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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1035864 |
異議申立番号 | 異議2000-72464 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-05-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-16 |
確定日 | 2001-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2995833号「薄膜半導体装置の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2995833号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第2995833号の請求項1に係る発明についての出願は、平成2年9月27日に特許出願され、平成11年10月29日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人鈴木玉緒より特許異議の申立てがなされたものである。 2.特許異議申立てについて (1)本件発明 特許第2995833号の請求項1に係る発明(以下、本件発明という)は、その特許請求の範囲に記載された下記のとおりのものである。 「請求項1 熱酸化法により形成されたゲート絶縁膜を有する薄膜半導体装置の製造方法において、 シリコン薄膜が形成された基板を酸化炉に挿入し、前記酸化炉を20℃/分以下の昇温速度で昇温させて、前記シリコン薄膜を酸化させてゲート絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。」 (2)特許異議申立理由の概要 特許異議申立人は、本件発明は、甲第1号証(特開平2-122631号公報)、甲第2号証(特開昭56-158431号公報)及び甲第3号証(特開昭63-226029号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するので、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきである旨主張している。 (3)甲号各証に記載された発明 (A)甲第1号証 「発明が解決しようとする課題 ・・・多結晶Si薄膜102中の結晶粒界や結晶粒102aの内部に微小な結晶欠陥(転位等)が多く存在するため、熱酸化の際にこれらの結晶欠陥の所が他の部分に比べて速く酸化されやすい。この異常酸化のために、第7図に示すように、多結晶Si薄膜102とゲート酸化膜103との界面の平坦性はかなり悪くなってしまう。・・・従って、本発明の目的は、多結晶半導体薄膜とゲート酸化膜との界面を平坦にすることができる薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。 課題を解決するための手段 ・・・多結晶半導体薄膜(4)を熱酸化することにより多結晶半導体薄膜(4)上にゲート酸化膜(5)を形成するようにしている。」(第2頁右上欄第10行から左下欄第16行) (B)甲第2号証 「電力用半導体素子において高濃度(・・・)の不純物を選択的に拡散するためには、少なくとも0.8μm以上の酸化膜が必要とされている。・・・厚い酸化膜を有するシリコン(Si)ウエハーには第4図に示すように数多くの結晶欠陥が存在することが実験により見いだされた。この結晶欠陥が存在すると電気特性及び歩留まりに悪影響を及ぼす原因となっていた。・・・ シリコンウエハーが炉の均熱帯に到達したら、100℃〜300℃/hrの加熱速度で炉自体の温度を1100℃になるまで加熱する。・・・雰囲気をN2からO2に切換えることによりウエハー表面に緻密な酸化膜が形成される。」(第1頁右下欄第3行〜第2頁右上欄第11行) (C)甲第3号証 「本発明は、酸化処理によって形成した酸化膜とシリコン表面の間に自然酸化膜が存在するという問題点を除去し、シリコン表面へ直接清浄な酸化膜を形成することを目的とする。・・・シリコン基板を配置した反応炉内へ還元性ガスを導入し、加熱することによってシリコン基板上の自然酸化膜を除去する工程と、前記反応炉内へ酸化性ガスを導入し、加熱することによってシリコン基板上へ酸化膜を形成する工程を有するようにしたものである。」(第2頁左下欄第8行〜第19行) 「反応炉の温度を徐々に、例えば毎分5℃の割合で昇温し、・・・そして、再び、反応炉の温度を850℃〜950℃へ前述のように徐々に昇温し、シリコン基板13の酸化を行う。」(第3頁右上欄第3行〜左下欄第3行) (4)異議申立人の主張 甲第2号証には、昇温速度が〜300℃/hr(〜5℃/分)で酸化膜を形成し、結晶欠陥を低減する発明が記載されている。甲第3号証には、昇温速度が5℃/分である発明が記載されている。甲第1号証に記載の薄膜トランジスタの発明に、甲第2,3号証に記載の発明を組み合わせて、本願発明をなすことは容易である旨主張している。 (5)判断 甲第2号証には、シリコンウエハを用いた半導体基板の拡散用酸化膜マスクの形成方法、及び、その昇温速度が〜300℃/hr(〜5℃/分)である発明が記載されている。甲第3号証には、シリコンウエハを用いた半導体基板の清浄な酸化膜を形成する発明、及び、その昇温速度が5℃/分である発明が記載されている。 甲第2、3号証には、熱酸化により酸化膜を形成する点、昇温速度が5℃/分である発明が記載されているが、甲第2、3号証とも、シリコンウエハに熱酸化膜を形成しており、甲第1号証のガラス基板等の上に薄膜半導体層を形成し、酸化する薄膜トランジスタの発明とは、技術の属する分野が相違する。 また、甲第2号証に記載の発明は、拡散用の酸化膜マスクの製造法であって、ゲート酸化膜とは相違し、ウエハに拡散マスク用の厚い酸化膜を形成したときに生じる欠陥を防止する発明と、甲第1号証に記載の薄膜トランジスタのゲート絶縁膜を平坦化する発明とを組み合わせる動機もない。さらに、甲第3号証に記載のシリコンウエハに清浄な酸化膜を形成するMOSトランジスタの発明を、甲第1号証に記載の薄膜トランジスタの発明に適用する動機もない。しかも、甲第1号証に記載の発明と甲第2及び第3号証に記載の発明とを組み合わせたことによる本件発明の効果の予測性も認められない。よって、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載の発明に基づいて本件発明を当業者が容易に成し得たとは認められない。 以上のとおりであるから特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 3.むすび したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-03-13 |
出願番号 | 特願平2-257653 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 河本 充雄 |
特許庁審判長 |
内野 春喜 |
特許庁審判官 |
岡 和久 浅野 清 |
登録日 | 1999-10-29 |
登録番号 | 特許第2995833号(P2995833) |
権利者 | セイコーエプソン株式会社 |
発明の名称 | 薄膜半導体装置の製造方法 |