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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C02F
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C02F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C02F
管理番号 1050698
審判番号 訂正2001-39096  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-07-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2001-06-14 
確定日 2001-09-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2885981号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2885981号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、特許第2885981号[平成3年11月12日特許出願、平成11年2月12日設定登録]の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、即ち下記(1)ないし(5)のとおり訂正することを求めるものである。
(1)特許請求の範囲の請求項1の「【特許請求の範囲】【請求項1】間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より低い水頭差により濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させたことを特徴とするばっ気槽の濾過装置。」とあるのを、「【特許請求の範囲】【請求項1】間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不織布または織布の通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉されることを特徴とするばっ気槽の濾過装置。」と訂正する。
ここで、上記(1)の訂正は、下記の2つの訂正事項に細分することができる。
(1)-1「通気シート」を「不織布または織布の通気シート」に訂正する。
(1)-2「前記濾過体内より低い水頭差により濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ」を「前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉される」と訂正する。
(2)明細書第2頁第1から7行(公報第1頁2欄14行〜第2頁3欄6行)までの、「【0005】【課題を解決するための手段】本件発明のばっ気槽の濾過装置は、間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より低い水頭差により濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させたものである。」とあるのを、「【0005】【課題を解決するための手段】本件発明のばっ気槽の濾過装置は、間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不織布又は織布の通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉されるものである。」と訂正する。
(3)明細書第2頁15行(公報第2頁3欄15行)の「このとき通気シート」とあるのを、「このとき不織布または織布の通気シート」と訂正する。
(4)明細書第2頁末行(公報第2頁3欄31行)の「不織布または織布などの通気シート」とあるのを、「不織布たは織布の通気シート」に訂正する。
(5)明細書第4頁19行(公報第2頁4欄34〜35行)の「通気シート」とあるのを、「不織布または織布の通気シート」と訂正する。
2.当審の判断
(1) 訂正の目的の可否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項(1)-1は、明細書の段落【0007】の「不織布または織布などの通気シート」という記載に基づいて、請求項1に係る発明の構成要素である「通気シート」を「不織布または織布」のものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項(1)-2は、明細書の段落【0013】の「濾過体1によって処理水中の浮遊物質は濾過され、濾過を続けると、濾過体の外面には濃縮された汚泥のケーキ層が形成される。そして、処理水中の微細な粒子はこのケーキ層のフィルター作用によって捕捉される。」および段落【0015】の「吸引管4により低い水頭差で吸引力を低く保つことにより、ケーキ層は脆弱になり、濾過体1への付着と剥離が繰り返されてほぼ一定の厚さを保ち、圧密も問題になるほど進まないので一定の濾過速度を保持する。」という記載に基づいて、請求項1に係る発明の構成要素である「低い水頭差」の内容を、「吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返され」るものであって、しかも「前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉される」ものであることに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮または明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項(2)(3)(4)は、いずれも明細書の発明の詳細な説明の欄の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記各訂正事項は、願書に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲内であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。
(2)独立特許要件
(2-1)本件訂正発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたとおりの以下に示すものである。
「間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不織布または織布の通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が補足されることを特徴とするばっ気槽の濾過装置。」
(2-2)刊行物記載の発明
本件特許異議申立において引用された刊行物には、以下の事項が記載されている。
【刊行物1:特開平2-86893号公報】
「曝気槽内の原水の浄化処理水中に、浄化処理水の固液分離を行うろ過膜装置がその頂部を水没せしめて浸され、ろ過膜装置の直下に曝気用気体を供給する散気管が配置されたものであって、ろ過膜装置は、複数個の膜モジュールが垂直に一定間隔をおいて並列に設けられてなり、各膜モジュールは、膜支持体の表面がろ過膜によりおおわれ、内部にろ過処理水流路が形成されてなり、各ろ過処理水流路の出口側がろ過処理水吸引管に接続されていることを特徴とする活性汚泥処理装置。」(特許請求の範囲)
「一般に、この種の活性汚泥処理装置においては、使用している 間にろ過膜が汚泥により目詰まりを起こすので、従来より、この目詰まりを防止するための提案が種々なされている。」(第1頁右下欄第5〜8行)
「前記膜ジュール30は、第2図〜第4図に示すように、膜支持体36の両表面にろ過膜37が接着剤により張り付けられたものである。膜支持体36は、金属(例えばステンレス鋼等)製、プラスチック製等で、両側縁の凹凸部38を有する方形の支持板39の上縁の管状部材40と下縁に補強部材41とが固着されてなる。管状部材40は、凹凸部38の位置に連通孔42が設けられ、分岐管43を介してろ過処理水吸引管44に接続されている(第1図参照)。ろ過膜37は、精密ろ過膜、限外ろ過膜等のマクロポーラスな平膜である。ろ過膜37と膜支持体36との間にはろ過処理水流路45(第2図および第3図中の矢印で示す)が形成され、連通孔42、管状部材40の内部および分岐管43を経てろ過処理水吸引管44に連通している。ろ過処理水吸引管44は、途中に吸引ポンプ46が接続され、ろ過処理水槽34に至っている。」(第3頁右上欄第8行〜左下欄第4行)
「浄化処理水28は、膜モジュール30のろ過処理水路45内が吸引ポンプ46により吸引されることによりろ過膜37で固液分離され・・・」(第3頁左下欄第9〜12行)
「膜支持体36は、金属またはプラスチック製のネット状のもの、多孔質の板状のもの等でもよく・・・」(第4頁左上欄第9〜11行)
「また、第7図のように、ろ過膜37を袋状に形成して膜支持体36に被せ・・・」(第4頁左上欄第15〜17行)
と記載されている。
【刊行物2:特開昭57-87808号公報】
「濾過濃縮槽内に吸液性濾過板を配置し、濾過板に濾液排出管の一端部を連通接続し、濾液排出管の他端部を濾過濃縮槽の外部に設けたサイホン管に連通接続することを特徴とする濾過濃縮装置。」(特許請求の範囲)
「この発明は、浄水場や下水等における汚泥の濾過濃縮装置に関するものである。」(第1頁左下欄下から第2〜1行)
「この種の濾過濃縮装置として、従来より真空濾過機、加圧濾過機、濾過床等が一般に使用されている。しかしながら、真空濾過機や加圧濾過機は、濾材に対し被濾過液を強制的に通過させるため、濾材の目にケーキが詰まったり、あるいは濾材上に積層したケーキが濾材面に近くなる程濃度が高くなったりするため、経時的に濾過抵抗が大きくなる欠点がある。」(第1頁右下欄第1〜8行)
「この濾過排出管を所定長さのサイホン管に接続して濾過板に吸収された濾液を自然力により吸引排水するよう構成することにより、濾過板全体の濾過圧力を均一に保持することができる・・・ことを突き止めた。従って、本発明の目的は、濾過板全体の濾過圧力を均一に保持すると共にケーキの分離除去を容易にして濾過能力を向上し、・・・」(第2頁左下欄下から2行〜右上欄第8行)
「吸液性濾過板12は、ナイロン、テトロンあるいは金属繊維等の不織布やスポンジまたは砂などを所定厚さの板体に加工したもので、好ましくは前記板体の両側面に濾布を貼設したものが好適に使用される。このように構成した濾過板12は、濾液濃縮槽10内に位置させ、その外周部全体に亘って被濾過液が流通し得るように濾過濃縮槽10の液面下に位置決めする。」(第2頁左下欄第7〜15行)
「一方、濾過板12の上部には濾液排出管18の一端部を挿通配置すると共に濾液排出管18の他端部には適宜分離可能な接続部20を介して濾過濃縮槽10の外部へ導出する。なお、濾液排出管18は、濾過濃縮槽10に対し水平に取付け、前記接続部20において分離し、濾過濃縮槽10の上部から濾過板12を簡便に取外すことができるように構成する。濾過濃縮槽10の外部に導出した濾液排出管18の他端部は、垂直に配置したサイホン管22の上部に連通接続する。・・・なお、サイホン管22の一部には適宜開閉弁28を設けて濾液の排出を制御し得るようにする。また、サイホン管22の長さは、濾過板12に対する必要な減圧力すなわち濾過圧力に応じて任意に設定することができる。」(第2頁左下欄下から2行〜右下欄18行)
「このように、本発明に係る濾過濃縮装置は、槽内のヘッド圧とサイホン効果による減圧とにより、濾過板内は全て同一圧力に保持することができ、濾過板の全面において濾過圧力を均一にすることができる。従って、濾過板には、常に均一な厚さのケーキを形成することができ、ケーキ剥離も容易となることから、濾過板の濾過能力を常に一定に保持することができる。」(第3頁左上欄第13〜20行)
と記載されている。
【刊行物3:「ケミカルエンジニヤリング」1991、63[7]化学工業社、99〜102頁】
「フィルターは、ある流れから物を濾し分けるための手段であるため、フェルトのような微細で複雑な三次元構造をした材料が良い。三次元構造をした繊維状のものをフェルトまたは不織布と呼び、」(第99頁左欄第10〜13行)と記載され、
不織布のポアーサイズ(直径μ)の例を記載した表1には、24.0μ〜79.6μのものが例示されており、いずれも10〜100μの範囲のものであり、さらに
「スラリーの回収の液体フィルター等は、粒子を濾布内部にできるだけ侵入させないようにポアーサイズを小さくする必要があるが、反面ポアーサイズが小さければ小さいほど細かい粒子が捕集できるが、それに比例した圧損は高くなる」(第100頁左欄第3〜7行)と記載され、
その他のフェルトフィルター材の用途として汚濁水中の汚濁粒子を捉えるのに用いること(第102頁左欄参照)
も記載されている。
【刊行物4:高分子学会編「水処理の高分子化学と技術(上)高分子膜」昭和60年6月10日、(株)地人書館、104〜105頁】
「多孔質支持膜上に小粒子を動的に沈積した膜をダイナミック膜(dynamically formed membrane)とよんでいる。・・・最近、Van Heovenは孔径0.5±0.01μmの支持膜上に小粒子を含むアセチルセルロース溶液を通じることによって図5.20のようなダイナミック膜が得られ、」(105頁19〜28行)と記載されている。
(2-3)対比・判断
本件訂正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、両者は、「間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設したばっ気槽の濾過装置」である点で一致するが、通気性シートが、前者では「不織布または織布」であるのに対し、後者では「精密ろ過膜、限外ろ過膜などのマクロポーラスな平膜」である点、通気性シートの表面に付着した汚泥について、前者では濾過体に汚泥ケーキ層を形成し、該ケーキ層により処理液中の微粒子を捕捉しているのに対し、後者では曝気用気泡のエアリフト作用により生じた上昇流により膜面から離脱させられと記載されているだけで、ケーキ層の形成については記載されていない点で相違する。
さらに、本件訂正発明と刊行物2記載の発明とを対比すると、刊行物2に記載される濾過板12は、所定板体の両面に濾布を貼設したものであり、「濾布」とは一般には「不織布または織布からなる濾材」を指すものと認められ、濾材上のケーキにより処理水中の微細粒子が捕捉されていることは明らかであるから、両者は、「間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不織布または織布の通水性シートの濾過体を処理水中に浸漬配設し、濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にし、低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を処理槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が補足されることを特徴とする濾過装置」である点で一致し、前者が、ばっ気槽の濾過装置であり、濾過体をばっ気部の上方に浸漬配設し、汚泥ケーキ層の付着、剥離が繰り返されるようにしているのに対し、後者では、単なる汚泥の濾過装置であって、ばっ気部が設けられておらず、汚泥ケーキ層の付着、剥離を繰り返すことについても記載がない点で相違している。
また、刊行物3には不織布製フィルターについての説明、刊行物4にはダイナミック膜の説明が記載されているだけである。
以上要するに、各刊行物には、本件訂正発明の構成要素である「前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が補足されること」については記載がない。
そして、刊行物1記載の装置では、濾過膜表面に付着した汚泥をできるだけ離脱させようとするものであるから、刊行物1に記載される活性汚泥処理装置の膜モジュールに代えて、刊行物2に記載される、サイホン管が濾液排出管を介して接続された吸液性濾過板を適用することを、当業者が容易に実施できたとしても、汚泥ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉されるよう、即ち、汚泥をすべて離脱させるのではなく、濾過板の吸引力を低く保つことにより濾過板に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過板へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるように構成することまで、当業者が容易に想到することができたものではない。
したがって、本件訂正発明は、刊行物1ないし4記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また他に、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明は、これを無効とすべき理由が見当たらないから、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。
3.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定により、訂正についてはなお従前の例によるとされる、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項及び第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ばっ気槽の濾過装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不織布または織布の通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、
前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥のケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、
前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉される
ことを特徴とするばっ気槽の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ばっ気槽の濾過装置に係り、活性汚泥のばっ気槽、接触ばっ気槽などで処理した処理水をさらに高度処理する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、活性汚泥の処理には、ばっ気槽、接触ばっ気槽で処理した処理水をさらに高度処理するには、ばっ気槽の処理水を沈殿槽に導き、処理水中の浮遊物質を沈殿除去する方法、または、限外濾過膜を用いて処理水を濾過する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の沈殿槽で処理する方法では、ばっ気槽の他に沈殿槽を設置しなくてはならず、広い設置面積を必要とするばかりでなく、建設費が掛り、また、限外濾過膜を用いる方法では、装置が高価になるという問題がある。
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、沈殿槽を必要とせず、簡単な構造で安価なばっ気槽の濾過装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のばっ気槽の濾過装置は、間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不織布または織布の通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥のケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉されるものである。
【0006】
【作用】
本発明のばっ気槽の濾過装置は、ばっ気槽や接触ばっ気槽のばっ気部の上方に位置して処理水中に濾過体を浸漬し、この濾過体内より引き出した吸引管の先端をばっ気槽の外方に引き出し、処理水面と吸引管の先端との水頭差を比較的少なくして、低い吸引力で緩やかな速度で吸引させることにより、ばっ気処理を終了した処理水は濾過体を浸透し吸引管により水頭差でばっ気槽の外方に引き出される。このとき不織布または織布の通水性シートよりなる濾過体によって処理水中の浮遊物質は濾過され、濾過を続けると濾過体の外面には濃縮された汚泥のケーキ層が形成される。そして、処理水中の微細な粒子はこのケーキ層のフィルター作用によって捕捉される。そこで、処理水面と吸引管の先端との水頭差が大きく吸引力が高いと、ケーキ層の厚さは時間とともに大きくなり、かつ、ケーキ層の圧密化も進むので、濾過速度は急速に低下してしまう。しかし、低い水頭差で吸引力を低く保つことにより、ケーキ層は脆弱になり濾過体への付着と剥離が繰り返されてほぼ一定の厚さを保ち、圧密も問題になるほど進まないので一定の濾過速度を保つことができる。
【0007】
【実施例】
本発明のばっ気槽の濾過装置の一実施例の構成を図1ないし図3によって説明する。
図2および3において、1は袋状の濾過体で、最小保留粒子径10μm〜100μmの2枚の不織布または織布の通水性シート2,2を間にスポンジなどの間隔保持用の通水性多孔質材3を挿入して重ね合わせ、この通水性シート2,2で周縁を密封して袋状に構成する。
【0008】
4は吸引管で、前記濾過体1内の上部より上方に引き出され、先端部は略逆U字形に下方に屈曲されている。
【0009】
図1において、5は接触ばっ気槽で、接触材よりなる浸漬濾床6が設けられ、このばっ気槽5の一側と浸漬濾床6間の底部近くには散気管7が配設されて散気管7の上方域がばっ気部8に形成され、この浸漬濾床6によって接触酸化された処理水が散気管7から発生する気泡によってばっ気されつつ上昇流となる。
【0010】
そして、この散気管7の上方のばっ気部8に前記濾過体1を処理水中に浸漬配設し、前記吸引管4をばっ気槽5の上端より外方に引き出し、ばっ気槽5の処理水面の高さL1と吸引管4の先端の高さL2との差、すなわち、水頭差L=L1-L2=20m〜100mの低い水頭圧となるように、吸引管4の高さを設定する。この水頭差Lは、処理水の浮遊物質の濃度や、性質によって調整する。さらに、濾過体1にて処理水を濾過する濾過速度は、1〜10m3/m2日程度の緩やかな速度とする。
【0011】
次にこの実施例の作用を説明する。
図1は濾過体1を接触ばっ気槽5に適用した場合を示す。
【0012】
接触ばっ気槽5内に導入され、浸漬濾床6によって接触酸化された処理水は散気管7から発生する気泡によってばっ気されつつ上昇する上昇流となり、この処理水を吸引管4で低い吸引力で緩やかな速度で吸引させることにより、散水管7からばっ気処理を終了した処理水は濾過体の両通水性シート2,2を浸透し、吸引管4により水頭差でばっ気槽5の外方に引き出される。
【0013】
このとき通水性シート2,2よりなる濾過体1によって処理水中の浮遊物質は濾過され、濾過を続けると、濾過体の外面には濃縮された汚泥のケーキ層が形成される。そして、処理水中の微細な粒子はこのケーキ層のフィルター作用によって捕捉される。
【0014】
また、濾過体1は間隔保持用の通水性多孔質材3を通水性シート2,2間に介在させたことにより通水性シート2,2が処理水の水圧で密着することなく円滑に処理水を濾過できる。
【0015】
また、吸引管4により低い水頭差で吸引力を低く保つことにより、ケーキ層は脆弱になり、濾過体1への付着と剥離が繰り返されてほぼ一定の厚さを保ち、圧密も問題になるほど進まないので一定の濾過速度を保持する。
【0016】
なお、処理水の浮遊物質の濃度や性質によって水頭差を調節すれば、汚泥による濾過袋の目詰りを防止し、適度なフィルター作用をさせることができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、ばっ気槽や、接触ばっ気槽の一部に濾過体をばっ気部の上方に浸漬配置するのみで、処理水をばっ気槽や、接触ばっ気槽から直接高度処理した処理水を水頭差で引き出すことができ、不織布または織布の通水性シートからなる濾過体により処理水が吸引濾過されるため、活性汚泥がバルキングなどによって沈殿し難くなったときも、濾過体に濾過されるため、支障なく運転を続けることができ、処理水面と吸引管の先端との水頭差が低く、低い吸引力で引くことにより、ケーキ層は脆弱になり濾過体への付着と剥離が繰り返されてほぼ一定の厚さを保ち、圧密も問題になるほど進まないので一定の濾過速度を保つことができる。また、濾過体は間隔保持用の通水性多孔質材を通水性シート間に介在させたことにより通水性シートが処理水の水圧で密着することなく円滑に処理水を濾過でき、さらに、沈殿槽を必要とせず、沈殿槽に要する建設費や用地を必要とせず、構造が簡単で安価で処理水を濾過できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例を示すばっ気槽の濾過装置の説明図である。
【図2】
同上濾過体の一部を切り欠いた斜視図である。
【図3】
同上縦断側面図である。
【符号の説明】
1 濾過体
2 通水性シート
3 通水性多孔質材
4 吸引管
5 ばっ気槽
8 ばっ気部
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.特許第2885981号発明の明細書中特許請求の範囲「間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より低い水頭差により濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させたことを特徴とするばっ気槽の濾過装置。」とあるのを、特許請求の範囲の減縮ないし明瞭でない記載の釈明を目的として「間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不織布または織布の通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉されることを特徴とするばっ気槽の濾過装置。」と訂正する。
2.特許第2885981号発明の明細書中第2頁第1から7行(公報第1頁2欄14行〜第2頁3欄6行)までの、「本件発明のばっ気槽の濾過装置は、間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より低い水頭差により濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させたものである。」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として「本件発明のばっ気槽の濾過装置は、間隔保持用の通水性多孔質材を間に介在させて重ね合わせた不織布又は織布の通水性シートの周囲を密封して形成した袋状の濾過体をばっ気槽内にばっ気部の上方に位置して処理水中に浸漬配設し、前記濾過体内より、吸引力を低く保つことにより前記濾過体に形成される汚泥ケーキ層を脆弱にして前記濾過体へのケーキ層の付着と剥離が繰り返されるような低い水頭差によって濾過水を低い吸引力で引き抜く吸引管を前記ばっ気槽の外部に導出させ、前記ケーキ層のフィルター作用で前記処理水中の微細な粒子が捕捉されるものである。」と訂正する。
3.特許第2885981号発明の明細書中第2頁15行(公報第2頁3欄15行)の「このとき通気シート」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として「このとき不織布または織布の通気シート」と訂正する。
4.特許第2885981号発明の明細書中第2頁末行(公報第2頁3欄31行)の「不織布または織布などの通気シート」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として「不織布たは織布の通気シート」に訂正する。
5.特許第2885981号発明の明細書中第4頁19行(公報第2頁4欄34〜35行)の「通気シート」とあるのを、明瞭でない記載の釈明を目的として「不織布または織布の通気シート」と訂正する。
審理終結日 2001-08-07 
結審通知日 2001-08-10 
審決日 2001-08-21 
出願番号 特願平3-295850
審決分類 P 1 41・ 856- Y (C02F)
P 1 41・ 853- Y (C02F)
P 1 41・ 851- Y (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 目代 博茂  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 山田 充
野田 直人
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2885981号(P2885981)
発明の名称 ばっ気槽の濾過装置  
代理人 山田 哲也  
代理人 島宗 正見  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺沢 聡  
代理人 樺沢 襄  
代理人 島宗 正見  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺沢 襄  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺沢 聡  
代理人 島宗 正見  
代理人 樺沢 襄  

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