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審決分類 |
審判 訂正 1項3号刊行物記載 訂正する H01L 審判 訂正 2項進歩性 訂正する H01L |
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管理番号 | 1043865 |
審判番号 | 訂正2001-39002 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-09-22 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2000-12-27 |
確定日 | 2001-03-15 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2670560号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2670560号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2670560号に係る出願は、昭和61年8月8日に出願された特願昭61-186203号の特許法第44条の規定による新たな特許出願である特願平5-226681号であって、平成9年7月11日に本件特許が設定登録されたところ、平成10年4月28日に特許異議申立があり、平成12年2月3日に本件特許取消決定がなされたものである。 これに対し、本件特許の特許権者は、平成12年3月28日に該取消決定の取消請求訴訟(平成12年(行ケ)第100号)を提起し、さらに平成12年6月3日に訂正審判(審判2000-39053号)を請求したものの、平成12年12月27日に同審判請求を取り下げ、同日付けで新たに本件訂正審判(審判2001-39002号)を請求したものである。 2.請求の要旨 本件審判請求の要旨は、特許第2670560号に係る明細書(以下、「特許明細書」という。)を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正するもので、その訂正の内容は次のとおりである。 すなわち、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の 「減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、高周波電力を発生させる手段と、前記高周波電力を振幅変調せしめる手段と、前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電力を供給する手段と、から構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。」を、 「減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、高周波電力を発生させる手段と、前記高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段と、前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電力を供給する手段と、から構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。」と 訂正するものである。(訂正箇所は下線部) 3.当審の判断 3-1.訂正の目的の適否、新規事項及び拡張変更の有無について 上記訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記高周波電力を振幅変調せしめる手段」を「前記高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段」とするものであって、訂正前の「前記高周波電力を振幅変調せしめる手段」に、高周波電力を反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように振幅変調せしめる手段が含まれていた点は、訂正前明細書の【0012】欄中の「・・・従来のように、単に一定振幅の高周波電力を印加するのをやめて、高周波電力を振幅変調して印加することによって・・・反応性気体の分解または活性化を大きくしたり・・・反応性気体のラジカルが存在する場合は、放電の有無の繰り返しとして振幅変調を行なってもよい。かくすると、変調をかけられた放電が弱いまたは無い時には、減圧CVDと同様の効果があり、たとえば凹凸のある基板表面であっても、その側面が上面と同じ厚さに形成されたり、あるいは反応容器の内壁に発生するフレークを低減する等の効果がある。」との記載及び【0017】欄中の「・・・高周波を振幅変調すると、振幅の波高値が大きくなったり、また小さく(ゼロを含む)なったりするいわゆる振幅変調(amprification modutation)をすることができる。」との記載から明らかである。 したがって、上記訂正は、高周波電力について、訂正前では高周波電力を振幅変調せしめる手段であれば全ての手段が含まれていたものを、本件訂正により「反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように」振幅変調せしめる手段だけに減縮したものである。 よって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。 3-2.独立特許要件について 3-2-1.訂正後の特許請求の範囲に記載された発明 訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「訂正発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「1.減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、高周波電力を発生させる手段と、前記高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段と、前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電力を供給する手段と、から構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。」 3-2-2.引用刊行物とその記載事項 本件特許に係る出願(遡及する出願日:昭和61年8月8日)の出願前に頒布された刊行物1(特開昭60-86831号公報:特許異議申立の甲第1号証)には、「プラズマにより処理ガスを分解し膜を形成するプラズマCVD」(1頁右下欄17〜19行)に用いることのできるプラズマ処理装置に関する発明が開示され、さらに次のことが記載されている。 ア)1頁右下欄11行〜2頁左上欄1行 「プラズマ処理は真空に排気した処理室に、処理ガスを導入し、処理室内に設けた平行平板電極に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、処理を行うものである。処理内容としては・・・プラズマにより処理ガスを分解し膜を形成するプラズマCVD・・・などである。」 イ)4頁右上欄15行〜右下欄6行及び3、7、8図 「処理室10には処理用ガス供給口11、排気口12が設けてある。また処理室内には接地されたアース電極13と高周波電極14があり、高周波電極は絶縁ブッシュ15を介して処理室に固定し、周囲には処理室内壁との放電を防止するシールドケース16が設けてある。また、高周波電極14にはマッチングボックス18を介して高周波パワーアンプ19が接続してある。13.56MHZの標準信号発生器21の信号は、変調信号発生器22からの信号に従い、AM変調器20でAM変調され、高周波パワーアンプ19に供給される。変調信号発生器22は、周期、振幅を変えた矩形波や正弦波など任意の波形を発生することができる。変調信号発生器22でプラズマ処理対象に合わせた第3図や第7図に示す波形に変調する変調信号を発生し、13.56MHZの標準信号発生器21の信号を変調して高周波パワーアンプ19に入力する。高周波パワーアンプ19からは第3図や第7図に示すような波形出力が出力され、マッチングボックス18を通って高周波電極14に印加される。AM変調の場合、周波数は同じであるため、13.56MHZ用のマッチングボックスでマッチングを取ることができる。以上によりプラズマ処理方法で述べた放電プラズマを発生し、プラズマ処理を行うことができる。プラズマエッチングやプラズマCVDなどに用いるアノードカップリング形のプラズマ処理装置は本実施例のアース電極13と高周波電極14の位置を交換することで実現できる。」 してみると、上記ア)イ)の記載から、刊行物1には、真空に排気した「処理室(10)」に処理用ガスを導入し、処理室内に設けた平行平板電極に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、そのプラズマにより処理用ガスを分解し、「プラズマ処理対象」の表面に被膜を形成するプラズマCVD装置において、処理用ガスを分解させる高周波電力を発生させる「13.56MHZの標準信号発生器(21)」と、前記高周波電力を振幅変調せしめる「AM変調器(20)」と、前記振幅変調手段によって変調された高周波電力を増幅する「高周波パワーアンプ(19)」と、「処理室(10)」に配設されると共に、前記振幅変調された高周波電力を供給する平行平板電極を構成する「アース電極(13)と高周波電極(14)」と、前記電極によって振幅変調された高周波電力が平行な面内に供給されるように「プラズマ処理対象」が配設されるように構成されているプラズマCVD処理装置が記載されているといえる。 3-2-3.訂正発明と刊行物1に記載された発明との対比 そこで、刊行物1に記載された発明と訂正発明とを対比すると、前者における「処理室(10)」、「プラズマ処理対象」、「プラズマCVD、プラズマ処理装置」、「13.56MHZの標準信号発生器(21)」、「AM変調器(20)」、「アース電極(13)と高周波電極(14)」は、それぞれ後者における「反応空間」、「被膜形成用基板」、「プラズマ処理装置」、「高周波電力を発生させる手段」、「振幅変調せしめる手段」、「反応空間における一対の電極」に相当するものである。 それゆえ、訂正発明と刊行物1に記載された発明とは、 「減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、高周波電力を発生させる手段と、前記高周波電力を振幅変調せしめる手段と、前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電力を供給する手段と、から構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。」の点において一致し、 前者が「高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段」を有するのに対して、後者はそのような手段を有していない点で両者は一応相違する。 3-2-4.相違点についての判断 訂正発明では、「高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段」という上記相違点の構成を採ることによって、「・・・また、反応性気体のラジカルが存在する場合は、放電の有無の繰り返しとして振幅変調を行なってもよい。かくすると、変調をかけたため放電が弱いまたは無い時、減圧CVDと同様の効果を奏し、たとえば凹凸のある基板表面であっても、その側面も上面と同じ厚さに形成されたり、あるいは反応容器の内壁に発生するフレークを低減する等」(訂正明細書【0012】)の効果を奏するものである。 そして、この点に付き、刊行物1には記載も示唆も見出すことができず、また、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように高周波電力を振幅変調せしめることが周知の技術であるともいえないから、当該手段を当業者が容易に想到し得るものとは認められない。 したがって、上記相違点は実質的な相違点である。 よって、訂正発明は、刊行物1に記載されたものと同一であるとも、刊行物1に記載されたものから当業者が容易に発明することができたものともすることはできず、さらに、他に出願の際独立して特許を受けることのできない発明であるとする理由を発見しない。 したがって、訂正発明は独立特許要件を満たすものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件審判請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的として、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 プラズマ処理装置 (57)【特許請求の範囲】 1.減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、 高周波電力を発生させる手段と、 前記高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段と、 前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電力を供給する手段と、 から構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、振幅変調を加えることにより、プラズマ化学反応を助長せしめたもので、特に、光電変換装置、または珪素を主成分とする非単結晶半導体からなる薄膜電界効果トランジスタ等を大型基板上に大量に生産するためのプラズマ化学気相堆積法を用いたプラズマ処理装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 プラズマ化学気相堆積法(以下、本明細書において、プラズマCVD法と記載する)により形成される珪素を主成分とした非単結晶半導体薄膜や酸化珪素、窒化シリコン等の絶縁体薄膜は、太陽電池、イメージセンサ等の光電変換装置、液晶表示装置等に使用する薄膜電界効果トランジスタなどの材料として幅広く応用されている。これらの装置は、性質の異なる複数の薄膜を積層したものから構成され、大型化および低価格化に伴い、これら積層膜を工業的に大面積に、かつ大量に作製することが要望されている。 【0003】 以下、上記目的を達成する従来の被膜作製方法およびその装置について説明する。 図1は最も一般的な平行平板電極を用いたプラズマCVD装置の概略断面図である。 プラズマCVD装置は、1つの真空予備室(1)と、2つの反応室(2)、(3)とから構成されている。被膜を形成する基板(11)は、基板支持体(10)上に設置され、この基板支持体(10)と共に、仕切り弁(8)を通じて反応室(2)へ搬送される。 該反応室(2)において、基板(11)は、ヒーター(6)により加熱され、所定の温度に達した後、放電電極(4)、(6)により反応性気体を分解、活性化させて基板(11)上に薄膜を形成するものである。 【0004】 この方式は、図1より明らかな如く、基板(11)と放電電極(4)、(6)とが平行であるため、大面積の基板(11)上に薄膜を形成する際に、放電電極(4)、(6)の面積を大きくする必要があった。 さらに、上記薄膜形成方法は、一回の工程で、放電電極(4)、(6)の面積とほぼ等しい被膜面積にしか形成されないため、基板(11)の大量処理に不十分であった。 これらを解決する一つの方法として、本出願人らによるプラズマ気相反応装置(特願昭59-79623号)がある。図2は本出願人が提案した従来例における被膜形成装置の概略断面図である。 【0005】 図2において、被膜形成用基板(25)は、平行平板電極(21)間で、互いに重ね合わせると共に、平行平板電極(21)に対し垂直となるように配設されている。上記従来例と比較して、この方法は、装置の床面積が従来とほぼ同等であるにもかかわらず、一度に従来の10倍以上の処理を行なうことができる。上下の平行平板電極(21)の距離を広げていくに従い、より大きい被膜を被膜形成用基板(25)上に作製することが可能となる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、実際は、上下の平行平板電極(21)の間隔が広くなるに従い、プラズマ放電を起こし難くなる。そこで、平行平板電極(21)の間隔は、通常、平行平板電極(21)の一辺の二倍以内になるようにとっている。このような大面積、大量基板処理のプラズマ気相反応法には、いくつかの欠点が存在する。 すなわち、減圧CVD方法は、膜厚を比較的均一にすることができるが、大面積、大量の基板を処理するために反応性気体を分解または活性化する必要がある。しかし、反応性気体を分解または活性化を行なうためには、高周波電力の印加が必要である。高周波電力を電極に印加すると、電極近傍と電極から離れた所によって放電の状態が異なり、被膜の膜厚分布ができる。 大面積の基板を電極に対して垂直にして、大量の基板を同時に被膜する場合、平行平板電極(21)間の距離が相当長いため、被膜形成用基板(25)上に形成された被膜は、特定の製膜条件の場合以外、平行平板電極(21)間方向に膜厚分布を持ってしまう。 【0007】 図3(A)、(B)、(C)、(D)は図2に示すプラズマ気相反応装置によって、非単結晶珪素半導体を被膜形成用基板上に作製した場合、被膜の形成される状態を示す。 図3(A)において、X軸方向に高周波電力の大きさを、Y軸方向に反応圧力をとる。図3(A)の1の領域で示すように、反応圧力が高めで、高周波電力の投入電力が低い場合、図3(B)に示すように被膜形成用基板(25)の平行平板電極(21)方向の上部および下部近傍に形成される被膜は、厚くなるような膜厚分布を有する。この被膜を作製中、プラズマ反応を行っている第1反応室(13)内のプラズマ発光領域は、上下の平行平板電極(21)の近傍に集まっているのが観察された。 【0008】 次に、低い反応圧力で、高い高周波電力を投入した場合、すなわち高周波電力と反応圧力との関係が図3(A)の3の領域にある場合、図3(D)に示すように被膜形成用基板(25)の平行平板電極(21)方向に対し、中央部近傍に形成される被膜は、厚くなる膜厚分布を有する。 また、狭い範囲ではあるが、高周波電力と反応圧力との関係が図3(A)の2の領域で示す関係にある場合、図3(C)に示すような均一な膜厚分布を得ることが可能であった。 しかし、上記狭い範囲に高周波電力と反応圧力との関係を制御することは困難であった。 【0009】 このように大面積基板上において、不均一な膜厚分布を有すると、同一基板上に構成される各半導体素子の特性、特に物理的および電気的特性には、ひどいばらつきを生じ、大面積基板上にTFTや光電変換装置を作製しても工業的な価値を得ることができなかった。 本発明は、以上のような課題を解決するためのもので、大量の大面積基板上に均一な膜厚分布を有する被膜作製方法およびプラズマ処理装置を提供することを目的とする。 【0010】 【0011】 前記目的を達成するために、本発明のプラズマ処理装置は、減圧状態で被膜形成用基板(25)を保持する反応空間(13)と、高周波電力を発生させる手段と、前記高周波電力を振幅変調せしめる手段と、前記反応空間(13)における一対の電極(21)間に前記振幅変調した高周波電力を供給する手段とから構成される。 【0012】 【作 用】 本出願人は、従来のように、単に一定振幅の高周波電力を印加するのをやめて、高周波電力を振幅変調して印加することによって、大きい面積の基板上に、より均一な膜厚分布の被膜を得ると共に、反応容器の内壁に発生するフレークの低減に効果のあることを発見した。 すなわち、本発明のプラズマ処理装置は、減圧状態においてプラズマを発生させると共に、たとえば、一対の平行平板電極に対して垂直に配設された被膜形成用基板に振幅変調した高周波電力を印加することによって、反応性気体の分解または活性化を大きくしたり、あるいは小さくする。このような反応性気体の分解または活性化の変化は、被膜の膜厚分布をより一定にする。 たとえば、振幅変調の程度は、プラズマ放電の安定継続の点より50%以下とした。また、反応性気体のラジカルが存在する場合は、放電の有無の繰り返しとして振幅変調を行なってもよい。かくすると、変調がかけられた放電が弱いまたは無い時には、減圧CVDと同様の効果があり、たとえば凹凸のある基板表面であっても、その側面が上面と同じ厚さに形成されたり、あるいは反応容器の内壁に発生するフレークの低減等の効果がある。 【0013】 また、形成される被膜の特性上の問題より振幅変調の回数は、五秒間に一回以上であることを特徴とするものである。すなわち、振幅変調度を100%に近づけると、高周波電力の発生しない部分と振幅の大きい部分との差が大きくなる。 また、振幅変調度を小さくすると単に高周波電力を印加したものと同じになる。 さらに、振幅変調の回数は、少ないと単に振幅の一定な高周波電力を印加したことと同じであり、多いと反応性気体の分解または活性化の変化が大きくなる。 以下、実施例により本発明を説明する。 【0014】 【実施例】 本実施例においては、図2に示すプラズマ気相反応装置を使用し、たとえばガラスからなる被膜形成用基板(25)上に非単結晶半導体被膜を形成した。図2において、300mm×400mmの大きさの被膜形成用基板(25)を平行平板電極(21)に対して垂直に配置するように基板支持用トレイ(24)がセッティングされる。本実施例の場合、同基板支持用トレイ(24)に被膜形成用基板(25)を10枚装着してあるが、被膜形成用基板(25)の向かい合う間隔が20mm以上であれば放電するので、より多くの被膜形成用基板(25)上に被膜形成が可能である。 被膜形成用基板(25)の膜厚の均一性を考えるならば、本実施例の場合、10枚ないし15枚程度が良い。 【0015】 なお、この被膜形成用基板(25)の間隔は、被膜作製時の圧力等他の要素によって変化するので、一つに固定することは適当ではない。 この被膜形成用基板(25)がセットされた基板支持用トレイ(24)は、プラズマCVD装置の予備室(12)内に入れられ、真空排気を行った後、ゲイト弁(16)を開き、搬送機構(15)により第1反応室(13)へ移動させる。その後、図2では描けないので省略してあるが、図2の紙面と平行で手前側と奥側にある基板加熱用ヒーターにより、被膜形成面は、被膜形成温度である200℃ないし300℃程度にまで加熱される。 この状態で、第1反応室(13)内にシランガスを50SCCMの流量で導入し、排気系のコンダクタンスを制御して、第1反応室(13)内の圧力を0.01torrないし0.1torrに保持した。 【0016】 次に、上下の平行平板電極(21)間に13.56MHzの高周波電力を印加し、プラズマ放電は、上下の電極フード(18)および基板支持用トレイ(24)の側面にて構成される空間中に閉じ込められ、第1反応室(13)の内壁まで到達していない。よって、形成される被膜も、前記の空間内部にしか形成されず、第1反応室(13)の内壁をクリーニングする必要がないか、またはクリーニングの回数を非常に少なくすることが可能となっている。 この平行平板電極(21)間には、13.56MHzの高周波が供給される。 すなわち、従来よりの公知のプラズマCVD法は、電極に印加する電力値または波高値を一定にすることをよしとしていた。 【0017】 しかし、本発明においては、高周波発信回路と終段の増幅回路(高周波電力を発生させる手段)との間に無線機における振幅変調をさせる変調回路(振幅変調せしめる手段)を加えたものである。 高周波を振幅変調すると、振幅の波高値が大きくなったり、また小さく(ゼロを含む)なったりするいわゆる振幅変調(amprification modutation)をすることができる。 そして、この振幅変調された高周波電力を反応空間に供給する手段である一対の電極に供給した。 本実施例は、かくの如き振幅変調をさせることにより反応性気体の分解または活性化に変化を持たせる。すなわち、従来のプラズマCVDのプラズマ処理方法では、一定の振幅からなる高周波を印加することによって、反応性気体を分解または活性化させて被膜を形成していた。そのため、被膜を形成する基板の大きさが大きくなると、反応空間に分解または活性化した反応性気体が均一に広がらない。 【0018】 これに対して、本実施例は、振幅変調した高周波電力を印加することで、分解または活性化を変化させることで反応性気体を広く分散させることになる。 そのため、被膜形成用基板(25)上には、均質に反応性気体が分散し、被形成面上に到達する。結果として均一な被膜を形成することができるようになった。 従来方法におけるプラズマCVD法は、常時一定の強さの高周波電力を印加することによって、放電が生じているため、その放電を強くしている所で、より放電し易く、放電のしないところで放電し難いというプラズマの不安定性にともなう膜厚分布のバラツキがおき不均一な膜厚になってしまった。 平行平板電極(21)の間に印加する高周波電力によって振幅変調される回数は、たとえば1ないし5秒に一回またはそれ以上とした。 【0019】 本実施例においては、上記振幅変調条件の高周波電力を全体で約20分間放電を行い、非単結晶珪素半導体を基板上に約5000Åの厚さに形成した。この場合、300mm×400mmの大きさの被膜形成用基板(25)に形成された被膜は、振幅変調をかけないものと比較してより均一になった。 本発明の方法を用いて、300mm×400mmの被膜形成用基板(25)の上にP,I,N構造を有する太陽電池(素子面積1.05cm2)を400個作製した。その特性を以下に示す。 光電変換効率(%) 個 数 11.0〜10.6 12 10.5〜10.1 206 10.0〜9.6 173 9.5〜9.1 9 9.0〜8.6 0 【0020】 このように、本実施例の方法によって形成された被膜と従来例の方法によって形成された被膜と比較した場合、本発明の方法によって形成された被膜は、光電変換効率のばらつきが非常に小さくなっている。これは特に、PIN型太陽電池のI型半導体層の膜厚のばらつきが非常に少ないことと深い関係があるためである 【0021】 【発明の効果】 以上述べたように、本発明によれば、高周波電力を振幅変調して、たとえば、一対の平行平板電極間に印加すると共に、当該一対の平行平板電極間に配設された被膜形成用基板に減圧状態でプラズマCVDを行なったため、プラズマが振幅変調した高周波電力によって分散され、大きい面積の被膜形成用基板上に均一な被膜を形成することが可能となる。これにより大きい面積の被膜形成用基板より、取り出せる素子数が増加し、さらに、その特性も均一なものが得られるようになる。 本発明によれば、たとえば、一対の平行平板電極間に高周波電力を振幅変調して印加したため、反応室の内壁にフレークが発生しないので、大面積の素子、たとえば太陽電池等の基板上に凹凸があっても、その側面にも上面と同じ厚さの膜を均一に形成することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 最も一般的な平行平板電極を用いたプラズマCVD装置の概略断面図である。 【図2】 本出願人が提案した従来例における被膜形成装置の概略断面図である。 【図3】 (A)、(B)、(C)、(D)は図2に示すプラズマ気相反応装置によって、非単結晶珪素半導体を被膜形成用基板上に作製した場合、被膜の形成される状態を示す。 【符号の説明】 12・・・予備室 13・・・第1反応室 14・・・第2反応室 15・・・搬送機構 16、17・・・ゲイト弁 18、19、20・・・フード 21、23・・・平行平板電極 24・・・基板支持用トレイ 25・・・被膜形成用基板 |
訂正の要旨 |
本件訂正の要旨は、特許第2670560号に係る明細書を、特許請求の範囲の減縮を目的として、本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正するもので、その訂正の内容は次のとおりである。 すなわち、訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項1の 「減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、高周波電カを発生させる手段と、前記高周波電カを振幅変調せしめる手段と、前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電カを供給する手段と、から構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。」を、 「減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、高周波電カを発生させる手段と、前記高周波電カを、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段と、前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電カを供給する手段と、から構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。」と 訂正するものである。(訂正箇所は下線部) |
審決日 | 2001-03-05 |
出願番号 | 特願平5-226681 |
審決分類 |
P
1
41・
113-
Y
(H01L)
P 1 41・ 121- Y (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山本 一正 |
特許庁審判長 |
関根 恒也 |
特許庁審判官 |
松田 悠子 中澤 登 |
登録日 | 1997-07-11 |
登録番号 | 特許第2670560号(P2670560) |
発明の名称 | プラズマ処理装置 |
代理人 | 加茂 裕邦 |
代理人 | 加茂 裕邦 |