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審決分類 審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  C12Q
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C12Q
審判 一部申し立て 発明同一  C12Q
管理番号 1031800
異議申立番号 異議1999-72501  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-21 
確定日 2000-10-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2846018号「核酸配列の増幅および検出」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2846018号の請求項4に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2846018号の請求項4に係る発明についての出願は、1989年1月12日(パリ条約による優先権主張1988年1月21日、米国)を国際出願日とするものであって、平成10年10月30日にその特許の設定登録がなされ、その後、三枝英二より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、訂正請求(後日取下げ)がなされ、訂正拒絶理由通知がなされた後、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年10月2日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正請求
1.訂正の内容
特許請求の範囲の請求項4に係る記載「オリゴヌクレオチドプロモーター-プライマーとオリゴヌクレオチドプローブとを含有する被検試料中の核酸配列を検出するために用いられるキットであって、プロモーター-プライマーは被検試料核酸配列とハイブリダイズすることができ、オリゴヌクレオチドプローブは検出すべき核酸配列の全体または一部とホモローガスであるキット。」を、「請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検試料中の核酸配列を検出するための方法を実施するために用いられるキットであって、該方法の実施に必要な請求項1〜3のいずれか1項に記載の試薬と、検出すべき核酸配列の全体または一部とホモローガスなオリゴヌクレオチドプローブとを含有してなるキット。」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項は、特許請求の範囲の減縮に該当し、そして、上記訂正は、新規事項に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
3.独立特許要件
訂正された請求項4に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、後述の「III.3.判断」の項に記載のように、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、また、甲第3号証に記載された発明ではなく、更に、請求項4に係る発明の特許は、明細書の記載に不備はないから、本件発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4,2項、及び同条3項で準用する126条2項から4項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。

III.特許異議申立
1.特許異議申立書の理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証乃至甲第3号証を提出し、訂正前の本件請求項4に係る発明は、甲第2号証に記載された事項を踏まえると甲第1号証に記載された発明と同一であるから特許法29条の2の規定に、或いは、甲第3号証に記載された発明であるから同法29条1項3号の規定に、若しくは、請求項4に係る発明の特許は、明細書の記載が不備であるから同法36条4項の規定にそれぞれ違反してなされたものであるから特許を受けることができない、と主張している。
2.甲各号証の記載内容
甲第1号証(国際公開公報WO88/10315)には、
「21.核酸含有試料中の少なくとも1種の特定の核酸標的配列の検出に有用なキットであって、標的配列のセグメントに相補的な配列に作動可能な状態で連結されたプロモーター配列を含む第一核酸プライマーおよび標的配列のセグメントと同一の配列を有する第二核酸プライマー(これらの第一および第二プライマーは該標的配列の異なる領域に対応するが、該標的へのそれらの対応において重複せず、又は実質的に重複せず、一方の伸長産物がその相補鎖から分離されるとき他方の伸長産物の鋳型として役立ち得るように選ばれる);および該第一プライマーを標的配列にハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプライマーを鎖伸張させ、得られた2本鎖核酸を鎖分離させ、プロモーターを含む分離鎖に第二核酸プライマーをハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプライマーを鎖伸張させ、得られたプロモーター配列を含む2本鎖核酸に転写物を作らせ、そして該転写物を検出するための手段;を含むキット。」(甲第1号証の翻訳文たる特表平2-500565号公報の特許請求の範囲21項)が、
甲第2号証(「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY」Published by Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience,4.9.1(1987))には、
「特異的なRNAのサイズ及び量は、特異的に標識したDNAプローブに膜上のRNAをハイブリダイズさせることによって測定される。」(4.9.1頁5〜7行)が、
甲第3号証(特開昭61-274697号公報)には、
「8.1又は2以上の核酸を含む試料中の少なくとも1つの特定の核酸配列(該核酸の少なくとも1つがこの配列を含有すると思われる)を検出するためのキットであって、
(a)検出されるべきそれぞれ異なった配列の各鎖用の1又は複数のプライマーのためのコンテナー(このプライマーは各特定の核酸配列の各鎖に実質的に相補的であって、1つのプライマーから合成された伸長生成物がその相補物から分離されたときに、他のプライマーから合成された伸長生成物がその相補物から分離されたときに、他のプライマーの伸長生成物合成用の鋳型としての役割を果たすことができる)
(b)重合試薬を収容するコンテナー;
(c)4つの異なった各ヌクレオシド三リン酸用のコンテナー;
(d)配列が試料中に含まれるならばその配列とハイブリダイズすることができる標識されたオリゴヌクレオチドプローブを収容するコンテナー;及び、
(e)該プローブと該配列のハイブリッドを検出する手段を収容するコンテナー;を有するパッケージタイプの多コンテナー型ユニットから成るキット。」(特許請求の範囲の項)、
「更に、十分な量のプライマーが増幅される鎖に相補的である配列を含むのであれば、プライマーはその配列の一部として相補的でない配列を含むことができる。例えば鋳型配列に相補的でない核酸配列(例えばプロモーター、リンカー、コード配列等)を、1つ又は両方のプライマーの5’末端に結合させることができ、これにより増幅工程の生成物にこれを付加することができる。」(14頁右下欄3〜10行)が、それぞれ記載されている。
3.判断
(1)特許法29条の2について
本件発明は、「請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検試料中の核酸配列を検出するための方法を実施するために用いられるキット」に係るものであるところ、甲第1号証には、「請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検試料中の核酸配列を検出するための方法」について開示されているところはないから、本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえない。
(2)特許法29条1項3号について
甲第3号証にも、「請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検試料中の核酸配列を検出するための方法」について、具体的には記載されていない。
そうすると、本件発明は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。
(3)特許法36条4項について
特許異議申立人は、本件キットを用いて実施される核酸増幅/検出方法の工程に関しては何ら要件にされてない、と主張している。
しかし、訂正により本件発明は、「請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検試料中の核酸配列を検出するための方法を実施するために用いられるキットであって」と特定されるものであるから、最早、上記主張には理由がない。
4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
核酸配列の増幅および検出
【発明の詳細な説明】
発明の背景
最近の分子生物学の一般的な分野における発達により臨床および商業上重要な特定の核酸配列を検出することが可能となった。例えば、様々なヒト遺伝子の核酸配列の分析によって、特定の疾患と関連して特有の変化が存在することが明らかになった。同様に、各微生物を特異的に特徴づけ、それらを極く近縁種のものからさえも区別し得る、種々の病原体ゲノムの配列が同定された。それらの配列に関する情報を利用することで、遺伝子レベルでの疾患の診断が可能となった。
特定の核酸配列を検出する最も一般的な方法はハイブリダイゼーション(ハイブリッド形成法)である。この方法は核酸が相補的な核酸配列と安定な非共有結合性の複合体(コンプレックス)を形成し得るという点を利用したものである。被検試料中に特定の核酸配列が存在するか否かを決定するには、相補的な核酸プローブを調製し、検出可能な化学的修飾によって標識した後、被検試料に加える。検出すべき配列が存在する場合、標識したプローブがそれとハイブリダイズし、その標識が、ハイブリダイゼーションの生起の有無および程度を既知の方法で決定する手段を与える。
現在のハイブリダイセーション法を被検試料中の核酸配列を決定するために用いることは、それが充分に高感度でなく特定の核酸配列の存在を正確に証明するにはかなり多量の被検試料を要するという点で根本的に限界がある。このような限界は、通常、分析用として得られる試料の量が限られている臨床面での実用化にとって重大な限界である。従って、被検試料中の特定の核酸配列を検出するためのハイブリダイセーション法の感度を高める方法を開発し、該方法の診断技術面での利用を拡大することが注目されていた。
一般的なハイブリダイセーション法の感度の改善法の1つはハイブリダイゼーションプローブによって生成されるシグナルを増大することであった。例えば、ニックトランスレーション[リグビィら(Rigby)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、113:237(1977)]またはSP6転写[メルトンら(Melton)、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nuc.AcidsRes.)、12:7035(1984)]により、高い比活性の放射能で標識された核酸プローブの調製法が報告されている。
シナイダーら(Schneider)[PCT国際特許出願公開No.WO87/03622]は、ハイブリダイゼーションにより生成したシグナルを増幅する手段として、目的のDNAまたはRNA配列とハイブリダイズしている第1プローブの各々と結合可能な複数のシグナル産生性第2プローブ群を使用することについて報告している。
チュら(Chu)[PCT国際特許出願公開No.WO87/06270]は核酸ハイブリダイゼーションプローブとして″複製可能なRNA″を単独で、または親和性分子と一緒に使用し、さらに、RNAを複製し、それによって産生されるシグナルを増加するためにRNA依存性のRNAポリメラーゼを使用することについて報告している。
ロドランドら(Rodland)[米国特許出願No.第4,647,529号]はハイブリダイゼーションプローブに取り込まれた場合にプローブと検出すべき核酸配列との結合量を増加させるチオヌクレオチドの使用について報告している。
プローブ検出法の感度の向上にかなりの努力が払われたのに対して被検試料中の検出すべき核酸配列を増幅させて現在利用可能なハイブリダイゼーション法によって検出するのに充分な量の配列を生産する方法に向けてなされた研究は殆どなかった。
ムリスら(Mullis)[米国特許出願No.第4,683,195号]は2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて被検試料中の特定の核酸配列を増幅する方法およびプライマー伸長産物の合成に関して教示している。1つのプライマーの伸長産物は、もう1つのプライマーとハイブリダイズした場合に所望の特定の核酸配列を生産するための鋳型となり、またその逆の関係が成り立ち、特定の配列が所望の量、生産されるまでこの工程が繰り返される。
ムリスらは、非相補配列と結合したプライマーを用い、この増幅法によって大量の組換え核酸を調製することも教示している。ムリスらはプロモーター、リンカーまたは暗号配列のための核酸配列をプライマーの1方または両方に連結し、被検試料の核酸配列と非相補性配列とを一緒に増幅させる方法を開示した。このようにして、選択された外因性の核酸配列と結合した既存の被検核酸配列からなる組換え核酸が大量に生産される。
従って、ムリスらの方法の原理は、相補的なプライマー伸長産物の形で所望の核酸配列を増幅することにある。形成された各プライマー伸長産物がさらに他のプライマー伸長生産における鋳型となるので、ムリスらのプライマー伸長法を複数回繰り返すことにより、理論上、反応サイクルの回数に対して指数関数的な速度で所望の配列が蓄積されることになる。これに対し、目的物でない、プライマーハイブリダイゼーション副産物は自己触媒作用をしないと思われるので、直線的な速度で蓄積される。
このように、ムリスらの方法の特異性および精度は、厳密に、副産物の合成速度に対する所望の核酸配列の相対的合成速度の実質的な増大にかかっている。しかしながら、実際には、副産物の蓄積は理論的な計算から予測される速度よりもはるかに早く進むことが観察されている。例えばムリスらはヒトゲノムDNAを含有する試料中に存在するヒトベータ-ヘモグロビン遺伝子部分を増幅させるためにこの方法を用い、ゲノム内の他の配列の増幅により、所望の配列に相当する増幅配列の最終的な割合は1%にすぎないという結果を認めた。
ムリスらの方法で所望の核酸配列以外の核酸配列が増幅した程度から、この方法は実際に被検試料中に存在する所望の核酸配列よりも多くを検出し、偽陽性の結果を与えることになる。従って、本発明は被検試料中の核酸配列を特異的かつ定量的に増幅させることにより、偽陽性および、さもなくば既存の方法に付随する不正確な結果等の問題を回避し、所望の配列の検出感度を向上させる方法を提供することを目的とするものである。
さらにムリスらの方法は複数回のプライマーハイブリダイゼーションおよびプライマー伸長合成のサイクルを想定したものであるために面倒な作業を要するかまたは自動化(オートメーション化)のための経費が必要である。ムリスらの方法の自動化には、特殊な装置のみならず特殊な試薬、熱的に安定なDNAポリメラーゼを必要とし、さらにプライマーハイブリダイゼーションおよびプライマー伸長合成工程を連続的に行うために、各分析試験系に合わせて反応条件を設定する必要がある。従って、本発明は、費用および工程の繰り返し、特別の装置および試薬、あるいは異なる被検試料ごとに反応条件を変更しなければならない繁雑さを必要とせず、迅速かつ簡便に被検試料中の特定の核酸配列を検出する方法を提供することを目的とするものである。
発明の要約
本発明の目的は、
(a)検出すべき配列とプロモーターとを含有する2本鎖核酸を合成し、
(b)該プロモーターのコントロール下で該2本鎖核酸から複数個のRNA転写物を合成し、
(c)工程(b)で得たRNA転写物の存在を測定し、さらに
(d)該RNA転写物の存在を、検出すべき核酸配列の存在に関係づけることからなる方法によって達成された。
さらに実施態様において、上記工程(a)の核酸を、
(1)プライマーと結合したプロモーターを含むオリゴヌクレオチド、プロモーター-プライマーを得、
(2)検出すべき核酸配列にプロモーター-プライマーがハイブリダイズする条件下で被検試料とプロモーター-プライマーとを接触させ、さらに
(3)工程(2)においてプロモーター-プライマーがハイブリダイズした被検試料核酸配列を鋳型とし、検出すべき核酸配列と相補的な伸長産物をプロモーター-プライマーから合成することからなる方法で調製することを含む方法によって本発明目的はより高く、達成される。
さらに他の実施態様として、工程(a)の核酸を、
(1)プライマーと結合したプロモーターからなるオリゴヌクレオチド、プロモーター-プライマーおよびオリゴヌクレオチド第2プライマーであって、これらプライマーは互いに相補的でなく、しかも1方のプライマーから合成された伸長産物をその相補体から分離したときに、それがもう1方のプライマーの伸長産物の合成における鋳型となるよう選択されているものを得、
(2)プロモーター-プライマー伸長産物が合成されるハイブリダイゼーション条件下でプロモーター-プライマーに被検試料を接触させ、さらに
(3)第2プライマーの伸長産物が合成されるハイブリダイゼーション条件下で被検試料を接触させることからなる方法で得ることからなる方法によっても、本発明の目的は達成される。
本発明は被検試料中の特定の核酸配列の存在を測定する方法の改良法および本発明の実施に必要な試薬を含有するキットを提供するものである。総括すると、本発明方法は、検出すべき核酸配列とプロモーターとを含有する2本鎖核酸の合成、そのプロモーターのコントロール下での複数個の様々なRNA転写物の合成、および産生された特定のRNA転写物の検出を含む。DNAプライマー伸長産物の形でなくRNA転写物の形で増幅させることの利点は、ポリメライゼーションのための酵素とリボヌクレオシド三りん酸の存在下においてRNA転写物の合成は連続的に起こるので、極めて、また本質的に誤りを生じやすいプライマーハイブリダイゼーション反応を何度も繰り返さずに、検出すべき核酸配列を任意の所望のレベルにまで増幅させることができるという点にある。
図面の簡単な説明
第1図は1本鎖核酸中の検出すべ特定の配列へのオリゴヌクレオチド、プロモーター-プライマーのハイブリダイゼーション、検出すべき配列とプロモーター-プライマーのプロモーターを含有する2本鎖核酸の合成、およびプロモーターの制御下における2本鎖核酸からの複数個のRNA転写物の合成を示す模式図である。
第2図は、本発明の1実施態様であって、オリゴヌクレオチド、プロモーター-プライマーとオリゴヌクレオチド、第2プライマーとを一緒に用い、検出すべき核酸配列とプロモーター-プライマーのプロモーターとを含有する2本鎖核酸を製造することを含む実施態様の模式図である。プロモーター-プライマーと、1本鎖核酸中の検出すべき配列とがハイブリダイズし、プロモーター-プライマー伸長産物の中の検出すべき配列と相補的な配列に第2プライマーがハイブリダイズする。得られた生産物は2本鎖核酸であり、1本の鎖はオリゴヌクレオチド、プロモーター-プライマー伸長産物を、もう1本の鎖はオリゴヌクレオチド、第2プライマー伸長産物を含有しており、それから、プロモーターのコントロール下でRNA転写物が産生される。
第3図は本発明の他の実施態様であって、オリゴヌクレオチド、プロモーター-プライマーと、オリゴヌクレオチド、第2プライマーとを一緒に用いることからなる実施態様の模式図である。オリゴヌクレオチド、第2プライマーと1本鎖核酸内の検出すべき配列とがハイブリダイズし、オリゴヌクレオチド、プロモーター-プライマーと第2プライマー伸長産物内の検出すべき配列に相補的な配列とがハイブリダイズする。
発明の詳細な説明
本明細書中、″プロモーター″という語句はそれにRNAポリメラーゼ酵素が結合し、RNA転写物の合成を開始する核酸配列を意味する。プロモーターは専用の(dedicated)プロモーターであり、RNAポリメラーゼは専用のRNAポリメラーゼであることが好ましい。″専用の″という語句はそのプロモーターが、実質上、分析すべき被検試料中に通常存在しているポリメラーゼ以外の、1つのRNAポリメラーゼによってのみ認識されるものであることを意味する。同様に、″専用のRNAポリメラーゼ″は被検試料中に存在する他のプロモーターと比較したとき、専ら、あるいは優先的に専用のプロモーターと結合し、プロモーターの下流に位置する核酸のRNA転写物を合成する。専用のプロモーターと専用のRNAポリメラーゼとの組み合わせにより、通常でない、特異的なプロモーター-RNAポリメラーゼ相互反応が起きる。
一般に、専用のプロモーターと専用のRNAポリメラーゼとは、例えばバクテリオファージT7またはバクテリオファージSP6等、同じ供給源から得られる。T7およびSP6の両者の場合、ファージがコードしているDNAポリメラーゼは同族起源のファージプロモーターからのRNA転写物の合成を有効に開始する。他の原核性または真核性プロモーターからRNA転写が開始されることは殆ど認められない。しかも、単塩バッファー、2本鎖核酸鋳型、リボヌクレオシド三りん酸およびファージRNAポリメラーゼからなる転写反応によって大量のRNAが迅速に合成される。被検試料DNAに含まれる既知の任意の配列との偶発的なハイブリダイゼーションを最小限に止めるよう、プロモーターを、固有の配列から選択するか、そのヌクレオチド配列を修飾することが好ましい。
本明細書中″プライマー″という語句は、天然に存在するか、合成されたオリゴヌクレオチド配列であって、検出すべき核酸配列の全体または一部と実質上、ホモローガスであるか、または相補的な配列を指す。プライマーは検出すべき配列またはその相補配列を含有する鋳型核酸とハイブリダイズし、ポリメライゼーション用試薬の存在下で伸長産物の合成を開始(プライム)するのに充分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さはハイブリダイゼーションおよびプライマー伸長合成反応の条件、並びに検出すべき特定の核酸配列の組成などの様々な因子に左右される。通常、プライマーは10-25またはそれ以上のヌクレオチドを含有するが、それより少ないこともある。しかしながら、プライマーは、検出すべき核酸配列またはその相補体の配列を正確に反映したものである必要はない。例えば、選択された条件下でプライマーが検出すべき核酸配列またはその相補配列と特異的にハイブリダイズする限り、プライマー内に非相補的な塩基が分散されていたり、プライマーから相補的な塩基が欠失されていてもよい。
本明細書中、″プロモーター-プライマー″という語句はプライマーの5’末端にプロモーターが結合してなる、天然に存在するまたは合成されたオリゴヌクレオチドを指す。適当な条件下、ポリメライゼーションのための試薬の存在下でプロモーター-プライマーは、検出すべき核酸配列またはその相補配列と、プロモーター-プライマーのプロモーターとを包含するプロモーター-プライマー伸長物産生の開始点として作用することができる。ハイブリダイゼーション効果を最大にするためには、プロモーター-プライマーは1本鎖であることが好ましいが、2本鎖であってもよい。2本鎖の場合には、伸長産物の製造に用いる前に、まずプロモーター-プライマーを処理してそのストランドを解く。
″第2プライマー″という語句は、天然に存在するか、または合成されたオリゴヌクレオチドであって、適当な条件下、ポリメライゼーションのための試薬の存在下で検出すべき核酸配列またはその相補配列を含む第2プライマー伸長生産の開始点として作用することができるものを指す。ハイブリダイゼーション効果を最大にするためには、第2プライマーは1本鎖であることが好ましいが、2本鎖であってもよい。2本鎖の場合には、伸長産物の製造に用いる前に、まずプロモーター-プライマーを処理してそのストランドを解く。第2プライマーは、検出すべき核酸配列の全部または一部と実質上、相補的であれば、いかなるヌクレオチド配列を含有していてもよいが、プロモーター-プライマーの相補配列でないように選択することが好ましい。
″プローブ″という語句は、検出すべき核酸配列の全部または一部とホモローガスまたは相補的な、天然に存在する、または合成されたオリゴヌクレオチドを指す。プローブは、適当な条件下、検出すべき核酸配列のRNA転写物と特異的にハイブリダイズすることができる。
本明細書中、プライマーおよびプローブに関して″オリゴヌクレオチド″という語句は2またはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドからなる分子を意味する。所望のオリゴヌクレオチドは、例えば、天然に存在する核酸から精製する、あるいは新たに合成する等、適当な方法で調製される。様々な有機化学の技術を用い、ヌクレオシド誘導体からオリゴヌクレオチドを合成することに関する幾つかの方法が文献に記載されている。有機合成の1つの型はホスホトリエステル法であり、この方法では、ヌクレオシド三りん酸エステルが結合して所望の配列を有するオリゴヌクレオチドを形成する[ナラングら(Narang)、Meth.Enzymol.、68:90(1979)]。ヌクレオシド二りん酸[ブラウン(Brown)、Meth.Enzymol.、68:109(1979)]、またはヌクレオシド・ホスホラミデート[カルーサー(Caruthers)、Meth.Enzymol.、154:287(1985)]の使用を含む他の有機合成法が報告されている。次いで、これらの一方法のいずれかで合成されたオリゴヌクレオチドを一緒にして、必要な長さおよび配列を有する任意の1本鎖オリゴヌクレオチドを形成することができる。別法として、インビトロでの転写性増幅、宿主細胞へのクローニング、あるいは適当な制限酵素を使用して天然の供給源から回収することによりオリゴヌクレオチドを生産する。
本明細書中、″RNA転写物″という語句はプロモーター-プライマーのプロモーターのコントロール下でRNAポリメラーゼ酵素によって合成されたリボ核酸分子を指す。検出すべき特定の核酸配列のRNA転写物は、プロモーター-プライマーの性質により該配列とホモローガスであるか相補的である。
本明細書中、”伸長産物”という語句は、プライマーがハイブリダイズしている核酸分子を合成の鋳型として用い、プライマーの3’OH末端から合成が開始される核酸分子を指す。
″ポリメライゼーション用試薬″という語句は、一般に、既存の核酸を鋳型としてデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドからの核酸の合成を触媒する酵素を意味する。
被検試料としては、精製形または非精製形の任意の起源の核酸を鋳型として用い得る。例えば、被検試料は食物、農産物、あるいはヒトまたは動物の臨床標本であってよい。通常、標本試料は、尿、血液、血漿、血清、および啖などの生物学的な液体である。被検試料中の検出すべき核酸は細菌、酵母、ウイルス、および植物または動物などのより高等な生物に由来する細胞または組織など、任意の源からのDNAまたはメッセンジャーRNAをも含むRNAである。そのような核酸の抽出および精製法は、例えば、マニアティス(Maniatis)[モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning):実験手引書(A Laboratory Manual)、ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(1982)]によって報告された。
被検試料中の検出すべき核酸配列は最初から分離した分子として存在し、検出すべき配列が全核酸を構成していてもよく、あるいは大きい分子の単なる一部分であってもよい。検出すべき核酸配列が最初から、精製された形である必要はない。被検試料は検出すべき核酸配列が少数部分である核酸複合体(コンプレックス)混合物を含有するものであってもよい。例えば、検出すべき核酸配列は全ヒトゲノムDNAに含有された腫瘍遺伝子、または臨床標本の少数部分である微生物、病原体の核酸配列の一部に該当するものであってもよい。
本発明方法によれば、いかなる核酸配列をも検出することができる。配列の内、検出すべき核酸配列またはその相補体とハイブリダイズし得る最小限1個または好ましくは2個のプライマーを調製するのに充分な数の配列中のヌクレオチドが分かっているだけで十分である。検出すべき核酸配列は、例えば、任意の既知の核酸配列決定法によって確かめるか、決定されたタンパク質配列に基づいて推測することができる。検出すべき核酸配列についての知識が多いほど、選択されるプライマーの特異性がより大きくなり、本発明方法の精度が一層高くなる。
例えば、選択された条件下、被検試料中の検出すべき核酸配列またはその相補的配列とは特異的にハイブリダイズするが他の配列とはハイブリダイズしないプロモーター-プライマーを選択し得るよう、充分な配列情報を入手することが好ましい。プロモーター-プライマーと第2プライマーの両方を用いるときは、検出すべき核酸配列について、相互に相補的でないプライマーを選択し得るだけの知識を得ることが望ましい。
第1-3図記載の方法はいずれも、中核となる第1段階として、検出すべき配列とプロモーターとを含有する2本鎖核酸の製造工程を含む。一般に、この2本鎖核酸の調製にはプライマーがハイブリダイズした1本鎖核酸を鋳型として用いるプロモーター-プライマー伸長産物の合成、および、場合によっては、第2プライマー伸長産物の合成が含まれる。プロモーター-プライマーを単独で用いるか、第2プライマーと併用するかによって、鋳型は検出すべき配列を含有する被検試料核酸か、または先に合成された検出すべき核酸配列の相補配列を含有するプライマー伸長産物のいずれかで構成される。
もしも鋳型が元々2本鎖核酸に含有されていたものであればプライマー伸長産物の合成の前、または同時に核酸ストランドを分離しなければならない。ストランドの分離は、被検試料を90〜100℃で約1〜10分間加熱して熱変成する方法によることが好ましいが、他の物理的、化学的または酵素的な方法を使用することもできる。
プライマーハイブリダイゼーションは、通常、プライマーが、検出すべき核酸配列またはその相補配列と特異的にハイブリダイズするが、他のいかなる配列ともハイブリダイズしない、十分なストリンジェンシーとなるよう、温度、塩濃度およびpHに関する条件を選択した緩衝化水溶液中で行う。一般に、プライマーと鋳型とのハイブリダイゼーション効果は、加えられたプライマーが鋳型に対して過剰モル、好ましくは1000〜106モル濃度過剰に存在するような条件下で促進される。しかしながら、被検試料中の鋳型の量が不明の場合には鋳型に対するプライマーの相対量も確実に決定されないということは理解されるであろう。
第1A-G図は、本発明の実施態様を示しており、プロモーター-プライマーを用いた、検出すべき配列とプロモーターとを含有する2本鎖核酸の調製を示す図である。
第1A図では、プロモーター-プライマーc、dのプライマーcは、相補的なヌクレオチド配列の非共有結合的な塩基対形成eを介して核酸aの一部である検出すべき核酸配列bとハイブリダイズしている。プロモーター-プライマーのプロモーターdは被検試料中の既知の核酸配列のどれとも非相補的であるよう、好適に選択されているのでハイブリダイズしないままである。
次いで、ヌクレオシド三りん酸の存在下、ポリヌクレオチドポリメラーゼfを加えると、最初にプライマーがハイブリダイズした配列bの5’側に境界を接している被検試料核酸配列aを含有する1本鎖鋳型に沿って、プライマーの3’末端から始まり、5’側に向けてプロモーター-プライマー伸長産物が合成される(第1図1B-C)。このようにプライマー伸長産物は、検出すべき核酸配列およびもしあるならば、5’側に隣接する被検試料核酸配列と相補的な2本鎖分子を形成する。
3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する物質hの存在下、もしあるならば被検試料核酸の3’末端側1本鎖配列を第1D図のように切断し、ポリヌクレオチドポリメラーゼfにより、被検試料核酸配列の3’末端でプロモーター-プライマーのプロモーターを鋳型
として開始され、合成された新しい核酸で置換する(第1図E-G)。
検出すべき配列とプロモーターを含有する2本鎖分子を生成する第1A-G図の方法はプロモーター-プライマーと検出すべき核酸配列とのハイブリダイゼーション、およびその後の、プロモーター-プライマー伸長合成、核酸の切除、および置換合成からなる工程によるものである。切除反応には、プロモーター-プライマー伸長合成および置換合成に用いた試薬fと異なる試薬hが使用されるが、2本鎖産物の合成が、プロモーター-プライマーハイブリダイゼーションに続いて行われるよう、単一の試薬を使用することが望ましい。従って、ポリヌクレオチドポリメラーゼは、大腸菌のDNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、およびT4DNAポリメラーゼ等の5’-3’ポリメラーゼ活性と3’-5’エキソヌクレアーゼ活性の両者を有するものであることが好ましい。これらの酵素はいずれもプライマー伸長合成に鋳型を必要とするので、それらを第1Bおよび第1F図記載の方法で使用するのに適切な場合は、検出すべき配列がDNAである場合である事が分かる。
検出すべき配列とプロモーターとを含有する2本鎖核酸は、検出すべき配列の複数個のRNA転写物の供給源として作用する。第1H-I図に示すように、被検試料に適当なRNAポリメラーゼaaを加えると2本鎖産物のプロモーターにRNAポリメラーゼが結合し、次いで、リボヌクレオシドトリホスファターゼの存在下、検出すべき核酸配列をも含む、核酸配列のRNA転写物がプロモーターの下流に位置して合成される。
必要な試薬の存在を含む、適当な条件下、RNA転写物の合成は連続的に、しかも元々被検試料中に存在していた検出すべき核酸配列の量に比例して起こる。所望の量のRNA転写物を調製するために必要ならば試薬を追加してもよい。RNA転写物の合成は、本質的でないリボヌクレアーゼ不純物(混在物)によって有り得る偶発的な転写物の分解を避けるために、バナジル-リボヌクレオシド複合体またはヒト胎盤リボヌクレアーゼ・インヒビターなどのりボヌクレアーゼ・インヒビターの存在下で行うことが好ましい[バーガーら(Berger)、Meth.Enzymol.、152:227(1987);ド・マルチノフら(de Martynoff)、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem Biophys.Res.Commun.)、93:645(1980);およびシールら(Sheel)、プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシィーズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)、76:4898(1979)]。
産生された特異的なRNA転写物の測定は、RNA転写物をその合成の間、または合成後に検出可能な部分で標識するか、検出すべき核酸配列のRNA転写物と特異的にハイブリダイズすることができる標識したプローブを用いて標識することにより行われる。
RNA転写物は、例えば、それ自身、検出可能な部分で標識されており、RNAポリメラーゼの基質として利用され、そのことによりRNA転写物に組み込まれるリボヌクレオシド三りん酸を供給することによって標識される。検出可能な部分は直接または間接的に検出可能なシグナルを産生し得るものであればよい。例えば、1つの態様として、検出可能な部分は32P、3H、14C、125Iおよび35S等の放射性同位元素であってよい。また別の態様として、検出可能な部分は1またはそれ以上の適当な試薬と相互反応したときに検出可能なシグナルを産生する非放射能性の化学修飾である。即ち、例えば、検出可能な部分はビオチンであってよく、ビオチン部分と、アビジン、ストレプトアビジン、または抗ビオチン抗体などビオチンと特異的に結合し得るタンパク質との複合体の形成によって検出可能なシグナルが生成されるものであり、ここに、結合したタンパク質はフルオレスセイン、または適当な基質と反応して蛍光、ルミネセンス、または着色生成物を形成する酵素と抱合体を形成する(コンジュゲートする)ものである[ランガーら(Langer)、プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシィーズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)、78:6633(1981);ベイヤー(Bayer)およびウィルチェック(Wilchek)、Meth.Biochem.Anal,、26:1(1980)]。
他の実施態様においては、生産された特異的なRNA転写物を核酸ハイブリダイゼーションプローブを用いて測定する[ファルコウら(Falkow)、米国特許出願No.4,358,535、グッドソンら(Godson)、欧州特許出願No.0238332]。検出すべき核酸配列と相補的またはホモローガスなRNA転写物の配列とハイブリダイズするように選択することが好ましい。ハイブリダイゼーション法は欧州特許公開No.70,685および70,687記載の液相ハイブリダイゼーション法、および米国特許出願No.4,358,535(ファルコウ)および4,647,529(ロドランド(Rodland))、欧州特許出願No.0,238,332(グッドソン)、およびランキら(Ranki)、Gene21:77(1983)に記載の液-固相ハイブリダイゼーションなど、任意の適当な方法で行うことができる。液-固ハイブリダイゼーションの場合には、プローブ分子またはRNA転写物のいずれかを固体支持体に固定化すればよい。
例えば、定められた量の検出すべき配列または他の既知配列を含有する核酸標準と、被検試料中の検出すべき配列の量を同時に測定する方法など、任意の適当な方法を用いてRNA転写物の量と被検試料中の検出すべき核酸配列の量とを関係づけることができる(ランキら、英国特許出願2187283A)。
また、本発明の別の実施態様では、検出すべき配列とプロモーターとを含有する2本鎖核酸の合成を、プロモーター-プライマーと第2プライマーとを一緒に用いて互いにハイブリダイズし得る2個の異なるプライマー伸長産物の合成を開始することにより行う。
第2A-F図は、まずプロモーター-プライマー伸長産物を合成し、次いで、第2プライマー伸長産物を合成することからなる方法を示す図である。第2A図は、プロモーター-プライマーcdにおけるプライマーcが検出すべき核酸配列bの3’末端に結合し、相補的なヌクレオチド配列の非共有結合的な塩基対形成eを介してハイブリダイズしていることを示す図である。ヌクレオシド三りん酸の存在下、ポリメライゼーション用の試薬fを加えると、1本鎖鋳型に沿って、プロモーター-プライマーの3’末端から5’方向に伸長産物gの合成が開始される。このようにして得られる生成物は1本の鎖が被検試料核酸であり、他の鎖がプロモーター-プライマー伸長産物gである2本鎖核酸である。
次の工程(第2D図)では上記の方法の内、任意の方法で2本鎖を分離して1本鎖分子を得る。この鎖分離工程の後、第2プライマーとプロモーター-プライマー伸長産物中の検出すべき配列と相補的な配列とのハイブリダイゼーションに適した条件下、被検試料と第2プライマーhとを接触させる。しかしながら、分析の正確さを増すためには第2プライマーとプロモーター-プライマーとは相補的でないことが望ましいので、相補配列の3’末端とハイブリダイズするように第2プライマーを選択することが好ましい(第2E図)。
プロモーター-プライマー伸長合成に用いたポリメライゼーション用試薬fの継続的な存在下、またはポリメライゼーション用試薬iの添加により、第2プライマーの3’末端から、プロモーター-プライマー伸長産物鋳型に沿って5’側に向かう第2プライマーの伸長産物の合成が開始される(第2F図)。このように、第2プライマー伸長産物はプロモーター-プライマー伸長産物と相補的であり、それとハイブリダイズして検出すべき配列とプロモーター-プライマーのプロモーターとを含有する2本鎖核酸を形成する。
プロモーター-プライマー伸長産物の合成に用いられるポリメライゼーション用試薬はエキソヌクレアーゼ欠損T7DNA[ターバー(Tabor)およびリチャードソン(Richardson)、プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシィーズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)、84:4767(1987)]であることが好ましいが逆転写酵素やその他の3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損したポリヌクレオチド・ポリメラーゼ等の他の試薬を用いることもできる。市販の3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損したポリメラーゼ[シークエナーゼTM(SequenaseTM)、ユナイテッド・ステイツ・バイオケミカル・コーポレイテッド(United States Biochemical Corp.)、クリーブランド(Cleveland)、オハイオ(Ohio)]は残存量の3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有しており、例えば、プロモーター-プライマーが結合している、被検試料デオキシリボ核酸のハイブリダイズされていない3’末端は第2D図記載の鎖分離工程にかける前に切除されるような場合には望ましくない。このような現象は、被検試料の核酸が機械的に剪断される場合や制限酵素消化によってプロモーター-プライマーが結合する配列の3’側に位置する被検試料の核酸配列の長さが短縮されるような場合に起こり得ると予測される。
第2プライマー伸長産物の合成は第2プライマーの3’末端から合成を開始し、プロモータープライマー伸長産物鋳型に沿って5’方向に進行し得る任意のポリメライゼーション用試薬を用いて行うことができる。この目的に適した酵素には、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4DNAポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ欠損T7DNAポリメラーゼ、および逆転写酵素が含まれる。
第3A-I図は、まず第2プライマー伸長産物を合成し、次いで、プロモーター-プライマー伸長産物を合成することからなる方法を図示したものである。第3A図は、第2プライマーcが、相補的なヌクレオチド配列の非共有結合的塩基対dを介して検出すべき核酸配列bの3’末端にハイブリダイズしている様子を示す図である。ヌクレオシド三りん酸の存在下、ポリメライゼーション用の試薬eを加えると、1本鎖鋳型に沿って、第2プライマーの3’末端から開始され5’方向に向けて伸長産物fが合成される。このようにして得られる生成物は1本の鎖が被検試料の核酸であり、他の鎖が第2プライマー伸長産物である2本鎖核酸である(第3C図)。
次の工程(第3D図)では上記の方法の内、任意の方法で2本鎖を分離して1本鎖分子を得る。この鎖分離工程の後、プロモーター-プライマーと第2プライマー伸長産物の中の検出すべき配列と相補的な配列とのハイブリダイゼーションに適した条件下、被検試料とプロモーター-プライマーghとを接触させる。しかしながら、発明の精度の向上のためにはプロモーター-プライマーと第2プライマーとが相補的でないことが望ましいので、相補配列の3’末端とハイブリダイズするようにプロモーター-プライマーのプライマーを選択することが好ましい。
第2プライマー伸長産物eの合成に用いたポリメライゼーション用試薬fの継続的な存在下、またはポリメライゼーション用試薬iの添加により、プロモーター-プライマーの3’末端から開始され、第2プライマー伸長産物鋳型に沿って5’側に向かい、プロモーター-プライマーの伸長産物jが合成される。プロモーター-プライマー伸長産物は検出すべき核酸配列であって、第2プライマー伸長産物中の該配列に相補的な配列とハイブリダイズする配列およびプロモーターを含有している。このように、得られた生産物は検出すべき核酸配列とプロモーター-プライマーのプロモーターとを含有する2本鎖核酸である。
3,-5,エキソヌクレアーゼ活性を有する試薬kの存在下、もしあれば、プロモーター-プライマー伸長産物の3’末端の1本鎖配列を切除し、プロモーター-プライマーのプロモーターを鋳型としてプロモーター-プライマー伸長産物の3’末端からポリメライゼーション試薬iにより合成が開始されるプロモーター相補配列によって置換する(第3G-I図)。
第2プライマー伸長産物の合成は第2プライマーの3’末端から合成を開始し、被検試料の核酸配列の鋳型に沿って5’方向に進行する任意のポリメライゼーション用試薬を用いて行うことができる。この目的に適した酵素には、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4DNAポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ欠損T7DNAポリメラーゼ、および逆転写酵素が含まれる。プロモーター-プライマー伸長産物の合成およびプロモーター相補配列の合成は第2プライマー伸長産物の合成に用いたポリメライゼーション用試薬をも含めて、同一の試薬または異なる試薬を用いて行うことができる。しかしながら、第3図記載の工程を効率的に行うためには、プロモーター-プライマー伸長産物の合成に使用する試薬が第3G図記載の切除反応をも行って第2プライマー伸長産物のハイブリダイズしていない3’末端側の配列を除去し得るものであることが好ましい。合成と切除反応の両方を行うのに適した酵素には大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片およびT4DNAポリメラーゼなどの3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリヌクレオチド・ポリメラーゼが含まれる。
この、または前記の方法により2本鎖核酸生成物が形成されると、それは検出すべき配列の複数個のRNA転写物の源として作用し、その合成および測定は上記方法のいずれかを用いて行うことができる。
検出すべき配列とプロモーターを含有する2本鎖核酸の生産にプロモーター-プライマーと第2プライマーとを一緒に用いることの利点は、分析の精度がより大きいという点にある。プロモーター-プライマーまたは第2プライマーが、検出すべき配列またはその相補配列以外の配列と間違ってハイブリダイズした場合、得られたプライマー伸長副産物は被検試料核酸または他のプライマー伸長産物とハイブリダイズして、RNA転写物が合成されるような2本鎖生成物を与えるとは考えられない。
また、2個のプライマーを一緒に用いることの他の利点は、検出すべき配列のRNA転写物が様々な大きさで得られることである。第2図および第3図に記載のごとく、プロモーター-プライマーと第2プライマーとを、1本のプライマーが検出すべき配列の3’末端にハイブリダイズし、他のプライマーが相補配列の3’末端にハイブリダイズするようにプロモーター-プライマーと第2プライマーとを選択することにより、RNA転写物が合成される核酸生成物の2本鎖領域は、検出すべき配列とプロモーター-プライマーのプロモーターのみに限定される。得られたRNA転写物が様々なサイズであるということは、ゲルろ過クロマトグラフィー等によって被検試料から所望のRNA転写物を分離するなど、以後の転写物の検出または単離に好都合である。さらに、生成された転写物が第1図記載の方法で生成されたものよりも短いと、その合成はより迅速に進み、かつ必要な試薬の量も少い。
以下の実施例は単なる例示であって、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。本明細書で引用した文献は、すべて明確に記載されている。
実施例1
本実施例では式:
5’AAATTAATACGACTCACTATAGGGAGATGTACCTCTGTATCATATGC3’
で示される配列を有するデオキシリボヌクレオチドプロモーター-プライマーを用いたHIV(ヒト免疫不全症ウイルス、以前はHTLV-III/LAVと呼称されていた)のenv遺伝子の検出に関して示す。このプロモーター-プライマーの配列は、プロモーター-プライマーの5’末端側がバクテリオファージT7クラスIIIプロモーター[ダン(Dunn)およびスタディア(Studier)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、166:477(1983)]の機能的な領域の配列に対応し、3’末端側はHIVのenv遺伝子の暗号配列、HIVゲノム配列のヌクレオチド5981-6000の間の配列[ミュシングら(Muesing)、ネイチャー(Nature)、313:450(1985)]と相補的であるように選択されている。
分析用の核酸はクエン酸処理したヒト血液またはウイルス感染H9細胞[ポポビックら(Popovic)、サイエンス(Science)、224:497(1984)]から、[ハーマン(Hermann)およびフィシャウフ(Fischauf)、Meth.Enzymol.、152:180(1987)]の方法に従って抽出された。
40mM Tris-HCl(pH8.0)、20mMMgCl2、1mMジチオスレイトール、5mg/mlゼラチン、10mMバナジル-リボヌクレオシド複合体、および各10mMの4種のデオキシリボヌクレオシド三りん酸(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)および4種のリボヌクレオシド三りん酸(ATP、UTP、GTPおよびCTP)を含有する反応バッファー100μ1中のプロモーター-プライマー100pmolに被検試料核酸合計10μgを加える。混合物を100℃で1分間加熱し、37℃まで放冷する。次いで、この混合物に大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片5単位とT7RNAポリメラーゼ5単位とを加え、37℃で1時間反応を続ける。
生成したRNA転写物を、式:
5’ TTGATGATCTGTAGTGCTAC 3’
で示される配列を有する32P末端標識デオキシオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションのプローブとして用いるドット-ブロットハイブリッド形成法によって検出する。上記プローブの配列はHIVゲノム配列のヌクレオチド5875から5895の間に位置するHIVenv遺伝子の暗号配列部分とホモローガスなように選択されている。
RNA合成反応の一部をとり15×SSCバッファー(1×SSC=0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)100μlに加え、6×SSC中で予め湿らせておいたニトロセルロースフィルターによってろ過する。次いで、フィルターを80℃で1時間、真空オーブン中で乾燥する。
乾燥後、各フィルターを5×SSC、50mMりん酸ナトリウム(pH6.5)、5×デンハート溶液(1×=0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%フィコール、0.02%ウシ血清アルブミン、0.2mM Tris-HCl、0.2mM EDTA、pH8.0)、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、および0.2%変性サケ精子DNAからなるハイブリダイゼーション溶液と42℃で1時間接触させる。次いで、標識したプローブを終濃度107cpm/mlとなるようにハイブリダイゼーション溶液に加え、42℃で2時間、フィルターのインキュベーションを続ける。
最後に、フィルターを6×SSC中、バッファーを2回交換して37℃で1時間洗浄する。乾燥後、フィルターをオートラジオグラフィーにかけるかチェレンコフの放射能測定に付す。
実施例2
本実施例または以後の実施例はプロモーター-プライマーと第2プライマーとを一緒に用いてHIVenv遺伝子を検出する方法に関するものである。
実施例1と同様にしてヒト血液またはウイルス感染H9細胞から調製した被検試料10μgを反応バッファー100μl中でプロモーター-プライマー100pmolおよび第2プライマー(5’ATGAGAGTGAAGGAGAAATA3’)100pmolと混合する。この第2プライマーはHIVのenv遺伝子のアミノ末端暗号配列(ヌクレオチド5803-5822)とホモローガスである。このプロモーター-プライマーと第2プライマーとの特殊な組み合わせは、隣接するT7プロモーターの調節(コントロール)下に、それから206ヌクレオチドのRNA転写物が合成される、HIVのenv遺伝子配列中の198塩基対を含有する225塩基対の2本鎖核酸が生産されるよう、選択されている。
2個のプライマーと被検試料核酸を含有する混合物を100℃で1分間加熱した後、100℃で1分間加熱し、37℃まで放冷する。この時点でエキソヌクレアーゼ不含T7DNAポリメラーゼ[シークエナーゼTM(SequenaseTM)、ユナイテッド・ステイツ・バイオケミカル・コーポレイテッド(United States Biochemical Corp.)]5単位を加える。37℃で5分間インキュベートした後、再度、反応混合物を100℃で1分間加熱し、次いで、37℃で30分間〜1時間反応を続ける。最後に、反応混合物を100℃で5分間加熱し、42℃まで冷却する。
生成したRNA転写物を第2プライマーと発生期のRNA転写物とのハイブリダイゼーションによって特異的に開始される逆転写によって測定する。被検試料反応混合物に逆転写酵素5単位と一緒に、終濃度1μMとなるようにα-32P-dTTP(比活性約3000Ci/mmol)を加えた後、反応混合物を42℃で15分間インキュベートする。
32P標識逆転写産物を、反応混合物中の全酸不溶性放射能を測定することにより、定量する。反応混合物の1部をポリスチレンチューブに入れた10%トリクロロ酢酸(TCA)500μlに加え、氷上で10分間インキュベートする。次いで、各チューブの内容物をワットマンのグラスファイバーフィルターを用いて吸引ろ過し氷冷TCAでフィルターを洗浄する。乾燥後、フィルターのチェレンコフの放射能を計数する。
実施例3
ヒト血液またはウイルス感染H9細胞から単離した核酸を音波処理して剪断し、平均の長さが500ヌクレオチドの断片を調製する。次いで、剪断した被検試料核酸10μgを40mM Tris-HCl(pH8.0)、20mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、5mg/mlゼラチン、10mMバナジル-リボヌクレオシド複合体、および各10mMの4種のデオキシリボヌクレオシド三りん酸(dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP)および500μM ATP、500μM UTP、500μM GTPおよび500μM CTP、および1μMα-32P-UTP(比活性約3000Ci/mmol)を含有する反応バッファー100μ1中でプロモーター-プライマー100pmolおよび第2プライマー100pmolと混合する。混合物を100℃で1分間加熱し、28℃まで放冷した時点で、逆転写酵素5単位を加える。28℃で15分間インキュベートした後、反応混合物を100℃で1分間再度加熱し、28℃まで放冷する。逆転写酵素5単位およびT7DNAポリメラーゼ5単位を加え、28℃で1時間反応を進行させる。
32P標識逆転写産物を、上記のごとく、反応混合物中の全酸不溶性放射能を測定することにより、定量する。206ヌクレオチドの標識RNA転写物も、RNA合成反応物の一部を種々の量の放射性標識RNA標準と一緒に尿素-ポリアクリルアミドゲルのオートラジオグラフィーにかけて測定することができる。次いで、現像したオートラジオグラムをデンシトメーター(濃度計)にかけて解析することによりenv遺伝子配列の206ヌクレオチド転写物を定量する。
(57)【特許請求の範囲】
1.1本鎖DNAを含有する被検試料中の特定の核酸配列を検出する方法であって、
(a)被検試料と、プライマーと結合している、専用のRNAポリメラーゼのためのプロモーターを含有するオリゴヌクレオチドプロモーター-プライマーとを、プロモーター-プライマーを検出すべき核酸配列にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、
(b)被検試料をDNAポリメラーゼと接触させて検出すべき核酸配列とプロモーター-プライマーのプロモーターとを含有する2本鎖核酸を合成し、
(c)工程(b)の生産物をオリゴヌクレオチドプロモーター-プライマーのプロモーターを認識し得る専用のRNAポリメラーゼと接触させ、それによって該プロモーターのコントロール下にRNAポリメラーゼにより、検出すべき核酸配列の様々なRNA転写物を合成し、
(d)工程(c)で合成されたRNA転写物の存在を決定し、そして
(e)RNA転写物の存在と検出すべき核酸配列の存在とを関係づけることからなる方法。
2.RNAまたは.1本鎖DNAを含有する被検試料中の特定の核酸配列を検出する方法であって、
(a)被検試料とオリゴヌクレオチド第2プライマーとを、第2プライマーを検出すべき特定の核酸配列にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、
(b)被検試料を逆転写酵素と接触させ、工程(a)で第2プライマーがハイブリダイズした被検試料RNAまたは1本鎖DNAを第2プライマー伸長産物合成の鋳型として第2プライマー伸長産物を合成し、
(c)工程(b)の生産物を変性条件下で処理して第2プライマーDNA伸長産物をその鋳型から分離し、
(d)工程(c)で生産された1本鎖核酸を、専用のRNAポリメラーゼのためのプロモーターがプライマーに結合してなるプロモーター-プライマーであって、検出すべき核酸配列の全体または一部とホモローガスであるが、工程(a)で用いた第2プライマーとは相補的でないように選択されているオリゴヌクレオチドプロモーター-プライマーと、該プロモーター-プライマーを第2プライマー伸長産物にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、
(e)工程(d)の生産物をDNAポリメラーゼと接触させて第2プライマーDNA伸長産物をプロモーター-プライマーDNA伸長産物の合成における鋳型としてプロモーター-プライマーDNA伸長産物を合成し、
(f)工程(e)の生産物をオリゴヌクレオチドプロモーター-プライマーのプロモーターを認識し得る専用のRNAポリメラーゼと接触させ、それによって該プロモーターのコントロール下に検出すべき核酸配列の複数のRNA転写物を合成し、そして
(g)該RNA転写物の存在を検出すべき核酸配列の存在に関係づけることからなる方法。
3.1本鎖DNAを含有する被検試料中の特定の核酸配列を検出する方法であって、
(a)被検試料とオリゴヌクレオチド第2プライマーとを、第2プライマーを特定の核酸配列にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、
(b)被検試料をDNAポリメラーゼと接触させて、工程(a)で第2プライマーがハイブリダイズした被検試料RNAまたは1本鎖DNAを第2プライマー伸長産物合成の鋳型として第2プライマー伸長産物を合成し、
(c)工程(b)の生産物を変性条件下で処理して第2プライマーDNA伸長産物をその鋳型から分離し、
(d)工程(c)で生産された1本鎖核酸と、専用のRNAポリメラーゼのためのプロモーターがプライマーに結合してなるプロモーター-プライマーであって、検出すべき核酸配列の全体または一部とホモローガスであるが、工程(a)で用いた第2プライマーとは相補的でないように選択されているオリゴヌクレオチドプロモーター-プライマーとを、プロモーター-プライマーを第2プライマー伸長産物にハイブリダイズさせる条件下で接触させ、
(e)工程(d)の生産物をDNAポリメラーゼと接触させて第2プライマーDNA伸長産物をプロモーター-プライマーDNA伸長産物の合成における鋳型としてプロモーター-プライマーDNA伸長産物を合成し、
(f)工程(e)の生産物をオリゴヌクレオチドプロモーター-プライマーのプロモーターを認識し得る専用のRNAポリメラーゼと接触させ、該プロモーターのコントロール下に検出すべき核酸配列の複数のRNA転写物を合成し、そして
(g)該RNA転写物の存在を検出すべき核酸配列の存在に関係づけることからなる方法。
4.請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検試料中の核酸配列を検出するための方法を実施するために用いられるキットであって、該方法の実施に必要な請求項1〜3のいずれか1項に記載の試薬と、検出すべき核酸配列の全体または一部とホモローガスなオリゴヌクレオチドプローブとを含有してなるキット。
 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
特許請求の範囲の請求項4に係る記載「オリゴヌクレオチドプロモーター-プライマーとオリゴヌクレオチドプローブとを含有する被検試料中の核酸配列を検出するために用いられるキットであって、プロモーター-プライマーは被検試料核酸配列とハイブリダイズすることができ、オリゴヌクレオチドプローブは検出すべき核酸配列の全体または一部とホモローガスであるキット。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「請求項1〜3のいずれか1項に記載の被検試料中の核酸配列を検出するための方法を実施するために用いられるキットであって、該方法の実施に必要な請求項1〜3のいずれか1項に記載の試薬と、検出すべき核酸配列の全体または一部とホモローガスなオリゴヌクレオチドプローブとを含有してなるキット。」と訂正する。
異議決定日 2000-10-10 
出願番号 特願平1-502250
審決分類 P 1 652・ 532- YA (C12Q)
P 1 652・ 113- YA (C12Q)
P 1 652・ 161- YA (C12Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 上條 肇  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 藤田 節
佐伯 裕子
登録日 1998-10-30 
登録番号 特許第2846018号(P2846018)
権利者 ジェネンテク,インコーポレイテッド
発明の名称 核酸配列の増幅および検出  
代理人 齋藤 みの里  
代理人 田村 恭生  
代理人 青山 葆  
代理人 田村 恭生  
代理人 青山 葆  
代理人 斉藤 みの里  

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