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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G09G |
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管理番号 | 1043221 |
異議申立番号 | 異議2000-72577 |
総通号数 | 21 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-06-07 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-27 |
確定日 | 2001-07-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2994896号「コンピュータの判別機能を有する液晶ディスプレイ装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2994896号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第2994896号の請求項1に係る発明は、平成4年11月18日に出願され、平成11年10月22日に設定登録され、その後、異議申立人 長谷川 日出子より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年12月28日に訂正請求がなされ、その後訂正拒絶理由通知がなされ、これに対し意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否について ア.訂正の内容 特許権者が求める特許請求の範囲に関する訂正の内容は以下のとおりである。 訂正a 平成11年9月10日付手続補正書の請求項1の「前記カウンタ回路により・・・判別機能を有する液晶ディスプレイ装置。」とあるのを、 「予め水平周波数、水平ライン数及び極性のそれぞれに対応させて、コンピュータの機種を判別するための出力値をコンピュータ毎に登録したテーブルと、 前記カウンタ回路によりカウント結果である周波数データ及びライン数データ、並びに前記極性判別回路による判別結果である極性データに基づいて、前記テーブルから各コンピュータの出力値を読み出す手段と、 該読み出した出力値に基づいて入力映像信号を出力しているコンピュータの機種を判別してドットクロックを確定する機種判別手段と を備えることを特徴とするコンピュータの判別機能を有する液晶ディスプレィ装置。」と訂正する。 訂正b 平成11年9月10日付手続補正書の請求項1の「入力映像信号の水平周波数及び1垂直周期当りの水平ライン数とを」とあるのを、「入力映像信号の水平周波数及び1垂直周期当たりの水平ライン数を」と訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正前の請求項1に係る発明の「機種判別手段」は、「優先順位に基づいて」コンピュータの機種を判別するものであったのに対し、訂正後の請求項1に係る発明の「機種判別手段」は、「テーブルから各コンピュータの出力値を読み出す手段」の出力である「該読み出した出力値に基づいて」コンピュータの機種を判別する旨記載されているものの、前記「テーブル」が優先順位の情報を有していることは記載されていないので、「優先順位に基づいて」判別するとの限定を有さないものとなった。 また、訂正前の請求項1に係る発明の「機種判別手段」は、「前記カウンタ回路によりカウントされた水平周波数のカウント値及び1垂直周期当りの水平ライン数と、前記極性判別回路により判別された水平及び垂直同期信号の極性とに基づいて」コンピュータの機種を判別するものであったのに対し、訂正後の請求項1に係る発明の「機種判別手段」は、「出力値を読み出す手段」の出力に基づいてコンピュータの機種を判別するものとなったため、結局、訂正後の請求項1に係る発明の「機種判別手段」は訂正前とは異なる手段からの出力に基づいて、コンピュータの機種を判別するものとなった。 したがって、上記訂正a,bは特許請求の範囲を拡張し、変更するものであって、特許請求の範囲の減縮には当たらない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 3.特許異議の申し立てについての判断 ア.本件発明 上記のとおり、訂正請求は認められないから、本件請求項1に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりものである。 「【請求項1】 入力映像信号の水平周波数及び1垂直周期当りの水平ライン数とをカウントするカウンタ回路と、入力映像信号の水平及び垂直同期信号の極性を判別する極性判別回路と、 前記カウンタ回路によりカウントされた水平周波数のカウント値及び1垂直周期当りの水平ライン数と、前記極性判別回路により判別された水平及び垂直同期信号の極性とに基づいて、入力映像信号を出力しているコンピュータの機種を判別してドットクロックを確定する機種判別手段とからなり、 前記機種判別手段は、前記カウンタ回路によるカウント結果である周波数データ及びライン数データ、並びに前記極性判別回路による判別結果である極性データをパラメータとして、予めCPUにプログラムされた優先順位に基づいてコンピュータの機種を特定すべくなしてあることを特徴とするコンピュータの判別機能を有する液晶ディスプレイ装置。」 イ.引用刊行物に記載された事項 当審が平成12年10月19日付けで通知した取消理由において引用した刊行物1,2にはそれぞれ次の事項が記載されている。 a.引用刊行物1:特開平2-308298号公報 「この発明は、表示装置の制御回路において、CPUとROMと汎用レジスタの併用でPLL回路の周波数の微調、粗調を可能とすることにより、各種コンピュータの表示モードに対応できる表示装置を提供することを目的としている。」(第1頁右下欄第7〜11行) 「図は、本発明の表示装置のブロック回路図である。大きな回路ブロックはLCDコントローラ1とPLL回路2(位相ロックループ回路)とCPU制御回路3およびマトリクスLCDパネル4から構成される。」(第2頁左上欄第10〜14行) 「ビデオ信号V1のドットデータ読み取りの同期クロックとして用いられるドットクロック信号DCKを発生させるためのPLL回路2の動作について説明する。コンピュータの表示モードを選択するためには、その表示モードの画像信号に対応したドットクロック信号DCKを発生させるVCO13またはVCO14の選択が外部レジスタ19により設定されることと、ドットクロック信号DCKを分周して水平走査信号HSに一致させるための分周比データが内部レジスタ6を介してプログラマブルカウンタ7に設定されることの2点が必要である。」(第2頁左下欄第14〜同頁右下欄第5行) 「例えば、コンピュータPC9801の400ラインモードは21MHz,・・・すなわち、ドットクロックの周波数は、14から16MHzと21から25MHzの2系統が存在する。」(第2頁右下欄第8〜13行) b.引用刊行物2:特開平4-271395号公報 「一般に例えばメーカーの異る種々のコンピュータより出力される表示信号としての映像信号のシステムは統一されておらず夫々別々のシステムとなされており、この種々のコンピュータよりの映像信号を表示できる様にしたマルチスキャンモニタに於いては入力信号のシステムに応じた画サイズ補正、糸巻歪補正、台形歪補正、画面の位置補正等の画歪補正を行う必要がある」(第2頁第1欄第29〜36行) 「また本発明マルチスキャンモニタは例えば図1,図2及び図3に示す如く画歪補正データを固定システム領域1aと画歪補正データをユーザーシステムに対応して記憶したユーザーシステム領域1bとを有し、このユーザーシステム領域1bを優先的に選択するようになされたメモリ1と、入力映像信号中の水平周波数fH、1垂直期間中の水平走査線数及び同期信号の極性を検出する検出手段2とを有し、この検出手段2の検出結果によりこのメモリ1に記憶されたシステムを判断してこの画歪補正データを選択し、この選択された画歪補正データで画歪補正を行うようにしたものである。」(第3頁第3欄第23〜33行) 「本願の入力映像信号のシステムの判別については図2のフローチャートに示す如くなされる。・・・同一タイミングのものが無いときには水平周波数fHの一番近い映像システムに対応する画歪データをメモリ1より出力する。」(第4頁第5欄第13〜35行) ウ.対比・判断 ここで本件請求項1に記載された発明と上記引用刊行物1のものとを比較すると、上記引用刊行物1の「表示装置」は本件請求項1に記載された発明の「液晶ディスプレイ装置」に相当することは明らかであり、「ビデオ信号V1のドットデータ読み取りの同期クロックとして用いられるドットクロック信号DCKを発生させるためのPLL回路2の動作について説明する。コンピュータの表示モードを選択するためには、その表示モードの画像信号に対応したドットクロック信号DCKを発生させるVCO13またはVCO14の選択が外部レジスタ19により設定されることと、ドットクロック信号DCKを分周して水平走査信号HSに一致させるための分周比データが内部レジスタ6を介してプログラマブルカウンタ7に設定されることの2点が必要である。」と記載されるように、上記引用刊行物1はPLL回路2により各種コンピュータの表示モードに対応したドットクロックを発生するものであるから、上記引用刊行物1の「PLL回路」は本件請求項1に記載された発明の「コンピュータの機種を判別してドットクロックを確定する機種判別手段」に相当するから、両者は、 「入力映像信号を出力しているコンピュータの機種を判別してドットクロックを確定する機種判別手段とからなることを特徴とするコンピュータの判別機能を有する液晶ディスプレイ装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本件請求項1に記載された発明は、「入力映像信号の水平周波数及び1垂直周期当りの水平ライン数とをカウントするカウンタ回路と、入力映像信号の水平及び垂直同期信号の極性を判別する極性判別回路と、」を有し、「前記カウンタ回路によるカウント結果である周波数データ及びライン数データ、並びに前記極性判別回路による判別結果である極性データをパラメータとして、予めCPUにプログラムされた優先順位に基づいてコンピュータの機種を特定」するのに対して、上記引用刊行物1にはコンピュータの機種を判別する機能について具体的記載がない点。 上記相違点について検討する。 上記引用刊行物2には、「一般に例えばメーカーの異る種々のコンピュータより出力される表示信号としての映像信号のシステムは統一されておらず夫々別々のシステムとなされており、この種々のコンピュータよりの映像信号を表示できる様にしたマルチスキャンモニタに於いては入力信号のシステムに応じた画サイズ補正、糸巻歪補正、台形歪補正、画面の位置補正等の画歪補正を行う必要がある」と記載されているから、「コンピュータの機種を特定」するものであり、「また本発明マルチスキャンモニタは例えば図1,図2及び図3に示す如く画歪補正データを固定システム領域1aと画歪補正データをユーザーシステムに対応して記憶したユーザーシステム領域1bとを有し、このユーザーシステム領域1bを優先的に選択するようになされたメモリ1と、入力映像信号中の水平周波数fH、1垂直期間中の水平走査線数及び同期信号の極性を検出する検出手段2とを有し、この検出手段2の検出結果によりこのメモリ1に記憶されたシステムを判断してこの画歪補正データを選択し、この選択された画歪補正データで画歪補正を行うようにしたものである。」と記載されているから、「カウンタ回路によるカウント結果である周波数データ及びライン数データ、並びに極性判別回路による判別結果である極性データをパラメータとして、コンピュータの機種を特定する」ものであり、また、「本願の入力映像信号のシステムの判別については図2のフローチャートに示す如くなされる。・・・同一タイミングのものが無いときには水平周波数fHの一番近い映像システムに対応する画歪データをメモリ1より出力する。」と記載されているから、周波数データ及びライン数データ、並びに極性データをパラメータとして、メモリ内を所定の順序でサーチ即ち「予めCPUにプログラムされた優先順位に基づいてコンピュータの機種を特定する」ものである。 したがって、上記引用刊行物2には、「入力映像信号の水平周波数及び1垂直周期当りの水平ライン数とをカウントするカウンタ回路と、入力映像信号の水平及び垂直同期信号の極性を判別する極性判別回路と、」を有し、「前記カウンタ回路によるカウント結果である周波数データ及びライン数データ、並びに前記極性判別回路による判別結果である極性データをパラメータとして、予めCPUにプログラムされた優先順位に基づいてコンピュータの機種を特定」する技術が記載されており、上記引用刊行物1に記載された表示装置のコンピュータの種別の判別に上記引用刊行物2に記載された技術を適用し本件請求項1に記載された発明の構成を得ることは当業者が容易に為し得たことと認められる。 エ.むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。 よって結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-05-22 |
出願番号 | 特願平4-333720 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(G09G)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 江成 克己 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
山川 雅也 山田 正文 |
登録日 | 1999-10-22 |
登録番号 | 特許第2994896号(P2994896) |
権利者 | 三洋電機株式会社 |
発明の名称 | コンピュータの判別機能を有する液晶ディスプレイ装置 |
代理人 | 河野 登夫 |