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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1041204
異議申立番号 異議2000-72897  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-31 
確定日 2001-01-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3003572号「パチンコ機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3003572号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3003572号の請求項1に係る発明は、平成8年4月15日に特許出願され、平成11年11月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、町田彬より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成12年12月12日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(2-1)訂正の内容
(a)特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。
「飛込口と別に設けた第1排出部および第2排出部と、前記第1排出部に遊技球を導く第1通路と、前記第2排出部に遊技球を導く第2通路とを有する遊技部材が、遊技領域に設置されたパチンコ機であって、
前記遊技部材に、開口部が設けられており、その開口部から特別図柄表示部が視認可能になっているとともに、開口部上方に、前記飛込口が設けられており、開口部の左右側方の前後に、それぞれ、前記第1通路、前記第2通路が設けられており、開口部の下方の前後に、それぞれ、第1ステージ、第2ステージが設けられており、かつ、それらの第1ステージおよび第2ステージに、それぞれ、前記第1排出部、前記第2排出部が設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設されており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており、
飛込口から遊技部材の内部に入り込み第1通路を通過した遊技球を、第1ステージに現出した後に第1排出部から排出し、飛込口から遊技部材の内部に入り込み第2通路を通過した遊技球を、第2ステージに現出した後に第2排出部を介して第1排出部から排出するとともに、
遊技部材の第2排出部を介して第1排出部から遊技球が排出された場合には、第2排出部を介さず第1排出部から遊技球が排出された場合よりも高い確率で入賞領域に入賞し、かつ、
遊技球が入賞領域に入賞した場合に、特別図柄表示部に表示された図柄が変動するとともに、変動後に所定の図柄が表示された場合に、大当たりが生起することを特徴とするパチンコ機。」
(b)【0005】第10〜11行の「前記第2排出部が設けられており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており」を「前記第2排出部が設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設されており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており」と訂正する。

(2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「第2ステージが設けられた遊技部材を設置したパチンコ機」を、下位概念である「第2ステージが設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設された遊技部材を設置したパチンコ機」に限定するものである。「遊技部材に、第2ステージが設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設されていること」は、特許明細書(特許公報第3頁第5欄第37〜41行)、図1、図3〜図5の記載に基づくものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項(b)は、明細書の【0003】「課題を解決するための手段」の記載を、上記訂正事項(a)により、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載の整合を図るものであり、不明りょうな記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正事項(a)、(b)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2-3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申し立て
(3-1)申立ての理由の概要
申立人は、本件の請求項1に係る発明が、その出願前に頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項3号の規定に該当し、又、その出願前に頒布された甲第1号証に甲第3号証(必要があれば甲第4号証)を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきと主張している。

(3-2)本件の請求項1に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(3-3)刊行物
(3-3-1)甲第1号証(特開平7-88227号公報)には次のことが記載されている。
【0023】
前記ワープ機構4は、中央部に、前記特別可変表示装置3が臨まされるとともに、前面が開放された凹部9aが形成された環状の枠体9を備え、この枠体9の外周部には、全周に亙ってフランジ9bが形成されており、このフランジ9bが、前記遊技盤1の前面に当接させられるとともに、ビス等の固定手段によって固定されることにより、前記枠体9が遊技盤1へ取り付けられるようになっている。
【0024】
また、前記凹部9aの両側には、図2に示すように、前面部と外側部、および、上下面部が閉塞され、かつ、内側部が前記凹部9aへ連通させられた切り換え室10が形成されており、これらの各切り換え室10の上面には、その内外部を連通し、遊技球Bが取り込まれる誘導口11がそれぞれ形成されているとともに、その下方には、前記誘導口11と連通させられた遊技球通過孔12aが形成された遊技球検出センサー12が装着されている。
この遊技球検出センサー12は、前記切り換え室10の上壁で、前記誘導口11の両側部に平行に垂設された一対の支持片9c間に、挟持されるようにして取り付けられている。
【0025】
さらに、前記両切り換え室10および前記凹部9aの底面は、図1ないし図4に示すように、相互に連続した形状となされているとともに、中央部が下方となるように傾斜させられ、かつ、前後に2分割された構成となっている。
そして、前記2分割された底面は、前方部分が後方部分よりも下方となるように2段形状となされ、本実施例においては、前方側の低い部分が第1誘導路13となされ、また、後方側の高い部分が第2誘導路14となされている。
【0026】
これらの各誘導路13・14の中間部、すなわち、最も低い部分には、図1〜図4に示すように、各誘導路13・14からさらに低い排出路が15・16がそれぞれ形成されており、これらの排出路15・16は、その中心が、図3および図4に詳述するように、前記特定入賞口5の開口部の中心とほぼ一致するように形成されている。
【0046】
一方、前記ワープ機構4内に取り込まれた遊技球Bは、流路変更手段18の振り分け皿21が第1位置に保持されている場合(以下、この状態を第1状態と称す)には、図4に示すように、誘導口11から、直接第1誘導路13の上流端へ落下させられて、同図に矢印で示すように、この第1誘導路13上を転動しつつ、この第1誘導路13の中央部に形成されている幅広の排出路15へ導かれ、この排出路15からその下方に設けられている特定入賞口5へ向けて流下させられる。
【0047】
ここで、第1誘導路13に形成されている排出路15は、前述のように幅広に形成されていること、また、ワープ機構4内に取り込まれる遊技球Bが、誘導口11内に入る際の勢いや回転の違いによって、第1誘導路13を転動する遊技球Bの勢いが異なることにより、この遊技球Bは、排出路15内を、図4に矢印で示すように、その幅方向にばらついた流下経路をとることとなる。
そして、遊技球Bの勢いが適当であって、この遊技球Bが、前記排出路15に形成されている誘導溝17に入り込むと、遊技球Bがこの誘導溝17によって特別入賞口5の直上へ流下させられ、ほぼ確実にこの特別入賞口5へ入賞させられるが、これ以外の遊技球Bは特別入賞口5の側部に流下させられて、入賞がなされない。
したがって、第1誘導路13に落とし込まれた遊技球Bの特定入賞口5への入賞確率は低い。
【0048】
また、流路変更手段18の振り分け皿21が第2位置に位置されている場合(以下、この状態を第2状態と称す)には、遊技球検出センサー12を通過させられた遊技球Bは、図3および図4に示すように、振り分け皿21の球受け部21aに捕捉されたのちに、貫通孔21dを経て案内部21cへ送り込まれ、この案内部21cによって第2誘導路14の上流端へ落とし込まれる。
この振り分け皿21を第2位置への回動は、本実施例においては、制御手段からの信号によって作動させられる駆動機構22によって行なわれるが、この信号によりモーター23が駆動されて、前記振り分け皿21の回動が開始され、この回動軸20に取り付けられている検出片25がフォトセンサー26によって検出された時点で前記モーター23の駆動が停止させられることによって行なわれる。
【0049】
このようにして第2誘導路14へ導かれた遊技球Bは、この第2誘導路14上を中央部へ向けて転動させられ、この第2誘導路14に形成されている幅狭の排出路16へ落下させられるとともに、この排出路16によって、前記第1誘導路13の誘導溝17へ流下させられる。
そして、前記排出路16は、遊技球Bの直径とほぼ等しい幅に形成されていることから、この排出路16によって案内されて流下させられる遊技球Bの流下経路は、図3に矢印で示すように、ほぼ1系統となり、前記誘導溝17へ確実に誘導され、かつ、この誘導路17に導かれた遊技球Bは、前述のように、その横振れが抑制されてほぼ確実に前記特定入賞口5へ入賞させられる。
したがって、第2誘導路14へ導かれた遊技球Bの殆どが特定入賞口5へ入賞させられることとなり、その入賞確率が大幅に高められる。

(3-3-2)甲第2号証(特開平7-124309号公報)には次のことが記載されている。
【0035】
第5実施例
次に、図9は本発明の第5実施例を示す図であり、ワープ通路を4つ設けた例である。
図9は特別図柄表示装置の斜視図である。この図において、500は特別図柄表示装置、500aは液晶部、501はケーシング、502は凹室部である。ケーシング501の上部には上部入賞口503および4つのワープ入賞口504〜507が形成されている。
ケーシング501の内部には4つのワープ入賞口504〜507から入賞した玉を通過させる4つのワープ通路508〜511がそれぞれ形成され、ケーシング501の下部にはワープ通路508、510に対応するワープ出口512、513がそれぞれ形成されている。なお、他方のワープ通路509、511はケーシング501の内部で見えないため、形成位置を破線で示している。また、他方のワープ通路509、511に対応するワープ出口は見えないため、番号付けを省略している。ワープ通路508〜511はケーシング501の内部を繰り抜くようにして形成され、ケーシング501の形状に沿って配置されている。
【0036】
凹室部502の内部には遊技空間部511が形成されており、遊技空間部511には第1遊技領域521および第2遊技領域522が配置されている。第1遊技領域521は凹室部502における下部手前側の遊技空間部511の一部に相当し、遊技球を凹室部502の外に出すために前側に傾斜した一定の広さの平面になっている。一方、第2遊技領域522は第1遊技領域521より高い位置にある帯状の部材と、その部材から下り傾斜で連続する部材と、中央付近に位置し溝523が形成された部材とからなっている。
ワープ入賞口504、505、ワープ通路508、509およびワープ出口508(他方のワープ出口は符号省略)はワープ入賞口504、505から入賞した玉を通過させて遊技空間部111の第1遊技領域521に送り込む機能を有し、一方、ワープ入賞口506、507、ワープ通路510、511およびワープ出口510(他方のワープ出口は符号省略)はワープ入賞口506、507から入賞した玉を通過させて遊技空間部111の第2遊技領域522に送り込む機能を有している。そして、これらは全体として遊技媒体転送装置531を構成するとともに、さらに始動入賞口(すなわち、普通電動始動口64)への遊技球の入賞率を変換可能な入賞率変換装置532を構成する。
【0037】
すなわち、ワープ入賞口504、505に入賞した玉はそれぞれワープ通路508、509を通った後、ワープ出口508(他方のワープ出口は符号省略)から遊技空間部111の第1遊技領域521に放出される。第1遊技領域521から放出された場合は、玉が不規則な動きをして下方に流下していき、障害釘の隙間を通ってアトランダムに普通電動始動口64に入賞したり、あるいは入賞せず落下したりする。実際上は、玉が不規則な動きをしているため下方に備えられた普通電動始動口64に入賞せず落下する割合が多い(つまり、始動入賞率が低い)。
一方、ワープ入賞口506、507に入賞した玉はそれぞれワープ通路510、511を通った後、ワープ出口513(他方のワープ出口は符号省略)から遊技空間部111の第2遊技領域522に放出される。第2遊技領域522より放出された場合は、玉が第2遊技領域522に沿って中央の溝523を通り下方に流下する。このとき、溝523はほぼ普通電動始動口64の真上に位置しているため、普通電動始動口64に入賞する割合が非常に多くなる(つまり、始動入賞率が高い)。
このように、入賞率変換装置532におけるどのワープ入賞口に玉が入賞するかによって始動入賞率を変換することが可能で、結局、前記第1実施例と同様の効果を得ることができる。

(3-3-3)甲第3号証(特開平8-10411号公報)には次のことが記載されている。
【0014】
サイドランプ39はゲーム内容に応じて適当に点灯あるいは点滅して遊技の臨場感を高めるものである。
第1可変表示装置13の上方にはワープ入口41が形成されるとともに、ワープ受け部材42、2つのワープ受け用回転体43、44が配置されている。ワープ入口41はワープ装置50(図2参照)の遊技球流路(ワープ通路)に玉を取り込むもので、遊技球取込口に相当する。ワープ受け部材42は左右方向に長い平板状に形成され、上方から落下してきた玉あるいはワープ受け部材42の左右両側に配置されたワープ受け用回転体43、44によって導かれた玉を中央のワープ入口41の方に導く機能を有している。ワープ受け用回転体43は一定方向(ワープ受け部材42の方に玉を導くように右回転方向)に回転し、玉を1個宛て嵌入可能な3つのスプロケットを有している。
【0016】
ここで、ワープ装置50について詳細に説明する。図2はワープ装置50の断面を示す図である。図2において、ワープ装置50は第1ワープ流路(第1遊技球流路)51、第2ワープ流路(第2遊技球流路)52、ワープ第1検出スイッチ53、ワープ第2検出スイッチ54、ワープ第3検出スイッチ55、振分部材56を有している。
第1ワープ流路51は、ワープ入口41から取り込んだ玉を始動入賞口14の上方部に配置した第1排出口57(当りに相当する出口)から排出する。第2ワープ流路52は、ワープ入口41から取り込んだ玉を始動入賞口14とは隔てた位置に配置した第2排出口58(外れに相当する出口)から排出する。ワープ第1検出スイッチ53はワープ入口41から取り込まれた玉を検出するもので、例えば通過型のセンサあるいは磁気センサが用いられる。
【0019】
振分部材56は、ワープ入口41から取り込まれた玉を第1ワープ流路51あるいは第2ワープ流路52の何れかに振分けるもので、ワープ入口41の直下の流路内を左右に移動可能である。例えば、振分部材56が左側に移動すると、ワープ入口41から取り込まれた玉は第1ワープ流路51に振り分けられ、逆に振分部材56が右側に移動すると、ワープ入口41から取り込まれた玉は第2ワープ流路52に振り分けられる。
ワープ装置50は遊技球による遊技を行い、遊技球の挙動が遮蔽された第3遊技領域を構成する。つまり、遊技者にとっては、遊技球の流れが見えない部分である。玉が遊技球の挙動が遮蔽された第3遊技領域を通過している間は、第1可変表示装置13によって実球ではなく画像球による遊技が行われ、実球から画像球による遊技に切り換えられるようになっている。

(3-3-4)甲第4号証(特開平7-39637号公報)には次のことが記載されている。
【0029】
次に、可変表示装置60について説明する。可変表示装置60は、前記遊技盤20の表面に取り付けられる取付基板61と、遊技盤20の裏面に取り付けられる回転ドラムユニット74a?74cを含むドラム装置部72とに分けられる。まず、まず遊技盤20の表面に取り付けられる取付基板61には、長方形状の窓開口62が開設され、該窓開口62に透明レンズカバー71が取り付けられ、その透明レンズカバー71の後方に回転ドラム75a?75cの外周に形成される識別情報が視認できるようになっている。この透明レンズカバー71は、3つの回転ドラム75a〜75cの表面に描かれた識別情報(図柄)が3つ分見えるような大きさに選ばれていると共に、識別情報がより大きく見えるようにレンズ状に形成されている。また、取付基板61の上部には、通常の入賞口63が突設形成されているが、該入賞口63の下方にワープ入口65が設けられている。このワープ入口65に入った打玉は、取付基板61の左右に形成されたワープ通路66a,66bを通って窓開口62の下縁左右に形成されたワープ出口67a,67bに放出され、最終的に取付基板61の下部中央に形成された放出口68から再度遊技領域22に放出されるようになっている。しかして、放出口68の下方には、図9に示すように始動入賞口23が配置されるので、ワープされた打玉が、始動入賞口23に入賞し易くなっている。

(3-4)対比・判断
(3-4-1)特許法第29条第1項3号について
本件発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証には、本件発明と同様に、「遊技部材(特別可変表示装置3)の開口部(凹部9a)に、入賞口(誘導口11)から入賞した遊技球が振り分けられる第2ステージ(第2誘導路14)と第1ステージ(第1誘導路13)とが設けられているとともに、第2ステージに第2排出部(排出路15)が設けられており、第1ステージに第1排出部(排出路16)が設けられたパチンコ機」が記載されているが、甲第1号証には、少なくとも、本件発明の構成要件である「第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設」された点が記載されていない点で相違する。甲第1号証に記載された発明は、第2誘導路14と第1誘導路13との間に明瞭な仕切りがないため、遊技球が第2誘導路14上へ導かれた場合でも、第2誘導路14上の遊技球が、排出路16以外の部分から第1誘導路13に落下してしまい、排出路16から排出されず、誘導溝17の下方に位置した特定入賞口5へ入賞しないことが多い。
また、本件発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、甲第2号証にも、本件発明と同様に、「遊技部材(可変表示装置63)の開口部(凹室部102)に、入賞口(ワープ出口513)から排出された遊技球が導かれる第2ステージ(第2遊技領域522)と、開口部から排出された遊技球が導かれる第1ステージ(第1遊技領域521)とが設けられているとともに、第2ステージに第2排出部(溝523)が設けられたパチンコ機」が記載されているが、甲第2号証には、少なくとも、本件発明の構成要件である「第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設」された点が記載されていない点で、相違する。甲第2号証に記載された遊技機も、第2遊技領域522と第1遊技領域521との間に明瞭な仕切りがないため、遊技球がワープ出口513から第2遊技領域522上に導かれた場合でも、第2遊技領域522上の遊技球が、溝523以外の部分から第1遊技領域521に落下してしまい、溝523から排出されず、溝523の下方に位置した普通電動始動口64へ入賞しないことが多い。
したがって、本件発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明ということはできず、特許法第29条第1項3号の規定に該当しないから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

(3-4-2)特許法第29条第2項について
本件発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証には、本件発明と同様に、「遊技部材(特別可変表示装置3)の開口部(凹部9a)に、入賞口(誘導口11)から入賞した遊技球が振り分けられる第2ステージ(第2誘導路14)と第1ステージ(第1誘導路13)とが設けられているとともに、第2ステージに第2排出部(排出路15)が設けられており、第1ステージに第1排出部(排出路16)が設けられたパチンコ機」が記載されているが、甲第1号証には、少なくとも、本件発明の構成要件である「第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設」された点が記載されていない。
上記相違点を検討すると、甲第3号証には、「遊技部材(ワープ装置50)に入賞口(ワープ入口41)から入賞した遊技球が振り分けられる第1ワープ流路51と第2ワープ流路52とが設けられたパチンコ機」が、甲第4号証には、「遊技部材(可変表示装置60)に入賞口(ワープ入口65)から入賞した遊技球が左右に振り分けられるパチンコ機」が、それぞれ記載されているが、何れにも、上記相違点は、記載されていないから、甲第1号証記載の発明に甲第3号証又は甲第4号証記載の発明を適用しても、本件発明にはなりえない。
そして、本件発明は、上記相違点により、「第2ステージ」上に導かれた遊技球を「第2排出部」以外の部分から「第1ステージ」に落下させる事態を防止し、「第2ステージ」上を転動した遊技球をきわめて高い確率で入賞領域へ導くので、遊技球の流下の仕方に対する遊技者の関心を飛躍的に高めることができる。
したがって、本件発明は、甲第1号証及び甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(3-5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パチンコ機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 飛込口と別に設けた第1排出部および第2排出部と、前記第1排出部に遊技球を導く第1通路と、前記第2排出部に遊技球を導く第2通路とを有する遊技部材が、遊技領域に設置されたパチンコ機であって、
前記遊技部材に、開口部が設けられており、その開口部から特別図柄表示部が視認可能になっているとともに、開口部上方に、前記飛込口が設けられており、開口部の左右側方の前後に、それぞれ、前記第1通路、前記第2通路が設けられており、開口部の下方の前後に、それぞれ、第1ステージ、第2ステージが設けられており、かつ、それらの第1ステージおよび第2ステージに、それぞれ、前記第1排出部、前記第2排出部が設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設されており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており、
飛込口から遊技部材の内部に入り込み第1通路を通過した遊技球を、第1ステージに現出した後に第1排出部から排出し、飛込口から遊技部材の内部に入り込み第2通路を通過した遊技球を、第2ステージに現出した後に第2排出部を介して第1排出部から排出するとともに、
遊技部材の第2排出部を介して第1排出部から遊技球が排出された場合には、第2排出部を介さず第1排出部から遊技球が排出された場合よりも高い確率で入賞領域に入賞し、かつ、
遊技球が入賞領域に入賞した場合に、特別図柄表示部に表示された図柄が変動するとともに、変動後に所定の図柄が表示された場合に、大当たりが生起することを特徴とするパチンコ機。
【発明の詳細な説明】
【請求項1】 飛込口と別に設けた第1排出部および第2排出部と、前記第1排出部に遊技球を導く第1通路と、前記第2排出部に遊技球を導く第2通路とを有する遊技部材が、遊技領域に設置されたパチンコ機であって、
前記遊技部材に、開口部が設けられており、その開口部から特別図柄表示部が視認可能になっているとともに、開口部上方に、前記飛込口が設けられており、開口部の左右側方の前後に、それぞれ、前記第1通路、前記第2通路が設けられており、開口部の下方の前後に、それぞれ、第1ステージ、第2ステージが設けられており、かつ、それらの第1ステージおよび第2ステージに、それぞれ、前記第1排出部、前記第2排出部が設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設されており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており、
飛込口から遊技部材の内部に入り込み第1通路を通過した遊技球を、第1ステージに現出した後に第1排出部から排出し、飛込口から遊技部材の内部に入り込み第2通路を通過した遊技球を、第2ステージに現出した後に第2排出部を介して第1排出部から排出するとともに、
遊技部材の第2排出部を介して第1排出部から遊技球が排出された場合には、第2排出部を介さず第1排出部から遊技球が排出された場合よりも高い確率で入賞領域に入賞し、かつ、
遊技球が入賞領域に入賞した場合に、特別図柄表示部に表示された図柄が変動するとともに、変動後に所定の図柄が表示された場合に、大当たりが生起することを特徴とするパチンコ機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パチンコ機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のパチンコ機の一種として、遊技領域に液晶画面からなる図柄表示装置が設けられており、遊技領域に設置された図柄始動口に遊技球が入賞した場合に、その図柄表示装置に表示された図柄が変動し、所定時間後に停止表示となり、停止表示となった図柄が所定の図柄である場合に、遊技者にとって有利な特定遊技状態(いわゆる大当たり状態)が生起するパチンコ機が知られている。かかるパチンコ機の図柄表示装置には、装飾と遊技領域を流下する遊技球の流下態様を面白くする目的で、遊技部材が周設されることが多い。従来の遊技部材としては、中央部分に図柄表示装置の液晶画面用の開口部が設けられ、上部に遊技球の飛込口が設けられ、上側および両サイドに、飛込口と連通した通路が設けられているとともに、図柄表示装置の液晶画面の下端縁に沿って両サイドの通路を繋ぐように、平板状のステージが設けられ、かつ、ステージの中央の僅かに低く形成された部分に排出部が設けられたものが知られている。また、かかる遊技部材が図柄表示装置に周設されたパチンコ機においては、通常、遊技部材の下側に、図柄始動口が設けられ、飛込口から遊技部材内に入った遊技球が、通路を通って流下した後にステージ上で左右に揺動し、しかる後に排出部から遊技部材の外部に排出されるようになっているとともに、排出された遊技球の一部が、所定の割合で図柄始動口に入賞するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のパチンコ機は、遊技部材の内部に入った遊技球が通路からステージ上へ流下しステージ上で左右に揺動した後に外部に排出され、排出された遊技球の一部が図柄始動口に入賞するだけであり、遊技球の流下態様が単純であるので、遊技者はいつまでも興味を持って遊技をし続けることができなかった。
【0004】
本発明の目的は、上記従来のパチンコ機が有する課題を解消し、遊技球の流下態様がバラエティに富んでおり面白く、遊技者がいつまでも興味を持って遊技を楽しむことができるパチンコ機を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の構成は、飛込口と別に設けた第1排出部および第2排出部と、前記第1排出部に遊技球を導く第1通路と、前記第2排出部に遊技球を導く第2通路とを有する遊技部材が、遊技領域に設置されたパチンコ機であって、前記遊技部材に、開口部が設けられており、その開口部から特別図柄表示部が視認可能になっているとともに、開口部上方に、前記飛込口が設けられており、開口部の左右側方の前後に、それぞれ、前記第1通路、前記第2通路が設けられており、開口部の下方の前後に、それぞれ、第1ステージ、第2ステージが設けられており、かつ、それらの第1ステージおよび第2ステージに、それぞれ前記第1排出部、前記第2排出部が設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設されており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており、飛込口から遊技部材の内部に入り込み第1通路を通過した遊技球を、第1ステージに現出した後に第1排出部から排出し、飛込口から遊技部材の内部に入り込み第2通路を通過した遊技球を、第2ステージに現出した後に第2排出部を介して第1排出部から排出するとともに、遊技部材の第2排出部を介して第1排出部から遊技球が排出された場合には、第2排出部を介さず第1排出部から遊技球が排出された場合よりも高い確率で入賞領域に入賞し、かつ、遊技球が入賞領域に入賞した場合に、特別図柄表示部に表示された図柄が変動するとともに、変動後に所定の図柄が表示された場合に、大当たりが生起することにある。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の遊技部材、および遊技部材が設置されたパチンコ機の一実施形態を、図面に基いて詳細に説明する。
【0007】
図1は、遊技部材の正面および背面を示す説明図、図2は、遊技部材の右側面を示す説明図、図3は、図2におけるA-A線断面およびB-B線断面を示す説明図、図4は、遊技部材の斜視説明図、図5は、遊技部材を一部を切り欠いて示す説明図である。遊技部材1は、合成樹脂製等の複数の部品が組み合わされて形成されている。そして、前方から見ると、幅広の略長方形状であり、中央に開口部37が設けられており、側方から見ると、前方から後方にかけて略3層構造になっている(以下、前方の部分を前層部分aといい、中央の部分を中層部分bといい、後方の部分を後層部分cという)。
【0008】
前層部分aは、横長で若干上向きに凸状の水平部2の上面から入賞部3が上方に突出した形状を有している。入賞部3は、内部が中空状になっており、上側には入賞口4が設けられており、両サイドには、それぞれ、飛込口5,5が設けられている。なお、入賞部3の内部において、2つの飛込口5,5は連通しているが、入賞口4は、それらの飛込口5,5とは連通していない。また、入賞部3内部の水平部2上面の略中央には、導球部6が浅い球面状に刻設されている(図5参照)。さらに、水平部2前面の略中央には表示窓7が穿設されており、その内部には小型表示装置8が内蔵されている。
【0009】
一方、中層部分bは、上側および両サイドに第1中空路9が形成されている。第1中空路9は、上側の部分が前層部分aの輪郭と略合致しており、中央から両端にかけて下向きに傾斜している。そして、第1中空路9の中央下側の壁面は、屋根形状の第1振分部10になっており、その屋根の稜線は導球部6の中心線と一致している。
【0010】
また、中層部分bの第1中空路9の両サイドの下端縁同士は、平板状の第1ステージ11によって繋がれた状態になっている(以下、第1中空路9と第1ステージ11とを合わせて第1通路という)。第1ステージ11は、中央部分が僅かに低く形成されており、最も低い位置が浅く球面状に刻設されて第1排出部12になっている。さらに、第1ステージ11の前端縁には、第1ガード13が垂設されており、その第1ガード13の中央部分(すなわち、第1排出部12の前方)には、第1排出口14が緩い曲率半径の円弧状に刻設されている。なお、中層部分bの最上部には、第1案内体15が設けられており、中層部分bの前面上方に穿設された通過孔38を介して、前層部分aの入賞部3の入賞口4と連通した状態になっている。加えて、中層部分bの前面の上方および下方には、それぞれ2つずつ取付板16,16・・が延設されており、それらの取付板16,16・・には、それぞれネジ挿通孔17が穿設されている。
【0011】
後層部分cも中層部分bと同様に、上側および両サイドに第2中空路18が形成されており、上側の部分は、中央から両端にかけて下向きに傾斜している。そして、第2中空路18の中央下側の壁面は、屋根形状を有する第2振分部19になっており、その屋根の稜線は、導球部6の中心線および第1振分部10の稜線と一致している。
【0012】
後層部分cの第2中空路18の両サイドの下端縁同士は、平板状の第2ステージ20によって繋がれた状態になっている(以下、第2中空路18と第2ステージ20とを合わせて第2通路という)。第2ステージ20は、第1ステージ11と同様に、中央が僅かに低くなっており、最も低い位置が浅く球面状に刻設されて第2排出部21になっている。その第2排出部21は、遊技球略1個程度の幅に形成されており、第1排出部12の幅よりも狭くなっている。さらに、第2ステージ20の前端縁には、第2ガード22が垂設されており、その第2ガード22の中央部分(すなわち、第2排出部21の前方)には、第2排出部21の幅よりも僅かに狭幅な第2排出口23が設けられている。なお、第2ステージ20の方が第1ステージ11よりも高くなっており、第1排出口14の中心線の位置は、第2排出口23の中心線の位置と一致している。また、後層部分cの最上部にも、第2案内体24が設けられており、前層部分aの入賞部3の入賞口4および中層部分bの第1案内体15と連通した状態になっている。
【0013】
遊技部材1が設置されたパチンコ機の一例を図6に示す。パチンコ機34の中央上部には、略円形を有する遊技領域25が設けられており、その遊技領域25の略中央には、遊技部材1が設置されている。なお、パチンコ機34は、遊技領域25の下方に突設された発射ハンドル35を回動操作することによって、上皿36内の遊技球を遊技領域25に打ち込むことができるようになっている。
【0014】
遊技部材1は、取付板16,16・・の裏面を遊技盤面に当接させた状態でネジ孔17,17・・の部分が螺着されることによって、遊技領域25に設置されている。また、遊技部材1の中央の開口部37には、液晶画面からなる特別図柄表示部26が設置されており、遊技部材1の第1排出口14の下方には、図柄始動口である普通電動役物27が設置されている。さらに、普通電動役物27の下側には、大入賞口28が設けられており、その大入賞口28の下側には、普通図柄表示部29が設けられている。一方、遊技部材1の両サイドには、普通図柄始動ゲート30,30が設けられている。
【0015】
上記の如く構成されたパチンコ機34においては、遊技領域25に打ち込まれた遊技球が、前層部分aの入賞部3の飛込口5、5から入賞部3内に飛び込むと、飛び込んだ遊技球の内の一部が、導球部6上まで遡る。導球部6上まで遡った遊技球は、中層部分bの前面に穿設された第1通過日31を通って、中層部分bの第1振分部10上へ導かれ、第1中空路9の左右何れかのサイドに振り分けられる。なお、第1振分部10は、屋根形状をしているとともに、その屋根の稜線が導球部6の中心線と一致しているので、第1振分部10上まで導かれた遊技球は、第1中空路9の左サイドおよび右サイドに略同じ確率で振り分けられる。そして、第1中空路9の左右何れかのサイドに振り分けられた遊技球は、第1中空路9内を通って、第1ステージ11へと現出し、第1ステージ11上を左右に揺動した後、第1排出部12から第1排出口14を通って遊技部材1の外部へと排出される。
【0016】
一方、中層部分bの第1振分部10上へ導かれた遊技球が、第1振分部10の屋根の稜線付近を転動し、後層部分cの前面に穿設された第2通過日32を通って後層部分cの第2振分部19上へ導かれる場合もある(なお、パチンコ機34は、導球部6上の遊技球を第1中空路9の左右何れかのサイドに振り分ける確率の方が、第2振分部19上へ導く確率よりも大きくなるように設計されている)。第2振分部19上へ導かれた遊技球は、第2中空路18の左右何れかのサイドに振り分けられる。第2振分部19は、第1振分部10と同様に屋根形状をしているとともに、その屋根の稜線が第1振分部10の屋根の稜線と「致しているので、第2振分部19上まで導かれた遊技球は、第2中空路18の左サイドおよび右サイドに略同じ確率で振り分けられる。そして、第2中空路18の左右何れかのサイドに振り分けられた遊技球は、第2中空路18内を通って、第2ステージ20へと現出し、第2ステージ20上を左右に揺動した後、第2排出部21から第2排出口23を通って下側に位置した第1排出部12へと流下する。しかる後、第1排出口14を通って遊技部材1の外部へと排出される。
【0017】
第1排出部12から排出された遊技球は、第1排出部12の下側に設置された特別図柄始動口33に向かって流下し、その内の一部が、特別図柄始動口33の上方に立設された障害釘の間を通過して、特別図柄始動口33に入賞する。なお、第1排出部12は幅広で浅い球面状に形成されているため、第1ステージ11上を揺動した後に第1排出部12から排出された遊技球は、さほど高い確率で特別図柄始動口33に入賞しない。しかしながら、第2排出部21および第2排出口23は、遊技球略1個分の幅に形成されており、第2排出口23を通過した遊技球は、第1排出部12上の略中心を通過して排出されるため、きわめて高い確率で特別図柄始動口33に入賞する。また、遊技部材1内を通過しなかった遊技球も、低い確率ではあるが特別図柄始動口33に入賞する。
【0018】
特別図柄始動口33または普通電動役物27に遊技球が入賞した場合には、特別図柄表示部26に表示された3つの図柄が変動を開始し、所定時間後に停止表示となる。そして、停止表示となった3つの図柄が所定の組み合わせ(たとえば「7,7,7」等)である場合には、大当たりが生起し、大入賞口28が所定回数断続的に開成する。したがって、大当たりが生起した場合には、遊技者はきわめて多くの賞品球を獲得することができる。
【0019】
なお、電源投入時からの大当たり生起の積算回数が、前層部分aに内蔵された小型表示装置8によって表示窓7内に表示される。一方、遊技球が、遊技部材1の前層部分aの上方の入賞口4に入賞した場合には、その入賞球は、第1案内体15および第2案内体24を通って、パチンコ機34の内部に設けられた入賞球認識センサ(図示せず)まで導かれる。入賞球が入賞球認識センサまで導かれると、その入賞が認識され、入賞に応じた所定数の遊技球が賞品球として払い出される。
【0020】
さらに、普通図柄始動ゲート30を遊技球が通過した場合には、普通図柄表示部29に表示された図柄が変動し、所定時間後に停止表示となる。そして、停止表示となった図柄が所定の図柄(たとえば「7」)である場合には、通常時は閉成している普通電動役物27が一定時間開成し、きわめて遊技球が入賞し易い状態になる。なお、普通電動役物27は、閉成時には遊技球が入賞しないようになっている。
【0021】
パチンコ機34は上記の如く構成されており、遊技部材1内に入った遊技球が第1通路と第2通路との2つの通路に振り分けられ、さらに各通路において左右何れかのサイドに振り分けられるとともに、第1通路に振り分けられた場合には、第1ステージ11上で左右に揺動するので、遊技球の流下態様が非常にバラエティーに富んでおり面白い。したがって、遊技者は、遊技部材1内における遊技球の流下態様に関心を示しながら、興味を持って遊技を楽しむことができる。
【0022】
また、パチンコ機34は、遊技部材1内を通過した遊技球が、遊技部材1内を通過しなかった遊技球よりも高い確率で特別図柄始動口33に入賞するように(すなわち、特別図柄の変動回数が多くなるように)設計されているので、遊技者は、遊技部材1内に遊技球が入るか否かに関心を示しながら、興味を持って遊技を楽しむことができる。
【0023】
さらに、遊技部材1内に入った遊技球が第1通路に振り分けられた場合と第2通路に振り分けられた場合とで、遊技部材1の外部に排出された遊技球の特別図柄始動口33への入賞確率が異なるように(すなわち、特別図柄の変動回数が異なるように)設計されているので、遊技者は、遊技部材1内に入った遊技球が第1通路に導かれるのか、あるいは第2通路に導かれるのか、ということに関心を示しながら、いつまでも興味を持って遊技を楽しむことができる。
【0024】
なお、本発明の遊技部材の構成は、上記した実施例に何ら限定されるものではなく、水平部、入賞部、入賞口、飛込口、導球部、表示窓、小型表示装置、第1・第2中空路、第1・第2振分部、第1・第2ステージ、第1・第2排出部、第1・第2ガード、第1・第2排出口、第1・第2案内体、取付板、ネジ孔、第1・第2通路、第1・第2通過日、通過孔の形状・構造等の構成を、必要に応じて適宜変更することができる。
【0025】
たとえば、飛込口は2つに限定されるものではなく、1つであっても良いし、逆に3つや4つであっても良い。また、表示窓、小型表示装置は、必ずしも必要ではなく、場合によっては省略することもできる。さらに、第2ステージ上の遊技球が第2排出口と第1排出口とを通って遊技部材の外部に排出される構造とせず、第1排出口と第2排出口とを完全に独立させても良い。加えて、各通路にステージを設けず、各通路を中空路のみから形成することも可能である。
【0026】
一方、遊技部材が設置されるパチンコ機の構成も、上記した実施例に何ら限定されるものではなく、特別図柄表示部、特別図柄始動口、普通電動役物、大入賞口、普通図柄表示部、普通図柄始動ゲートの形状・構造、大当たり時における遊技内容等の構成を、必要に応じて適宜変更することができる。
【0027】
たとえば、特別図柄始動口、普通電動役物、普通図柄始動ゲートの設置位置を変更することにより、遊技部材内を通過した遊技球が普通電動役物を通過し易い構造とせず、遊技部材内を通過した遊技球が普通図柄始動ゲートを通過し易い構造とすることも可能である。また、第2排出口から排出された遊技球が入賞し易い特別図柄始動口と第1排出口から排出された遊技球が入賞し易い特別図柄始動口とを別々に設けても良い。
【0028】
なお、上記実施例においては、いわゆる第1種のパチンコ機に本発明の遊技部材を設置した例について説明したが、本発明のパチンコ機は、第1種のパチンコ機に限定されるものではなく、いわゆる第3種のパチンコ機等、別の種類のパチンコ機であっても良い。
【0029】
【発明の効果】
本発明のパチンコ機は、遊技部材の下側に人賞領域が設けられており、遊技部材の第2排出部から遊技球が排出された場合には、第1排出部から遊技球が排出された場合よりも高い確率で入賞領域に入賞するので、本発明のパチンコ機によれば、遊技者は、遊技部材に入った遊技球が第1通路に導かれるのか、あるいは第2通路に導かれるのか、ということに関心を示しながら、いつまでも興味を持って遊技を楽しむことができる。また、本発明のパチンコ機は、遊技部材内に入った遊技球が第1通路と第2通路との2つの通路に振り分けられ、さらに各通路において左右何れかのサイドに振り分けられるとともに、第1通路に振り分けられた場合には、第1ステージ.しで左右に揺動するので、遊技球の流下態様が非常にバラエティーに富んでおり面白い。したがって、本発明のパチンコ機によれば、遊技者は、遊技部材内における遊技球の流ト態様に関心を示しながら、興味を持って遊技を楽しむことができる。さらに、本発明のパチンコ機は、遊技球が遊技部材内を通過した場合には、遊技部材内を通過しなかった場合よりも高い確率で入賞領域に入賞し、特別図柄が変動し、大当たり生起の契機となるように設計されているので、本発明のパチンコ機によれば、遊技者は、遊技部材1内に遊技球が入るか否かに関心を示しながら、興味を持って遊技を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
遊技部材の正面および背面を示す説明図である。
【図2】
遊技部材の右側面を示す説明図である。
【図3】
図2におけるA-A線断面およびB-B線断面を示す説明図である。
【図4】
遊技部材を斜めから見た状態を示す説明図である。
【図5】
遊技部材を一部切り欠いて示す説明図である。
【図6】
遊技部材を設置したパチンコ機を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・遊技部材、2・・水平部、3・・入賞部、4・・入賞口、5・・飛込口、6・・導球部、7・・表示窓、8・・小型表示装置、9・・第1中空路、10・・第1振分部、11・・第1ステージ、12・・第1排出部、13・・第1ガード、14・・第1排出口、15・・第1案内体、16・・取付板、17・・ネジ孔、18・・第2中空路、19・・第2振分体、20・・第2ステージ、21・・第2排出部、22・・第2ガード、23・・第2排出口、24・・第2案内体、25・・遊技領域、26・・特別図柄表示部、27・・普通電動役物、28・・大入賞口、29・・普通図柄表示部、30・・普通図柄始動ゲート、31・・第1通過口、32・・第2通過口、33・・特別図柄始動口、34・・パチンコ機、35・・発射ハンドル、36・・上皿、37・・開口部、38・・通過孔。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(a)特許請求の範囲の請求項1を特許請求の範囲の減縮を目的として次のとおり訂正する。「飛込口と別に設けた第1排出部および第2排出部と、前記第1排出部に遊技球を導く第1通路と、前記第2排出部に遊技球を導く第2通路とを有する遊技部材が、遊技領域に設置されたパチンコ機であって、
前記遊技部材に、開口部が設けられており、その開口部から特別図柄表示部が視認可能になっているとともに、開口部上方に、前記飛込口が設けられており、開口部の左右側方の前後に、それぞれ、前記第1通路、前記第2通路が設けられており、開口部の下方の前後に、それぞれ、第1ステージ、第2ステージが設けられており、かつ、それらの第1ステージおよび第2ステージに、それぞれ、前記第1排出部、前記第2排出部が設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設されており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており、
飛込口から遊技部材の内部に入り込み第1通路を通過した遊技球を、第1ステージに現出した後に第1排出部から排出し、飛込口から遊技部材の内部に入り込み第2通路を通過した遊技球を、第2ステージに現出した後に第2排出部を介して第1排出部から排出するとともに、
遊技部材の第2排出部を介して第1排出部から遊技球が排出された場合には、第2排出部を介さず第1排出部から遊技球が排出された場合よりも高い確率で入賞領域に入賞し、かつ、
遊技球が入賞領域に入賞した場合に、特別図柄表示部に表示された図柄が変動するとともに、変動後に所定の図柄が表示された場合に、大当たりが生起することを特徴とするパチンコ機。」
(b)明りょうでない記載の釈明を目的として、【0005】第10〜11行の「前記第2排出部が設けられており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており」を「前記第2排出部が設けられているとともに、第2ステージの前端縁に第2ガードが垂設されており、かつ、遊技部材の下側に入賞領域が設けられており」と訂正する。
異議決定日 2001-01-09 
出願番号 特願平8-92759
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A63F)
P 1 651・ 113- YA (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 白樫 泰子
吉村 尚
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3003572号(P3003572)
権利者 豊丸産業株式会社
発明の名称 パチンコ機  
代理人 石田 喜樹  
代理人 石田 喜樹  

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