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審決分類 審判 全部申し立て 特39条先願  E05C
審判 全部申し立て 特174条1項  E05C
管理番号 1044996
異議申立番号 異議2000-72936  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-04-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-27 
確定日 2001-07-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第3005614号「地震時に開き戸がロックされる家具、吊り戸棚、地震時ロック及び解除方法と装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3005614号の請求項4ないし6に係る特許を取り消す。 同請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第3005614号は、平成7年9月27日に出願(優先日平成6年10月1日、平成7年7月22日)され、平成11年11月26日に特許権の設定登録がされ、平成12年7月27日に鈴木俊郎より特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明の特許について特許異議の申立がされ、平成12年9月28日付で特許権者に対して期間を指定して取消理由通知がなされたが、その指定期間内には何ら応答がなかった。

第2 取消理由通知の内容

上記取消理由通知の内容は下記のとおりである。

1.本件発明
本件特許第3005614号は、平成7年9月27日(優先日平成6年10月1日、平成7年7月22日)の出願であって、平成11年11月26日に特許権の設定登録がされ、平成12年7月27日に鈴木俊郎より特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明の特許について特許異議の申立がされ、の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明(以下、本件発明1ないし6という。)、本件発明1ないし6は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のものである。
「【請求項1】開き戸側に係止具を設け本体側の装置本体から係止手段が地震時に突出して前記係止具に係止し、該係止状態は開き戸がわずかに開かれた位置で突出した係止手段により開き停止する係止状態でありその係止位置はわずかに開かれた開き戸の隙間から解除可能な係止位置である開き戸の地震時ロック及び解除方法
【請求項2】わずかに開かれた開き戸の隙間からの解除可能な位置に突出する係止手段の請求項1の地震時ロック及び解除方法を用いた家具
【請求項3】わずかに開かれた開き戸の隙間からの解除可能な位置に突出する係止手段の請求項1の地震時ロック及び解除方法を用いた吊り戸棚
【請求項4】本体側の装置本体に摩擦力を減少された前後に動き可能なゆれ検出手段を設け該ゆれ検出手段による地震検出時に装置本体の係止手段が開き戸の係止具に係止し、該係止状態は開き戸がわずかに開かれた位置で開き停止する係止状態でありその係止位置はわずかに開かれた開き戸の隙間から解除可能な係止位置である開き戸の地震時ロック装置
【請求項5】本体と、該本体に蝶番で開閉可能に取り付けられた開き戸と、該開き戸を地震時に開き停止する請求項4の地震時ロック装置とからなる家具
【請求項6】本体と、該本体に蝶番で開閉可能に取り付けられた開き戸と、該開き戸を地震時に開き停止する請求項4の地震時ロック装置とからなる吊り戸棚
2.本件発明4について
(1)本件特許の特許出願については、出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前である平成11年4月6日付けの手続補正書により、明細書の特許請求の範囲が補正され、本件発明4について上記1の請求項4に記載したとおり補正された。
(2)本件発明4において、「ゆれ検出手段」と「係止手段」については、本体側の装置本体設けられた「摩擦力を減少された前後に動き可能なゆれ検出手段」、「該ゆれ検出手段による地震検出時に装置本体の係止手段が開き戸の係止具に係止し・・」と記載されており、「ゆれ検出手段」と「係止手段」は同じものが「ゆれ検出手段」と「係止手段」とを兼ねる構成と、「ゆれ検出手段」と「係止手段」とが別異のものである構成の両方を含むものとなっている。
しかしながら、以下に示すように、本件特許の出願時の明細書及び図面(異議申立人の提示した甲第2号証参照)においては、「係止手段」が「ゆれ検出手段」として機能する態様、つまり「ゆれ検出手段」が「係止手段」を兼ねる態様しか記載されていない。
すなわち、本件特許の出願時の明細書及び図面において、「ゆれ検出手段」と「係止手段」とに関しては次の記載が認められる。
(ア)特許請求の範囲には、
「【請求項1】地震のゆれの力で動き可能に支持されたゆれ検出手段が地震時に開き戸のロック位置に移動する地震時ロック装置において該ロック装置のゆれ検出手段を開き戸の隙間から操作具を挿入し解除位置に移動させる地震時ロック装置の解除方法
【請求項2】地震のゆれの力で動き可能に支持されたゆれ検出手段が地震時に開き戸のロック位置に移動する地震時ロック装置において該ロック装置のゆれ検出手段を開き戸の隙間から操作具として柔軟な挿入体を挿入し解除位置に移動させる地震時ロック装置の解除方法
【請求項3】地震のゆれの力で動き可能に支持されたゆれ検出手段が地震時に開き戸のロック位置に移動する地震時ロック装置において該ロック装置のゆれ検出手段を開き戸の隙間から操作具として剛性ある挿入体を挿入し解除位置に移動させる地震時ロック装置の解除方法
【請求項4】請求項1乃至3記載の解除方法で解除される地震時ロック装置」と記載され、
(イ)段落番号【0004】(課題を解決するための手段)には、
「本発明は以上の目的達成のために地震のゆれの力で動き可能に支持されたゆれ検出手段が地震時に開き戸のロック位置に移動する地震時ロック装置において該ロック装置のゆれ検出手段を開き戸の隙間から操作具を挿入し解除位置に移動させる地震時ロック装置の解除方法等を提案するものである。」と記載され、
(ウ)段落番号【0005】(実施例)には、
「【実施例】以下本発明の解除が確実な地震時ロック装置及びその解除方法を図面に示す実施例に従い説明する。ここで本発明の地震時ロック装置の理解を容易にするためにロックの原理についてまず説明する。図1はロックの原理説明のための装置を示し、該装置は家具、吊り戸棚等の本体(1)に固定された装置本体(3)を有する。該装置本体(3)には地震のゆれの力で動き可能に係止手段(4)が支持され、該係止手段(4)は地震のゆれの力を検出するゆれ検出手段として機能する。係止手段(4)は係止部(4a)を有し装置本体(3)の停止部(3a)で停止されるものである。次に開き戸(2)に係止具(5)が取り付けられ前記係止手段(4)が地震のゆれの力で動いた際にその係止部(4a)が係止される係止部(5b)を有する。一方係止手段(4)の戻り路(図示の実施例では後部天井面)に弾性手段(6)が設けられている。以上の実施例に示した原理説明のための装置の作用は次の通りである。すなわち開き戸(2)が図1の様に閉じられた閉止状態では家具、吊り戸棚等の本体(1)側の装置本体(3)に開き戸(2)側の係止具(5)が近接している。この状態で地震が起こると図2に示す様に係止手段(4)が動いて係止具(5)に接触する。更にゆれの力により図3に示す様に開き戸(2)がわずかに開くと係止手段(4)の係止部(4a)が係止具(5)の係止部(5b)に係止される。(以下略)」と記載され、
(エ)段落番号【0009】(発明の効果)には、
「【発明の効果】本発明の地震時ロック装置及びその解除方法の実施例は以上の通りでありその効果を次に列記する。
(1)本発明の地震時ロック装置及びその解除方法は特に開き戸の隙間から操作具を挿入しゆれ検出手段を解除位置に移動させるため解除が確実に出来る。
(2)本発明の地震時ロック装置及びその解除方法は特に開き戸の隙間から操作具を挿入しゆれ検出手段を解除位置に移動させるため解除が容易に出来る。」と記載され、
(オ)図面の図1ないし図6、図8ないし図11、図13及びそれらの図に関する説明において、地震が起こると地震のゆれの力で係止手段4が動いて係止具5に接触し、開き戸がわずかに開くことによって係止手段の係止部が係止具の係止部に係止される態様が記載されている。
以上のように、本件特許の出願時の明細書においては、「係止手段」は「ゆれ検出手段」として機能する態様、つまり「係止手段」が「ゆれ検出手段」を兼ねる態様しか記載されておらず、「ゆれ検出手段」と「係止手段」とが別異のものである態様は記載されておらず、またそのことを示唆する記載もない。
(3)以上のように、平成11年4月6日付けの手続補正書による補正によって、本件発明4は、「ゆれ検出手段」と「係止手段」とが別異のものである構成も含まれることとなるが、当該構成は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていないことから、当該補正は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではなく、平成6年改正前の特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。
(4)したがって、本件(発明4に係る)特許出願は、同法第49条の規定により拒絶をすべき旨の査定をしなければならないものである。
3.本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、いずれも本件発明4をさらに限定したものであるから、本件発明4に記載した理由と同じ理由により、本件(発明5及び6に係る)特許出願は、同法第49条の規定により拒絶をすべき旨の査定をしなければならないものである。
4.まとめ
以上のように、本件発明4ないし6についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により取り消されるべきである。

第3 取消理由通知の検討

上記取消理由通知は妥当であって、本件発明4ないし6に係る特許は上記取消理由通知に記載した理由で取り消されるべきものである。

第4 特許異議の申立ての理由の検討

1.特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証ないし甲第6号証を提出して、取り消し理由を次のように主張する。
(1)本件特許の請求項1ないし3に係る発明(本件発明1ないし3)は甲第1号証の請求項1ないし3及び4に係る発明と同一であり、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
(2)本件特許の請求項4に係る発明は、いわゆる新規事項を追加したものであって、特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができない。
(3)本件特許の請求項4ないし6に係る発明は、甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.本件発明4ないし6についての特許は、上記「第3 取消理由通知の検討」に記載したとおり、その特許は取り消されるべきである。
3.本件発明1ないし3について
そこで、本件発明1ないし3について検討する。
3-1 異議申立人は、本件発明1ないし3は、平成7年7月30日に出願された特願平7-225669号(優先日平成6年9月12日)(以下、先願という。)に係る特許第2896568号(甲第1号証参照)の特許請求の範囲の請求項1ないし3及び4に係る発明と同一であり、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない旨主張する。
3-2 先願発明
先願(特許第2896568号)の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された発明(以下、請求項1ないし7に記載された発明を先願発明1ないし7という。)は次のとおりである。
【請求項1】家具、棚等の本体内に装置本体を固定し、開き戸側に係止具を設け、前記装置本体内に軸支されず突出可能に収納された係止手段が地震時に突出して前記係止具に係止するロック方法において、該係止状態は開き戸がわずかに開かれた位置で開き停止する係止状態である開き戸のロック方法
【請求項2】家具、棚等の本体内に装置本体を固定し、開き戸側に係止具を設け、前記装置本体内に軸支されず突出可能に収納された係止手段が地震の前後方向ゆれに起因して上下方向に突出し前記係止具に係止するロック方法において、該係止状態は開き戸がわずかに開かれた位置で開き停止する係止状態である開き戸のロック方法
【請求項3】収納されている係止手段が地震時に突出する請求項1又は2のロック方法を用いた家具
【請求項4】収納されている係止手段が地震時に突出する請求項1又は2のロック方法を用いた棚
【請求項5】家具、棚等の本体内に固定された装置本体内に軸支されず収納された係止手段が突出することによりわずかに開かれて開き停止した開き戸が閉止位置に戻る際にその開き戸の動きで前記係止手段の突出が戻される開き戸の解除方法
【請求項6】請求項1又は2のロック方法と請求項5の解除方法を用いた家具
【請求項7】請求項1又は2のロック方法と請求項5の解除方法を用いた棚

3-3 対比・判断
(1)本件発明1ないし3と先願発明1ないし7とが同一であるか否かについて先に検討する。
(2)本件発明1と、先願発明1及び2とを比較すると、先願発明1及び2は、地震時における開き戸のロック方法は、係止手段と係止具との係止状態が「該係止状態は開き戸がわずかに開かれた位置で開き停止する係止状態である」ことを構成要件としているのに対し、本件発明1は、地震時における開き戸のロック方法は、係止手段と係止具との係止状態が「係止状態は開き戸がわずかに開かれた位置で突出した係止手段により開き停止する係止状態でありその係止位置はわずかに開かれた開き戸の隙間から解除可能な係止位置」であることを限定して構成要件としていることから、本件発明1と先願発明1及び2とは同一の発明でない。
さらに、本件発明1における上記限定に係る構成が、先願発明1及び2において、当業者にとって周知、慣用の技術であったとの証拠も提出されておらず、上記限定に係る構成を周知、慣用技術の付加とすることもできないことから、本件発明1と先願発明1及び2とを同一の発明とすることはできない。
異議申立人は、「解除可能な係止位置」に関して、ドアロックされたドアを解除するのに、ドアウィンドウの隙間から細いフック付鉄棒やワイヤ等を挿入してロック解除することは広く実施されてきたことであり、隙間からワイヤを挿入して解除することは周知の慣用技術である旨主張する。
しかしながら、異議申立人のいうロック解除方法が仮に周知の技術であったとしても、当該周知技術は、係止手段と係止具との係止状態において開き戸がわずかに開かれた係止位置である場合のように、開かれた戸の隙間からロックを解除する周知技術ではないことから、本件発明1でいうロック解除方法の周知技術ということはできず、異議申立人の主張は採用できない。
(3)本件発明1と先願発明3、4、6、7とを比較すると、先願発明3、4、6、7は、先願発明1または2を引用して技術的に限定した発明であるから、上記(1)に記載した理由と同じ理由で、本件発明1と先願発明3、4、6、7とを同一の発明とすることはできない。
(4)本件発明1と先願発明5とを比較すると、先願発明5は、「家具、棚等の本体内に固定された装置本体内に軸支されず収納された係止手段が突出することによりわずかに開かれて開き停止した開き戸が閉止位置に戻る際にその開き戸の動きで前記係止手段の突出が戻される開き戸の解除方法」であるのに対し、本件発明1は、開き戸の解除方法は、「係止状態は開き戸がわずかに開かれた位置で突出した係止手段により開き停止する係止状態でありその係止位置はわずかに開かれた開き戸の隙間から解除可能な係止位置」である解除方法であることから、本件発明1と先願発明5とは同一の発明でない。
(5)本件発明2及び3と先願発明1ないし7とを比較すると、本件発明2及び3は、本件発明1を引用して技術的に限定した発明であるから、上記(2)ないし(4)に記載した理由と同じ理由で、本件発明2及び3と先願発明1ないし7とが同一の発明であるとはいえない。
(6)以上のように、本件発明1ないし3は、先願発明1ないし7と同一の発明とすることはできないことから、本件特許又は先願の出願日について検討するまでもなく、本件発明1ないし3は特許法第39条第1項に該当しないのであって、異議申立人の主張は採用できない。
4.まとめ
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし3についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。

第5 むすび

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-03-12 
出願番号 特願平7-287775
審決分類 P 1 651・ 55- ZC (E05C)
P 1 651・ 4- ZC (E05C)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 南澤 弘明片山 輝伸  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 杉浦 淳
鈴木 公子
登録日 1999-11-26 
登録番号 特許第3005614号(P3005614)
権利者 長谷川 信
発明の名称 地震時に開き戸がロックされる家具、吊り戸棚、地震時ロック及び解除方法と装置  
代理人 橋爪 英彌  
代理人 山崎 利臣  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  

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