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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1055066
異議申立番号 異議2001-71954  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-19 
確定日 2002-02-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第3125738号「通信端末装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3125738号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3125738号の請求項1ないし3に係る発明は、平成10年2月10日に特許出願され、平成12年11月2日に特許権の設定登録がなされたものであり、その後特許異議申立人キャノン株式会社より全請求項に対して特許異議の申立がなされ、当審より全請求項に対して取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年11月8日に特許権者より意見書が提出されたものである。

2.本件発明
特許第3125738号の請求項1ないし3に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。
「 【請求項1】 公衆交換回線網との接続のための網制御機能を有する第1の基板と、該第1の基板が接続され、前記網制御機能を制御する制御回路を有する第2の基板とを備えた通信端末装置において、前記第1及び第2の基板間を接続する信号線を備え、前記第1の基板からその仕様を識別させるための識別信号を前記信号線へ出力すべくなしてあることを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】 前記第1の基板は異なる仕様それぞれに対応する論理の識別信号を発生する識別信号発生手段を有し、前記第2の基板の制御回路は前記信号線を介して与えられる識別信号の論理に従って前記第1の基板の仕様を識別し、前記網制御機能を制御すべくなしてあることを特徴とする請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項3】 前記第2の基板は前記第1の基板の異なる仕様それぞれに対応した制御用プログラムを予め記憶した記憶手段を有し、前記制御回路は前記信号線を介して与えられる識別信号の論理に対応した制御用プログラムを前記記憶手段から読み出して前記網制御機能を制御すべくなしてあることを特徴とする請求項2に記載の通信端末装置。 」

3.特許異議の申立について
(1)特許異議の申立の理由の概要
特許異議申立人は、特許第3125738号の請求項1ないし3に係る発明は、証拠方法として挙げた本件出願日前に頒布された甲第1号証又は甲第2号証にそれぞれ記載された発明であるから特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであるが、そうでないとしても、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明から容易に発明できた発明であるか、あるいは甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明から容易に発明できた発明であり、また甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明から容易に発明できた発明であるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、いずれにしても特許第3125738号の請求項1ないし3に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。

(2)甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明
ア.特許異議申立人が挙げた甲第1号証ないし甲第3号証の各刊行物は次のとおりである。
甲第1号証:特開平3-155264号公報
甲第2号証:特開平1-170261号公報
甲第3号証:特開平3-171862号公報

イ.甲第1号証ないし甲第3号証に記載されている発明
(ア)甲第1号証には次のような記載がある。
(a)「本発明は、マイクロ回路化された汎用情報処理装置いわゆるマイクロコンピュータによって制御される画像通信装置に関する。」(1頁左下欄19行ないし右下欄1行)
(b)「画像通信装置とくにファクンミリ装置は、回線規格に適合したものでなければ使用することができない。ところが、この回線規格は国によって異なる場合が多い。このため、多国向けに出荷される装置では、それぞれの国の回線規格に対応するために、回線制御等を行なうCPUのブロクラムを国ごとに変えなければならなかった。
・・・(中略)・・・
本発明は、・・・(中略)・・・ROMを国別に用意することなく、ハード的に同一の基本構成をもつ画像通信装置を、回線規格等が異なる複数の国で使用させることができる画像通信装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
本発明は上述の課題を解決するため、国ごとの回線規格等にそれぞれ対応する複数の国別プロクラムをROMに格納するとともに、装置が使用される国を任意に設定させられるようにし、上記ROMに格納された複数の国別ブロクラムの中から、設定された国の回線規格等に対応する国別プロクラムを選択的に実行させる、という構成を備えたものである。
作用
本発明は、上述の構成によって、同一のROMに格納されたプログラムでもって複数種類の回線規格等に対応する回線制御を行なわせることができるため、ROMを国別に用意することなく、ハード的に同一の基本構成をもつ画像通信装置を、回線規格等が異なる複数の国で使用させることが可能となる。」(2頁左上欄14行ないし左下欄6行)
(c)「第5図は本発明の別の実施例による画像通信装置の要部だけを取り出して示す。
この実施例では、特定国の回線規格に対応して構成されたNCU1に上記設定部11が一体的に組み込まれている。このNCU1に組み込まれた設定部11は、たとえばプリント回路基板の配線ランドによる結線の目111の有無によって、つまり一種のワイワード論理によって、上記特定国を設定するnビットの2進コード信号を発生する。
この設定内容すなわち結線の目111のパターンは、NCU1の国別規格ごとに固定的に定められる。
以上のようにしてNCU1内の設定部11にて設定された特定国の設定信号は、そのNCU1が装置に搭載されたときに、n本の信号線112‐1〜112nおよび入出力ポート113を介してシステムバス10に導出されるようになる。CPU7はシステムバス10を介して上記特定国設定信号を読み出し、この読み出した特定国設定信号によって指定される特定国の国別プログラムをROM80から選択的に読み出して実行する。」(3頁右下欄8行ないし4頁左上欄8行)
(d)図面として、第1図にその発明の1実施例による画像通信装置の概略構成図が、第2図にプログラムを格納するROMの内容を示す図が、第5図にその発明の別の実施例による画像通信装置の要部だけを取り出した概略構成図が示されている。

これらの記載によれば、NCU(1)と、装置制御プログラム(82)を記憶しているROM(80)と、設定部(11)とが主CPU(7)のシステムバス(10)に接続され、結線目(111)で構成するようにした設定部(11)をNCU(111)内に設けるようにしてその出力線といえる国設定信号線をシステムバス(10)に接続されている入出力ポート(113)に接続するようにした発明が開示されているということができる。
また、上記(c)の中の「この実施例では、特定国の回線規格に対応して構成されたNCU1」という記載によれば、NCUは、回線規格毎に作成準備されることを示唆していることは明らかであり、同じく「NCU1内の設定部11にて設定された特定国の設定信号は、そのNCU1が装置に搭載されたときに、n本の信号線112‐1〜112nおよび入出力ポート113を介.してシステムバス10に導出されるようになる。」という記載によれば、NCU1を1つの独立した部品として想定していることは明らかである。

(イ)甲第2号証の明細書中には次のようなファクシミリ装置に関する発明が説明されている。
[技術分野]本発明は、ファクシミリ装置に関する。
[従来技術]近年.ファクシミリ通信は、一般の加入電話回線に限らず、自動車電話装置や無線装置に接続され、有線通信や無線通信など様々な方式で広く行なわれている。
しかしながら、従来のファクシミリ装置は.加入電話回線用、自動車電話用、あるいは無線装置用としてそれぞれ別々に作られており、1台の装置を各方式に共用することができないという開題があった.
[目的]本発明は.上記の問題を解決し、有線通信や無線通信など各方式に共用できるファクシミリ装置を提供することを目的とする.
[構成]このために本発明は、電話回線や無線装置に接続するためのインタフェース部を、接続するものに応じてそれぞれ複数種類備えると共に、それらのインタフェース部は、装置箱体に対して着脱自在に形成したことを特徴とするものである.
・・・(中略)・・・
本実施例では、箱体1内に装着するインタフェースユニットは、電話回線用インタフェースユニット2、自動車電話用インタフェースユニット3、無線用インタフェースユニット4の3種類ある.ユニットコード出力部207は.それら3種類を識別するためのコード信号C0,C1を出力し、システム制御部17bは、そのコード信号C0,C1により、装着されたインタフェースユニットを識別して、実行すべき動作を決定するようになっている。
・・・(後略)・・・
[効果]以上のように、本発明によれば、電話回線や無線装置に接続するためのインタフェース部を、接続するものに応じてそれぞれ複数種類備えると共に、それらのインタフェース部は、装置箱体に対して着脱自在に形成したので、1台のファクシミリ装置を有線通信や無線通信など各方式に共用できるようになる.

また、図面第1図として本発明の一実施例に係るファクシミリ装置の外観斜視図、第2図として電話回線用インタフェースユニット装着時の上記ファクシミリ装置の回路構成図がそれぞれ記載されている。

(ウ)甲第3号証の明細書中には次のようなファクシミリ装置に関する発明が説明されている。
[産業上の利用分野]この発明は、ファクシミリ装置に関する。
[従来の技術]ファクシミリ装置は、設置される国の回線規格に適合した性能や特性を備えたものでなければならず、その回線規格の違いによって、(1)回線へ信号を送出する時の信号送出レベル、(2)回線から信号を受信する時の最低信号受信レベル、(3)回線の保安のための各種保護機能、(4)回線との接続部である回線コネクタの仕様、(5)回線制御プログラムの内容、(6)表示装置を有するものにあっては、表示装置に表示を行うための言語対応プログラムの内容 等の異なるものが用いられている。そのため、従来のファクシミリ装置の生産にあたっては、このような仕向け先国の回線規格の違いに応じて、回路構成や使用部品あるいは回線制御プログラムや言選対応プログラムの内容を変えるようにしていた。そこで、この発明の目的は、回線規格に関係のない部分については仕向け先国に応じて仕分けした生産をする必要のないファクシミリ装置を提供することにある。
[課題を解決するための手段]上記目的を達成するため、第1の発明のファクシミリ装置は、本体部とプラグイン方式で接続され、回線とのインターフェース部を構成するプラグインユニットを備え、このプラグインユニソトは、接続される回線の規格に適合した仕様を有すると共に、その規格に適合した回線制御プログラムを格納したメモリを有し、接続される回線の規格に応じて上記プラグインユニットを差し替えるようにしたことを特徴としている。

また、図面第1図としてこの発明の一実施例のファクシミリ装置のLIUの回路構成を示すブロック図、第2図として上記LIUが本体部とプラグイン接続されることを示す図、第3図として各国別に製作された上記LIUと、上記LIUを挿入するための開口部を備えた本体部を示す図、第4図として上記LIUが上記本体部の開口部に挿入された状態を示す図がそれぞれ示されている。

(3)本件請求項に係る発明と刊行物に記載された発明との対比・判断
ア.本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1の画像通信装置は画像通信の端末装置として利用するものであるからこれが通信端末装置といえることは明らかであり、また、刊行物1のNCUは、公衆交換回線網との接続のための網制御機能を有する機能部品であり、さらに、主CPU(7)とこのシステムバス(10)に接続されたROM(80)などは、網制御機能を制御する機能も有しているべきことも明らかであるから網制御機能を制御する制御回路にも相当するということができる。
従って、本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明は、
「公衆交換回線網との接続のための網制御機能を有する第1の機能部品と、該第1の機能部品が接続され、前記網制御機能を制御する制御回路とを備えた通信端末装置において、前記第1の機能部品及び前記制御回路間を接続する信号線を備え、前記第1の機能部品からその仕様を識別させるための識別信号を前記信号線へ出力すべくなしてあることを特徴とする通信端末装置。」
の点で一致し、
(ア)公衆交換回線網との接続のための網制御機能を有する機能部品を、本件請求項1に係る発明が基板と限定しているのに対して、刊行物1に記載のものは、何ら限定していない点。
(イ)前記制御回路を、本件請求項1に係る発明が第2の基板に有するようにしているのに対して、刊行物1に記載された発明においては第2の基板に有するようにしていない点。
の2点で相違する。
そこでこれらの相違点について検討すると、(ア)については、本体装置に搭載して一体として動作するような部品を1つの基板として作成することは慣用技術にすぎないから、刊行物1のNCUを1つの基板として作成することは、当業者が適宜容易になし得る設計事項にすぎない。
(イ)については、刊行物1のものの主CPU(7)、ROM(80)中の装置制御プログラム領域(82)部分、システムバス(10)、入出力ポート113などが前記制御回路に相当する部分ということができる。一方、本件請求項1に係る発明において、前記制御回路を第2の基板に有するようにしている点については、特許権者が平成13年11月8日付意見書中で述べているように第2の基板は通信端末装置本体の基板であるメインボード(100)と別体のものとしても、前記制御回路をメインボード(100)と別体の第2の基板に有するようにした点について明細書及び図面をみても技術的にみて格別の意義があるとは認められず、従来一体となっていたものを部品が重複的に必要となることをいとわず別体の2部品に分けて構成するようにすることは、当業者ならば必要に応じて適宜容易に想到できる設計的事項の域を出ない。
従って、本件請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められる。

イ.本件請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1のものは、上記したように、NCU1に組み込まれた設定部11は、たとえばプリント回路基板の配線ランドによる結線の目111の有無によって、つまり一種のワイヤード論理によって、上記特定国を設定するnビットの2進コード信号を発生するものであり、この設定内容すなわち結線の目111のパターンは、NCU1の国別規格ごとに固定的に定められ、その設定信号はそのNCU1が装置に搭載されたときにn本の信号線112-1〜112nおよび入出力ポート113を介してシステムバス10に導出されるようになっているから、上記ア.で検討したようにこのNCU1を基板とした場合は、刊行物1のものは、前記第1の基板は異なる仕様それぞれに対応する論理の識別信号を発生する識別信号発生手段を有し、主CPU(7)、ROM(80)中の装置制御プログラム領域(82)部分、システムバス(10)などの制御回路は前記信号線を介して与えられる識別信号の論理に従って前記第1の基板の仕様を識別し、前記網制御機能を制御すべくなしているということができる。ところが、主CPU(7)、ROM(80)中の装置制御プログラム領域(82)部分、システムバス(10)などを基板とすることは、上記ア.で検討したように当業者ならば適宜容易になし得る設計的事項の域を出ないから、本件請求項2において付加的に限定した点も、当業者が容易になし得るものの域を出ず、したがって本件請求項2に係る発明も、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められる。

ウ.本件請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1のものは、上記3.(2)イ.(ア)(c)で摘記したように「NCU1内の設定部11にて設定された特定国の設定信号は、そのNCU1が装置に搭載されたときに、n本の信号線112‐1〜112nおよび入出力ポート113を介してシステムバス10に導出されるようになる。CPU7はシステムバス10を介して上記特定国設定信号を読み出し、この読み出した特定国設定信号によって指定される特定国の国別プログラムをROM80から選択的に読み出して実行する。」ものであり、ROM80は、NCUの異なる仕様それぞれに対応した制御用プログラムを予め記憶した記憶手段ということができるから、刊行物1のものも、NCUの異なる仕様それぞれに対応した制御用プログラムを予め記憶した記憶手段を有し、前記制御回路は前記信号線を介して与えられる識別信号の論理に対応した制御用プログラムを前記記憶手段から読み出して前記網制御機能を制御すべくなしてあるということができる。ところが、NCU及び前記制御回路をそれぞれ個別の基板とすることは、上記ア.で検討したように当業者ならば適宜容易になし得る設計的事項にすぎないから、本件請求項3において付加的に限定した点も、当業者が容易になし得るものの域を出ず、したがって本件請求項3に係る発明も、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められる。

なお、特許権者は意見書において、本件発明のものは、もとの通信端末装置の機能を拡張し、複数の異なる仕様のNCUに対応することはもとより、例えば仕様の異なるNCU間の通信も可能にするという作用効果を奏するものである旨主張している。この点、刊行物1のものも、接続しようとする回線の種類が1つだけのものに比べて、もとの通信端末装置の機能を拡張し複数の異なる仕様のNCUに対応することができるものということができ、また、例えば仕様の異なるNCU間の通信も可能にするという点は、回線の規格が異なる国間の通信もできるという意味ならば刊行物1に記載されたものも同様にできることは明らかであるから、これらは格別の作用効果とはいえず、この主張は、本件発明がいわゆる進歩性を有するという根拠としては採用できない。

4.むすび
以上から明らかなとおり、本件請求項1ないし3に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、従って、本件請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-12-14 
出願番号 特願平10-28605
審決分類 P 1 651・ 121- Z (H04N)
最終処分 取消  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 佐藤 聡史
江頭 信彦
登録日 2000-11-02 
登録番号 特許第3125738号(P3125738)
権利者 村田機械株式会社
発明の名称 通信端末装置  
代理人 川久保 新一  
代理人 川崎 勝弘  

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