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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01C
審判 全部申し立て 発明同一  A01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01C
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A01C
管理番号 1053266
異議申立番号 異議2001-72396  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-07-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-05 
確定日 2002-02-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第3141131号「田植機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3141131号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3141131号の請求項1に係る発明についての出願は、平成7年2月9日に特許出願した特願平7-46209号の一部を分割して平成12年1月12日に新たな特許出願とし、平成12年12月22日にその発明について特許権の設定がなされた後、その特許について、特許異議申立人井関農機株式会社及び新穂友志より特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
特許第3141131号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「走行車の後側に植付部を装設させると共に、走行車後部上面にエアタンク及び施肥ホッパ及び肥料繰出ケースなどを取付け、またエアタンク一側部に送風機のファンケースを接続させ、エアタンクからの送風によって搬送ホースを介して肥料繰出ケースからの肥料を植付部に送出させる田植機において、エアタンク前側の支点軸に一端側を連結させるステーの他端側をファンケースの前面に延設させて固定させ、またファンケース内部の送風ファンを駆動させる電動ファンモータをファンケース前面側に設け、エアタンク前方にファンケースを収納してファンケースの機内側に電動ファンモータを位置させるように構成したことを特徴とする田植機。」

3.申立ての理由の概要
3-1.特許異議申立人新穂友志は、本件発明の特許に対して、証拠として下記の甲第1号証ないし甲第5号証の5並びに資料1及び資料2を提示し、本件発明の特許は、下記の理由(以下、それぞれ「取消理由1」、「取消理由2」、「取消理由3」という)により取り消されるべきである旨を主張している。
甲第1号証 :特開平11-4611号公報
甲第2号証 :特開平5-276818号公報
甲第3号証 :特開昭59-203423号公報
甲第3号証の2:実開昭60-171998号公報
甲第3号証の3:実公平2-2960号公報
甲第4号証 :特開平5-268815号公報
甲第4号証の2:特開平5-146205号公報
甲第5号証 :実公平6-39542号公報
甲第5号証の2:特開平4-14530号公報
甲第5号証の3:実公平7-19号公報
甲第5号証の4:特開平1-112908号公報
甲第5号証の5:実開平6-7413号公報
資料1 :特開2000-184808号公報
資料2 :特開平8-214655号公報
(1)取消理由1
本件は原出願の当初明細書又は図面に記載されていなかった、「エアタンク前側の支点軸に一端側を連結させるステーの他端側をファンケースの前面に延設させて固定させ、」の構成を含む内容で分割され、分割された出願の内容のまま特許されたものであるので、本件発明は特許法第44条第1項に規定された適法な分割出願に係る発明ではないからその出願日は遡及せず、本件発明の出願日は実際に出願された平成12年1月12日まで繰り下がる。そうすると、本件発明はその出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明であるので、本件発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
(2)取消理由2
本件発明は、甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証ないし甲第3号証の3のいずれかに記載された発明と、甲第4号証又は甲第4号証の2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
(3)取消理由3
本件特許明細書の請求項1に記載されている「機内側」の意味が曖昧であるために同請求項1に係る発明は明確でなく、本件発明の出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。

3-2.特許異議申立人井関農機株式会社は、本件発明の特許に対して、証拠として下記の甲第1号証を提示し、本件発明は、本件出願の日前の出願であって本件出願後に出願公開された他の特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも本件発明の発明者は上記他の特許出願に係る発明の発明者と同一でも、本件出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、本件発明の特許は、特許法第29条の2第1項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。(以下、「取消理由4」という。)
甲第1号証:特願平5-305852号(特開平7-132010号公報)

4.甲号各証に記載の発明
特許異議申立人新穂友志の提示した甲第2号証には、以下の発明が記載されている。
甲第2号証(特開平5-276818号公報)
「施肥田植機1は・・・走行車体2に・・・植付部4が装着されているとともに、走行車体2とこの植付部4の間に施肥装置5が設けられている。」(第2頁第2欄第7-10行目)、
「施肥装置5は、植付苗の近傍に施肥する側条施肥装置で、・・・肥料を収容するホッパー30と該ホッパー30の下側に取り付けられる繰出部31…を・・・設けている。そして、繰り出された肥料を作溝器27…に導く施肥ホース32…を各繰出部31…にそれぞれ連結する。更に、ブロア33とそのブロアからの圧風を一時的に貯えて施肥ホース32…の上端部へ送るエアーチャンバー34とが備えられて、施肥ホース32…内を圧風により肥料が強制的に移送されるようになっている。」(第3頁第3欄第9-21行目)、
「ブロア33は、電動モーターで送風ファンが駆動回転する構成で、その圧風吹き出し口33aをエアーチャンバー34の左右一端部の圧風吹込み口34aに連結させて、エアーチェンバー34の長手方向に圧風が吹き込むように取付けられている。また、このブロア33の圧風吹き出し口33a部のエアーチャンバー34との連結部は、エアーチェンバー34に固定の上下の縦軸34c回りに回動可能に構成されており、固定具33cを解除してブロア33を回動すればエアーチェンバー34の圧風吹込み口34aを開放できるようになっている。」(第5頁第7欄第20-30行目)の記載より、甲第2号証には、
「走行車体2と植付部4の間に施肥装置5を設け、該施肥装置5は、植付苗の近傍に施肥する側条施肥装置であって、肥料を収容するホッパー30と該ホッパー30の下側に取り付けられる繰出部31…を有しており、各繰出部31…には繰り出された肥料を作溝器27…に導く施肥ホース32…が連結されていて、さらに、ブロア33とそのブロア33からの圧風を一時的に貯えて施肥ホース32…の上端部へ送るエアーチャンバー34とが備えられて、施肥ホース32…内を圧風により肥料が強制的に移送されるようにされており、ブロア33は、電動モーターで送風ファンが駆動回転する構成で、その圧風吹き出し口33aをエアーチャンバー34の左右一端部の圧風吹込み口34aに連結させて、エアーチャンバー34の長手方向に圧風が吹き込むように取付けられており、このブロア33の圧風吹き出し口33a部のエアーチャンバー34との連結部は、エアーチャンバー34に固定の上下の縦軸34c回りに回動可能に構成されており、固定具33cを解除してブロア33を回動すればエアーチャンバー34の圧風吹込み口34aを開放できるようになっている、施肥田植機」が記載されており、また、「エアーチャンバー34に固定の上下の縦軸34c」は、「エアーチャンバー34」の前側に固定されることが甲第2号証の特に図10から明らかである。
(なお、甲第2号証中には「エアーチャンバー34」と「エアーチェンバー34」の記載が混在するが、「エアーチャンバー34」として統一的に扱った。)
また、特許異議申立人井関農機株式会社の提示した甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
甲第1号証(特願平5-305852号(特開平7-132010号公報))
「肥料を貯蔵する貯蔵部と、該貯蔵部内の肥料を定量づつ下方に繰り出す繰出部と、該繰出部によって繰り出された肥料を圃場の施肥位置へ導く導管と、該導管内へ吹き込む肥料搬送用エアを貯留するエアチャンバとを備えた施肥機において、前記貯蔵部内の肥料が前記エアチャンバ内に落ち込むように貯蔵部とエアチャンバを連通可能に構成するとともに、エアチャンバの適所に肥料排出口を設けたことを特徴とする施肥機。」(特許請求の範囲)、
「図1および図2は・・・施肥機を設けた乗用田植機を表している。この乗用田植機1は、走行車体2の後部に・・・植付作業機4が装着されている。」(第2頁第2欄第7-10行目)、
「施肥機5の構成は・・・操縦席42の後側に肥料貯蔵部80,…と繰出部81,…が設けられ、該繰出部の下部に繰り出される肥料をフレキシブルな施肥導管82,…を通して植付条の側部近傍に導くように構成されている。ブロア83から吹き出されるエアがエアチャンバ84を経由して施肥導管82,…内に送り込まれ、その風の作用でもって施肥導管82,…内を肥料を搬送するようになっている。」(第3頁第4欄第21-29行目)、
「繰出部81は、繰出ロール85を内蔵する本体部81aと、該本体部の下側に続く漏斗部81bと、該漏斗部の下端に一体成形された前後方向を向く接続管81cとからなる。 」(第3頁第4欄第33-36行目)、
「エアチャンバ84の左端部は吹込み口84cで、ここにブロア83の吹出し口83aが接続されている。ブロア83の吸込み口83bには、エンジン30の後方部から空気を導く導風管108が接続されている。ブロア83は、エアチャンバ84に一体のフランジ109に軸110によって前方に回動可能に取り付けられ、バックル111によって吹込み口84cと吹出し口83aとの間が密閉するように固定される。」(第4頁第5欄第45-第6欄第2行目)、
「施肥作業を終了して貯蔵部80,…内の肥料を空にする場合は次のようにする。・・・ブロア83の吸込み口83bから導風管108を抜き、バックル111を外してブロア83を前方に回動させ、そのブロア83の吸込み口83bに清掃用ホース118を取り付ける。そして、ブロア83を作動させ、ホース118のノズル118aを吹込み口84cからエアチャンバ84内に挿入し、ノズル118aから吐出されるエアによってエアチャンバ84の内部に残っている肥料を除去する。」(第4頁第6欄第25-44行目)の記載より、甲第1号証には、
「施肥機5を設けた乗用田植機1は、走行車体2の後部に植付作業機4が装着されており、該施肥機5は、肥料を貯蔵する貯蔵部80,…と、該貯蔵部80,…内の肥料を漏斗部81bを介して定量づつ下方に繰り出す繰出部81と、該繰出部81によって繰り出された肥料を圃場の施肥位置へ導く施肥導管82,…と、該施肥導管82,…内へ吹き込む肥料搬送用エアを貯留するエアチャンバ84とを備えており、エアチャンバ84の左端部にブロア83の吹出し口83aを接続し、前記ブロア83は、エアチャンバ84に一体のフランジ109に軸110によって前方に回動可能に取り付けられ、バックル111によって吹込み口84cと吹出し口83aとの間が密閉するように固定されるとともに、施肥作業を終了して貯蔵部80,…内の肥料を空にする場合はブロア83の吸込み口83bから導風管108を抜き、バックル111を外してブロア83を前方に回動させ、そのブロア83の吸込み口83bに清掃用ホース118を取り付け、ブロア83を作動させて、ホース118のノズル118aを吹込み口84cからエアチャンバ84内に挿入し、ノズル118aから吐出されるエアによってエアチャンバ84の内部に残っている肥料を除去するよう構成した、施肥機。」が記載されている。

5.当審の判断
5-1.取消理由1について
まず、本件発明は特許法第44条第1項に規定された適法な分割出願に係る発明か否かを検討する。
本件出願の出願当初の明細書である特開2000-184808号公報(資料1。以下、「本件当初明細書」という)の特許請求の範囲の請求項1に記載されている「エアタンク(51)前側の支点軸(143)に一端側を連結させるステー(141)の他端側をファンケース(137)の前面に延設させて固定させ」の記載について原出願を見ると、原出願である特願平7-46209号の出願当初の明細書である特開平8-214655号公報(資料2。以下、「原出願当初明細書」という)の第6頁左欄第41-43行目には、「ファンケース(137)に支持フレーム(141)を固定させ」と記載されている。ここで、本件当初明細書の、「ステーである支持フレーム(141)」(第6頁左欄第49-50行目)の記載からすると、原出願当初明細書に記載された「支持フレーム」は、本件当初明細書においては「ステー」と表現されてはいるが、両者の有する技術的意義に差異がないことは明らかである。そして、原出願当初明細書に記載された「固定させ」の「固定」が技術的に意味するものは、固定手段として当業者が必要に応じて採用しうる任意の手段を用いて「ファンケース」に「支持フレーム」を「固定」することを意味しており、特許異議申立人新穂友志が資料2の図1に「a」と朱記し、かつ「ボルトのようなもの」と表現したもののみを上記「固定」が意味しているとすることは適当ではない。一方、本件当初明細書に記載された「固定させ」の「固定」が技術的に意味するものは、固定手段として当業者が必要に応じて採用しうる任意の手段を用いて、「ファンケース」に、「エアタンク」前側の「支点軸」に一端側を連結させる「ステー」(すなわち、「支持フレーム」)の他端側を「ファンケース」の前面に「延設させ」た該「延設」部分を、「固定」することを意味している。さらに、本件当初明細書に記載された「ステー」(「支持フレーム」)が、「エアタンク前側の支点軸に一端側を連結さ」れるとともに、「他端側をファンケースの前面に延設さ」れることは原出願当初明細書の特に図1において明らかであって、「延設」部分とは「ステー」(「支持フレーム」)の一部をなすものである。してみれば、「固定」という技術的概念についてみれば、本件当初明細書に記載された、「エアタンク前側の支点軸に一端側を連結させるステー(支持フレーム)の他端側をファンケースの前面に延設させて固定させ」ることは、原出願当初明細書に記載された、「ファンケースに支持フレームを固定させ」るという概念に包含される。
したがって、本件出願は、原出願の出願当初の明細書に記載された事項の範囲内において原出願の一部を分割したものであり、本件出願の出願日は、特許法第44条第2項の規定により、原出願の出願日である平成7年2月9日とみなされる。そうすると、特許異議申立人新穂友志の提示した甲第1号証は、本件出願の出願前に頒布された刊行物とはいえず、甲第1号証について検討するまでもなく、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。

5-2.取消理由2について
本件発明と特許異議申立人新穂友志の提示した甲第2号証に記載された発明(以下、「引用発明」という)とを対比すると、引用発明における「走行車体」、「植付部」、「エアーチャンバー」、「ホッパー」、「繰出部」、「送風ファン」、「ブロア」、「施肥ホース」、「施肥田植機」、「縦軸」、「電動モーター」は、本件発明における「走行車」、「植付部」、「エアタンク」、「施肥ホッパ」、「繰出ケース」、「送風機」、「ファンケース」、「搬送ホース」、「田植機」、「支点軸」、「電動ファンモータ」にそれぞれ対応しており、引用発明の「ブロア33の圧風吹き出し口33a部のエアーチャンバー34との連結部」も本件発明の「ステー」も、共に連結手段である点で共通しており、また、引用発明の「ブロア」も本件発明の「ファンケース」も、回動可能である点で共通している。そうすると、両者は以下の点で一致し、また相違する。
一致点:
「走行車の後側に植付部を装設させると共に、走行車後部上面にエアタンク及び施肥ホッパ及び肥料繰出ケースなどを取付け、またエアタンク一側部に送風機のファンケースを接続させ、エアタンクからの送風によって搬送ホースを介して肥料繰出ケースからの肥料を植付部に送出させる田植機において、エアタンク前側の支点軸に一端側を連結させる連結手段をファンケースに固定させ、またファンケース内部の送風ファンを駆動させる電動ファンモータをファンケースに設け、エアタンク前方にファンケースを回動可能に構成した、田植機」の点。
相違点:
(1)エアタンクとファンケースを連結する連結手段が、本件発明では支点軸に一端側を連結させ、他端側をファンケースの前面に延設させて固定させるステーであるのに対して、引用発明では、縦軸(支点軸)に一端側を連結させる連結部であるが、該連結部の他端側はブロア(ファンケース)の前面には延設されておらず、また固定されてもいない点。
(2)電動ファンモータを、本件発明ではファンケース前面側に設け、ファンケースを回動したときにエアタンク前方にファンケースを収納して、ファンケースの機内側に電動ファンモータを位置させるよう構成したのに対して、引用発明では電動モーター(電動ファンモータ)をブロア(ファンケース)の後面側に設け、ブロア(ファンケース)を回動したときにブロア(ファンケース)の機外側に電動モーター(電動ファンモータ)が位置する構成である点。
上記相違点について検討する。
(1)点に関して、特許異議申立人新穂友志が、本件発明の「ステー」に関する事項が記載されているとして提示した甲第3号証ないし甲第3号証の3を検討すると、これら甲号各証のいずれにも、上記相違点(1)の構成は記載されておらず、また同相違点(1)の構成を示唆する記載もない。
すなわち、甲第3号証の図面第4図及び第5図において同特許異議申立人が「a」と朱記した部材は、「送風機60」を支持する部材であるとしても、固定的に支持するものであって、一端側を支点軸に連結して、「送風機60」を収納可能に支持するものではない。同様に、甲第3号証の2及び甲第3号証の3に記載された送風機の支持部材も、送風機を固定的に支持するものであって、一端側を支点軸に連結して、該送風機を収納可能に支持するものではない。また、同特許異議申立人が提示したその他の甲号各証のいずれにも、上記相違点(1)の構成は記載も示唆もされていない。
つぎに(2)点に関して、同特許異議申立人が、本件発明の「電動ファンモータがファンケースの前面側に設け」られていることに対して提示した甲第4号証及び甲第4号証の2を検討すると、これら甲号各証のいずれにも、上記相違点(2)の構成は記載されておらず、また同相違点(2)の構成を示唆する記載もない。
すなわち、これら甲号各証は単にモータがブロアの前面側に設けられていることを開示するにとどまるものであり、モータとブロアは機体に対して固定的に取り付けられていて、機体に対して収納可能には構成されておらず、また、収納可能に構成することを示唆してもいないので、これをもって直ちに引用発明のブロアと電動モーターとの位置関係を変更してブロアの前面側に電動モーターを設けることを、当業者が容易に想到することができたとすることはできない。また、同特許異議申立人が提示したその他の甲号各証のいずれにも、上記相違点(2)の構成は記載も示唆もされていない。
そして、本件発明は、上記各相違点の構成としたことにより、特許明細書に記載された、「エアタンク(51)前方に収納するファンケース(137)の機内側に電動ファンモータ(129)を位置させるから、トラック荷台などに載せる輸送時の左右幅を容易に縮少でき、輸送時の電動ファンモータ等の保護並びに振動低減などを容易に図ることができる」(特許掲載公報第7頁第14欄第1-5行)等の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は上記引用発明及び甲第3号証ないし甲第4号証の2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
なお、同特許異議申立人が、本件特許明細書に実施例として記載された「ピン144」に対して提示した甲第5号証ないし甲第5号証の5を検討したが、これら甲号各証は上記判断に影響を及ぼすに足るものではない。

5-3.取消理由3について
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「エアタンク前方にファンケースを収納してファンケースの機内側に電動ファンモータを位置させる」の記載に対して特許異議申立人新穂友志は、参考図(イ)及び(ロ)を提示し、「ファンケース」と「電動ファンモータ」との位置関係は本件特許明細書の第1図に示される態様だけではなく、参考図(イ)または(ロ)のような態様をも含み得るのであり、上記「機内側」の記載は曖昧であるので、特許請求の範囲の記載は不明瞭である旨を主張する。
そこで同特許異議申立人の上記主張を検討すると、特許請求の範囲の記載によれば、「ファンケース」は「エアタンク前方に収納」されるのであるが、参考図(イ)及び(ロ)の態様においては、「ファンケース」の「機内側」に「電動ファンモータ」を位置させているといえるが、「ファンケース」は「エアタンク前方」に「収納」されているとはいえないので、上記参考図(イ)及び(ロ)の態様は、「エアタンク前方にファンケースを収納してファンケースの機内側に電動ファンモータを位置させる」ものではなく、「エアタンク前方にファンケースを収納して」の限定が付された、「ファンケースの機内側に電動ファンモータを位置させる」の記載は曖昧であるとはいえず、特許異議申立人の上記主張は認められない。
5-4.取消理由4について
本件発明と、特許異議申立人井関農機株式会社が提示した甲第1号証に記載された発明(以下、「先願発明」という)とを対比すると、
先願発明における「走行車体」、「植付作業機」、「エアチャンバ」、「漏斗部」、「繰出部」、「ブロア」、「施肥導管」、「乗用田植機」、「軸」は、本件発明における「走行車」、「植付部」、「エアタンク」、「施肥ホッパ」、「肥料繰出ケース」、「ファンケース」、「搬送ホース」、「田植機」、「支点軸」にそれぞれ対応しており、また先願発明において、「ブロア」は、送風機及び該「送風機」を駆動するための電動モータを有していることが明らかである。さらに、先願発明の「フランジ」も、本件発明の「ステー」も、共にエアタンク(エアチャンバ)とファンケース(ブロア)を連結する連結手段である点で共通していると共に、引用発明の「ブロア」も本件発明の「ファンケース」も、回動可能である点で共通している。そうすると、両者は「走行車の後側に植付部を装設させると共に、走行車後部上面にエアタンク及び施肥ホッパ及び肥料繰出ケースなどを取付け、またエアタンク一側部に送風機のファンケースを接続させ、エアタンクからの送風によって搬送ホースを介して肥料繰出ケースからの肥料を植付部に送出させる田植機において、エアタンク前側の支点軸に一端側を連結させる連結手段をファンケースに固定させ、またファンケース内部の送風ファンを駆動させる電動ファンモータをファンケースに設け、エアタンク前方にファンケースを回動可能に構成した、田植機」の点で一致するが、以下の点で相違している。
(1)エアタンクとファンケースを連結する連結手段が、本件発明では支点軸に一端側を連結させ、他端側をファンケースの前面に延設させて固定させるステーであるのに対して、先願発明では縦軸(支点軸)に一端側を連結させるフランジであるが、該フランジはエアチャンバ(エアタンク)に一体に設けられていて、ブロア(ファンケース)の前面に延設されて固定されてはいない点。
(2)電動ファンモータが、本件発明ではファンケース前面側に設けられているのに対して、先願発明では電動モータを有していることは、ブロアの機能に照らして明らかではあるが、該電動モータをどこに設けたかは上記甲第1号証には記載がない点。
(3)エアタンク前方にファンケースを回動するのが、本件発明ではエアタンク前方にファンケースを収納してファンケースの機内側に電動ファンモータを位置させるものであるのに対して、先願発明では施肥作業を終了したときにブロアの吸込み口に清掃用ホースを取り付け、ブロアを作動させて、ホースのノズルをエアチャンバ内に挿入し、エアチャンバの内部に残っている肥料を除去するものである点。
そして、これらの相違点すべてを自明若しくは周知または慣用の技術手段であるとすることはできない。
したがって、本件発明は先願発明と同一ではないので、本件発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなけらばならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-01-17 
出願番号 特願2000-3197(P2000-3197)
審決分類 P 1 651・ 161- Y (A01C)
P 1 651・ 534- Y (A01C)
P 1 651・ 121- Y (A01C)
P 1 651・ 113- Y (A01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 佐藤 昭喜
渡部 葉子
登録日 2000-12-22 
登録番号 特許第3141131号(P3141131)
権利者 ヤンマー農機株式会社
発明の名称 田植機  
代理人 北村 修一郎  
代理人 藤原 忠治  

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