5.請求項3に係る発明では、入力した音声信号から都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声だけを認識するに対し、刊行物1のものは、都道府県名と市区町村名と特定の操作を指示する音声を認識するものの、認識対象となる音声をそれだけに限るものではない点。
6.請求項3に係る発明では、
「認識した都道府県名と市区町村名の音声を、それぞれの都道府県名と市区町村名毎に予め用意された特定の座標位置を示すデータとし、その特定の座標位置のデータに基づいて、その特定の座標位置を中心とした道路地図を表示させる」に対し、
刊行物1のものでは、単に都道府県名や都市名、町名等の所在地を中心とした道路地図を表示させると記載されているのみで、「都道府県名と市区町村名毎に特定の座標位置を示すデータ」を予め用意し、「その特定の座標位置のデータに基づいて、その特定の座標位置を中心とした」道路地図を表示させる構成を有しない点。
7.請求項3に係る発明では、目的地までのルート設定を行う構成を備えているに対し、刊行物1のものがルート設定を行うのか否か、記載されていない点。
相違点5、7についての判断は、それぞれ相違点1、3についての判断と同様である。
相違点6についての判断は、上記II.【4】の相違点7について、における判断と同様である。
請求項4に係る発明について、
請求項4に係る発明と刊行物1に記載の発明との相違点は、上記5〜7及び上記4であって、それらに対する判断は、それぞれの相違点について、における判断と同様である。
請求項5に係る発明について、
刊行物1のものは自動車に搭載されるナビゲーション装置に関するものであるから、請求項5に係る発明と刊行物1との相違点は、上記1〜3であって、それらに対する判断は、それぞれの相違点について、における判断と同様である。
請求項6に係る発明について、
請求項6に係る発明と刊行物1との相違点は、上記1〜3及び上記4であって、それらに対する判断は、それぞれの相違点について、における判断と同様である。
【5】むすび
以上のとおりであるから、請求項1、3、5に係る発明は、刊行物1に記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、また、請求項2、4、6に係る発明は、刊行物1、2に記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、旧特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1〜6に係る特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第4項及び第7項並びに第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-10-30 
出願番号 特願平7-267545
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (G01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 尾崎 淳史太田 恒明  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 槙原 進
西川 一
登録日 1999-04-02 
登録番号 特許第2907079号(P2907079)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 ナビゲーション装置,ナビゲート方法及び自動車  
代理人 松隈 秀盛  

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