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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61M
管理番号 1051442
異議申立番号 異議2000-74012  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-27 
確定日 2001-08-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3049182号「白血球除去用ロ過器」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3049182号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件特許第3049182号の発明についての出願は、平成5年12月8日に出願(国内優先日平成5年4月28日)され、平成12年3月24日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、申立人テルモ株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年4月12日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
【特許請求の範囲】の【請求項1】および【請求項2】の冒頭にそれぞれ記載された「血液ロ過材」を「白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材」と訂正する。
イ.訂正事項b
明細書の段落【0003】における【課題を解決するための手段】の欄の[1]、[2]の冒頭にそれぞれ記載された「本発明は、血液ロ過材を」を「本発明は、白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材を」と訂正する。
ウ.訂正事項c
明細書の段落【0012】における「血液ロ過材3は平板状のもの(単層及び積層したもの含む)」を「血液ロ過材13は平板状でかつ積層したもの」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲第1項および第2項において、「血液ロ過材」の構造を、より詳細に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「血液ロ過材」が、「白血球除去用の積層した不織布」からなる点については、明細書の段落【0006】第9〜10行「積層した血液ロ過材3の周縁部」、明細書の段落【0008】第1〜2行「血液ロ過材3としてポリウレタン製不織布を使用し、」、および表3、表4に示された各実施例において記載されている。
上記訂正事項bは、【課題を解決するための手段】の欄の記載を訂正された特許請求の範囲の記載と対応するものとして記載の明りょう化を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項cは、明細書の段落【0012】の記載を訂正された特許請求の範囲の記載と対応させて記載の明りょう化を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また、上記訂正中の「血液ロ過材3」を「血液ロ過材13」と訂正した点は、図3の血液ロ過材に、部材番号13が付されていること、および明細書の段落【0012】第3行に「血液ロ過材13」と記載されていることからみて、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、上記いずれの訂正事項も、新規事項の追加に該当せず、本件発明の課題に変更を及ぼすものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項および同第3項において準用する特許法第126条第2項から第3項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
申立人テルモ株式会社は、本件の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により、取消されるべきものである、または、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により、取消されるべきものであると主張している。(なお、申立人は甲第1号証の内容を補足するために甲第2号証を提出している。)
(2)本件の請求項1、2に係る発明
上記2.で示したように訂正が認められるから、本件の請求項1、2に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次の通りのものと認める。
「【請求項1】白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材を該血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似する可撓性のハウジング内に装填し、前記血液ロ過材の周縁部を前記ハウジングと直接溶着して、前記ハウジングを血液の流入室と流出室に区分するとともに血液の流入室に血液流入口、血液の流出室に血液流出口を連通するように形成したことを特徴とする白血球除去用ロ過器。
【請求項2】白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材を該血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似する可撓性のハウジング内に装填し、前記可撓性のハウジングの上縁部に、下部から側部に亘って周縁部が密封された血液ロ過材の上縁部を直接溶着して、前記ハウジングを血液の流入室と流出室に区分するとともに血液の流入室に血液流入口、血液の流出室に血液流出口を連通するように形成したことを特徴とする白血球除去用ロ過器。」
(3)各甲号証記載の発明
刊行物1:国際公開WO90/15660号公報(甲第1号証)(以下、「刊行物1」という。)
上記刊行物1には、「袋状フィルター」に関し、以下の事項が記載されている。
「本発明は、液体、気体等、流体の中から異物を濾過するフィルターに関するものである。通常のフィルターとしても機能するが、特に医療用のファイナルフィルターや輸血に用いる精密な、比較的低圧の、使い捨てなければならない用途に最適のものである。」(明細書第1頁第3〜6行)
「第12図に示すように上下のポリエチレンフィルム2、2′の間にフィルター膜を平面ではなく袋13として作成したものを用いてもよい。フィルター膜を2つ折りにすれば2分の1、ガゼット折りにすれば4分の1といった幅になるので、機能は同じで大きさはかなり小さくする事が出来る。」(明細書第5頁第11〜16行)
「(1)ポリエチレン等の、フィルター膜と同材質の、又は異種の材質の場合はより低い溶融温度の熱溶着性プラスチックフィルム(以下フィルムと言う)と、ポリスルフォン等のプラスチックフィルター膜(以下フィルター膜と言う)とで構成され、上記フィルム同志を重ねて目的の流体が漏れないようにヒートシール等で全周囲を溶着して作られた閉じた袋(以下外袋と言う)の内側の壁面に重ねて又はその貼り合わせ部分に挟んで、上記フィルター膜を平面状にして、又は上記フィルムを溶着して拡大して、又は袋状にして、ヒートシール等で溶着し、外袋の内部空間を2又はそれ以上の空間に区分し、各々の袋状空間に出入口を設けてなる袋状フィルター。」(請求の範囲第1〜10行)
また、第11、12図には、フィルター膜袋13がチューブ10に取付けられ、さらに、それらがポリエチレンフィルム2、2′による袋に装填されている点が示されている。
刊行物2:特公平2-13587号公報(甲第2号証)(以下、「刊行物2」という。)
上記刊行物2には、「白血球除去フィルター」に関して、以下の事項が記載されている。
「赤血球輸血の場合は、白血球、血小板等、抗原となる物質をできるだけ除去した赤血球濃厚液を輸注することが望ましい。」(公報第2欄第1〜3行)
(4)対比判断
(請求項1に係る発明について)
本件請求項1に係る発明(以下、「本件第1発明」という。)と刊行物1記載の発明(第1〜3図の実施例参照。)とを比較すると、刊行物1のものにおける「ポリエチレンフィルム2、2′」が、本件第1発明の「ハウジング2」に、刊行物1のものにおける「入口3、出口3′」が、本件第1発明の「血液流入口8、血液流出口7」に、刊行物1のものにおける「縁4」が、本件第1発明の「密封部4」に、刊行物1のものにおける「一次側室5、二次側室6」が、本件第1発明の「血液の流入室8a、血液の流出室7a」に、それぞれ相当し、さらに、刊行物1において、「フィルター膜」と同材質の「フィルム」(ハウジング)を用いることが記載されている(請求の範囲(1)の記載参照)から、
両者は、
「血液ロ過材を該血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似する可撓性のハウジング内に装填し、前記血液ロ過材の周縁部を前記ハウジングと直接溶着して、前記ハウジングを血液の流入室と流出室に区分するとともに血液の流入室に血液流入口、血液の流出室に血液流出口を連通するように形成したことを特徴とするロ過器。」である点で一致する。
一方、「血液ロ過材」に関して、本件第1発明において「白血球除去用の積層した不織布からなる」ものであるのに対し、刊行物記載の発明においてはそのような構成がない点で相違する。(以下、「相違点1」という。)
次に、上記相違点1について検討すると、血液ロ過材を、白血球除去用の積層した不織布によって構成する点については、周知(例えば特開平1-236064号公報、あるいは特開昭63-255070号公報を参照のこと。)であるから、この周知技術を刊行物1のものに適用して、刊行物1のものにおける「フィルター膜」を「白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材」とすることは、当業者が、血液ロ過材に求められる効率や性能などを考慮して、適宜なし得る設計事項に過ぎない。
したがって、本件第1発明は、刊行物1記載の発明および上記周知である事項に基いて当業者が容易になしえたものであるから、本件第1発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(請求項2に係る発明について)
本件請求項2に係る発明(以下、「本件第2発明」という。)と刊行物1に記載された発明(第11、12図の実施例参照。)とを比較すると、刊行物1のものにおける「ポリエチレンフィルム2、2′」が、本件第2発明の「ハウジング22」に、刊行物1のものにおける「入口10、出口10′」(第11、12図の実施例参照。)が、本件第2発明の「血液流入口25、血液流出口26」に、それぞれ相当し、さらに、刊行物1において、「フィルター膜」と同材質の「フィルム」(ハウジング)を用いることが記載されている(請求の範囲(1)の記載参照)から、両者は、
「血液ロ過材を該血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似する可撓性のハウジング内に装填し、前記ハウジングを血液の流入室と流出室に区分するとともに血液の流入室に血液流入口、血液の流出室に血液流出口を連通するように形成したことを特徴とするロ過器。」である点で一致する。
一方、「血液ロ過材」に関して、本件第1発明において「白血球除去用の積層した不織布からなる」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明においてはそのような構成がない点で相違する。(以下、「相違点2」という。)
さらに、本件第2発明において、「可撓性ハウジングの上縁部に、下部から側部に亘って周縁部が密封された血液ロ過材の上縁部を直接溶着」したのに対し、刊行物1記載の発明においては、フィルター膜袋13が、チューブ10に取付けられているが、ポリエチレンフィルム2、2´の上縁に直接溶着されるものではない点で相違する。(以下、「相違点3」という。)
次に、上記相違点2について検討すると、既に、上記相違点1に対して判断した理由により、血液ロ過材を、白血球除去用の積層した不織布によって構成する点については、当業者が、血液ロ過材に求められる効率や性能などを考慮して、適宜なし得る設計事項に過ぎない。
さらに、上記相違点3について検討すると、本件第2発明の「可撓性ハウジングの上縁部に、下部から側部に亘って周縁部が密封された血液ロ過材の上縁部を直接溶着」した構成は、刊行物2に記載されておらず、さらに、この構成により、可撓性ハウジングの上縁部と、血液ロ過材の上縁部を同時に溶着できるという作用効果が得られる点からみて、当業者が、刊行物1および刊行物2に記載された発明から容易に想到し得たものとも認められない。
したがって、本件第2発明は、異議申立人の提出したいずれの刊行物にも記載されておらず、また、これら刊行物から当業者が容易になし得たものではないので、本件第2発明は、特許法第29条第1項第3号および特許法第29条第2項のいずれの規定にも違反してなされたものではない。
なお、特許権者は、平成13年4月12日特許異議意見書において、本件発明特有の効果として「血液ロ過材を重ねる枚数が増加しても確実にハウジングの周縁部に溶着することができ、気密性が低下したり血液のリーク等が生じることがない」(同特許異議意見書第8頁第3〜5行)と主張している。しかしながら、血液ロ過材としては、単層、あるいは積層のものにかかわらず、用途や要求される性能により様々な厚みのものが存在するのであるから、必ずしも「積層した不織布からなる血液ロ過材」を用いることによってのみ生じる特有な効果であるとは認められない。よって、上記の特許権者の主張を採用することはできない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、本件第1発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2項に該当し、取消されるべきものである。
また、本件第2発明の特許は、取消すことができない。また、他に本件第2発明について取消しの理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
白血球除去用ロ過器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材を該血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似する可撓性のハウジング内に装填し、前記血液ロ過材の周縁部を前記ハウジングと直接溶着して、前記ハウジングを血液の流入室と流出室に区分するとともに血液の流入室に血液流入口、血液の流出室に血液流出口を連通するように形成したことを特徴とする白血球除去用ロ過器。
【請求項2】白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材を該血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似する可撓性のハウジング内に装填し、前記可撓性のハウジングの上縁部に、下部から側部に亘って周縁部が密封された血液ロ過材の上縁部を直接溶着して、前記ハウジングを血液の流入室と流出室に区分するとともに血液の流入室に血液流入口、血液の流出室に血液流出口を連通するように形成したことを特徴とする白血球除去用ロ過器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は血液バッグ、輸血セット、血液回路、フェレーシス回路等の医療用具に使用される白血球除去用ロ過器の改良に関する。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】
図7は従来の白血球除去用ロ過器31の断面図で、不織布や多孔質体のフィルターからなる血液ロ過材33を硬い合成樹脂からなるツーピースのハウジング32、32の溝37ではさみ込み、ハウジング32、32の端部38を溶着することによりフィルター33を圧着してフィルター33端面からのリークを防いでいる(図7において39は溶着部である)。しかし、フィルター33はハウジングによって、物理的に圧着しているだけのため、フィルター33の厚さが厚くなったり、フィルター33の枚数がふえたりすると、フィルター33の圧着力が低下するため、フィルター33の気密性は低下しフィルター33端面からの血液リークの原因となっていた。またフィルター33の圧着力を高くすると、ハウジング32、32同士の溶着が困難になり、溶着後のハウジング32も残留応力によって、破損しやすい状態となっていた。さらに、フィルター33を圧着するため、ハウジング32は硬い合成樹脂で成形されているため、耐衝撃性や、耐薬品性が悪く、薬品によるクラックや、輸送時の衝撃や落下による破損をまねいていた。そこで本発明者は以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果次の発明に到達した。
【0003】
【課題を解決するための手段】
[1]本発明は、白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材を該血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似する可撓性のハウジング内に装填し、前記血液ロ過材の周縁部を前記ハウジングと直接溶着して、前記ハウジングを血液の流入室と流出室に区分するとともに血液の流入室に血液流入口、血液の流出室に血液流出口を連通するように形成した白血球除去用ロ過器を提供する。
[2]本発明は、白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材を該血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似する可撓性のハウジング内に装填し、前記可撓性のハウジングの上縁部に、下部から側部に亘って周縁部が密封された血液ロ過材の上縁部を直接溶着して、前記ハウジングを血液の流入室と流出室に区分するとともに血液の流入室に血液流入口、血液の流出室に血液流出口を連通するように形成した白血球除去用ロ過器を提供する。
【0004】
【実施例】
図1は本発明の白血球除去用ロ過器1の概略図(図2は図1のA-A断面図)で、白血球除去用ロ過器1は血液ロ過材3を可撓性ハウジング2内に装填することにより構成される。血液ロ過材3としては、例えば公告特許公報昭58-54126号に記載されている繊維や公開特許公報昭60-193468号に記載されている不織布が使用されるが、好ましくは合成繊維または合成繊維からなる不織布であり、さらにこれらを溶着するハウジングと熱的性質、電気的性質が類似したものが良い。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン系エラストマー等が使用される。これらを例えば二枚の可撓性シートの間に挾んで、その周縁部を溶着することにより可撓性のハウジング2内に装填することができる(図1において4は密封部である)。
【0005】
ハウジング2は、可撓性の合成樹脂が良く、血液ロ過材と熱的、電気的性質が類似のものが良く、ハウジング2に使用される材質は、軟質塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体の水添物、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体またはその水添物等の熱可塑性エラストマー、及び熱可塑性エラストマーとポリオレフィン、エチレン-エチルアクリレート等の軟化剤との混合物が掲げられる。好ましくは、軟質塩化ビニル、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体及びこれらを主成分とする熱可塑剤エラストマーである。
【0006】
ハウジング2には後述するように血液の流入部材(血液流入口8、16、25、血液移送チューブ10)と血液の流出部材(血液流出口7、15、26、血液移送チューブ9)が装着される。
ハウジング2の溶着は、ヒートシールによる外部加熱溶着でもよく、高周波ウェルダー、超音波ウェルダーによる内部溶着でも良い。また溶着の仕方は血液ロ過材とハウジング2を同時に、ヒートシール、高周波ウェルダー、超音波ウェルダーによって直接溶着させても良く、積層した血液ロ過材3の周縁部のみ先に溶着させ、その後、ハウジング2と直接溶着しても良い。
【0007】
また血液流入口8と血液流出口7は射出成形、押出成形により硬質合成樹脂を成形し、ハウジング2を構成する2枚の可撓性シートの間に挾んで可撓性シートを溶着すると同時にハウジング2に装着することができる(図2において5、6は口部溶着部である)。最後にこれらの血液流入口8と血液流出口7に血液移送チューブ9、10を装着する。また血液流入口8と血液流出口7に代えて直接血液移送チューブ9、10の先端を装着することができる。ハウジング2は血液ロ過材3により血液の流入室8aと流出室7aに区分され血液の流入室8aに血液の流入口8、血液の流出室7aに血液の流出口9が連通するように形成されている。
【0008】
本発明の実施例において血液ロ過材3としてポリウレタン製不織布を使用し、可撓性の合成樹脂ハウジングで密封した。可撓性合成樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンを使用しショアA硬度90以下のものを使用した(表1参照)。
【0009】
【表1】

【0010】
実施例1〜4、比較例1〜3に、200gの鉄球を高さ1000mmより落下させ、ハウジングの割れを調べた。
表2の結果より本発明の白血球除去用ロ過器では破損が見られなかった。
【0011】
【表2】

【0012】
図3は本発明の白血球除去用ロ過器11の概略図(図4は図3のA矢視図)で、白血球除去用ロ過器1は、血液ロ過材13をハウジング12内に装填することにより構成される。血液ロ過材13は平板状でかつ積層したものが使用され、例えば二枚の可撓性シートの間に挟んでその周縁部をヒートシール、高周波ウェルダー、超音波ウェルダー等の手段で直接溶着することにより二枚の可撓性シートからなるハウジング2内に装着される(図3において14は密封部である)。
【0013】
これによりハウジング12内は血液ロ過材13により血液の流入室18と流出室17に区画され、各室17、18には血液の流入口16、流出口15が連通するように形成される。血液の流入口16、流出口15は射出成形により形成してハウジング12を構成する可撓性シートに穴をあけ接続しても良いしあるいは可撓性チューブ状のものを穴をあけた可撓性シートに接続しても良い。
【0014】
血液ロ過材3とハウジング12の材質の選択と密封は、前記白血球除去用ロ過器1と同様に行うことができる。
【0015】
本発明の実施例においてフィルターの材質、枚数、目付厚さ、ハウジングの材質、密封方法等は表3、表4に記載のものを採用した。実施例6から10に記載した白血球除去用ロ過器を用いて気密試験、耐衝撃性試験、リーク試験を行った。その結果を表5に示す。表5の結果よりいずれの実施例においても良好な結果が得られた。
【0016】
【表3】

【0017】
【表4】

【0018】
【表5】

【0019】
図5は本発明の白血球除去用ロ過器21の概略図(図6は図5の縦断面図)で、白血球除去用ロ過器21は底部に血液流出口26を溶着したハウジング22とハウジング22の上部に装着される血液流入口25より構成されている。
血液ロ過材23は釣鐘状に形成され、下部から側部に亘って周縁部が溶着により密封されるとともに、上縁部は開口され、との上縁部がハウジング22の上縁部と直接溶着される(図5において24は周縁密封部)。ハウジング22は血液の流入室28と流出室27に区分され、血液の流入室28に血液の流入口25、血液の流出口27に血液の流出口26が連通するように形成されている。白血球除去用ロ過器21においては血液ロ過材23の外周をハウジング22の外周に同時に密封することなく宙吊り状態で装着するため、ロ過面積が大きくなり、ロ過速度が速くなる。ハウジング22と血液ロ過材23の材質は白血球除去用ロ過器1と同じものが使用される。
【0020】
また本発明の白血球除去用ロ過器1、11、21は高圧蒸気滅菌処理が可能である。
【0021】
【発明の作用効果】
血液ロ過材を可撓性ハウジングで密封することにより、輸送途中の衝撃や落下等によるハウジングの破損が防げる。また、血液バッグと同時に遠心しても、ハウジングの破損、血液バッグの破損が防げる。また血液ロ過材の周縁部は溶着されているので、厚くなったり重ねる枚数が増えても気密性が低下したり血液のリーク等が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の白血球除去用ロ過器の概略図
【図2】
図1のA-A断面図
【図3】
本発明の白血球除去用ロ過器の断面図
【図4】
図1のA矢視図
【図5】
本発明の白血球除去用ロ過器の概略図
【図6】
図5の縦断面図
【図7】
従来の白血球除去用ロ過器の断面図
【符号の説明】
1 白血球除去用ロ過器
2 ハウジング
3 血液ロ過材
4 密封部
5 口部溶着部
6 口部溶着部
7 血液流出口
8 血液流入口
7a 血液の流出室
8a 血液の流入室
9 血液移送チューブ
10 血液移送チューブ
11 白血球除去用ロ過器
12 ハウジング
13 血液ロ過材
14 密封部
15 血液流出口
16 血液流入口
17 血液の流出室
18 血液の流入室
21 白血球除去用ロ過器
22 ハウジング
23 血液ロ過材
24 周縁密封部
25 血液流入口
26 血液流出口
27 血液の流出室
28 血液の流入室
【図面】







 
訂正の要旨 ア.訂正事項a
【特許請求の範囲】の【請求項1】および【請求項2】の冒頭にそれぞれ記載された「血液ロ過材」を「白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材」と訂正する。
イ.訂正事項b
明細書の段落【0003】における【課題を解決するための手段】の欄の[1]、[2]の冒頭にそれぞれ記載された「本発明は、血液ロ過材を」を「本発明は、白血球除去用の積層した不織布からなる血液ロ過材を」と訂正する。
ウ.訂正事項c
明細書の段落【0012】における「血液ロ過材3は平板状のもの(単層及び積層したもの含む)」を「血液ロ過材13は平板状でかつ積層したもの」と訂正する。
異議決定日 2001-07-09 
出願番号 特願平5-340637
審決分類 P 1 651・ 121- ZD (A61M)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 松本 貢稲村 正義  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 和泉 等
松下 聡
登録日 2000-03-24 
登録番号 特許第3049182号(P3049182)
権利者 川澄化学工業株式会社
発明の名称 白血球除去用ロ過器  

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