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審決分類 |
審判 全部申し立て 特174条1項 G11B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G11B |
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管理番号 | 1054844 |
異議申立番号 | 異議2001-70590 |
総通号数 | 28 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-02-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-21 |
確定日 | 2001-11-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3079959号「ディスク装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3079959号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件特許第3079959号の請求項1〜4に係る発明についての出願は、平成7年7月28日に出願され、平成12年6月23日にそれらの発明について特許の設定登録がなされ、その後、本件特許の請求項1〜4に係る発明について特許異議の申立てがなされ、さらに取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年7月27日に訂正請求がなされたものである。 2 訂正の適否について (1) 訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである。 願書に添付した明細書の段落【0021】及び【0022】の「発明の効果」に関する記載において、「また、フレキシブルケーブルの第2の腕部は、シャーシの前方側に折り返されて、その端を上記移動体のうち後端部より所定距離前側の位置に接続して設けてあり移動体がディスク収容位置に移動したときに、フレキシブルケーブルの第2の腕部全体がシャーシの上面と移動体との間に位置する構成であるため、移動体がディスク収容位置に移動した状態で、フレキシブルケーブルが移動体より後方に出っ張ることがなくなり、よって、ディスク装置の前後方向の寸法を小型に出来る。」(本件特許公報第8欄14〜23行)、及び「、且つ、ディスク装置の前後方向の寸法を小型に出来」(同公報第8欄39行)を削除する。 (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「出願当初の明細書等」という。)に記載された構成だけでは生じない効果について削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、この訂正は、新規事項の追加に該当するものではなく、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3) むすび 以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項、及び同条第3項において準用する第126条第2〜3項の規定に適合するものであるから、当該訂正を認める。 3 特許異議の申立てについて (1) 異議申立ての理由の概要 特許異議申立人の主張する異議申立ての理由は、大要次のとおりである。 ア 理 由 I 本件特許の請求項1〜4に係る発明は、その出願前に国内において頒布された甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 イ 理 由 II 特許法第17条の2第1項第3号の規定による明細書の補正(原審の平成12年4月7日付け手続補正)は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてなされておらず、同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第1号に該当し取り消されるべきものである。 (2) 当審の判断 ア 理由Iについて (ア) 本件発明 本件特許の請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明4」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 シャーシと、 ディスクが載置されるターンテーブルを有し、上記シャーシに移動可能に支持してあり、上記シャーシより前方に突き出たディスク交換位置と、上記シャーシ内のディスク収容位置との間で移動する移動体と、 第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有し、該第1の腕部を、上記シャーシの上面に固定され、且つ、該第2の腕部を、上記シャーシの前方側に折り返されて、その端を上記移動体のうち後端部より所定距離前側の位置に接続して設けてあるフレキシブルケーブルとよりなり、 上記移動体が上記ディスク収容位置に移動したときに、該フレキシブルケーブルの第2の腕部全体が上記シャーシの上面と上記移動体との間に位置する構成としたことを特徴とするディスク装置 【請求項2】 上記シャーシは、ディスク装置の前側から見て左右方向上一方側の下面側に凹空間部を有する形状を有する構成としたことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。 【請求項3】 ディスクが載置されるターンテーブルを有し、上記シャーシより前方に突き出たディスク交換位置と、上記シャーシ内のディスク収容位置との間を移動可能に設けられた移動体を有するディスク装置において、 上記移動体は、その片側を上記ディスクの一部がはみ出すように切り欠いた形状に形成してあり、 上記シャーシは、上記収容位置に移動した上記移動体の下面側に対向する第1の底板部、及び、上記移動体の片側からはみ出したディスクの下面に対向する第2の底板部を備え、該第2の底板部の下方に空間を有する形状に形成してあり、 第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有し、該第1の腕部を、上記シャーシの上記第1の底板部の上面に固定され、且つ、該第2の腕部は、上記シャーシの前方に折り返されて、その端が上記移動体に接続されて設けてあり、上記シャーシの上記第1の底板部と上記シャーシ内のディスク収容位置に位置する上記移動体との間に配置されたフレキシブルケーブルを有し、 上記シャーシの上記第2の底板部の上面には、上記フレキシブルケーブルが固定されていない構成としたことを特徴とするディスク装置。 【請求項4】 上記フレキシブルケーブルは、上記シャーシの前方側に折り返された上記第2の腕部の端を、上記移動体の後端部よりも所定距離前側に接続して設けてあり、上記移動体が上記ディスク収容位置に移動したときに、該第2の腕部全体が上記シャーシの上記第1の底板部の上面と上記移動体との間に位置するように構成としたことを特徴とする請求項3記載のディスク装置。」 (イ) 甲号証 異議申立人が証拠として提示した甲第1〜4号証には、それぞれ次の事項が記載されている。(なお、〔 〕内には本件発明1〜4の対応する用語を示す。) a 甲第1号証 [特開平6-150580号公報] 甲第1号証には、装置を大型化せずに、信号伝送用のケーブルに電気的ノイズが入ることを防げる「情報記録再生装置」に関する発明が記載されており、さらに図1〜2に示された第1実施例に関する記載をみれば、以下の発明が記載されている。 「光ディスク〔ディスク〕を回転駆動するスピンドルモータ(11)を有するハウジング(1)と、 前記ハウジング(1)に移動可能に支持され、光学ヘッドが搭載されたキャリッジ(5)と、 前記キャリッジ(5)と前記ハウジング(1)との間に電力供給用フレキシブルケーブル(19)と信号伝送用フレキシブルケーブル(20)とを設けた情報記録再生装置〔ディスク装置〕であって、 前記電力供給用フレキシブルケーブル(19)と信号伝送用フレキシブルケーブル(20)とを前記キャリッジ(5)の移動方向に分離して設置し、 前記信号伝送用フレキシブルケーブル(20)は、キャリッジ(5)の移動方向に沿い、かつ光ディスクの記録面に対して垂直な面で略U字状に湾曲されると共に、この湾曲部(20b)の下側に続く端部(20d)は、前記ハウジングに設けたプリント基板(17)上に載置されて一部をコ字状(20c)にして前記プリント基板に接続した情報記録再生装置。」 b 甲第2号証 [特開平3-274793号公報] 甲第2号証には、フレキシブル基板の無理な湾曲を無くすとともに、液晶ディスプレイの引き出し、収納移動時にフレキシブル基板を安定して湾曲、引き伸ばしができる「回路部材の接続装置」に関する発明が記載されており、さらに詳細にみれば、以下の発明が記載されている。 「ケース(11)に配設した第1の回路基板と(31)、 このケース(11)に対して引き出し又は収納可能に設けられたディスプレイ(17)に配設した第2の回路基板(41)と、 前記ケース(11)と前記ディスプレイ(17)の間に介在してその双方に対して摺動可能に設けたスライダ(13)と、 前記第1の回路基板と(31)と第2の回路基板(41)を電気的に接続する接続手段であって、コ字状〔略U字形状〕に形成され、一端(33a)を前記第1の回路基板(31)に、他端(33b)を前記第2の回路基板(41)に接続すると共に、中間部分(33c)を前記スライダ(13)に固定したフレキシブル基板〔フレキシブルケーブル〕(33)とを具備した回路部材の接続装置。」 そして、甲第2号証に記載された発明において、「フレキシブル基板(33)」をさらに詳細にみれば、このフレキシブル基板(33)は、その一端(33a)を固定部材であるケース(11)に、その他端(33b)を一方の移動部材であるディスプレイ(17)に、またその中間部分(33c)を他方の移動部材であるスライダ(13)にそれぞれ固定されているものであって、前記スライダ(13)とディスプレイ(17)がケース(11)に収納された場合には、前記フレキシブル基板(33)はその両端部(33a,33b)と中間部分(33c)の間の2つの部分(本件発明1〜4の「第1及び第2の腕部」に相当する)においてそれぞれ湾曲するものである。 してみれば、甲第2号証に記載された発明における「フレキシブル基板(33)」は、それの固定部材や移動部材に対する取付け位置や収納時の納まり方において、本件発明1〜4における「フレキシブルケーブル」とは明らかに異なるものである。 c 甲第3号証 [特開平5-342732号公報] 甲第3号証には、その図1、図2及びそれらの説明をみれば、以下の発明が記載されている。 「記録及び/又は再生装置本体(2)と、 円盤状記録媒体〔ディスク〕(3)が載置されるターンテーブル(18)とこれを回転駆動するスピンドルモータ(M)を有し、前記装置本体(2)に移動可能に支持してあり、前記装置本体より前方に突き出た記録媒体交換位置と、前記装置本体内の記録媒体収容位置との間で移動するトレイ状の移送体〔移動体〕(4)と、 前記スピンドルモータ(M)と前記装置本体(2)内に設けられるプリント基板とを接続するフレキシブルケーブル(19)とよりなり、 前記移送体(4)が前記記録媒体収容位置に移動したときに、前記フレキシブルケーブル(19)の一部が前記装置本体(2)と前記移送体との間に位置する構成とした記録及び/又は再生装置〔ディスク装置〕。」 そして、甲第3号証に記載された発明において、「フレキシブルケーブル(19)」をさらに詳細にみれば、このフレキシブルケーブル(19)は、その形状が明らかにされていないし、また装置本体(2)に対する取付け方、さらには移送体(4)が記録媒体収容位置に移動したとき、フレキシブルケーブル(19)が装置本体(2)や移送体(4)に対してどのような位置を占めるのかについて明らかにされていない。 d 甲第4号証 [実願平3-33978号(実開平6-26046号)のCD-ROM] 「メカシャーシ(2)と、 光ディスク〔ディスク〕(4)が載置され、前記メカシャーシ(2)に対して移動可能に支持され、光ディスク交換位置と光ディスク収容位置との間で移動するディスクトレイ(3)とを有する光ディスク記録再生装置〔ディスク装置〕において、 前記ディスクトレイ(3)は、その幅を光ディスク(4)の直径より小さくすることにより、前記メカシャーシ(2)を小型化した光ディスク記録再生装置。」 (ウ) 対比・判断 a 本件発明1及び2について 本件発明1及び2と甲第1〜4号証に記載された発明とを対比すると、甲第1〜4号証に記載された発明は、本件発明1及び2を特定する事項の一部である次の(i)及び(ii)の構成を具備していない。 (i) 第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有し、該第1の腕部を、シャーシの上面に固定され、且つ、該第2の腕部を、シャーシの前方側に折り返されて、その端を移動体のうち後端部より所定距離前側の位置に接続して設けてあるフレキシブルケーブル。 (ii) 上記移動体がディスク収容位置に移動したときに、該フレキシブルケーブルの第2の腕部全体が上記シャーシの上面と上記移動体との間に位置する構成。 そして、本件発明1及び2は、上記構成を具備することにより、訂正明細書に記載されたとおりの作用・効果を生じるものであるから、上記甲第1〜4号証に記載されたそれぞれの発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。 b 本件発明3及び4について 本件発明3及び4と甲第1〜4号証に記載された発明とを対比すると、甲第1〜4号証に記載された発明は、本件発明3及び4を特定する事項の一部である次の(i)〜(iii)の構成を具備していない。 (i) シャーシは、収容位置に移動した移動体の下面側に対向する第1の底板部、及び、上記移動体の片側からはみ出したディスクの下面に対向する第2の底板部を備え、該第2の底板部の下方に空間を有する形状に形成した構成。 (ii) 第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有し、該第1の腕部を、上記シャーシの上記第1の底板部の上面に固定され、且つ、該第2の腕部は、上記シャーシの前方に折り返されて、その端が上記移動体に接続されて設けてあり、上記シャーシの上記第1の底板部と上記シャーシ内のディスク収容位置に位置する上記移動体との間に配置されたフレキシブルケーブル。 (iii) 上記シャーシの上記第2の底板部の上面には、上記フレキシブルケーブルが固定されていない構成。 そして、本件発明3及び4は、上記構成を具備することにより、訂正明細書に記載されたとおりの作用・効果を生じるものであるから、上記甲第1〜4号証に記載されたそれぞれの発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。 イ 理由IIについて (ア) 原審の手続補正について 原審において平成12年4月7日付けでなされた手続補正は、【請求項1】を補正すると共に、【請求項3】及び【請求項4】を新たに追加し、さらに段落【0008】及び【0009】の【課題を解決するための手段】、並びに段落【0021】及び【0022】の【発明の効果】に関する事項をそれぞれ補正したものである。 この手続補正により補正された明細書では、その請求項1,3,4及び段落【0008】、【0009】において、「移動体がディスク収容位置に移動したときの、フレキシブルケーブルの第2の腕部と、シャーシ及び移動体との位置関係」を特定し、且つその構成に対応する効果として「ディスク装置の前後方向の寸法を小型にできる」旨の記載が追加されている。 (イ) 当審の判断 訂正請求により訂正された訂正明細書では、上記2において記載したとおり、原審での補正により効果として追加された「ディスク装置の前後方向の寸法を小型にできる」旨の記載が削除された。 また、原審での補正により請求項1,3,4及び段落【0008】、【0009】に追加された事項については、訂正明細書では何ら訂正されていないが、これらの事項は、出願当初の明細書等の段落【0016】及び【0017】の記載、並びに図4,6〜8から明確に読み取ることができる事項である。 そして、訂正明細書では、上記のとおり効果に関する事項が削除されているから、この効果に関する事項と、請求項1,3,4及び段落【0008】、【0009】において追加された事項とを併せて、明細書の補正に関する判断をすることはできない。 してみれば、訂正明細書に記載された事項は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、上記異議申立ての理由IIは採用することができない。 (3) むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜4についての特許を取り消すことはできない。 なお、当審において通知した取消理由については、上記異議申立ての理由IIと同じであるから、上記3(2)イに記載したと同じ理由によって解消したものである。 また、他に本件発明1〜4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ディスク装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 シャーシと、 ディスクが載置されるターンテーブルを有し、上記シャーシに移動可能に支持してあり、上記シャーシより前方に突き出たディスク交換位置と、上記シャーシ内のディスク収容位置との間で移動する移動体と、 第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有し、該第1の腕部を、上記シャーシの上面に固定され、且つ、該第2の腕部を、上記シャーシの前方側に折り返されて、その端を上記移動体のうち後端部より所定距離前側の位置に接続して設けてあるフレキシブルケーブルとよりなり、 上記移動体が上記ディスク収容位置に移動したときに、該フレキシブルケーブルの第2の腕部全体が上記シャーシの上面と上記移動体との間に位置する構成としたことを特徴とするディスク装置 【請求項2】 上記シャーシは、ディスク装置の前側から見て左右方向上一方側の下面側に凹空間部を有する形状を有する構成としたことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。 【請求項3】 ディスクが載置されるターンテーブルを有し、上記シャーシより前方に突き出たディスク交換位置と、上記シャーシ内のディスク収容位置との間を移動可能に設けられた移動体を有するディスク装置において、 上記移動体は、その片側を上記ディスクの一部がはみ出すように切り欠いた形状に形成してあり、 上記シャーシは、上記収容位置に移動した上記移動体の下面側に対向する第1の底板部、及び、上記移動体の片側からはみ出したディスクの下面に対向する第2の底板部を備え、該第2の底板部の下方に空間を有する形状に形成してあり、 第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有し、該第1の腕部を、上記シャーシの上記第1の底板部の上面に固定され、且つ、該第2の腕部は、上記シャーシの前方に折り返されて、その端が上記移動体に接続されて設けてあり、上記シャーシの上記第1の底板部と上記シャーシ内のディスク収容位置に位置する上記移動体との間に配置されたフレキシブルケーブルを有し、 上記シャーシの上記第2の底板部の上面には、上記フレキシブルケーブルが固定されていない構成としたことを特徴とするディスク装置。 【請求項4】 上記フレキシブルケーブルは、上記シャーシの前方側に折り返された上記第2の腕部の端を、上記移動体の後端部よりも所定距離前側に接続して設けてあり、上記移動体が上記ディスク収容位置に移動したときに、該第2の腕部全体が上記シャーシの上記第1の底板部の上面と上記移動体との間に位置するように構成としたことを特徴とする請求項3記載のディスク装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明はディスク装置に係り、特に、小型のコンピュータ装置本体内に組込まれて使用されるCD-ROM装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 図10は、本出願人が先に、特願平6-45582号等で出願したCD-ROM装置10を示す。CD-ROM装置10は、大略、シャーシ11と、移動体12とより成る。移動体12は、CD-ROMが載置されるターンテーブル13、光ピックアップ装置14等が組み込まれた構成を有する。移動体12は、Y1,Y2方向上両側をガイドレール15、16に支持されて、シャーシ11より前方に突き出たCD-ROM交換位置と、上記シャーシ11内のCD-ROM収容位置との間で、X1,X2方向に移動可能である。 【0003】 シャーシ11と移動体12との間は、図11に示すフレキシブルケーブル20によって電気的に接続してある。ここで、移動体12には、ターンテーブル回転モータ、光ピックアップ装置14等が組み込まれているため、フレキシブルケーブル20には、例えば43本もの多くの配線が形成してある。フレキシブルケーブル20の一端20a,20b,20cが、シャーシ11の奥部の回路基板21に接続してあり、他端20d,20e,20fが、移動体12に接続してある。フレキシブルケーブル20は、符号20gで示す帯部が湾曲してあり、湾曲している部分20hが、移動体12の移動に伴って移る。 【0004】 また、シャーシ11は、CD-ROM装置10の前側から見て右方向側の下面側に凹空間部17を有する形状を有する。この凹空間部17は、CD-ROM装置10をコンピュータ装置に組み込んだときに、コンピュータ装置内に組み付けてある電気部品等を逃げるために、形成してある。よって、凹空間部17は大きいことが望ましい。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかるに、従来のCD-ROM装置10においては、フレキシブルケーブル20の帯部20gは、移動体12の側面に沿っており、シャーシ11に対して垂直である部分であり、その幅寸法W1は、移動体12の高さ寸法H1より大きくは出来ない。一方、CD-ROM装置10の薄型化のため、移動体12の高さ寸法H1は、小さく定めてある。よって、帯部20gは、幅W1を狭く制限されており、幅W1内に例えば43本もの多くの配線を形成することは出来ない。そこで、従来のフレキシブルケーブル20は、例えば3枚のフレキシブルケーブル20-1,20-2,20-3を重ね合わせた構成としてあり、コストが高いものとなっていた。 【0006】 また、フレキシブルケーブル20の帯部20gが、移動体12の側面側に存在するため、図9(B)に示すように、移動体12の側面とガイドレール15との間に、上記フレキシブルケーブル20の帯部20gを収容するためのスペース18を必要とする。また、フレキシブルケーブル20の帯部20iがシャーシ11の凹空間部17の天板部11a上に沿っている。このため、ターンテーブル13に装着されたCD-ROM30の下面側についてみると、所定のスペース19は、CD-ROM30と上記の天板部11a上の帯部20iとの間に必要とされる。上記のスペース18の存在により、ガイドレール15はY2方向によって配され、且つ上記のスペース19の存在により、張出部11aはZ2方向によって配され、これによって、上記の凹空間部17は狭くなる傾向にあった。 【0007】 そこで、本発明は、上記課題を解決したディスク装置を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】 請求項1の発明は、シャーシと、 ディスクが載置されるターンテーブルを有し、上記シャーシに移動可能に支持してあり、上記シャーシより前方に突き出たディスク交換位置と、上記シャーシ内のディスク収容位置との間で移動する移動体と、 第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有し、該第1の腕部を、上記シャーシの上面に固定され、且つ、該第2の腕部を、上記シャーシの前方側に折り返されて、その端を上記移動体のうち後端部より所定距離前側の位置に接続して設けてあるフレキシブルケーブルとよりなり、 上記移動体が上記ディスク収容位置に移動したときに、該フレキシブルケーブルの第2の腕部全体が上記シャーシの上面と上記移動体との間に位置する構成としたものである。 【0009】 請求項2の発明は、上記シャーシは、ディスク装置の前側から見て左右方向上一方側の下面側に凹空間部を有する形状を有する構成としたものである。 請求項3の発明は、ディスクが載置されるターンテーブルを有し、上記シャーシより前方に突き出たディスク交換位置と、上記シャーシ内のディスク収容位置との間を移動可能に設けられた移動体を有するディスク装置において、 上記移動体は、その片側を上記ディスクの一部がはみ出すように切り欠いた形状に形成してあり、 上記シャーシは、上記収容位置に移動した上記移動体の下面側に対向する第1の底板部、及び、上記移動体の片側からはみ出したディスクの下面に対向する第2の底板部を備え、該第2の底板部の下方に空間を有する形状に形成してあり、 第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有し、該第1の腕部を、上記シャーシの上記第1の底板部の上面に固定され、且つ、該第2の腕部は、上記シャーシの前方に折り返されて、その端が上記移動体に接続されて設けてあり、上記シャーシの上記第1の底板部と上記シャーシ内のディスク収容位置に位置する上記移動体との間に配置されたフレキシブルケーブルを有し、 上記シャーシの上記第2の底板部の上面には、上記フレキシブルケーブルが固定されていない構成としたものである。 請求項4の発明は、上記フレキシブルケーブルは、上記シャーシの前方側に折り返された上記第2の腕部の端を、上記移動体の後端部よりも所定距離前側に接続して設けてあり、上記移動体が上記ディスク収容位置に移動したときに、該第2の腕部全体が上記シャーシの上記第1の底板部の上面と上記移動体との間に位置するように構成としたものである。 【0010】 【発明の実施の形態】 図1乃至図5は本発明の一実施例になるCD-ROM装置40を示す。CD-ROM装置40は、大略、シャーシ41と、移動体42とより成る。 移動体42は、メカトレイと呼ばれるものであり、CD-ROMが載置されるターンテーブル43、光ピックアップ44、ターンテーブル用モータ45、光ピックアップ移送機構46を有し、下面に、第2の回路基板としての回路基板47を有する。移動体42は、Y1,Y2方向上両側をガイドレール48、49に支持されて、図3及び図4に示す、シャーシ41より前方に突き出たCD-ROM交換位置P1と、上記シャーシ11内に入り込んだCD-ROM収容位置P2との間で、X1,X2方向に移動可能である。 【0011】 シャーシ41のX2方向の奥部には、第1の回路基板としての回路基板50がねじ止め固定してある。また、シャーシ41は、図5に示すように、底板部51aと、Y1側の一の側壁部51bと、Y2側の階段状部51cとを有する。階段状部51cは、底板部51aの端より立ち上がっている第1の側壁部51c-1と、第1の側壁部51c-1の上端よりY2方向に延在している板部51c-2と、板部51c-2の端より立ち上がっている第2の側壁部51c-3とよりなる。この階段状部51cによって、シャーシ41は、Y2側の下面側に凹空間部52を有する。この凹空間部52は、CD-ROM装置10をコンピュータ装置に組み込んだときに、コンピュータ装置内に組み付けてある電気部品等を逃げるために、形成してある。板部51c-2は、凹空間部52の天板部を構成する。ガイドレール48、49は、側壁部51b、第1の側壁部51c-1の内側に設けてある。 【0012】 上記の回路基板50と回路基板47との間は、本発明の要部をなす、フレキシブルケーブル60によって電気的に接続してある。フレキシブルケーブル60は、図6に示すように、平面図上略U字形状を有し、共に直線状をなし隣接して平行に延在している第1の腕部61及び第2の腕部62と、これらを繋ぐ円弧部63とを有する。ここで、フレキシブルケーブル60は、後述するようにシャーシ41の底板部51a上に配設される関係上、第1の腕部61、第2の腕部62及び円弧部63は、幅に関して、何らの制約もうけない。よって、第1の腕部61、第2の腕部62及び円弧部63の幅W2は、従来の幅W1の約3倍の寸法、即ち、43本の配線が一層に並べて配することが出来る寸法を有する。フレキシブルケーブル60は、43本の配線64を一層構造で有する。よって、フレキシブルケーブル60は、図11のフレキシブルケーブル20に比べて相当に安価である。 【0013】 また、フレキシブルケーブル60は、第1の腕部61の端に端子部65、第2の腕部62の端に端子部66を夫々有する。端子部65には、補強板67が接着してある。端子部66には、補強板68が接着してある。補強板68は、端子部66より大きく、端子部66より第2の腕部62上に張り出している規制板部68aを有する。規制板部68aは、後述するように、第2の腕部62の湾曲部分が端子部66に近づいたときに、湾曲部分が上方に盛り上がることを制限するように作用する。第1の腕部61は、その長手方向上略等間隔に、孔付きのラグ61-1,61-2,61-3を有する。 【0014】 また、フレキシブルケーブル60は、図7に併せて示すように、第1の腕部61のうち符号61aで示す部分、即ち、ラグ61-1とラグ61-2との間の部分を、シャーシ41の底板部51a上に貼り付けて、X1,X2方向に延在させて設けてある。ここで、部分61aの貼り付け位置は、図4に示すように、孔付きのラグ61-1,61-2の孔を、シャーシ41の裏側にあてがった治具のピンであって、底板部51aの孔51a-1,51a-2より突き出した位置決めピンに係合させることによって、一義的に定まる。 【0015】 第1の腕部61のうち符号61bで示す部分、即ち、端子部65寄りの部分は、図6中、線69に沿って曲げられY2方向に延在し、ラグ61-3の孔を同じく底板部51aの孔51a-3より突き出した位置決めピンに係合されて位置決めされる。この部分61bは、回路基板50の下側に位置している。部分61bの先端側は、図1に示すように、Y1方向に折り返され、補強板67が端子部65と共に、回路基板50の下面に実装してあるコネクタ70に差し込まれて接続してある。 【0016】 第2の腕部62は、図1、図7に示すように、X1方向に湾曲して折り返され、先端の補強板68が端子部66と共に、回路基板47の上面に実装してあるコネクタ71差し込まれて接続してある。これにより、移動体42とシャーシ41とが、移動体42が移動可能な状態で、電気的に接続してある。符号72は、湾曲部である。 【0017】 移動体42がCD-ROM交換位置P1とCD-ROM収容位置P2との間を移動するとき、移動体42は、フレキシブルケーブル60の上側を覆うように移動する。移動体42の移動に伴って、湾曲部72が第2の腕部62に沿ってX1,X2方向に順次移る。 【0018】 移動体42がX2方向に移動してCD-ROM収容位置P2に近づくと、湾曲部72が相対的に移動体42の規制板部68aに近づく。移動体42がCD-ROM交換位置P1の近くに位置しているときには、湾曲部72は移動体42から遠い位置にあり、規制板部68aの規制を受けず、湾曲部72は図3に示すように、上方向に大きく突き出ている。移動体42がX2方向に移動してCD-ROM収容位置P2に近づき、湾曲部72が相対的に移動体42の規制板部68aに近づくと、図8(A)に示すように、湾曲部72は規制板部68aによる規制を受けて、上方向への突き出しを制限されて、偏平化される。これにより、移動体42がCD-ROM収容位置P2に到ったときには、図8(B)に示すように、湾曲部72は回路基板50の下側に確実に入り込む。よって、回路基板50を、X1方向により張り出して設けること、即ち、回路基板50のX1,X2方向の幅寸法W3を大きくすることが可能となっている。また、上記規制板部68aは補強板68の一部を利用したものであり、専用の部品ではないため、部品点数は増えていない。 【0019】 また、フレキシブルケーブル60は、シャーシ41の底板部51a上に貼り付けて設けてあるため、図9(B)中のスペース18は不要となる。また、フレキシブルケーブル60が、シャーシ41の底板部51a上に貼り付けて設けてあり、板部51c-2上にはフレキシブルケーブル60が無いため、ターンテーブル43に装着されたCD-ROM30の下面側のスペース19は、板部51c-2の上面側に確保すればよい。よって、図9(A)に示すように、第1の側壁部51c-1は図9(B)よりY2方向に配され、板部51c-2は図9(B)よりZ1方向に配され、凹空間部52は、図9(B)の凹空間部17より広い。 【0020】 また、板部51c-2の上面のX2端側には、CD-ROM装置40の初期設定を行うためのストラップ装置80が設けてある。 また、本発明は、CD、光磁気ディスク等を媒体として使用する装置も含むものである。 【0021】 【発明の効果】 上述の如く、請求項1の発明によれば、シャーシと移動体とを、第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有するフレキシブルケーブルによって電気的に接続してなる構成であるため、従来の多層構造のフレキシブルケーブルによって電気的に接続してなる構成に比べて、製造コストを安価と出来る。 【0022】 請求項2の発明は、シャーシが、ディスク装置の前側から見て左右方向上一方側の下面側に凹空間部を有する形状を有する構成であり、第1の腕部と第2の腕部とを有し、平面図上略U字形状を有するフレキシブルケーブルを、第1の腕部を、シャーシの上面に固定させて、且つ、該第2の腕部を、上記シャーシの前方側に折り返えして設けた構成であるため、フレキシブルケーブルを移動体の側方に設けた構成にくらべて、上記凹空間部を広く出来る。 請求項3の発明は、シャーシの第2の底板部の上面にはフレキシブルケーブルが固定されていない構成であるため、第2の底板部をディスクに近づけて高さ位置を従来よりも高くすることが出来、これによって、第2の底板部の下側の空間を広くすることが出来る。 請求項4の発明によれば、ディスク装置のシャーシの第2の底板部の下側の空間を広くすることが出来る。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の一実施例になるCD-ROM装置の分解斜視図である。 【図2】 本発明の一実施例になるCD-ROM装置の通常時の状態を示す斜視図である。 【図3】 図2のCD-ROM装置の移動体がCD-ROM交換位置にあるときの状態を示す斜視図である。 【図4】 図3に示す状態のCD-ROM装置の平面図図である。 【図5】 図2中、V-V線に沿う断面図である。 【図6】 図1中のフレキシブルケーブルを示す図である。 【図7】 フレキシブルケーブルの組み込み及び接続を示す図である。 【図8】 移動体がCD-ROM収容位置に到るときのフレキシブルケーブルの湾曲部の状態を説明するための図である。 【図9】 本実施例のCD-ROM装置の概略構成を、先願のCD-ROM装置と対応させて示す図である。 【図10】 先願のCD-ROM装置の斜視図である。 【図11】 図10中のフレキシブルケーブルを示す図である。 【符号の説明】 30 CD-ROM 40 CD-ROM装置 41 シャーシ 42 移動体 43 ターンテーブル 44 光ピックアップ 45 ターンテーブル用モータ 46 光ピックアップ移送機構 47 回路基板 48,49 ガイドレール 50 回路基板 51a 底板部 51a-1〜51a-3 孔 51b 側壁部 51c 階段状部 51c-1 第1の側壁部 51c-2 板部 51c-3 第2の側壁部 52 凹空間部 60 フレキシブルケーブル 61 第1の腕部 61-1〜61-3 孔付きのラグ 61a 貼り付けられる部分 61b 端子部65寄りの部分 62 第2の腕部 63 円弧部 64 配線 65、66 端子部 67、68 補強板 68a 規制板部 69 折り曲げ線 70、71 コネクタ 72 湾曲部 80 ストラップ装置 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 1.発明の詳細な説明の欄の段落【0021】において、「また、フレキシブルケーブルの第2の腕部は、シャーシの前方側に折り返されて、その端を上記移動体のうち後端部より所定距離前側の位置に接続して設けてあり移動体がディスク収容位置に移動したときに、フレキシブルケーブルの第2の腕部全体がシャーシの上面と移動体との間に位置する構成であるため、移動体がディスク収容位置に移動した状態で、フレキシブルケーブルが移動体より後方に出っ張ることがなくなり、よって、ディスク装置の前後方向の寸法を小型に出来る。」(本件特許公報第8欄14〜23行)を、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。 2.発明の詳細な説明の欄の段落【0022】において、「、且つ、ディスク装置の前後方向の寸法を小型に出来」(同公報第8欄39行)を、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。 |
異議決定日 | 2001-10-16 |
出願番号 | 特願平7-193492 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(G11B)
P 1 651・ 55- YA (G11B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小松 正 |
特許庁審判長 |
麻野 耕一 |
特許庁審判官 |
相馬 多美子 犬飼 宏 |
登録日 | 2000-06-23 |
登録番号 | 特許第3079959号(P3079959) |
権利者 | ティアック株式会社 |
発明の名称 | ディスク装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠彦 |