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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A01M 審判 全部申し立て 1項2号公然実施 A01M |
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管理番号 | 1045119 |
異議申立番号 | 異議1999-71705 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-02-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-30 |
確定日 | 2001-09-10 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第2819481号「エアゾール装置を用いた害虫防除方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについてした平成12年7月17日付け取消決定に対し、東京高等裁判所において取消決定取消の判決(平成12年(行ケ)第319号、平成12年3月29日判決言渡)があったので、さらに審理した上、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2819481号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2819481号請求項1に係る発明は、平成2年6月13日に出願され、平成10年8月28日にその特許権の設定の登録がなされたものであり、その後、佐伯憲生及びアース製薬株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成11年10月13日付けで取消理由通知がなされ、平成12年7月17日付けでその決定がなされ、その後、東京高等裁判所に特許取消決定取消請求がなされ、更に訂正審判請求(訂正2000ー39104号)がなされ、平成12年12月19日付けで、上記訂正を認める旨の審決がなされ、平成13年3月29日付けで、上記決定を取り消す旨の判決がなされたものである。 2.特許異議申立てについて ア.本件発明 本件請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、上記訂正審判請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】非水性の有効成分原液/噴射剤の容量比が4/6以下であって、噴霧口が直径lmm以下のエアゾール装置を、害虫を防除する部屋に置き、その内容物を噴射角度が55°〜85°の範囲となった左側の噴射口と噴射角度が55°〜85°の範囲となった右側の噴射口よりほぼV字状に一時期に噴射するようにしたことを特徴とするエアゾール装置を用いた害虫防除方法。」 イ.申立の理由の概要 特許異議申立人佐伯憲生は、本件発明は甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載の発明または甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。 また、特許異議申立人アース製薬株式会社は、本件発明は甲第1号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。 ウ.特許異議申立人佐伯憲生の提出した甲第1ないし4号証に記載の発明 甲第1号証(特開平1-190609号公報、以下、刊行物1という。)には、「内容組成は殺虫原液5〜20容量%、水15〜30容量%、及び射剤50〜90%容量の比率で配合される。」(3頁右上欄5〜8行)、「噴剤バルブは、直径0.3mm以上の噴射口を有する・・・その形状は特に限定されない。例えば噴射口を数個とりつけたり、噴射角度を上方以外の任意の角度に設置したり」(4頁左上欄2〜7行)、「試験例2 殺虫成分、溶剤、水、噴射剤を下表に示す組成にて100mlエアゾール容器に充填し、噴射口の直径が0.4mmのバルブを取り付けて殺虫噴射剤を得た。〜面積16m2、高さ2.5mの部屋で本殺虫噴射剤〜を比較した。すなわち部屋の中心を噴射点とし」(5頁左上欄9行〜右上欄下から6行)、「実施例 試験例2と同様に、殺虫成分、溶剤、噴射剤を下表に示す組成にて100mlエアゾール容器に充填し、噴射口が上方45°の方向へ設置されるようバルブ、アクチュエーターを取り付け更に保護キャップをかぶせて本発明殺虫噴射剤を得た。約40m2の食堂で2個噴射し」(5頁右下欄9〜16行)と記載されている。 これらの記載からみて、刊行物1には、「殺虫原液5〜20容量%、水15〜30容量%、および噴射剤50〜90容量%の比率で配合を充填してエアゾール化して成り、噴射口の直径が0.4mmのエアゾール装置を害虫を防除する部屋に2個置き、その内容物を噴射角度45°で噴射するようにしたエアゾールを用いた害虫防除方法」が記載されているものと認める。 甲第2号証(実公昭34ー16976号公報、以下、刊行物2という。)には、「1個の噴口片では噴霧密度が薄くなることを免れないが本考案のように扁平噴出孔を平行に並列する事によって噴霧密度を増し、撒布能率を増すことが出来る。又噴頭間の拡がり角度を選ぶことにより、噴霧の到達性と噴霧密度を変えることが出来て近接撒布にも遠隔撒布にも適したものを得られる。」(1頁右欄5〜11行)と記載されている。 甲第3号証(実公昭41-20939号公報、以下、刊行物3という。)には、「噴霧の到達範囲の広狭を調節出来るようにした噴霧装置に関するものであって」(1頁左欄「考案の詳細な説明」の1〜2行)、「送液管の両側面へ傾動自在に支持されたノヅルを送液管の手許で回動操作される操作杆の作動子によつて互いに相反する方向へ傾動させるようにしたから操作杆を僅か回動することによりノヅルは互いに相反する方向へ傾動して両者の噴霧射出軸線が互いにV字形に拡開し噴霧を拡散散布させることが出来また操作杆を元に戻して両ノヅルの軸線を並行させれば集中散布を行うことが出来るものであり、従って噴霧の到達範囲の広狭の調節を散布対照物に応じ随時送液管の手許で極めて簡単かつ確実に行なうことが出来るものである。」(1頁右欄28〜39行)と記載されている。 甲第4号証(実公昭38-3673号、以下、刊行物4という。)には、「本ノズル本体には底部に開口する大径の円孔5と、これに連通し、上面に開口する2個の互いにノズルの中心軸線に対して対称的に外方に傾斜して開いた小径の円孔6、7が設けられている。」(1頁左欄13〜16行)、「大径部に導入された水は小円孔6、7よりこの小円孔の傾斜角に応じて拡撒状態で噴出されるのである。」(1頁右欄1〜3行)、「水は忠実に小円孔により決定される角度で扇形に拡撒噴射するのである。」(1頁右欄6〜7行)と記載されている。 エ.特許異議申立人アース株式会社の提出した甲第1号証に記載の発明 甲第1号証(実願昭61ー74448号(実開昭62ー187663号)のマイクロフィルム、以下、刊行物5という。)には、「エアゾール内容物の噴射動作の反作用で旋回する噴射ノズルが設けてなるエアゾール装置」(実用新案登録請求の範囲第1項)、「前記噴射ノズルが回転中心に位置する軸心部分と、該軸心部分から半径方向に延びるアーム部分と、該アーム部分の先端で旋回軌跡の接戦方向成分とエアゾール装置の上方向成分とをもつ方向に噴口が向けられた先端部分とからなる実用新案登録請求の範囲第1項記載のエアゾール装置」(実用新案登録請求の範囲第2項)、「前記噴射ノズルが、軸心部分が1本の中心パイプからなり、アーム部分が前記中心パイプの上端でたがいに反対向きに延びる2本のパイプで構成されてなる実用新案登録請求の範囲第2項記載のエアゾール装置。」(実用新案登録請求の範囲第5項)、「前記噴射ノズルが、軸心部分がテレスコ-プ式に嵌挿された中心パイプからなり、アーム部分と先端部分が内部通路を有するディスク板から構成されてなる実用新案登録請求の範囲第2項記載のエアゾール装置」(実用新案登録請求の範囲第6項)、「任意の場所に置いて使用することができる」(6頁13〜14行)、「エアゾール容器(1)〜内部には、殺虫剤、殺菌剤、消毒剤、消臭剤などのエアゾール内容物が噴射剤とともに入れられるようになっている」(7頁14〜18行)、「係合突起(8)が係合部(9)に係合するよう押し下げたばあいは、指を離しても押し下げ状態を保つことができる」(8頁14〜17行)、「本考案においては、噴口(14)の向きは必ずしも接線方向に完全に一致する必要はなく、接戦方向の成分を有する向きになっておればよい。たとえば第4図に示される例では、先端部分(13)は接線方向より5〜20度(θ1)内側に向いており、第5図に示される例では5〜20度(θ2)外側に向いている。」(10頁3〜9行)、「後者の噴霧操作をするばあいは人が居なくとも噴霧操作を行なえるので長時間噴霧するときとか、1回の噴霧でエアゾール内容物を使いきってしまうときに便利である」(1l頁下から1〜12頁4行)と記載されている。 オ.対比・判断 本件発明と刊行物1〜4に記載の発明を対比すると、刊行物1〜4に記載の発明は、本件発明の構成要件である「非水性の有効成分原液/噴射剤の容量比が4/6以下であって、噴霧口が直径lmm以下のエアゾール装置で、内容物を噴射角度55°〜 85°の範囲となった左側の噴射口と噴射角度55°〜85°の範囲となった右側の噴射口よりほぼV字状に一時期に噴射する」ことを具備していない。 すなわち、刊行物1には、エアゾール装置を用いた害虫防除方法は記載されて、エアゾール装置の噴射口の直径は0.4mmであって、1mm以下のものであるけれども、その内容物は「殺虫原液5〜20容量%、水15〜30容量%、および噴射剤50〜90容量%」の比率で配合するものであるように、水を必須成分として含有しており、噴射口の噴射角度も45°であって、左側の噴射口と右側の噴射口よりほぼV字状に一時期に噴射することも記載されていないから、本件発明の「非水性の有効成分原液/噴射剤の容量比が4/6以下」の内容物を「噴射角度55°〜 85°の範囲となった左側の噴射口と噴射角度55°〜85°の範囲となった右側の噴射口よりほぼV字状に一時期に噴射する」ことについての記載はない。 また、刊行物2〜4には、被噴射物は2つの噴霧口からほぼV字状に噴射されることは記載されているが、刊行物2、3に記載の発明は、外部の供給源から液体を噴霧する手持ちの噴霧器のノズルであり、刊行物4に記載の発明は急速濾過槽の回転式濾過槽表面洗滌装置に使用される水を噴射するノズルであって、被噴射物が異なるように、本件発明のエアゾール装置とは分野が異なり、さらに、仰ぎ角度である噴射角度55°〜85°の範囲となった左側の噴射口と噴射角度55°〜85°で噴射することも、噴霧口の直径を1mm以下とすることも記載もない。 そして、本件発明は、エアゾール装置の内容物を非水性として、その有効成分原液/噴射剤の容量比、噴射口の口径、噴射角度および噴射状態を上記のように特定することにより、「有効成分を遠くへ飛散させることができ有効成分の噴霧降下位置が拡がり、使用できる部屋の広さも拡大し、十分な効力を発現できる。さらに、従来は、エアゾール容量が大きく、例えば10畳あたり100mlも使用していたため、液化石油ガスやジメチルエーテルの如き、爆発性を有する噴射剤を多量に使用することができず、不燃性のフロン等が用いられていたが、本発明の方法によれば、噴射総量を低減することができ、前述の危険性が著しく低下し、少量で広い部屋に使用し、十分な効力を発現できる」(公報12欄9〜18行)という明細書記載の顕著な効果を奏するものであるから、本件発明は、刊行物1に記載された発明とすることはできず、刊行物1または刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 次に、本件発明と刊行物5に記載の発明を対比すると、刊行物5には、エアゾール内容物の噴射動作の反作用で旋回する噴射ノズルが設けられてなるエアゾール装置が記載され、噴口をエアゾール装置の中心軸に対称に2つまたは4つ配することも記載されているが、上記噴口は旋回軌跡の接戦方向成分とエアゾール装置の上方向成分とをもつ方向に向けられているものであって、接戦方向の成分によって噴射ノズルは旋回しながら斜め上方に噴射され、エアゾール装置の上方空間に広範囲にかつ均等に噴霧されるものであるから、本件発明を特定する事項である「噴射角度55〜85°の範囲となった左側の噴射口と噴射角度55°〜85°の範囲となった右側の噴射口よりほぼV字状に一時期に噴射する」ものではなく、エアゾール装置の内容物を「非水性の有効成分原液/噴射剤の容量比が4/6以下」とすることについての記載もない。 そして、本件発明は、上記構成によって、上記した明細書記載の顕著な効果を奏するものであるから、本件発明は、刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 カ.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-07-17 |
出願番号 | 特願平2-152542 |
審決分類 |
P
1
651・
112-
Y
(A01M)
P 1 651・ 121- Y (A01M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 星野 浩一 |
特許庁審判長 |
村山 隆 |
特許庁審判官 |
藤井 俊二 平瀬 博通 鈴木 寛治 二宮 千久 |
登録日 | 1998-08-28 |
登録番号 | 特許第2819481号(P2819481) |
権利者 | フマキラー株式会社 |
発明の名称 | エアゾール装置を用いた害虫防除方法 |
代理人 | 浜本 忠 |