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審決分類 審判 査定不服 1項1号公知 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1040914
審判番号 審判1999-4802  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-27 
確定日 2001-07-04 
事件の表示 平成 8年特許願第262590号「金車装置の支持装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 4月10日出願公開、特開平10- 94125]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年9月10日にされた特許出願であって、その請求項1〜6に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】架渉された支持線或は既設ケーブルを電柱に係留させた係留部を中央にして該電柱の両側に跨がるように架設され、前記支持線或は既設ケーブルに係着する係着部を有した支持体と、
この支持体に着脱自在に連結支持される金車装置と、を有し、
この金車装置には第1嵌合体が設けられるとともに、同第1嵌合体近傍には牽引索条が接続され、
前記支持体側には該牽引索条が通係し、かつ前記第1嵌合体と着脱可能に嵌合ロックする第2嵌合体が設けられ、
前記牽引索条の牽引操作により前記第1、第2嵌合体を嵌合ロックさせつつ前記支持体に金車装置を吊支させてなる金車装置の支持装置。」

2.原査定の理由の概要
出願人が出願と同時に提出した新規性の喪失の例外証明書提出書に添付された発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書である書面には、当該書面を発表した日を特定する記載が無く、本出願は特許法30条1項の規定を満たしておらず、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができない。
また、本出願前に前記書面により、その発明の内容が公然知られたものとなったことは、出願人も認めるように明らかであり、よって、本願請求項1〜6に係る発明は、29条1項1号に該当し、特許を受けることができない。

3.新規性喪失の例外規定の適用について
平成11年法律41号による改正前の特許法30条1項は、「特許を受ける権利を有する者が試験を行い、刊行物に発表し、又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより、29条1項各号の一に該当するに至つた発明について、その該当するに至つた日から6月以内にその者が特許出願をしたときは、その発明は、同項各号の一に該当するに至らなかつたものとみなす。」と規定し、同4項で、「特許出願に係る発明について第1項又は前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、その特許出願に係る発明が1項又は前項に規定する発明であることを証明する書面を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。」と規定している。
本願においては、願書に特許法30条1項の規定の適用を受けようとする特許出願と記載し、特許出願と同時に証明書を添付した新規性の喪失の例外証明書提出書を提出して、刊行物に発表したことによる新規性の喪失の例外の適用を受けようとするものと認められる。
特許法30条1項の「刊行物に発表する」場合における 「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要のある事実は、(i)刊行物名、(ii)発行年月日 、(iii)発行所 、(iv)該当頁 、(v)著者名ないし発表者名、(vi)発表された発明の内容であると認められるところ、出願人が提出した証明書は、1枚目左上欄に「株式会社エコモ」と記載され、「問い合わせ先」として「安全品質管理部技術開発室」及びその住所及び電話番号が記載され、その下に「架空ケーブル架渉地上アクセス工法」と記載された書面と、上段に「作業手順書 地上アクセス工法(架空ケーブル架渉)」、下段に「株式会社 エコモ」と記載された表紙を有する全5頁の書面とからなることが認められ、「架空ケーブル架渉地上アクセス工法」と題する書面については、出願人である発行者がその問い合わせ先とともに記載され、また商品の定価が記載されていることを考慮すると、一般の作業者ないし需要者に対して頒布される刊行物であると認められるが、当該刊行物の発行年月日が記載されていない。
また、「作業手順書」についても、その発行年月日の記載はない。
証明する書面により該刊行物の発行年月日が特定されなければ、新規性喪失に該当するに至った日が特定されないことになり、「29条1項各号の一に該当するに至つた発明について、その該当するに至つた日から6月以内にその者が特許出願をしたとき」を条件とする30条1項の規定に適合しないことは明らかであり、本願発明は新規性の喪失の例外規定の適用される発明とはいえない。
出願人は、出願から30日以上を経過した後の平成10年10月20日付け意見書に添付した、印刷所アークコピーによる印刷、納品の事実の証明書(甲第2号証)、当該印刷物について150枚のカラー印刷物の納品書写し(甲第3号証)、西日本システム建設株式会社の社員3名の連名による、当該刊行物が平成8年7月19日の社団法人電信電話工事協会主催のエンジニアリングコンペにおいて配布されたことを証明する証明書(甲第4号証)、西部電気工業株式会社の社員による、当該刊行物が平成8年7月19日の社団法人電信電話工事協会主催のエンジニアリングコンペにおいて配布されたことを証明する証明書(甲第5号証)を、また平成11年3月27日付け審判請求書に添付した「光ケーブル架渉エンジニアリングコンペ出展概要書」(平成8年7月19日、アクセス設備技術開発連絡会発行。)(甲第6号証)を提出することにより、証明書書面が平成8年7月19日に茨城県つくば市において行われた社団法人電信電話工事協会主催のエンジニアリングコンペに出席した電信電話工事協会会員に対して配布された刊行物であり、したがって、刊行物に発表した日は平成8年7月19日であることを証明しようとしている。
しかしながら、刊行物に発表した日を特定するために出願人が提出した証明書等は、「特許出願に係る発明が1項又は前項に規定する発明であることを証明する書面を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。」と規定する30条4項に違反しているもので、採用できない。

審判請求人は、特許法30条4項の「その特許出願に係る発明が第1項又は前項に規定する発明であることを証明する書面を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。」という規定は、「本願に係る発明が第1項又は前項に規定する発明であることを証明するどのような書面の提出をも一律に一切、特許出願の日から30日より後においては認めないという法の趣旨ではないと主張している。
しかしながら、刊行物に発表して新規性を喪失するに至った発明について、30条1項に該当する発明であることを証明しようとすれば、少なくとも当該刊行物の「刊行物名」、「発行日」、「発表者名」、「発表された発明の内容」が示されるべきと認められるが、出願人が提出した新規性喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書には、発行日の記載がないだけではなく、発行日を推認し得る記載もなく、30条4項に規定する「証明する書面」とは到底認めることはできない。
以上のとおりであるから、本出願は、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができない。

4.引用刊行物
原審の拒絶の理由で引用された、出願人が出願と同時に提出した、発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書の一部である「架空ケーブル架渉地上アクセス工法」と題する書面は、印刷所アークコピーによる印刷、納品の事実の証明書(甲第2号証)、当該印刷物についてのカラー印刷物の納品書の写し(甲第3号証)により、平成8年7月19日以前に印刷されたこと、「光ケーブル架渉エンジニアリングコンペ出展概要書」(平成8年7月19日、アクセス設備技術開発連絡会発行。)(甲第6号証)15頁には、株式会社エコモの架空ケーブル架渉地上アクセス工法が記載され、その記載内容及び写真によると、上記書面に記載されたものと同一のものが記載されていること、西日本システム建設株式会社の社員3名の連名による証明書(甲第4号証)、西部電気工業株式会社の社員による証明書(甲第5号証)は、引用刊行物が平成8年7月19日に茨城県つくば市において行われた社団法人電信電話工事協会主催のエンジニアリングコンペに出席した電信電話工事協会会員に対して配布されたことを証明するものであることとを考慮すると、上記書面は平成8年7月19日に頒布された刊行物であることが認められ、該書面に記載された発明は同日に公然知られた発明となったと認められる。
そして、上記書面(以下、「引用刊行物」という。)には、
「1.概要
架空ケーブル架渉工程の検電作業と金車取付作業を地上より行う工法です。」(1頁左欄2〜3行)、
「(3)ECOMO-3号金車吊金具
曲柱に使用する4号金車及びカーブガイド
230を地上より操作棹で取付るための吊
金具です。
ア.A吊金具とB吊金具で構成されています。
イ.先ず、A吊金具を操作棹で取付、次に、
B吊り金具に4号金車及びカーブガイド
230をセットして、ロープで引上げ
結合します。」(1頁右欄15〜23行)、
「3.機能・特徴
既設の架渉物を利用することにより架空ケーブル新設の牽引作業までを無昇柱で施工できます。」(1頁右欄28〜30行)と記載され、さらに1頁右欄下図には、ECOMO-3号金車吊金具と4号金車の写真が載っており、3号金車吊金具はA吊金具とB吊金具とから成り、B吊金具は、その下部に4号金車が、その上部にロープが取り付けられ、A吊金具はB吊金具から伸びたロープを貫通する部分と、2個の鈎状の引っ掛け部分を備えていることが認められる。
また、引用刊行物発明のA吊金具とB吊金具は、B吊金具のロープで引き上げて結合されるものであるから、当業者にとってはロックされた状態で嵌合して結合するものであることは明らかである。
さらに、引用刊行物発明の3号金車吊り金具は、既設の架渉物に4号金車を引っ掛けるためのものであり、4号金車は通常、曲柱、曲線柱やケーブルのカーブ点に用いられるものであることを考慮すると、既設の架渉物を電柱に係留させた係留部分を中央にして、2個の鈎状の引っ掛け部分を掛けることは、当業者にとっては明らかである。
よって、引用刊行物には、
「既設の架渉物を電柱に係留させた係留部分を中央にして該電柱の両側に跨るように架設され、前記架渉物に係着する引っ掛け部分を有したA吊り金具と、
このA吊り金具に着脱自在に連結支持される金車装置と、を有し、
この金車装置にはB吊り金具が設けられるとともに、同B吊り金具と着脱可能に嵌合ロックするロープを貫通する部分が設けられ、
前記牽引索条の牽引作用により前記B吊り金具、ロープを貫通する部分を嵌合ロックさせつつ前記A吊り金具に金車装置を吊支させてなる金車装置の支持装置。」が記載されている。

ちなみに、同じく発明の新規性の喪失の例外の規定を適用を受けるための証明書の一部をなす「作業手順書」には、
「3.曲柱における4号金車及び、小型屈曲部
用金車(カーブガイド230)の取付
(1)直接取付ける。
(2)地上より取付ける。
ア.ECOMO3号-B金車吊金具に
4号金車をセットして、道綱を通
す。
イ.ECOMO3号-A金車吊金具に
B吊金具のロープをセットして、
操作棹で吊線または、ケーブルに
掛ける。
ウ.B吊金具のロープをカチンと音が
するまで引く。
エ.4号金車にセットした道綱でガイ
ドロープを通す。」(3-21頁作業要領欄1〜15行)と、
記載され、3-21頁解説欄上図及び下図にも、ECOMO-3号金車吊金具、4号金車、電柱及びケーブルの図が載っており、ケーブルが電柱に係留され、A吊金具の2個の引っ掛け部分が前記係留部分を中央にしてケーブルに引っかかっているものと認められる。

5.本願発明と引用例発明との対比・判断
引用刊行物に記載された発明(以下、「引用刊行物発明」という。)の「既設の架渉物」、「係留部分」、「引っ掛け部分」、「A吊金具」、「B吊金具」、「ロープ」、「ロープを貫通する部分」は、本願発明の「支持線或は既設ケーブル」、「係留部」、「係着部」、「支持体」、「第1嵌合体」、「牽引索条」、「第2嵌合体」に相当する。
したがって、本願発明1と引用刊行物発明とは、
「架渉された支持線或は既設ケーブルを電柱に係留させた係留部を中央にして該電柱の両側に跨がるように架設され、前記支持線或は既設ケーブルに係着する係着部を有した支持体と、
この支持体に着脱自在に連結支持される金車装置と、を有し、
この金車装置には第1嵌合体が設けられるとともに、同第1嵌合体近傍には牽引索条が接続され、
前記支持体側には該牽引索条が通係し、かつ前記第1嵌合体と着脱可能に嵌合ロックする第2嵌合体が設けられ、
前記牽引索条の牽引操作により前記第1、第2嵌合体を嵌合ロックさせつつ前記支持体に金車装置を吊支させてなる金車装置の支持装置。」で一致して、同一である。

このように、本願発明1は、引用刊行物に示されているものであって、本願発明1は引用刊行物の発表により公然知られた発明となったものである。
なお、本願発明1は、特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用刊行物に記載されている発明と同一であるから、特許法29条1項3号にも該当する。

7.むすび
以上のことから、本願請求項1に係る発明は、特許出願前に日本国内において公然知られた発明と認められ、特許法29条1項1号に該当し特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-04-04 
結審通知日 2001-04-17 
審決日 2001-05-07 
出願番号 特願平8-262590
審決分類 P 1 8・ 111- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 橋場 健治
住田 秀弘
発明の名称 金車装置の支持装置  
代理人 穴見 健策  
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