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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H01J 審判 一部申し立て 特39条先願 H01J |
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管理番号 | 1045117 |
異議申立番号 | 異議2001-71346 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-09-21 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-04-27 |
確定日 | 2001-09-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3106673号「Fe-Ni系シャドウマスク用薄板およびその製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3106673号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 特許第3106673号の請求項に係る発明についての出願は、平成4年2月28日に出願され、平成12年9月8日にその発明について特許の設定登録がなされた後、請求項1に係る発明の特許について、特許異議申立人西田良幸より特許異議の申立てがなされたものである。 (2)異議申立てについて ア.本件発明 特許第3106673号の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】鋼板の表面粗さを0.3μm≦Ra≦0.8μmとし、かつ3.0≦Rku ≦7.0で、50μm≦Sm≦150μmとしたことを特徴とするFe-Ni系シャドウマスク用薄板。 イ.申立ての理由の概要 (申立ての理由1) 特許異議申立人は、証拠として甲第1号証(特開平2-197301号公報)を提出し、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許を取り消すべき旨主張している。 (申立ての理由2) 特許異議申立人は、証拠として甲第2号証(特願平2-218946号:出願日、平成2年8月22日)を提出し、請求項1に係る発明は、平成2年8月22日の出願に係る発明(以下、「先願発明」という。)と同一であるから、請求項1に係る発明の特許は、特許法第39条第1項の規定に違反してなされたものであって、特許を取り消すべき旨主張している。 ウ.異議申立人が提出した甲号証 特許異議申立人が提出した甲第1号証には、次の事項が第1図及び第2図とともに記載されている。 (1)「(1)表面の中心線平均粗さRaが0.3〜1.2μmであり、かつ表面粗さの微視的断面形状が平坦な山頂面を有する台形状凸部と、該凸部を囲繞する椀状凹部とで構成され、 Sm:隣り合う凸部中心間平均距離、 do:凸部の平坦な山頂面の平均直径、 h:凸部山頂面と凹部最深部との中心間平均距離、 とするとき、 Sm:20〜300μm h:2〜10μm do:2〜30μm である薄金属板でなる事を特徴とするシャドウマスク用素材。 (2)薄金属板が鋼板もしくはアンバー合金板である特許請求の範囲第1項記載のシャドウマスク用素材。」(第1頁左欄第9行〜同第20行) (2)「本発明の目的は真空引き特性が良く、しかもマスク焼鈍時における金属板間のくっつきが少なく、」(第3頁右上欄第9行〜同第11行) (3)「doは2〜30μmでなければならない。 その理由は30μmを越えると山頂部平坦部が広くなり過ぎ、マスク焼鈍時に金属板間のくっつきが生じやすいからである。」(第頁左上欄第4行〜同第7行) 特許異議申立人が提出した甲第2号証の先願発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のものである。 「Si:0.01〜0.15wt%、Ni:34〜38wt、Mn:0.40wt%以下およびC:0.005wt%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物から成り、かつその合金鋼帯の板厚はフラットマスクの多数枚を積み重ねて焼鈍処理する工程を含むシャドウマスクの製造に供する該フラットマスクと実質上同等であり、その表面粗度(Ra)が、0.3〜0.8μm、断面曲線の凹凸の平均間隔(Sm、以下単にSmと略す)が70〜160μmで、しかも粗さ曲線の高さ方向のとがり指標であるクルトシス(Rkr)が3〜7で且つ (Ra)≧-1/15(Rkr)+0.6 の条件を満足し、またエッチング直前での合金板の表面におけるSiの成分偏析率 |(偏析域の成分濃度-平均成分濃度)/平均成分濃度|×100が 10%以下であって最小濃度部で0.01%未満および最大濃度部で0.15%超えを含まないことを特徴とするシャドウマスク用Fe-Ni合金薄板。」 (4)対比・判断 (申立ての理由1について) 請求項1に係る発明と異議申立人が提出した甲第1号証に記載の発明とを対比すると、両者は、 【一致点】 「鋼板の表面粗さを0.3μm≦Ra≦0.8μmとし、かつ50μm≦Sm≦150μmとしたことを特徴とするFe-Ni系シャドウマスク用薄板。」 で一致し、 【相違点】 請求項1に係る発明では、鋼板の表面粗さを、3.0≦Rku ≦7.0で限定しているのに対して、甲第1号証に記載の発明では、2μm≦do ≦30μm、2μm≦h ≦10μmで限定した点 で相違する。 上記【相違点】について検討すると、甲第1号証に記載のdo及びhが、請求項1に係る発明におけるRkuと同様に、表面のとがりの程度を表すものであるにしても、両者は定義が異なるものであるばかりでなく、上記do及びhから上記Rkuを導くための換算式あるいはデータが示されているわけではないから、2μm≦do ≦30μm、2μm≦h ≦10μmといった値から、3.0≦Rku ≦7.0の値を導き出すことはできない。 そして、請求項1に係る発明は、上記技術的事項により、明細書記載の作用効果を奏するものである。 したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載されたものから当業者が容易になし得るものではない。 (申立ての理由2について) 請求項1に係る発明と異議申立人が提出した甲第2号証の先願発明とを対比すると、両者は、 【一致点】 「鋼板の表面粗さを0.3μm≦Ra≦0.8μmとし、かつ3.0≦Rku ≦7.0で、70μm≦Sm≦150μmとしたことを特徴とするFe-Ni系シャドウマスク用薄板。」 で一致し、 【相違点1】 甲第2号証の先願発明では、「Si:0.01〜0.15wt%、Ni:34〜38wt、Mn:0.40wt%以下およびC:0.005wt%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物から成り、かつその合金鋼帯の板厚はフラットマスクの多数枚を積み重ねて焼鈍処理する工程を含むシャドウマスクの製造に供する該フラットマスクと実質上同等であり、」及び、「(Ra)≧-1/15(Rkr)+0.6の条件を満足し、またエッチング直前での合金板の表面におけるSiの成分偏析率|(偏析域の成分濃度-平均成分濃度)/平均成分濃度|×100が10%以下であって最小濃度部で0.01%未満および最大濃度部で0.15%超えを含まない」との限定がされているのに対して、 本願の請求項1に係る発明では、これらの限定がない点 【相違点2】 甲第2号証の先願発明では、150μm<Sm≦160μmを含むのに対して、 本願の請求項1に係る発明では、Smがこの範囲を含まない点 で相違する。 そして、上記相違点は、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等とはいえないばかりでなく、他の技術的事項と相まってその効果を奏するものである(審査基準第4章3.3(2)(i)参照。)。 したがって、本願の請求項1に係る発明は、甲第2号証の先願発明と同一ではない。 (5)むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-08-08 |
出願番号 | 特願平4-78505 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(H01J)
P 1 652・ 4- Y (H01J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 江成 克己、榎本 吉孝 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
杉野 裕幸 山川 雅也 |
登録日 | 2000-09-08 |
登録番号 | 特許第3106673号(P3106673) |
権利者 | 日本鋼管株式会社 |
発明の名称 | Fe-Ni系シャドウマスク用薄板およびその製造方法 |