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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1047852
審判番号 不服2000-4056  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-23 
確定日 2001-10-18 
事件の表示 平成 9年特許願第333853号「光ピックアップ」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 9月 2日出願公開、特開平10-233033]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年12月4日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、平成13年4月12日付けおよび平成13年7月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである。(以下、「本願発明」という。)
「光ディスク記録媒体の情報を再生する光ピックアップであって、
高密度光ディスク(DVD)に使用する第1の波長の光を出射する第1の光源と、前記高密度光ディスクからの反射光を検出する第1の光検出器とを有する第1の光学ユニットと、
低密度光ディスク(CD)に使用する前記第1の波長よりも長い第2の波長の光を出射する第2の光源と、前記低密度光ディスクからの反射光を検出する第2の光検出器とを有する第2の光学ユニットと、
前記第1の波長の光を反射し前記第2の波長の光を透過するとともに、光ディスク記録媒体の半径方向に対してほぼ直角を成す方向に配置された光軸であって、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とをほぼ同一の前記光軸に導く光路変更手段と、
前記第1の波長の光を拡散光から平行光に変換し、前記第2の波長の光の拡散角度を減少させるコリメータレンズと、
前記第1の波長の光に対する透過光束の径と、前記第2の波長の光に対する透過光束の径とが異なる透過光束の径を有する光束径変更手段と、
前記ほぼ同一の前記光軸に導かれた前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを対物レンズの光軸に一致するように反射する立ち上げミラーと、
前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを前記高密度光ディスクと前記低密度光ディスクとにそれぞれ合焦させる前記対物レンズとを有し、
前記第1の光源は前記光分離手段が反射する方向に配置し、前記第2の光源はほぼ同一の前記光軸の延長線上に配置し、かつ、前記対物レンズは前記第2の波長の光における作動距離が1.2mm以下で、前記第1の波長の光における作動距離が1.4mm以下であることを特徴とする光ピックアップ。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、当審で拒絶の理由に引用した、本願の出願の日前の出願に係る特願平8-310348号(特開平10-154344号公報参照)の請求項11に係る発明(以下、「先願発明」という。)は、平成13年4月12日付手続補正書により補正された次のとおりのものである。(特許第3199650号 平成13年6月15日登録)
「【請求項8】 光ディスク記録媒体の情報を再生する光ピックアップであって、
第1の波長の光を出射する第1の光源と、光ディスクからの反射光を検出する第1の光検出器とを有する第1の光学ユニットと、
前記第1の波長よりも長い第2の波長の光を出射する第2の光源と、光ディスクからの反射光を検出する第2の光検出器とを有する第2の光学ユニットと、
前記第1の波長の光を反射し前記第2の波長の光を透過するとともに、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを、光ディスクの情報トラックのタンジェンシャル(接線)方向であってほぼ同一の光軸に導く光分離手段と、
前記第1の波長の光を拡散光から平行光に変換し、前記第2の波長の光の拡散角度を減少させるコリメータレンズと、
対物レンズとを有し、
前記第1の光源は前記光分離手段が反射する方向に配置し、前記第2の光源は前記ほぼ同一の光軸の延長線上に配置したことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項9】 光ディスクからの反射光を前記第1の光検出器に導く第1の光誘導手段と、光ディスクからの反射光を前記第2の光検出器に導く第2の光誘導手段とを有し、
前記第1の光誘導手段が前記第1の光学ユニットに収納され、前記第2の光誘導手段が前記第2の光学ユニットに収納されていることを特徴とする請求項8に記載の光ピックアップ。
【請求項10】 前記光分離手段は、ビームスプリッタであることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の光ピックアップ。
【請求項11】 前記第1の波長の光に対する透過光束の径と、前記第2の波長のレーザ光に対する透過光束の径とが異なる透過光束の径を有する光束径変更手段を有し、
前記透過光束の径は前記第2の波長の光に対して開口数(NA)0.4から0.6の範囲で前記対物レンズが動作するように設定し、前記光分離手段と前記対物レンズとの間に前記光束径変更手段を配置したことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1に記載の光ピックアップ。」

3.対比
本願発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「第1の波長の光」および「第2の波長の光」は、明細書及び図面の記載から見てそれぞれ「高密度ディスク(DVD)に使用する第1の波長の光」および「低密度ディスク(CD)に使用する前記第1の波長よりも長い第2の波長の光」であり、先願発明の「光ディスクの情報トラックのタンジェンシャル(接線)方向」が本願発明の「光ディスク記録媒体の半径方向に対してほぼ直角を成す方向」と同一であることは明らかであり、先願発明の「対物レンズ」が本願発明の「前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを前記高密度光ディスクと前記低密度光ディスクとにそれぞれ合焦させる前記対物レンズ」と同一であることも明らかであるから、両者は
(一致点)
「光ディスク記録媒体の情報を再生する光ピックアップであって、
高密度光ディスク(DVD)に使用する第1の波長の光を出射する第1の光源と、前記高密度光ディスクからの反射光を検出する第1の光検出器とを有する第1の光学ユニットと、
低密度光ディスク(CD)に使用する前記第1の波長よりも長い第2の波長の光を出射する第2の光源と、前記低密度光ディスクからの反射光を検出する第2の光検出器とを有する第2の光学ユニットと、
前記第1の波長の光を反射し前記第2の波長の光を透過するとともに、光ディスク記録媒体の半径方向に対してほぼ直角を成す方向に配置された光軸であって、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とをほぼ同一の前記光軸に導く光路変更手段と、
前記第1の波長の光を拡散光から平行光に変換し、前記第2の波長の光の拡散角度を減少させるコリメータレンズと、
前記第1の波長の光に対する透過光束の径と、前記第2の波長の光に対する透過光束の径とが異なる透過光束の径を有する光束径変更手段と、
前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを前記高密度光ディスクと前記低密度光ディスクとにそれぞれ合焦させる前記対物レンズとを有し、
前記第1の光源は前記光分離手段が反射する方向に配置し、前記第2の光源はほぼ同一の前記光軸の延長線上に配置したことを特徴とする光ピックアップ。」である点で一致し、
(相違点)
(ア)本願発明が、「前記ほぼ同一の前記光軸に導かれた前記第1の波長の光と前記第2の波長の光とを対物レンズの光軸に一致するように反射する立ち上げミラー」を有するのに対し、先願発明はミラーの有無を限定していない点、および
(イ)本願発明が、作動距離を「前記対物レンズは前記第2の波長の光における作動距離が1.2mm以下で、前記第1の波長の光における作動距離が1.4mm以下である」と特定しているのに対し、先願発明ではこのような特定をしていない点で一応の相違を認めることができる。

4.当審の判断
しかしながら、(ア)光ディスク面に平行に導かれた光を対物レンズの光軸に一致するように反射する立ち上げミラーは、光ディスク装置の分野においては周知(例.先の拒絶理由で周知例として例示した特開平3-62321号公報(第1図のミラー9),特開平4-245029号公報(第4図),特開平4-245037号公報(第3図の立ち上げミラー40),特開平5-234241号公報(第1図の立ち上げミラー217)参照)の構成であり、この点は実質的な相違とはいえない。
また、(イ)光ディスク装置の厚みを薄くするために作動距離を小さくすることは、光ヘッドの設計上の常識であり、ビーム径を一定としている以上、波長と作動距離は比例するものであることも周知である。そして、上記で例示した周知例に、いずれも1.2mm以下の数値が記載されているように、小さな作動距離のものが既に多用されている。
なお出願人は、意見書において、本願のようにすることにより、開口数との関連により定まる対物レンズの入射有効径を3.0mm以下に定めることができ、対物レンズの入射有効径を特定することにより駆動系の各部品の空間を確かめつつ、かつ、光束の通過する空間を最大限に確保することができる旨、主張しているが、入射有効径は、スポットサイズ、必要とする光の強度、開口および波長に応じて決まるものであることが当該分野の技術常識であることから、この数値もこれらの値と共に当業者が必要に応じて適宜設計し得る程度のことと認められるとともに、これらは、本願発明が特定していない事項であるから、結局のところ請求項の記載に基づかない主張であって採用できない。
したがって、上記相違点はいずれも実施に際して必要に応じて適宜設計し得る事項であり、実質的な相違点とはいえない。

5.結び
したがって、本願発明は、先願発明と実質的に同一の発明であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-08-08 
結審通知日 2001-08-21 
審決日 2001-09-04 
出願番号 特願平9-333853
審決分類 P 1 8・ 4- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 洋一  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 川上 美秀
田良島 潔
発明の名称 光ピックアップ  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

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