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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65H
審判 一部申し立て 2項進歩性  B65H
審判 一部申し立て 特174条1項  B65H
管理番号 1043283
異議申立番号 異議2001-71487  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-12-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-21 
確定日 2001-08-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3110286号「画像形成装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3110286号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件特許発明1
本件特許第3110286号(平成7年5月31日出願、平成12年9月14日設定登録。)の請求項1に係る特許発明(以下、「本件特許発明1」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】転写材の印字面が裏面となる第1トレイに排出する排出口と、転写材の印字面が表面となる第2トレイに排出する排出口とを選択する排出口案内部材と、前記排出口案内部材への排出と、転写材の両面に印字するための両面印字部への排出とを選択する両面印字案内部材とを備えた画像形成装置において、本体に着脱自在な排紙フレームに排出口案内部材と両面印字案内部材を配置するとともに、本体に排出口案内部材と両面印字案内部材を駆動する駆動源を配置し、前記駆動源と排出口案内部材および駆動源と両面印字案内部材とをそれぞれ連動連結する機械式連動機構を設け、この連動機構の駆動側を本体に配置するとともに、受動側を排紙フレームに配置し、前記連動機構の駆動側と受動側を接離自在に構成したことを特徴とする画像形成装置。」

2.申立ての理由の概要
申立人鈴木伸夫は、概略「本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により、また特許法第36条第5項又は第6項の規定を満たしていないので、特許を受けることができないものである。また、平成12年4月13日付及び平成12年7月13日付手続補正書は、出願当初の明細書又は図面に記載された範囲内の補正ではないので、特許法第17条の2第3項の規定に違反している。よって、本件特許発明は、特許法第113条第1項第1号、第2号並びに第4号の規定により取消されるべきものである。」旨主張している。
〈証拠方法〉
甲第1号証;特開昭64-38367号公報
甲第2号証;実願平2-72911号(実開平4-31151号)に係るマイクロフィルム

3.甲号各証の記載事項
甲第1号証(特開昭64-38367号公報)には、記録された用紙をそれぞれ異なる方向に搬送する複数の排紙路と、それら排紙路の分岐部に設け、前記用紙の搬送方向を選択切換する切換手段とを備えた記録装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項ア;「さらに、定着部(22)の出口側に、一対の搬送ローラ(23)・(23)と、その搬送ローラ(23)・(23)から送り出される用紙を前記第1の排紙スタッカ(11)または第2の排紙スタッカ(12)へ搬送する排紙路(24)と、上記用紙を前記両面ユニット(13)へ搬送する紙排路(25)と、上記用紙を前記排紙トレー(15)へ搬送する一対の搬送ローラ(26)・(26)と、上記用紙の搬送方向を選択切換する一対の切換爪(27)・(27)とを備えている。」(第2頁右上欄11行〜19行)
記載事項イ;「前記切換爪(27)・(27)は前記排紙路(24)・(25)の分岐部に設置し、前記搬送ローラ(28)・(28)はその切換爪(27)・(27)の背後に設置する。また、切換爪(27)・(27)は、図示しないソレノイド等によって支点軸(27A)・(27A)を中心としてそれぞれ回動可能としている。そして、一方の切換爪(27)を一点鎖線で示したように他方の切換爪(27)と接触する位置まで動かすと、搬送ローラ(23)・(23)から送られる用紙を排紙路(24)へ送り、また反対に他方の切換爪(27)を一方の切換爪(27)と接触する位置まで動かすと、用紙を排紙路(25)へ送る。また、両方の切換爪(27)・(27)を実線位置に保持すると、用紙をその切換爪(27)・(27)間を通して搬送ローラ(26)・(26)へと送る。」(第2頁左下欄15行〜右下欄8行)
記載事項ウ;「しかして、本発明によるレーザプリンタでは、排紙路(24)・(25)と、搬送ローラ(23)・(23)および(26)・(26)と、切換爪(27)・(27)とを1つのユニット(50)に構成し、そのユニット(50)をレーザプリンタ本体(10)に着脱可能に装着してあるので、それらの組立およびメンテナンスをレーザプリンタ本体(10)の外で別個に行えるようになり、組立性およびメンテナンス性が向上する。」(第3頁右下欄9行〜16行)
甲第2号証(実願平2-72911号(実開平4-31151号)のマイクロフィルム)には、両面給紙ユニットを本体に対し着脱自在、すなわちオプション形態とした複写装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項エ;「したがって、両面搬送部23は、ターンガイド16、下搬送コロ18、下ガイド19、搬送コロ20および作動用レバー22とから構成される構造となっている。
また、第3図に示すように、切換爪13は、通常はコイルばね24に引かれて先端部13aが時計方向に回動し、ストッパ25が本体側の切欠の一辺と当接する位置が固定されるようになっている。
作動用レバー22の下端部側には、第5図に示すようにソレノイドにより上下方向に駆動される作動部材としてのレバー26が両面給紙ユニット1に設置されており、このレバー26の駆動に対応して作動用レバー22が上下方向に駆動可能となっている。」(第6頁1行〜15行)
記載事項オ;「第7図は排紙カバーの開閉状態を示す説明図であって、両面給紙ユニット1への搬送途中で転写紙がジャムした場合、図の実線で示すように排紙カバー12を反時計方向に回動させて本体内を開放し、転写紙を取り出す。
この際、切換爪13は排紙カバー12と一体的に回動するので、ジャムした場合、用紙の取り出し性が向上する。排紙カバー12を閉鎖させる場合、切換爪13に設けられた作動ピン31が両面搬送部側に設置されており、作動用レバー22の先端部でガイドされるため、排紙カバー12の閉鎖操作が容易である。」(第7頁11行〜第8頁2行)

4.異議申立理由に対する当審の判断
【本件特許発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの主張について】
甲第1号証に記載された上記記載事項ア〜ウからみて、甲第1号証に記載された発明の「用紙」、「排紙トレー15」、「第1の排紙スタッカ11又は第2の排紙スタッカ12」、「用紙の搬送方向を選択切換する一対の切換爪27,27」、「レーザプリンタ本体10」、「ユニット50」及び「レーザプリンタ」は、各々本件特許発明1の「転写材」、「第2トレイ」、「第1トレイ」、「排紙口案内部材と両面印字案内部材」、「本体」、「排紙フレーム」及び「画像形成装置」に相当するものであるから、本件特許発明1の用語を使用して本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「転写材の印字面が裏面となる第1トレイに排出する排出口と、転写材の印字面が表面となる第2トレイに排出する排出口とを選択する排出口案内部材と、前記排出口案内部材への排出と、転写材の両面に印字するための両面印字部への排出とを選択する両面印字案内部材とを備えた画像形成装置において、本体に着脱自在な排紙フレームに排出口案内部材と両面印字案内部材を配置した画像形成装置。」で一致しており、下記の点で相違している。
相違点;本件特許発明1では、本体に排出口案内部材と両面印字案内部材を駆動する駆動源を配置し、前記駆動源と排出口案内部材および駆動源と両面印字案内部材とをそれぞれ連動連結する機械式連動機構を設け、この連動機構の駆動側を本体に配置するとともに、受動側を排紙フレームに配置し、前記連動機構の駆動側と受動側を接離自在に構成しているのに対して、甲第1号証に記載された発明では、切換爪(27)・(27)の駆動機構について、「切換爪(27)・(27)は、図示しないソレノイド等によって支点軸(27A)・(27A)を中心としてそれぞれ回動可能としている。」(記載事項イ参照)と記載されているにすぎない点。
上記相違点について検討するに、甲第2号証(記載事項エ、オ参照)には、両面給紙ユニットを本体に対し着脱自在とした複写装置において、両面給紙ユニットを装着する際には、ターンガイド16、下搬送コロ18、下ガイド19、搬送コロ20および作動用レバー22とから構成される両面搬送部23を本体に取付け、両面給紙ユニット1に設置されたレバー26により、本体に取付けた作動用レバー22を上下方向に駆動させて切換爪13を切り換えることが記載されているにすぎないものであって、本件特許発明1の上記相違点に係る構成を想到させるための契機がないものであるから、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明とを総合したとしても、本件特許発明1の上記相違点に係る構成について当業者が容易に想到できるものとは認めることができない。
そして、本件特許発明1では、上記相違点に係る構成を採用することによって、特許明細書の段落【0033】に記載されたような格別な効果を奏するものと認める。
したがって、本件特許発明1は、甲第1,2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めることができない。
【本件特許発明1が特許法第36条第5項又は第6項の規定を満たしていないとの主張について】
本件特許発明1の「前記駆動源と排出口案内部材および駆動源と両面印字案内部材とをそれぞれ連動連結する機械式連動機構を設け、」(異議申立人が特許異議申立書で分説した「E」)の「前記駆動源(或いは駆動源)」は、「本体に排出口案内部材と両面印字案内部材を駆動する駆動源を配置し、」(異議申立人が特許異議申立書で分説した「D」)の「本体に配置した駆動源」であることは明らかであり、発明の詳細な説明及び図面の記載とも整合しているものである。
したがって、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第5項及び第6項の規定に違反するものではない。
【手続補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反しているとの主張について】
出願当初の明細書の請求項2(本件特許発明1)には、「本体に排出口案内部材と両面印字案内部材を駆動する駆動源を配置し、前記駆動源と排出口案内部材および駆動源と両面印字案内部材とをそれぞれ連動連結する機械式連動機構を設け、この連動機構の駆動側を本体に配置するとともに、受動側を排紙フレームに配置し、前記連動機構の駆動側と受動側を接離自在に構成したこと」と記載されており、発明の詳細な説明の記載でも駆動源は本体に設けられていれば十分なものであって、駆動源の数については一つに限定するものではない。
そして、平成12年4月13日付及び平成12年7月13日付手続補正書による手続補正によっても、上記出願当初の明細書の請求項2の上記技術事項については何ら補正されていないものであるから、異議申立人の主張するような願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲外の補正がされたものとは認めることができない。
したがって、上記2回の手続補正は、特許法第17条の2第3項に違反するものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件特許発明1についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
異議決定日 2001-07-26 
出願番号 特願平7-132476
審決分類 P 1 652・ 537- Y (B65H)
P 1 652・ 55- Y (B65H)
P 1 652・ 121- Y (B65H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 市野 要助
山崎 豊
登録日 2000-09-14 
登録番号 特許第3110286号(P3110286)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 画像形成装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  

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