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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G11B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G11B
審判 全部申し立て 発明同一  G11B
管理番号 1046640
異議申立番号 異議2000-72832  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-12-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-21 
確定日 2001-07-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3002679号「ディスクカ―トリッジ」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3002679号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 [I]手続の経緯
特許第3002679号の請求項1〜6に係る発明の手続の経緯は、おおよそ次のとおりである。
1.特許出願 平成11年5月17日(平成2年4月17日出願の実願平2-40858号を平成7年10月4日に特許出願に変更した特願平7-257481号(以下、原出願という。)の一部を新たに特許出願)
2.特許権の設定 平成11年11月12日
3.特許掲載公報の発行 平成12年1月24日
4.異議申立人赤坂雄司の異議申立 平成12年7月21日
5.異議申立人松本信雄の異議申立 平成12年7月24日
6.取消理由通知1 平成13年2月7日
7.特許異議意見書、訂正請求書(指定期間内) 平成13年4月27日
8.取消理由通知2 平成13年5月21日
9.上記7の訂正請求書の取り下げ 平成13年5月28日
10.訂正請求書(指定期間内) 平成13年5月28日

[II]訂正の適否について
1.平成13年5月28日付けの訂正請求書の訂正の内容
A.特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成された伸設部とを有し、・・・・・・・・」を、
「【請求項1】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成されたケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である伸設部とを有し、・・・・・・・・」と訂正。

B.段落6
「【0006】 【課題を解決するための手段】
・・・・・・・・・・・・・、前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成された伸設部とを有し、・・・・・・・・」を、
「【0006】 【課題を解決するための手段】
・・・・・・・・・・・・・・、前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成されたケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である伸設部とを有し、・・・・・・・・」と訂正。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
Aの訂正は、発明の詳細な説明の段落「【0013】 スライダー12は、図4に示すように全体が細長い棒状となっており、断面略矩形であってシャッタ5の折曲部分5aの内側に位置し、このシャッタ5を支持するシャッタの支持部21と、この支持部21から図4中左下方へ伸ばして形成された幅狭の伸設部22とを有し、この伸設部22の同図中上方から見た厚さt1 は、支持部21の同じ厚さt2 に比べ小さくなるように形成されている。・・・・・・・・・。伸設部22の厚さt1 を小さくしているのは、図5に示すようにシャッタ5を開いた状態で記録再生装置の一対のヘッドhが側方からヘッド挿入口3へ接近しても、それに接触しないようにするためである。すなわち、カートリッジのガイド部Gに沿って形成された凹んだ凹み部31の厚さを越えないように、伸設部22の厚さt1 が定められる。」との記載から、「伸設部」を「ケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である」とケース厚み方向の幅を限定した訂正であり、請求項1に構成要件を加えるもので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
Bの訂正は、Aの訂正に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
そして、上記訂正A,Bは、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内においてされたものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもない。

3.むすび
以上のとおり、前記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


[III]特許異議申立について
1.特許異議の申立の理由及び取消理由の概要
(1)異議申立人松本信雄の主張の概要
a)訂正前の請求項1と原出願である甲第1号証の請求項1とを比較すると、訂正前の「シャッタの折曲部分の内側に位置してシャッタを支持するシャッタ支持部」と、甲第1号証の「シャッタを支持するシャッタ支持部」は、支持部がシャッタの内側に位置する構成で実質的に相違しない。さらに訂正前の請求項1の「シャッタの折曲部におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成された伸設部」は、甲第1号証の「シャッタ支持部の一端から伸設された伸設部」と実質的に同じ「伸設部」で相違することがない。他の請求項についても、
訂正前の請求項2は甲第1号証の請求項1と同じである。
訂正前の請求項3は甲第1号証の請求項3と同じである。
訂正前の請求項4は甲第1号証の請求項4と同じである。
訂正前の請求項6は甲第1号証の請求項2と同じである。
以上のように、訂正前の請求項1〜4,6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と実質的に同一であり、特許法第44条に規定している特許出願の分割の要件をみたさないもので、その出願日は遡及せず、出願日は平成11年5月17日となる。
結局、甲第2号証は本件特許発明の出願日前に公知の刊行物となり、訂正前の請求項1〜4,6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号の規定に違反してなされたものである。

甲第1号証:特許第2963036号公報(原出願の特許掲載公報)
甲第2号証:特開平8-63934号公報(原出願の公開公報)

b)訂正前の請求項1〜4,6に係る発明は、本件出願前に国内に頒布された甲第3号証及び甲第4号証の刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

甲第3号証:実願昭62-163057号(実開平1-71367号)のマイクロフィルム(以下、刊行物3という。)
甲第4号証:特開昭63-103482号公報(以下、刊行物4という。)

c)仮に分割出願が認められたとしても、訂正前の請求項1〜4,6に係る発明は、本件出願前の特許出願であってその出願後に出願公開された甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。

甲第5号証:特願平2-175272号(特開平3-224167号)(以下、先願明細書という。)

(2)異議申立人赤坂雄司の主張の概要
d)訂正前の請求項1〜6に係る発明は、本件出願前に国内に頒布された甲第1号証〜甲第3号証の刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

甲第1号証:特開平1-248378号公報(以下、刊行物6という。)
甲第2号証:実願昭62-172598号(実開平1-78376号)のマイクロフィルム(以下、刊行物7という。)
甲第3号証:特開昭62-209784号公報(以下、刊行物8という。)
(3)取消理由の概要
取消理由1は、上記a)の甲第2号証と同一であるというものである。
取消理由2は、「腕部」のケース厚み方向の幅については、詳細な説明には記載されておらず、また新規事項であるというものである。

2.本件発明
特許3002679号の請求項1〜6に係る発明は、平成13年5月28日付け訂正明細書の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件発明1〜6」という。)。
「【請求項1】
ディスク状記録媒体が収納された合成樹脂製のケースと、
金属薄板を断面コの字形に折り曲げて形成され、前記ケースに形成されたヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタと、
このシャッタに取り付けられ、
シャッタの開閉方向に滑るようにして前記ケースの端縁と摺接する合成樹脂製のスライダーとを備えたディスクカートリッジであって、
前記スライダーは、
前記シャッタの折曲部分の内側に位置してシャッタを支持するシャッタ支持部と、
前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成されたケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である伸設部とを有し、
この伸設部先端に、
シャッタを開方向に移動させるための開閉ピンと当接する当接突起部が形成されるとともに、
この当接突起部の下方に、
前記開閉ピンが落ち込むように前記ケースの端縁に形成された逃げ凹みの深さに略等しい長さの腕部を介して係合突起部が一体形成されていることを特徴とする
ディスクカートリッジ。
【請求項2】
係合突起部が、逃げ凹みの底部よりもケースの内方側に位置することを特徴とする請求項1に記載のディスクカートリッジ。
【請求項3】
係合突起部が、逃げ凹みの底部の長さよりも長く形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のディスクカートリッジ。
【請求項4】
係合突起部の先端が、シャッタの開放時においてもケースに形成された案内係合部と係合する長さを有することを特徴とする請求項3に記載のディスクカートリッジ。
【請求項5】
係合突起部の下面を、ケースに形成されディスク状記録媒体を保持する保持壁部と当接しないように切欠したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のディスクカートリッジ。
【請求項6】
シャッタ支持部のシャッタ開方向側に、シャッタを閉止方向に付勢する弾性部材が係合可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のディスクカートリッジ。」

3.特許異議申立の理由についての判断
(1)異議申立人松本信雄の理由
a)について
本件の原出願である特許第2963036号の請求項1〜4に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ディスク状記録媒体が収納された合成樹脂製のケースと、
金属薄板を断面コの字形に折り曲げて形成され、前記ケースに形成されたヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタと、
このシャッタに取り付けられ、
シャッタの開閉方向に滑るようにして前記ケースの端縁と摺接する合成樹脂製のスライダーとを備えたディスクカートリッジであって、
前記スライダーは、前記シャッタを支持するシャッタ支持部と、
このシャッタ支持部の一端から伸設された伸設部とを有し、
この伸設部先端に、シャッタを開方向に移動させるための開閉ピンと当接する当接突起部が形成されるとともに、
この当接突起部の下方に、前記開閉ピンが落ち込むように前記ケースの端縁に形成された逃げ凹みの深みに略等しい長さの腕部を介してその逃げ凹みの底部よりも前記ケース内方側に位置する係合突起部が一体形成されていることを特徴とする
ディスクカートリッジ。
【請求項2】
シャッタ支持部のシャッタ開方向側に、シャッタを閉止方向に付勢する弾性部材が係合可能であることを特徴とする請求項1に記載のディスクカートリッジ。
【請求項3】
係合突起部が、逃げ凹みの底部の長さよりも長く形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のディスクカートリッジ。
【請求項4】
係合突起部の先端が、シャッタの開放時においてもケースに形成された案内係合部と係合する長さを有することを特徴とする請求項3に記載のディスクカートリッジ。」
してみると、上記[II]のとおり適法に訂正された訂正明細書に記載されている事項は、「ケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である伸設部」において、原出願に係る発明と相違し、また、本件特許出願は分割の要件を満たすもので、その出願日は平成2年4月17日に遡及する。
したがって、前記異議申立の理由2.(1)a)は前提を欠き、異議申立の理由は解消されている。

b)について
i.刊行物に記載された事項
刊行物3:実願昭62-163057号(実開平1-71367号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
「〔実施例〕
本考案を光ディスクカートリッジに適用した一実施例について第1〜4図で説明すると、円形状の光ディスク1と、該ディスク1を回転可能に収納する上ケースと下ケースとからなるケース2と、このケース2に形成した記録・再生用のピックアップ挿入孔3や駆動軸挿入孔を開閉するため、ケース上下面を挟持状態でピックアップ挿入孔3を開閉する金属製(SUS)のシャッタ板の上板41及び下板42をポリアセタール樹脂などの滑性良好な材質のスライダ43にそれぞれ連結して断面がほぼコ字状に構成したシャッタ4を備え、前記スライダ43のスライダ側壁44の開放側の一側壁の角隅部に開閉ピン誘導用の面取部46を設けると共に、第1図A,Bに示すように前記シャッタ4の前端面を覆うスライダ壁厚Sをシャッタ開閉用ピンの前後方向への移動範囲Pより大きくした壁部を備え、ケース2に設けたシャッタロック用の凹部25に開閉ピン24が移動されて挿入しても開閉ピン24がスライダ43の内側に潜り込まないようにし、さらに前記ピックアップ挿入孔3のケース2のピックアップ挿入側壁とシャッタ4のスライダ43のピックアップ挿入側壁との両方を前記ディスク1の表面と同高又はそれ以下に形成してある。
前記シャッタ4のスライダ43としては嵌合スライドする形態としてあるため、厚み方向に突出するリブ状のガイド片181を備えて壁厚Sを保持するものであるが、スライダ43のほぼ全長にわたって壁厚Sを持ったリブ状のガイド片181を設けたり、その開放側の側壁部44の反対側壁部の一部又は少なくとも端部を壁厚Sを持た せたものでもよく、開閉ピン24の移動範囲Pより大きくした壁部を備えた形態としてある。
また、第9図に示すように前記スライダ43とケース2とが前記ディスク1厚み寸法cとほぼ等しいかまたは薄くした寸法aのガイド片181と寸法bのピックアップ挿入側壁21を持っている。この例では、シャッタの開放時にピックアップエリア内で移動するのはスライダ43のスライダ側壁44のみとなり、シャッタ4やケース2に干渉する部分も存在しないこととなってケース2にピックアップ挿入空間を大きくすることができるのである。」(第4頁第12行〜第6頁第15行)
「この場合前記ケース2が、第8図示のように前記シャッタ4のストローク巾だけケース前面壁の上下に切欠部22,22をまたスライダ43の側壁に切欠部182,182を形成するのがよいし、」(第7頁第3行〜第6行)
「さらに前記シャッタ4の構成には前記スライダ43に係合孔5と係合突起6とを設け、該係合孔5に挿入される係合片7と係合突起6に嵌入する係合穴8とを前記シャッタ板の一端を折曲げた段状部9にそれぞれ対応配備して、該段状部9の水平面及び鉛直面を前記スライダ43の内面及び側面に当接して前期係合片7をスライダの係合孔5に挿入し、かつシャッタ板の係合穴8をスライダの係合突起6に嵌入して固着一体化してある。」(第8頁第16行〜第9頁第5行)
「しかして、シャッタ4のあるカートリッジケース2を装置側に組込むと、シャッタ4の開放時に記録再生装置側のシャッタ開閉ピン24,24が連動して一方がスライダ端部に当接し、シャッタ4を押し開くが開閉ピン24がケース2にあるシャッタロック用の凹部25に嵌入して停止してもスライダ43が開閉ピン24の移動範囲Pより大きい壁厚Sを持っているのでスライダ43の内側に潜入することなく、適切に維持されカートリッジの取り出しに引掛ることがなくて容易で安全な操作が可能となり信頼性や精度をも十分に高めることができるものである。」(第10頁第12行〜第11頁第3行)

刊行物4:特開昭63-103482号公報には、以下の事項が記載されている。
「シャッタ4は、第4図に示すように、ステンレス等の金属薄板を略コの字形に折曲することによって形成される。」(第3頁左下欄第19行〜右下欄第2行)
「スライダ3は、第8図に示すように、前記シャッタ4の上片4aと下片4bの間に嵌装可能な略角柱形に形成されており、両側面の対向位置には、前記下ケース6及び上ケース7の前縁部に沿って突設された案内突条9と摺動可能に嵌装するための凹溝18,18aが凹設されている。また、前記シャッタ4の前片4cと対向する前面3a上には、前記切欠部16,16aと略等しい間隔を隔てて2つの係止爪19,19aが突設され、これら2つの係止爪19,19aの間の前記透孔15と対応する位置に、該透孔15に密に挿通可能な突起20が突設される。また、第9図に示すように、前記係止爪19,19aを前記切欠部16,16aに係合した場合、前記シャッタ4の側辺部から外側に突出するスライダ3の突出部3aの前面に、略中央部から一方の側辺に貫通するシャッタ開閉レバー挿入用の凹陥部21が凹設される。この突出部3aの先端部には、第10図に示すように、シャッタ戻しばねの一端を掛止するための掛止ピン23が突設される。
このスライダ3は、例えばナイロン、四フツ化エチレン、ポレエチレン、ポリアセタール、ポリプロピレンの如き滑性に優れた合成樹脂、あるいは滑性に優れた金属材料等、任意の材料によって形成することができる。
スライダ3は、第11図に示すように、凹溝18,18aを案内突条9に跨設することによって、カートリッジケース1の前縁部に摺動可能に取り付けられる。また、シャッタ4は、上片4a及び下片4bをカートリッジケース1の両面に各々それぞれ重合して前片4cの裏面をスライダ3の前面3aに当設し、このスライダ3の前面3aに突設された係止爪19,19aを前記シャッタ4の切欠部16,16aに係合することによって、ワンタッチで前記スライダ3に固着される。」(第3頁右下欄第20行〜第4頁左上欄第14行)

ii.対比・判断
本件発明1と上記刊行物3,4に記載された発明を対比すると、本件発明1を特定する事項である、伸設部の当接突起部の下方に「前記開閉ピンが落ち込むように前記ケースの端縁に形成された逃げ凹みの深さに略等しい長さで前記伸設部と前記ケース厚み方向の幅が同一である腕部を介して係合突起部が一体形成されていること」は、上記刊行物3,4に記載されておらず、当該事項により本件発明1は、「第1係合突起部26はケース1にスライダー12の摺動方向に沿ってそれぞれ形成された案内係合部28a,28bに係合されて、スライダー12を摺動方向に案内するとともに、このケース1から容易に外れるのを防止している。」という顕著な効果を奏するものであり、本件発明1が上記刊行物3,4に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。

本件発明2〜4,6は、請求項1を引用するもので、本件発明1と同様の理由により上記刊行物3,4に記載された発明から容易に発明をすることができたとすることはできない。

c)について
i.先願明細書に記載された事項
先願明細書は、以下の出願を基礎に優先権を主張するものである。
特願平1-171818号・平成1年7月5日出願
特願平1-338163号・平成1年12月28日出願
特願平1-338164号・平成1年12月28日出願
特願平1-338166号・平成1年12月28日出願
実願平1-150155号・平成1年12月28日出願

先願明細書(特開平3-224167号公報)には以下の事項が記載されている。
「第22図に示すように、このディスクカートリッジ6は、主として硬質プラスチック製のカートリッジケース21と、このカートリッジケース21内に回転可能に収納された両面記録形の光ディスク7と、カートリッジケース21の前縁部9に摺動可能に取り付けられたスライダ22と、このスライダ22に固着され、閉鎖位置より一方向に摺動してカートリッジケース21に開設された窓孔10を開閉するシャッタ11と、シャッタ11の先端部を押えるシャッタ押え板18とから構成されている。」(第5頁右上欄第7行〜第17行)
「前記下ハーフ8bの前縁部9には、前記接合用壁23,24よりもやや低い案内レール25が一直線状に形成され、そのシャッタ閉鎖側の端部には、シャッタ停止用の段部25aが形成されている。」(第5頁右下欄第4行〜第8行)
「シャッタ11は、第27図および第28図に示すように、ステンレス等の薄板をコの字形に折り曲げることによって、前記窓孔10の全体を同時に覆うことができる長さを有する上辺11aおよび下辺11b、それに前記カートリッジケース8のシャッタ設定部の厚さSとほぼ等しい幅を有する前片11cとが一体に形成されており、上辺11aおよび下辺11bの前片11cと近接した部分には、係止爪30が内向きに曲折形成されている。
スライダ22は、第29図に示すように、幅広の前面部31と幅狭の後面部32とこれらをつなぐ連結部33とから構成されており、これら各部によって形成される凹溝34a,34b内に前記案内レール25を内装できるようになっている。
前面部32は、第30図および第31図に示すように、前記窓孔10の幅Wよりもやや大きな長さlと前記補強部27の厚さT1と同じかあるいはこれよりも狭い幅T2に形成されたヘッド挿通部35と、前記シャッタ11の内幅と略等しい幅に形成されたシャッタ取付部36と、このシャッタ取付部36の先端部に形成されたテーパ部37と、前記ヘッド挿通部35を介して前記シャッタ取付部36と反対側に形成されたピン係合部37aとからなる。ピン係合部37aは、シャッタ取付部36とほぼ同幅に形成される。」、
「テーパ部37側の端部には、第31図に示すように、バネ係止部32bが突設されている。前記スライダ22は、例えばナイロンあるいはポリアセタールのように、滑性に優れた合成樹脂をもって一体に形成される。」(第6頁左上欄第7行〜右上欄第12行)
「カートリッジホルダ3内にディスクカートリッジ6を挿入すると、まず第32図に示すように、一方のピン4aが閉止位置にあるスライダ22のピン係合部37aの外面に当接されるとともに、他方のピン3aがディスクカートリッジのシャッタ開放側の前縁部に当接される。」(第9頁左下欄第15行〜第20行)

図面、第41図〜第52図に関して以下の事項が記載されている。
「例えば、前記各実施例においては、スライダ22の後面部32および連結部33をスライダ22のほぼ全長にわたって形成したが、第45図に示すように、スライダ22の両端部にのみこれら後面部32および連結部33を形成することもできる。本例のスライダを用いると、第46図に示すように、補強部27を介してせそ両側部分にのみスライダ挿通孔29が開設されたカートリッジケース21を用いることができる。
また、第47図に示すように、スライダ22の両端部よりその長さ方向にストッパ103と案内部104とを突設し、前記ストッパ103の先端部をカートリッジケース21に形成された接合用壁23に当接することによって、窓孔10閉鎖時のシャッタ11の設定位置を規制するようにすることもできる。」(第16頁左上欄第3行〜第18行)
「また、前記各実施例においては、シャッタ保持部材52によってシャッタ11を全開位置に保持するようにしたが、第49図に示すように、カートリッジケース21の前縁部9の、シャッタ11が全開位置まで移動したときにピン4aまたは5aが移動する部分にピン嵌合凹部106を凹設し、当該ピン嵌合凹部106内にピン4aまたは5aを落し込むことによって、シャッタ11を全開位置に保持するようにすることもできる。」(第16頁右上欄第5行〜第13行)
前記の記載は、優先権の主張の基礎とされた上記それぞれの出願(以下、先の出願という。)の明細書に記載されていない事項であり、先願明細書に係る出願時(平成2年7月4日)に新たに追加された事項である。


ii.対比・判断
本件発明1と先願明細書に記載された事項を対比すると、本件発明1を特定する事項である、伸設部の当接突起部の下方に「前記開閉ピンが落ち込むように前記ケースの端縁に形成された逃げ凹みの深さに略等しい長さで前記伸設部と前記ケース厚み方向の幅が同一である腕部を介して係合突起部が一体形成されていること」は、先の出願に記載されておらず、本件特許に係る出願(平成2年4月17日)以後に新たに追加された事項であるから、本件発明1が上記先願明細書に記載された発明であるとはいえない。

本件発明2〜4,6は、請求項1を引用するもので、本件発明1と同様の理由により、上記先願明細書に記載された発明であるとはいえない。


(2)異議申立人赤坂雄司の理由
d)について
i.刊行物6〜8に記載された事項
刊行物6:特開平1-248378号には、以下の事項が記載されている。
「2はディスクカートリッジ筐体であり、ディスク1を回転自在に収納する。ディスクカートリッジ筐体2は上ハーフ3aと下ハーフ3bとにより形成されている。上ハーフ3aと下ハーフ3bは、例えばポリ汗タール樹脂を射出成形して作成される。」(第3頁左上欄第17行〜右上欄第2行)
「11はシャッターであり、センター孔4a・4b及びヘッド挿入孔5a・5bを閉塞する。シャッター11は金属製で厚さ0.2mmから0.3mmの板ばね等の弾性体により成る。
12はスライダーであり、溝部13が下ハーフ3bの凸状ガイド部14(上ハーフ3aにもこれと対向する位置に凸状のガイド部がある)に係合し案内される。25はその弾性部で、突起18を有する。スライダー12は例えばポリアセタール樹脂等を射出成形して作成される。・・・・・・・・・突起18はシャッター11の位置決めのために設けており、第1図,第2図で示す実施例では、円形の突起にしているが、これに限定されるものではない。」(第3頁右上欄第1お行〜左下欄第4行)
「スライダー12にシャッター11を組込に時は、シャッター11を矢印I方向押して挿入するのみでよい。」(第3頁左下欄第16行〜第18行)
「スライダー12からシャッター11を分解する時は、・・・・・・・・・・・・取り外す。
19は厚みを薄くして曲げが容易なようにしたスライド帯である。スライド帯19の他端には外部部材(図示せず)と係合してスライド帯19を移動させるための突起22が設けられている。スライダー12の中央部には引っ張りばね23が係止されており、外部部材と突起17との係合が外れるとスライダー12は引っ張りばね23の付勢力により矢印D方向に移動される。すなわち、シャッター11はスライド帯19が・・・・・・・・センタ孔4a・4b及びヘッド挿入孔5a・5bを開放し、前述した回転駆動体とヘッド挿入を可能にする。又、スライド帯19と・・・・・・・・・・・センタ孔4a・4b及びヘッド挿入孔5a・5bを閉塞する。」(第3頁右下欄第1行〜第4頁左上欄5行)
第1図〜第7図


刊行物7:実願昭62-172598号(実開平1-78376号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
「円形状の光ディスク1と、該ディスク1を回転可能に収納する上ケースと下ケースとからなるケース2と、このケース2に形成した記録・再生用のピックアップ挿入孔3や駆動軸挿入孔をを開閉するため、ケース上下面を挟持状態でピックアップ挿入孔3を開閉する金属製(SUS)のシャッタ板の上板41及び42をポリアセタール樹脂などの滑性良好な材質のスライダ43にそれぞれ連結して断面がほぼコ字状に構成したシャッタ4を具備し、」(第5頁第5行〜第14行)
「さらに、前記シャッタ4としては、前記スライダ43の内側面に水平方向に突出したリブ状のガイド片181を備えたものであって、該ガイド片181は前記ピックアップ挿入孔3よりも挿入側のケース内で案内されるようにし、さらに前記スライダ43の上板41及び下板42の取付位置を除いて、スライダ43の上下面に切欠部182,182を備え、前記ディスク1厚み寸法の側壁を残したものとするのがよい。・・・・・・・・・・。
そして、スライダ側壁部44が、切欠長孔、例えばU字状孔又は丸孔の前記嵌挿孔19の・・・・・・・・・・、該挿入孔19の中心線上で前記係合凸部18を前記側壁部44と反対側に配備しているもので、・・・・・・・・・かつシャッタ板の係合穴8をスライダの係合突起6に嵌入して固着一体化してある。」(第7頁第6行〜第8頁第20行)
「また、スライダ43にはケース2との係合部10が設けられ、ガイド溝17に嵌入されスライドできるようになっており、・・・・・・・・シャッタ4によってピックアップ挿入孔3が覆われ、ディスクカートリッジを挿入する際に、スライドされピックアップ挿入孔3を開ける状態にスライドされ、・・・・スプリング16で復元できるように付勢されている。
図中20は軸挿入溝、23はスライダ案内部でケース内面に設けられている。24はシャッタ開閉操作用のピンである。」(第9頁第6行第10頁第1行)
第1図〜第13図

刊行物8:特開昭62-209784号公報には、以下の事項が記載されている。
「本発明によるディスクカートリッジは、第2図に示すように、・・・・・・・、光ディスク1を収納する硬性の合成樹脂により形成されいわゆるハードケースととして形成されたケース2と、このケース2に設けられた・・・・・・・・光学ピックアップが臨むピックアップ用の開口部3及び上記光ディスク1を回転駆動せしめる・。・・・・・・・・・ディスクテーブルが進入するディスクテーブル用中央開口部4を開閉するシャッタ5とから構成されている。」(第3頁右下欄第3行〜第16行)
「このシャッタ5は、・・・・・・・・シャッタ部9とこのシャッタ部9の基端部に一体に設けたスライドガイド部10とから構成されている。このスライドガイド部10は、シャッタ部9の側方に突出するようにして該シャッタ部9の幅に比し十分長尺に形成され、・・・・・・・・・・・。このように形成されたスライドガイド部10を設けたシャッタ5は、下ハーフ6の前側面側に形成したシャッタ取付け部15に上記スライドガイド部10を係合させて・・・・・・・これらピックアップ用の開口部3及び中央開口部4を開放した上記下ハーフ6の一側方側に至った位置間に亘って摺動自在に取付けられる。」(第4頁左上欄第17行〜左下欄第2行)
「そして、シャッタ5は、・・・・・・・、上記シャッタ部9の基端部と上記スライドガイド部10でシャッタ取付け部15を挟持するようにして取付けられ、・・・・・・・閉塞した位置とこれらピックアップ用の開口部3及び中央開口部4を開放した位置間に亘って摺動自在に取付けられる。」(第4頁左下欄第8行〜第19行)
「そして、上記引っ張りスプリング19は、第1及び第2のガイドレール16,17間に形成されたスプリング収納部22内に収納され、・・・・・・・・・・・シャッタ5をピックアップ用の開口部3及び中央開口部4を閉塞する方向に付勢している。」(第4頁右下欄第11行〜第20行)
「ところで、上記切欠部20は、スライドガイド部10のシャッタ部から側方に突出した一端側に設けられ、第1図に示すように前面壁11からスライドガイド部13に亘って形成されている。」(第5頁左上欄第1行〜第4行)
「そして、第6図に示すように先端のシャッタ開閉ピン31がディスクカートリッジ挿入側に突出するように該ディスクカートリッジの挿入方向に対し傾斜させ、支軸43を中心に回動方向にシャッタ開閉アーム30を取り付けた記録及び/又は再生装置に上述のように構成されたディスクカートリッジをシャッタ5の取付け部側から挿入すると、上記シャッタ開閉ピン31がシャッタ5の切欠部20に挿入係合しロック21が弾性変位させて上記シャッタ5のロックを解除させる。このシャッタ開閉ピン31が上記切欠部20に係合し、シャッタ5のロックを解除した状態からさらに装置内方に挿入すると、シャッタ開閉アーム30が第7図中矢印X方向に回動され、上記シャッタ5が引張りスプリング19の付勢力に抗してピックアップ用の開口部3及び開口部4を開放する側へ摺動され、第8図に示すようにこれら開口部3、4が開放される。」(第6頁右上欄第14行〜左下欄第11行)
第1図〜第8図

ii対比・判断
本件発明1と上記刊行物6〜8に記載された発明を対比すると、本件発明1を特定する事項である、伸設部の当接突起部の下方に「前記開閉ピンが落ち込むように前記ケースの端縁に形成された逃げ凹みの深さに略等しい長さで前記伸設部と前記ケース厚み方向の幅が同一である腕部を介して係合突起部が一体形成されていること」は、上記刊行物6〜8に記載されておらず、当該事項により本件発明1は、「第1係合突起部26はケース1にスライダー12の摺動方向に沿ってそれぞれ形成された案内係合部28a,28bに係合されて、スライダー12を摺動方向に案内するとともに、このケース1から容易に外れるのを防止している。」という顕著な効果を奏するものであり、本件発明1が上記刊行物6〜8に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。

本件発明2〜6は、請求項1を引用するもので、本件発明1と同様の理由により、上記刊行物6〜8に記載された発明から容易に発明をすることができたとすることはできない。

[IV] むすび
訂正により、取消理由1,2について取消理由が解消された。そして、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜6についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜6についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ディスクカートリッジ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ディスク状記録媒体が収納された合成樹脂製のケースと、金属薄板を断面コの字形に折り曲げて形成され、前記ケースに形成されたヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタと、このシャッタに取り付けられ、シャッタの開閉方向に滑るようにして前記ケースの端縁と摺接する合成樹脂製のスライダーとを備えたディスクカートリッジであって、前記スライダーは、前記シャッタの折曲部分の内側に位置してシャッタを支持するシャッタ支持部と、前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成されたケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である伸設部とを有し、この伸設部先端に、シャッタを開方向に移動させるための開閉ピンと当接する当接突起部が形成されるとともに、この当接突起部の下方に、前記開閉ピンが落ち込むように前記ケースの端縁に形成された逃げ凹みの深さに略等しい長さの腕部を介して係合突起部が一体形成されていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項2】 係合突起部が、逃げ凹みの底部よりもケースの内方側に位置することを特徴とする請求項1に記載のディスクカートリッジ。
【請求項3】 係合突起部が、逃げ凹みの底部の長さよりも長く形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のディスクカートリッジ。
【請求項4】 係合突起部の先端が、シャッタの開放時においてもケースに形成された案内係合部と係合する長さを有することを特徴とする請求項3に記載のディスクカートリッジ。
【請求項5】 係合突起部の下面を、ケースに形成されディスク状記録媒体を保持する保持壁部と当接しないように切欠したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のディスクカートリッジ。
【請求項6】 シャッタ支持部のシャッタ開方向側に、シャッタを閉止方向に付勢する弾性部材が係合可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のディスクカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はディスク状記録媒体を収納したディスクカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
記録再生装置に使用されるディスク状記録媒体は、不使用時に破損したり、塵挨が付着したりするのを防止するために、ディスクカートリッジ内にこのディスク状記録媒体を収納することによって保護している。このようなディスクカートリッジとして、例えば図13に示すようなものがある。図13において、符号101は上半片101aおよび下半片101bからなるケースであり、このケース101にはディスク状記録媒体102が収納されている。ケース101にはこのディスクカートリッジが記録再生装置に装填されたときに、ディスク状記録媒体を回転させるための回転穴103や、情報の読み書きを行うためにヘッドが接近可能なヘッド挿入穴104が形成されている。
【0003】
ここで、前記回転穴103やヘッド挿入穴104からケース101内部に塵挨が侵入するのを防止するために、このケース101にはシャッタ106が取り付けられている。また、シャッタ106はケース101内に収装されたねじりコイルばね107によって常時付勢されて、前記回転穴103やヘッド挿入穴104を閉止している。
【0004】
シャッタ106の図13中左側に突出した部分106aに開閉ピンPを当接し、ねじりコイルばね107の付勢力に抗してヘッド挿入穴104等を開口している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のディスクカートリッジにあっては、金属製のシャッタ106がケース101と直に摺接しているので、このシャッタ106をケース101に対してスムーズに摺動させにくく、またシャッタ106とケース101とにこのシャッタ106を摺動方向に案内する案内部が設けられていないために、シャッタ106を摺動方向へ向けて確実に案内させることができないという問題があった。そこで、ケース101に対して滑接するスライダーを取付けることが考えられるが、シャッタ106には開閉ピンPが当接する突出した部分106aを設けねばならないために、スライダーを取付けたシャッタ106部分が複雑化して、このディスクカートリッジが大型化してしまう虞が生じる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような問題を解決するために、本発明のディスクカートリッジは、ディスク状記録媒体が収納された合成樹脂製のケースと、金属薄板を断面コの字形に折り曲げて形成され、前記ケースに形成されたヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタと、このシャッタに取り付けられ、シャッタの開閉方向に滑るようにして前記ケースの端縁と摺接する合成樹脂製のスライダーとを備えたディスクカートリッジであって、前記スライダーは、前記シャッタの折曲部分の内側に位置してシャッタを支持するシャッタ支持部と、前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成されたケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である伸設部とを有し、この伸設部先端に、シャッタを開方向に移動させるための開閉ピンと当接する当接突起部が形成されるとともに、この当接突起部の下方に、前記開閉ピンが落ち込むように前記ケースの端縁に形成された逃げ凹みの深さに略等しい長さの腕部を介して係合突起部が一体形成されている構成とした。また、前記係合突起部の下面を、前記ケースに形成されディスク状記録媒体を保持する保持壁部と当接しないように切欠してもよいものである。
【0007】
本発明のディスクカートリッジにおけるスライダーにはシャッタが取り付けられている部分から伸設部が伸ばして形成されているので、この伸設部の突端に開閉ピンを当接させてスライダーを押せば、シャッタを開閉させることができる。したがって、シャッタに開閉ピンと当接する突出部分を形成する必要がない。
【0008】
ところで、シャッタを開放するには、スライダーの伸設部の先端に開閉ピンを当接させ、この開閉ピンがケースの端縁上を摺動しながらスライダーを押しやる。シャッタの開放が終了すると、開閉ピンは前記逃げ凹みに落ち込み、このシャッタの開放状態を保持している。このとき、伸設部の係合突起部は逃げ凹みに位置している。係合突起部の上面は、逃げ凹みの底部よりケース内方側に位置させているので、開閉ピンは逃げ凹みに完全に落ち込み、シャッタの開放状態を保持することができる。また、伸設部に係合突起部を形成すると、ケースの保持壁部に当接することになるが、この係合突起部の下面には切欠部が形成されているので、保持壁部に当接することはない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1および図2において符号1はディスクカートリッジのケースであり、このケース1は合成樹脂製であって全体が矩形の平板状筐体の上半片1aと下半片1bとからなっている。ケース1内には光学的情報を記録した3.5インチの光ディスク2(ディスク状記録媒体)が収納されている。ケース1の下半片1bの中央には、光ディスク2が記録再生装置に装填されたときに、ケース1内の光ディスク2をスピンドルモータ(図示せず)によって回転させるための回転穴4が形成され、この回転穴4から光ディスク2の中心部に設けられたハブ部2aが露出している。またケース1の上・下半片1a,1bには光ディスク2に記録された情報を読み取るための光ヘッド(図示せず)が接近可能なようにヘッド挿入穴3が形成されている。
【0010】
光ディスク2を使用しない場合には、前記回転穴4やヘッド挿入穴3から塵挨がケース1内に侵入するのを防止するために、このケース1にはシャッタ5が取付けられている。シャッタ5はステンレス鋼等の金属薄板を略中央から断面略コの字形に折り曲げて形成され、前記回転穴4及びヘッド挿入穴3を開閉するための開閉板部6と、この開閉板部6よりも折り曲げ長さが短い補助開閉板部7とを有している。
【0011】
ケース1の記録再生装置挿入側先端部分に形成されたガイド部Gは、図3に示すように、図上左側に形成されケース1の上端面から落込んだ位置に水平方向に伸びるガイド表面8を有している。ガイド表面8の同図中右側には、シャッタ5を開閉するための開閉ピンPがガイド表面8に摺接しながらこのシャッタ5を開放したときに落込むための逃げ凹み9が形成されている。前記開閉ピンPは図3中シャッタ5を右側に移動せしめ、ヘッド挿入穴3を開放する。
【0012】
断面略コの字形シャッタ5の折曲部分5aの内面側にはガイド部Gに摺接するポリアセタール等の合成樹脂製のスライダー12が取り付けられており、このスライダー12は図3中略右半分が前記折曲部分5aの内面側にタッピングねじ等によって固着されている。
【0013】
スライダー12は、図4に示すように全体が細長い棒状となっており、断面略矩形であってシャッタ5の折曲部分5aの内側に位置し、このシャッタ5を支持するシャッタの支持部21と、この支持部21から図4中左下方へ伸ばして形成された幅狭の伸設部22とを有し、この伸設部22の同図中上方から見た厚さt1は、支持部21の同じ厚さt2に比べ小さくなるように形成されている。支持部21の図4中右方側にはその下側に第2係合突起部23が形成され、伸設部22の左方側にも上側に当接突起部25、及び腕部33を介して下側に第1係合突起部26が形成されている。前記支持部21には、ねじ穴21a,21aが形成され、前記当接突起部25は伸設部分22の先端から左右に張り出している。伸設部22の厚さt1を小さくしているのは、図5に示すようにシャッタ5を開いた状態で記録再生装置の一対のヘッドhが側方からヘッド挿入口3へ接近しても、それに接触しないようにするためである。すなわち、カートリッジのガイド部Gに沿って形成された凹んだ凹み部31の厚さを超えないように、伸設部22の厚さt1が定められる。
【0014】
また、図6および図7に示すようにスライダー12の第2係合突起部23の両側には一対の突起部分23a,23bが形成され、この一対の突起部分23a,23bは上・下半片1a,1bの内壁面にスライダー12の摺動方向に向けて形成された一対の案内溝27a,27b(案内係合部)に嵌入している。なお、一方の突起部分23aは長く、他方の突起部分23bは短く形成されている。
【0015】
第2係合突起部23にはねじりコイルばね14の一端14aが係合される第1ばね受部15が形成され、この第1ばね受部15には引掛り部15aが形成されている。ケース1の図7中右上方端部にはねじりコイルばね14の他端14bが係合される第2ばね受部16が形成され、ねじりコイルばね14の付勢力によってスライダー12を図7中左方へ付勢している。また、第2係合突起部23にはねじりコイルばね14が嵌入可能な割り溝23cが形成されている。そして、前記他方の突起部23bが短く形成されているのは、図7に示すようにシャッタ5を完全に開いたときに、ねじりコイルばね14の他端腕14bが突起部23bに衝突するのを避けるためである。
【0016】
一方、図8および図9に示すようにこのスライダー12の伸設部22の先端に形成された当接突起部25は、開閉ピンPによって押圧されるとガイド表面8上を摺接する。また、伸設部22の左端側には図10に示すように下方に形成された腕部33を介して第1係合突起部26が一体に形成されている。第1係合突起部26はケース1にスライダー12の摺動方向に沿ってそれぞれ形成された案内係合部28a,28bに係合されて、スライダー12を摺動方向に案内するとともに、このケース1から容易に外れるのを防止している。
【0017】
また、スライダー12が開閉ピンPによって図11中左上方に摺動されると、この第1係合突起部26は逃げ凹み9に位置する。第1係合突起部26はこの上面26aが図12に示すように、逃げ凹み9の底部9aより下方に位置するように形成されている。一方、図9に示すように第1係合突起部26の下面26b側には、光ディスク2をケース1内に収納保持するために形成された略円弧状の保持壁部32が位置している。このため、下面26bには保持壁部32と当接しないように同じ円弧状に切欠された切欠部26cが設けられている。
【0018】
ところで、ヘッド挿入穴3を閉止しているシャッタ5を開放するには、図9に示すようにスライダー12の当接突起部25の先端に開閉ピンPを当接させ、この開閉ピンPがガイド表面8(ケースの端縁)上を摺動しながらスライダー12を右方へ押しやる。スライダー12はこの当接突起部25および第1係合突起部26がそれぞれガイド表面8および案内係合部28a,28bに案内されながら右方へ摺動すると、支持部22に固着されたシャッタ5は右方へ移動されてヘッド挿入穴3を開放する。シャッタ5の開放が終了すると、開閉ピンPは逃げ凹み9に落ち込みこのシャッタ5の開放状態を保持する。このとき、第1係合突起部26は図11及び図12に示すように逃げ凹み9に位置している。
【0019】
そこで、第1係合突起部26の上面26aが、逃げ凹み9の底部9aよりも図12中上方に位置しているとすると、開閉ピンPは落ち込もうとしても上面26aに当接してしまい、逃げ凹み9内に完全に落ち込むのが阻止される。このように開閉ピンPが逃げ凹み9に完全に落ち込むのが阻止されると、開閉ピンPは逃げ凹み9と確実に係合されなくなり、ねじりコイルばね14の付勢力を受けるスライダー12によって開閉ピンPは逃げ凹み9から押し出されることになり、シャッタ5の開放状態の保持が不安定となる。
【0020】
しかし、第1係合突起部26の上面26aは、逃げ凹み9の底部9aより図12中下方に位置させてるため、開閉ピンPは逃げ凹み9内に完全に落ち込んでこれと確実に係合される。このため、開閉ピンPはスライダー12の腕部27と係合し、シャッタ5の開放状態を保持することができる。なお、この上面26aを底部9aより下方に位置させるために、第1係合突起部26を伸設部22から図9中下方に向けて形成すると、ケース1の保持壁部32に当接するが、この下面26bには切欠部26cが形成されているので、保持壁部32に当接することはない。
【0021】
一方、スライダー12にはシャッタ5の折曲部分5aから伸設部22が伸ばして形成されているので、この伸設部22の突端に開閉ピンPを当接させてスライダー12を押せば、シャッタ5を開閉させることができる。したがって、シャッタ5に開閉ピンPと当接する突出部分を形成する必要がなく、スライダー12の伸設部22に前記突出部分の役目を持たせることで、スライダー12を取り付けたシャッタ5部分は単純化され、このディスクカートリッジを小型化することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、スライダーをシャッタが取付けられている部分から前記開閉ピンが当接可能な伸設部を伸ばして形成したので、この伸設部に開閉ピンを当接させてシャッタを開閉させることができる。したがって、シャッタに開閉ピンと当接する突出部分を形成する必要がなく、スライダーを取り付けたシャッタ部分は単純化され、このディスクカートリッジを小型化することができる。
【0023】
また、伸設部先端にケースの案内係合部と係合する係合突起部を形成し、この係合突起部の上面を前記ケースの端縁に形成された逃げ凹み底部よりもケース内方側に位置するようにしたので、シャッタの開放を終了した開閉ピンが逃げ凹みに完全に落ち込んでこれに確実に係合される。したがって、開閉ピンはスライダーと係合し、シャッタの開放状態を保持することができる。さらに、係合突起部の下面を前記ケースに形成されディスク状記録媒体を保持する保持壁部と当接しないように切欠したので、この係合突起部は前記保持壁部に当接することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スライダーが用いられたディスクカートの表側の斜視図
【図2】 スライダーが用いられたディスクカートリッジの裏側の斜視図
【図3】 ディスクカートリッジの正面図
【図4】 スライダーの斜視図
【図5】 シャッタを開いたときのガイド部の状態説明図
【図6】 図3におけるVI-VI線断面図
【図7】 図7は図6におけるVII-VII線断面図
【図8】 図8はこのディスクカートリッジの部分平面図
【図9】 図9はこのディスクカートリッジの部分断面図
【図10】 図10は図9におけるX-X断面図
【図11】 図11は図9におけるXI矢視斜視図
【図12】 図12は図11におけるXII-XII線断面図
【図13】 図13は従来のディスクカートリッジを示す斜視図
【符号の説明】
1・・・ケース
3・・・ヘッド挿入穴
5・・・シャッタ
9・・・逃げ凹み
9a・・・底部
12・・・スライダー
22・・・伸設部
26・・・第1係合突起部
26c・・・切欠部
32・・・保持壁部
 
訂正の要旨 平成13年5月28日付けの訂正の要旨
A.特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成された伸設部とを有し、・・・・・・・」を、
「【請求項1】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成されたケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である伸設部とを有し、・・・・・・・」と訂正。
B.明りょうでない記載の釈明を目的とし、段落6
「【0006】【課題を解決するための手段】
・・・・・・・・・・・・、前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成された伸設部とを有し、・・・・・・・」を、
「【0006】【課題を解決するための手段】
・・・・・・・・・・・・・、前記シャッタの折曲部分におけるシャッタ閉止方向側端部から突出するように伸ばして形成されたケース厚み方向の幅が前記シャッタ支持部の幅よりも幅狭である伸設部とを有し、・・・・・・・」と訂正。
異議決定日 2001-06-06 
出願番号 特願平11-135938
審決分類 P 1 651・ 161- YA (G11B)
P 1 651・ 121- YA (G11B)
P 1 651・ 113- YA (G11B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 張谷 雅人
特許庁審判官 犬飼 宏
相馬 多美子
登録日 1999-11-12 
登録番号 特許第3002679号(P3002679)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 ディスクカ―トリッジ  
代理人 金山 聡  
代理人 金山 聡  
代理人 土屋 勝  

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