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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B62D
管理番号 1053139
異議申立番号 異議2000-74353  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-05 
確定日 2001-09-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3047888号「コンバインのキャビン」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3047888号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3047888号(以下、「本件特許」という。)は、平成1年2月3日に出願された特願平1-26109号(以下、「原出願」という。)を、平成10年5月21日に分割して新たな特許出願としたものとして、平成12年3月24日に設定登録されたものであるが、本件特許の請求項1の発明に関して、ヤンマー農機株式会社より特許異議の申立てがあったので、当審において、当該申立ての理由を検討の上、当審より平成13年3月15日付けで特許取消理由を通知したところ、その通知書で指定した期間内の平成13年5月23日に、特許異議意見書と共に訂正請求書が提出されたものである。

【2】訂正請求の可否
1.訂正の要旨
本件特許異議申立てに係る訂正請求における訂正の要旨は、次の1)〜14)のとおりである。
1)本件特許明細書の発明の名称の「コンバイン等のキャビン」を、「コンバインのキャビン」と訂正する。
2)本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「キャビン2に内装した操縦席1を、前端を通る垂線Sがクーラーユニット4に当るが空間部5の後端に当らない位置に配置してなるコンバイン等のキャビン」を、「キャビン2に内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置し、該操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビン」と訂正する。
3)本件特許明細書の【0001】中の「コンバインやトラクタ等のキャビン」を、「コンバインのキャビン」と訂正する。
4)本件特許明細書の【0002】中の「コンバインやトラクタ等の操縦席」を、「コンバインの操縦席」と訂正する。
5)本件特許明細書の【0004】中の「キャビン2に内装した操縦席1を、前端を通る垂線Sがクーラーユニット4に当るが空間部5の後端に当らない位置に配置してなるコンバイン等のキャビンとした」を、「キャビン2に内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置し、該操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビンとした」と訂正する。
6)本件特許明細書の【0006】中の「前端を通る垂線Sがクーラーユニット4に当るが空間部5の後端に当らない位置に配置しているので、運転者が斜めの立ち姿勢になったときに、運転者の頭部付近に空間部5が位置することができるので、運転者の動きが楽になる」を、「前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置しているので、運転者が斜めの立ち姿勢になったときに、運転者の頭部付近に空間部5が位置することができるので、運転者の動きが楽になる。
また、操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができる。」と訂正する。
7)本件特許明細書の【0007】中の「この発明の一実施例をコンバインに利用したものを例に説明する。」を、「この発明の一実施例を説明する。」と訂正する。
8)本件特許明細書の【0008】中の「上動姿勢」を「上動位置」と訂正する。
9)本件特許明細書の【0009】中の「また、キャビン2内の前部及び左右一側には、左右走行装置6を前後進に変速走行させる変速レバーや刈取装置9及び脱穀装置8への伝動を入り切りするクラッチレバー等を排設した操縦台10を設けている。
キャビン2内の操縦席1上方の天井部3には、屋根11との間にこのキャビン2内を冷房するクーラユニット4が内装されており、この天井部下部の左右一側にはこのクーラユニット4の操作部やラジオ等を設ける計器ユニット12を設けている。」を、「また、キャビン2内の前部及び左右一側には、左右走行装置6を前後進に変速走行させる変速レバーや刈取装置9及び脱穀装置8への伝動を入切りするクラッチレバー等を配設した操縦台10を設けている。
キャビン2内の操縦席1上方の天井部3には、屋根11との間にこのキャビン2内を冷房するクーラーユニット4が内装されており、この天井部3下部の左右一側には該クーラーユニット4の操作部やラジオ等を設ける計器ユニット12を設けている。」と訂正する。
10)本件特許明細書の【0010】中の「この空間部5は、後端が前記操縦席1の前端を通る垂線Sよりも前方に位置し、操縦者が立ち姿勢となったときの頭部が位置する所であって、内側に緩衝材13を設けている。
操縦者が立ち姿勢になると、刈取装置9の先端の分草杆14の先端部が見通せるような関係位置となっている。」を、「この空間部5は、操縦者が立ち姿勢となったときの頭部が位置する所であって、内側に緩衝材13を設けている。
操縦者が立ち姿勢になると、刈取装置9先端の分草杆14の先端部が見通せるような関係位置となっている。」と訂正する。
11)本件特許明細書の【0011】中の「引き起こし状態をみるために立ち姿勢となるが、操縦者は、頭部が空間部5に位置するように前屈みの姿勢で立ち上がることができる」を、「引起状態をみるために立ち姿勢となるが、操縦者は、頭部が空間部5に位置するように前屈みの姿勢で立上ることができる」と訂正する。
12)本件特許明細書の【0012】中の「操縦者が立ち姿勢になると、操縦席1が上動するから、この操縦席1にもたれて前方下方の分草杆14の先端部の穀稈を見ながら刈取作業を行うことができる」を、「操縦者が立ち姿勢になると操縦席1が上動するから、この操縦席1にもたれて前方下方の分草杆14先端部の穀稈を見ながら刈取作業を行うことができる」と訂正する。
13)本件特許明細書の【0013】中の「前端を通る垂線Sがクーラーユニット4に当るが空間部5の後端に当らない位置に配置しているので」を、「前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置しているので」と訂正する。
14)本件特許明細書の【図面の簡単な説明】中の「4 クラーユニット、5 空間部、11 屋根、S 垂線」を、「4 クーラーユニット、5 空間部、14 分草杆」と訂正する。

2.訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否
(1)訂正事項1)について
上記訂正事項1)は、訂正事項2)の特許請求の範囲の訂正によって生じる発明の名称と特許請求の範囲の齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2)について
上記訂正事項2)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「操縦席1の前端を通る垂線Sよりも前方に位置してなるコンバイン等のキャビン」を、「操縦席1の前端よりも前方に位置させ、該操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビン」と訂正することによって、特許請求の範囲を減縮するもので、この訂正事項2)については、【0006】、【0010】〜【0013】及び第1図に記載されており、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3)〜14)について
上記訂正事項3)〜14)は、訂正事項2)の特許請求の範囲の訂正によって生じる発明の詳細な説明と特許請求の範囲の齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正請求の認容について
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件特許発明の認定
上記のとおり、平成13年5月23日付けの訂正請求は認められるので、本件特許の請求項1に係る発明は、平成13年5月23日付けの訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本件発明」という。)。
「キャビン2の天井部3の前後方向における後側部で且つ屋根との間にクーラーユニット4を内装し、該クーラーユニット4の前方における天井部3を上方へ凹ませて空間部5を形成し、キャビン2に内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置し、該操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビン。」

【4】分割の適否の判断と本件特許の出願日の認定
本件特許の明細書の特許請求の範囲の請求項1には、「クーラーユニット4の前方における天井部3を上方へ凹ませて空間部5を形成し」と記載されており、この記載によれば、空間部の位置は、クーラーユニット4の前方における天井部3の部分内であれば、天井部3の前側端部でなくてもよいものであり、またそれによりキャビン内の空間部を大きくできる明細書記載の効果をも奏するものであるが、前記原出願の願書に最初に添付した明細書及び図面には、空間部(5)がキャビン(2)内の天井部(3)の前側端部に設けられることしか記載されておらず、しかも、空間部の位置をこのような「前側端部」の位置に形成するのは、それにより、操縦者が立ち姿勢になったとき、刈取装置(9)先端の分草杆(14)の先端部が見通せる特別な関係位置とするという、特別な理由によるものであるから、空間部の位置を、クーラーユニット4の前方における天井部3の部分内の、天井部3の前側端部以外の部分とすることは、当業者が原出願の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて自明な事項ということはできない。したがって、本件特許の明細書の上記記載は、原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものでないから、本件特許は適法な分割出願ということができないので、出願日の遡及は認められない。
よって、本件特許の出願日は、願書が提出された平成10年5月23日であるものと認める。

【5】引用刊行物及びその記載事項
上記【4】で詳述したとおり、本件特許の出願日は平成10年5月23日と認められるところ、当審における平成13年3月15日付けで通知した取消の理由に引用した、本件特許の出願前である平成2年8月17日に日本国内において頒布された特開平2-208176号公報(以下「引用刊行物」という。)には、コンバイン等のキャビンに関して次の事項が記載されている。
a)「キャビン(2)内の操縦席(1)の上方の天井部(3)には、屋根(11)との間にこのキャビン(2)内を冷房するクーラユニット(4)が内装されており、・・・
天井部(3)の前側端部に、この天井部(3)を上方の屋根(11)側へ湾曲した空間部(5)を形成している。この空間部(5)は操縦者が立ち姿勢となったときの頭部が位置するところであって、内側に緩衝材(13)を設けている。
操縦者が立ち姿勢になると、刈取装置(9)先端の分草杆(14)の先端部が見通せるような関係位置となっている。」(第2頁右上欄1〜13行)
b)「穀桿が倒伏しているときは、分草杆(14)の先端によるこの倒伏穀桿の分草状態や引起状態をみるため操縦者は立ち姿勢となる。操縦者は頭部が空間部(5)に位置するように前屈みの姿勢で立上がることができる。」(第2頁右上欄18行〜左下欄2行)
c)第1図には、クーラーユニット(4)の前側端部における天井部(3)を上方へ凹ませて空間部(5)が形成され、キャビン(2)に内装した操縦席(1)を、前端がクーラーユニット(4)の下部位置で空間部(5)の後側となる位置に配置させていることが記載されている。

上記a)、b)の記載から、空間部(5)は、操縦席(1)から立ち姿勢となった操縦者が頭部を該空間部(5)に位置させて前方下方の分草杆(14)の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成されているものと認められる。
したがって、上記各記載から、上記引用刊行物には、
「キャビン(2)の天井部(3)の前後方向における後側部で且つ屋根との間にクーラーユニット(4)を内装し、該クーラーユニット(4)の前方における天井部(3)の前側端部を上方へ凹ませて空間部(5)を形成し、キャビン(2)に内装した操縦席(1)を、前端がクーラーユニット(4)の下部位置で空間部(5)の後側となる位置に配置し、該操縦席(1)から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部(5)に位置させて前方下方の分草杆(14)の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビン。」
の発明が、記載されているものと認める。

【6】本件発明と引用刊行物に記載された発明との対比
本件発明と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すれば、「コンバイン等」との概念には、当然「コンバイン」が含まれるから、本件発明は上記引用刊行物に記載された発明と、
「キャビンの天井部の前後方向における後側部で且つ屋根との間にクーラーユニットを内装し、該クーラーユニットの前方における天井部を上方へ凹ませて空間部を形成し、キャビンに内装した操縦席を、前端がクーラーユニットの下部位置で空間部の後側となる位置に配置し、該操縦席から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部に位置させて前方下方の分草杆の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビン。」
である点で一致し、以下の相違点で相違している。
<相違点>
本件発明の空間部の形成位置は、クーラーユニットの前方における天井部ならどこでも良いのに対して、上記引用刊行物に記載された発明の空間部の形成位置は、クーラーユニットの前方における天井部の前側端部である点。

【7】相違点の検討
農作業機において、天井部を広く活用するために、クーラーユニットの前方における前側端部以外の天井部を上方へ凹ませて空間部を形成することは、周知技術(例えば、特公昭60-35668号公報参照)であり、このように空間部を形成した場合においても、操縦席から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部に位置させて前方下方の分草杆の先端部の穀桿を見ながら刈取作業をおこなえるように構成を取り得ることは当業者が容易に想到しうるところである。してみれば、上記引用刊行物に記載された発明のコンバインに上記周知技術を適用して、クーラーユニットの前方における前側端部以外の天井部を上方へ凹ませて空間部を形成し、操縦席から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部に位置させて前方下方の分草杆の先端部の穀桿を見ながら刈取作業をおこなえるように構成することは、当業者が容易に行い得たものというべきである。
したがって、上記相違点は、上記引用刊行物に記載された発明に上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に行うことができたものであるから、本件発明は上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【8】むすび
以上のとおり、本件発明は上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コンバインのキャビン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 キャビン2の天井部3の前後方向における後側部で且つ屋根との間にクーラーユニット4を内装し、該クーラーユニット4の前方における天井部3を上方へ凹ませて空間部5を形成し、キャビン2に内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置し、該操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀稈を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビン。
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンバインのキャビンに係るものである。
【従来の技術】
コンバインの操縦席を内装するキャビン内には、冷暖房機等の空調機器やラジオ等が内装されて快適な環境としている。
【発明が解決しようとする課題】
このキャビン内から四方が見渡せるように構成されているから空調機器は天井部に内装されるが、車体の全高が高すぎると納屋や倉庫などに収納する場合に不便であり、また、コンバイン作業においては、操縦者が立ち姿勢となって前方の穀稈を見ながら操縦を行う場合、運転者の頭が当る等、立ち姿勢に支障を生じることがある。
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講じた。
すなわち、キャビン2の天井部3の前後方向における後側部で且つ屋根との間にクーラーユニット4を内装し、該クーラーユニット4の前方における天井部3を上方へ凹ませて空間部5を形成し、キャビンに内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置し、該操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀稈を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビンとした。
【発明の効果】
キャビン2の天井部3の後側部で且つ屋根との間にクーラーユニット4を内装しているものであるから、天井部3の前側部を活用出来る。そして、クーラーユニット4の前方におけるキャビン2の天井部3を上方へ凹ませて空間部5を形成しているものであるから、キャビン内の上部の空間部を大きくできるので、キャビン内での運転者の作業性を高め得る。
しかも、このキャビンの上部の空間部5は、屋根11を上方に回動しなくて確保できるので、キャビンの構成が簡単になる。
さらに、キャビン2に内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置しているので、運転者が斜めの立ち姿勢になったときに、運転者の頭部付近に空間部5が位置することができるので、運転者の動きが楽になる。
また、操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀稈を見ながら刈取作業を行うことができる。
【発明の実施の形態】
この発明の一実施例を説明する。
コンバインは左右走行装置6を有した車台7上に脱穀装置8を搭載し、前部に刈取装置9を設け、該車台7上の一側前部に操縦席1を内装するキャビン2等を設けた構成としている。
キャビン2の前部及び左右側部は内側から外部が見通せるようにガラスなどの透明体で覆われた構成としている。該キャビン2に内装の操縦席1は、ばねによって上方へ付勢されており、操縦者が腰掛ける腰掛姿勢の位置と、操縦者が立ち姿勢になると上動して操縦者がもたれる上動位置とに切換えられる構成としている。
また、キャビン2内の前部及び左右一側には、左右走行装置6を前後進に変速走行させる変速レバーや刈取装置9及び脱穀装置8への伝動を入切りするクラッチレバー等を配設した操縦台10を設けている。
キャビン2内の操縦席1上方の天井部3には、屋根11との間にこのキャビン2内を冷房するクーラーユニット4が内装されており、この天井部3下部の左右一側には該クーラーユニット4の操作部やラジオ等を設ける計器ユニット12を設けている。
天井部3の前側端部に、この天井部3を上方の屋根11側へ湾曲した空間部5を形成している。この空間部5は、操縦者が立ち姿勢となったときの頭部が位置する所であって、内側に緩衝材13を設けている。
操縦者が立ち姿勢になると、刈取装置9先端の分草杆14の先端部が見通せるような関係位置となっている。15は穀稈引き起し装置である。
操縦席1に操縦者が腰掛けて、操縦部10のクラッチレバーを操作して刈取装置9及び脱穀装置8へ動力伝動し、変速レバーを操作して走行装置6へ伝動すると穀稈の刈取脱穀作業が行われる。
穀稈が倒伏しているときは、分草杆13の先端によるこの倒伏穀稈の分草状態や引起状態をみるために立ち姿勢となるが、操縦者は、頭部が空間部5に位置するように前屈みの姿勢で立上ることができる。
そして、操縦者が立ち姿勢になると操縦席1が上動するから、この操縦席1にもたれて前方下方の分草杆14先端部の穀稈を見ながら刈取作業を行うことができる。
そして、キャビン2の天井部3の後側部にクーラーユニット4を内装しているものであるから、天井部3の前側部を活用出来る。そして、クーラーユニット4の前方におけるキャビン2の天井部3を上方へ凹ませて空間部5を形成しているものであるから、キャビン内の上部の空間部を大きくできるので、キャビン内での運転者の作業性を高め得る。しかも、このキャビンの上部の空間部5は、屋根11を上方に回動しなくて確保できるので、キャビンの構成が簡単になる。
さらに、キャビン2に内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置しているので、運転者が斜めの立ち姿勢になったときに、運転者の頭部付近に空間部5が位置することができるので、運転者の動きが楽になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
側面図。
【図2】
一部の正面図。
【符号の説明】
1 操縦席
2 キャビン
3 天井部
4 クーラーユニット
5 空間部
14 分草杆
 
訂正の要旨 本件特許異議申立てに係る訂正請求における訂正の要旨は、次の1)〜14)のとおりである。
1)本件特許明細書の発明の名称の「コンバイン等のキャビン」を、「コンバインのキャビン」と訂正する。
2)本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「キャビン2に内装した操縦席1を、前端を通る垂線Sがクーラーユニット4に当るが空間部5の後端に当らない位置に配置してなるコンバイン等のキャビン」を、「キャビン2に内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置し、該操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビン」と訂正する。
3)本件特許明細書の【0001】中の「コンバインやトラクタ等のキャビン」を、「コンバインのキャビン」と訂正する。
4)本件特許明細書の【0002】中の「コンバインやトラクタ等の操縦席」を、「コンバインの操縦席」と訂正する。
5)本件特許明細書の【0004】中の「キャビン2に内装した操縦席1を、前端を通る垂線Sがクーラーユニット4に当るが空間部5の後端に当らない位置に配置してなるコンバイン等のキャビンとした」を、「キャビン2に内装した操縦席1を、前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置し、該操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができるように構成してなるコンバインのキャビンとした」と訂正する。
6)本件特許明細書の【0006】中の「前端を通る垂線Sがクーラーユニット4に当るが空間部5の後端に当らない位置に配置しているので、運転者が斜めの立ち姿勢になったときに、運転者の頭部付近に空間部5が位置することができるので、運転者の動きが楽になる」を、「前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置しているので、運転者が斜めの立ち姿勢になったときに、運転者の頭部付近に空間部5が位置することができるので、運転者の動きが楽になる。
また、操縦席1から立ち姿勢となった操縦者が頭部を前記空間部5に位置させて前方下方の分草杆14の先端部の穀桿を見ながら刈取作業を行うことができる。」と訂正する。
7)本件特許明細書の【0007】中の「この発明の一実施例をコンバインに利用したものを例に説明する。」を、「この発明の一実施例を説明する。」と訂正する。
8)本件特許明細書の【0008】中の「上動姿勢」を「上動位置」と訂正する。
9)本件特許明細書の【0009】中の「また、キャビン2内の前部及び左右一側には、左右走行装置6を前後進に変速走行させる変速レバーや刈取装置9及び脱穀装置8への伝動を入り切りするクラッチレバ?等を排設した操縦台10を設けている。
キャビン2内の操縦席1上方の天井部3には、屋根11との間にこのキャビン2内を冷房するクーラユニット4が内装されており、この天井部下部の左右一側にはこのクーラユニット4の操作部やラジオ等を設ける計器ユニット12を設けている。」を、「また、キャビン2内の前部及び左右一側には、左右走行装置6を前後進に変速走行させる変速レバ?や刈取装置9及び脱穀装置8への伝動を入切りするクラッチレバー等を配設した操縦台10を設けている。
キャビン2内の操縦席1上方の天井部3には、屋根11との間にこのキャビン2内を冷房するクーラーユニット4が内装されており、この天井部3下部の左右一側には該クーラーユニット4の操作部やラジオ等を設ける計器ユニット12を設けている。」と訂正する。
10)本件特許明細書の【0010】中の「この空間部5は、後端が前記操縦席1の前端を通る垂線Sよりも前方に位置し、操縦者が立ち姿勢となったときの頭部が位置する所であって、内側に緩衝材13を設けている。
操縦者が立ち姿勢になると、刈取装置9の先端の分草杆14の先端部が見通せるような関係位置となっている。」を、「この空間部5は、操縦者が立ち姿勢となったときの頭部が位置する所であって、内側に緩衝材13を設けている。
操縦者が立ち姿勢になると、刈取装置9先端の分草杆14の先端部が見通せるような関係位置となっている。」と訂正する。
11)本件特許明細書の【0011】中の「引き起こし状態をみるために立ち姿勢となるが、操縦者は、頭部が空間部5に位置するように前屈みの姿勢で立ち上がることができる」を、「引起状態をみるために立ち姿勢となるが、操縦者は、頭部が空間部5に位置するように前屈みの姿勢で立上がることができる」と訂正する。
12)本件特許明細書の【0012】中の「操縦者が立ち姿勢になると、操縦席1が上動するから、この操縦席1にもたれて前方下方の分草杆14の先端部の穀稈を見ながら刈取作業を行うことができる」を、「操縦者が立ち姿勢になると操縦席1が上動するから、この操縦席1にもたれて前方下方の分草杆14先端部の穀稈を見ながら刈取作業を行うことができる」と訂正する。
13)本件特許明細書の【0013】中の「前端を通る垂線Sがクーラーユニット4に当るが空間部5の後端に当らない位置に配置しているので」を、「前端がクーラーユニット4の下部位置で空間部5の後側となる位置に配置しているので」と訂正する。
14)本件特許明細書の【図面の簡単な説明】中の「4 クラーユニット、5 空間部、11 屋根、S 垂線」を、「4 クーラーユニット、5 空間部、14 分草杆」と訂正する。
異議決定日 2001-07-25 
出願番号 特願平10-139379
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B62D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山内 康明  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 刈間 宏信
ぬで島 慎二
登録日 2000-03-24 
登録番号 特許第3047888号(P3047888)
権利者 井関農機株式会社
発明の名称 コンバインのキャビン  

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