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審決分類 審判 判定 対象物 属さない(申立て不成立) F16D
管理番号 1032362
判定請求番号 判定2000-60057  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1985-10-11 
種別 判定 
判定請求日 2000-04-28 
確定日 2000-12-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第2052652号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「弾性軸継手装置」は、特許第2052652号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第一 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及び説明書に記載する弾性軸継手装置(以下、「イ号物件」という。)が、特許第2052652号発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。
第二 本件発明
本件発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載されたとおりのものであって、その構成、目的及び効果は、以下のとおりである。

1.本件発明の構成
本件発明を構成要件に分説すると、次のようになる(以下、「構成要件A」などという。)。
A.両側面にストッパプレートを配した弾性ディスクを入力軸と出力軸との軸端面間に配置し、
B.一側のストッパプレートと入力軸および他側のストッパプレートと出力軸をそれぞれピン結合して前記ディスクを挟持した状態でこれら入、出力軸を連結すると共に、
C.各ストッパプレートと、対応する入、出力軸の端面との間に適宜の間隙を設定し、
D.かつ、入力軸と出力軸とをディスクの撓み変形により相対的に回転方向に任意の回転角で回動し得るようにした構造であって、
E.前記ストッパプレートの何れか一方の中心に支軸を突設する一方、
F.該ストッパプレートに対向する入力軸又は出力軸の端面に受容孔を形成し、
G.この受容孔に前記支軸を弾性材を介して挿入配置した
H.ことを特徴とする弾性軸継手装置

2.本件発明の目的及び効果
「2つのユニバーサルジョイントU・J、U・Jで弾性軸継手装置C・MとステアリングシャフトS・S、ステアリングギヤS・Gとを連結した場合、ステアリングシャフトS・SからステアリングギヤS・G間のトルク伝達系に2つの曲折点が生じるため、弾性軸継手装置C・Mに曲げ荷重が作用する傾向となる。この結果、弾性ディスク3が撓み変形して入力軸1と出力軸2とが倒れてピン8,9、具体的にはその外周のカラー11、12がストッパプレート4、5の切欠部6、7縁と接触し、ステアリングギヤS・G側からの振動がステアリングシャフトS・S側に伝達してしまい、所期する目的を達せられなくなってしまう不具合を生じる。」(本件特許公報3欄28〜41行参照)という課題を解決することを目的とし、
i.「曲げ荷重が作用した場合でも、入、出力軸相互の倒れを防止して入、出力軸間の金属接触を回避することができ、しかも、入、出力軸は直接的に接続するのではなく、一方のストッパプレートの中心に突設した支軸を、これと対向する入力軸又は出力軸の端面に形成した受容孔に弾性材を介して挿入することによって接続してあるので、弾性ディスクによる振動減衰作用を十分に発揮させることができて、信頼性、品質感を一段と向上し得る。」(本件特許公報6欄3〜12行参照)、
ii.「また、ストッパプレートに支軸を突設したので、弾性ディスクに透孔を穿設しなくともよいため、弾性ディスクの肉厚と外径を小さくして小型コンパクト化を図ることができるほか、支軸の長さが短くて足り強度上有利である」(特許法第64条の規定による補正【手続補正書】2参照)、という効果を奏する。

第三 イ号物件
イ号物件の構成は、判定請求書に添付された「イ号図面及びイ号発明の説明書」の記載からみて、本件発明の構成要件AないしHに対応して分説すると、次のaないしhとなるものと認められる(以下、イ号物件の構成を「構成a」などという。)。
a.両側面にストッパプレート1、2を配した弾性ディスク10を入力軸側IのユニバーサルジョイントU・Jのヨーク部材3と出力軸4との軸端面間に配置し、
b.一側のストッパプレート2とヨーク部材3及び他側のストッパプレート1と出力軸4をそれぞれボルト(ピン)5,6及びナット14,15によって結合して前記ディスク10を挟持した状態でこれらヨーク部材3と出力軸4とを連結すると共に、
c.ストッパプレート1と、ヨーク部材3とディスク10との間にボルト(ピン)5によって共締め固定されたカラー部材7の連結部位7bの端面との間、並びにストッパプレート2と、出力軸4の先端フランジ4a端面との間に間隙δ1をそれぞれ設定し、
d.かつ、ヨーク部材3と出力軸4とをディスク10の撓み変形により相対的に回転方向に任意の回転角で回動し得るようにした構造であって、
e.出力軸4に固定されたストッパプレート1の中心に支軸11を突設する一方、
f.前記ストッパプレート1に対向するカラー部材7の連結部位7bの中央に設けられた円筒状のボス部7c内に貫通孔7dを形成し、前記貫通孔7dに支軸11を弾性材13を介して挿入すると共に、
g.前記支軸11を挿入した円筒状のボス部7cをヨーク部材3の端面に形成された貫通孔12に間隔をおいて挿入配置した
h.弾性軸継手装置

第四 本件発明及びイ号物件についての当事者の主張

1.請求人の主張
請求人は、平成12年4月28日付けの判定請求書において、
(a) 「本件特許発明の場合においても、明細書(本件特許公報第4欄第24行〜第25行等)及び図面(第2図、第4図〜第6図)をみると、入力軸1をフランジlaを含む広い概念で捉え、また、出力軸2として、単純な丸棒ではないほぼ円筒状のプラケットを指称していると共に、フランジ2a(イ号発明のフランジ4aと同じ)を含む広い概念で捉えている。本件特許発明の『入力軸』,『出力軸』の概念は、一定の形状や構造などに規定されることなく、広く『入力軸側』,『出力軸側』と解釈されるべきものである。」(8頁8〜20行参照)、
(b) 「カラー部材7は、丸棒状の入力軸からの回転力は、該入力軸に連結されたヨーク部材3と各ピン5、5を介して直接的にカラー部材7に伝達されるのであるから、『入力軸側の部材』として捉えることができる。」(9頁7〜10行)、
(c) 「カラー部材7のボス部7cは、貫通孔12内に挿通されているものの、カラー部材7自体がボルト5、5によってヨーク部材3に対して強固に結合されているのであるから、ボス部7cもヨーク部材3と一体的に結合されている。したがって、『カラー部材7のボス部7c』は、本件特許発明の『入力軸側』に相当し、よって、このカラー部材7のボス部7cに設けられた『受容孔7d』が、本件特許発明の『受容孔』に相当することは明らかである。」(10頁11〜16行)旨主張している。

2.被請求人の主張
被請求人は、平成12年7月17日付けの判定答弁書において、
(a) 「本件特許公報及び意見書、補正書(出願書類及び経過)には、入力軸,出力軸を『入力軸などに関連した部材』と(拡大)解釈できるような記載は全く無く、またそのような構成を示唆する記載も無い。その入力軸、出力軸自体は従来技術のものと何ら変わらない。」(6頁7〜12行参照)
(b) 「カラー部材は、構成部材としては、金属製のストッパプレートと金属製の筒部との金属間接触を避けるための役割をなし、本件特許発明の入力軸あるいは出力軸のように常に回転力を伝える剛体の部材から構成されられるものとは、本質的に全く異なるものである。したがって、イ号物件のカラー部材は、入力軸側部材あるいは出力軸側部材とは断じて言えない。」(8頁2〜7行)、
(c) 「イ号物件では、入力軸が弾性軸継手装置の構成部材ではなく、出力軸とヨーク部材であるため、一方のストッパプレートの中心に突設した支軸によって、入、出力軸相互の倒れを防止することはできず、効果の点でも相違している。」(9頁7〜10行)、
(d) 「イ号物件のカラー部材は、本件特許発明の入力軸あるいは出力軸と全く異なる,筒部9a,9bを包持する部材である。このため、イ号物件のカラー部材の中央に設けた円筒状のボス部7c内に貫通孔7dが存在したとしても、該貫通孔7dは、本件特許発明の入力軸又は出力軸の端面に形成された孔部(受容孔)とは全く相違している。」(9頁11〜15行)、
(e) 「ヨーク部材には、入力軸側部材あるいは出力軸側部材の概念には包含されない,カラー部材のボス部が遊挿される貫通孔が設けられているのみであり、この点で両者の構成は相違している。」(10頁21〜24行)旨主張している。

第五 イ号物件が本件発明の技術的範囲に属するか否かの検討

1.対比・判断について
本件発明の構成要件とイ号物件の構成とを対比し、各構成要件について検討する。

(1) 構成要件Aについて
イ号物件の構成aの「ストッパプレート1,2」は本件発明の構成要件Aの「ストッパプレート」に相当し、以下同様に「弾性ディスク10」は「弾性ディスク」に、「出力軸4」は「出力軸」にそれぞれ相当すると認められる。
次に、本件発明における入力軸の技術的意義について検討すると、本件特許に係る特許請求の範囲の記載からみて、少なくとも、入力軸はストッパプレートとピン結合され(構成要件B参照)、出力軸に対しディスクの撓み変形により相対的に回転方向に任意の回転角で回動し得るようにされ(構成要件D参照)るものであると理解できる。これに対し、イ号物件の構成aの「入力軸側IのユニバーサルジョイントU・Jのヨーク部材3」は、ストッパプレート2とボルト(ピン)5,14によって結合され(構成b参照)、出力軸4に対しディスクの撓み変形により相対的に回転方向に任意の回転角で回動し得るようにされ(構成要件d参照)るものと解することができるから、本件発明における入力軸とイ号物件における「入力軸側IのユニバーサルジョイントU・Jのヨーク部材3」とは、技術的意義において格別の違いはない。
してみると、イ号物件の構成aの「入力軸側IのユニバーサルジョイントU・Jのヨーク部材3」は、本件発明の構成要件Aの「入力軸」に相当すると認められる。
したがって、イ号物件は、構成aを具備することにより、本件発明の構成要件Aを充足するものである。

(2) 構成要件Bについて
イ号物件の構成bの「ヨーク部材3」は、前示のとおり本件発明の構成要件Bの「入力軸」に相当し、以下同様に「一側のストッパプレート2」は「一側のストッパプレート」に、「他側のストッパプレート1」は「他側のストッパプレート」に、「出力軸4」は「出力軸」に、「ボルト(ピン)5,6及びナット14,15によって結合」は「ピン結合」に相当すると認められる。
したがって、イ号物件は、構成bを具備することにより、本件発明の構成要件Bを充足するものである。

(3) 構成要件Dについて
イ号物件の構成dの「ヨーク部材3」は、前示のとおり本件発明の構成要件Dの「入力軸」に相当し、以下同様に「出力軸4」は「出力軸」に、「ディスク10」は「ディスク」に、それぞれ相当すると認められる。
したがって、イ号物件は、構成dを具備することにより、本件発明の構成要件Dを充足するものである。

(4) 構成要件Eについて
イ号物件の構成eの「出力軸4に固定されたストッパプレート1」は、本件発明の構成要件Eの「ストッパプレートの何れか一方」に相当し、以下同様に「支軸11」は「支軸」に相当すると認められる。
したがって、イ号物件は、構成eを具備することにより、本件発明の構成要件Eを充足するものである。

(5) 構成要件Cについて
イ号物件の構成cの「ヨーク部材3」は、前示のとおり本件発明の構成要件Cの「入力軸」に相当し、以下同様に、「ストッパプレート1、2」は「各ストッパプレート」に、「出力軸4の先端フランジ4a端面」は「出力軸の端面」に、それぞれ相当すると認められるから、本件発明Cとイ号物件の構成cとは、前者が「ストッパプレートと、対応する入力軸の端面との間に適宜の間隙を設定し」たのに対し、後者が、「ストッパプレート1と、ヨーク部材3(本件発明の入力軸に相当)とディスク10との間にボルト(ピン)5によって共締め固定されたカラー部材7の連結部位7bの端面との間に間隙δ1を設定し」た点で相違するものと認められる。
しかしながら、イ号物件の構成cにおいて、ストッパプレート1とヨーク部材3(本件発明の入力軸に相当)との間に位置するカラー部材7の連結部位7bの端面との間に間隙δ1があるのであるから、ストッパプレート1とヨーク部材3(本件発明の入力軸に相当)との間には、少なくとも上記適宜の間隙があると解することができる。
したがって、カラー部材7の技術的意義をどのように解するかにかかわらず、イ号物件は、構成cを具備することにより、本件発明の構成要件Cを充足するものである。

(6) 構成要件F、Gについて
本件発明の構成要件F、Gとイ号物件の構成f、gとは、ひとまず、前者が、「ストッパプレートに対向する入力軸又は出力軸の端面に受容孔を形成し、この受容孔に前記支軸を弾性材を介して挿入配置した」のに対し、後者が、「ストッパプレート1に対向するカラー部材7の連結部位7bの中央に設けられた円筒状のボス部7c内に貫通孔7dを形成し、前記貫通孔7dに支軸11を弾性材13を介して挿入すると共に、前記支軸11を挿入した円筒状のボス部7cをヨーク部材3の端面に形成された貫通孔12に間隔をおいて挿入配置した」点で相違すると認められる。
そこで、この相違点について検討すると、イ号物件の構成fにおける「カラー部材7」は、イ号図面の記載等からみて、入力軸側Iのヨーク部材3に回転トルクが伝達され、弾性ディスク10が撓み変形され、当該カラー部材7のカラー7aがストッパプレート1に当接している状態においては、出力軸に対し回転トルクを伝達する媒体になりうるものと解することができるが、当該カラー部材7のカラー7aがストッパプレート1に当接するまでの状態においては、回転トルクは入力軸側Iのヨーク部材3、ボルト(ピン)5,5、ストッパプレート2、筒部9a,9a、弾性ディスク10、筒部9b,9b、ストッパプレート1及びボルト(ピン)6,6という系路をとって出力軸に伝達されるものと解することができるから、その限りにおいて、カラー部材7は回転トルクを伝達する媒体となりえないと解することができる。
また、本件特許に係る明細書の「弾性軸継手装置C・Mは第2〜4図に示すように、ステアリングシャフトS・Sに連結される入力軸1と、ステアリングギヤS・Gに連結される出力軸2と、これら入、出軸1,2間に介装されるゴム等の弾性材からなるディスク3及びディスク3両側面に配置されるストッパプレート4,5とから大略構成されている。入力軸1と出力軸2の軸端面にはフランジ1a,2aを一体成形してある。…ストッパプレート4と入力軸1のフランジ1aとを、一対のピン8,8により…かしめ結合する…ディスク3のピン8,9が貫通する部分にはピン8,9の締結による面圧を一定に保つためにブッシュ10を嵌挿してある」(本件特許公報2欄1〜25行)の記載によれば、ストッパプレート4と入力軸1のフランジ1aとはピン8によりかしめ結合されていることからみて、本件発明における「ピン結合」の技術的意義は、ピンとストッパプレート乃至入力軸がピンと直接的な係合関係にある固定の態様を意味するものというべきであるから、イ号物件におけるストッパプレート1と、ヨーク部材3をボルト(ピン)5によって結合することによって、結果的にヨーク部材3とディスク10との間に共締め固定されたカラー部材7は、ストッパプレート1とピン結合されているものということはできない。
また、本件特許に係る明細書の「以下、本発明の実施例を図面と共に前記従来の構成と同一部分に同一符号を付して詳述する。即ち、本発明にあっては第5,6図に示すように、両側面にストッパプレート4,5を配した弾性ディスク3を入力軸1と出力軸2の各端面フランジ1a,2a間に配置し、ストッパプレート4と入力軸1のフランジ1aとを、該フランジ1aと弾性ディスク3との間にカラー12を介在させてピン8によりディスク3とストッパプレート5の切欠部7を通して結合する一方、ストッパプレート5と出力軸2のフランジ2aとを、該フランジ2aと弾性ディスク3との間にカラー11を介在させてピン9によりディスク3とストッパプレート4の切欠部6を通して結合して、前記ディスク3を狭持した状態でこれら入、出力軸1,2を連結する……ストッパプレート4,5の切欠部6,7とカラー11,12との間のδ2を設定して入、出力軸1,2をディスク3の撓み変形により相対的に回転方向に該隙間δ2範囲の回転角で回動し得るようにした」(本件特許公報4欄20〜42行)の記載によれば、入力軸とカラー12は明らかに別体のものとして構成されており、本件発明における入力軸はカラーの機能を有さないものと解することができるが、イ号物件の構成cにおけるカラー部材7はカラー7aを一体に形成したものであって、明らかにカラーの機能を有する部材として把握することができるものである。
さらに、イ号物件において、仮にカラー部材7が本件発明における入力軸に相当するとすると、ヨーク部材3を含めて複数の入力軸が存在することとなるが、本件発明において、入力軸が複数の部品から構成されていると解さなければならない理由はない。
してみると、イ号物件におけるカラー部材7は、本件発明における入力軸と技術的意義を異にするものであると云わざるを得ない。
次に、本件発明の構成要件Fにおける「受容孔」の技術的意義は、支軸を挿入することにより、弾性軸継手装置C・Mに曲げ荷重が作用した場合でも、入、出力軸相互の倒れを防止して入、出力軸間の金属接触を回避する機能を有することを意味すると解される。ところが、イ号物件の構成fにおける「貫通孔7d」及びイ号物件の構成gにおける「ヨーク部材3の端面に形成された貫通孔12」が同様の機能を有するとは、例えば、図2に描画されているように支軸11を挿入した円筒状のボス部7cと貫通孔12との間に隙間があることからみても、直ちに認めることはできない。特に、カラー部材7が、被請求人が答弁書7頁18〜19行目において「イ号物件のカラー部材は、・・・合成樹脂製であり」と主張しているように、合成樹脂にて構成されている場合には、上記「入力軸」の機能や「受容孔」の機能を有するとは解しがたい。
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件F、Gを充足するものであるとは認められない。
なお、請求人は「本件特許発明の『入力軸』、『出力軸』の概念は、一定の形状や構造などに規定されることなく、広く『入力軸側』、『出力軸側』と解釈されるべきものである。特に受容孔が形成される構成要素F中の『入力軸の端面』や『出力軸の端面』は、『入力軸側の部材』あるいは『出力軸側の部材』と同一概念として捉えることができる。」(請求書8頁18〜22行)と主張している。しかしながら、イ号物件における「カラー部材7」が本件発明における「入力軸」と技術的意義を異にするものであることは前示のとおりであって、必ずしも入力軸側にある部材の全てが、入力軸と同等な機能を有するものと解することはできないから、上記請求人の主張は採用することはできない。

第六 結び
以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件F及びGを充足するものではないから、本件発明の技術的範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
<イ号説明書>

1.構成
イ号発明は、図1〜図3に示すように、両側面にストッパプレート1、2を配した弾性ディスク10が、入力軸側IのユニバーサルジョイントU・Jのヨーク部材3と出力軸4との軸端面間に配置されている。
また、前記一側のストッパプレート2とヨーク部材3が、該ヨーク部材3の中央ブラケット3aに固定された一対のボルト(ピン)5、5及びナット14、14によりカラー部材7及び筒部9a、9aを介して結合されている。一方、他側のストッパブレート1と出力軸4が、該出力軸4の先端フランジ4aに固定されたボルト(ピン)6、6及びナット15、15により一対のカラー8、8及び筒部9b、9bを介して結合され、これによって、前記ディスク10を挟持した状態でこれらヨーク部材3と出力軸4が連結されるようになっている。
さらに、ストッパプレート1と、前記ヨーク部材3とディスク10との間に入力軸側のピン5、5によって共締め固定されたカラー部材7の端面(連結部位7bの端面)との間、並びにストッパプレート2と、出力軸4のフランジ4a端面との間に適宜の間隙δ1、δ1がそれぞれ形成されている。
そして、ヨーク部材3と出力軸4が、ディスク10の撓み変形により相対的に回転方向に任意の回転角で回動し得るように構成されている。
また、前記出力軸4に固定されたストッパプレート1の中心に、支軸11が突設されている。一方、前記入力軸側1のカラー部材7は、ボルト5、5が挿通する一対のカラー7a,7aと、該両カラー7a,7aを連結する連結部位7bと、該連結部位7bの中央に設けられた円筒状のボス部7cとを備え、このボス部7c内に受容孔7dが形成されている。さらに、前記ボス部7cの先端部を、前記ヨーク部材3の端面に形成された貫通孔12に挿通すると共に、前記受容孔7d内に前記支軸11の先端部11aが円筒状の弾性材13を介して挿通配置されている。

2.図面の簡単な説明
図1はイ号発明の弾性軸継手装置を示す分解斜視図である。
図2は同弾性軸継手装置を組み付けた状態を示す縦断面図である。
図3は同弾性軸継手装置が自動車のステアリング機構を示す斜視図である。
 
判定日 2000-12-05 
出願番号 特願昭59-58060
審決分類 P 1 2・ 04- ZB (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大森 蔵人野村 亨  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 常盤 務
和田 雄二
登録日 1996-05-10 
登録番号 特許第2052652号(P2052652)
発明の名称 弾性軸継手装置  
代理人 志賀 富士弥  
代理人 小林 博通  
代理人 岩堀 邦男  
代理人 富岡 潔  
代理人 橋本 剛  

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