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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) B32B
管理番号 1052419
審判番号 審判1999-35296  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-07-17 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-06-14 
確定日 2002-01-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第2128653号発明「断熱パネルの製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2128653号の請求項1〜2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2128653号に係る発明の出願の設定登録に至る経緯は、次のとおりである。
特許出願(特願平1-1682号)(昭和64年1月7日)
出願公告(特公平6-6298号公報)(平成6年1月26日)
特許異議申立2件
特許異議の決定 平成8年12月24日付
特許査定 平成8年12月24日付
設定登録 平成9年4月25日(特許第2128653号)
そして、請求人ダイト工業株式会社より無効審判が請求され、訂正請求を経て、審理終結通知に至る経緯は、次のとおりである。
第1次無効審判(別件審判)請求書 平成10年3月11日(審判平10-35102号)
別件審判における訂正請求書 平成10年7月6日
別件審判における答弁書 平成10年7月6日
別件審判に対する審決 平成11年1月21日
別件審判の審決取消訴訟(平成11年(行ケ)第86号)
第2次無効審判(本件審判)請求書 平成11年6月14日(審判平11-35296号)
本件審判における訂正請求書 平成11年9月27日
本件審判における答弁書 平成11年9月27日
審決取消し判決 平成12年10月3日(第1次無効審判(別件審判)の審決取消)
上申書(被請求人側)(本件審判) 平成12年10月23日
訂正拒絶理由通知(本件審判) 平成13年3月21日
通知書(併合審理通知)(本件審判) 平成12年12月19日
意見書(被請求人側)(本件審判) 平成13年2月20日
通知書(併合分離通知)(本件審判) 平成13年3月8日
審尋(請求人宛)(本件審判) 平成13年3月8日
回答書(請求人側)(本件審判) 平成13年5月21日
書面審理通知(本件審判) 平成13年10月25日
上申書(被請求人側)(本件審判) 平成13年11月6日
審理終結通知 平成13年11月9日
II.訂正の可否に対する判断
1.訂正請求の内容
平成11年9月27日付訂正請求書による訂正の内容は、(i)願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載の「(1)上下で相対向する一対の金属板間に発泡性樹脂材料を注入して金属板を加熱させて発泡性樹脂材料を発泡させることにより金属板間に発泡樹脂層を充填させて断熱板材を形成し、この断熱板材を所定寸法に切断する断熱パネルの製造方法において、上下の金属板の材質を異ならせると共に上下の金属板の加熱温度を異ならせることを特徴とする断熱パネルの製造方法。
(2)上下の金属板の加熱温度差を20℃以下にすることを特徴とする請求項1記載の断熱パネルの製造方法。」を、
「(1)上下で相対向する一対の金属板間に発泡性樹脂材料を注入して金属板を加熱させて発泡性樹脂材料を発泡させることにより金属板間に発泡樹脂層を充填させて断熱板材を形成し、この断熱板材を所定寸法に切断する断熱パネルの製造方法において、上下の金属板の材質を異ならせると共に上下の金属板の加熱温度を線膨張率の小さい金属板がより高温となるように異ならせ、かつ上下の金属板の加熱温度差を20℃以下とすることを特徴とする断熱パネルの製造方法。」
と訂正すること、(ii)a.願書に添付した明細書の3頁19行「異ならせ」の記載を「線膨張率の小さい金属板がより高温となるように異ならせ、かつ上下の金属板1、2の加熱温度差を20℃以下とす」と訂正する、b.同書9頁8行の「加熱温度を」の次に、「線膨張率の小さい金属板がより高温となるように」を挿入する、c.同書9頁11行の「ものである。」の次に、「また上下の金属板の加熱温度差を20℃以下にするため、発泡性樹脂材料の発泡に悪影響が及びパネルの物性が低下することを防ぐことができるものである。」を挿入する訂正を行うことである。
2.訂正拒絶理由の概要
平成12年12月12日付の訂正拒絶理由の概要は、訂正後の特許請求の範囲に記載された発明(以下、「訂正後の本件発明」という。)は、刊行物1、刊行物2及び刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成11年9月27日付の訂正請求書による訂正は、特許法等の一部を改正する平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法134条第5項で準用する特許法126条3項の規定に適合しないというものである。(なお、本件は、昭和64年1月7日の特許出願であるから、適用条文としては、正しくは、「特許法126条4項」ではなく、上記した通りである。)
3.引用刊行物とその記載
刊行物1 ”JOURNAL OF CELLULER PLASTICS” ,January,1965 p.101-120(訳文参照)
刊行物2 特公昭59-60号公報
刊行物3 特開昭62-63751号公報
刊行物1〜3には、次の記載がされている。
(1)刊行物1
(1)-1.「新規方法の基本は図20に図示されている。フォームミックス(配合物)は横送りミキシングヘッドにより下部面材の領域にわたって均一に分布され、移動する下部面材を横切って“扇状”のスプレーパターンを与える。施行されたフォームが膨張しゲル化したときであるがその表面が未だ“粘着性”である間に、適当な隙間をおいてセットされた上部コンベアの下をフォームは通過し、そのように形成したニップの所で上部面材が施される。ラミネートは次いで2つのコンベア間の一定のギャップの間を通過し、その間に加熱によりキュアが促進される。(コンベアから)出現時、ラミネートは適当な部分に切断し・・・面材はたとえば紙、金属フオイル、織物、屋根材フェルト、プラスチックの巻きロールから適用されるのが最も好都合である。しかしながら石膏ボードやアスベストセメントシートのような剛性材もまた下部面材として使用できる。同様に若干可撓性を有する半剛性材料例えばハードボード、厚手のプラスチックや金属シート、合板、樹脂積層ガラス繊維も上部又は下部面材のいずれかとして使用できる。・・・ラミネート表面は同じ材料から或いは望ましければ異なる組成からなっていてもよい。」(第113頁右欄第28〜59行、訳文第1頁下から第21〜5行)
(1)-2.「ベルト温度は面材の種々の厚みと種類を考慮に入れて変えることができる。この設備は、フォームと面材間の優れた結合力を達成し、特に相異なる材料をラミネートの対向面に使用するとき平坦なパネルを得る上で特に価値がある。」(第115頁右欄第40〜46行、訳文第4頁第16〜18行)
(1)-3.「関連プラテン温度を変える能力は異なる面材を使用するときに起こるかもしれないパネルの“弓なり化”に和らげることも可能にする、即ち温度差は膨張係数の差を相殺するのに使用できる。」(第117頁左欄第40行〜右欄第3行、訳文第6頁第27〜29行)
(1)-4.第114頁の図20に、加熱された熱板(加熱されたプラテン)がラミネートした下部面材用ベルトと上部面材用ベルトにそれぞれ配置されていること。
以上の記載をまとめると、刊行物1には、「上下で相対向する一対の面材(この内いずれか一方は金属シート)間に発泡性樹脂材料(フォームミックス)を注入して面材を加熱させて発泡性樹脂材料を発泡させることにより面材間に発泡樹脂層を充填させて断熱板材を形成し、この断熱板材を所定寸法に切断する断熱パネルの製造方法において、上下の面材の材質を異ならせると共に、異なる面材を使用するときに起こるかもしれない弓なり化(そり)を防止するため、膨張係数の差を相殺するのに、上下の面材の加熱温度を異ならせる断熱パネルの製造方法」が開示されている。
(2)刊行物2
(2)-1.「帯状金属板と裏材との間で発泡充填素材を発泡させ、次に上記発泡充填素材が発泡して形成された発泡充填材が介在して一体化された両側にスペーサーを有する帯状金属板と裏材とを切断する」(第1頁第2欄第12行〜第2欄第16行)
(2)-2.「帯状金属板は例えばカラー鉄板、トタン板、銅板、ステンレス板、アミニウム板の如き金属板をコイル巻きしたものを巻解いて使用する。」(第1頁第2欄第24〜27行)
(2)-3.「裏材6は、・・・・・・アルミニウム、銅、鋼の如き金属の薄板等の単体又はこれらの一又は二以上の貼合物」(第2頁第3欄第22〜27行)
(2)-4.上下で相対向する裏材6と帯状金属板1の間に発泡充填素材5を注入して裏材6と帯状金属板1をそれぞれヒーターJで加熱させて発泡充填素材5を発泡させることにより裏材6と帯状金属板1の間に発泡充填材7を充填させて断熱板材を形成し、この断熱板材を切断装置Kで所定寸法に切断して断熱パネルを製造すること(第1図及び第2頁第3欄下より2行〜第4欄23行)。
(2)-5.「帯状金属板1と裏材6との間に供給した発泡充填素材5を発泡させるには、コンベヤー部分全体を加熱してもよいが、帯状金属板1と裏材6に直接触れるベルトF,GをヒーターJで加熱すると効率のよい発泡を行なうことができる。」(第2頁第4欄第10〜15行)
(2)-6.「上記の工程によって形成されたものは無端状に長尺のものであるから、これを切断装置Kによって適当な長さに切断する。」(第2頁第4欄第15〜17行)
(2)-7.「図面は実施の一例であり、第1図はこの発明方法に使用する装置の概略を示す説明図」(第3頁第6欄第4〜5行、第1図参照)
以上の記載をまとめると、刊行物2には、帯状金属板と裏材との間で発泡充填素材を加熱発泡させた、帯状金属板と裏材とが発泡充填材が介在して一体化したものを適当な長さに切断するパネルの製造方法において、帯状金属板を、カラー鉄板、トタン板、銅板、ステンレス板、アルミニウム板の如き金属板とし、また、裏材を、アルミニウム、銅、鋼の如き金属の薄板とすること、すなわち、パネルの上下に金属板(上下が異質の材質から成る場合も含む。)を配することが記載されていると認められる。
(3)刊行物3
(3)-1.「上下一対の長尺の金属板7,8を連続的に供給しつつ下側の金属板8に下方へ突出する突脈1を成形し、次いで両金属板7,8を連続的に送りつつこの下側の突脈1を形成した金属板8と上側の平坦な金属板7との間にプラスチック発泡材料を注入して発泡充填させ、こののちこの金属板7,8間に発泡プラスチック4が充填されて形成される長尺サンドイッチ体9を連続的に送りつつ上側の平坦な金属板7の上面に長尺の吸音シート6を接着剤によって貼り付け、さらにこの吸音シート6の貼り付けられた長尺サンドイッチ体9を所定寸法で切断する」(第2頁左下欄第1〜13行)
(3)-2.「金属板7,8としては、着色亜鉛鉄板、ガラス繊維入り着色亜鉛鉄板、ポリ塩化ビニル鋼板、アクリルフィルム積層鋼板、ガラス繊維入りフッ素樹脂塗装鋼板、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、着色カラーアルミニウム板、チタン板など任意のものを用いることができる。これらの中でも金属板8は屋外側に面するように施工されることになるので、耐食性や耐候性に優れたアクリルフィルム積層鋼板、ガラス繊維入り着色亜鉛鉄板、ガラス繊維入りフッ素樹脂塗装鋼板、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板を用いるようにし、また室内側に面することになる金属板7には着色亜鉛鉄板などを用いるようにするのがよい。」(第2頁右下欄第8行〜第3頁左上欄第1行)
4.対比・判断
(訂正後の本件発明と刊行物1に記載された発明との対比・検討)
訂正後の本件発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、後者の「膨張係数の差を相殺するのに、上下の面材の加熱温度を異ならせる」は、前者の「加熱温度を線膨張率の小さい金属板がより高温となるように異ならせる」に相当するから、「上下で相対向する一対の面材間に発泡性樹脂材料(フォームミックス)を注入して面材を加熱させて発泡性樹脂材料を発泡させることにより面材間に発泡樹脂層を充填させてパネル材を形成し、このパネル材を所定寸法に切断するパネルの製造方法において、上下の面材の材質を異ならせると共に、異なる面材を使用するときに起こるかもしれない面材の弓なり化(そり)を防止するため、膨張係数の差を相殺するのに、上下の面材の加熱温度を異ならせるパネルの製造方法」で一致するが、前者は、(1)上下の材質の異なる面材が、共に金属板あること(相違点1)及び(2)上下の面材の加熱温度差を20℃以下とすること(相違点2)を要件とするのに対して、後者にはその点の明記はない点で相違している。
そこで、上記相違点1について検討すると、刊行物2及び3には、パネルにおける上下の面材共、金属板であって、その材質を異なった組み合わせとすること(刊行物2の記載事項(2)-2、(2)-3、刊行物3の記載事項(3)-2参照)が記載されているから、刊行物1の上下の材質の異なる面材に、共に金属板を採用する程度のことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
次に、相違点2について検討すると、上下の面材が異なる材質から成る場合に、起こるかもしれないパネルの弓なり化を緩和する手法として、材質間の膨張係数の差すなわち、その線膨張率の差を加熱温度差によって、相殺することが刊行物1に記載(刊行物1の記載事項(1)-3参照)されているので、刊行物2、刊行物3に記載の上下の面材が異なった材質の金属板の組み合わせから成るパネルの製造において、予測されるパネルの弓なり化を緩和するために、刊行物1に記載されている手法によることは、当業者にとって容易に想到できることであって、その際に、発泡性樹脂材料の発泡の適正、及び金属板の材質間の線膨張率(熱膨張係数)の差を考慮して、適宜の温度差範囲を決定することは、当業者が通常行う設計的な事項にすぎないから、加熱温度差を20℃以下とすることは、当業者が容易になし得た事項にすぎないと認められる。
したがって、訂正後の本件発明は刊行物1〜3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められる。
5.むすび
上記のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する平成6年法律第116号第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法134条第5項で準用する特許法126条3項の規定に適合しないので、本件訂正を認めることはできない。
III.請求人の主張
請求人は証拠方法として、甲第1〜6号証を提出して、
理由1-1 平成10年7月6日付訂正請求により訂正された特許請求の範囲の記載は、断熱パネルの反りを防止できる事項を発明の構成に欠くことができない事項として記載していないから、特許法第36条第4項の規定に違反している。
理由1-2 平成10年7月6日付訂正請求により訂正された明細書の発明の詳細な説明の項の記載に関して、加熱温度差が20℃以下ということだけでは、どのような「発泡の悪影響が防げるのか」、また、どのような「パネルの物性の低下が防げるのか」わからないから、明細書の記載が、当業者が容易に発明を実施できる程度にその構成及び効果が記載されておらず、特許法第36条第3項の規定に違反している。
理由1-3 上記した理由1-1及び理由1-2により、平成10年7月6日付訂正請求書により訂正された明細書の記載が特許法第36条第3項及び4項の規定に違反する以上、訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2の記載及び発明の詳細な説明の項の記載も、同様の理由により、特許法第36条第3項及び4項の規定に違反している。
理由2-1 平成10年7月6日付訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正された請求項に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反している。
理由2-2 訂正された請求項に係る発明は、甲1、2、3、4及び5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できた発明にすぎないものである以上、訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明も、甲1、2、3、4及び5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できた発明にすぎないものであり、特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである、と主張している。
証拠方法:
甲第1号証 ”JOURNAL OF CELLULER PLASTICS” ,January,1965 p.101-120
甲第2号証 特公昭59-60号公報
甲第3号証 特開昭62-63751号公報
甲第4号証 特開昭61-193850号公報
甲第5号証 ドイツ新聞 プラスチック・ゴム新聞1988.7.7,第371号
甲第6号証 国語大辞典言泉 1836頁、2112頁 昭和61年12月20日 株式会社小学館
IV.被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張する理由及び証拠方法のいずれによっても本件特許を無効にすることができない旨答弁する。
V.当審の判断
1.本件発明
「II.訂正の可否に対する判断」で述べたように、平成11年9月27日付訂正請求による訂正は認められないので、本件発明は、出願公告された明細書の特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものと認める。(なお、別件審判でされた、平成10年7月6日付訂正請求についても、訂正は認められないとされた。)
「(1)上下で相対向する一対の金属板間に発泡性樹脂材料を注入して金属板を加熱させて発泡性樹脂材料を発泡させることにより金属板間に発泡樹脂層を充填させて断熱板材を形成し、この断熱板材を所定寸法に切断する断熱パネルの製造方法において、上下の金属板の材質を異ならせると共に上下の金属板の加熱温度を異ならせることを特徴とする断熱パネルの製造方法。
(2)上下の金属板の加熱温度差を20℃以下にすることを特徴とする請求項1記載の断熱パネルの製造方法。」
2.請求人の主張する無効理由1-1、無効理由1-2及び無効理由2-1について
請求人の主張は、平成10年7月6日付訂正請求による訂正が認められたことを前提としているが、その訂正請求による訂正は確定しておらず、別件審判(平成10年審判35102号)において、該訂正は認められないとされたので、その前提を欠いている以上、請求人の主張する、無効理由1-1、無効理由1-2及び無効理由2-1は、検討を要しない。
3.請求人の主張する無効理由1-3について
特許請求の範囲の記載に関して、断熱パネルの反り(弓なり化)を増大させる場合も含まれるからといって、断熱パネルの製造時の反り(弓なり化)防止の点を構成要件として、規定しなけばならないというようなものではないから、請求人の主張は採用することができない。
次に、請求人は、「20℃以下」という記載では、下限の加熱温度差が0℃付近のほとんど差がない加熱温度差も含まれ、断熱パネルの反りを軽減できる下限の加熱温度差が全く不明であると主張するが、加熱温度差を設けることが前提とされ、その温度差を「20℃以下」と記載している以上、当業者の技術常識からみて、その温度差の範囲の選定に困難性はないから、明細書が、発明を当業者が容易に実施できる程度に記載されていないとすることはできない。また、温度差が「20℃以下」の数値限定に関して、請求人の主張するような詳細な技術的意義(どのような「発泡の悪影響が防げるのか」、また、どのような「パネルの物性の低下が防げるのか」)の記載が常に求めるられるものでもないから、温度差が「20℃以下」の記載に不備があるとはいえない。
4.請求人の主張する無効理由2-2について
まず、「II.訂正請求の可否に対する判断」で検討した訂正発明において要件「上下の金属板の加熱温度差を20℃以下とすること」とされていた事項を、同様に要件としている、本件請求項2に係る発明について検討する。
本件請求項2に係る発明と甲第1号証(訂正拒絶理由通知の刊行物1に該当)に記載された発明を対比すると、上記「II.訂正の可否に対する判断」「4.対比・判断」で述べたと同様に、「上下で相対向する一対の面材間に発泡性樹脂材料(フォームミックス)を注入して面材を加熱させて発泡性樹脂材料を発泡させることにより面材間に発泡樹脂層を充填させてパネル材を形成し、このパネル材を所定寸法に切断するパネルの製造方法において、上下の面材の材質を異ならせると共に、上下の面材の加熱温度を異ならせるパネルの製造方法」で一致するが、前者は、(1)上下の材質の異なる面材が、共に金属板であること(相違点1)及び(2)上下の面材の加熱温度差を20℃以下とすること(相違点2)を要件とするのに対して、後者にはその点の明記はない点で相違している。
そして、「II.訂正の可否に対する判断」「4.対比・判断」において述べたように、上記の相違点1及び2は、甲第2号証(訂正拒絶理由通知の刊行物2に該当)及び甲第3号証(訂正拒絶理由通知の刊行物3に該当)の記載から、当業者が容易になし得た事項にすぎないと認められる。
したがって、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
次に、本件請求項1に係る発明について検討する。
本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明における「上下の金属板の加熱温度を異ならせる」の規定における、その加熱温度差を具体的に規定しているのであるから、本件請求項1に係る発明は、本件請求項2に係る発明で述べた理由と同様の理由により、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
なお、請求人は、回答書(平成13年5月21日付)において、添付書類として、特開昭48-104318号公報、実願昭55-147010号(実開昭57-71611号)明細書の写し、実願昭55-147011号(実開昭57-71610号)明細書の写し、実願昭58-66892号(実開昭59-171931号)明細書の写し、を新たに提出しているが、審判請求の理由との関係では、これらは実質的に新たな証拠に該当すると認められるので、特許法第131条第2項の規定により、本件審判においては、証拠として、採用することはできない。
VI.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1〜2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1〜2に係る特許は、同法第123条第1項の規定により、無効にすべきものとする。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-11-09 
結審通知日 2001-11-14 
審決日 2001-11-29 
出願番号 特願平1-1682
審決分類 P 1 112・ 121- ZB (B32B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三浦 均鴨野 研一  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 石井 淑久
喜納 稔
登録日 1997-04-25 
登録番号 特許第2128653号(P2128653)
発明の名称 断熱パネルの製造方法  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 鈴江 正二  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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