• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 1項2号公然実施 訂正する C12G
審判 訂正 1項1号公知 訂正する C12G
審判 訂正 2項進歩性 訂正する C12G
管理番号 1043873
審判番号 訂正2001-39026  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-18 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2001-02-14 
確定日 2001-04-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2601402号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2601402号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.経緯
本件審判請求は、特許第2601402号の明細書を、本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを求めたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1訂正の内容
(1)特許請求の範囲に
「【請求項1】蒸気の通りが良く、白米が布目より脱落しない適度の大きさの目開空間を有する合成繊維のモノフィラメント糸で構成されている蒸米のこしき布。
【請求項2】モノフィラメント糸のたて密度とよこ密度との和が4〜60本/2.54Cm平方である請求項1記載の蒸米のこしき布。
【請求項3】モノフィラメント糸の太さが300〜5000デニールである請求項1記載の蒸米のこしき布。
【請求項4】吸水性がないモノフィラメント糸で構成されている請求項1記載の蒸米のこしき布。
【請求項5】モノフィラメント糸織物で構成されている請求項1記載の蒸米のこしき布」とあるのを
「【請求項1】ポリプロピレン繊維のモノフィラメント糸織物で構成され、モノフィラメント糸のたて密度とよこ密度との和が4〜60本/2.54Cm平方で、蒸気の通りが良く、白米が布目より脱落しない適度の大きさの目開空間を有する蒸米のこしき布。
【請求項2】モノフィラメント糸の太さが300〜5000デニールである請求項1記載の蒸米のこしき布。」と訂正する。
(2)明細書の段落番号【0004】の欄の第3行目(特許第2601402号公報第3欄第16行目)「合成繊維」を「ポリプロピレン繊維」と訂正する。
(3)明細書の段落番号【0005】の欄の第3〜4行目(同第4欄第4〜5行目)「例えば、ポリプロピレン、塩化ビニリデンの合成性繊維」を「ポリプロピレン繊維」と訂正する。
(4)明細書の段落番号【0007】の欄の表(同第4欄第20〜39行目)中の実施例2の項目をすべて削除し、「実施例1」を「実施例」と訂正する。
(5)明細書の段落番号【0008】の欄の第2行目(同第3欄第41行目)「実施例1、2」を「実施例」と訂正する。
2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項2-1(1)に関連する記載として、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1には、「合成繊維」と記載され、発明の詳細な説明には、「例えば、ポリプロピレン、塩化ビニリデンの合成性繊維」(特許公報第4欄第4〜5行)と記載されていることから、「ポリプロピレン繊維」と訂正することは、特許明細書に記載されているといえる。
そうすると、上記訂正事項2-1(1)は、特許明細書に記載された範囲内において、請求項1の「合成繊維」を「ポリプロピレン繊維」と限定したものであり、上記訂正事項は、さらに、同請求項において、当初明細書の請求項2の「(モノフィラメント糸の)たて密度とよこ密度との和が4〜60本/2.54Cm平方である請求項1記載の蒸米のこしき布」という事項、及び同請求頃5の「モノフィラメント糸織物で構成されている請求項1記載の蒸米のこしき布」という事項を加え、また請求項4を削除し、請求項3を請求項2に繰り上げるものであるから、上記訂正事項2-1(1)は特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項2-1(2)及び(3)は、上記訂正2-1(1)に基づいて、当初明細書の発明の詳細な説明における「合成繊維」に関連する記載を、「ポリプロピレン繊維」のみに限定するものであり、また上記訂正事項2-1(4)及び(5)は、上記2-1(1)の訂正にともない、該当しなくなった実施例を削除するとともに、該当する実施例番号を変えるものであるから、これらの訂正事項は、特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合するようにしたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
2-3 独立特許要件
訂正後の請求項1及び2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、これらの発明について、独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
本件特許第2601402号発明の特許無効審判事件の平成11年審判第35204号の審決において引用した甲第1号証(チッソ株式会社が昭和63年9月1日に改訂発行した「ライトロン」のカタログ)には、ポリオレフィン系熱接着性モノフィラメントが記載されている。
甲第2号証(NBC工業株式会社が平成5年4月に発行した「産業資材用メッシュ」に関するカタログ)及び甲第3号証(平成3年5月発行の甲第2号証と同様のカタログ)には、ES強力網の規格表が記載されており、甲第4号証(同社発行の文書)には、業者に発注する印刷物についての事項が記載されている。
甲第5号証(チッソ株式会社発行のES繊維についてのカタログ)には、ES繊維は鞘部のポリエチレンと芯部のポリプロピレンとから構成されることが記載されている。
甲第6号証(NBC工業株式会社発行のカタログ)には、同社のプロフィールが記載されている。
甲第7号証(NBC工業株式会社の従業員が作成した業務報告書)には、NBC工業株式会社が旭工業繊維株式会社から、酒を作るための「蒸米ネット」としてESP18Tを受注したことが記載されている。
甲第8号証(NBC工業株式会社作成の(旭工業繊維株式会社からの)製造依頼書)には、NBC工業株式会社が三和物産株式会社を通じて旭工業繊維株式会社から、ES繊維を使用する蒸米ネットの製造を依頼されたことが記載されている。
甲第9号証(NBC工業株式会社発行の「製造依頼書 記号/文章の説明」)には、ESP18Tはチッソ株式会社のES繊維を使用するものであることが記載されている。
甲第10号証(NBC工業株式会社作成の「製造証明書」)には、NBC工業株式会社が旭工業繊維株式会社に出荷したESP18Tは、チッソ株式会社のES繊維を使用し、芯がPP(ポリプロピレン)で、鞘がPE(ポリエチレン)であり、繊度が1,000デニールであることを証明している。
甲第11号証(NBC工業株式会社発行の月報)は、蒸米ネットの原反をNBC工業株式会社の協力会社が製造・検査したことを証明している。
甲第12号証(三和物産株式会社の仕入帳簿)は、三和物産株式会社が旭工業繊維株式会社の蒸米ネットの原反を本件特許の出願前に仕入れたことを、甲第13号証(三和物産株式会社の得意先元帳)は、同社が該蒸米ネットの原反を本件特許の出願前に旭工業繊維株式会社に販売したことを、さらに、甲第14号証(三和物産株式会社発行の旭工業繊維株式会社宛の納品書)は、同社が該蒸米ネットの原反を本件特許の出願前に旭工業繊維株式会社に納品したことを、それぞれ証明している。
甲第15号証(株式会社志摩発行の旭工業繊維株式会社宛の請求書)、甲第16号証(旭工業繊維株式会社発行の株式会社共栄醸機宛の売上伝票)、甲第17号証(株式会社共栄醸機の仕入先元帳)、甲第18号証(株式会社共栄醸機発行の小山酒造株式会社宛の請求書の控)、甲第19号証(福山通運株式会社から旭工業繊維株式会社宛の請求書)、甲第20号証(福山通運株式会社発行の「輸送エリア表」)、甲第21号証(旭工業繊維株式会社代理人の弁護士会田恒司作成の報告書)、甲第22号証(福山通運株式会社東京支店深川営業所所長森下勝也作成の証明書)、甲第23号証(株式会社志摩発行の旭工業繊維株式会社宛の請求書)、甲第24号証(旭工業繊維株式会社発行の株式会社共栄醸機宛の売上伝票)、甲第25号証(株式会社共栄醸機発行の株式会社寺田本家宛の請求書の控)、甲第26号証(福山通運株式会社発行の旭工業繊維株式会社宛の請求書)、甲第27号証(株式会社志摩発行の旭工業繊維株式会社宛の請求書)、甲第28号証(旭工業繊維株式会社発行の株式会社北村商店宛の売上伝票)、甲第29号証(株式会社北村商店発行の善哉酒造株式会社宛の貨物発送伝票)、甲第30号証(株式会社志摩発行の旭工業繊維株式会社宛の請求書)、甲第31号証(旭工業繊維株式会社発行の株式会社友醸社宛の売上伝票)、甲第32号証(株式会社友醸社の仕入帳簿)、甲第33号証(株式会社友醸社の売上帳簿)、 第34号証の1ないし4(福山通運株式会社発行の旭工業繊維株式会社宛の請求書)は、本件特許出願前のES繊維を使用する蒸米ネットの取引及び移送に関する事項を記載している。
甲第35号証(東洋経済新報社発行の「化学繊維の実際知識」)は、合成繊維の糸は吸水性のないことを記載している。
甲第36号証(金原出版株式会社発行の「衛生試験法・注解」)には、プラスチックの材質判別法が記載されている。
甲第37号証(日本化学繊維協会発行の「化学せんい」)は、化学繊維の見分け方について記載している。
甲第38号証(岩波書店、広辞苑の抜粋)は、「テスト」の意味について記載しており、甲第39号証(旭工業繊維株式会社が製造・販売した蒸米のこしき布の平面図及び正面図)は蒸米ネットがベルトにより補強されていることを証明しており、甲第40号証(平成6年に旭工業繊維株式会社が作った蒸米ネットのカタログ(サンプル))は、平成6年に蒸米ネットのカタログを作成したことを証明しており、甲第41号証(旭工業繊維株式会社の「会社経歴」)は旭工業繊維株式会社の概要を証明している。
甲第42号証(NBC工業株式会社発行の「ES強力網」のカタログ)は、ES強力網の規格、特性等について記載している。
甲第43号証(株式会社志摩の定款)、甲第44号証(株式会社共栄醸機の経歴書)、甲第45号証(株式会社北村商店の会社概要)、甲第46号証(株式会社友醸社の会社概要)、甲第47号証(三和物産株式会社の会社概要)は、それぞれ、各社の概要等について説明している。
検甲第1号証(平成5年10月に旭工業繊維株式会社の常務取締役であった伊藤昇が特約店に対し見せてまわった旭工業繊維株式会社の蒸米ネットの原反の端布)及び検甲第2号証(検甲第1号証を台紙につけたもの)は、上記伊藤が特約店に対して見せてまわったESP-18Tの原反の端布に関するものである。
上記甲各号証によれば、本件特許出願前に、旭工業繊維株式会社が、「芯部がポリプロピレンで、鞘部がポリエチレンであるES繊維」の原反を三和物産株式会社を通してNBC工業株式会社に対し用途を「蒸米ネット」として製造依頼し、NBC工業株式会社が製造した上記ES繊維の蒸米ネットの原反を、旭工業繊維株式会社の下請会社である株式会社志摩に加工させて製造し、旭工業繊維株式会社及びその特約店が上記ES繊維の蒸米ネットを販売活動したことが認められるものの、上記甲各号証には、全体がポリプロピレンによって構成された繊維によって織られたネットを原反とする蒸米のこしき布の製造、販売については何も示されていないから、全体がポリプロピレンによって構成された繊維によって織られたネットを原反とする蒸米のこしき布は、本件特許出願前に製造、販売等されていたとは認められない。
したがって、全体がポリプロピレン繊維のモノフィラメント糸織物で構成される蒸米のこしき布は、本件出願前には公然知られた、又は公然実施をされた発明であるとはいえない。
次に、本件特許出願時に、全体がポリプロピレンによって構成された繊維によって織られたネットを原反とする蒸米のこしき布が容易に発明できたか否かについて検討する。
上記の平成11年審判第35204号事件の審判の過程で旭工業繊維株式会社が提出した、平成11年11月26日付け弁駁書(第1)には、「このように、甲第7号証に記載されているテストはあくまで米が蒸米のこしき布に「くっつく」か否かのテストであるから、被請求人が主張するように大がかりな実験を行う必要はない。 請求人は、審判請求書に記載したとおり、昭和45年頃よりマルチフィラメント糸で構成した蒸米のこしき布を製造販売してきており、平成5年当時にはすでに蒸米のこしき布に関しては実用的な専門的知識を保有していた。 請求人は、500デニール96フィラメントのポリエステル(通称テトロン)糸2本を併せて(すなわち、1000デニールのポリエステル糸)を縦方向横方向に使用して編んだマルチフィラメント糸による蒸米のこしき布を製造・販売してきた。この請求人のマルチフィラメント糸により構成した蒸米のこしき布は(米が「くっつく」点を除き)使用上の問題はなく、多くの酒造業者が使用してきた。 請求人が製造販売したモノフィラメント糸で構成した蒸米のこしき布は、審判請求書の第7頁に記載したように鞘部がポリエチレンにより芯部がポリプロピレンにより構成されたチッソ株式会社製のES繊維(甲第5号証)を用い、その太さは1000デニールのものを用いて(甲第7号証から甲第10号証)構成されている。 そして、甲第37号証である日本繊維協会発行の「化学せんい」の40頁の表(下部に「用語の説明」と記載してある頁)の表の「引張り強さ(g/d)」の欄の「湿潤」(蒸した米は乾燥していないため)の欄を見ればわかるように、ポリエステルよりもポリプロピレン及びポリエチレンの方が強度がある。すなわち、ポリエステルの湿潤における引張り強さは4.3〜6.0なのに対し、ポリプロピレンでは4.5〜7.5、ポリエチレンでは5.0〜9.0である。 よって、被請求人の主張するような大がかりな実験をするまでもなく、請求人のモノフィラメント糸で構成した蒸米ネットは「完成品」として使用可能となるものである。」(第5頁4行目から第6頁10行)と述べられており、旭工業繊維株式会社は、蒸米のこしき布を製造するに際して、その性能及び耐久性等について、大規模な確認試験を実際に行う代わりに、同社が有する実用的な専門的知識及び従来からの実績・経験に基づいて、これらを判断したものと認められる。
しかしながら、専門的知識等に基づいて性能及び耐久性等を判断した上で、わざわざ規格外品であるES強力網の原反をNBC工業株式会社に製造依頼してまでしてES強力網による蒸米のこしき布を製造及び販売したにもかかわらず、翌年には、全体がポリプロピレンによって構成された繊維によって織られたネットを原反とする、より改善された蒸米のこしき布を製造する必要性が早くも生じたこと、及びそのために種々の研究を行う必要があったことは、同じく旭工業繊維株式会社が提出した、平成12年1月14日付け口頭審理陳述要領書第3頁12〜21行目に「(3)請求人は、平成5年には鞘部がポリエチレンにより、芯部がポリプロピレンによって構成されたチッソ株式会社製の「ES繊維」によって織られたNBC工業株式会社製のES強力網によって蒸米のこしき布を作り販売したが、その後の研究及びユーザーの意見等から、全体がポリプロピレンによって構成された繊維を用いた方が良いということになり、平成6年には、全体がポリプロピレンによって構成された繊維によって織られたネットを原反として蒸米のこしき布を作ったが、その際の繊維の太さ及びメッシュ(たて糸およびよこ糸の密度)は、平成5年にES繊維を用いて作った蒸米のこしき布と略同一である。」と述べられていることからも明らかである。
このように、全体がポリプロピレンによって構成された繊維によって織られたネットを原反とする蒸米のこしき布を製造・販売するためには、旭工業繊維株式会社が従来から有していた知識、経験に加えて、ES繊維で製造されたこしき布を製造・販売して始めて得ることができるユーザー等の意見を踏まえた更なる研究が必要であり、かかる研究を行うことによってのみ、同繊維によって織られたネットを使用する蒸米のこしき布の発明をなし得たものであるから、単にNBC工業株式会社製のES強力網による蒸米のこしき布が製造及び販売されたにすぎない平成5年10月頃とほぼ時期を同じくする本件出願日において、全体がポリプロピレンで構成されるこしき布についての発明を当業者が容易に想到し得たということはできない。
このことは、さらに、上記引用において、旭工業繊維株式会社が言及する甲第37号証には、同社が主張する湿潤という状態において、ポリエチレンの引張り強さは5.0〜9.0であるのに対して、ポリプロピレンのそれは4.5〜7.5であると記載されており、ポリプロピレンの強度の方が小さいことがわかる。このため、従来からの実用的な専門的知識に基づいて、商品の材料として最終的に選択したES繊維に代えて、わざわざ引張り強さの小さいポリプロピレンのみで構成されるネットを用いるなどということは、格別の事情なくしては、到底想定し得ないことであるということからも理解し得ることである。
以上のとおりであるから、例え、本願出願当時に、ES強力網を使用する蒸米のこしき布が、公然知られており、又は公然実施されていたとしても、全体がポリプロピレンによって構成される繊維で織られたネットを使用する蒸米のこしき布についての請求項1に係る発明は、当業者が容易に発明することができたと認めることはできない。
請求項2に係る発明は、請求項1を引用する発明であり、請求項1に係る発明と同様な理由により、当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。
また、他に訂正後の請求項1及び2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。
したがって、訂正後の請求項1及び2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でもない。

3.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第2項ないし第4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
蒸米のこしき布
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリプロピレン繊維のモノフィラメント糸織物で構成され、モノフィラメント糸のたて密度とよこ密度との和が4〜60本/2.54Cm平方で、蒸気の通りが良く、白米が布目より脱落しない適度の大きさの目開空間を有する蒸米のこしき布。
【請求項2】 モノフィラメント糸の太さが300〜5000デニールである請求項1記載の蒸米のこしき布。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、蒸米が接着しないで、且つ蒸気の通りを良くする日本酒製造の際に用いる甑布に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、日本酒製造の際に蒸米を原料とする仕込み工程において、白米を甑内にて蒸して蒸米を造るときに用いる甑布は、ナイロンの細いデニールの糸を多数束ねて編んだものであった。
【0003】
【発明が解決しょうとする課題】
図3,4に示す従来使用のマルチフィラメント糸4により構成されている編物ネット甑布5は、ナイロンを用いている為に吸水性が高く澱粉質を接着し易い。また、マルチフィラメント糸4は細いデニールの糸を多数束ねて編んだものであるため、糸は毛立ち且つ糸目間があると共にその編目に小さな隙間がある。従って、それぞれのフィラメント糸4の間に澱粉質が入り込み、編物である為にそれぞれの結接点に澱粉質が入り込むようになる。このナイロン製の甑布に付着積層した澱粉質と白米の側の澱粉質とが高温蒸気の中で融合し、蒸米取り出しの際には、甑布サイドが早く冷却されることから、蒸米が甑布に常に3パーセント程度接着してしまう。その甑布を水に浸漬して蒸米をふやけさせて剥がす労力と米のロスを生じることに対する改良が永い間、常に業界での懸案とされていた。又、編物であるから引っ張られた方向に伸び、その伸び量は方向によって異なるから網目の大きさが変わり蒸米を挟んだり、蒸気の通り量か変わるといった欠点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明の蒸米のこしき布は、吸水性がなく、太さが300〜5000デニールであるポリプロピレン繊維のモノフィラメント糸による織物であって、モノフィラメント糸のたて密度と、よこ密度との和が4〜60本/2.54cm平方で、蒸気の通りが良く、白米が布目より脱落しない適度の大きさの目開空間を有するように構成されたものである。
【0005】
【実施例】
この発明の蒸米のこしき布を例示した図面に基づいて説明する。図1,図2に示すこの発明の蒸米のこしき布1は、吸水性がない、ポリプロピレン繊維で太さが300〜5000デニールの一本の定らめれた糸、つまりモノフィラメント糸2による織物であって、モノフィラメント糸2のたて密度と、よこ密度との和が4〜60本/2.54cm平方で、蒸気の通りか良く、白米が布目より脱落しない適度の大きさの目開空間3を有するように構成されたものである。
【0006】
【発明の効果】
この発明の織物の蒸米のこしき布と、従来の編物の蒸米のこしき布とを用いて、白米800Kgづつの蒸米を放冷機に移送後の甑布を水に浸漬して、甑布に最後まで付着した蒸米、通称はらいめしを計量した結果を表1に示した。
【0007】
【表】

【0008】
表1に示す通り従来の甑布では28Kgのはらいめしがあったのに対して、本発明の実施例の甑布を使用した場合のはらいめしは0である。つまり、従来の甑布によれば100トンの白米を仕込むと3.5トンのはらいめしができることになり、その水分率が約50パーセントであるから1.75トンの白米代と労働力の軽減となった。又、1000トンの白米を仕込んだ場合には35トンのはらいめし、すなわち17.5トンの白米代と労働力の軽減が可能になる訳で、経済メリットとして大幅な向上効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の蒸米のこしき布の平面図である。
【図2】 図1の側面図である。
【図3】 従来の蒸米のこしき布の平面図である。
【図4】 図3の側面図である。
【符号の説明】
1〜こしき布
2〜モノフィラメント布
3〜目開空間
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)特許請求の範囲の減縮及びその減縮に伴う不明りょうな記載の釈明を目的として、特許請求の範囲に
「【請求項1】蒸気の通りが良く、白米が布目より脱落しない適度の大きさの目開空間を有する合成繊維のモノフィラメント糸で構成されている蒸米のこしき布。
【請求項2】モノフィラメント糸のたて密度とよこ密度との和が4〜60本/2.54Cm平方である請求項1記載の蒸米のこしき布。
【請求項3】モノフィラメント糸の太さが300〜5000デニールである請求項1記載の蒸米のこしき布。
【請求項4】吸水性がないモノフィラメント糸で構成されている請求項1記載の蒸米のこしき布。
【請求項5】モノフィラメント糸織物で構成されている請求項1記載の蒸米のこしき布」とあるのを
「【請求項1】ポリプロピレン繊維のモノフィラメント糸織物で構成され、モノフィラメント糸のたて密度とよこ密度との和が4〜60本/2.54Cm平方で、蒸気の通りが良く、白米が布目より脱落しない適度の大きさの目開空間を有する蒸米のこしき布。
【請求項2】モノフィラメント糸の太さが300〜5000デニールである請求項1記載の蒸米のこしき布。」と訂正する。
(2)明細書の段落番号【0004】の欄の第3行目(特許第2601402号公報第3欄第6行目)「合成繊維」を「ポリプロピレン繊維」と訂正する。
(3)明細書の段落番号【0005】の欄の第3〜4行目(同第4欄第4〜5行目)「例えば、ポリプロピレン、塩化ビニリデンの合成性繊維」を「ポリプロピレン繊維」と訂正する。
(4)明細書の段落番号【0007】の欄の表(同第4欄第20〜39行目)中の実施例2の項目をすべて削除し、「実施例1」を「実施例」と訂正する。
(5)明細書の段落番号【0008】の欄の第2行目(同第3欄第41行目)「実施例1,2」を「実施例」と訂正する。
審決日 2001-04-03 
出願番号 特願平5-299016
審決分類 P 1 41・ 111- Y (C12G)
P 1 41・ 112- Y (C12G)
P 1 41・ 121- Y (C12G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新見 浩一  
特許庁審判長 眞壽田 順啓
特許庁審判官 佐伯 裕子
徳廣 正道
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2601402号(P2601402)
発明の名称 蒸米のこしき布  
代理人 本多 敬子  
代理人 本多 一郎  
代理人 本多 敬子  
代理人 本多 一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ