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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G02F
審判 訂正 2項進歩性 訂正する G02F
管理番号 1050705
審判番号 訂正2000-39108  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-07-15 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-09-22 
確定日 2001-09-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2767145号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2767145号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第2767145号の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成1年11月22日に特許出願され、平成10年4月10日にその特許の設定登録がなされ、その後、特許異議申立(平成10年第76038号異議申立事件)がなされ、 平成11年10月6日付けで請求項1ないし6に係る特許を取り消す旨の決定がなされたところ、本件の請求人はこれを不服として東京高等裁判所に当該決定の取消を求める訴 (11(行ケ)397号)を提起し、平成12年9月22日、本件特許第2767145号の訂正審判を請求したものである。

【2】訂正の適否についての判断
《2-1》訂正の内容
請求人の求める訂正の内容は、下記(i)-(xi)のとおりである。

(i)特許請求の範囲第1項の「該電極対面部の周囲をシール材封止した」を「該電極対面部の外周部の表示領域以外の領域の周囲をシール材封止した」と訂正する。
(ii)特許請求の範囲第1項の「該リード電極が設けられていない領域において、」を「該表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つ該リード電極が設けられていない領域において、」と訂正する。
(iii)特許請求の範囲第1項の「スペーサーを設けたことを特徴とする」を「スペーサーを設け、非表示領域のシール材内部にガラスビーズを設け、及び非表示領域のシール材外部にギャップ材を設けたことを特徴とする」と訂正する。
(iv)明細書第2頁第12〜13行の「セル内の表示領域以外の…電極と」を「セル内の表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つリード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と」と訂正する。
(v)明細書第5頁第1行の「形成したこと」を「形成し、非表示領域のシール材内部にガラスビーズを設け、及び非表示領域のシール材外部にギャップ材を設けたこと」と訂正する。
(vi)明細書第4頁第18〜19行および明細書第10頁第13〜14行の「セル内の表示領域以外の…電極と」を「セル内の表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つリード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と」と訂正する。
(vii)明細書第5頁第9行の「[実施例]」を、「[参考例および実施例]」と訂正する。
(viii)明細書第5頁第10〜11行の「本発明に係る強誘電性液晶を用いた液晶表示素子の第一の実施例を示す。」を「強誘電性液晶を用いた液晶表示素子の参考例を示す。」と訂正する。
(ix)明細書第8頁第7行の「別の」を削除する。
(x)明細書第10頁第20行の「本発明の第一実施例」を「参考例」と訂正する。
(xi)明細書第11頁第3行の「第二」を削除する。

《2-2》訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否
上記訂正事項(i)-(iii)は、特許請求の範囲の減縮に相当するものである。また、訂正事項(iv)-(xi)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1を訂正することによって生じた記載の不一致を正すものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当するものである。そして、上記各訂正事項は本件の訂正前の特許明細書に記載されている事項のみであるから、明細書に記載された事項の範囲内でする訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

《2-3》独立特許要件の判断
《2-3-1》訂正後の発明
上記訂正後の発明は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの以下のものである。
「 (1)電極を形成した2枚の基板を電極を対面させて所定間隔を隔てて対向配置し、両基板間の電極対面部間にギャップ材及び液晶を介装し、該電極対面部の外周部の表示領域以外の領域の周囲をシール材封止した構造の液晶素子であって、
各基板の電極に連結して、基板上のシール材による封止部の下層を経て外部に延設されたリード電極が設けられ、該表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つ該リード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを設け、非表示領域のシール材内部にガラスビーズを設け、及び非表示領域のシール材外部にギャップ材を設けたことを特徴とする液晶素子。
(2)前記スペーサーは、前記電極と同一工程で形成された同一材料からなることを特徴とする請求項1記載の液晶素子。
(3)前記電極は複数の並列配置したストライプ状電極からなり、2枚の基板の各電極を直交配置してマトリックスを構成し、各ストライプ状電極に連続して同一厚さ同一材料のリード電極を各基板の少なくとも一側縁に並列して形成したことを特徴とする請求項2記載の液晶素子。
(4)前記スペーサーは、前記各ストライプ状電極のリード電極と反対側にシール材配設部まで延長して各ストライプ状電極に連続して形成されたことを特徴とする請求項3記載の液晶素子。
(5)前記スペーサーは、最外側のストライプ状電極の外側にこれと平行に前記シール材と重なるまでの位置に形成されたことを特徴とする請求項3記載の液晶素子。
(6)前記シール部材に設けられたスペーサーは、対向する他方の基板側と絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の液晶素子。」
(以下、請求項順に「訂正発明1」〜「訂正発明6」という。)

《2-3-2》刊行物の記載
平成10年第76038号異議申立事件において、特許異議申立人が提出した刊行物には以下の事項が記載されている。

刊行物1:特開昭62-129818号公報
[1-1] 第6頁右下欄第2行-第7頁左上欄第16行
「以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。第8図は、本発明の実施例を示す説明用断面図である。第8図に示す液晶表示装置においては、2枚の基板1および2が離間した状態で対向して配置され、基板1は、支持板11の内側の表面に電極層4および配向層6を形成して構成され、また基板2は支持板21の内側の表面に電極層5および配向層7を形成して構成されている。さらに両基板1および2の間の空間はシール部3によってシールされ、セルが構成されている。セルの内部には、スペーサ8が分布した状態で配置されるとともに液晶組成物が充填され、液晶層Cが形成されている。
・・(中略)・・
前記電極層4および5は、たとえば厚さ1.1mmの支持板11および21の表面に平行に離間して配置されたたとえば厚さ1000ÅのITO(スズとインジウムの酸化物)よりなる透明電極EおよびE'より構成され、一方の電極層4を構成する透明電極Eと他方の電極層5を構成する透明電極E'はそれぞれが相互に直角をなすよう配置され、これによって、たとえば0.3mm×0.3mmの画素からなるマトリックス形表示の電極構造が構成されている。」

[1-2]第7頁右上欄下から2行-同頁左下欄第3行
「スペーサ8としては、グラスファイバー…を用いた。」

[1-3]第8図
第8図には、液晶表示装置において、シール部3に一部重なった電極層4がそのままシール部内側の表示領域に延長され表示のための電極層4となりさらに延長されて反対側でシール部3に一部重なった電極層4となっている点、及び該重なっている部分の対向する支持板21上でシール部に重なった電極層5が図示されて、液晶層C中及びシール部3内部にはスペーサ8が存在する点が図示されている。

以上の記載事項からみて、刊行物1には、「一方の電極層4を構成する透明電極Eと他方の電極層5を構成する透明電極E'が相互に直角をなすよう電極層を形成した2枚の支持板11、21を電極層が内側となるように対面させて所定間隔を隔てて対向配置し、両支持板の電極層が対面する空間にスペーサ8および液晶組成物を介装し、該電極層が対面する空間の外側の領域の周囲をシール部3で封止した液晶表示装置であって、シール部3内部にスペーサ8が設けられ、シール部3に一部重なった電極層4がそのままシール部内側の表示領域に延長され表示のための電極層4となりさらに延長されて反対側でシール部3に一部重なった電極層4となっている液晶表示装置。」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

刊行物2:特開昭64-9424号公報
[2-1]第2頁左上欄下から第3行-同頁左下欄第5行
「本発明は、…、多数の電極群を有する第1の基板と、多数の電極群を有する第2の基板とを、各電極群が相対向するように配置し、周辺をシール材でシールし、その基板間隙にスペーサー材を配置して液晶を挟持してなるドットマトリックス表示を行う液晶表示素子において、シール部内であって、表示領域外の部分にも電極を形成したことを特徴とする液晶表示素子を提供するものである。本発明は、表示領域外の部分に色ムラを生じる原因が、表示領域外には電極が対向していないことにあることを見出し、表示領域外の部分にも電極を形成したものである。…このため本発明では、表示に関係がないこの表示領域外の部分にも電極が対向するようにして基板間隙のズレを少なくし、表示領域外の部分での色ムラを生じる基板間隙ムラを減少させる。」

[2-2]第3頁右上欄第2行-同頁左下欄下から第4行、第1-3図
「第1図乃至第3図は、本発明の代表的なドットマトリックス表示用の液晶表示素子の例を示す平面図である。

第2図は、この第1の基板1の平面図を示しており、多数の第1の電極群6と本発明のダミーの電極7A、7Bを示している。従来の液晶表示素子においては、第1の電極群6、即ち、表示領域4に相当する部分A及び電極群のリード部分に当たるCとHの部分以外には、その一部に形成されたテスト用の電極や位置合せ用の電極等の例を除き、通常電極が形成されていなかった。本発明では、この非表示領域B、D、E、F、G、Iにも電極7A、7Bを形成するものである。…第3図は、この第2の基板2の平面図を示しており、多数の第2の電極群8と本発明のダミーの電極9A、9B、9Cを示している。この基板においても、前述の如く従来の液晶表示素子においては、第2の電極群8、即ち、表示領域4に相当する部分A及び電極群のリード部分に当たるEの部分以外には、…通常電極が形成されていなかった。」

[2-3]第3頁右下欄末行-第4頁右上欄第6行、第4、5図
「第4図は、本発明の液晶表示素子の部分断面図を示している。第4図においては、非表示の部分にも電極が形成されているため、第1の基板1と第2の基板2との基板間隙が、スペーサー材11A、11B、11Cにより表示部及び周辺部も含めて正確に保たれることとなる。第5図は、非表示領域に電極が形成されていない従来の液晶表示素子の部分断面図を示している。第5図においては、非表示部の部分には電極が形成されていないため、第1の基板1と第2の基板2との基板間隙がスペーサー材11D、11E、11Fを配置しても、基板間隙の制御が不充分になりやすい。即ち、スペーサー材11Bの部分には電極があるのに対し、スペーサー材11Fの部分には電極が無いため、電極の厚さの分だけ基板が反ることとなる。この際に、電極の端の部分のスペーサー材11Eは強い圧力がかかり、柔らかいスペーサー材の場合には、歪んで基板間隙が狭くなり、固いスペーサー材の場合には、電極や配向膜に食い込みそれらを傷付けたりする等のして基板間隙がバラつき、表示領域の端の部分や非表示領域において色ムラ発生し易くなる。さらに、表示領域の端の部分では基板間隙の差により駆動時のコントラストムラも生じ易くなる。」

《2-3-3》対比・判断
訂正発明1
訂正発明1と引用発明とを比較すると、引用発明における「シール部」は訂正発明1における「シール材」に相当し、引用発明における「スペーサ」は訂正発明1における「ギャップ材」に相当する。また、引用発明におけるシール部の内部に設けられた「スペーサ」も訂正発明1の「ガラスビーズ」もシール材中で基板の間隔を保つ部材である。
引用発明における「シール部3に一部重なった電極層4がそのままシール部内側の表示領域に延長され表示のための電極層4となりさらに延長されて反対側でシール部3に一部重なった電極層4」の電極層4の離間した個々の電極の両端でシール部3に一部重なった部分の少なくとも一方はリード電極として使用されることは明らかである。この点に関し、刊行物2の記載事項[2-2]を参酌するとより一層明らかである。また、引用発明における電極層5の離間した個々の電極のシール部3に一部重なった部分も同様である。そして、引用発明における「シール部3に一部重なった電極層4又は5」がシール部においてスペーサ8と支持板との間のスペーサーとなっていることは明らかである。

したがって、両者は、「電極を形成した2枚の基板を電極を対面させて所定間隔を隔てて対向配置し、両基板間の電極対面部間にギャップ材及び液晶を介装し、該電極対面部の外周部の表示領域以外の領域の周囲をシール材封止した構造の液晶素子であって、各基板の電極に連結して、基板上のシール材による封止部の下層を経て外部に延設されたリード電極が設けられ、該表示領域以外の領域で、該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを設け、非表示領域のシール材内部にシール材中で基板の間隔を保つ部材を設けたことを特徴とする液晶素子。」の点で一致する。

そして、両者は、以下の点で相違する。
[相違1]
訂正発明1は、対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つ該リード電極が設けられていない領域において該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを設けたのに対して、引用発明は対面する基板の双方の基板上において該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを設けた点。(引用発明における、電極層4、5の個々の電極のシール部3に一部重なった部分の少なくとも一方はリード電極としても使用されることは明らかであるが、リード電極として使用される部分もリード電極として使用されない部分も共に基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーの機能を有することが明らかである。)

[相違2]
訂正発明1は、非表示領域のシール材外部にギャップ材を設けたのに対して、引用発明はシール材外部にギャップ材を設けているものの、ギャップ材を設けている領域が非表示領域を含むか否か不明である点。

[相違3]
訂正発明1は、シール材中で基板の間隔を保つ部材としてガラスビーズを用いているのに対して、引用発明は実施例においてはグラスファイバーを用いている点。

まず、 [相違2]について検討するに、刊行物2には、シール部(引用発明の「シール部」、訂正発明1の「シール材」に相当)外部に非表示領域が形成されている。したがって、引用発明においてもシール部の外部(基板の中心方向)に表示部と共に非表示部が実際には存在するものと考えられる。非表示領域が存在しないとしても刊行物2に示された如く非表示領域を設けることは当業者がふつうに試みる事項である。してみると、引用発明ではシール材の外部にギャップ材が設けられているから、シール材の外部に非表示領域を設けることにより非表示領域のシール材外部にもギャップ材を設けることとすることは当業者が容易に想到できた事項である。

次に、[相違3]について検討するに、シール材中で基板の間隔を保つ部材として、ガラス、シリカから成る球形の部材を用いることは例えば、特開平1-233423号公報、特開昭60-69633号公報、特開平1-234826号公報において周知である。よって、ガラスビーズを用いた点は何ら格別の事項ではない。

最後に、[相違1]について検討するに、刊行物2には、記載事項[2-3]第3頁右下欄末行-第4頁右上欄第6行に「第4図は、本発明の液晶表示素子の部分断面図を示している。第4図においては、非表示の部分にも電極が形成されているため、第1の基板1と第2の基板2との基板間隙が、スペーサー材11A、11B、11Cにより表示部及び周辺部も含めて正確に保たれることとなる。第5図は、非表示領域に電極が形成されていない従来の液晶表示素子の部分断面図を示している。第5図においては、非表示部の部分には電極が形成されていないため、第1の基板1と第2の基板2との基板間隙がスペーサー材11D、11E、11Fを配置しても、基板間隙の制御が不充分になりやすい。即ち、スペーサー材11Bの部分には電極があるのに対し、スペーサー材11Fの部分には電極が無いため、電極の厚さの分だけ基板が反ることとなる。この際に、電極の端の部分のスペーサー材11Eは強い圧力がかかり、柔らかいスペーサー材の場合には、歪んで基板間隙が狭くなり、固いスペーサー材の場合には、電極や配向膜に食い込みそれらを傷付けたりする等のして基板間隙がバラつき、表示領域の端の部分や非表示領域において色ムラ発生し易くなる。さらに、表示領域の端の部分では基板間隙の差により駆動時のコントラストムラも生じ易くなる。」と記載され、この記載において、スペーサー材、非表示部分の電極は訂正発明1の「ギャップ材」、「基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサー」に相当するから、刊行物1,2に接した当業者にとって、引用発明の、基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーである電極層5,4の個々の電極のシール部3に重なった部分が基板間隙の制御を行っていることが明らかである。よって、対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つリード電極が設けられていない領域において該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを設けた場合に、対面する基板でリード電極が設けられていない領域において該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを設けた場合よりも基板間隙の制御が劣ることが明らかである。しかし、訂正発明1では、あえて、引用発明よりも基板間隙の制御が劣ることが明らかな構成を採用したにもかかわらず、実用上問題がないことを見出したものである。そして、訂正発明1の[相違1]の構成から明らかな、意見書で主張する誘導電気容量の抑制、製造コストにおける効果を奏するものと認められる。
したがって、引用発明の対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つ該リード電極が設けられていない領域において該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを設けることは当業者が容易に想到できた事項とすることはできない。

よって、訂正発明1は、刊行物1,2に記載された発明及び周知事項に基づき当業者が容易に発明できたものと認めることはできない。

訂正発明2〜6
訂正発明2〜6は、訂正発明1の構成を前提とし、さらに新たな構成を付加したものである。
よって、訂正発明2〜6と引用発明とを比較すると、前記[相違点1]が存在するから、訂正発明1の[相違点1]についての判断の理由により、訂正発明2〜6は、刊行物1,2に記載された発明及び周知事項に基づき当業者が容易に発明できたものと認めることはできない。

以上のとおり、訂正発明1〜6は、特許第29条第2項の規定により拒絶すべきものとは認められず、他に拒絶すべき理由を見いだせないので、本件特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

【3】むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項〜第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶素子
(57)【特許請求の範囲】
(1)電極を形成した2枚の基板を電極を対面させて所定間隔を隔てて対向配置し、両基板間の電極対面部間にギャップ材及び液晶を介装し、該電極対面部の外周部の表示領域以外の領域の周囲をシール材封止した構造の液晶素子であって、
各基板の電極に連結して、基板上のシール材による封止部の下層を経て外部に延設されたリード電極が設けられ、該表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つ該リード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを設け、非表示領域のシール材内部にガラスビーズを設け、及び非表示領域のシール材外部にギャップ材を設けたことを特徴とする液晶素子。
(2)前記スペーサーは、前記電極と同一工程で形成された同一材料からなることを特徴とする請求項1記載の液晶素子。
(3)前記電極は複数の並列配置したストライプ状電極からなり、2枚の基板の各電極を直交配置してマトリックスを構成し、各ストライプ状電極に連続して同一厚さ同一材料のリード電極を各基板の少なくとも一側縁に並列して形成したことを特徴とする請求項2記載の液晶素子。
(4)前記スペーサーは、前記各ストライプ状電極のリード電極と反対側にシール材配設部まで延長して各ストライプ状電極に連続して形成されたことを特徴とする請求項3記載の液晶素子。
(5)前記スペーサーは、最外側のストライプ状電極の外側にこれと平行に前記シール材と重なるまでの位置に形成されたことを特徴とする請求項3記載の液晶素子。
(6)前記シール部材に設けられたスペーサーは、対向する他方の基板側と絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の液晶素子。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、セル内の表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つリード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを形成して均一なセルギャップを得る液晶表示素子の構成に関するものである。
[従来技術]
従来の液晶表示素子構造を第5図、第6図に示す。
従来、液晶素子の製造方法は、2枚のガラス基板1,1′の各々について、画面領域aとなる部分に電極2,2′をパターン形成し同時に各電極に接続するリード電極をパターン形成した後、その表面に配向処理を施す。次に2枚のガラス基板1,1′を電極面同士を対向させて、周辺をシール材6で封止し、それに囲まれたセル内部をギャップ材5を介して貼り合わせる。このときプレス等により加圧して所定のセルギャップを形成していた。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、上記従来例では、第5図、第6図で示すように、貼り合わされた状態で電極2,2′同士が対向した表示領域aとそれ以外の領域bでは、上下のガラス基板1,1′をまったく平行にしてみた場合(側面からみた場合)、形成された電極2,2′の厚さ分だけギャップが異なるために、また全面均一に加圧したときに各領域のギャップはセル内ギャップ材5やシール材6中のフィラーやギャップ材7で保持されるために、電極2,2′同士が対向された表示領域aの外周部では応力の集中をうける。このためその部分でギャップ材5が変形または破壊し、あるいはギャップ材5が電極2,2′にくい込み、これによりギャップ厚が他の表示部より薄くなるという欠点があった。特に強誘電性液晶表示素子のようなギャップ厚が1〜2μmと非常に薄くしかも各基板の電極をストライプ状に配しそれを直交させるようにして対向させた単純マトリックスの表示素子について、表示面積を大きくし、かつ高ライン数としたときに配線抵抗低下を防ぐため電極を厚くしなければならないときは、上記ギャップ不均一による問題が大きかった。
本発明は上記従来技術の欠点に鑑みなされたものであって、ガラス基板貼り合わせ工程において、ギャップ差による応力集中を軽減し均一なセルギャップを形成可能な液晶表示素子の提供を目的とする。
[課題を解決するための手段および作用]
本発明によればセル内の表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つリード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを形成し、しかもそれを同材質で同時工程で形成し、非表示領域のシール材内部にガラスビーズを設け、及び非表示領域のシール材外部にギャップ材を設けたことにより、2枚のガラス基板を貼り合わせ更に加圧する工程において、上下のガラス基板をまったく平行にしてみた場合の電極同士が対向された表示領域とそれ以外の領域とのギャップ差に基づく応力集中を避けることができ、ギャップ材の破壊・変形等によるギャップの薄い領域のない所定の均一なセルギャップを形成できるようにしたものである。
[参考例および実施例]
第1図、第2図は強誘電性液晶を用いた液晶表示素子の参考例を示す。同図において1,1′は上下の各ガラス基板で厚さは1.1mmある。2,2′は各ガラス基板上にストライプ状に形成された膜厚3000Åの透明電極(ITO)であり、貼り合わされた状態では直交マトリックス状に対向され、この領域が表示領域aとなる。3,3′はリード電極で透明電極2,2′と同じ材質・膜厚で同時に形成した。bの領域にある4、4′は所定のセルギャップ1.5±0.1μmを全面均一に維持するために形成したスペーサーである。このスペーサー4、4′も透明電極2,2′およびリード電極3,3′と同じ材質・厚さで同時に形成したものであり、その形成法はガラス基板1,1′を貼り合わせる前の各基板上にスパッタリングによりITOを成膜し、その後フォトリソグラフィーエッチングによりパターンを形成したものである。このスペーサー4、4′の形状は第2図において、上側のガラス基板1側ではストライプ状の電極2をシール材6を介する部分まで延長して設けた形状とし、下側のガラス1′側では最外側のストライプ状の電極2′の外側にこれと平行にシール材と重なる位置に同じくストライプ状に設けた。
次にパターン形成した各基板表面に配向処理を施した後、片側基板にのみフレキソ印刷によりφ1.5μmのガラスビーズ7(例えば商品、触媒化成(株)製シリカマイクロビーズ)をシール材6(例えば商品、三井東圧(株)製ストラクトボンドXN-21F)に1%(wet)混在させたものを巾1mm厚さ3μm転写する。更に表示領域部aのギャップを保持するためのφ1.5μmのガラスビーズからなるギャップ材5(例えば商品、触媒化成(株)製、シリカマイクロビーズ)を全面均一に250〜350/mm2の密度に散布した。
しかる後に上下のガラス基板1,1′をストライプ状の透明電極2,2′を直交するように対向させて貼り合わせ、更に加熱式プレス棧により70℃、2.5Kg/cm2で2分間加圧した。但し圧力分布を全面均一にするためにプレス棧面と、ガラス面間には各々*1.0mmのモルトプレンからなる緩衝材を挟んだ。
このとき、シール材6を介する部分を含むセル内で透明電極2,2′同士が対向してできた表示領域a以外の領域bに前記したスペーサー4、4′が形成されているため、φ1.5μmのギャップ材5およびシール材6中のガラスビーズ7によりガラス基板1,1′は平行に保たれた状態で加圧される。したがって、応力・集中によるギャップ材5の破砕もなく所定のセルギャップ1.5±0.1μmを全面均一に形成することができた。
その後170℃、4時間の加熱によりシール材6を硬化させ、更にセル内に強誘電性液晶材を封入し、電気ドライバーに接続して駆動させたところ、閾値特性の違いによるスイッチング不良や視覚的な色ムラもない非常に表示品位のよい強誘電性液晶表示素子を得ることができた。
第3図、第4図は本発明の実施例を示した図である。
ここでスペーサー4は前記した実施例と同じく、ITO1500Åからなる電極2およびリード電極3と同じ材質、厚さで同時に形成した。但しその領域は電極2,2′同士が対向してできた表示領域aとリード電極3,3′が対向した領域cを除いた領域bの各々一方のガラス基板にのみ単純にストライプ状の電極2,2′をシール材を介する部分まで延長した形に形成した。次にパターン形成された各基板表面に配向処理を施した後、片側の基板にフレキソ印刷によりφ1.65μmのガラスビーズ7をシール材6(例えば、商品三井東圧(株)製ストラクトボンドXN-21F)に1%(wet)混在させたものを巾1mm、厚さ3μm転写する。更にφ1.5μmのガラスビーズからなるギャップ材5(例えば商品、触媒化成(株)製シリカマイクロビーズ)を全面均一250〜350ケ/mm2の密度で散布した。しかる後に前記実施例と同じく、上下のガラス基板1,1′を透明電極2,2′を対向させて貼り合わせ、更に加熱式プレス棧によりプレス棧面とガラス面間に各々t1.0mmのモルトプレンの緩衝材を挟んだ状態で全面均一に70℃、2.5Kg/cm2で2分間加圧した。
このとき、電極2,2′が対向してできた表示領域a以外のスペーサー4を形成した領域bとリード電極3,3′が対向された領域cでは上下のガラス基板1,1′上に形成された電極2,2′とリード電極3,3′およびスペーサー4のトータルの厚さの違い、つまり上下のガラス基板1,1′をまったく平行してみた場合のギャップ厚が違うために、加圧したときの各領域のギャップはギャップ材5およびシール材中のガラスビーズ7で保持されるので、領域bと領域cに近い表示領域部は幾分応力の集中を受ける。しかしながら、その部分で起こるギャップ材5の破壊またはギャップ材5の透明電極2,2′へのくい込みによるギャップ厚が他の表示領域部aより薄くなる弊害は実用上問題とならない。即ち、領域bと領域cには厚さ1500Åのスペーサー4またはリード電極3,3′があり表示領域a部との厚さの差は1500Å(0.15μm)しか無いため所定のセルギャップ1.5±0.1μm内に収めることができた。
[発明の効果]
以上説明したように、セル内の表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つリード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と同じ厚さのスペーサーを形成し、しかもそれを同材質で同時工程で形成することにより、製造コストをまったく上げずに表示品位の良い液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、参考例に係る、液晶表示素子の平面図、
第2図は、第1図のA-A′断面図、
第3図は、本発明の実施例に係る液晶表示素子の平面図、
第4図は、第3図のA-A′断面図、
第5図は、従来の液晶表示素子を示す平面図、 第6図は、第5図のA-A′の断面図である。
1,1′:ガラス基板、
2,2′:電極、
3,3′:リード電極、
4,4′:スペーサー、
5:ギャップ材、
6:シール材、
7:ガラスビーズ。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
請求人の求める訂正の内容は、下記(i)-(xi)のとおりである。
(i)特許請求の範囲第1項の「該電極対面部の周囲をシール材封止した」を、特許請求の範囲の減縮を目的として「該電極対面部の外周部の表示領域以外の領域の周囲をシール材封止した」と訂正する。
(ii)特許請求の範囲第1項の「該リード電極が設けられていない領域において、」を、特許請求の範囲の減縮を目的として「該表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つ該リード電極が設けられていない領域において、」と訂正する。
(iii)特許請求の範囲第1項の「スペーサーを設けたことを特徴とする」を、特許請求の範囲の減縮を目的として「スペーサーを設け、非表示領域のシール材内部にガラスビーズを設け、及び非表示領域のシール材外部にギャップ材を設けたことを特徴とする」と訂正する。
(iv)明細書第2頁第12〜13行の「セル内の表示領域以外の…電極と」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「セル内の表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つリード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と」と訂正する。
(v)明細書第5頁第1行の「形成したこと」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「形成し、非表示領域のシール材内部にガラスビーズを設け、及び非表示領域のシール材外部にギャップ材を設けたこと」と訂正する。
(vi)明細書第4頁第18〜19行および明細書第10頁第13〜14行の「セル内の表示領域以外の…電極と」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「セル内の表示領域以外の領域で対面する基板のどちらか一方の基板上のみで且つリード電極が設けられていない領域において、該基板に設けられた電極と」と訂正する。
(vii)明細書第5頁第9行の「[実施例]」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「[参考例および実施例]」と訂正する。
(viii)明細書第5頁第10〜11行の「本発明に係る強誘電性液晶を用いた液晶表示素子の第一の実施例を示す。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「強誘電性液晶を用いた液晶表示素子の参考例を示す。」と訂正する。
(ix)明細書第8頁第7行の「別の」を、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。
(x)明細書第10頁第20行の「本発明の第一実施例」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「参考例」と訂正する。
(xi)明細書第11頁第3行の「第二」を、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。
審決日 2001-09-18 
出願番号 特願平1-301948
審決分類 P 1 41・ 856- Y (G02F)
P 1 41・ 121- Y (G02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀧本 十良三吉野 公夫  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 伊藤 昌哉
北川 清伸
登録日 1998-04-10 
登録番号 特許第2767145号(P2767145)
発明の名称 液晶素子  
代理人 関口 鶴彦  
代理人 伊東 哲也  
代理人 伊東 哲也  

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