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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1048551
異議申立番号 異議2000-72218  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-12-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-22 
確定日 2001-10-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第3001271号「エキス分の高い節状加工食品及びその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3001271号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 I.本件特許第3001271号は、平成3年1月18日に特願平3-4537号として出願され、平成11年11月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、マルトモ株式会社より特許異議申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年1月5日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由に対して平成13年5月29日付で手続補正書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、訂正請求書2頁15〜18行の訂正事項の
「原料肉より得られたすり身または細片肉を絶縁性容器内に充填し、この絶縁性容器内に通電して内部温度を80℃〜100℃に加熱し、その後肉塊を容器から取出し蒸煮処理しそして50℃〜90℃の温度で焙乾処理することを特徴とするエキス分の高い節状加工食品の製造方法。」を「手続補正1」として、
「原料肉より得られたすり身または細片肉を絶縁性容器内に充填し、この絶縁性容器内に通電して内部温度を80℃〜100℃に加熱し、その後肉塊を容器から取出し蒸煮処理しそして55℃〜90℃の温度で燻乾処理することを特徴とするエキス分の高い節状加工食品の製造方法。」と補正すること、また、これに伴い、「手続補正2」として「課題を解決するための手段」の項、及び「手続補正3」として「発明の効果」の項について補正することを求めている。
しかし、上記補正は、「50℃〜90℃の温度」及び「焙乾処理」を、それぞれ「55℃〜90℃の温度」及び「燻乾処理」と変更するものであるから、訂正請求書の要旨を変更することとなり、特許法120条の4、3項において準用する同法131条2項の規定に適合しないものである。
(2)訂正の内容
特許権者が訂正請求により求めている訂正事項「a」は、請求項1,2及び4を削除し、請求項3を、
「原料肉より得られたすり身または細片肉を絶縁性容器内に充填し、この絶縁性容器内に通電して内部温度を80℃〜100℃に加熱し、その後肉塊を容器から取出し蒸煮処理しそして50℃〜90℃の温度で焙乾処理をすることを特徴とするエキス分の高い節状加工食品の製造方法。」と訂正するものである。

(3)判断
本件出願当初の明細書には、段落【0007】に、「本発明においては、処理すべき肉の形状が一定でありしかも比較的小型であるので、使用する燻乾装置内の温度、湿度、風量を調整し、例えば、庫内温度を50℃〜90℃、湿度を40%〜85%とし、乾燥及びあん蒸を交互に繰返すことにより、再現性の高い均一で連続的な燻乾条件を得ることができる。」、段落【0008】に、「通電後、肉塊を容器から取出し、放冷させ、そしてクッカー処理(常圧100℃で20分の蒸煮)を行い、節水分を45%〜55%にした。尚、燻乾処理は55℃〜90℃で行った。」との記載はあるが、上記訂正事項の「50℃〜90℃の温度で焙乾処理をすること」については記載されておらず、また、当該訂正事項が出願時の技術常識であるとも認められないので、上記訂正事項を含む訂正は、願書に添付した明細書の範囲内においてした訂正ではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、当該訂正は、特許法120条の4、3項において準用する同126条2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
III.特許異議申立てについて
(1)本件発明
本件請求項1乃至請求項4に係る発明は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】原料肉より得られたすり身または細片肉を通電作用により加熱処理した後、焙乾処理して成ることを特徴とするエキス分の高い節状加工食品。
【請求項2】原料肉が表層魚である請求項1に記載のエキス分の高い節状加工食品。
【請求項3】原料肉より得られたすり身または細片肉を絶縁性容器内に充填し、この絶縁性容器内に通電して内部温度を80℃〜100℃に加熱し、その後焙乾処理または必要に応じて蒸煮及び焙乾処理をすることを特徴とするエキス分の高い節状加工食品の製造方法。
【請求項4】原料肉が表層魚である請求項3に記載のエキス分の高い節状加工食品の製造方法。」
(2)引用刊行物に記載された発明
当審で通知した取消理由で引用した刊行物1(「食品加工技術」10巻1号日本食品機械研究会)には、
「このようなジュール加熱装置を用いて、スケトウダラ冷凍すり身特A級を原料として、食塩3%のみで擂潰し、Φ30m/m×150m/mの加熱・成型筒に充填した。入力端子より交流100V5Aで通電してジュ-ル加熱を行った。」(73頁左欄10〜14行)の記載とともに、「図3」として、円筒型ポリオレフィン樹脂を成型加熱筒とする「ジュール加熱試験装置」が記載されている。また、
「ジュール加熱の通電時間は1分18秒で行い、すり身の中心温度が16℃から80℃まで上昇するのに40秒、さらに140℃まで上昇させた。」(73頁左欄図4下1〜4行)、「一方、官能検査においてもジュール加熱品はボイル加熱品に比較して、ゼリー強度の測定値と同じような結果を示し、ジュール加熱の効果が優れていることを明確にしている。異味や異臭も問題なく、色調ではマイワシなどの赤身魚が、従来の加熱方法によると褐色あるいは灰色に変るのに対して、ジュール加熱は加熱時間が極めて短いため、加熱中の変色が少なく、加熱前の鮮やかな色調を保持する傾向にある。」(77頁右欄4〜12行)がそれぞれ記載されている。
同刊行物2(特開昭53-142578号公報)には、
「身おろしした肉塊を細片化する工程と、この細片化した肉塊を減圧下で脱気する工程と、所定形状のガラス、陶器、あるいはプラスチック等の非金属の成形器で成形する工程とよりなることを特徴とする肉類の成形法。」(3頁左上欄4〜8行)、
「次に減圧処理を受けた肉塊を所定形状のガラス、陶器あるいはプラスチック等の非金属の成形器に充填して、一定温度(・・・)、一定時間(・・・)煮熟し、その後引き上げて放冷する。その後燻煙室にいれ、一定温度(・・・)、一定湿度、一定時間(・・・)の焙乾の工程を数回繰り返し、常法により魚節を得る。」(3頁右下欄1〜8行)がそれぞれ記載されている。
(3)対比・判断
(請求項4について)
請求項4に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比するに、「マイワシ」が表層魚であること、及び「ポリオレフィン樹脂」は絶縁性であることはそれぞれ明らかであること、並びに通電時の内部加熱温度は重複していることから、前者では「通電加熱後、焙乾処理をしている」のに対し、後者ではそのような記載がない点で相違するほかは、両者は一致している。
この相違点について検討するに、刊行物2には、成形魚肉を加熱後、焙乾して節状加工食品を調製することが記載されている。
そして、刊行物1及び刊行物2にそれぞれ記載された事項は、魚肉の加工に関する技術に属するものであるから、刊行物1及び刊行物2に記載された事項を組み合わせて、請求項4に係る発明のような構成を採用することは当業者であれば容易に想到し得ることである。

(請求項3について)
請求項3は、請求項4に係る発明の上位概念に相当するものであるから、請求項4に係る発明についての判断と同様の理由により、刊行物1及び刊行物2に記載された事項に基づき当業者が容易に想到することができたといえる。

(請求項1及び請求項2について)
請求項1及び請求項2は、それぞれ請求項3及び請求項4に係る発明を「物」で表現したものであるから、請求項3及び請求項4に係る発明についての判断と同様の理由により、刊行物1及び刊行物2に記載された事項に基づき当業者が容易に想到することができたといえる。

(4)むすび
以上のとおり、請求項1乃至請求項4に係る発明の特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-08-23 
出願番号 特願平3-4537
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 吉田 一朗  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 大高 とし子
田中 久直
登録日 1999-11-12 
登録番号 特許第3001271号(P3001271)
権利者 ヤマキ株式会社
発明の名称 エキス分の高い節状加工食品及びその製造方法  
代理人 島宗 正見  
代理人 樺沢 聡  
代理人 八木田 茂  
代理人 樺沢 襄  

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