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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  H01L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1035652
異議申立番号 異議2000-73833  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-10 
確定日 2001-02-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第3031904号「複合部材とその分離方法、及びそれを利用した半導体基体の製造方法」の請求項1、2、16、17、33、35、36、50、51、68に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3031904号の請求項1、2、16、17、33、35、36、50、51、68に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3031904号(平成11年2月17日出願、(平成10年2月18日優先権主張、日本国)、平成12年2月10日設定登録)の請求項1、請求項2、請求項16、請求項17、請求項33、請求項35、請求項36、請求項50、請求項51、請求項68に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、請求項2、請求項16、請求項17、請求項33、請求項35、請求項36、請求項50、請求項51、請求項68に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 第一の基体と第二の基体が互いに貼り合わされた複合部材を、貼り合わせ面とは異なる箇所であって該複合部材の内部に形成された分離領域で複数の部材に分離する工程を含む複合部材の分離方法において、前記分離領域の機械的強度が該貼り合わせ面に沿った方向に不均一であり該分離領域の周辺部の機械的強度が局所的に弱いことを特徴とする分離方法。
【請求項2】 前記分離領域の機械的強度が貼り合わせ箇所よりも弱い請求項1に記載の分離方法。
【請求項16】 前記分離領域は、イオン打ち込みにより形成された微少気泡を得ることのできる層である請求項1に記載の分離方法。
【請求項17】 前記分離領域の周辺部のイオン注入量を中央部より大きくする請求項16に記載の分離方法。
【請求項33】 前記分離領域は、機械的強度が高い部分が前記複合部材の中心からずれている請求項1に記載の分離方法。
【請求項35】 第一の基体と第二の基体が互いに貼り合わされた複合部材を、貼り合わせ面とは異なる箇所であって該複合部材の内部に形成された分離領域で複数の部材に分離する工程を含む半導体基体の製造方法において、前記分離領域の機械的強度が該貼り合わせ面に沿った方向に不均一であり該分離領域の周辺部の機械的強度が局所的に弱いことを特徴とする半導体基体の製造方法。
【請求項36】 前記分離領域の機械的強度が前記貼り合わせ面よりも弱い請求項35に記載の半導体基体の製造方法。
【請求項50】 前記分離領域は、イオン打ち込みにより形成された微少気泡を得ることのできる層である請求項35に記載の半導体基体の製造方法。
【請求項51】 周辺部のイオン注入量を中央部より大きくする請求項50に記載の半導体基体の製造方法。
【請求項68】 第一の基体と第二の基体が互いに貼り合わされた複合部材において、貼り合わせ面とは異なる箇所であって該複合部材の内部に形成された分離領域を有し、前記分離領域の機械的強度が該貼り合わせ面に沿った方向に不均一であり、該分離領域の周辺部の機械的強度が局所的に弱いことを特徴とする複合部材。」
2.申し立ての理由の概要
特許異議申立人仲沢潤四郎は、証拠として甲第1号証 WO98/33209 、甲第2号証 甲第1号証の包袋記録、 甲第3号証 U.S.P.4727047を提出し、請求項1、請求項2、請求項16、請求項17、請求項33、請求項35、請求項36、請求項50、請求項51、請求項68に係る発明は、甲第1号証記載の発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定、或いは、甲第3号証に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2項の規定により取り消すべき旨主張している。
3.申立人が提出した甲各号証記載の発明
ア.甲第1号証 WO98/33209には、
甲第1号証の第12頁22行から第14頁5行には以下のことが開示されている(翻訳文参照)。
「 第3A図〜3D図は、本発明による方法の変形実施形態を示す。これらの図は、第2図と同様の横断面図である。
第3A図は、pをドープした単結晶シリコン基板30を示す。この基板の平面31に、MOSトランジスタ32を形成した。MOSトランジスタは、n+をドープしたソース領域33およびドレイン領域34、ゲート酸化層35、多結晶シリコンゲート36およびチャンネルゾーン37を含む。この変形実施形態では、MOSトランジスタの弱いゾーンを適性にマスキングするために、ゲート36上に樹脂層38を配置している。矢印によって示されたイオン注入により、イオン注入に対してマスクしたゾーン40を除いて、基板のブロックに微小空洞層39が形成される。こうしたマスクゾーンの幅は、ゲート36の幅に対応し、本発明による方法を実施可能な限度幅未満である。かくして、平面31と微小空洞層39との間に、薄膜を形成するための領域41を画定した。
イオン注入ステップが終了すると、樹脂層38は除去され、ゲート36の上部レベルまでSiO2酸化層42が基板30の平面31に形成され、薄膜の上面をなす平面43を得る(第3B図参照)。補剛材の役割をするプレート45は、薄膜の上面に結合される平面46を備える。こうした結合は、たとえば平面43、46を互いに接着することによって、あるいは「ウエハーボンディング(Wafer Bonding)」すなわち分子付着による接着によって得られる。
第3C図は、先に構成された複合構造体の熱処理ステップ後を示す。前述のように、熱処理ステップの結果、微小空洞層は微小ひび割れになっている。このとき、マスクゾーンの幅が前記限度幅に対して十分に狭い場合は連続破断ラインが得られ、マスクゾーンの幅が限度幅に対してそれほど狭くない場合は不連続破断線が得られる。第3C図に示したのは後者の場合であり、微小ひび割れ線48がマスクゾーン40で遮断されている。
この場合、微小ひび割れ線の両側で基板を二つの部分に分離するには、機械的な応力を加える。第3D図がこれを示しており、機械的な応力を矢印によって表している。」
イ.甲第3号証 U.S.P.4727047には、
甲第3号証の第8欄46行から第9欄20行には、以下の技術的事項が開示されている。以下、記載1と称する。
「 しかしながら、この発明に基づく劈開技術の詳しい説明をする前に、従来の劈開技術を簡単に説明しておく。膜を剥がすために従来から提案されている劈開技術では、剥離は膜とは異なる材料の中間層で生じるものと考えられている。しかしながら、中間層は基板や剥がそうとしている膜と一体になって結晶構造を形成しているので、結晶体がどの面に沿って割れるかを明確に判定することはできない。切断線は図3Aに示すように中間層20に沿って生じるものと仮定されているが、通常は図3Bに示すように迷走するので、出来上がる膜21aは均一な厚さにならない。切断面の迷走を防止するためには、分離したい領域の原子相互の結合力を非常に弱くする必要がある。
ここに述べる成長マスクがあれば、結晶内に脆い層を形成することができる。埋め込み成長マスク12aを有する構造を図4Aに示す。多くの場合、結晶に対する結合力の弱い材料で埋め込み成長マスク12aを形成することができるので、図4Bに示すように、マスクが形成されている領域を結晶にとっての空隙とみなすことができる。さらに、この領域内の原子の中には結合力の弱いものが含まれているので、これらのトンネル状の空隙を人工的に形成した劈開面と考えることができる。
図4Cに示すように引き裂く力が加えられると、結晶材料は最も脆い箇所で壊れるので、マスク12aの面で破壊が生じる。図5A、図5Bは切断面の拡大部分断面図であるが、両図に示すように、切断面はほぼリブ厚の範囲内の変動に留まっている。
成長マスクの領域では結合力が弱いので、成長した板の剥離に要する力は基板の露出領域全面に成長したリブに主に掛かる。リブ相互間の空間aのリブ幅bに対する比が大きければ、加えられる剥離力はより大幅にリブに集中する。これには多くの場合利点があるが、必要なのは裂け目を誘導する面の結晶材料を脆くすることである。」
甲第3号証の第9欄51行から第10欄23行には以下の技術的事項が開示されている。以下記載2と称する。
「 図6Aでは、再利用可能な基板10は横に成長した結晶板18を表面に有していて、図2Eに示されている位置とは反対の位置に位置している。結晶板(結晶膜)18 をエポキシなどの接着剤によりガラス板のような新しい基板 22に先ず接着する。新しい基板にはセラミック、金属、その他の材料製の板を使用することもできる。同様に別の接着剤を使用することもできる。
次に、ワックスなどの接着剤を用いて、図6Bに示すように、新しい基板22を厚い支持板24に接着する。厚い支持板24は新しい基板22よりも厚くて硬いが、この板もガラス、金属、その他で形成することができる。この板は分離の際に新しい基板22が過度に撓んでしまうことを防止するために使用するものである。
次に、図6Cに示すように、別の支持板24を最初の支持板24と同じ目的で再利用可能な基板10に接着する。
図6Dに剥離処理を示す。ねじ回しの先端でも構わない切開楔26を両支持板24の間に挿入して、静かに内部に押し込む。この作業により衝撃波が生じて、再利用可能な基板10と横に成長した結晶板18とがきれいに剥がれる。この剥がれは結晶材料の劈開面に沿って生じる。
場合によっては、剥離後に再利用可能な基板の表面が成長マスクにより部分的に覆われたままであることがある。そのような場合には、基板を支持板から剥がし、残留ワックスを除去し、残留成長マスクを除去することにより、基板の再利用が可能になる。この時点で基板に別の成長マスクを形成すれば、結晶材料製の別の板の製造にこの基板を再利用することができる。
一方、成長マスクが結晶基板に良好に接着していて、結晶膜には余り良く接着していない場合に剥離が行われると、成長マスクがほぼ完全な状態で残っている基板が得られる。この場合には、基板を直接に再利用することができる。」
4.対比、判断
請求項1、35,68に記載された発明と甲第1号証に記載の発明とを比較すると、甲第1号証には、MOSトランジスタの弱いゾーンをマスクして、イオン注入により微小空洞を基板に形成する点は記載されているが、請求項1、35,68に記載された発明の必須の構成要件である「分離領域の周辺部の機械的強度が局所的に弱いこと」が記載されていない。よって、請求項1、35、68に記載の発明は、甲第1号証に記載された発明と同一ではない。
次に、請求項1、35、68に記載された発明と甲第3号証に記載された発明とを比較すると、甲第3号証には、成長マスクの領域の結合力を弱くして劈開する劈開技術が記載されているが、請求項1、35,68に記載された発明の必須の構成要件である「分離領域の周辺部の機械的強度が局所的に弱いこと」が記載されていない。よって、甲第3号証に記載された発明は、請求項1、35、68に記載の発明と同一ではない。
請求項2、16、17、33、36、50、51は、請求項1または35を構成の一部とするものであるから、請求項1、35と同様の理由により、甲第1号証、または、甲第3号証に記載の発明と同一とは認められない。
エ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申し立ての理由によっては、本件請求項1、2、16、17、33、35、36、50、51、68に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、16、17、33、35、36、50、51、68に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-01-31 
出願番号 特願平11-39261
審決分類 P 1 652・ 113- Y (H01L)
P 1 652・ 161- Y (H01L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 岡 和久
橋本 武
登録日 2000-02-10 
登録番号 特許第3031904号(P3031904)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 複合部材とその分離方法、及びそれを利用した半導体基体の製造方法  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 山下 穣平  

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