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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B01D |
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管理番号 | 1041370 |
異議申立番号 | 異議2001-70394 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1990-04-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-06 |
確定日 | 2001-07-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3072992号「二層充填式一酸化炭素の除去方法及び装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3072992号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 特許3072992号(昭和63年9月30日出願、平成12年6月2日設定登録)の請求項1ないし請求項2に係る発明(以下「本件発明」という)は、その特許請求の範囲請求項1乃至請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2.申立の理由の概要 申立人日本酸素株式会社は、本件発明発明は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件発明の特許は特許法第113条2号に該当すると認められるので、取り消されるべき旨主張している。 3.甲各号証記載の発明 甲第1号証:空気分離装置に供給される原料空気中に含まれる一酸化炭素を除去する方法及び装置において、空気圧縮手段と除去手段との間に、パラジウム触媒又は白金触媒等の酸化触媒を充填した触媒筒を設け、前記一酸化炭素を酸化反応させ、二酸化炭素に転化後吸着除去すること 甲第2号証:一酸化炭素に対する触媒性能が高いパラジウム触媒の外側に、一酸化炭素に対する触媒性能とイオウによる毒化に対する毒耐性特性が高い白金触媒を配置することにより、パラジウム触媒を白金触媒で保護して、パラジウム触媒に所望の触媒性能を達成せしめるようにさせた貴金属触媒 甲第3号証:アルミナ担体に白金とパラジウムを組み合わせて担持した触媒が、比較的優れた浄化性能を有するものであること、触媒金属の中では、白金が被毒劣化に対する抵抗力が最も大きく、白金を担持させた第1担持層を上流側に位置させ、一酸化炭素に対して触媒活性の高いパラジウムを担持させた第2担持層を下流側に位置させて、パラジウム触媒の被毒劣化を低減できること 甲第4号証:触媒毒となる物質を除去する層を上流側に、排ガス浄化用触媒層を下流側に充填した二層充填式の触媒槽 甲第5号証:第1表によれば、活性炭担持PdCl2と活性炭担持貴金属触媒(第1表ではPd) は、共に一酸化炭素の酸化触媒能を持っているから、触媒毒の除去層+活性炭担持PdCl2+活性炭担持貴金属触媒の三層構造で一酸化炭素を除去することが開示され、一酸化炭素を酸化除去するため、異なった種類の触媒を層状に二層充填することを示唆している。 4.対比・判断 本件発明と上記甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には、本件発明の従来技術である、空気分離装置に供給される原料空気中に含まれる一酸化炭素を、パラジウム触媒又は白金触媒等の酸化触媒で接触酸化し、二酸化炭素に転化吸着除去することが開示されているが、「触媒槽の原料空気入口側に触媒毒SO2による劣化の少ない白金触媒を、出口側に反応率の高いパラジウム触媒をそれぞれ充填した二層充填式である点」について記載がない。 これに対し、甲第2ないし5号証には、一酸化炭素を貴金属触媒で接触酸化するに当たり被毒成分による触媒劣化を防ぐため二層充填式の触媒層とすることが開示され、特に甲第2及び3号証には、一酸化炭素に対する触媒性能が高いパラジウム触媒の外側に、一酸化炭素に対する触媒性能と毒耐性特性が高い白金触媒を配置することが開示されている。 しかしながら、甲第2または3号証に記載される触媒層が処理対象としている一酸化炭素含有ガスは、自動車排気ガスであり、甲第1号証ないし本件発明が処理対象とする原料空気とは温度及び組成が異なり、甲第2又は3号証に、本件発明の構成の一部である白金触媒とパラジウム触媒の二層充填式触媒層が開示されているからといって、燃焼排ガスに対する貴金属触媒の被毒防止技術が、直ちに空気を処理対象とする甲第1号証記載の触媒に適用可能であるとはいえない。この点に関し、甲第2号証には貴金属触媒の被毒成分として「イオウ」が例示されているが、甲第2号証に開示されるいわゆる3元触媒が、酸化還元が同時に生じる条件で使用されることを考えると、前記「イオウ」が直ちに本件発明でパラジウム触媒の被毒成分である「SO2」を意味するものとは解することはできず、更に、白金触媒の第1層は外側、パラジウム触媒の第2層は内側に形成され、本件発明のように被処理ガスの上流側、下流側に形成されるものではない。また、甲第3号証記載の触媒は、上流側の第1触媒層はロジウムと白金を必須成分とし、高温によるロジウムのアルミナ担体への固溶防止という、高温の燃焼排ガス特有の問題点を解決するものであるから、この点からも、ロジウムの固溶が生じるような高温とはならない甲第1号証の触媒に甲第3号証の触媒を転用することには無理がある。 また、甲第4または5号証には、原料空気の入口側に白金触媒、出口側にパラジウム触媒を充填することについて記載がなく、触媒層の前段で空気中の触媒被毒成分をアルカリ金属化合物や塩化パラジウムで吸収除去している点でも本件発明と構成を異にする。 本件発明は、上記の構成により、空気分離装置の圧縮空気中の一酸化炭素を、約0.1ppmの性能で約1年間連続運転することができるという、明細書記載の作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明は、上記甲各号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立に理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし請求項2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-06-15 |
出願番号 | 特願昭63-244147 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B01D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 服部 智、村守 宏文 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
冨士 良宏 野田 直人 |
登録日 | 2000-06-02 |
登録番号 | 特許第3072992号(P3072992) |
権利者 | 株式会社日立製作所 日立テクノエンジニアリング株式会社 |
発明の名称 | 二層充填式一酸化炭素の除去方法及び装置 |
代理人 | 木戸 一彦 |