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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する G10F
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する G10F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G10F
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G10F
管理番号 1049315
審判番号 訂正2001-39047  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-20 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2001-03-21 
確定日 2001-07-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2991124号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2991124号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨

本件審判請求の要旨は、特許2991124号(平成1年1月19日に出願された実願平1-4584号を特許法第46条第1項の規定により、平成8年8月29日に特願平8-229070号として特許出願に変更し、平成11年10月15日設定登録)に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正するもので、その訂正の内容は次の(1)ないし(4)とおりである。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の第1項を、「ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたペダルと、ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、該ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドとを具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構において、前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを同軸上に連設して、該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結し、自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動されることを特徴とする自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構。」と訂正する。

(2)訂正事項b
特許明細書の段落番号0014(本件特許公報第3頁左欄第2行〜第13行)の「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため・・・ことを特徴とする。」を、「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するためになされた本発明は、ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたべダルと、ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、該ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドとを具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構において、前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを同軸上に連設して、該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結し、自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動されることを特徴とする自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構を提供するものである。」と訂正する。

(3)訂正事項c
特許明細書の段落番号0015(本件特許公報第3頁左欄第14行〜第28行)の「上記構成によれば・・・が作動する。」を、「上記構成によれば、演奏データに対応した駆動電流がペダル駆動用ソレノイドに供給され、この駆動電流に応じてプランジャが上下駆動される。これに伴い、ペダル突上棒が上下駆動され、自動演奏ピアノでは演奏データに対応した演奏制御が行われる。ここで、プランジャとペダル突上棒とが同軸上に連設され、かつ、プランジャの摺動方向端部と、ペダル突上棒接続端部とが回動自在に連結されているため、ペダル駆動の際の機械的騒音は著しく小さい。また、ペダル駆動ソレノイドがピアノ本体に固定され、ペダル駆動ソレノイドのプランジャのみがペダル操作に応じて摺動するので、通常演奏時においては、フットペダルの踏み込み負荷が従来の一般的なピアノと変わらず、また、自動演奏時においては、プランジャの上下動がフットペダルに伝達され、記録された踏み込み量に応じてフットペダルが作動する。」と訂正する。

(4)訂正事項d
特許明細書の段落番号0023(本件特許公報第4頁左欄第6行〜同頁右欄第3行)の「【発明の効果】以上説明したように、・・・という効果を奏する。」を、「【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、プランジャとペダル突上棒とが同軸上に連設され、かつ、プランジャの摺動方向端部と、ペダル突上棒接続端部とが回動自在に連結されているため、ペダル駆動時の機械的騒音が防止されるという効果が得られる。また、本発明によれば、ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされたペダルの背面側に連結されたペダル突上棒が、ペダル駆動ソレノイドのプランジャと同軸上に連設されプランジャの摺動方向端部と回動自在に連結されている。ダンパペダル駆動機構におけるこのペダル突上棒とプランジャとの直結構造は、ペダル駆動の制御性を改善し、したがって高度なダンパペダル操作を自動で行うことが可能になるという効果が得られる。そして、演奏データとしてペダル踏み込み量に対応するデータを供給するようにしておき、このデータに従ってプランジャの位置決めを行なうようにすれば、演奏データに対応する駆動電流に応じてハーフペダルその他のペダル踏み込み量の調整が可能となる。さらに、ペダル駆動ソレノイドがピアノ本体に固定され、ペダル駆動ソレノイドのプランジャのみがペダル操作に応じて摺動するので、通常演奏時においては、フットペダルの踏み込み負荷が従来の一般的なピアノと何等変わらず、よって演奏感覚が従来と大きく変わってしまうことがないという効果を奏する。また、自動演奏時においては、プランジャの上下動がフットペダルに伝達され、フットペダルの動作が演奏データに従って再現されるため、自動演奏を見ている者に違和感を与えないという効果を奏する。」と訂正する。

2.当審の判断

(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

ア.上記訂正事項a中の「ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたペダルと、」は、「ペダル」を下位概念のものに限定したものであり、この「ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたペダルと、」は、特許明細書の段落番号0003(特許公報第2欄第13行〜第3欄第1行)に「各ペダルla〜lcは、ペダル軸を境にピアノ前面側が踏み込み部となっており、ピアノ背面側にはペダル突上棒3a〜3cが各々連結されている。」と記載されており、
上記訂正事項a中の「該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結したこと」は、「該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを連結したこと」を下位概念のものに限定したものであり、この「該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結したこと」は、特許明細書(特許公報第5欄第40行〜第6欄第23行、原出願明細書第7頁第6行〜第9頁第3行)に「【0017】・・・プランジャ11aおよび11cは、・・・その摺動方向(上下方向)両端部には雄ねじが形成されている。ペダル突上棒12aの一端は、ユニバーサルジョイントを介してペダルlaに連結され、他端には雌ねじ(図示せず)が形成されている。【0018】そして、この雌ねじがプランジャ11aの下端部の雄ねじと螺合することにより、ペダル突上棒12aとプランジャ11aとが接続されている。・・・【0019】・・・この時、ペダル突上棒12aもプランジャ11aと連動するのでダンパペダルlaが回動する。ここで、プランジャ11aとペダル突上棒12aおよび袋ナット13aとは強固に接続されており、上記動作において発生する騒音は著しく小さい。」と記載されており、図1に「ペダル突上棒12aのダンパペダルla側端部に設けられたユニバーサルジョイントと、プランジャ11a側に設けられたユニバーサルジョイントとを備えている」構成が図示されており、
上記訂正事項a中の「自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動される」は、「演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドとを具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構」を下位概念のものにに限定したものであり、この「自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動される」は、特許明細書の段落番号0019(特許公報第6欄第14行〜第17行、原出願明細書第8頁第12行〜第15行)に「自動演奏モード時は、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイド4aおよび4cに供給され、この駆動電流に応じてプランジャ11aおよび11cが駆動される。」と記載されており、
上記訂正事項a中の「自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構」は、「自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構」を下位概念のものに限定したものであり、この「自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構」は、特許明細書の段落番号0019、0020、0021(特許公報第6欄第9行〜第45行、原出願明細書第8頁第6行〜第9頁第17行)に「上記構成において、演奏者がダンパペダルlaを踏み込むと、・・・」と記載されているので、
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。

イ.上記訂正事項b及びcは、上記訂正事項aの特許請求の範囲の訂正に対応して、これに整合するように発明の詳細な説明の欄の【課題を解決するための手段】を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。

ウ.上記訂正事項dは、上記訂正事項aの特許請求の範囲の訂正に対応して、これに整合するように発明の詳細な説明の欄の【発明の効果】を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項dの「そして、演奏データとしてペダル踏み込み量に対応するデータを供給するようにしておき、このデータに従ってプランジャの位置決めを行なうようにすれば、演奏データに対応する駆動電流に応じてハーフペダルその他のペダル踏み込み量の調整が可能となる。」は、特許明細書の段落番号0021(特許公報第6欄第40行〜第45行)に「そして、演奏データとしてペダル踏み込み量に対応するデータを供給するようにしておき、このデータに従ってプランジャ11a,11cの位置決めを行うようにすれば、ハーフペダル動作は勿論、ペダル踏み込み量をリニアに調整することが可能となり、より高度な演奏を自動で行うことが可能となる。」と記載されているので、上記訂正事項dは、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。

(2)独立特許要件の判断
本件特許2991124号の関連事件で、現在、東京高等裁判所に平成13年(行ケ)第22号取消決定取消請求事件(2000年異議72477号の取消決定取消請求事件)が出訴されており、その特許異議の決定で引用された刊行物に基づき独立特許要件について検討する。

ア.訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明
訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「訂正後の発明」という。)は、本件審判請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりである。
「【請求項1】ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたペダルと、
ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、
該ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドと
を具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構において、
前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを同軸上に連設して、該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結し、
自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動されることを特徴とする自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構。」である。

イ.刊行物に記載された発明

刊行物1:実願昭54-67404号(実開昭55-167287号)のマイクロフィルム
1-a.「ピアノの自動演奏装置に関する」(第1頁12行ないし第13行)
1-b.従来例と比較して、「従来このダンパー、ソフトペダルのプランジャ部の構成は、筒状のソレノイドとこのソレノイドコイル内に挿通された可動コアとを有し、これを突き上げ棒の中間に入れさらに可動コアの上端にダンパー、ソフトペダル動作用の突き上げ棒を固定することが必要であった。この考案は、一本の突き上げ棒の一部に磁性体部を形成することによって、上記ダンパー、ソフトペダルの突き上げ棒を切る事とおよび可動コアと突き上げ棒との 固定作業を不要にした」(第1頁18行ないし第2頁第8行)
1-c.突き上げ棒の構成として「1は、ペダルレバーで、その一端は例えば釣合を介してぺダルに連結されている。このペダルレバー1の作動端上には、突き上げ棒2が設けられ、ペダルレバー1の作動によって上下動するようになっている。突き上げ棒2の一部には、磁性体部3が形成されている。そして、この磁性体部3を挿通した状態でソレノイドコイル4が巻装されている。5は、その取付フレームである。したがって、突き上げ棒2は、上記ソレノイドコイル4によっても上下に作動され、ソレノイドコイル4に供給されるテープ再生信号に応じてダンパー、ソフトペダルを動かしてペダルそうさを再現する。」(第2頁12行ないし第3頁第4行)

刊行物2:実願昭57-123071号(実開昭59-27597号)のマイクロフィルム
2-a.「自動演奏ピアノのペダル駆動装置に関する」(第1頁第17行ないし第18行)
2-b.「前記電磁プランジャ50は自動演奏時に前記ペダル機構7を選択的に駆動して弱音機構4を作動させるためのもので、ソレノイドコイル54、可動鉄心55等を有して前記ブラケット52の上面に配設されている。前記プラケット52は・・・(中略)・・・取付部52d,52eが前記底板25に複数個の木ねじ56によって固定されている。」(第8頁第7行ないし第18行)
2-c.底板25に関し、「楽器筺体5の底面を構成する底板25の前端部上面に配設」(第5頁第2行ないし第3行)
2-d.「前記ソレノイドコイル54はボビン64内に配設され、このボビン64は前記ブラケット52の上面板52c上に載置固定された固定ヨーク65のフランジ部65a上に配設されている。」(第9頁第8行ないし第11行)
2-e.「可動鉄心55の下端部には略路L字形に形成された左右一対の金属板からなるばね受け兼連結金具71がピン72を介して取付けられており」(10頁第4行ないし第7行)
2-f.可動鉄心に関し「可動鉄心55の上端部外周面には可動ヨーク68が嵌合固定され」(第9頁第18行ないし第20行)
2-g.「連結金具71は前記吊金ボルト28の上端部をゴム等の緩衝部材77を介して挟持保持することにより該ボルト28と前記可動鉄心55を作動連結している。」(第10頁第13行ないし第16行)
2-h.「このような構成からなる電磁プランジャ50においてソレノイドコイル54に信号電流を供給して該コイル54を励磁すると、磁気ギャップ70に生じる磁束の作用により可動ヨーク68が吸引下降されるため、これと一体に可動鉄心55も下降する。したがって、連結金具71が緩衝部材77を介して吊金ボルト28を押し下げる。この吊金ボルト28はばね62の作用によりソフトペダル27に対して固定状態を保持しているため、該ボルト28が下降すると、前記ソフトペダル27も回動軸79を中心として第2図反時計方向に回動する。この結果、ソフトペダル27はあたかも足によって踏込操作されたかの如く作動し、ソフトペダル天秤29をペダル天秤軸40を中心として第1図時計方向に回動させる。このソフトペダル天秤29が回動すると、ソフトペダル突上棒30を突き上げるため、弱音機構4は足によるソフトペダル27の踏込操作と同様に作動し、弱音演奏を可能にする。」(第10頁第20行ないし第11頁第18行)
2-i.「自動演奏時以外の通常演奏時においてソフトペダル27を踏込操作すると、吊金ボルト28の下降に伴い可動鉄心55がそれ自体の重量およびバックアップスプリング73の力により下降するため、電磁プランジャ50は何ら負荷として作用することがなく、したがって一般のピアノと同様、円滑かつ確実なべダル機構7の作動を可能にする」(第11頁第19行ないし第12頁第6行)

刊行物3:実願昭59-23858号(実開昭60-140096号)のマイクロフィルム
3-a.「自動演奏用ピアノのペダル駆動装置に関する」(第1頁第13行ないし第14行)
3-b.「ペダル駆動装置は第1図(a)、(b)、(c)に示すように通常ペダル機構を構成するペダル突上棒1、ペダル天秤2、ペダル3等に配設され、これらをその可動鉄心4により駆動するようにしている。なお、Aはペダル駆動装置を示す。・・・・・ペダル突上棒にこれと同軸的に配設する場合(第1図(a))には、該突上棒を特殊な突上棒と交換したりあるいはペダル突上棒を切断して短くしたりする必要があるため、その取付け、調整作業が面倒であった。」(第2頁6行ないし19行、第1図(a)の実施例を参照)

ウ.対比・判断
訂正後の発明は、上記刊行物1に記載の発明とを比較すると、上記刊行物1に記載の発明は「自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構」であり、また、「ダンパー、ソフトペダルのプランジャー部の構成は、筒状のソレノイドとこのソレノイドコイル内に挿通された可動コアを有し、これを突き上げ棒の中間に入れさらに可動コアの上端にダンパー、ソフトペダル動作用の突き上げ棒を固定することが必要であった」なる従来例の構成は、「筒状のソレノイドとこのソレノイドコイル内に挿通された可動コアを有するもの」が、ペダル駆動ソレノイドであるから、図1を参考にすると、ここには、「ペダル突き上げ棒を上下に分割して、その間に可動コアをペダル突き上げ棒と連結している」構成があるものと解され、「ソレノイドコイルは取付フレーム5を介してピアノ本体に固定」される記載は「ソレノイドの本体がピアノ本体に固定されている」ものであることを示唆しており、結局ここには、「ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下させるペダル駆動ソレノイドと前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを連結した連結駆動機構」に相当する構成の記載があると認められるから、両者は「ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、該ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドとを具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構において、前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部と連結したことを特徴とする自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点A
訂正後の発明は、「ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたペダルと、ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを同軸上に連設して、該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結した自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構」であるのに対し、刊行物1に記載された発明には、その様な記載がされていない点

相違点B
訂正後の発明は、「自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動されることを特徴とする自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構」として、高度なペダル操作を可能としているのに対し、刊行物1に記載された発明には、その様な記載がされていない点

次に、上記相違点A,Bについて、検討する。
刊行物2には、ソレノイド50の駆動動作の伝達手段として、上記2-e.に「可動鉄心55の下端部には略L字形に形成された左右一対の金属板からなるばね受け兼連結金具71がピン72を介して取付けられており」、また、上記2-f.に、可動鉄心に関し「可動鉄心55の上端部外周面には可動ヨーク68が嵌合固定され」、上記2-g.に、「連結金具71は前記吊金ボルト28の上端部をゴム等の緩衝部材77を介して挟持保持することにより該ボルト28と前記可動鉄心55を作動連結している。」、さらに、上記2-h.に、「電磁プランジャ50においてソレノイドコイル54に信号電流を供給して該コイル54を励磁すると、磁気ギャップ70に生じる磁束の作用により可動ヨーク68が吸引下降されるため、これと一体に可動鉄心55も下降する。したがって、連結金具71が緩衝部材77を介して吊金ボルト28を押し下げる」の各記載があって、ここで、電磁プランジャは、楽器筺体5の底面部を構成する底板25に固定され、可動鉄心はこれに対して垂直方向に駆動するから、所定角度で駆動されるペダルに結合された吊り下げボルト28との接触部分との間で、横方向のモーメントが作用するようになり、そして、連結金具71はゴム等の緩衝部材77をもって、吊金ボルト28の上端部を挟持保持する形態で連結することで、即ち、軸方向に所定の角度の動きを伴って対向する接触部において、両者の間を実質的に回動自在な状態で連結することで、動作角度の違いによる横方向のモーメントを吸収していくという技術的思想が開示されているものの、訂正後の発明の構成であるダンパペダル、突上棒、プランジャの各連結構造、連接構造を開示するものではなく、上記相違点A,Bについて、示唆するものでない。
刊行物3にも、上記相違点A,Bについて、記載はない。
また、一般的に、角度回動の吸収を機械的構成をもって対処する連結構成として、ユニバーサルジョイント手段が周知慣用事項のものであるとしても、ダンパペダルと連結した突上棒と、プランジャの連結構造に該手段を採用することまでを示唆するものではない。
そして、訂正後の発明は、上記相違点A,Bに基づき、訂正明細書記載の「この発明によれば、プランジャとペダル突上棒とが同軸上に連設され、かつ、プランジャの摺動方向端部と、ペダル突上棒接続端部とが回動自在に連結されているため、ペダル駆動時の機械的騒音が防止されるという効果が得られる。また、本発明によれば、ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされたペダルの背面側に連結されたペダル突上棒が、ペダル駆動ソレノイドのプランジャと同軸上に連設されプランジャの摺動方向端部と回動自在に連結されている。自動演奏時のペダル操作においては、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動される。ダンパペダル駆動機構におけるこのペダル突上棒とプランジャとの直結構造は、ペダル駆動の制御性を改善し、したがって高度なダンパペダル操作を自動で行うことが可能になるという効果が得られる。そして、演奏データとしてペダル踏み込み量に対応するデ一タを供給するようにしておき、このデータに従ってプランジャの位置決めを行なうようにすれば、演奏データに対応する駆動電流に応じてハーフペダルその他のペダル踏み込み量の調整が可能となる。さらに、ペダル駆動ソレノイドがピアノ本体に固定され、ペダル駆動ソレノイドのプランジャのみがペダル操作に応じて摺動するので、通常演奏時においては、フットペダルの踏み込み負荷が従来の一般的なピアノと何等変わらず、よって演奏感覚が従来と大きく変わってしまうことがないという効果を奏する。また、自動演奏時においては、プランジャの上下動がフットペダルに伝達され、フットペダルの動作が演奏データに従って再現されるため、自動演奏を見ている者に違和感を与えない」という格別な効果を奏するものであるから、上記相違点A,Bは、当業者が容易に想到することができたということはできない。

エ.まとめ
よって、訂正後の発明は、刊行物1ないし3に基づいて、当業者が、容易に想到することができたということはできない。
したがって、訂正後の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件審判請求は、特許法第126条第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたペダルと、
ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、
該ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドと
を具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構において、
前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを同軸上に連設して、該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結し、
自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動されることを特徴とする自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動演奏ピアノのペダル駆動機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
記憶媒体に記憶された演奏データを読み取り、この演奏データに従って鍵盤およびペダルを駆動して自動演奏を行う自動演奏ピアノが知られている。図2は、この種の自動演奏ピアノのペダル駆動機構の構成例を示すもので、ピアノ本体の背面側から見た正面図である。この図に示すように、ダンパーペダル1a、ソステヌートペダル1b、シフティングペダル1cは、台部2のペダル軸(図示せず)に回動自在に取り付けられている。
【0003】
そして、各ペダル1a〜1cは、ペダル軸を境にピアノ前面側が踏み込み部となっており、ピアノ背面側にはペダル突上棒3a〜3cが各々連結されている。これらのペダル突上棒3a〜3cには、各々ダンパ機構、ソステヌート機構、シフティング機構が各々機械的に接続されている。そして、演奏者がペダル1a〜1cの踏み込み部を踏むと、これによりペダル突上棒3a〜3cが上方へ駆動され、対応する機構が作動するようになっている。
【0004】
ペダルソレノイド4aおよび4cは各々、形状がほぼ中空円筒状であり、ピアノ本体に固着されている。また、ソレノイド4aおよび4cの駆動電流供給用ケーブル7a,7cが各々配設されている。ペダルソレノイド4aの内部には、中空円筒状のプランジャ5aが摺動自在に貫通しており、さらにプランジャ5aの内部をペダル突上棒3aが摺動自在に貫通している。
【0005】
図3は、ペダルソレノイド4a、プランジャ5aおよびペダル突上棒3aの概略構成を模式的に表した断面図である。この図に示すように、ペダル突上棒3aには、ストッパ6a1および6a2が各々形成されている。そして、プランジャ5aがペダル突上棒3aに対して上方に相対移動する場合は、プランジャ5aの上端部がストッパ6a2と当接するまで移動可能であり、逆に下方に相対移動する場合はプランジャ5aの下端部がストッパ6a1に当接するまで移動可能となっている。ペダルソレノイド4c,プランジャ5cおよびペダル突上棒3cも同様の構成となっている。なお、この自動演奏ピアノでは、ソステヌートペダル1bに対しては、ペダルソレノイドおよびプランジャを設けていない。
【0006】
次にこの自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構の動作を説明する。通常の演奏モード時、演奏者によってペダル1a〜1cが踏み込み操作されると、これに連動してペダル突上棒3a〜3bが上下動される。この結果、自動演奏ピアノでは各ペダル操作に対応した演奏制御が行われる。そして、自動演奏モード時においては、演奏制御部から演奏データに対応した駆動電流がペダルソレノイド4aおよび4cに供給される。
【0007】
そして、例えば、ソレノイド4aに駆動電流が供給されると、ソレノイド4a内に駆動電流に応じた磁界が発生され、これによりプランジャ5aが上側へ駆動される。そして、プランジャ5aの上端部がストッパ6a2の下部を押し上げ、ペダル突上棒3aが持ち上げられ、これによりダンパ機構が作動する。また、この時、ダンパペダル1aも、ペダル突上棒3aに連動して回動する。
【0008】
上述したようなペダル駆動機構は、例えば、実開昭55-157287号によっても開示されている。実開昭55-157287号に開示されているペダル駆動機構は、ピアノ内部のペダル機構部に連結された上部ロッドと、フットペダルに連結された下部ロッドとの間に外筒を挿入設置し、この外筒内部に、所定の間隔をおいて第1,第2のソレノイドを設置すると共に、上記外筒内において、上部ロッドおよび下部ロッドと機械的に接続されずに摺動可能となっている、中間ロッドを設けている。
【0009】
また、この中間ロッドには、上記第1のソレノイドによって可動する第1のプランジャが取り付けられており、この第1のプランジャのストロークは、ハーフペダル時のストロークと一致するよう調整されている。さらに、上記上部ロッドには、上記第2のソレノイドによって可動する第2のプランジャが取り付けられており、この第2のプランジャのストロークは、フルペダル時のストロークと一致するよう調整されている。
【0010】
そして、通常の演奏時にはペダルが踏み込まれると、下部ロッドの動作が中間ロッドおよび外筒を介して上部ロッドに伝えられ、これにより、ペダルの踏み込み量に応じてピアノ内部のペダル機構部が作動する。そして、自動演奏時においては、ハーフペダルを再現する場合、第1のソレノイドのみを駆動して、中間口ッドに備えられた第1のプランジャをハーフペダルのストローク分移動させ、また、フルペダルを再現する場合、第1のソレノイドを駆動し、第1のプランジャをハーフペダルのストローク分移動させた後、第2のソレノイドを駆動して、第2のプランジャをフルペダルのストローク分移動させる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のペダル駆動機構は、ペダル駆動時に、ストッパとプランジャとの衝突、プランジャの貫通穴の内壁とペダル突上棒との摩擦等によって機械的騒音が発生するため、ピアノ演奏時に音楽的弊害を招致するという問題があった。また、プランジャの貫通穴の中をペダル突上棒が円滑に摺動するようにする必要があるため、プランジャおよびペダル突上棒については高い加工精度が要求されるという問題があった。
【0012】
また、上述した実開昭55-157287号に開示されているペダル駆動機構の場合、通常演奏時においては、フットペダルの操作の際、内部にソレノイドを有する外筒を上昇させるので、フットペダルを踏み込む負荷が大きくなり、従来の一般的なピアノと比べて演奏感覚が大きく変わってしまうという問題がある。また、自動演奏時には、フットペダルが何等動作しないので、発生する楽音と、自動演奏ピアノの外観上の動作とにギャップが生じ、見ている者に違和感を与えるという問題がある。
【0013】
この発明は、このような背景の下になされたもので、ペダル駆動時の機械的騒音が小さく、かつ、製作することが容易な自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構を提供することを目的とする。また、通常演奏時においては、フットペダルの操作に要する負荷が従来の一般的なピアノと何等変わることなく、自動演奏時においては、演奏データに従ってフットペダルの動作を再現することができる自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明は、ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたペダルと、ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、該ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドとを具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構において、前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを同軸上に連設して、該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結し、自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動されることを特徴とする自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構を提供するものである。
【0015】
上記構成によれば、演奏データに対応した駆動電流がペダル駆動用ソレノイドに供給され、この駆動電流に応じてプランジャが上下駆動される。これに伴い、ペダル突上棒が上下駆動され、自動演奏ピアノでは演奏データに対応した演奏制御が行われる。ここで、プランジャとペダル突上棒とが同軸上に連設され、かつ、プランジャの摺動方向端部と、ペダル突上棒接続端部とが回動自在に連結されているため、ペダル駆動の際の機械的騒音は著しく小さい。また、ペダル駆動ソレノイドがピアノ本体に固定され、ペダル駆動ソレノイドのプランジャのみがペダル操作に応じて摺動するので、通常演奏時においては、フットペダルの踏み込み負荷が従来の一般的なピアノと変わらず、また、自動演奏時においては、プランジャの上下動がフットペダルに伝達され、記録された踏み込み量に応じてフットペダルが作動する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに理解しやすくするため、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものでない。すなわち、本発明の範囲内で任意に変更可能である。図1は、この発明の一実施形態による自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構の構成を示すもので、ピアノ本体の背面側から見た正面図である。なお、この図において、前述した図2と対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0017】
プランジャ11a,11cは、ペダルソレノイド4aおよび4cの貫通穴の中に摺動自在に挿通されている。そして、これらのプランジャ11aおよび11cは、図2および図3で示したプランジャ5a,5cのように中空ではなく、その摺動方向(上下方向)両端部には雄ねじが形成されている。ペダル突上棒12aの一端は、ユニバーサルジョイントを介してペダル1aに連結され、他端には雌ねじ(図示せず)が形成されている。
【0018】
そして、この雌ねじがプランジャ11aの下端部の雄ねじと螺合することにより、ペダル突上棒12aとプランジャ11aとが接続されている。また、同様の接続構造により、袋ナット13aとプランジャ11aとが接続されている。シフティングペダル1cに対応したプランジャ11c、ペダル突上棒12cおよび袋ナット13cも同様の構造により接続されている。なお、プランジャとペダル突上棒との接続方法は、上述したような、ねじによる接続に限らず、所定の機械的強度の得られる他の接続方法であってもよい。
【0019】
上記構成において、演奏者がダンパペダル1aを踏み込むと、ペダル突上棒12a、袋ナット13aおよびプランジャ11aが連動して上側に駆動され、ダンパ機構が作動する。なお、シフティングペダル1cを踏み込み操作した場合も同様の動作となる。そして、自動演奏モード時は、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイド4aおよび4cに供給され、この駆動電流に応じてプランジャ11aおよび11cが駆動される。そして、例えば、プランジャ11aが駆動された場合は、袋ナット13aが連動して駆動されてダンパ機構が作動する。また、この時、ペダル突上棒12aもプランジャ11aと連動するのでダンパペダル1aが回動ずる。ここで、プランジャ11aとペダル突上棒12aおよび袋ナット13aとは強固に接続されており、上記動作において発生する騒音は著しく小さい。
【0020】
なお、上述した実施形態のように、ペダル突上棒とプランジャとを直結する構造にした場合、ペダル駆動の制御性を改善することができるため、より高度なピアノ演奏を自動で行うことが可能となる。例えば、図1に示すように、袋ナッド13aおよび13cの上下方向の位置を検出するセンサSa,Scを設ける。このセンサSa,Scは、プランジャ11a,11cと一体となって上下動するグレイスケールと、これらのグレイスケールに固定側から光を照射する発光素子と、グレースケールからの透過光を受光する受光索子により構成し、受光素子の出力信号により、プランジャ11a,11cの変位量を検出する。
【0021】
そして、この検出結果をフィードバックして、ソレノイド4a,4cの駆動電流をPWM(パルス幅変調)するようにすれば、プランジャ11a,11cの上下位置を目的とする位置に制御することができる。そして、演奏データとしてペダル踏み込み量に対応するデータを供給するようにしておき、このデータに従ってプランジャ11a,11cの位置決めを行うようにすれば、ハーフペダル動作は勿論、ペダル踏み込み量をリニアに調整することが可能となり、より高度な演奏を自動で行うことが可能となる。
【0022】
ソステヌートペダル1bについては、ペダル突上棒3bの上下動を検知する2値センサSbを設け、ソステヌートペダル機能の作業開始および作業終了の2状態を検知するよう構成する。そして、自動演奏時、演奏データで指定された状態が再生されるように、ソレノイド4bの駆動電流を制御する。なお、自動演奏時、アップライトピアノ等、ソステヌートペダル1bを備えないタイプの自動演奏ピアノの場合は、鍵盤作動を制御することにより、ソステヌートペダルを操作するのと同じ演奏制御を行うことができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、プランジャとペダル突上棒とが同軸上に連設され、かつ、プランジャの摺動方向端部と、ペダル突上棒接続端部とが回動自在に連結されているため、ペダル駆動時の機械的騒音が防止されるという効果が得られる。
また、本発明によれば、ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされたペダルの背面側に連結されたペダル突上棒が、ペダル駆動ソレノイドのプランジャと同軸上に連設されプランジャの摺動方向端部と回動自在に連結されている。ダンパペダル駆動機構におけるこのペダル突上棒とプランジャとの直結構造は、ペダル駆動の制御性を改善し、したがって高度なダンパペダル操作を自動で行うことが可能になるという効果が得られる。そして、演奏データとしてペダル踏み込み量に対応するデータを供給するようにしておき、このデータに従ってプランジャの位置決めを行なうようにすれば、演奏データに対応する駆動電流に応じてハーフペダルその他のペダル踏み込み量の調整が可能となる。
さらに、ペダル駆動ソレノイドがピアノ本体に固定され、ペダル駆動ソレノイドのプランジャのみがペダル操作に応じて摺動するので、通常演奏時においては、フットペダルの踏み込み負荷が従来の一般的なピアノと何等変わらず、よって演奏感覚が従来と大きく変わってしまうことがないという効果を奏する。また、自動演奏時においては、プランジャの上下動がフットペダルに伝達され、フットペダルの動作が演奏データに従って再現されるため、自動演奏を見ている者に違和感を与えないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態によるペダル駆動機構の構成を示す正面図である。
【図2】 従来のペダル駆動機構の構成を示す正面図である。
【図3】 従来のペダル駆動機構のペダル突上棒およびプランジャおよびペダルソレノイドの構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1a……ダンパペダル
1c……シフティングペダル
4a,4c……ペダルソレノイド
12a,12c……ペダル突上棒
13a,13c……袋ナット
11a,11c……プランジャ
【図面】






























































































 
訂正の要旨 ▲1▼特許請求の範囲の第1項を、特許請求の範囲の減縮を目的とし、「ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたペダルと、ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、該ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドとを具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構において、前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを同軸上に連設して、該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結し、自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動されることを特徴とする自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構。」と訂正する。
▲2▼特許明細書の段落番号0014(本件特許公報第3頁左欄第2行〜第13行)の「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため…ことを特徴とする。」を、明りょうでない記載の釈明を目的とし、「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するためになされた本発明は、ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされ背面側にペダル突上棒が連結されたベダルと、ピアノ本体に回動自在に配設されたペダルに連結され、該ペダルの回動に連動して上下動するペダル突上棒と、該ペダル突上棒に接続され、演奏データに応じた電力の供給を受けて上記ペダル突上棒を上下動させるペダル駆動ソレノイドとを具備した自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構において、前記ペダル駆動ソレノイドの本体を前記ピアノ本体に固定し、該ペダル駆動ソレノイドのプランジャと前記ペダル突上棒とを同軸上に連設して、該プランジャの摺動方向端部と、前記ペダル突上棒接続端部とを回動自在に連結し、自動演奏時のペダル操作のために、演奏データに対応する駆動電流がペダルソレノイドに供給され、該駆動電流に応じてプランジャが駆動されることを特徴とする自動演奏ピアノ用ダンパペダル駆動機構を提供するものである。」と訂正する。
▲3▼特許明細書の段落番号0015(本件特許公報第3頁左欄第14行〜第28行)の「上記構成によれば…が作動する。」を、明りょうでない記載の釈明を目的とし、「上記構成によれば、演奏データに対応した駆動電流がペダル駆動用ソレノイドに供給され、この駆動電流に応じてプランジャが上下駆動される。これに伴い、ペダル突上棒が上下駆動され、自動演奏ピアノでは演奏データに対応した演奏制御が行われる。ここで、プランジャとペダル突上棒とが同軸上に連設され、かつ、プランジャの摺動方向端部と、ペダル突上棒接続端部とが回動自在に連結されているため、ペダル駆動の際の機械的騒音は著しく小さい。また、ペダル駆動ソレノイドがピアノ本体に固定され、ペダル駆動ソレノイドのプランジャのみがペダル操作に応じて摺動するので、通常演奏時においては、フットペダルの踏み込み負荷が従来の一般的なピアノと変わらず、また、自動演奏時においては、プランジャの上下動がフットペダルに伝達され、記録された踏み込み量に応じてフットペダルが作動する。」と訂正する。
▲4▼特許明細書の段落番号0023(本件特許公報第4頁左欄第6行〜同頁右欄第3行)の「【発明の効果】以上説明したように、…という効果を奏する。」を、明りょうでない記載の釈明を目的とし、「【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、プランジャとペダル突上棒とが同軸上に連設され、かつ、プランジャの摺動方向端部と、ペダル突上棒接続端部とが回動自在に連結されているため、ペダル駆動時の機械的騒音が防止されるという効果が得られる。また、本発明によれば、ペダル軸を境に前面側が踏み込み部とされたペダルの背面側に連結されたペダル突上棒が、ペダル駆動ソレノイドのプランジャと同軸上に連設されプランジャの摺動方向端部と回動自在に連結されている。ダンパペダル駆動機構におけるこのペダル突上棒とプランジャとの直結構造は、ペダル駆動の制御性を改善し、したがって高度なダンパペダル操作を自動で行うことが可能になるという効果が得られる。そして、演奏データとしてペダル踏み込み量に対応するデータを供給するようにしておき、このデータに従ってプランジャの位置決めを行なうようにすれば、演奏データに対応する駆動電流に応じてハーフペダルその他のペダル踏み込み量の調整が可能となる。さらに、ペダル駆動ソレノイドがピアノ本体に固定され、ペダル駆動ソレノイドのプランジャのみがペダル操作に応じて摺動するので、通常演奏時においては、フットペダルの踏み込み負荷が従来の一般的なピアノと何等変わらず、よって演奏感覚が従来と大きく変わってしまうことがないという効果を奏する。また、自動演奏時においては、プランジャの上下動がフットペダルに伝達され、フットペダルの動作が演奏データに従って再現されるため、自動演奏を見ている者に違和感を与えないという効果を奏する。」と訂正する。
審決日 2001-06-21 
出願番号 特願平8-229070
審決分類 P 1 41・ 853- Y (G10F)
P 1 41・ 851- Y (G10F)
P 1 41・ 121- Y (G10F)
P 1 41・ 856- Y (G10F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 秀夫板橋 通孝益戸 宏  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 橋本 恵一
山本 章裕
登録日 1999-10-15 
登録番号 特許第2991124号(P2991124)
発明の名称 自動演奏ピアノ用ペダル駆動機構  
代理人 三枝 英二  
代理人 三枝 英二  
代理人 舘 泰光  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 舘 泰光  
代理人 掛樋 悠路  

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