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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F24C
管理番号 1051524
異議申立番号 異議2001-70650  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-11-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-26 
確定日 2001-11-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3081753号「電子レンジ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3081753号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由
1.本件発明

特許第3081753号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、特許明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】壁面に孔部を有する加熱箱内に高周波を放射するマグネトロンと、前記加熱箱内を所定の加熱態様で加熱する加熱手段と、前記マグネトロンが配設されると共に前記孔部を介して前記加熱箱内と連通する機械室に前記マグネトロン或いは前記加熱手段の駆動状態で送風する冷却ファンと、前記加熱手段の駆動時は前記冷却ファンの送風量を前記マグネトロンの駆動時の送風量よりも少なくして送風する送風制御手段とを備えたことを特徴とする電子レンジ。」

2.引用刊行物記載の発明

先の取消理由通知において引用した刊行物1(特開平4-174216号公報)には、図面と共に、次の記載がある。

「食品を収納する加熱室と、この加熱室を加熱する高周波発振器および加熱ヒーターと、機械室を冷却する冷却ファンモーターと、この冷却ファンモーターの回転数を制御する制御回路を有し」(第1頁左下欄5〜8行)

「第9図に冷却ファンモーターの回転数、縦軸に加熱室温度と機械室温度を示す。冷却ファンモーターの回転数が増すに従い各々の温度は下がる。」(第2頁左上欄13〜15行)

「しかしながら上記のような構成では、オーブン時(高周波発振器を使用しない時)にも高周波発振器の保証温度の制約を受けるので、加熱室の温度を上げられないという課題がある。本発明はかかる従来の課題を解消するもので、オーブン時の加熱室の温度を上げることを目的とする。」(同頁右上欄8〜14行)

「本発明は上記した構成により、オーブン時、冷却ファンモーターを定常回転数以下で回転させ、加熱室の温度を上げることができるのである。」(同頁左下欄7〜9行)

「まず、高周波発振器使用時にはTMP1に対しより低い温度TK1になるように、冷却ファンモーターの回転数FAを決める。通常、フル回転で第1のタイマーの定数TM11=∞、第2のタイマーの定数TM21=0に設定する。また、冷却ファンモーターの回転数FAが決まると一義的に加熱室の温度TO1が決まる。次に、オーブン時には機械室温度がTMP2より低いTK2になるように冷却ファンモーターの回転数FBを決める。FBが決まると一義的に、加熱室温度TO2が決まる。したがって、TMPl<TMP2→FA>FB→故にTOl<TO2となる。」(第3頁左上欄11行〜右上欄6行)

「冷却ファンモーターを定常回転数以下の低回転数制御が可能となり、オーブン時、加熱室の温度を高くすることができ、調理性能の向上がはかれる。」(同頁右上欄16〜19行)

上記引用箇所及び図面の記載からみて、本件発明に照らして表現すると、当該刊行物1には、

「加熱室内に高周波を放射する高周波発振器と、前記加熱室内を所定の加熱態様で加熱する加熱ヒーターと、前記高周波発振器が配設される機械室に前記高周波発振器或いは前記加熱ヒーターの駆動状態で送風する冷却ファンと、前記加熱ヒーターの駆動時は冷却ファンモーターの回転数を前記高周波発振器の駆動時の回転数よりも少なくして送風する制御回路とを備えた高周波加熱装置。」が記載されているといえる。

3.対比

(1)本件発明と上記刊行物1記載のものとを対比すると、上記刊行物1記載の「加熱室」、「高周波発振器」、「加熱ヒーター」、「機械室」、「冷却ファン」、「制御回路」、「高周波加熱装置」は、本件発明の「加熱箱」、「マグネトロン」、「加熱手段」、「機械室」、「冷却ファン」、「送風制御手段」、「電子レンジ」にそれぞれ相当すると共に、上記刊行物1記載の「冷却ファンモーターの回転数を少なく」するは、本件発明の「冷却ファンの送風量を少なく」すると同義である。

(2)してみれば、両者は、「加熱箱内に高周波を放射するマグネトロンと、前記加熱箱内を所定の加熱態様で加熱する加熱手段と、前記マグネトロンが配設される機械室に前記マグネトロン或いは前記加熱手段の駆動状態で送風する冷却ファンと、前記加熱手段の駆動時は前記冷却ファンの送風量を前記マグネトロンの駆動時の送風量よりも少なくして送風する送風制御手段とを備えた電子レンジ。」において一致し、次の点でのみ一応相違するように見える。

一応相違する点:本件が、加熱箱の「壁面に孔部」を有し、「前記孔部を介して」加熱箱内と機械室を連通するのに対し、甲第1号証には、かかる「孔部」が明瞭に記載されない点。

4.判断

そこで、両者において一応相違するように見える上記の点について以下に検討する。

(1)上記刊行物1頒布時の技術水準
加熱手段を別途有する電子レンジ技術分野において、送風口、ダクト、導風管、或いは、吸気口と言った、いわば本件発明の「孔部」に相当する構成を有し、かかる「孔部」を介して加熱箱内と機械室とを連通するものは、先の取消理由通知において、周知例として引用した特開平4-55621号公報や特開昭55-160237号公報の記載のものに加え、例えば、実公昭57-19836号公報の「送風機4の風は矢印で示すようにマグネトロン3を冷却した後、導風管7を通って加熱室1内に入り、排気管8を通り排気孔9より外へ放出し、加熱室1内の換気を行っている」(第1頁第2欄4〜7行)や特開昭63-133489号公報の「冷却ファン8による冷却風は高周波発振器内の冷却路をへて加熱室の吸気口10より加熱室内に導入され、加熱室内の換気を行っている」(第2頁右下欄16〜18行)から明らかなように、周知の技術手段であると共に、これらの記載から、当該「孔部」に相当する構成は、上記刊行物1が頒布された当時、電子レンジ技術分野においては、加熱箱内の換気や給排気のために、通常用いられる一般的な技術手段であったといえる。

(2)一方、上記刊行物1記載のものも、「第9図に冷却ファンモーターの回転数、縦軸に加熱室温度と機械室温度を示す。冷却ファンモーターの回転数が増すに従い各々の温度は下がる」(第2頁左上欄13〜15行)や「オーブン時、冷却ファンモーターを定常回転数以下で回転させ、加熱室の温度を上げることができる」(同頁左下欄7〜9行)の記載、及び、第5図並びに第9図の加熱箱内温度と機械室内温度と冷却ファン回転数との相関関係から、「断熱構造」(同欄16行)であるはずの加熱箱と機械室との間に何らかの熱的な影響を受けざるを得ない環境にあることが示唆され、更には、冷却ファンの回転数に応じ、かかる冷却ファンが載置される機械室ばかりか、加熱箱内の温度も低下することが示されている。

(3)こうした上記刊行物1の開示事項を踏まえ、前掲(1)の当該刊行物1が頒布された当時の技術水準を勘案すれば、当該刊行物1記載のものの、その前提となる電子レンジの構成は、本件発明と同様、「孔部」を加熱箱の壁面に有し、かかる孔部を介して加熱箱内と機械室を連通する周知かつ一般的な電子レンジを前提におき、かかる「孔部」から加熱箱に侵入する冷気による温度低下並びにこれによる被調理物への調理性能の低下を課題としているものと解するが適当である。

(4)以上のように、上記刊行物1が頒布された当時の電子レンジの周知かつ一般的な技術手段を参酌しつつ、両者において一応相違するように見える上記の点について検討するに、かかる点に実質的な差異は認められず、よって、本件発明と上記刊行物1記載のものとは実質的に同一のものであると認める。

5.むすび

以上のとおり、本件発明は、上記刊行物1に記載された発明であるから、本件発明についての特許は、特許法29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明の特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論の通り決定する。
 
異議決定日 2001-09-14 
出願番号 特願平6-88629
審決分類 P 1 652・ 113- Z (F24C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 関口 哲生  
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 長浜 義憲
澤井 智毅
登録日 2000-06-23 
登録番号 特許第3081753号(P3081753)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 電子レンジ  
代理人 佐々木 晴康  
代理人 小池 隆彌  
代理人 外川 英明  
代理人 木下 雅晴  

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