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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) B01D
管理番号 1038932
審判番号 審判1999-35491  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-08 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-09-09 
確定日 2001-05-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第2751091号発明「切削液の濾過装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2751091号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.本件の経緯の概要
本件特許第2751091号についての手続きの経緯の概要は以下のとおりである。
平成6年1月13日 特許出願
平成10年2月27日 特許権の設定登録
平成11年9月9日 無効審判請求
平成11年12月8日 審判請求理由第二補充書
平成12年3月6日 答弁書提出・訂正請求(被請求人)
平成12年4月4日 上申書及び手続補正書の提出(請求人)
平成12年6月9日 答弁書の提出(被請求人)
平成12年7月10日付け 書面審理の通知
平成12年7月10日付け 弁ぱく指令
平成12年9月26日 弁ぱく書の提出(請求人)
平成12年12月14日付け 訂正拒絶理由の通知
平成13年1月11日 意見書・手続補正者の提出(被請求人)

II.請求人の請求の趣旨及び理由の概要
請求人(株式会社シスト)は、「特許2751091号はこれを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第5号証を提示し、概ね、以下の1ないし4の理由により、本件特許発明は、本件出願の前に頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同条同項の規定に違反して特許されたものであり、よって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号により無効にすべきものであると主張している。
1.本件特許発明の構成のうち、
(1)濾過槽の底板の一方を立上がり傾斜板とし、その先端を切粉放擲部とし、その切粉放擲部に駆動装置を配し、その駆動装置に回動コンベアを回転ドラムとまたがって懸架し、これによって、濾過槽に配置した回転濾過ドラムと回動コンベアを同調させて回転、回動されることは、甲第1、2、3号証に記載されており、本件出願前に公知である。
(2)濾過槽に形成する濾過済切削液の流出口を濾過槽の両側に設けることは甲第2、3号証に記載されており、本件出願前に公知である。
(3)濾過槽内に投入した切削油中の切粉を沈殿させて、切削油と切粉を分離すると共に、該沈殿した切粉をコンベアの外面に取付けた掻き取り部材により、上記切粉放擲部まで搬送することは、甲第1、2、3号証に記載されており、本件出願前に公知である。
(4)濾過装置に配する回転ドラムの内側に、回転濾過ドラムに張設したフィルタを洗滌する逆洗装置を設けることは、甲第1、2、3号証に記載されており、本件出願前に公知である。

2.本件特許発明のうち、甲第1〜3号証に記載されていないのは、
a.濾過槽の高さを、切削機械のベッドの下部で切削液が落下する部に配置 できる高さとし、
b.濾過槽の延設境界部辺に回転濾過ドラムを配設する、
という構成だけである。

3.上記a、bの構成について
(1)濾過層の高さを、切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置できる高さとし、濾過槽の延設境界部辺に回転濾過ドラムを配設することは、甲第4、5号証に記載されている。
(2)甲第1〜3に記載された切削油の濾過装置と、甲第4、5証に記載された切削油の濾過装置とは、「一方側に立上が傾斜板である延設部を有する濾過槽の構成」、「逆洗用の噴射ノズルを有する濾過部材(回転濾過ドラム)の構成」及び「延設部の上端部に設けられた排出部まで、掻き取り部材を有するコンベアにより、切粉を搬送する構成」で共通しており、以下のi及びiiの点で相違しているにすぎないが、これらの点については、甲第1、2、3号証に記載されており、単に設計の問題である。
i.濾過部材(回転濾過ドラム)が、甲第4、5号証に記載された発明では、 コンベアの上方に配置され、コンベアとは逆方向に別駆動するように配置 されているが、本件特許発明では、濾過部材にコンベアが当接し、両者を 同調させて同方向に回動するように配置されている。
ii.コンベアに取付けた掻き取り部材が、甲第4、5号証に記載された発明 では、濾過部材の外周面に付着した切粉を掻き取るものであるのに対し、 本件特許発明の掻き取り部材は、そのようには構成されていない。

4.よって、本件特許発明は、甲第1、2、3号証に記載された発明と、甲第4、5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

III.被請求人の主張の概要
これに対し、被請求人(株式会社ジェイピーシー)は、平成12年3月6日付で訂正請求をするとともに、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、概ね、以下の1ないし4の理由により、本件発明は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものではないと、反論している。
1.訂正後の発明について
訂正後の発明(以下、「本件発明」という。)は、濾過部材の左,右には外周の上下においてコンベアに当接し駆動される対称形のロータが設けられているが、この左,右のロータにはそれぞれ中空軸が一体的に取り付けられていて、濾過部材はこの左,右の中空軸を介して濾過槽の延設境界部辺の両側に回転自在に装着されている。そして、本件発明では、濾過された切削液は、この濾過部材の左,右両側の中空軸から排出するようになっている。
従って、本件発明は、濾過された切削液を濾過部材の左,右両側から効率良く排出するようにしたので、濾過部材を小型に形成することができ、また、小型に形成したので、濾過槽の延設境界部辺に内装して、コンベアによって駆動することができる。

2.切削機械のベッドの下部で切削液が落下する部に配置できる高さの濾過槽とする点について
(1)甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明では、「切削機械のベッドの下部で切削液が落下する部に配置できる高さの濾過槽」については、記載がない。
(2)この点について、請求人は、甲第4号証及び甲第5号証に記載されていると主張しているが、甲第4号証記載の発明においては、エンドレスベルトの上側走行ベルトが、クーラント入り口から円筒フィルタの方に走行し、このベルトの外周面に突設しているスクレーバにより円筒フィルタ外周の切粉を掻き落とすと共に、円筒フィルタの内側からエアノズルによって吹き飛ばされた切粉を上記ベルトで受け取り、上記掻き落とした切粉と一緒にエンドレスべルトの上側走行ベルトで斜め上に搬送する構造になっている。
甲第5号証記載の発明においても、ヒンジコンベアは、その上側走行帯が、回転ドラムフィルタの方に走行し、このコンベアの外周面に突設されている垂直部分(perpendicular portions)が、内側のノズルによって回転ドラムフィルタの外周面から吹き飛ばされた切粉を受け取り、ヒンジコンベアの上側走行帯で斜め上方に搬送する構造になっている。
(3)これらに対し、本件発明では、チェンコンベアの上側走行帯は、濾過部材から濾過槽の鎖車の方へ走行していて、このコンベアの外周に設けられている掻き取り部材は、濾過槽内の底に沈殿している切粉を濾過部材の方へ搬送し、そのままチェンコンベアの下側走行帯で濾過槽の延設部に沿って斜め上方へ搬送するようになっている。
(4)従って、甲第4、5号証記載の発明ではベルト(コンベア)による濾過槽内の切粉の除去形態が本件発明とは全く異なっていることに鑑みれば、甲第4、5号証の発明からベルト(コンベア)が切削機械などの下側に延設されているという構成のみを採り上げ、甲第1、3号証の発明に適用しても本件発明を示唆する構成にはならない。

3.ロータが、外周の上,下部において前記コンベアに当接することにより駆動される点について
(1)「外周の上,下部において前記コンベアに当接することにより駆動されるロータ」については、甲第1乃至5号証のいずれにも記載がない。
(2)これに対し、「甲第4、5号証に記載された『濾過槽を切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置する』技術を適用した場合、掻き取り部材を有するコンベアは濾過槽全体に亘って設けられることは当然であるから、必然的にコンベアは、ロータの外周の上,下で当接することとなる。」という指摘は、論理が飛躍している。
(3)甲第4号証記載の発明においては、円筒フィルタはエンドレスベルトの上側走行ベルトの上方に配置しなければ、円筒フィルタの外周面に付着した切粉を掻き取ることができない。同様に、甲第4号証記載の発明においても、回転ドラムフィルタは、ヒンジコンベア上方に配置しなければ、回転ドラムフィルタの外周面から吹き飛ばされた切粉を受け取ることができない。
(4)したがって、甲第4、5号証に「濾過槽を切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置する」構成と、「エンドレスベルトが濾過槽全体に亘って設けられている」構成が開示されているからといって、必然的にコンベアは、ロータの外周の上,下で当接することとなるというものではない。

4.左、右の回転軸の両方を中空軸とすることにより、左,右の中空軸から切削液を排出するようにした点について
(1)請求人は、左,右の回転軸の両方を中空軸とすることにより、左,右の中空軸から切削液を排出するようにした点は、甲第2、3号証に記載されているとしているが、甲第2号証の「濾過装置」においては、少なくとも一方の側板であるから、環状開口軸を回転ドラムの両側に備える構成も含まれるとしても、具体的な構成は全く開示されていない。同様に、甲第3号証記載の発明に、回転濾過ドラムの両側板から切削油を排出できる構成が含まれるとしても、その具体的な構成は全く開示されていない。
(2)甲第2号証記載の発明も、甲第3号証記載の発明も、ドラムの外周の上,下においてコンベアが当接されたものではなく、また、本件発明の「切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置する濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取付けたコンベアを内装して該コンベアを前記モータにより駆動するようにした」構成はない。
(3)中空軸及びロータを、左,右対称形とするのが最も自然であるとしているが、甲第2、3号証記載のロータは、片持ち軸による支持であるため、もとより、左右対称の形態はとれず、左,右対称とすることがこの技術分野において最も自然であるとはいえない。
(4)従って、このような甲第2、3号証における回転ドラムが「左、右の回転軸の両方を中空軸にする」と仮定してみても、甲第2、3号証には、「左,右の中空軸から濾過された切削液を排出する」という構成は明示されていないので、本件発明の構成を示唆する構成にはならない。
IV.訂正の適否について
1.訂正拒絶理由の概要
当審における訂正拒絶理由の概要は、下記のとおりである。

平成12年3月6日付訂正請求による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正、あるいは誤記の訂正を目的とする訂正の、いずれにも該当しない。
よって、上記訂正は、特許法第134条第2項ただし書きの規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

2.平成13年1月11日付手続補正について
上記訂正拒絶理由に対し、被請求人は、平成13年1月11日付で、手続補正書を提出している。
しかし、該手続補正書による補正は、平成12年3月6日付の訂正請求書に添付した全文訂正明細書だけを補正するものであって、同訂正請求書を補正するものではないから、訂正事項は、依然として、平成12年3月6日付け提出の訂正請求書に記載されたとおりである。
また、仮に上記補正により、訂正事項が、補正された全文訂正書に記載されたとおりに補正されたとしても、該補正は、平成12年3月6日付の訂正請求書に記載された訂正事項に、新たに、特許請求の範囲の請求項1に「配置できる濾過槽」とあるのを「配置できる高さの濾過槽」とする訂正、及び同「中空軸から濾過された切削液を排出する」とあるのを「左,右の中空軸から濾過された切削液を排出する」とする訂正を追加するものであるから、該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものである。よって、該補正は、特許法第120条の4第3項で準用する、同法第131条第2項の規定によって認めることができないものである。
以上のとおり、いずれにしても、本件訂正請求による訂正事項は、平成12年3月6日付訂正請求書に記載されたとおりである。

3.訂正事項
平成12年3月6日付の訂正請求の趣旨は、「特許第2751091号の明細書を訂正明細書の通り訂正することを求める。」というものであり、訂正請求書に添付された訂正明細書、及び訂正請求書の「訂正の要旨」の項の記載によれば、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1の、
「切削機械のベッドの下部で切削液が落下する部に配置できる高さの濾過槽の一端部側を斜め上方に延設してその上端部にモータを装置すると共に、前記濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取り付けたコンベアを内装して該コンベアを前記モーターにより駆動するようにする一方、前記コンベヤにより駆動されるロータをそれと一体的に取り付けた左,右の中空軸を介して前記濾過槽の延設境界部辺の左,右両側に回転自在に装着し、前記ロータの外周に濾布を張着して濾過部材を形成すると共に、該濾過部材の前記濾布を内側から逆洗する噴射ノズルを配設し、且つ前記濾化槽の延設上端部側にコンベアの掻き取り部材により搬送された切り粉の排出部を形成し、同じく延設境界辺両側に支持させた左,右の中空軸から濾過された切削液を排出するようにしたことを特徴とする切削液の濾過装置。」
という記載を、以下のとおりに訂正するものである。
「切削機械のベッドの下部で切削液が落下する部に配置する濾過槽の一端部側を斜め上方に延設してその上端部にモータを装置すると共に、前記濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取り付けたコンベアを内装して該コンベアを前記モーターにより駆動するようにする一方、外周の上,下部において前記コンベヤが当接することにより駆動される左,右の対称形のロータをそれらと一体的に取り付けた左,右の中空軸を介して前記濾過槽の延設境界部辺の両側に回転自在に装着し、前記左,右のロータ間の外周に濾布を張着して濾過部材を形成すると共に、該濾過部材の前記濾布を内側から逆洗する噴射ノズルを配設し、且つ前記濾化槽の延設上端部側にコンベアの掻き取り部材により搬送された切り粉の排出部を形成し、同じく延設境界辺両側に支持させた中空軸から濾過された切削液を排出するようにしたことを特徴とする切削液の濾過装置。」
なお、下線部は、本審決において、便宜上付したものである。

4.当審における判断
上記訂正は、便宜上付した下線部における対比から明らかなように、
「配置できる高さの濾過槽」を「配置する濾過槽」と訂正し、「左右の中空軸から濾過された切削液を排出する」を「中空軸から濾過された切削液を排出する」と訂正することを包含するものである。
そこで、これらの訂正について検討するに、前者の訂正は、濾過槽の高さについて規定する記載を、単に「配置する」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正には該当しない。また、不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正、あるいは誤記の訂正を目的とする訂正にも該当しないことはいうまでもない。
また、後者の訂正は、「左,右の」という記載を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正には該当しない。また、不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正、あるいは誤記の訂正を目的とする訂正にも該当しないことはいうまでもない。

5.むすび
よって、上記訂正は、特許法第134条第2項ただし書きの規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

V.無効理由について
1.本件発明
本件特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された以下のとおりである。
「(A)切削機械のベッドの下部で切削液が落下する部に配置できる高さの濾 過槽の
(B)一端部側を斜め上方に延設してその上端部にモータを装着すると共に、(C)前記濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取付けたコンベアを内装して該コンベアを前記モータにより駆動するようにする一方、
(D)前記コンベアにより駆動されるロータをそれと一体的に取付けた左,右の中空軸を介して前記濾過槽の延設境界部辺の左,右両側に回転自在に装着し、
(E)前記ロータの外周に瀘布を張着して濾過部材を形成すると共に、該濾過部材の内部に前記瀘布を内部から逆洗する噴射ノズルを配設し、
(F)且つ前記濾過槽の延設上端部側にコンベアの掻き取り部材により搬送された切り粉の排出部を形成し、
(G)同じく延設境界部辺両側に支持させた左,右の中空軸から濾過された切削液を排出するようにしたことを特徴とする切削液の濾過装置。」
なお、(A)乃至(G)の符号は、本審決において、便宜上付与したものである。

2.甲号各証に記載された発明
甲第1号証:
(1-1)「両側に無端帯を懸架するプレートを配し、且つ上記両プレート間に形成される胴周にフィルターを巻き付け一方のプレートの側板の中心に丸棒回転軸を、他方のプレートの側板に環状回転軸を固定して成る濾過ドラムを、
切削油投入口を有し、底面を断面円弧状に形成し、その一方を傾斜した立ち上り板として延長し、その端部を固形物投棄部とした固形物搬送板を構成する切削油投入槽に、濾過ドラムのフィルタを巻き付けた胴周面が、該槽の底面並びに固形物搬送板面に対向させて配置するよう丸棒回転軸を該槽の一方の側板側に設けた軸受をもって、又、環状回転軸を該槽の他方の側板に設けた環状回転軸受をもって回転自在に軸架して、上記濾過ドラムの環状回転軸と、これを軸架する切削油投入槽の環状回転軸受によって開放部を形成し、該側板側の開放部側に受槽を配し、該濾過ドラムの上方で、且つ固形物投棄部よりの個所に、濾過ドラムの軸心と、軸心を平行に配したホイールを軸架し、
ホイールと濾過ドラムのプレート間には、複数の掻取板をそれぞれ間隔をあけて取付片によって平行に配列した無端帯を懸架し、駆動源からの駆動力をホイール或いは濾過ドラムにうけてこれを回転し、その回転を上記無端帯に伝達し無端帯を回動するように構成したことを特徴とする濾過装置」(特許請求の範囲)
(1-2)「上記濾過ドラム2の側板の一方の側板2Cの中心には、棒型回転軸2Dが配されている。他方の側板2Eには、側板2Eの直径より小径の円形のくりぬき口を設け、該くりぬき口には、環状回転軸2Fが嵌着されている。」(第4欄第20〜24行)
(1-3)「その軸架手段は、上記濾過ドラム2の棒状回転軸2Dを、切削油投入槽1の一方の側板に設けられた軸受3Aに、又環状回転軸2Fは、切削油投入槽1の他方の側板に設けられた環状軸受3Bによって軸架されている。従って、環状回転軸2F及びこれに軸架する環状軸受3B側の側板は開放部10が形成された型となる。」(第4欄第28〜34行)
(1-4)「上記濾過ドラム2の上方であって、且つ搬送板2Cの投棄部1Dに片寄った側に濾過ドラム2の中心軸に平行してチェーンドライブホイールを軸架する軸受が側板2C、2Eに設けられ、・・・、濾過ドラムの回転手段は、本実施例ではチェーンドライブホイール5を強制駆動させるよう、これに駆動源であるモータ6を配し、この回転をチェーンにより濾過ドラムに伝達し、濾過ドラムを回転するように図示してある」(第4欄下から第5行〜第5欄第5行)
(1-5)「掻取板7Aを取付片7Bによって取付けたチェーン7が平行に、且つ、該取付板7Aが底面1Bと搬送板1Cの面を摺動するよう張設されているので、該掻取板7が底面1Bに沈殿した切粉を掻き寄せ、これを搬送板1Cの面を掻き上げ、搬送板1Cの上端の投棄部1Dまで搬送し、これを投棄部1Dから投棄する。」(第6欄第10〜16行)
(1-6)「濾過ドラムは2は回転しているので、濾過ドラム2のフィルターは切粉によって目詰をおこす心配は少ない。しかし、その心配は皆ではないので、開放部10から噴射ノズル11をのぞませ、これから、空気、液体をフィルター内側から吹き付け、フィルターの目詰を排除することも考えられる。」(第6欄第23〜26行)
と記載されている。

甲第2号証:
(2-1)「一方に廃液投入口を設け、他方に底板面を傾斜状に立上らせ、その先端を切粉放擲部とする傾斜板を配し、その底板面から傾斜面先端の放擲部にかけて、駆動力の伝達をうけて回動する切粉を移行する切粉移行機構を回動自在に配して成る処理槽の側板に、少なくとも一方の側板に環状開口軸を備え且つ胴体に濾布を巻きつけ、該胴体を構成する濾布外側に両側板に掛け渡した切粉掬上板を複数本平行に配して成る駆動力をうけて回転する回転ドラムを、前記環状開口軸は処理槽の側板に設けた環状回転軸受に前記傾斜板方向に回転力を与えて軸架し、回転ドラムの側板の環状開口軸と処理槽の環状開口軸受とで形成される開口部には、処理槽に隣接して回収槽を設けたことを特徴とする濾過装置」(実用新案登録請求の範囲)
(2-2)「上記回転ドラム3は、処理槽10の両側板10Bに設けた軸受に回動自在に軸架されている。当然のことながら、回転ドラム3の側板に設けられた軸が、環状開口軸2に形成されているときは、処理槽10の側板10Bに設ける軸受は環状回転軸受10Cであって、回転ドラム3の環状開口軸2と処理槽10の側板10Bの環状開口軸受10Cによって構成される開口外側20は処理槽に隣接して配された濾過液回収槽11にのぞませてある。従って、回転ドラム3を両側板に環状開口軸を配置した構成としたときは、処理槽の両側に、それぞれ回転ドラムの環状開口軸2と濾過槽の環状開口軸受10Cで形成される開口外側20をのぞませて濾過液回収槽を隣接して配置する構成となる。」(明細書第8頁第3〜16行)
(2-3)「回転ドラムの回転と切粉移行機構の回動とは、共通の駆動源をもって回転、回動してもよく、別個の駆動源でそれぞれ回転、回動させてもよい。」(明細書第9頁第6〜9行)
(2-4)「回転ドラム3の胴体を構成する濾布4は内側から噴射ノズル14をのぞませてあるので、該ノズル14から液体或は気体を噴射することによって濾布の外側に付着した切粉等を排除する。」(明細書第9頁末行〜第10頁第5行)
(2-5)「処理槽の底板面に沈殿した切粉は、前記した切粉移行機構13の回動によって該機構を構成するチェーンに懸架されたスクレバーによって掻き寄せられながら傾斜板面を通って放擲部に移行され、そこから外部に放擲される。」(明細書第10頁第6〜10行)
と記載されている。

甲第3号証:
(3-1)「胴周にフィルターを張り回らし、少なくとも一方の側板に、濾過済切削油を流出する環状流出口を配して構成した回転濾過ドラムを、切粉の混じった切削油を投入する投入口と、底板に切粉を沈澱させ、切削油と分離した切粉を放擲する放擲部を配し、少なくとも一方の側板には、回転濾過ドラムの環状流出口をのぞませて回転でき且つ、その環伏流出口から側板外に切削油を流出できるように構成した投入槽の内側に、前記回転濾過ドラムの環伏流出口を投入槽側板にのぞませ且つ、該回転濾過ドラムの環状流出口からは回転濾過ドラムのフィルター内側からエアー或は液体を噴射する装置をのぞませて配するとともに、投入槽には投入槽の底板に沈澱した切粉を、掻き寄せながら放榔部先端まで移行させる掻き寄せ板を配したコンベアを配し、回転濾過ドラムとコンベアは、単一或は別個の動力源からの動力伝達をうけて駆動するように配して構成した濾過装置において、該濾過装置の投入槽の内側に、両側板の中少なくとも一方を大口径環状側板とし、該側板の口径には短円筒を濾過済切削油の流出口を兼用する回転筒として固定し、両側板を骨組の頂部に太めの丸型棒を配して構成した骨核体を組込んで固定し、その骨核体にフィルターを張設固定して構成した回転濾過ドラムの濾過済切削油の流出口を投入槽の側板からのぞませて回転自在に配したことを特徴とする濾過装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(3-2)「回転ドラム4の胴周に張り回らすフィルタ1には、切粉が付着すると、目詰をおこすので、回転濾過ドラム4内側から、エアー或いは液体を噴射して切粉を吹き飛して取除くよう噴射口12を配している。」(段落番号【0006】)
と記載されている。

甲第4号証:
(4-1)「工作機械のクーラントに混入する切粉を分離する浄化装置であって、切粉を含むクーラントが収容されるタンクと、上記タンク内のクーラントに下部が浸漬されて回転駆動される円筒フィルタと、上記円筒フィルタ外周の切粉を除去するスクレバーと、上記円筒フィルタ内部に圧縮空気を供給するエア供給手段とを備えた工作機械用クーラントの浄化装置」
(4-2)「各種工作機械でワークを加工する時に用いるクーラント(coolant、ワーク冷却液)から切粉を分離して浄化するような工作機械用クーラントの浄化装置に関する。」(明細書第1頁下から第3行〜第2頁第1行)
(4-3)「この考案によれば、上述のタンク内において円筒フィルタ外部から円筒フィルタ内部に流動するクーラントは、この円筒フィルタを通過する時に、同フィルタにより切粉が除去されると共に、このフィルタの濾孔に詰った切粉は前述のスクレーバで掻き落され、しかも円筒フィルタ内部に位置して圧縮空気を噴出する上述のエア供給手段により同フィルタの内部から外部に向けて吹き飛ばされるので、円筒フィルタの目詰りを防止することができる効果がある。」(明細書第3頁第6〜15行)
(4-4)「図面は工作機械用クーラントの浄化装置を示し、第1図、第2図において、この浄化装置は上方に向けて開口したクーラント入口1を有するクーラントタンク2を設け、このタンク2内にクーラントCを貯留すべく構成している。」(明細書第3頁下から第2行〜第4頁第3行)
(4-5)「上述のクーラント2内には3本の駆動ローラ3,4,5と、1本のテンションローラ6とを軸架し、上述の各駆動ローラ3,4,5間にエンドレスベルト7を張架すると共に、このベルト7の外周面には、後述する円筒フィルタ16外周の切粉を掻き落とすスクレーバ8・・・を突設している。」(明細書第4頁第4〜9行)
(4-6)「フィルタ軸15は軸受23.24で可回動に軸架していて、・・・前述のエンドレスベルト7の駆動方向に対して上述の円筒フィルタ16を逆方向に回転駆動すべく構成している。」(明細書第5頁第11〜19行)
(4-7)「フィルタ本体17の一側を保持するリング状の保持板19と、固定筒状体29に取付けたガイド板36との間には、円筒フィルタ16内に突出し、かつクーラントC内に浸漬する浄化クーラント出口形成部材37を介設し、この部材37により第1図に示す如き半月状の浄化クーラント出口38を形成している。」
と記載され、第1図には、
(4-8)クーラントタンク2の一端部を斜め上方に延設してその上端部にベルト駆動源としてのモータ11を装着すること
(4-9)円筒フィルタは、該延設部とクーラントタンクの底面の境界部辺に装着されていること、
が図示されている。

甲第5号証:
(5-1)「第1図は、本発明の改良されたクラント液浄化装置(fluid coolant cleaning system)全体を示す断面図であり、工作機械(machine tool)の下方部分が10で示され、改良されたコンベア装置が11で示されている。」と記載され(第4欄第49〜54行参照)、第1図には、コンベヤ装置11が工作機械10のベットの下部に配置されていることが図示されており、また、
(5-2)第1図には、工作機械からのクーラントあるいはその他の流体は、工作機械の下部の開口部12から排出され、浄化装置に流れ落ちることが図示されており、さらに、
(5-3)図1、4には、ヒンジコンベア(15)は、その上側走行帯が、回転ドラムフィルタ(24)と接すると共に、逆方向に回転し、該ヒンジコンベアの外周面に突設されている垂直部分(perpendicular portions)(53)が、該回転ドラムフィルタの内側に配置されたノズルによって回転ドラムフィルタの外周面から吹き飛ばされた切粉を受け取り、ヒンジコンベアの上側走行帯で斜め上方に設けられた排出部まで搬送する構造になっていることが図示され、
(5-4)第1図には、コンベア装置の一端部を斜め上方に延設するとともに、該延設した部分の境界部辺に、回転ドラムフィルタを装着することが図示されてる。

3.対比
本件発明と、甲第1号証に記載された発明とを対比する。
上記摘記事項から明らかなように、甲第1号証に記載された「切削油投入槽」、「駆動源」、「掻取板」、「無端帯」、「プレート」、「環状回転軸」、「フィルター」、「濾過ドラム」及び「固形物投棄部」は、それぞれ本件発明における「濾過槽」、「モータ」、「掻き取り部材」、「コンベヤ」、「ロータ」、「中空軸」、「濾布」、「濾過部材」及び「切粉の排出部」に相当する。
そして、甲第1号証には、「断面円弧状に形成された底面の一方を傾斜した立上り板として延長し、その端部を固形物投棄部とした」こと、「チェーンに取り付けられた掻取板7Aによって、切粉が固形物投棄部まで搬送される」(上記(1-5)参照)こと、「固形物廃棄部よりの個所に軸架したホイールに、駆動源であるモーター6を配したこと」(上記(1-4)参照)が記載されているから、両者は、「(B)濾過槽の一端部側を斜め上方に延設してその上端部にモータを装置すると共に、」、「(C)前記濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取付けたコンベアを内装して該コンベアを前記モータにより駆動するように」し、「(F)且つ延設上端部側にコンベアの掻き取り部材によって搬送された切り粉の排出部を形成」している点で一致している。
また、甲第1号証には、「回転ドラム4の胴周に張り回らすフィルタ1の目詰を排除するために、噴射ノズル11から、空気、液体をフィルター内側から吹き付ける」(上記(1-6)参照)ことが記載されているから、両者は、「(E)前記ロータの外周に濾布を張着して濾過部材を形成すると共に、該濾過部材の内部に前記濾布を内側から逆洗する噴射ノズルを配設する」点でも一致している。
さらに、甲第1号証に記載された発明では、ホイールと濾過ドラムのプレート(ロータ)の間には無端帯(コンベア)が懸架されており、該無端帯により駆動力をプレートに伝達している。また、摘記事項(1-3)から明らかなように、該号証に記載された発明においては、濾過ドラム2(濾過部材)の棒状回転軸2Dを、切削油投入槽1(濾過槽)の一方の側板に設けられた軸受3Aに、又環状回転軸2Fは、切削油投入槽1(濾過槽)の他方の側板に設けられた環状軸受3Bによって軸架されており、すなわち、「棒状回転軸2D」と「環状回転軸2F」により左右の側板に回転自在に装着されている。よって、「回転軸」が「棒状」か「環状」かの違いはあるものの、本件発明と甲第1号証に記載された発明とでは、「(D´)コンベアにより駆動されるロータをそれと一体的に取付けた左、右の軸を介して濾過槽の左、右両側に回転自在に装着している」点でも一致している。
してみれば、両者は
「(B)濾過槽の一端部側を斜め上方に延設してその上端部にモータを装置すると共に、
(C)前記濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取付けたコンベアを内装して該コンベアを前記モータにより駆動するようにする一方、
(D´)前記コンベヤにより駆動されるロータをそれと一体的に取り付けた左,右の軸を介して前記濾過槽の左、右両側に回転自在に装着し、
(E)前記ロータ間の外周に濾布を張着して濾過部材を形成すると共に、該濾過部材の前記濾布を内部から逆洗する噴射ノズルを配設し、
(F)且つ前記濾過槽の延設上端部側にコンベアの掻き取り部材により搬送された切り粉の排出部を形成し、
(G´)中空軸から濾過された切削液を排出するようにした切削液の濾過装置。」である点で一致しており、以下の点で相違している。
相違点イ:
濾過槽について、本件発明では「(A)切削機械のベッドの下部で切削液が落下する部に配置できる高さの濾過槽」としているのに対し、甲第1号証には、切削油投入槽(「濾過槽」に相当)の側面に濾過液投入口があることが図示されているだけで、濾過装置と切削機械との位置関係については明記されていない点。
相違点ロ:
ロータの装着を、本件発明では、「延設境界部辺」に装着するとしているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、断面円弧状に形成された底面及び固体物搬送板(本件発明の「延設部」に相当)に対向させて配置されており、濾過槽の底面形状が断面円弧状であるため、本件発明のような「延設境界部」が存在しない点。
相違点ハ:
本件発明では、左、右の軸の両方を中空軸とすることで、「左,右の中空軸から濾過された切削液を排出する」ようにしたものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、左,右の軸のいずれか一方のみを環状回転軸(中空軸)としたものであって、「左、右いずれかの一方の中空軸からのみ濾過された切削液を排出」するものである点。

4.相違点についての判断
(1)相違点イについて
甲第4号証には、「工作機械のクーラントに混入する切粉を分離する浄化装置であって、切粉を含むクーラントが収容されるタンクと、上記タンク内のクーラントに下部が浸漬されて回転駆動される円筒フィルタと、上記円筒フィルタ外周の切粉を除去するスクレバーと、上記円筒フィルタ内部に圧縮空気を供給するエア供給手段とを備えた工作機械用クーラントの浄化装置」が記載されており、該号証記載の「工作機械」、「クラント」、「クラントが収容されるタンク」、「エンドレスベルト」、「スクレーバ」、「円筒フィルタ」及び「浄化装置」は、それぞれ本件発明及び甲第1号証記載の発明における「切削機械」、「切削油」、「濾過槽」、「コンベア」、「掻き取り部材」、「濾過部材」及び「濾過装置」に相当するものであって、濾過槽内に設けた濾過部材によって、工作機械から排出される切粉を含む液体から切粉を濾過する装置である点で、本件発明及び甲第1号証における共通している。
そして、該号証には、「第1図、第2図において、この浄化装置は上方に向けて開口したクーラント入口1を有するクーラントタンク2を設け、このタンク2内にクーラントCを貯留すべく構成している。」(上記(4-4)参照))と記載されており、該号証記載の浄化装置においては、クラントが収容されるタンク(濾過槽)の高さが、クーラント(切削液)が落下する部に配置できる高さなっていることは自明である。なお、該号証工作機械と浄化装置の位置関係については、具体的な記載はないが、以下に記述する甲第5号証に記載されているように、上方に向けて開口したクラント入口1を有している以上、浄化装置(濾過装置)が、工作機械(切削機械)のべットの下部に設けられていることは、自明である。
また、甲第5号証には、甲第4号証記載の浄化装置に類似した、工作機械用クラント液浄化装置が記載されており、その第1図には、浄化装置が、工作機械10のベットの下部に置かれていること、及びクーラント或いはその他の流体が工作機械10の下部にある開口部12から排出され、浄化装置に落下するように構成されていることが、図面の説明と共に記載されている。
してみれば、甲第1号証に記載された切削油の濾過装置において、濾過槽の高さを、切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置できる高さとすることは、甲第4、5号証の記載に基づいて、当業者が容易になしうることと認められる。
(2)相違点ロについて、
甲第1号証に記載された濾過装置は、濾過槽の底面の一端部を上方に延設した延設部を有する濾過装置である。
一方、前項(1)で述べた甲第4号証記載のクーラント投入口をクーラントタンクの上方に設けた濾過装置には、甲第1号証記載の濾過装置と同様に、クーラントタンク(「濾過槽」に相当)の一端部を斜め上方に延設した延設部があり、該延設部とクーラントタンクの底面の境界部辺に、円筒フィルタ(「濾過部材」に相当)を装着することが、第1図に図示されている。
同様に、同甲第5号証記載の、上方にクーラント投入口を設けた濾過装置には、コンベア装置の一端部を斜め上方に延設するとともに、該延設した部分の境界部辺に、本件発明の「濾過部材」に相当する回転ドラムフィルタを装着することが、第1図に図示されてる。
すなわち、甲第4、5号証に記載されているように、切削液の投入口を上方に設け、濾過槽の高さを、切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置できる高さとすると同時に、該濾過槽の底面の一端部を上方に延設した延設部を設けた濾過装置においては、濾過部材を、延設境界部辺に装着することは、当然になされる設計的事項であると認められる。
してみれば、甲第1号証記載に記載された、濾過槽の底面の一端部を上方に延設した延設部を有する濾過装置において、前項(1)に詳述した如く、甲第4、5号証の記載に基づいて、該濾過槽を切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置できる高さとした場合には、濾過槽内に設ける濾過部材を、濾過槽の延設境界部辺に装着することは、当然の設計的事項である。

被請求人は、甲第1号証に記載された発明に、甲第4、5号証に記載された技術手段を適用する点について、甲第4、5号証に記載された発明のベルト(コンベア)による濾過槽内の切粉の除去形態が、本件発明とは全く異なっていることに鑑みれば、甲第4、5号証の発明からベルト(コンベア)が切削機械などの下側に延設されているという構成のみを採り上げ、甲第1、3号証の発明に適用しても本件発明を示唆する構成にはならない旨(前記2(1)〜(4)参照)、主張しているので、以下に検討する。
被請求人が主張するように、本件発明と甲第4号証記載の発明とは、(i)コンベア(エンドレスベルト)の走行方向が、後者では、濾過部材(円筒フィルタ)の回転方向と逆であるのに対し、前者では、濾過部材の回転方向と同じである点、及び、(ii)コンベア(エンドレスベルト)に設けられた掻き取り部材(スクレーバ)が、後者では円筒フィルタ外周の切粉を掻き落とすものであるのに対し、本件発明では、円筒フィルタは、円筒フィルタ外周の切粉を掻き落とすものではなく、槽内の底に沈殿している切粉を掻き取るだけのものである点、で相違している。
しかしながら、甲第1号証ないし甲第3号証には、チェーン等の無端帯(コンベア)により濾過ドラム(濾過部材)が回転する構成となっていること、及び、掻取板(掻き取り部材)が底面に沈殿した切粉を掻き寄ることが記載されており、上記相違点はいずれも本件出願前に既に公知である。
すなわち、甲第1号証に記載された発明と甲第4号証に記載された発明とを対比すると、両者はいずれも、濾過槽内に設けた濾過部材によって、工作機械から排出される切粉を含む液体から切粉を濾過する装置であって、
(a)一端部側を斜め上方に延設してその上端部にモータを装着したものであ る点。
(b)濾過槽内部に、外面に掻き取り部材を取付けたコンベアを内装して、該 コンベアを前記モータにより駆動するようにした点。
(c)該コンベアの掻き取り部材により切粉を、前記延設上端部に搬送してい る点。
(d)濾布を張着した濾過部材を、それと一体的に取り付けた左,右の軸を介 して前記濾過槽の左、右両側に回転自在に装着している点。
(e)濾過部材の濾布を内部から逆洗する噴射ノズルを配設している点。
で共通しており、
甲第1号証記載の濾過装置は、濾過部材がコンベアにより駆動されて、コンベアの走行方向と同方向に回転するものであるため、掻き取り部材は濾過部材の外周とは接しておらず、濾過部材外周の切粉を掻き落とすものではないのに対し、甲第4号証記載の濾過装置は、濾過部材はコンベアによって駆動されるものではなく、コンベアの走行方向とは逆方向に回転し、濾過部材外周の切粉を掻き落とすものである点
で相違しているにすぎない。
また、甲第1号証に記載された発明と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、甲第4号証との対比の場合と同様に、上記(a)ないし(e)の点で共通しており、両者の相違点も、甲第4号証との対比の場合と同じである。
そして、上記相違点は、濾過槽の高さとは、直接関連するものではないことは自明であるから、該相違点は、甲第4号証及び甲第5号証に記載された、切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置できる高さとするという技術手段を、甲第1号証に記載された発明に適用するに際し、何ら阻害要因となるものではない。
よって、前述のとおり、相違点イ、ロについては、当業者が、甲第4、5号証の記載に基づいて容易になし得る技術的事項にすぎず、格別な創意を要したものとは認められない。

(3)相違点ハについて
甲第2号証には、「一方に廃液投入口を設け、他方に底板面を傾斜状に立上らせ、その先端を切粉放擲部とする傾斜板を配し、その底板面から傾斜面先端の放擲部にかけて、駆動力の伝達をうけて回動する切粉を移行する切粉移行機構を回動自在に配して成る処理槽の側板に、少なくとも一方の側板に環状開口軸を備え且つ胴体に濾布を巻きつけ、該胴体を構成する濾布外側に両側板に掛け渡した切粉掬上板を複数本平行に配して成る駆動力をうけて回転する回転ドラムを、前記環状開口軸は処理槽の側板に設けた環状回転軸受に前記傾斜板方向に回転力を与えて軸架し、回転ドラムの側板の環状開口軸と処理槽の環状開口軸受とで形成される開口部には、処理槽に隣接して回収槽を設けたことを特徴とする濾過装置」 において、「上記回転ドラムは、処理槽の両側板に設けた軸受に回動自在に軸架されている。当然のことながら、回転ドラムの側板に設けられた軸が、環状開口軸に形成されているときは、処理槽の側板に設ける軸受は環状回転軸受であって、回転ドラム3の環状開口軸と処理槽の側板の環状開口軸受によって構成される開口外側は処理槽に隣接して配された濾過液回収槽にのぞませてある。従って、回転ドラムを両側板に環状開口軸を配置した構成としたときは、処理槽の両側に、それぞれ回転ドラムの環状開口軸と濾過槽の環状開口軸受で形成される開口外側をのぞませて濾過液回収槽を隣接して配置する構成となる。」と記載されている。
該号証に記載された「環状回転軸」は、相違点ロにおける、中空軸に相当するものであるから、甲第2号証には、左、右の回転軸を中空軸として、左、右の中空軸から濾過された切削液を排出するようにすることが記載されているといえる。
そして、甲第2号証に記載された「廃液投入口」、「傾斜板」、「切粉放擲部」、「切粉移行機構」、「処理槽」、「環状開口軸」、「環状開口軸受」、「濾布」、「切粉掬上板」、「回転ドラム」及び「回収槽」は、それぞれ甲第1号証に記載された「切削油投入口」、「立上り板」、「切粉投棄部」、「無端帯」、「切削油投入槽」、「環状回転軸」、「環状軸受」、「フィルタ」、「掻取板」、「濾過ドラム」及び「受槽」に相当するものであるから、両者は、
・両側に無端帯を懸架するプレートを配し、且つ上記両プレート間に形成さ れる胴周にフィルターを巻き付け、一方のプレートの側板の中心に回転軸 を固定して成る濾過ドラムを有している点、
・切削油投入口を有し、底面を断面円弧状に形成し、その一方を傾斜した立 ち上り板として延長し、その端部を固形物投棄部とした固形物搬送板を構 成する切削油投入槽を有する点、
・濾過ドラムのフィルタを巻き付けた胴周面が、該槽の底面並びに固形物搬 送板面に対向させて配置するよう両側の回転軸を該槽の両方の側板側に設 けた軸受をもって、回転自在に軸架してある点、
・濾過ドラムの回転軸の一方を環状回転軸とし、これを軸架する軸受を環状 回転軸受とし、該環状回転軸と環状回転軸受槽によって開放部を形成し、 該側板側の開放部側に受槽を配する点、
・複数の掻取板をそれぞれ間隔をあけて取付片によって平行に配列した無端 帯を懸架する点、
で共通しており、両者は、
・甲第1号証記載の装置においては、濾過ドラムの回転を無端帯に伝達し、 無端帯を回動するようにしているのに対し、甲第2号証記載の装置では、 無端帯の回動は、濾過ドラムの回転によるものではない点、
で相違しているにすぎない。
してみれば、甲第1号証に記載された装置において、一方の回転軸のみが中空軸となっており、該一方の中空軸からのみ濾過された切削液を排出するようになっている構成に換えて、左、右の回転軸を中空転軸として、左、右の中空軸から濾過された切削液を排出するようにすることは、当業者が、甲第2号証の記載に基づき容易になしうることであり、格別な創意を要するものとは認められない。

相違点ハについて、被請求人は、
・甲第2号証記載の発明に、回転濾過ドラムの両側板から切削油を排出でき る構成が含まれるとしても、その具体的な構成は全く開示されておらず、 また、該号証記載のロータは、片持ち軸による支持であるため、左右対称 の形態はとれない。
・該号証には、本件発明の「切削機械のベットの下部で切削液が落下する部 に配置する濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取付けたコ ンベアを内装して該コンベアを前記モータにより駆動するようにした」構 成はない。
・従って、このような甲第2号証における回転ドラムが「左、右の回転軸の 両方を中空軸にする」と仮定してみても、甲第2号証には、「左,右の中 空軸から濾過された切削液を排出する」という構成は明示されていないの で、本件発明の構成を示唆する構成にはならない。
旨主張しているので、以下に検討する。
甲第2号証には、「回転ドラムを両側板に環状開口軸を配置した構成としたときは、処理槽の両側に、それぞれ回転ドラムの環状開口軸と濾過槽の環状開口軸受で形成される開口外側をのぞませて濾過液回収槽を隣接して配置する構成となる。」と記載されており、該記載が、「左、右の回転軸を中空転軸として、左、右の中空軸から濾過された切削液を排出する」ようにする構成を明記していることは、前述のとおりである。そして、甲第1号証に記載された装置では、甲第3号証に図示された装置と同様に、一方の回転軸を
丸棒回転軸とし、他方の回転軸を環状回転軸とするとともに、一方の側板側に設けた軸受けと、他方の側板側に設けた環状回転軸受により、濾過ドラムを回転自在に軸架するものであるから、被請求人が主張するような、片持ち軸による支持ではないことも明らかである。
また、被請求人が記載されていないと主張する「切削機械のベットの下部で切削液が落下する部に配置する濾過槽内に外面に掻き取り部材を適宜間隔を置いて取付けたコンベアを内装して該コンベアを前記モータにより駆動するようにした」構成は、前述の相違点イに該当する構成であり、相違点イについては、甲第4号証及び甲第5号証に記載されており、これらの記載に基づいて容易になしうることは、既に述べたとおりである。
そして、相違点イは、濾過槽の高さに関するものであり、相違点ハは、切削液の排出に関するものであって、両相違点イ及びハが、相互に密接不可分な関係にあるもの、或いは、両相違点を組み合わせることによって、予期せざる相乗的な効果を奏しているものとは認められない。
また、甲第1号証に記載された装置と甲第2号証に記載された装置とは、前述したとおり、濾過ドラムの回転により無端帯が回動するか否かの点だけで相違しているにすぎない。
してみれば、甲第2号証に相違点イに該当する記載が存在しないからといって、甲第2号証に記載された「左、右の回転軸を中空軸として、左、右の中空軸から濾過された切削液を排出する」ようにする構成を、甲第1号証に記載された装置に適用することが容易ではないとする理由とはならない。
以上のとおり、前記被請求人の主張はいずれも採用できない。

5.まとめ
よって、本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

VII.結び
以上のとおり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法第123条の規定により、本件特許は無効にすべきものである。
また、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、審判費用は、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2001-03-15 
結審通知日 2001-03-22 
審決日 2001-04-05 
出願番号 特願平6-14085
審決分類 P 1 112・ 121- ZB (B01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大黒 浩之  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 野田 直人
西村 和美
登録日 1998-02-27 
登録番号 特許第2751091号(P2751091)
発明の名称 切削液の濾過装置  
代理人 樋口 盛之助  
代理人 小泉 良邦  
代理人 志村 正和  
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