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審決分類 審判 全部無効 その他 無効としない B21D
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B21D
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 無効としない B21D
管理番号 1052406
審判番号 無効2001-35097  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1982-10-12 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-03-06 
確定日 2002-01-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第1583708号発明「電動式パイプ曲げ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願(特願昭57-42496号) 昭和57年03月16日
(パリ条約による優先権主張1981年3月16日、イタリア国、198 1年11月12日、イタリア国、及び1982年2月8日、イタリア国)
特許出願公開(特開昭57-165123号) 昭和57年10月12日
手続補正書 昭和60年10月09日
手続補正書 昭和61年05月13日
手続補正書 平成01年06月20日
特許出願公告(特公平1-52091号) 平成01年11月07日
特許権設定登録(1583708号) 平成02年10月22日
特許無効審判の請求(審判平10-35268号)
平成10年06月11日
答弁書・訂正請求(その後取り下げ) 平成11年01月29日
口頭審理 平成11年06月17日
答弁書・訂正請求 平成11年09月13日
弁駁書 平成12年03月06日
口頭審理 平成12年03月16日
審決 平成12年05月09日
(請求不成立、平成12年6月9日 確定)
無効審判請求(無効2000-35572号) 平成12年10月17日
口頭審理 平成13年05月11日
意見書・訂正請求 平成13年06月07日
審決 平成13年08月07日
(請求不成立、東京高等裁判所に出訴 平成13年9月6日(H13(行 ケ)400))
無効審判請求(無効2001-35097号) 平成13年07月10日
答弁書 平成13年07月10日
弁駁書 平成13年10月12日
第2 請求人の主張
1 理由1:平成1年6月20日付け手続補正書による明細書の補正(以下「補正後明細書」という。甲第2号証)は、本件特許の出願当初の明細書又は図面(以下「当初明細書」という。甲第1号証)に記載された事項の範囲内の補正と認められないから、明細書の要旨を変更するものであり、具体的には、
(1)当初明細書には「副マトリックス」、「第1の部分」、「溝の直線部分」、「短い直線部(6)」という記載があるが、補正後明細書にいう「ガイド部」という記載はない。
(2)補正後明細書の「送出側ガイド部の溝底が送出側端に向かって漸次パイプに近づくように形成されている」(特許請求の範囲の請求項4)という記載は、当初明細書にない。
(3)補正後明細書の「逃がし部」の特徴についての記載、即ち「それらの中間においてパイプに対し接触することなく一定のクリアランスを有して対向する」という記載は、当初明細書にはないから、本件特許の出願日は、平成5年改正特許法前の特許法(以下、旧特許法という。)第40条の規定に基づき、前記補正について手続補正書を提出した平成1年6月20日に繰り下がることとなり、本件特許に係る特開昭57-165123号公報(甲第3号証)に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
2 理由2:平成11年09月13日付け訂正請求(甲第4号証の1)は、願書に添付した明細書及び図面に記載された範囲内のものではないから、本件特許は、平成5年改正特許法の特許法第134条第2項ただし書きの規定に違反しているので、特許法第123条第1項第7号の規定により、本件特許は無効とすべきものである。
第3 当審の判断
1 理由1について
(1)について、「副マトリックス」を「ベンディングダイ118,218」と補正したことは、当初明細書に記載された第1実施例を削除して、第2実施例及び第3実施例を、それぞれ第2実施例及び第1実施例としたことに伴って前記「副マトリックス」の名称を単に変更したにすぎず、発明の構成に関する技術的事項に実質的な変更はない。
そして、当初明細書の副マトリックスについて、第2実施例では「被曲げパイプの取り出し側の第1の部分118aは短い直線であり、」(第25頁第8〜9行)と、「マトリックス113が回転を始めると、副マトリックス118とパイプtの接点は点cに留まるが、パイプtと反マトリックス118の点aとの接触は、溝の直線部分118aに沿って徐々に進行する。従ってパイプの曲げが開始されると、自動的に整列が行なわれ、その結果パイプの曲げ動作によりパイプの引張り応力が規則的に分散される。」(第26頁第9〜16行)と記載され、
また第3実施例では「第14図の縦方向には、パイプの曲げ開始側である上端218’からパイプの曲げ終了側である下端218”にわたる副マトリックス218の特殊形状面を示してある。・・・。第2の特殊形状部246は下端218’から形成され、被曲げパイプtの直径面と接触する縦面中央部の下端の半径はxであり、この半径はyより小さく、その様子は第14図において顕著に見られる。ここで重要なことは、縦面中央部の半径xが半径yより小さくしてあることである。これはパイプ曲げ操作時、つまりパイプtが反マトリックス218の特殊形状部246とマトリックス213の半円溝214の間に進められた場合、好ましい圧力効果がありその結果パイプtが連続的に塑性変形するためである。この様子は第16図の詳細断面図に示してある。」(第30頁第11行〜第31頁第11行)と記載されている。
そして、曲げ開始前の状態を示した第5図、第8図、及び曲げ開始後の状態を示した第7図、第10図を、それぞれ参照すると、副マトリックスの第2実施例における「(被曲げパイプの取り出し側の)第1の部分118a」(第25頁第8〜9行目)、「溝の直線部分118a」(第26頁第12行目)、及び「短い直線部118a」(第7頁第1行目;請求項6)、また同じく第3実施例における「第2の特殊形状部246」(第30頁第19〜20行目、第10頁第3行目;請求項8)が、パイプをガイドする機能を有することは明かであるので、これらの部分を「(送り出し側)ガイド部118a,246」と補正することは明細書の要旨を変更するものでない。
(2)について、当初明細書には、「この両位置aとcは曲げ操作のために送られるパイプの軸線と平行な線上にあり、一方中間位置bは若干凹状、」(第7頁第4〜6行;請求項6)と、「この副マトリックス218の下端218”から形成される第2の特殊形状部246とから成り、この特殊形状部246の半径がその下端から上端に向かってxからyへと拡がっている」(第10頁第2行〜10頁第5行;請求項8)と記載され、「被曲げパイプの取り出し側の第1の部分118aは短い直線であり、図中aないしbの間である。・・・。区間a-cにおいて、118a部分の傾斜が非常に小さいので、・・・、曲げ開始時における反マトリックス118とパイプtの接触は、副マトリックス118の対向点aおよびcのみで起る。つまり、中間点bはパイプtと接触しない。・・・。マトリックス113が回転を始めると、副マトリックス118とパイプtの接点は点cに留まるが、パイプtと反マトリックス118の点aとの接触は、溝の直線部分118aにそって徐々に進行する。」(第25頁第8行〜第26頁第13行)と、「第14図の縦方向には、パイプの曲げ開始側である上端218’からパイプの曲げ終了側である下端218”にわたる副マトリックス218の特殊形状面を示してある。・・・。第2の特殊形状部246は下端218’から形成され、被曲げパイプtの直径面と接触する縦面中央部の下端の半径はxであり、この半径はyより小さく、その様子は第14図において顕著に見られる。ここで重要なことは、縦面中央部の半径xが半径yより小さくしてあることである。」(第30頁第11行〜第31頁第5行)と記載され、また、第5図には、118aの部分が送出側端に向かって次第にパイプに近づくように形成されており、第14図には246の部分が送出端に向かって次第にパイプに近づくように形成されていることが示されている。
よって、補正後明細書に記載された「送出側ガイド部の溝底が送出側端に向かって漸次パイプに近づくように形成されている」(特許請求の範囲の請求項4)は、当初明細書に記載されていたものと認められる。
(3)について、当初明細書には、「この溝は、前記副マトリックスの出口側の位置aから中間位置bにかけて短い直線部118aと、前記副マトリックスの対向する入口側の位置cから前記中間位置bにかけて長い弓状部118bとを有し、この両位置aとcは曲げ操作のために送られるパイプの軸線と平行な線上にあり、一方中間位置bは若干凹状、すなわち、前記弓状部118bの半径は前記マトリックス113の半円溝114の半径よりも大きい」(第6頁第19行〜第7頁第8行;請求項6)と、「第2の部分118bは長い弓形であり、その半径はマトリックス113の曲げ半径よりも大きく、図においてはbないしc間である。区間a-cにおいて、118a部分の傾斜が非常に小さいので、パイプtがマトリックス113と副マトリックス118の間に設置された場合、曲げ開始時における反マトリックス118とパイプtの接触は、副マトリックス118の対向点aおよびcのみで起こる。つまり、中間点bはパイプtと接触しない。」(第25頁第10〜19行)と記載され、また、曲げ開始前の状態を示した第5図、第8図、そして、曲げ開始後の状態を示した第7図、第10図を、それぞれ参照すると、当初明細書の「第2の部分」、及び「長い弓状部」が、パイプに対し接触することなく一定のクリアランスを有して対向する逃がす機能を有することは明らかであるので、前記「第2の部分」、及び「長い弓状部」を、「逃がし部」と補正し、その特徴について「パイプに対し接触することなく一定のクリアランスを有して対向する」と機能的に限定することは、当初明細書に記載がないとはいえない。
以上のことより、理由1については、いずれも当初明細書に記載されていたもの又は当初明細書から自明なものと認められ、前記補正は明細書の要旨を変更するものでない。
したがって、本件特許の出願日は実際の出願日である昭和57年03月16日(パリ条約による優先権主張1981年3月16日、イタリア国、1981年11月12日、イタリア国、及び1982年2月8日、イタリア国)と認められる。そうすると昭和57年10月12日に発行された甲第3号証は本件特許の出願前に発行された刊行物ということはできない。
2 理由2については、
訂正請求は、平成11年9月13日付け訂正請求書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書の通りに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、特許明細書の特許請求の範囲第1項において、「ベンディングダイ118,218」について「前記ベンディングダイ(118,218)のガイド溝(50,260)が、パイプの送り方向に沿って延びており、かつそのガイド溝が、パイプ送入側の端部に形成された送入側ガイド部(C,245)と、パイプ送出側の端部に形成された送出側ガイド部(118a,246)と、それらの中間においてパイプに対し接触することなく一定のクリアランスを有して対向する逃がし部(118b,248)とを有し、かつその送出側ガイド部の溝底が送出側端に向って漸次パイプに近づくように形成されていている」ことを付加するものであるが、当該訂正は、同第4項の「ベンディングダイ」に関する記載を付加することにより「ベンディングダイ」を限定するものであり、新規事項の追加に該当しない。
ところで、請求人は、平成5年法律第26号による改正後の特許法第134条第2項ただし書き(本件特許の訂正の要件については平成6年法律第116号による改正前の特許法が適用される)の新規事項追加禁止の要件を充たしているか否かは、願書に最初に添付した明細書及び図面を基準として判断すべき旨主張しているので、この点について検討する。
上記1で判断したとおり、本件特許に係る出願の平成1年6月20日付け手続補正書による明細書の補正は、明細書の要旨を変更するものでないから、平成11年9月13日付けの訂正請求の新規事項の基準明細書を願書に最初に添付した明細書及び図面とすべき理由はない。
さらに、特許法第134状第2項ただし書きの解釈について言及すると、特許法第134条第2項ただし書きは「その訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならず、」と規定しているから、当該ただし書きのいわゆる新規事項判断の基準となる明細書及び図面は、願書に添付した明細書及び図面であって、他に文言上願書に最初に添付した明細書及び図面を基準とすべき条項はない。
そして、平成5年法律第26号による改正前の特許法は、第40条に、出願公告前にされた補正が要旨を変更するものであることが特許権設定登録後に発見されたときは、出願日を、その補正がされた日に繰り下げると規定し、これによって、先願主義との調和を図っているものと認められる。そうすると特許法は、特許後に出願公告前にされた補正が要旨変更するものと発見された場合には、その補正がされた日に出願日を繰り下げることによって登録後における第三者の利益保護を図っているものであって、新規事項の判断の基準となる明細書及び図面を出願当初の明細書及び図面としなければ一方的に第三者の利益保護を欠くというものでもない。
一方、出願日を要旨を変更する補正の日まで繰り下げる同法第40条の規定は、その規定を適用される特許に対し、同法第53条第4項の規定による新たな特許出願をした場合と同様の効果を生じさせるものであるが、出願公告前にされた補正が要旨を変更するものであることが特許権設定登録後に発見された特許に対して、出願日を繰り下げたうえに、更に新規事項の判断の基準となる明細書及び図面を出願当初の明細書及び図面とすると、特許権者は、旧特許法第53条第4項の規定による補正却下による新出願と比べ著しく不利益となる。
以上の点を考慮すると、請求人の主張するように新規事項判断の基準となる明細書及び図面を、あえて、明文の規定もない出願当初の明細書及び図面と解することは合理的ではない。(なお、東京高判昭56年(行ケ)308号(昭和59年6月28日)を参照されたい。)
なお、請求人の参照する東京高判平7年(行ケ)38号(平成8年12月24日)は、平成5年法律第26号による改正前の特許法第126条第3項の独立特許要件の判断における出願日の認定の際に、訂正明細書が出願当初の明細書からみて要旨変更か否かを判示しているのみであって、特許法第126条各項に規定するすべての要件を判断する際の基準明細書を判示するものでない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-11-13 
結審通知日 2001-11-16 
審決日 2001-11-28 
出願番号 特願昭57-42496
審決分類 P 1 112・ 832- Y (B21D)
P 1 112・ 121- Y (B21D)
P 1 112・ 5- Y (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 一正  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 鈴木 孝幸
宮崎 侑久
登録日 1990-10-22 
登録番号 特許第1583708号(P1583708)
発明の名称 電動式パイプ曲げ装置  
復代理人 牛田 利治  
代理人 岡田 全啓  
代理人 菅原 弘志  
代理人 徳永 信一  

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