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審決分類 |
審判 一部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H04N 審判 一部申し立て 2項進歩性 H04N |
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管理番号 | 1053260 |
異議申立番号 | 異議2001-70643 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-06-02 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-28 |
確定日 | 2002-01-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3081574号「ファクシミリ装置」の請求項3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3081574号の請求項3に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3081574号の発明についての出願は、平成9年11月17日に出願され、平成12年6月23日にその発明について特許の設定登録がされ、その後、請求項3に係る特許について、異議申立人鈴木武夫により特許異議の申し立てがされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年7月9日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知されたものである。 2.訂正の適否についての判断 ア.訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。 1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項3に係る記載 「一端に閉塞面を有し他端が開口するスキャナ収納部と、 前記スキャナ収納部に着脱可能なハンドスキャナとを備え、 前記ハンドスキャナは、読取面の原稿進入側に切り欠き部を備えたことを特徴とするファクシミリ装置。」を、 「一端に閉塞面を有し他端が開□するスキャナ収納部と、 前記スキャナ収納部に着脱可能なハンドスキャナとを備え、 前記ハンドスキャナは、読取面の原稿進入側に切り欠き部を備えて、 装置本体のガイド部材が少なくとも前記切り欠き部の一部を覆うように配置されたことを特徴とするファクシミリ装置。」と訂正する。 2) 訂正事項b 明細書の【0029】の記載 「また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のファクシミリ装置において、ハンドスキャナは、読取面の原稿進入側に切欠き部を有する構成を採る。」を、 「また、請求項3記載の発明は、一端に閉塞面を有し他端が開□するスキャナ収納部と、前記スキャナ収納部に着脱可能なハンドスキャナとを備え、前記ハンドスキャナは、読取面の原稿進入側に切り欠き部を有するとともに、装置本体のガイド部材が少なくとも切り欠き部の一部を覆うように配置された構成を採る。」と訂正する。 3) 訂正事項c 明細書の【0030】欄の記載 「このような構成により、ハンドスキャナ収納状態で読み取り動作を行う場合、原稿が搬送されてきたときに原稿先端がハンドスキャナに引っかかることがなくなるため、原稿を円滑に搬送させることができる。また、ハンドスキャナをスキャナ収納部から離脱させて読み取り動作を行う場合、原稿に多少の巻きぐせやしわがあっても原稿をハンドスキャナの下に押し込むことができるため、原稿上を円滑にスライドさせることができる。」を、 「このような構成により、ハンドスキャナ収納状態で読み取り動作を行う場合、原稿が搬送されてきたときに原稿先端がハンドスキャナに引っかかることがなくなるため、原稿を円滑に搬送させることができる。すなわち、装置本体のガイド部材が少なくとも切り欠き部の一部を覆うように配置されているために、搬送されてきた原稿の先端がガイド部材と切り欠き部との間に入り込むことが無く、原稿の先端が丸まっていても切り欠き部を経て読取部に案内されるため、安定した搬送を行うことが可能となる。また、ハンドスキャナをスキャナ収納部から離脱させて読み取り動作を行う場合、原稿に多少の巻きぐせやしわがあっても原稿をハンドスキャナの下に押し込むことができるため、原稿上を円滑にスライドさせることができる。」と訂正する。 4) 訂正事項d. 明細書の【0084】欄の記載 「【発明の効果】 以上の説明から明らかなように、ハンドスキャナ300が仰臥状態で収納されることにより、原稿搬送路が曲折することがなくなるため、ファクシミリ装置本体1にハンドスキャナ300を収納した状態で原稿を送信する際、円滑に原稿を搬送することができる。また、ファクシミリ装置の全体構成がまとまり、装置を小型化させることができる。」を、 「【発明の効果】 以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ハンドスキャナが円弧状に着脱可能であるので、ハンドスキャナを片手で着脱可能となり操作性を向上させることができる。また、ハンドスキャナの表示部が常に見られる位置に配置しているため、常にハンドセットの状態を目視により確認することができる。また、読取面の原稿進入側に切り欠きを設けるとともに、装置本体のガイド部材が少なくとも切り欠き部の一部を覆うように配置したので、原稿がハンドスキャナに引っ掛かって紙ジャムを起こしてしまうのを防止することができる。また、ハンドセットを収納した場合に、収納部とハンドセットの対向する面に赤外線の発光部と受信部を備えたので、確実にデータ転送を行うことができる。」と訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aを検討するに、特許権者が訂正の根拠とする、明細書の【0063】の記載をみても、「装置本体のガイド部材が少なくとも前記切り欠き部の一部を覆うように配置された」との記載はない。 同じく特許権者が訂正の根拠とする第2図を見ても、装置本体1の前面上部のうち、ハンドスキャナ収納時にハンドスキャナの切り欠き部に相対する部分が当該切り欠き部を覆うような形状に描かれてはいるが、当該部分が「ガイド部材」であるとの記載はない。また、「ガイド部材」なる用語を通常に解釈すると、原稿をスムーズに搬送する補助となることを目的として設けられた「部材」であって、第1図のADFローラ102、原稿フィードローラ103、ASFローラ214、記録紙分離パッド215等の部材がこれに相当するが、第1図のような配置構成であるが故に原稿読み取り動作時にたまたま原稿のガイドとして機能する装置本体の前面上部を一義的に特定しているとは認められないため、「装置本体のガイド部材が少なくとも前記切り欠き部の一部を覆うように配置された」ことを、第2図の記載から直接的かつ一義的に導き出すことはできない。 よって、訂正事項aは願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものとは認められない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第2項の規定を満たしていない。 したがって、本件訂正請求における他の訂正事項について判断するまでもなく、本件訂正は認められない。 3.特許異議の申立について ア.本件発明 請求項3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項3に記載された次のとおりのものである(以下、「本件請求項3に係る発明」という。)。 「一端に閉塞面を有し他端が開口するスキャナ収納部と、 前記スキャナ収納部に着脱可能なハンドスキャナとを備え、 前記ハンドスキャナは、読取面の原稿進入側に切り欠き部を備えたことを特徴とするファクシミリ装置。」 イ.申立の理由の概要 申立人鈴木武夫は、請求項3に係る発明は、甲第1号証(特開平2-285764号公報)に記載された発明であるか、この発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、したがって、特許を取り消すべきものであると主張している。 また、予備的な証拠として、甲第2号証(特開平9-219779号公報)、甲第3号証(特開平9-216748号公報)、甲第4号証(特開平10-139210号公報)提示している。 ウ.当審の判断 (引用刊行物) 当審が平成13年4月24日付けで通知した取消理由で引用した刊行物1(甲第3号証)、刊行物2(甲第2号証)、刊行物3(甲第1号証)には、それぞれ次のことが記載されている。 1)刊行物1(甲第3号証)(特開平9-216748号公報) 刊行物1には、次のことが記載されている。 ア)「この実施例は紙送り装置をファクシミリ装置に用いた例であり」(刊行物1の第2頁右欄第42〜43行) イ)「例えば、図3(a)に示すように、ハンドスキャナ10はファクシミリ本体31の凹部31aに着脱自在である。本体31から取り出したハンドスキャナ10を、図3(b)に示すように、読取り部(図において三角印で示す)を原稿32に当て、矢印方向に移動させて読み取る。」(刊行物1の第2頁右欄第50行〜第3頁左欄第5行) この記載事項によると、刊行物1には、「凹部31aと、前記凹部31aに着脱自在なハンドスキャナ10とを備えたファクシミリ装置」が記載されているものと認められる。 2)刊行物2(甲第2号証)(特開平9-219779号公報) 刊行物2には、次のことが記載されている。 ウ)「本発明は、ファクシミリや複写機、或いはスキャナ等に利用可能なイメージセンサに関するものである」(刊行物2の第2頁左欄第28〜30行) エ)「原稿7をイメージセンサ1側へ入紙し、カバーガラス4の原稿読取面9上をスムースに移動して、排出させるためにガイドシート6が不可欠であり、」(刊行物2の第2頁右欄2〜4行) オ)「原稿入紙側のフレームにおける原稿が当接するフレーム面がカバーガラス側への高くなる勾配の斜面を設けることで、ガラスシート部品を廃止することができる。」(刊行物2の第2頁右欄第49行〜第3頁左欄2行) カ)「フレーム5は、原稿進入部において、原稿入紙側から原稿排紙側へ高くなる勾配を有するガイド面を備えている。この実施形態におけるガイド面は、原稿進入部における原稿7に対する当接面14として平坦な斜面(平斜面)に形成されている。」(刊行物2の第3頁左欄第36〜40行) 上記オ)及びカ)の記載に関し、イメージスキャナの読取面の原稿進入部に平坦な斜面を設けた場合、原稿進入側に切り欠き部を備えた形状となることは自明であるから、この記載によると、ファクシミリやスキャナに利用可能なイメージセンサにおいて、原稿をスムースに移動して排紙させるために、イメージスキャナの読取面の原稿進入側に切り欠き部を形成することが開示されている。 3)刊行物3(甲第1号証)(特開平2-285764号公報) 刊行物3には、次のことが記載されている。 キ)「スキャナユニット40はケース42内に画像読取部43を収納しており、ケース42、すなわち、スキャナユニット40は本体10、すなわち筐体11に着脱可能に装着されている。」(刊行物3の第3頁上左欄第13〜16行) ク)「原稿送りローラ21と分離ローラ22により原稿28を1枚づつ分離して読取ローラ23、プレッシャローラ24方向に送り出し、読取ローラ23とプレッシャローラ24は送られてきた原稿28をガイド板26上を読取部29に搬送する」(刊行物3の第4頁上左欄第3〜7行) ケ)原稿送りローラ21、分離ローラ22、読取ローラ23、及びプレッシャローラ24のある側のケース40の角部に平坦な斜面を形成された形状(刊行物3の第1図、第4図) 上記ク)及びケ)の記載に関し、スキャナユニットの読取面の原稿進入側の角部に平坦な斜面を形成した場合、原稿進入側に切り欠き部を備えた形状となることは自明であるから、この記載によると、ファクシミリ装置本体に着脱可能なスキャナユニットにおいて、スキャナユニットの読取面原稿進入側に切り欠き部を形成することが開示されている。 (対比・判断) 本件請求項3に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、 a)刊行物1に記載された発明の凹部は、ハンドスキャナ10はファクシミリ本体31の凹部31aに着脱自在である(上記イ)参照)から、「一端に閉塞面を有し他端が開口するスキャナ収納部」である点で、本件請求項3に係る発明の「スキャナ収納部」に相当する。 b)刊行物1に記載された発明のハンドスキャナは、ハンドスキャナ10はファクシミリ本体31の凹部31aに着脱自在である(上記イ)参照)から、「読取面の原稿進入側に切り欠き部を備えた」点を除き、「スキャナ収納部に着脱可能なハンドスキャナ」である点で、本件請求項3に係る発明の「ハンドスキャナ」に相当する。 c)刊行物1に記載された発明は、発明の名称を紙送り装置としているが、この実施例として、紙送り装置が用いられたファクシミリ装置を開示している(上記ア)参照)から、本件請求項3に係る発明の「ファクシミリ装置」に相当する。 したがって、本件請求項3に係る発明と刊行物1に記載された発明は、 「一端に閉塞面を有し他端が開口するスキャナ収納部と、前記スキャナ収納部に着脱可能なハンドスキャナとを備えたことを特徴とするファクシミリ装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本件請求項3に係る発明は、ハンドスキャナが「読取面の原稿進入側に切り欠き部を備え」ているのに対して、刊行物1に記載された発明はこのような切り欠き部を備えていない点。 そこで、相違点について検討すると、 ファクシミリやスキャナに利用可能なイメージセンサにおいて、原稿をスムースに移動して排紙させるために、イメージスキャナの読取面の原稿進入側に切り欠き部を形成することが刊行物2に開示されており、原稿を搬送する機構において、原稿をスムースに移動させたいという技術課題が存在することは当業者に明らかであるから、刊行物1に記載された発明のハンドスキャナに、読取面の原稿進入側に切り欠き部を備えさせることは、当業者であれば容易になし得ることである。 また、刊行物3にも、ファクシミリ装置本体に着脱可能なスキャナユニットにおいて、スキャナユニットの読取面の原稿進入側に切り欠き部を形成することが記載されており、この構成をファクシミリ装置本体に着脱可能なスキャナユニットに適用することに何ら阻害されるものではない。 エ.むすび 以上のとおり、本件請求項3に係る発明は上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項3に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-11-06 |
出願番号 | 特願平9-332455 |
審決分類 |
P
1
652・
841-
ZB
(H04N)
P 1 652・ 121- ZB (H04N) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 菅澤 洋二 |
特許庁審判長 |
小川 謙 |
特許庁審判官 |
佐藤 聡史 江頭 信彦 |
登録日 | 2000-06-23 |
登録番号 | 特許第3081574号(P3081574) |
権利者 | 松下電送システム株式会社 |
発明の名称 | ファクシミリ装置 |
代理人 | 鷲田 公一 |