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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G07F
管理番号 1032285
異議申立番号 異議1999-71267  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-02-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-07 
確定日 2001-01-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第2807732号「パチンコ遊技管理装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2807732号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件の特許第2807732号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)についての出願は、昭和63年8月9日に出願され、平成10年7月31日にその設定登録され、その後、特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年3月12日に訂正請求がなされ、これに対し、訂正拒絶理由通知がなされ、その期間内である平成12年2月8日に平成11年3月12日付けの訂正請求について訂正請求取下書を提出するとともに、新たに訂正請求がなされ、その後、平成12年2月8日付けの訂正請求は、特許法第120条の6第1項によって準用する特許法第133条の2第1項の規定に基づく手続却下の決定により却下されたものである。
2.本件発明
本件発明は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「パチンコ機と、硬貨の投入および紙幣の投入によりパチンコ玉を対応するパチンコ機の玉受け皿に直接供給する玉貸機とが1対1で設けられ、これらの対が列をなして島を構成し、この島における各玉貸機からの情報を売上情報として管理する中央コンピュータを備え、前記玉貸機に対して投入された硬貨または紙幣が正規の貨幣である場合、当該貨幣は島内に設けられた貨幣搬送装置により取り込まれて、島の端部に設けられた貨幣収納装置に搬送され、前記玉貸機は貸玉金額に応じたパチンコ玉を対応するパチンコ機の玉受け皿に供給し、前記玉貸機に対して投入された硬貨または紙幣が正規の貨幣でない場合には、当該貨幣は返却され、島のパチンコ玉供給設備からパチンコ玉が前記玉貸機へ供給されず、パチンコ玉センサによってパチンコ玉があることが検知されない場合には、前記貨幣の返却が行われるように構成し、前記各玉貸機は前記貨幣搬送装置への貨幣の取り込みを売上金額信号として中央コンピュータに出力するように構成した、ことを特徴とするパチンコ遊技管理装置。」
なお、上記したように、平成11年3月12日付けの訂正請求は取下げられ、また平成12年2月8日付けの訂正請求は手続却下の決定により却下された。
3.引用刊行物に記載の事項
先の取消理由通知において引用した本件出願前に頒布された刊行物1乃至刊行物4には、それぞれ、次の事項が記載されている。
(1)刊行物1:特開昭59-189883号公報
刊行物1には、薄型玉貸機の管理システムに関し、図面とともに、
「図において、この実施例の薄形玉貸機10は、前面パネル11を含む。前面パネル11には、玉切れ表示ランプ12,硬貨投入口13,貸玉数選択手段の一例の選択スイッチ群14,硬貨返却口15,貸玉放出口16,釣銭放出口17および返却ボタン18が設けられる。選択スイッチ群14は、・・・複数の選択スイッチ141〜145を含む。この選択スイッチ141〜145は、・・・投入した金額に対応するものが点灯表示される。これによって、選択スイッチ141〜145は、投入金額の表示すなわち貸出可能な玉数(何百円分の玉数)と、遊技者の希望の貸出玉数の選択に使用される。」(第3頁右下欄5行〜第4頁左上欄3行)こと、
「硬貨返却口15は、不良硬貨を返却するものである。貸玉放出口16は、従来の薄形玉貸機と同様にして、手で昇降部16aを押し上げたとき、玉が放出されるものである。返却ボタン18は、投入した硬貨を返却させたいとき操作される。」(第4頁左上欄14行〜18行)こと、
「前述のような薄形玉貸機10は、島台1の上に複数台並べられたパチンコ機Pの間に設置される。なお、第18図では、1台のパチンコ機Pごとに1台の薄形玉貸機10を設置した場合を示す・・・。このように、複数台のパチンコ機Pおよび薄形玉貸機10を長手方向に並べて設置することによって、島が構成される。パチンコ遊技場においては、このような島が複数設けられ、必要に応じて複数のパチンコ機P及び玉貸機が背中合わせで2列に並べて設置されて島を構成する場合もある。」(第4頁左上欄19行〜同頁右上欄11行)こと、
「そして、パチンコ機Pおよび薄形玉貸機10の裏面であって島台1に関連する部分には、各薄形玉貸機10へ投入された第1の金額(たとえば100円)の硬貨(以下100円硬貨)および第2の金額(たとえば500円)の硬貨(以下500円硬貨)を集合させて回収するために、集合回収通路2が島台1の長手方向に沿って形成される。集合回収通路2の一方側端には、回収硬貨貯留装置50が設けられる。」(第4頁右上欄12〜20行)こと、
「貸玉放出口16の裏面には、玉貯留部16b設けられる。この玉貯留部16bの上部には、貸玉放出機構25が設けられる。貸玉放出機構25は、玉導入通路251を含む。玉導入通路251の上端部は、パチンコ機Pへ賞品玉補給する補給通路に連結される。」(第5頁右上欄8〜13行)こと、
「なお、玉切れを検出して動作を停止させる目的で、玉導入通路251の一部には玉切れ検出スイッチ25aが設けられる。この玉切れ検出スイッチ25aの出力は、玉切れ表示ランプ12を表示させるとともに、硬貨の投入にかかわらず貸玉放出動作を禁止指令するための信号として利用される。」(第5頁右下欄8〜12行)こと、
「コインセレクタ30は、ボックス31を含む。ボックス31の内部の上部部分には、円弧状の誘導レール321が固着される。・・・誘導レール321よりもやや上部の壁面には、複数種類の検出器34a〜34cが設けられる。ここで、検出器34aは、投入された硬貨(図示ではCNで示す)の材質を検出するものであって、たとえば硬貨に含まれる金属材料の含有量の違いによって発振状態を変化するものなどが用いられる。検出器34bは、硬貨の厚さを検出するものであって、所定の厚さか否かの検出を行なう。検出器34cは、硬貨の直径を検出するものである。これらの検出器34a〜34cの検出出力の組合せによって、投入された硬貨の種類およびその硬貨の真偽判別が行なわれる。」(第6頁左上欄4行〜同頁右上欄1行)こと、
「そして、検出器34a〜34cの検出出力に基づいて不良硬貨であることが判断されたとき、ソレノイド421が付勢されて、2点鎖線で示すように切換弁423が開口部415から通路41内へ押し出される。このため、不良コインは切換弁423に当って開口部414から外へ取出され、不良硬貨回収通路351を介して硬貨返却口15へもたらされる。」(第6頁右上欄20行〜同頁左下欄8行)こと
「第5図は回収手段に含まれる硬貨回収通路と回収硬貨貯留装置の詳細である。第1B図に示される集合回収装置2は、位相手段の一例のベルトコンベヤ2a周囲部分をダクト2bで覆って構成される。」(第6頁右下欄14〜18行)こと、
「出力ベルトコンベヤ2aの移送方向終端には回収硬貨貯留装置50が設けられる。回収硬貨貯留装置50は、カバー51内に硬貨選別通路52を含む。」(第7頁左上欄10〜13行)こと、
「第7図はこの発明の一実施例の薄形玉貸機システムのブロック図である。薄形玉貸機10に関連して、玉貸処理装置の一例のマイクロプロセッサ70が設けられる。マイクロプロセッサ70は、中央処理装置(以下CPU)71を含む。」(第7頁右下欄11〜15行)こと、
「CPU71には、プログラム記録用メモリ(ROM)73、データ記憶用メモリ(RAM)74および伝送制御回路75が接続される。・・・RAM74は、貸玉データを記憶する記憶エリア74a、釣銭データを記憶する記憶エリア74bおよび硬貨データを記憶する記憶エリア74cを含む。」(第8頁左上欄15行〜同頁右上欄2行)こと、
「第8A図〜第8C図はこの発明の薄形玉貸機の管理システムに含まれる管理装置の詳細図であり、・・・
第8A図において、管理装置80は、入出力インタフェース81を含む。入出力インタフェイス81には、伝送制御回路82が接続される。この伝送制御回路82には、各薄形玉貸機(その第番号#1〜#R)に含まれる伝送制御回路75が接続される。」(第12頁左上欄5〜16行)こと、
「入出力インタフェイス81には、中央処理装置(CPU)が接続される。・・・このCPU83には、プログラム記憶用メモリ(ROM)84およびデータ記憶用メモリ(RAM)85が接続される。」(第12頁右上欄1〜9行)こと、
「第8B図において、RAM85は、複数の各種の記憶領域85a〜85eおよび85sを含む。ここで、記憶領域85a,85b,85c,85dおよび85eは、それぞれ各薄形玉貸機の台番号に対応する記憶エリアを含む。記憶領域は85aは、投入金額(A)を記憶するための投入金額記憶領域として用いられる。記憶領域85bは、放出釣銭額(B)を記憶するための放出釣銭額記憶領域として用いられる。・・・記憶領域85eは、売上額(E)を記憶するための売上記憶領域として用いられる。」(第12頁右上欄13行〜同頁左下欄7行)こと、
「なお、必要に応じて、島単位各種データ(投入金額、放出釣銭額、補給釣銭額、回収金額、売上額など)を累積的に記憶するためのエリア85fおよびすべての薄形玉貸機の各種データを記憶するエリア85gなどを設けてもよい。」(第12頁左下欄15〜19行)こと、
「CPU83は、一定時間(たとえば30分または1時間など)ごとに各玉貸機10のRAM74の記憶内容を収集指令するためのタイミング信号を発生するタイマを含む。」(第13頁左下欄4〜7行)こと、
「ステップ133〜136において演算処理が行われる。すなわち、ステップ133において各薄形玉貸機10の売上額の演算が行われる。すなわち、各薄形玉貸機10の売上額(EN)の演算は、投入金額(AN)から放出釣銭額(BN)のを減産することによって求められる。この演算結果が記憶領域85eのうち今回演算した薄形玉貸機10の対応するエリアに書き込まれる。そして各台番号毎に、売上額の演算処理が行われる。
ステップ134において、島別の投入金額、放出釣銭額、補給釣銭額および売上額の累計が行われる。・・・ステップ136において、すべての薄形玉貸機10の投入金額、放出釣銭額、補給釣銭額及び売上額の合計演算が行われる。」(第15頁右下欄8行〜第16頁左上欄5行)こと、
が記載されている。
(2)刊行物2:実願昭59-20368号(実開昭60-132785号)のマイクロフィルム
刊行物2には、玉貸機におけるパチンコ玉供給装置に関し、図面とともに、
「1 パチンコ機に隣接して設置されると共にコンイ投入口に投入されたコインに対応した数のパチンコ球を外部に供給する球貸機において、該球貸機の貸球供給口からのパチンコ球が前記パチンコ機の球受皿に直接供給されるように前記球貸機の貸球供給口を前記パチンコ機の球受皿に連設することを特徴とする球貸機におけるパチンコ球供給装置。」(実用新案登録請求の範囲)であること、
「パチンコ機1,この場合、正面に遊技盤2と・・・賞球供給樋5を通って供給される賞球を貯留する下側玉受皿6とのそれぞれを備えた公知のパチンコ機1間には・・・玉貸機9が設置され、該球貸機9のコイン投入口7に特定コインを投入した状態において、パチンコ機1の上部に備えられた貸球貯溜器10からのパチンコ球が公知のカウンタ装置11を通って特定コインに対応した数だけ、前記賞球供給樋5の下端部に連設された貸球誘導パイプ12を経て前記下側球受皿6に供給される。」(第4頁4〜16行)こと、
が記載されている。
(3)刊行物3:特開昭62-213781号公報
刊行物3には、パチンコ台設備に関し、図面とともに、
「第1図および第2図において、パチンコ遊戯場内の平行する通路間には、2列に配列された複数のパチンコ台1a,1a・・・とからなるパチンコ台群1,1と、パチンコ台群1,1内に挟まれて配置された複数のパチンコ玉貸機2,2・・・とからなるパチンコ台設備が設置されている。」(第2頁右上欄8〜13行)こと、
「第3図ないし第5図を参照して、金銭投入玉出し部2aのケース3のパネル面には、千円札が使用可能であることを示すランプ6、縦方向(鉛直方向)に沿って形成された千円札投入口7、100円玉投入口8、100円玉返却ボタン9、パチンコ玉の貸出しが可能であることを示すランプ10、100円から500円分の選択ボタン11、玉出し口12、および釣銭返却口13が設けられている。ケース3の内部には、千円札投入口7から投入された紙幣を引き込んで識別検査を行う紙幣識別装置15、100円玉投入口8から投入されたコインを正常な100円玉と不良コインとに選別するコインセレクター16、正常な100円玉を釣銭払出機17のホッパー18まで案内する釣銭案内路19、釣銭案内路19から分岐するコイン回収路20、および不良コインを釣銭返却口13まで案内する返却路21が設けられ、返却路21には釣銭払出機17の払出し口からの釣銭払出路22が合流している。」(第2頁右上欄19行〜同頁左下欄16行)
「コインの投入を阻止するレバー31は、通常はソレノイド32の吸引作動により交軸30を介して上方へ引き抜かれており、コインは投入可能であって、パチンコ玉の玉切れやその他の異常の場合にソレノイド32がオフしてコインの投入が阻止される。コイン詰まり解消機構33は100円玉返却ボタン9によって詰まったコインを返却するように作動する。」(第2頁右下欄4〜11行)こと、
が記載されている。
(4)刊行物4:実願昭60-105458号(実開昭62-14571号)のマイクロフィルム
刊行物4には、自動販売機の釣銭管理装置に関し、図面とともに、
「コインの投入により、商品収納筒の最下部に位置している商品の取出しを行うことができる商品販売機において、前記商品収納筒の下方に、商品の有無に応じて変位して、突起をコイン選別機の返金穴内に出し入れする商品検知部材を設け、商品収納筒内に商品が存在しない場合には、投入されたコインをそのまま返却するようにしたことを特徴とする返金装置。」(実用新案登録請求の範囲)であること、
「商品収納筒14内に商品が入っている場合には、・・・返金レバー29の先端29aがコイン選別器から退避している。この状態でコインが正規のものであれば、前金制御機構23へ送られる。商品収納筒14内に商品がなくなった場合には、返金レバー29の先端29aがコイン選別器18内に入り込んでいるから、投入されたコインが正規のものであっても、正規でないコインと同様に商品取出し口11へ返却される。」(第7頁14行〜第8頁4行)こと、
が記載されている。
5.対比
上記刊行物1には、
(イ)第3頁右下欄5行〜第4頁左上欄3行及び第4頁左上欄19行〜同頁右上欄11行の記載からみて、「パチンコ機Pと、硬貨の投入により貸玉を供給する薄形玉貸機10とが1対1で設けられ、これらの対が列をなして島を構成している」こと、
(ロ)第7頁右下欄11〜15行、第8頁左上欄15行〜同頁右上欄2行、第12頁左上欄5〜16行、第12頁右上欄1〜9行、第12頁右上欄13〜同頁左下欄7行、第12頁左下欄15〜19行、第13頁左下欄4〜7行及び第15頁右下欄8〜第16頁左上欄5行の記載からみて、各薄形玉貸機10は、貸玉データ、釣銭データ、硬貨データ等を記憶するRAM74を備え、このRAM74に記憶されたデータは、管理装置80の中央処理装置(CPU)83に伝送され、中央処理装置(CPU)83は、各薄形玉貸機10毎の売上額、島別の売上額及びすべての薄形玉貸機10の売上額を演算し、管理するものであるから、「島における各薄形玉貸機10からの貸玉データ、釣銭データ、硬貨データ等を各薄形玉貸機毎の売上データ、島毎の売上データ及び全体の売上データとして管理する中央処理装置(CPU)83を備え、かつ各薄形玉貸機10は硬貨移送装置2への硬貨の取り込みを硬貨データとして、貸玉データ、釣銭データ等とともに中央処理装置83に出力するようにした」こと、
(ハ)第4頁右上欄12〜20行、第6頁左上欄4行〜同頁右上欄1行、第6頁右上欄20行〜同頁左下欄8行、第6頁右下欄14〜18行及び第7頁左上欄10〜13行の記載からみて、「薄形玉貸機10に対して投入された硬貨が不良硬貨でない場合、硬貨は島内に設けられたベルトコンベヤ2aから構成される集合回収通路2にもたらされて、島の端部に設けられた回収硬貨貯留装置50に搬送され、薄形玉貸機10は玉貸金額に応じた貸玉を放出し、薄形玉貸機10に対して投入された硬貨が不良硬貨の場合、硬貨は返却される」こと、
(ニ)第4頁左上欄14行〜18行及び第5頁右下欄8〜12行の記載からみて、「パチンコ機Pへ賞品玉を補給するための補給通路から貸玉が供給されず、玉切れ検出スイッチ25aが玉切れを検出した場合には、玉切れ表示ランプを表示するとともに硬貨の投入にかかわらず貸玉放出動作を禁止し、返却ボタン18により投入した硬貨を返却するように構成した」こと、
が記載されているといえるから、刊行物1には、
「パチンコ機Pと、硬貨の投入により貸玉を供給する薄形玉貸機10とが1対1で設けられ、これらの対が列をなして島を構成し、この島における各薄形玉貸機10からの貸玉データ、釣銭データ、硬貨データ等を各薄形玉貸機毎の売上データ、島毎の売上データ及び全体の売上データとして管理する中央処理装置(CPU)83を備え、薄形玉貸機10に対して投入された硬貨が不良硬貨でない場合、硬貨は島内に設けられたベルトコンベヤ2aから構成される集合回収通路2にもたらされて、島の端部に設けられた回収硬貨貯留装置50に搬送され、薄形玉貸機10は玉貸金額に応じた貸玉を放出し、薄形玉貸機10に対して投入された硬貨が不良硬貨の場合、硬貨は返却され、パチンコ機Pへ賞品玉を補給するための補給通路から貸玉が供給されず、玉切れ検出スイッチ25aが玉切れを検出した場合には、玉切れ表示ランプを表示するとともに硬貨の投入にかかわらず貸玉放出動作を禁止し、返却ボタン18により投入した硬貨を返却するように構成し、各薄形玉貸機10は硬貨移送装置2への硬貨の取り込みを硬貨データとして、貸玉データ、釣銭データ等とともに中央処理装置83に出力するようにした薄形玉貸機の管理システム」に相当する発明が記載されている。
そこで、本件発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明の「薄形玉貸機10」、「貸玉」、「島における各薄形玉貸機10からの貸玉データ、釣銭データ、硬貨データを各薄形玉貸機毎の売上データ、島毎の売上データ及び全体の売上データとして管理する中央処理装置(CPU)83」、「薄形玉貸機10に対して投入された硬貨が不良硬貨でない場合」、「ベルトコンベヤ2aから構成される集合回収通路2」、「回収硬貨貯留装置50」、「薄形玉貸機10に対して投入された硬貨が不良硬貨の場合」、「パチンコ機Pへ賞品玉を補給するための補給路」、「玉切れ検出スイッチ25a」、「薄形玉貸機の管理システム」は、それぞれ、本件発明の「玉貸機」、「パチンコ玉」、「島における各玉貸機からの情報を売上情報として管理する中央コンピュータ」、「玉貸機に対して投入された硬貨が正規の貨幣である場合」、「貨幣搬送装置」、「貨幣収納装置」、「玉貸機に対して投入された硬貨が正規の貨幣でない場合」、「パチンコ玉供給設備」、「パチンコ玉センサ」、「パチンコ遊技管理装置」に相当し、また、刊行物1に記載された薄形玉貸機10から中央処理装置(CPU)83に出力される「貸玉データ」は、「釣銭データ」、「硬貨データ」等とともに、売上額を算出するためのものであるから、刊行物1に記載された各薄形玉貸機10は、硬貨移送装置2への硬貨の取り込みを売上金額信号として中央処理装置(CPU)83に出力しているといえるから、両者は、
「パチンコ機と、硬貨の投入によりパチンコ玉を供給する玉貸機とが1対1で設けられ、これらの対が列をなして島を構成し、この島における玉貸機からの情報を売上情報として管理する中央コンピュータを備え、玉貸機10に対して投入された硬貨が正規の硬貨である場合、硬貨は島内に設けられた貨幣搬送装置により取り込まれて、島の端部に設けられた貨幣収納装置に搬送され、玉貸機は貸玉金額に応じたパチンコを供給し、玉貸機に対して投入された硬貨が不良硬貨である場合、硬貨は硬貨返却口へもたらされ、各玉貸機は搬送装置への取り込みを売上金額信号として中央コンピュータに出力するようにしたパチンコ遊技管理装置」
点で一致し、次の点で相違する。
イ.本件発明は、パチンコ玉をパチンコ機の玉受け皿に直接供給するものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、その点が明らかでない点。
ロ.本件発明は、玉貸機に対して硬貨または紙幣が投入されるようになっているのに対し、刊行物1記載の発明は、硬貨を投入するようになっている点。
ハ.本件発明は、パチンコ玉供給設備が島のパチンコ玉供給設備であるのに対し、刊行物1記載の発明のものは、その点が明らかでない点。
ニ.本件発明は、パチンコ玉が玉貸機に供給されず、パチンコ玉センサによってパチンコ玉があることが検知されない場合、貨幣の返却が行われるようにしているのに対し、刊行物1に記載された発明は、硬貨の投入にかかわらず玉切れ表示ランプを表示するとともに貸玉放出動作を禁止し、貨幣は返却ボタンの操作により返却されるようになっている点。
5.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点イについて
刊行物2に記載されたパチンコ機1と玉貸機9は、上記3.(2)で指摘した事項からみて、1対1に対応しているといえるから、刊行物2には、パチンコ機1とパチンコ機と玉貸機を1対1で設けたものにおいて、貸玉供給口からのパチンコ玉を対応するパチンコ機の玉受皿に直接供給するようにした点が記載されている。
そして、刊行物1に記載された発明も、上記したように、パチンコ機と玉貸機を1対1で設けたものであるから、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された上記事項を採用して、相違点イであげた本件発明の構成のようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
また、このように、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された事項を適用して貸玉供給口からのパチンコ玉を対応するパチンコ機の玉受皿に直接供給するようにすれば、各玉貸機からの売上金額信号は、当然、対応する個々のパチンコ機の売上として計上されることは明らかである。
(2)相違点ロについて
刊行物3には、上記3.(3)で指摘した事項からみて、パチンコの玉貸機において、硬貨及び紙幣を投入できるようにし、硬貨または紙幣が正規の貨幣である場合、貨幣を取り込み、硬貨または紙幣が正規の貨幣でない場合、貨幣を返却するようにした点が記載されており、刊行物1に記載された発明において刊行物3に記載されたように硬貨または紙幣を投入できるようにして相違点ロであげた本件発明の構成のようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
(3)相違点ハについて
パチンコ遊戯施設において、島単位に玉供給設備を設けることは、従来周知(例えば、特開昭61-154686号公報、実願昭59-75212号(実開昭60-187783号)のマイクロフィルム参照。)のことであり、刊行物1に記載された発明の玉供給設備を本件発明のように島の玉供給設備とすることは、当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。
(4)相違点ニについて
刊行物4には、上記3.(4)で指摘した事項からみて、商品販売機の返金装置において、商品収納筒内に商品が存在しない場合、投入されたコインをそのまま返却するようにした点が記載されている。
そして、刊行物1及び刊行物4に記載されたものは、供給される物品が存在しない場合、投入された硬貨を返却する手段を備えた点で技術を共通にするから、刊行物1記載の発明に刊行物4記載の上記技術を採用して、パチンコ玉センサによってパチンコ玉があることが検知されない場合貨幣を返却するようにして、上記相違点ニであげた本件発明の構成のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(5)なお、本件発明の効果も、刊行物1乃至刊行物4に記載された事項並びに上記周知技術から予測できる程度のものであって格別のものではない。
(5)したがって、本件発明は、上記周知技術を参酌すれば、上記甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-11-08 
出願番号 特願昭63-198743
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G07F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 櫻井 康平
冨岡 和人
登録日 1998-07-31 
登録番号 特許第2807732号(P2807732)
権利者 株式会社日商 池上通信機株式会社
発明の名称 パチンコ遊技管理装置  
代理人 永井 義久  
代理人 永井 義久  
代理人 高山 道夫  

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