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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G02F
管理番号 1053198
異議申立番号 異議2000-73550  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-08-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-20 
確定日 2001-11-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3022612号「色フィルタを有するデバイス及びその製造方法」の請求項1ないし5、7ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3022612号の請求項1ないし5、7ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3022612号の請求項1〜13に係る発明は、平成3年2月18日に特許出願(優先権主張オランダ国1990年2月19日)され、平成12年1月14日に設定登録がなされ、特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年5月28日に訂正請求がなされ、再度、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年9月25日に意見書が提出されたものである。
2.訂正の適否について
ア.訂正内容
訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載の「成形されるアクリル樹脂」を、「酸素が排除されつつUV照射により成形されるアクリル樹脂」と訂正する。
訂正事項b
本件特許明細書第2頁第4欄第22行の「成形されたアクリル樹脂」を、「酸素が排除されつつUV照射により成形されたアクリル樹脂」と訂正する。
訂正事項c
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項11の記載の「請求項9又は10に記載の方法において」を、「請求項10に記載の方法において」と訂正する。
訂正事項d
訂正前の請求項11において請求項9を引用する発明を請求項14に係る発明に訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項aについて
この訂正事項aは、本件特許明細書第3頁右欄第38行〜第49行段落【0027】の記載から直接的かつ一義的に導き出せる事項であり、特許請求の範囲の減縮に該当し、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に変更又は拡張するものでもない。
訂正事項bについて
この訂正事項bは、上記訂正事項aの訂正に伴って本件特許明細書の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に変更又は拡張するものでもない。
訂正事項c及びdについて
この訂正事項c及びdは、請求項1に係る発明の訂正に伴って、訂正前の請求項11に係る発明が引用していた訂正前の請求項9に係る発明を独立形式の請求項14に係る発明とするものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に変更又は拡張するものでもない。
ウ.むすび
以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する平成6年法改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立について
ア.本件発明
訂正後の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜14に係る発明(以下、本件発明1〜14という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】 少なくとも一部が頂部被覆で被覆された色フィルタが設けられる基板を有するデバイスにおいて、
前記頂部被覆は、酸素が排除されつつUV照射により成形されるアクリル樹脂を有し、その端部の少なくとも一方で厚みが漸減することを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項2】 請求項1に記載のデバイスにおいて、前記頂部被覆は、シーリングの内側エッジにより境界付けられる領域内にあることを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項3】 請求項1又は2に記載のデバイスにおいて、前記頂部被覆は、最大30°傾斜で厚みが減少することを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項4】 請求項3に記載のデバイスにおいて、その傾斜が5°より小さいことを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項5】 請求項1,2,3又は4に記載のデバイスにおいて、前記頂部被覆は、少なくとも4Hの鉛筆硬度を有することを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項6】 請求項1ないし5のうちいずれか1つに記載のデバイスにおいて、前記頂部被覆は、アクリル樹脂用の溶剤を使用せずに形成されることを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項7】 2つの支持板間に表示媒体を有する電気光学表示デバイスにおいて、当該表示デバイスは、請求項1ないし6のうちいずれか1つに記載のデバイスを有することを特徴とする電気光学表示デバイス。
【請求項8】 請求項7に記載の表示デバイスにおいて、前記表示媒体が液晶材料を有することを特徴とする電気光学表示デバイス。
【請求項9】 請求項1ないし8のうちいずれか1つに記載のデバイスを製造する方法において、当該基板が清浄化ステップを受けた後、前記色フィルタの領域に頂部被覆材料が設けられ、その頂部被覆はパターン化され、その後その頂部被覆材料がUV照射により成形されることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項10】 請求項9に記載の方法において、酸素プラズマ処理又はUV/オゾン処理が清浄化ステップとして使用されることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項11】 請求項10に記載の方法において、パターン化と成形化との間に少なくとも5分の待ち時間があることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項12】 請求項9,10又は11に記載の方法において、成形化は、不活性雰囲気中でなされることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項13】 請求項9ないし12のうちいずれか1つに記載の方法において、フレキソ印刷のプレス法又はスタンプがパターン化に用いられることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項14】 少なくとも一部が頂部被覆で被覆された色フィルタが設けられる基板を有するデバイスであって、前記頂部被覆は、成形されるアクリル樹脂を有し、その端部の少なくとも一方で厚みが漸減するデバイスを製造する方法であつて、
当該基板が清浄化ステップを受けた後、前記色フィル夕の領域に頂部被覆材料が設けられ、
パターン化ステップにおいてその頂部被覆はパターン化され、
その後、成形ステップにおいてその頂部被覆材料がUV照射により成形され、
前記パターン化ステップと前記成形化ステップとの間に少なくとも5分の待ち時間がある、
ことを特徴とするデバイスの製造方法。
イ.異議申立の理由の概要
異議申立人 池浦敏明は、証拠として甲第1号証乃至甲第5号証を提出し、訂正前の本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5及び7〜8に係る発明(以下、本件発明1〜5及び7〜8という。)は、特許法第29条第1項3号に該当して、若しくは、同法同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、それらの特許は取り消されるべき旨主張している。
ウ.異議申立人が提出した甲各号証に記載の発明
(1) 甲第1号証(特開昭62-163017号公報)には、以下の事項が記載されている。
「1.透明な基板と、その基板の一面に形成されたカラーフィル夕と、そのカラ ーフィル夕の上を被う保護層と、その保護層上、前記カラーフィル夕の部分からカラーフィル夕の周縁部を横切り、前記基板の周辺部まで延びる電極群とを有するカラー表示装置において、前記保護層の周縁が前記基板の周縁と前記カラーフィル夕の周縁部との間に位置していることを特徴とする、カラー表示装置。
2.前記保護層が、前記カラーフィル夕の上のみを被っている、特許請求の範囲第1項記載のカラー表示装置。
3.前記カラー液晶表示装置が、液晶フルカラー表示装置である、特許請求の範囲第1項あるいは第2項記載のカラー表示装置。」(特許請求の範囲)
「したがって、一般に液晶フルカラー表示装置では、カラーフィルタの表面が透明な樹脂、例えばアクリル系、エポキシ系あるいはポリイミド系などの合成樹脂によって保護される。
ここで、液晶層を挟む一対の基板のうち、一方の基板の断面構造は第2図に示すとおりである。すなわち、透明な基板1の一面に、レッド、グリーン、ブルーの3色の色パターンから成るカラーフィル夕2が形成され、そのカラーフィルタ2の表面を保護層3が被い、その保護層3の上に透明な電極群4が形成されている。透明な電極群4は、カラーフィルタ2の上部部分からカラーフィル夕2の周縁部2aを横切り、基板1の周辺部laまで延びている。周辺部laには、外部への接続のための端子がある。」(1頁右下欄11行〜2頁左上欄5行)
「この発明では前記第2図と同様な部分の断面構造を示す第1図が明らかにしているように、保護層3のうち基板1の周辺部laに位置する部分を除去するようにしている。保護層3はカラーフィルタ2の表面を保護するためのものであり、少なくともカラーフィルタ2の上を被うように形成すれば良い。そこで、ここでは、保護層3の周縁3aが、基板1の周縁lbとカラーフィル夕2の周縁部2aとの間、好ましくは、基板1の周縁lbよりもカラーフィル夕2の周縁部2a寄りに位置させるようにしているのである。保護層3の部分的除去は、ホトレジストを用いたパターニングなどによって簡単に行うことができる。また、保護層3の周縁部3aを、第3図に該当する部分を拡大して示すように、オーバーエッチングなどの手法により、基板1の周辺部laに向かい膜厚が漸次低減する形状にすることは、電極群4の形成を行う上できわめて好ましい。」(2頁右上欄19行〜同左下欄16行)
「電極群4の断線事故の主因である、基板1の周辺部laを被う保護層3の部分を取り除いているため、当然のことながら電極群4の断線事故、特に、カラーフィルタ2の周縁部2a付近での亀裂の発生を有効に防止することができる。
また、基板1の周辺部laは基板同士の接着のため、あるいは、電極群4を制御するICの配置のためのスペースとして利用されるが、該当する基板1の周辺部laが保護層3で被われることなく表面が露出した状態となっているので、前記基板同士の接着およびICの配置等を確実かつ安定して行うことができる。」(2頁左下欄18行〜同右下欄9行)
(2) 甲第2号証(特開昭62-119501号公報)には、以下の事項が記載されている。
「オーバーコート層が紫外線硬化型アクリル樹脂から形成される」(特許請求の範囲第3項)
「また、オーバーコート用の透明樹脂に感光性樹脂を用いることにより、印刷法カラーフィルターのカラーインキパターン上に感光性樹脂を全面にオーバーコートした後に、ネガ、又はポジマスクパターンを重ねて、露光、硬化させ、現像液にて現像処理して、所望の形状の樹脂パターンを形成することができる。これにより、印刷法カラーフィルターのカラーインキパターン面と対向電極パターン付きガラス基板とを重ねた間に液晶を封入し、シールする際にシール接着効果を向上させるために、シール部分の透明樹脂を選択的に除去することが可能となる。」(3頁右下欄1行〜同28行)
と記載されている。
(3) 甲第3号証(特開平1-167823号公報)には、以下の事項が記載されている。
「まず、ガラス基板1の上に、従来の方法を用いて金属遮蔽膜3を形成し、その上に赤、青、緑のカラーフィルタ2を形成する。その上にアクリル系フォトポリマーを主成分とする溶剤現像型のネガ型フォトレジスト、商品名フォトレックRFG-7(積水ファインケミカル(株)製)をスピンナーを用いて塗布する。その膜厚3000Åである。フォトレックを塗布した後、温度80℃、時間20分間のプリベークを行い、専用現像液、RFG-7(DEV)(積水ファインケミカル(株)製)を使用して1分間の現像を行い、引き続いて専用リンス液、RFG-7(R)(積水ファインケミカル(株)製)を用いて30秒間のリンスを行なう。リンスを行なった後、水分を除去する目的で、温度150℃、時間10分間のポストベークを行う。上記のフォトプロセスによって保護膜4(フォトレック)をパターン化し、それによって、カラーフィル夕の区画部の保護膜4から金属遮蔽膜3を露出させる。」(2頁右下欄2行〜3頁左上欄2行)
(4) 甲第4号証(特開平2-287401号公報)には、以下の事項が記載されている。
「(1)透明基板上に第1の顔料を分散させたレジスト材を塗布及び乾燥し、第1の被膜を形成したのち、塗布面側から、フォトマスクを介して露光を行い、現像、硬化させて第1のパターンを形成する工程、次に第2の顔料を分散させたレジスト材を塗布及び乾燥し第2の被膜を形成し、塗布面側から、塗布面に対して距離をとって設置したフォトマスクを介して露光を行い、現像、硬化させて第2のパターンを形成する工程、以下必要なパターン数だけ同じ工程を繰り返すことを特徴とするカラーフィルタの製造法。
(2)第2以降のパターンを形成する工程において、フォトマスクの開口部は前記被膜パターンに必要な寸法より大きくすることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタの製造法。」(特許請求の範囲)
「次に赤色レジスト(同カラーモザイクR:同社製(異議申立人注、富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製)をスピンナーで約1μmの膜厚になるように塗布し、ホットプレートで100℃、1分間のプリベークを行い、赤色レジスト膜12を形成し、黒色パターン形成時と同様に酸素遮断膜9を形成する。そして、開口部140αmの赤色層フォトマスク13を、赤色レジスト膜から20μmの間隙を保って設置し、5mJ/cm2 の強度で露光した(第3図)。
黒色パターン11形成時と同様にして、露光後、加熱、現像、水洗、加熱を行い、赤色パターン14を形成する。赤色パターン14形成と全く同様の手順で、緑色レジスト(同カラーモザイクG、同社製)、青色レジスト(同カラーモザイクB、同社製)を使用し、緑色パターン15、青色パターン16を形成する(第4図)。次にこの一実施例の構成における作用を説明する。塗布面側より、塗布面に対して距離をとって設置した赤色用フォトマスク13を介して露光を行えば、光の回折によりフォトマスクを透過した光は広がり、レジスト膜上における露光量分布は第5図(a)のようになる。一方、第6図は露光量と残膜率との関係を示したグラフで、E1以上の露光量をレジスト表面に照射すれば現像に対して溶解せず膜厚は最初の値を維持するが(残膜率=1)、E1以下では現像によって表面が溶解し膜厚が減少する(残膜率1以下)。さらにE0で膜は完全になくなる。この図より、E1=5mJ/cm2 であるから、第5図(a)において露光量が5mJ/cm2 以下の部分から膜厚が徐々に減少し、E0=2mJ/cm2で膜厚はゼロになる。従ってレジスト膜は第5図(b)のような台形の断面形状になり、台形の底辺の幅はフォトマスクの開口部よりも広く、約150μmとなる。」(2頁左下欄18行〜3頁左上欄12行)
(5) 甲第5号証(特開昭62-200325号公報)には、以下の事項が記載されている。
「一対の平行基板と、該一対の平行基板間に配置した強誘電性液晶及びビーズスペーサーとを有する強誘電性液晶素子において、前記一対の平行基板のうち少なくとも一方の基板にカラーフィルターが設けられているとともに、該カラーフィルター上に鉛筆硬度HB以上(但し、鉛筆硬度とは、JIS K 5401で規定する「塗膜用鉛筆引っかき試験機」により測定した硬度をいう)の保護層が形
成されていることを特徴とする強誘電性液晶素子。」(特許請求の範囲)
「このように、カラーフィルター上の保護膜を鉛筆硬度HB以上の硬度となるよう形成することにより、ビーズスペーサーによる膜の破壊を防止することができる。」(3頁左下欄3行〜同6行)
「本発明に用いられる透明な絶縁性樹脂からなる保護膜10としては、・・・、熱硬化アクリル樹脂ポリイミド、・・等が挙げられる。」(5頁左下欄3行〜同8行)
エ.当審の対比・判断
本件発明1〜5及び7〜8の「酸素が排除されつつUV照射により成形されるアクリル樹脂」は、甲第1〜3及び5号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、当業者に周知又は自明の事項でもない。
そして、本件発明1〜5及び7〜8は、頂部被覆材料のアクリル樹脂が「酸素が排除されつつUV照射により成形される」ことにより、ポリマーの重合や架橋が弱くなることが無いため、頂部被覆5、6を軟化させることがないという作用効果を呈するものである。
なお、甲第4号証(特開平2-287401号公報)は、本件発明1〜5及び7〜8の優先権主張日(オランダ国平成2(1990)年2月19日)の後の平成2年11月27日に出願公開されたものであるから、特許法第29条第1項及び第2項で云う公知の刊行物に該当しない。
したがって、本件発明1〜5及び7〜8は、甲第1号証に記載されたに等しい発明であると、若しくは、甲第1〜3及び5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとすることができない。
オ.むすび
以上のとおり、異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1〜5及び7〜8についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1〜5及び7〜8についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
色フィルタを有するデバイス及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも一部が頂部被覆で被覆された色フィルタが設けられる基板を有するデバイスにおいて、
前記頂部被覆は、酸素が排除されつつUV照射により成形されるアクリル樹脂を有し、その端部の少なくとも一方で厚みが漸減することを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項2】 請求項1に記載のデバイスにおいて、前記頂部被覆は、シーリングの内側エッジにより境界付けられる領域内にあることを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項3】 請求項1又は2に記載のデバイスにおいて、前記頂部被覆は、最大30°の傾斜で厚みが減少することを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項4】 請求項3に記載のデバイスにおいて、その傾斜が5°より小さいことを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項5】 請求項1,2,3又は4に記載のデバイスにおいて、前記頂部被覆は、少なくとも4Hの鉛筆硬度を有することを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項6】 請求項1ないし5のうちいずれか1つに記載のデバイスにおいて、前記頂部被覆は、アクリル樹脂用の溶剤を使用せずに形成されることを特徴とする色フィルタを有するデバイス。
【請求項7】 2つの支持板間に表示媒体を有する電気光学表示デバイスにおいて、当該表示デバイスは、請求項1ないし6のうちいずれか1つに記載のデバイスを有することを特徴とする電気光学表示デバイス。
【請求項8】 請求項7に記載の表示デバイスにおいて、前記表示媒体が液晶材料を有することを特徴とする電気光学表示デバイス。
【請求項9】 請求項1ないし8のうちいずれか1つに記載のデバイスを製造する方法において、当該基板が清浄化ステップを受けた後、前記色フィルタの領域に頂部被覆材料が設けられ、その頂部被覆はパターン化され、その後その頂部被覆材料がUV照射により成形されることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項10】 請求項9に記載の方法において、酸素プラズマ処理又はUV/オゾン処理が清浄化ステップとして使用されることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項11】 請求項10に記載の方法において、パターン化と成形化との間に少なくとも5分の待ち時間があることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項12】 請求項9,10又は11に記載の方法において、成形化は、不活性雰囲気中でなされることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項13】 請求項9ないし12のうちいずれか1つに記載の方法において、フレキソ印刷のプレス法又はスタンプがパターン化に用いられることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項14】 少なくとも一部が頂部被覆で被覆された色フィルタが設けられる基板を有するデバイスであって、前記頂部被覆は、成形されるアクリル樹脂を有し、その端部の少なくとも一方で厚みが漸減するデバイスを製造する方法であって、
当該基板が清浄化ステップを受けた後、前記色フィルタの領域に頂部被覆材料が設けられ、
パターン化ステップにおいてその頂部被覆はパターン化され、
その後、成形ステップにおいてその頂部被覆材料がUV照射により成形され、
前記パターン化ステップと前記成形化ステップとの間に少なくとも5分の待ち時間がある、
ことを特徴とするデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
この発明は、少なくとも一部が頂部被覆で被覆された色フィルタが設けられた基板を有するデバイスに関するものである。
この発明はまた、かかるデバイスの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上述のような色フィルタは、例えば液晶表示デバイスのような電気光学表示デバイスに使用されうるだけでなく、例えば撮像用電荷結合デバイス等に使用されうる。かかる色フィルタは通常、色画素のパターンを有しているが、この他にもいわゆる「ブラックマトリクス」を有しうる。
【0003】
冒頭の段落に記載されたタイプのデバイスは、例えばUSP第4744637号記載の液晶表示デバイスに使用されている。この特許には、これまで普通とされてきた頂部被覆に比しUV照射に感度がなく、その後に電極が設けられるときにほとんどでこぼこもうねりもできないような熱膨張係数を有する頂部被覆が記載されている。満足のいく結果がSiO2を有する頂部被覆で明確に到達されたが、アクリルのホトセッティング(光硬化)樹脂が用いられると著しいでこぼこが生じた。
【0004】
特に液晶表示デバイスに使用されるときには、このタイプの頂部被覆は数多くの要求を満たさねばならない。例えば、この頂部被覆は、後の製造ステップに耐性がなければならない。後のステップとは例えば酸化インジウム錫のような透明な導電トラックの形成である。この頂部被覆は、使用されるエッチング材料に耐性があり、使用される温度で頂部被覆及び/又は色フィルタにうねりがあってはならない。酸化インジウム錫のこの被着に使用される温度は、上記導電トラックの極限の抵抗率がその時最小になるということで高い温度(180°-200°)に選択されるのが好ましい。
【0005】
さらに、この頂部被覆は、既に他の接続トラックが当該基板のその領域に例えばガラス上のチップ(chip‐on‐glass)接続のために設けられているかもしれないので、好ましくは実際の表示部分を越えて延在してはならない。それ故に、頂部被覆がパターン化されることができるなら有利である。しかしながら、頂部被覆は急峻に終ってはならない。何故なら、そうすると端部を越えて延在する導電トラックの端部の領域で亀裂が発生する可能性があるからである。
【0006】
さらに前記頂部被覆は、液晶層の厚みを決定するスペーサによるぎさぎさ(押し込み)にも耐性がなければならぬ。
【0007】
【発明の開示】
この発明の目的の1つは、前述の要求を可能な限り十分に満足する頂部被覆を提供せんとするものである。
この目的を達成するため、本発明に係るデバイスは、その頂部被覆が、酸素が排除されつつUV照射により成形されたアクリル樹脂を有し、その端部の少なくとも一方で厚みが漸減することを特徴としている。
【0008】
本発明は、このような硬く、ひっかきにも強い重合可能な樹脂の頂部被覆をフレキソ印刷の(flexographic)プレス技術又は例えばスタンプ技術を使用することにより提供できるという認識に基づいている。
【0009】
この点ではアクリル樹脂を有する頂部被覆の使用自体はEP-A第0266218号において知られている。しかしながら、この場合はサーモセッティング(熱硬化)樹脂が関係していて傾斜端部の説明はなされていない。
【0010】
頂部被覆のパターン化は、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂で十分可能であるが、それによって作られる層は軟らかでスペーサの圧力により傷ついてしまうかもしれないし、或いはある範囲のきずの影響をその位置にも依存するが受けるかもしれず、かくては液晶層の厚みの変化をもたらすことになる。さらに、このような層は、電極の形成処理のような後続工程ステップ(温度、エッチング液)に耐性がない場合がある。
【0011】
この頂部被覆は、その端部で30°より小さい傾斜で減少するのが好ましく、実際には1から2°の傾斜が実現されている。
【0012】
全体的に眺めてみて、色フィルタの外側の頂部被覆は、わずかに反対方向に延在してさえよい傾斜の角度の局部的な変化を持ち得、この反対方向に変化する傾斜は基板や工程パラメータによるがほぼ常に2°かそれ以下である。
【0013】
アクリル樹脂の重合により製作される前述の頂部被覆は、少なくとも4Hの鉛筆の硬さを有するのが好ましい。アクリル樹脂として、トリメチロール プロパン トリアクリレート、n-ビニール ピロリドン、ペンタ・エリシリトール トリアクリレート又はペンタ・エリシリトール テトラ・アクリレートがこの目的に使用される。
【0014】
頂部被覆が備えられた基板は、液晶表示デバイス以外の電気光学表示デバイスに使用されうる。
【0015】
本発明に係るデバイスの製造方法は、当該基板が清浄化ステップを受けた後、前記色フィルタの領域に頂部被覆材料が設けられ、その頂部被覆はパターン化され、その後その頂部被覆材料がUV照射により成形されることを特徴としている。
前記清浄化ステップは、酸素プラズマ処理でもUVオゾン処理でもよい。材料はフレキソ印刷のプレス法又はスタンプ法の使用でパターン化される。材料がパターン化された後、材料が成形される前に5分から10分の待ち時間が観察される。この処理は、不活性雰囲気中で行われるのが好ましい。
【0016】
【実施例】
以下添付図面を参照し実施例により本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1はガラス、石英又は他の適切な材料の第1の支持板2を有する表示デバイス1の一部を線図的に示している。この例では画素に対応する色セル4(赤(R)、緑(G)、青(B))を有する色フィルタ3が、通常の液晶技術の方法で支持板2の上に設けられている。さらにこの色フィルタは、いわゆる「ブラックマトリクス」を有するものとしてもよい。
【0018】
色フィルタ3は、本発明に従って重合性アクリル樹脂からなり、端部の領域(領域6)で例えば1°から2°の傾斜で厚みが漸減する頂部被覆5を備えている。かかる頂部被覆の作り方を以下詳細に説明する。
【0019】
頂部被覆5は、例えば透明な酸化インジウム錫(ITO)電極からなるメタライゼーションパターン7をその上に備えている。メタライゼーションパターンが備えられる前にSiO2の薄い層が被着される。本発明によるデバイスでは、酸化インジウム錫は頂部被覆5がうねりやでこぼこなしに比較的高い温度で被着される(必要あればアニールされる)。かかる高い被着温度はITO電極を非常に低い抵抗を有するものとする。ITO層をパターニングするのに使用される可能なエッチング浴は頂部被覆5をおかさない。
【0020】
このデバイスはさらに、第2の支持板8を備えその上には画素を規定する電極9が備えられ、それは電極9とメタライゼーションパターン7とがクロスバーシステムを構成しその交点で画素を規定したり(受動駆動)、電極9がスイッチング要素、駆動手段及びデータラインのシステムによって駆動される画像電極を構成したりする(能動駆動)ためで、後者の場合に電極7は唯1つの平らな構造を有していてもよい。
【0021】
液晶材料の層11は、2つの支持板2,8間に存在し、該支持板は必要なら保護/配向層10を備える。この2つの支持板は、シーリング端部12とスペーサ13とにより互いにほぼ一定の距離に保持される。このデバイスはさらに、通常の方法で偏光子、反射子などを備えていてもよい。
【0022】
端部の領域(領域6)では、メタライゼーション7がこの領域で悪いステップ被覆の故にき裂の危険をともなわないよう頂部被覆は厚みが漸減する。
【0023】
本発明による頂部被覆5,6は、硬い(かくてひっかきには強い)のでスペーサ13の領域でこの層がぎざぎざになる(へこまされる)危険はない。
【0024】
頂部被覆5,6は次のようにして作られうる。基本的材料は例えばガラス板で、その上に色フィルタそして必要とされるなら実際の表示部分の外側に例えばガラスの上のチップアセンブリ(chip‐on‐glass assembly)のために全ての他のメタライゼーショントラックが設けられる。これら他のメタライゼーショントラックの十分な接触を確実にするために、頂部被覆5,6をパターン化することが望まれる。
【0025】
頂部被覆を十分に固着させるため、基板2と色フィルタ3は、例えば短い酸素プラズマ処理(10〜20秒)で前もって清浄化されるが、これは紫外線/オゾン処理(0.5〜10分)で置き換えることも可能である。
【0026】
頂部被覆パターン5は次にフレキソ印刷(flexographic)のプレス法により設けられる。プレスされる材料、この例でのアクリル樹脂は、設けられるべきパターンを有するゴム状の板によりガラス板上に設けられる。かかるアクリル樹脂(例えばトリメチロール プロパン トリアクリレート)は、この材料がプレスされるべき適正な粘度を有するような割合いでモノマー(monomer)とディマー(dimer)を有する。このフレキソ印刷のプレス法を可能ならしめるために溶剤は使用されない。しかしながら、さらなるプレス工程用に可能な補助材料が加えられてもよい(界面活性剤、UV開始剤)。
【0027】
上記ゴム状の板の代りにスタンプが用いられてもよい。
最大の層の厚みはプレス直後0.5〜3μmである。
次にその層は、短時間(5〜10分)フリーに保たれ、これによりある程度の距離だけ自由に流れ、傾いた部分6を形成することとなる。最終的に層5,6は、酸素が排除されつつUV照射によりその形が成形される。酸素が存在すると、ポリマーの重合や架橋(cross‐linking)が弱く層5,6を軟化させ前述の欠点をもってしまう。このようにして得られたアクリル樹脂は、表示デバイスのその後の製造工程ステップ(高温、プレス、種々のエッチング液)にも十分耐えられることが分かる。
【0028】
本発明は、以上述べてきた実施例に限定されないことは勿論であり、種々の変形が可能である。例えば、液晶効果に基づかない他の表示デバイスが、かかる基板上に設けられうるし、頂部被覆も他の色フィルタ例えばCCDにも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による表示デバイスの一部を線図的に示す図。
【符号の説明】
1 表示デバイス
2,8 ガラス支持板
3 色フィルタ
4 色セル
5 頂部被覆
6 端部の領域
7 メタライゼーションパターン
9 電極
10 保護/配向層
11 液晶材料の層
12 シーリング端部
13 スペーサ
 
訂正の要旨 訂正事項
a.特許第3022612号発明の明細書中特許請求の範囲の請求項1に記載の「成形されるアクリル樹脂」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「酸素が排除されつつUV照射により成形されるアクリル樹脂」と訂正する。これに伴い、請求項1の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、平成11年11月18日付け提出の全文補正明細書(以下、特許明細書と称する)第3頁第27行及び第28行(特許第3022612号公報第2頁第4欄第22行)における「成形されたアクリル樹脂」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「酸素が排除されつつUV照射により成形されたアクリル樹脂」と訂正する。
b.特許第3022612号発明の明細書中特許請求の範囲の請求項11において、明瞭でない記載の釈明を目的として、当該請求項11に記載の「請求項9又は10に記載の方法において」を「請求項10に記載の方法において」とするとともに、もとの請求項11が請求項9を引用して定義づけられていた発明について、本請求書に添付された訂正明細書のとおり、請求項14を追記する。
異議決定日 2001-10-09 
出願番号 特願平3-44099
審決分類 P 1 652・ 121- YA (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 東森 秀朋
土屋 知久
登録日 2000-01-14 
登録番号 特許第3022612号(P3022612)
権利者 コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ
発明の名称 色フィルタを有するデバイス及びその製造方法  
代理人 津軽 進  
代理人 杉村 興作  
代理人 仁平 孝  
代理人 宮崎 昭彦  
代理人 佐藤 安徳  
代理人 冨田 典  
代理人 津軽 進  
代理人 杉村 暁秀  
代理人 杉村 興作  
代理人 冨田 典  
代理人 仁平 孝  
代理人 梅本 政夫  
代理人 佐藤 安徳  
代理人 宮崎 昭彦  
代理人 梅本 政夫  
代理人 杉村 暁秀  

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