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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項2号公然実施 A63F 審判 全部申し立て 発明同一 A63F 審判 全部申し立て 2項進歩性 A63F |
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管理番号 | 1046956 |
異議申立番号 | 異議1998-72672 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-05-09 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-05-26 |
確定日 | 2001-05-31 |
異議申立件数 | 8 |
事件の表示 | 特許第2687989号「電子遊戯機器」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2687989号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件特許2687989は、平成4年6月12日に出願され、平成9年8月22日にその特許の設定登録がなされ、その後、富田正樹、コナミ株式会社、小栗克之、株式会社テクノソフト、宮崎主税、任天堂株式会社、奈良奉文、株式会社ティーアンドイーソフトより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知に対し訂正請求(平成11年1月18日付)がなされ、訂正拒絶理由通知に対し訂正請求の手続き補正書(平成12年5月29日付)が提出されたものである。 (2)訂正の適否 1.訂正請求書の補正の適否 (補正の内容) 補正事項1) 全文訂正明細書中の請求項1の「前記視点が、前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合と、これに対して、この運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合とがある」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「前記視点が前記表示体のやや後方である視点を含み、かつ前記視点が前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合のモードと、これに対して、この運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合のモードとがある」と補正する。 補正事項2) 全文訂正明細書の段落【0007】の「【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、表示対象に係わる情報を三次元立体データとして保持し、その情報に対して三次元演算処理を行うことがてきる演算処理手段を備え、その演算処理手段により演算処理された表示対象に係わる情報に基づいて表示手段にて表示が行われるようにした電子遊戯機器であって、複数の視点の情報を設定しておき、競技者の競技姿勢を検出する検出手段を設け、前記演算処理手段は、前記検出手段からの信号に基づいて前記視点の情報の一つを選択し、その選択した視点に基づき前記表示手段に前記表示対象を表示する構成されてなるとともに、前記視点が、前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合と、これに対して、この運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合とがあることを特徴とするものである。」を誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的として、「【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、表示対象に係わる情報を三次元立体データとして保持し、その情報に対して三次元演算処理を行うことができる演算処理手段を備え、その演算処理手段により演算処理された表示対象に係わる情報に基づいて表示手段にて表示が行われるようにした電子遊戯機器であって、複数の視点の情報を設定しておき、競技者の競技姿勢を検出する検出手段を設け、前記演算処理手段は、前記検出手段からの信号に基づいて前記視点の情報の一つを選択し、その選択した視点に基づき前記表示手段に前記表示対象を表示する構成されてなるとともに、前記視点が前記表示体のやや後方である視点を含み、かつ前記視点が前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合のモードと、これに対して、この運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合のモードとがあることを特徴とするものである。」と補正する。 (補正の適否) 上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を含むものであり、訂正事項の削除や軽微な瑕疵の補正等ではなく訂正事項を変更するものと認められるので、請求書の要旨の変更に該当するものである。 したがって、上記訂正事項の補正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合しないので、認められない。 2.独立特許要件の判断 ア.訂正明細書の各請求項に係る発明 訂正明細書の各請求項に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】表示対象に係わる情報を三次元立体データとして保持し、その情報に対して三次元演算処理を行うことができる演算処理手段を備え、その演算処理手段により演算処理された表示対象に係わる情報に基づいて表示手段にて表示が行われるようにした電子遊戯機器であって、前記表示対象に係わる複数の視点の情報を設定しておき、競技者により操作される切替手段を設け、前記演算処理手段は、前記切換手段からの信号に基づいて前記視点の情報の一つを選択し、その選択した視点に基づき前記表示手段に前記表示対象を表示するように構成されてなるとともに、前記視点が、前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合と、これに対して、この運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合とがあることを特徴とする電子遊戯機器。 【請求項2】前記演算処理手段は、前記切替手段に対する操作ごとに前記視点の情報を特定の順序で選択するようにした請求項1に記載の電子遊戯装置(電子遊戯機器の誤記と認められる)。 【請求項3】前記演算処理手段は、ある視点から他の視点への移動を徐々に連続的に行う処理を実行する請求項1又は2記載の電子遊戯装置(電子遊戯機器の誤記と認められる)。 【請求項4】前記切替手段は複数の視点を順次切り替えるスイッチであり、このスイッチは競技者が操作して前記演算処理手段に信号を与えるための機器に並列又は一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子遊戯装置(電子遊戯機器の誤記と認められる)。」 (以下、各「訂正発明1,2,3,4」という。) イ.特許法第29条第2項について A.引用例の発明 当審が訂正拒絶理由通知において示した、 引用例2(訂正拒絶理由において引用した番号、以下同様):ゲームソフト「STARWARS」の取扱説明書 その第1頁には、「ワイヤーフレームによる迫力の3D画像とダイナミックな動きを、思う存分お楽しみ下さい。」、 その第3頁には、 「■起動方法 1)DISK(ディスク)Aをドライブ0に、DISK(ディスク)Bをドライブ1に挿入する。 2)コンピュータ及びディスプレイの電源を入れる。 ※ハードディスクからシステムを起動している方はOPT.1のキーを押しながら起動して下さい。 ■対応する周辺機器 ・アタリ仕様のジヨイステイツク※X68000XV1(シャープ株式会社製コンピュータの商品名)の16MHzモードでも正常に動作致します。」、 その第6頁には、 「*ゲーム中敵機に後方より狙われると、赤文字で(DANGER)と、レーダー上に表示されます。レーダー上で光彩している機が、後方より自機を狙っている敵機です。完全に捕捉されると自機は後方を向いた姿勢で画面中央に表示されます。敵機によって被弾するか、味方機に助けられるか、又は自力で追撃を振り切らない限り元の画面には戻りません。 ■ネームエントリー ・このゲームでは、デス・スターを破壊するまでの速い順に、プレイヤ-の名前を、上位5人まで登録することができます。」、 その第8頁には、 「1 TRACE PLAY 過去の自分のプレイを、様々な視点から見ることができます。トレース・データをロードしていない場合は、最も新しいプレイを再現します。」、その第9頁には、 「カメラモードゲーム中、あるいはトレース・プレイ中に、以下のキー操作により、ゲーム画面の視点を様々な角度からのものに切り替えることができます。 HOME 通常画面です。「↑」「↓」「←」「→」「ROLLUP」「ROLLDOWN」で画面の視点を切り替える事ができます。 「↑」 コックピットから正面を見たときの画面 「↓」 コックピットから後方を見たときの画面 「←」 コックピットから左側を見たときの画面 「→」 コックピットから右側を見たときの画面 「ROLLUP」 コックピットから上方を見たときの画面 「ROLLDOWN」 コックピットから下方を見たときの画面 ・・・*また、MANUALVIEWの時「FI」〜「F8」キーと「↑」「↓」「←」「→」キー及び「ROLLUP」「ROLLDOWN」「OPT.1」「OPT.2」キーで様々なアングルから自機を見ることができます。」、 と記載されている。 引用例3:「oh!X」1991年10月号、ソフトバンク社、1991年10月1日発行には、ゲームソフト「スターウォーズ(STARWARS)」に関し、その簡単な概要に加えて、発売元(ビクター音楽産業)及び販売価格(7200円)が紹介されている。 引用例4:「oh!X」1992年5月号、ソフトバンク社、1992年5月1日発行には、 ゲームソフト「スターウォーズ」が、本件特許の出願前である1991年(平成3年)12月17日にビクター音楽産業から発売されたことが示されている。 引用例5:「Login」No.23、株式会社アスキ-、1991年(平成3年)12月6日発行には、 ゲームソフト「スター・ウォーズ(STARWARS)」に関し、その簡単な概要に加えて、メーカー(ビクター音楽産業/M.N.M SOFTWARE)、価格(7200円)及び発売日(11月22日)が紹介されている。 また、第183ページには、 「・・・具体例をいうと、敵機が自機の後ろにつくと、画面はコックピットから離れ、追いかけている敵機のやや後方からの視点に変わる。・・・」と記載されている。 上記引用例2〜5によれば、下記のような発明が、本件特許の出願前に公然と実施されていたものと認められる。 「ワイヤフレームによる3D画像を含むゲーム画面をディスプレイに表示しゲームを行うゲームソフトSTARWARS及びコンピュータであって、上記ワイヤフレームによる3D画像を含むゲーム画面に係わる複数ゲーム画面の視点の情報が設定されており、プレイヤーのキー(例えば、「↑」キー)操作により、ゲーム画面の視点を切り替えるゲームソフトSTARWARS及びコンピュータ。」 引用例7:米国特許第5015188号明細書には、 「本発明の1つの利点は、三次元空間の複数の異なる視界の移動を実質的に方向感覚を失うことなく、急に変えることなく連続的に行えることである。」(第2欄第22乃至24行)、 「図2〜図4は、図1の配置1の視界から、図5の配置2の視界への切り替えを連続的な順序で表している表示例である。 操縦者は、図1から図2へ、図2から図3aへ、図3aから図4へ、図4から図5への切り替えを操作する。切り替えの操作は、所望により操縦室の操縦桿により取り付けられたスイッチを用いて行う。このスイッチは、瞬間的に動作するスイッチであり、操縦者が切り替えを操作した後に素早く他の仕事に取りかかれるようにすることが好ましい。 切り替えは、ある配置の終わりから始まり、その他の配置で終わる。もう一つの瞬間的なスイッチ操作により、配置の途中で表示を停止するようにしてもよい。あるいは、ある特別な操縦者や操作者が幅広く理解できるように、前もって選択した特別な任意の切り替えの途中の位置で止められるようにその表示をブログラムしてもよい。」(第4欄第28乃至42行、図2乃至4)、 「図10には、本発明による表示を生成するための図9に示されるハードウエアシステムを積んだ航空機用のソフトウェアブロック図の例が示されている。図10のソフトウェアは、主にディスプレイソフトウェア38に備わっていて、他のプロセッサにより処理されるデータ及び共有記憶域28に供給されるデータを利用する。ソフトウェアブロック48、50、52に示すように、図10のソフトウェアは、瞬間的なスイッチ入力により、配置1又は二次元の視点と、配置2又は三次元の視点との間の切り替えスイッチ(トグル)を提供する。本発明の技術においては、前記瞬間的スイッチを、適切なソフトウェアを用いて、二以上の視点から、選択された特別の視点へその視点を切り替える二つの位置スイッチに置き換えてもよいことが容易に理解できる。ソフトウェアブロック54、56、58、60は、追加機能の例である。例えば、操縦者による範囲設定などが可能である。他の用途によりよく適応するために、視界を僅かに変化させながら全体の表示形式を変更するようにしてもよい。いくつかの用途としては、例えば、消滅のポイント透視の代わりに、等軸の透視視点を使うことにより、わかりやすい表示にしてもよいかも知れない。」(第5欄第43乃至64行、図10)、 「本発明の技術において、配置3の視界への切り替えは、配置1の視界から、配置2に視界からあるいは前記配置1と前記配置2との間の視界から、のいずれからも開始される。操縦者が複数の視界から切り替えを行うスイッチまたは制御手段は、公知の手段を使うことによって、異なる選択や選択順序やスピードを調整することができる。」(第6欄第7乃至14行)、 「1 フラットイメージディスプレイ上に、三次元空間の対象とそれと関連する一つまたはそれ以上のその他の対象の位置を表示する方法であって、操縦者の切換手段の操作により、連続的な順序で、ある透視視点から他の透視視点への移動のための演算処理を行うステップを含む表示方法。」(第6欄第53乃至58行) と記載されている。 引用例9:「ファミコン通信」No.19、1990年(平成2年)9月14日発行、及び 引用例10:「ファミコン通信」1992年(平成4年)3月20日号には、 二次元のゲ-ムではあるが、三人称の視点からみた画面において、背景画面が変化せず、車のみがスピン等している画面が示されている。 引用例11:「三菱ドライビングシミュレータDS-5000」教習用模擬運転装置のパンフレットには、 3次元コンピュータ-グラフィツクスを採用がライビングシミュレーションに関し、 「視点の変更 視点を変えて危険場面を見せ、事故発生の過程を様々な角度から分析して見せることができます。 ・自車(運転者が見た)視点 ・ふかん(自車後方上空から見た)視点 ・上方(真上から見た)視点 ・他車(関係する他の車両から見た)視点」 と記載され、また、その例が図示されている(パンフレット6、7枚目)。 B.対比・判断 ・訂正発明1に関して 本件訂正発明1と引用例2〜5により本件特許出願前販売されていたと認められるゲームソフト「STARWARS」及びこのゲームソフトの取扱説明書である引用例2に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを比較すると、引用発明における「ワイヤーフレームによる3D画像(以下、単に「画像」という。)」、「コンピュータ(例えば、X68000)」、「ディスプレイ」、「ゲームソフトSTARWARS及びコンピュータ」、「ゲーム画面の視点」、「プレイヤ-」及び「キー(例えば、「↑」キー)」が、訂正発明1における「表示対象」、「演算処理手段」、「表示手段」、「電子遊戯機器」、「視点」、「競技者」及び「切替手段」に相当するものと認められる。 また、引用発明においては、画像に係わる情報を三次元立体データとしてディスクに保持していること、その画像に係わる情報を呼び出してコンピュータで三次元演算処理を行っていること、演算処理された画像に係わる情報に基づいてディスプレイに表示が行われること、前記画像に係わる複数のゲーム画面の視点の情報が設定されていること、キーはプレイヤーが操作すること、キーからの信号に基づいて前記ゲーム画面の視点の情報の一つを選択し、その選択したゲーム画面の視点に基づき前記ディスプレイに前記画像を表示するように構成されてなるとともに、前記ゲーム画面の視点が、前記プレイヤーの前記画像に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されていることは、ゲームソフト「STARWARS」の内容及び引用例2の記載を参酌すれば明白である。してみれば、両者は、表示対象に係わる情報を三次元立体データとして保持し、その情報に対して三次元演算処理を行うことができる演算処理手段を備え、その演算処理手段により演算処理された表示対象に係わる情報に基づいて表示手段にて表示が行われるようにした電子遊戯機器であって、前記表示対象に係わる複数の視点の情報を設定しておき、競技者により操作される切替手段を設け、前記演算処理手段は、前記切替手段からの信号に基づいて前記視点の情報の一つを選択し、その選択した視点に基づき前記表示手段に前記表示対象を表示するように構成されてなるとともに、前記視点は、前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合を含む電子遊戯機器である点で一致し、前記視点に関し、訂正発明1は、視点が運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合とをさらに含んでいる点で相違する。 上記相違点について検討する。視方向が変わらないように構成するとは、本件特許に係る願書に添付された明細書の発明の詳細な説明を参照すると、ゲーム外部観戦の視点のモードを言うものと認められる。そうすると、このゲームにおける外部観戦の視点のモードは、引用例9〜11に開示されるようゲーム機及びシュミレーション装置などにおいては周知のことであり、しかも、自動車レースのテレビ中継等で上空からレースの先頭車などを追っていく従来普通に知られている映像表示であるので、引用発明において、既に複数の視点を切り替える点が開示されているのであるから、運転操作の場合に上記周知のような視方向が変わらない視点を含ませることに格別な技術的工夫が認められない以上、当業者が適宜採用し得る程度の単なる設計事項というべきである。 また、訂正発明1のように構成することによって奏する効果も格別のものということはできない。 したがって、本件訂正発明1は、引用例2〜5により、公然と実施されていたと認められる発明及び引用例9〜11に記載されているような周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 なお、訂正後の特許請求の範囲を、平成12年5月29日付の訂正請求書の補正のとおりのものとしたとしても、表示体の後方である視点が上記引用例10のように周知であるので、上記の判断は変わらない(この視点は自動車のクラッシュによる回転などを客観的にみるモードである)。 ・訂正発明2に関して 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の演算処理手段に関し、切替手段に対する操作ごとに視点の情報を特定の順序で選択するようにしたものである。 引用発明のものは、カメラモードゲーム中に、通常画面の他に「↑」「↓」「←」「→」「ROLLUP」「ROLLDOWN」のキー操作により、画面の視点を切り替える事ができるものであり、各視点と操作キーが割り当てられている点で本件訂正発明2とは相違するが、切替手段(操作キー)の操作ごとに動作モードを変更させることは、切替手段(操作キー)を少なくして複数の動作モードを得るための一般的な常套手段にすぎず(例えば、照明器具を最も明るいモード、普通の明るさのモード、豆電球のモードなどのように一つの切替手段で得ること)、引用発明のような画面の視点を切り替えるものにおいて、複数のキーを用いるものに代えて、上記一般的に行われている技術を適用することは当業者の設計的事項程度のことというべきである。 したがって、本件訂正発明2は、引用例2〜5により、公然と実施されていたと認められる発明及び引用例9〜11に記載されているような周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 ・訂正発明3に関して 本件訂正発明3は、本件訂正発明1または本件訂正発明2の演算処理手段に関し、ある視点から他の視点への移動を徐々に連続的に行う処理を実行するようにしたものである。 しかしながら、ある視点から他の視点への移動を徐々に連続的に行う処理を実行するようになすことは、引用例7に記載されるように公知(特に第2欄第22乃至24行参照)であるので、この点に格別の差異は認められない。 したがって、本件訂正発明3は、引用例2〜5により、公然と実施されていたと認められる発明、引用例7に記載される発明及び引用例9〜11に記載されているような周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 ・訂正発明4に関して 本件訂正発明4は、本件訂正発明1の切替手段に関し、複数の視点を順次切り替えるスイッチであり、このスイッチは競技者が操作して演算処理手段に信号を与えるための機器に並列または一体に設けられているものである。この競技者が操作して演算処理手段に信号を与えるための機器に関して、本件特許明細書の段落0012をみれば、「視点変更スイッチ2はゲームスタートスイッチに並列させて設けたり、ハンドルに備えるようにしてもよい。」と記載されており、ゲームのスタートスイッチや、ハンドルなどの操縦部材であることが認められる。そうすると、ゲーム機の操作部には通常スイッチ類がまとめられていること、また、引用例7には操縦桿にこのような視点切り替えのためのスイッチを設けることが記載されていることからみて、切替手段が複数の視点を順次切り替えるスイッチであり、このスイッチは競技者が操作して演算処理手段に信号を与えるための機器に並列または一体に設けるようになすことは、当業者が適宜行える設計的事項というべきである。 したがって、本件訂正発明4は、引用例2〜5により、公然と実施されていたと認められる発明、引用例7に記載される発明及び引用例9〜11に記載されているような周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 ウ.特許法第29条の2について A.先願明細書記載の発明 当審が訂正拒絶理由通知において示した、 特願平4-510593号(特表平6-507736号)には、 「本発明は主にヘリコプタのフライト・シュミレータに関するものであるが・・・フライト・シュミレータに用いられているモデリング技術の中には娯楽用ソフトウエアやアーケードゲームの分野に応用されているものもある。特に、一般にへリコプタでの飛行を模擬したビデオシミュレータゲームとされるアーケードゲームに、イリノイ州ウィーリングのタイトーアメリカ社(・・・)から販売されている「Air Inferno」ゲームがある。」(第3頁左下欄13行〜同頁右下欄12行)、 「第1に、様々な要因の中で、初心者の多くは「三人称」側の立場にある時、すなわち浮揚した航空機を実際に見ている時の方が快適な飛行であると感じるものなので、カメラをパイロットの視界から外れるように動かすシミュレータ機能によって飛行訓練効果を高めることができる。多くのビデオゲームは、画像上の世界に対するいわゆる第三者的な見方を利用している。・・・視点の変更は、「カメラ」によるプレイフィールドの視覚を変化させて全地形の頭上の景色または地下作用が起こる地上の景色にするために利用されている。・・・視点を変化させる機能のもう1つの例を挙げると、カリフォルニア州サンホセのセガ・エンタープライズ社(・・・)から販売されている「G-Loc」ゲームがある。これは航空機間戦争をシミュレートしたものである。「G-Loc」では一人称側から見た景色すなわちカメラがコックピット側にある時の見え方から、三人称側から見た景色すなわちカメラが航空機の外にある時の見え方に視点を変化させる。」(第4頁左下欄18行〜同頁左下欄18行)、 「本発明は、プロセッサおよびメモリを有するコンピュータと;コンピュータに接続されたビデオ表示装置と;コンピュータによって生成された飛行世界内での乗り物に対する三人称からの見え方をシミュレートし、ビデオ表示装置上に表示する手段と;飛行世界内の乗り物に対する一人称からの見え方をシミュレートし、ビデオ表示装置上に表示する手段と;飛行世界内の乗り物に対する複数の景色の連続的なシーケンスを生成するアニメーション手段であって、前記連続的なシーケンスは一人称からの見え方と三人称からの見え方のうち現在選択されている方から始まり、現在選択されている見え方とは異なる後で選択された方の見え方で終了し、前記連続的なシーケンスは乗り物から離れる方向への様々な距離での景色を含むアニメーション手段と;ユーザが景色の連続的なシーケンスを起動できるように前記オートメーション手段に接続され、後で選択された見え方をビデオ表示装置上に表示するユーザ選択可能な制御装置と;コンピュータに接続され、飛行世界全体に乗り物を移動させる制御手段と;を備えるユーザによる選択可能なズームシステムを含む。」(第5頁左下欄19行〜同頁右下欄11行)、 「攻撃用ヘリコプタシミュレータ134は、周期的制御装置142のハンドル上に適宜配置した2つの発射ボタン144(・・・)を含む。」(第8頁右上欄第TO乃至12行、図3)、 「本シミュレータ134において、ユーザ136は後述するように一人称側からの見え方と三人称側からの見え方との間で選択的に動くためにユーザ選択可能なズームボタン146を使用することができる。最後に、2つのコイン投入装置148を備えてあるので、ユーザ136はコインを投入すればシミュレータ134のアーケードゲームの実施例を楽しむことができる。ユーザ入力134〜148は、コンピュータ150に電気信号を供給する電気機械装置である。コンピュータ150は、図3に示すようにコンピュータのハードウェアとソフトウェアとの組み合わせである4つの処理装置を備える。処理装置は、ユーザ入力138〜148の動きに相当する電気信号を受信するワールドモデル処理装置152を含む。・・・ワールドモデル処理装置152は、ユーザ入力138〜148を受信し、飛行「場面」すなわち「世界」(すなわち、コンピュータによって生成されて表示された三次元地形モデル領域)の状態をモデリングして維持し、ユーザフィードバックをコーディネートする。コンピュータによって生成された飛行世界すなわちシミュレーション環境は、建物などの静止物体やシミュレーションのヘリコプタ、さらには敵の戦闘機やへりコプタなどの飛行物体も含む。このように、シミュレーションのヘリコプタが飛行世界を進むと、移動物体の位置(デカルト座標)および動き(速度および加速度)は更新される。」(第8頁右上欄22行〜同頁左下欄21行、図3)、 「好ましいコンピュータ150は、簡単に言って、ワールドモデル処理装置152の汎用マイクロプロセッサ(例;Motorola68000)と、衝突処理装置154のMSPと、ビデオ処理装置160のADSPおよびGSPとを含む。さらに、好ましいコンピュータ150は、自己診断用に記憶領域512キロバイトと、MSP、ADSP、GSPの各プログラム用に記憶領域512キロバイトと、68000のプログラムとシミュレーションの場面を規定するテーブル用に記憶領域2メガバイトと、例えばフライト・シミュレータ134の制御パネル(図4)や任務説明などを含む画像「ブリッツ(・・・)」を規定するための記憶領域3メガバイトと、多角形の物体用に記憶領域2メガバイトとを傭える読出専用メモリ(ROM)を含む。さらに、好ましいコンピュータ150は、以下のように各処理装置用にランダムアクセスメモリ(RAM)を備える。」(第9頁左上欄16行〜同頁右上欄5行、図3)、 「図4は、図3に示すフライト・シミュレータ134の好ましい実施例のスクリーン画面を示す図である。スクリーン画面はビデオ表示装置162(図3)に表示されたものであるが、図1において参照符号105で示すもののようなヘリコプタの実機室のシミュレーションから外れて三人称側から見た景色を示してある。ユーザ136の視界はシミュレーション上の飛行世界164である。・・・飛行世界164は空166と、地形すなわち地面168と、シミュレーションのヘリコプタ169と、多数の航空機170(・・・)とを含む。」(第9頁右上欄11〜22行、図1〜4)、 「機能218において、制御装置およびフライト・シミュレータ134のスイッチを読み取る。スイッチの中で、ズームボタン164(図3)は後述するようにユーザ136が一人称と三人称との間でズーム方向を固定しているか否かを判断するために読み取られる。制御装置を読み取り、その位置はワールドモデル152の運動モデル部分(・・・)に入力する。(運動モデルすなわちヘリコプタの更新位置や速度、加速度などの情報は、周知の技術である。)その後、状態220において、ワールドモデル152は他のユーザすなわちフライト・シミュレータ134b(図3)にいるユーザの位置を知ることができればこれを要求し、ワールドモデル152で全てのユーザの位置が分かるようにする。この位置情報は、他のユーザに関する三次元デカルト座標を含む。さらに、状態220において、運動モデルに基づいて新規ユーザ位置を算出する。」(第10頁右上欄1〜13行、図3、5a)、 「状態238から、ワールドモデル152は状態240に移行して飛行世界(図4)内のカメラ(または観測者)の位置を修正する。カメラの位置すなわち視点は、例えば、一人称(ヘリコプタ内)または三人称(へリコプタの外)のものとすることができる。また、シミュレーションのへリコプタ169が移動すると、カメラも移動してへリコプタに対する飛行世界164の位置を一定に保つ。例えば、三人称からの視点にするためにはカメラはへリコプタの背後および前方に位置する。さらに、ズームボタン146(図3)の状態によってはカメラは後述するように段階的にズームを行ってもよい。例えば衝突、弾丸発射などユーザのヘリコプタに対する場面の変化は、(複数ユーザモードを選択した場合に)状態242で他のフライト・シミュレータ134bに伝えられる。」(第11頁左上欄6〜17行、図3〜5b)、 「図10a、bおよびcは本発明のユーザによる選択可能なズーム部分の動作を示す一連のスクリーン画面である。図10aは三人称側から見た場面の飛行世界164を示す。図10cは-人称側から見た場合の飛行世界164を示す。図10bは図10aと10との中間から見た場合の飛行世界164を示す。一人称側および三人称側から見た場合の見え方は、本発明のユーザによる選択可能なズーム機能に関して選択した2つの視角であり、ズームボタン146(図3)を押すことでこれらの状態に入ることができる。三人称からの視点は、上述したように、ヘリコプタ169の後ろ約250フィートで負のピッチすなわちヘリコプタ169の上側に18度の位置にあるカメラからのものである。距離を選択してへリコプタの動きを示す光景に干渉することなく画像を最大限に大きくする。すなわち、カメラが後ろすぎる場合には他の物体はへリコプタ169の画像に妨害されてしまう。水平線すなわちヘリコプタ169の下の地面と影270(図6a、bおよびc)との大部分を表示できるようにピッチ角を選択する。視点が2種類あることでユーザの好みに応じやすくなり、時にはシミュレーション飛行(一人称)から三人称の視点に移ることに大きな意味がある場合もある。一人称からの見え方では、ユーザ136(図3)はヘリコプタ169の正確なロール/ピッチ/ヨーと全く同じカメラ位置にいる。したがって、目に入ってくるものは、ヘリコプタの鼻と水平線との間で上3/4にピッチ角を調節してパイロットがへリコプタの機室からまつすぐ前を見たときの光景である。」(第14頁左下欄第10行〜同頁右下欄9行、図3、6a、b、cおよび10a、b、c)、 「さて、特に図面を参照すると、図10aはズームボタン146(図3)が押される前の飛行世界164の三人称側からみたヘリコプタ169を示すスクリーン画面である。この場面では、ヘリコプタ169は峡谷300(図8aおよびb)を通って前進しており、視界の左下側に河川305が見えている。峡谷の一方の壁308は真っ直ぐに見えている。図10bはズームボタン146を押した後にフライト・シミュレータ134によって表示された三人称側から見た光景である。へリコプタ169は徐々に大きくなっていき、カメラがへリコプタ169の方向に向いているのでへリコプタ自体は見えなくなっている。・・・最後に、図10cは、ズームボタン146を押すことで開始されたユーザによる選択可能なズーム機能の最後で見える飛行世界164での一人称からの始めである。峡谷の壁308が前方にあり、図10cでは鏡内目盛171も表示されている。必要があれば、ズーム機能の最終段階でズーム方向を反転することも可能である。したがって、例えば図10に示す光景を上述した順序とは逆の順序で表示することも可能である。」(第15頁左上欄3〜21行、図10b)、 「次に状態368でズームアップに比例する光景を設定する。例えば、三人称からの見え方では、カメラは全く横揺れしていない。偏揺れは一人称からの見え方において使用した偏揺れと一致する。例えば仮にヘリコプタ169が後方に飛行していたのであれば、カメラは前方を向いたままである。光景を変化させる際、位置カメラ機能240はロール角やピッチ角、ヨー角などを一致させようとする。機能240がN倍進んでいるのであれば、以下のようにして各ステップでの横揺れ比率を変化させる。 roll=rollin+step/N(rollout-rollin) ここで、 rollは現ステップで算出した横揺れ; rollinはズームインした場合の横揺れ; stepはズームシーケンスにおける現在のステップ; Nはズームシーケンスにおけるステップ数; rolloutはズームアウトした場合の横揺れ; である。 例えば、ヘリコプタ169が急勾配で横に傾いている場合、三人称からの視点には全く横揺れは存在しないが一人称からの視点では目に付く程度の横揺れがある。このため、カメラのアングルを連続して変えて三人称から一人称へと変わる時のヘリコプタ169の角度にする。最終ステップによって、カメラは現在のロール角にくる。ヨー角はヘリコプタ169と同じ向きに偏揺れして同じままで維持される。ピッチ角は、一人称の視点がヘリコプタ内にある時にはヘリコプタ169の上18度から水平になって0度になる。」(第15頁左下欄2行〜同頁右下欄6行)、 と記載されている。 上記記載によれば、上記先願明細書には、 「飛行世界に係わる情報を三次元立体データとして保持し、これらのデータを処理するワールドモデル処理装置152を有するコンピュータ150を備え、そのワールドモデル処理装置152を有するコンピュータ150によって演算処理された飛行世界に係わる情報にもとづいてビデオ表示装置に該飛行世界を表示させるようにしたフライト・シミュレータであって、飛行世界に係わる一人称(側)からの見え方(視点)と三人称(側)からの見え方(視点)を設定し、ユーザにより操作されるズームボタン146を設け、ワールドモデル処理装置152を有するコンピュータ150は、ズームボタンからの信号に基づいて飛行世界に係わる一人称(側)からの見え方(視点)と三人称(側)からの見え方(視点)を選択し、それに基づきビデオ表示装置に飛行世界を一人称(側)からの見え方(視点)、又は三人称(側)からの見え方(視点)を表示してなるフライトシミュレータ。」 が記載されている。(以下、「先願発明」という。) ・訂正発明1について 本件訂正発明1と、先願発明とを比較すると、先願発明における「飛行世界」、「ワールドモデル処理装置152」、「ビデオ表示装置」、「フライト・シミュレータ」、「ズームボタン146」、「一人称(側)からの見え方(視点)と三人称(側)からの見え方(視点)」、「ユーザ」が、本件訂正発明1における「表示対象」、「演算処理手段」、「表示手段」、「電子遊戯機器」、「切替手段」、「複数の視点」、「競技者」に相当することは明白である。また、先願発明において、表示対象である「飛行世界」に係わる情報を三次元立体データとしワールドモデル処理装置を含むコンピュータ150の記憶領域に保持し、このコンピュータ150が、前記情報を読み出して三次元演算処理を行う演算処理手段を備えていること、その演算処理手段により演算処理された飛行世界に係わる情報に基づいてビデオ表示装置にて表示が行われるようにしていることも明白である。してみれば、両者は、表示対象に係わる情報を三次元立体データとして保持し、その情報に対して三次元演算処理を行うことができる演算処理手段を備え、その演算処理手段により演算処理された表示対象に係わる情報に基づいて表示手段にて表示が行われるようにした電子遊戯機器であって、前記表示対象に係わる複数の視点の情報を設定しておき、競技者により操作される切替手段を設け、前記演算処理手段は、前記切替(切換は誤記と認められる。)手段からの信号に基づいて前記視点の情報の一つを選択し、その選択した視点に基づき前記表示手段に前記表示対象を表示するように構成されてなるとともに、前記視点は、前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合を含む電子遊戯機器である点で一致し、前記視点に関し、本件発明1は、運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合をさらに含んでいるのに対して、先願発明は、もう一つの視点である三人称からの視点が、この運転操作の場合において視方向が変わらないように構成された視点であるか否かについて当事者間に争いがあるので検討する。 先願明細書の上記第15頁左下欄2行〜同頁右下欄6行の記載を参照すると、この記載の中の横揺れ比率の変化の式は徐々にズームのステップを変化していったときのものであり、横揺れとはroll、即ち横方向に対する回転のことであると認められる。してみると、上記記載の中の「ヘリコプタ169が急勾配で横に傾いている場合、三人称からの視点には全く横揺れは存在しないが一人称からの視点では目に付く程度の横揺れがある。」との記載は、三人称の視点では横方向の回転は存在しないが、一人称からの視点では、目に付く程度の横方向の回転があることを意味しているものと認められる。ここで一人称とはヘリコプタ内の操縦席の視点であるから、ヘリコプタの横方向の回転に伴うものであるのに対し、三人称とはヘリコプタの横方向の回転とは連動しないものということができる。そうすると、自機を外部からみているモードであると認められる。 ちなみに、この例ではヨー角(進路方向の揺れ)は同じままで維持され、ピッチ角(縦方向の揺れ)は一人称の視点がヘリコプタ内にある時にはヘリコプタ169の上18度から水平になって0度になる。このようにみると、上記先願明細書における三人称とは本件訂正発明1における「運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合」に相当する。 そうすると、上記先願発明は、実質的に本件訂正発明1と同一であるというべきである。 なお、訂正後の特許請求の範囲を、平成12年5月29日付の訂正請求書の補正のとおりのものとしたとしても、上記先願発明のものも表示体の後方である視点を有するものであるので、上記の判断は変わらない(この視点は飛行体のクラッシュなどを客観的にみるモードである)。 ・訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1の、演算処理手段に関し、切替手段に対する操作ごとに視点の情報を特定の順序で選択するようにしたものである。 しかしながら、切替手段に対する操作ごとに視点の情報を特定の順序で選択するようになすことは、先願発明も有している構成(ズームボタンによる視点の切替)であり、この点に格別の差異は認められない。 したがって、本件訂正発明2は、先願発明と同一と認められる。 ・訂正発明3について 本件訂正発明3は、本件訂正発明1または本件訂正発明2の演算処理手段に関し、ある視点から他の視点への移動を徐々に連続的に行う処理を実行するようにしたものである。 しかしながら、ある視点から他の視点への移動を徐々に連続的に行う処理を実行するようになすことは、先願発明も有している構成であり、この点に格別の差異は認められない。 したがって、本件訂正発明3は、先願発明と同一と認められる。 ・訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明1の切替手段に関し、複数の視点を順次切り替えるスイッチであり、このスイッチは競技者が操作して演算処理手段に信号を与えるための機器に並列または一体に設けられているものである。 しかしながら、先願発明において、ズームボタン146が、一人称側からの見え方と三人称側からの見え方の複数の視点を切り替えるスイッチであること、このズームボタン146はユーザ136が操作すること、このズームボタン146の操作により信号がコンピュータ150に与えられること及びこのズームボタン146がハンドル上に適宜配置した発射ボタンと回路的に並列に設けられていることを勘案すれば、先願発明も複数の視点を順次切り替えるスイッチは競技者が操作して演算処理手段に信号を与えるための機器に並列または一体に設けられているとの構成を有しているものと認められる。 したがって、本件訂正発明4は、先願発明と同一と認められる。 エ.むすび 以上の通りであるから、訂正発明1〜4は、上記引用例2〜5によって本件特許の出願前に公然と実施されていたと認められる発明、引用例7に記載された発明及び引用例9〜11に記載されるような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 また、訂正発明1〜4は、上記先願発明と同一であり、本件訂正発明1〜4と上記先願発明の発明者が同じとはいえず、その出願人も同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件訂正請求は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 (3)特許異議申立てについての判断 1.本件発明 請求項1〜4に係る発明は、特許請求の範囲に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】表示対象に係わる情報を三次元立体データとして保持し、その情報に対して三次元演算処理を行うことができる演算処理手段を備え、その演算処理手段により演算処理された表示対象に係わる情報に基づいて表示手段にて表示が行われるようにした電子遊戯機器であって、複数の視点の情報を設定しておき、競技者により操作される切替手段を設け、前記演算処理手段は、前記切換手段からの信号に基づいて前記視点の情報の一つを選択し、その選択した視点に基づき前記表示手段に前記表示対象を表示するようにしたことを特徴とする電子遊戯機器。 【請求項2】前記演算処理手段は、前記切替手段に対する操作ごとに前記視点の情報を特定の順序で選択するようにした請求項1に記載の電子遊戯機器。 【請求項3】前記演算処理手段は、ある視点から他の視点への移動を徐々に連続的に行う処理を実行する請求項1又は2記載の電子遊戯機器。 【請求項4】前記切替手段は複数の視点を順次切り替えるスイッチであり、このスイッチは、競技者が操作して前記演算処理手段に信号を与えるための機器に並列又は一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子遊戯機器。」 (以下、各「本件発明1,2,3,4」という。) 2.引用例記載の発明 当審が取消理由通知において引用した、 引用例1(取消理由通知において引用した番号、以下同様):特願平4-510593号(特表平6-507736号・・・上記(2)2.ウ.A.先願明細書記載の発明参照) 引用例2:ゲームソフト「STARWARS」取扱説明書(引用例2の記載については、上記(2)2.イ.A.引用例の発明参照、以下同様) 引用例3:「oh!X」1991年10月号、ソフトバンク社、1991年10月1日発行 引用例4:「oh!X」1992年5月号、ソフトバンク社、1992年5月1日発行 引用例5:「Login」No.23、株式会社アスキ-、1991年(平成3年)12月6日発行 引用例7:米国特許第5015188(取消理由の5105188は誤記であり、権利者も5015188として応答している)号明細書 3.対比・判断 (特許法第29条第1項第2号及び同条同項第2項について) 本件発明1は、視点について、訂正発明1の「前記視点が、前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合と、これに対して、この運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合とがある」とする限定がない点で相違しているのみと認められる。そうすると、訂正発明における相違点はないものとなり、本件発明1と引用例との構成は一致しているものと認められる。 したがって、本件発明1は、上記引用例2〜5により、国内において公然と実施をされていたと認められる発明である。 また、本件発明2〜4は、上記独立特許要件の欄に記載した理由により当業者が容易に発明することができたものである。 (特許法第29条の2について) 上記のとおり本件発明1は、視点について、訂正発明1の「前記視点が、前記競技者の前記表示対象に係わる運転操作に応じて視方向が変わるように構成されてなる場合と、これに対して、この運転操作の場合において視方向が変わらないように構成されてなる場合とがある」とする限定がないだけであるので、本件発明1は実質的に上記独立特許要件の欄に記載した理由により先願発明と同一であるというべきである。 また、本件発明2〜4に係る発明も、実質的に上記独立特許要件の欄に記載した理由により先願発明と同一であるというべきである。また、本件発明1〜4と上記先願発明に記載される発明の発明者が同じとはいえず、その出願人も同一ではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項2号、請求項2〜4に係る発明は同法同条第2項の規定に違反して特許されたものであり、また、本件請求項1〜4に係る発明は、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであるので、取り消されるべきである。 したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-03-30 |
出願番号 | 特願平4-179040 |
審決分類 |
P
1
651・
112-
ZB
(A63F)
P 1 651・ 161- ZB (A63F) P 1 651・ 121- ZB (A63F) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 植野 孝郎 |
特許庁審判長 |
村山 隆 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 馬場 清 |
登録日 | 1997-08-22 |
登録番号 | 特許第2687989号(P2687989) |
権利者 | 株式会社セガ・エンタープライゼス |
発明の名称 | 電子遊戯機器 |
代理人 | 遠山 勉 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 田辺 恵基 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 大賀 眞司 |
代理人 | 鈴木 正剛 |