• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない C02F
管理番号 1055724
審判番号 無効2000-35652  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-02-21 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-12-04 
確定日 2002-01-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2137367号発明「脱塩水製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2137367号の請求項1乃至3に係る発明は、昭和63年8月15日に特許出願され、平成10年7月17日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、栗田工業株式会社から平成12年12月4日付けで請求項1乃至3に係る発明の特許について無効審判の請求がなされ、特許権者から平成13年3月27日付け訂正請求がなされたが、この訂正請求について無効審判請求人から何らの応答もなかったので、その後書面審理とされたものである。
II.訂正の適否
1.訂正の内容
平成13年3月27日付け訂正請求の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、すなわち訂正事項a乃至訂正事項eのとおりに訂正するものである。
(1)訂正事項a:請求項1の「1.原水に存在する炭酸水素イオンの一部または全部を二酸化炭素に変化させるための炭酸水素イオン分解手段と、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素とその他の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とする脱塩水製造装置。」を、
「1.原水に存在する炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、この炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計と、この処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプと、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とする脱塩水製造装置。」と訂正する。
(2)訂正事項b:特許明細書(本件特許公告公報第4欄第18行乃至第25行)の「原水に存在する炭酸水素イオンの一部または全部を二酸化炭素に変化させるための炭酸水素イオン分解手段と、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素とその他の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とするものである。」を、
「原水に存在する炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、この炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計と、この処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプと、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とするものである。」と訂正する。
(3)訂正事項c:特許明細書(本件特許公告公報第4欄第43行)の「pHを5.5以下好ましくは4.0前後とする。」を、「pHを4.0以下とする。」と訂正する。
(4)訂正事項d:特許明細書(本件特許公告公報第7欄第22行)の「炭酸水素イオンの一部または全部を」を、「炭酸水素イオンの全部を」と訂正する。
(5)訂正事項e:特許明細書(本件特許公告公報第7欄第26行)の「また原水のpHを4.0前後としてから」を、「また原水のpHを4.0以下としてから」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1について、「この炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計と、この処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプと、」を追加すると共に、「炭酸水素イオンの一部または全部」を「炭酸水素イオンの全部」と、「二酸化炭素に変化させるための炭酸水素イオン分解手段」を「二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段」と、「二酸化炭素とその他の溶存気体」を「二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体」とそれぞれ訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。そして、これら訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
また、訂正事項b乃至eは、特許請求の範囲の減縮に伴う明りょうでない記載の釈明に該当するものであり、そして、これら訂正も特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第134条第2項ただし書の規定及び特許法第134条第5項で準用する平成6年改正法による改正前の第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.本件訂正後の特許発明
本件無効審判請求の対象となった請求項1乃至3に係る発明については、上記訂正を認容することができるから、本件訂正後の発明は、訂正された請求項1乃至3に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件訂正発明1乃至3」という)。
「【請求項1】原水に存在する炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、この炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計と、この処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプと、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とする脱塩水製造装置。
【請求項2】膜脱気装置の処理水に残留する二酸化炭素を炭酸水素イオンに変化させるためのアルカリ添加手段を付設する請求項1記載の脱塩水製造装置。
【請求項3】二次透過水の残留イオンを除去するためのイオン交換装置を2段式逆浸透膜装置の後段に設置する請求項1または請求項2に記載の脱塩水製造装置。」
IV.請求人の主張と証拠の記載事項
1.請求人の主張
請求人は、証拠方法として下記2.の証拠を提出して、訂正前の本件請求項1乃至3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、これら発明の特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきであると主張している。
2.証拠の記載事項
甲第1号証乃至甲第5号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)甲第1号証:特開昭62-273095号公報
(a)「逆浸透膜装置の透過水流出管に撥水性膜を装着した脱気装置を接続するか、あるいは当該脱気装置の脱気水流出管に逆浸透膜装置を接続し、さらに逆浸透膜装置の濃縮水流出管にエゼクタの駆動水側を接続するとともに、脱気装置の吸引配管にエゼクタの吸引側を接続し、逆浸透膜装置の濃縮水の残圧を用いて当該エゼクタを駆動させることにより、逆浸透膜装置の透過水あるいは供給水に含まれている気体を前記脱気装置の撥水性膜を介して除去することを特徴とする水処理装置。」(第1頁左欄特許請求の範囲の項)
(b)「本発明はたとえば電子工業・・・における超純水製造用の逆浸透膜装置を含む水処理装置に関するものであり、逆浸透膜装置と撥水性膜を装着した脱気装置とを組み合わせ、逆浸透膜装置の凝縮水の残圧を用いてエゼクタを駆動させ、当該エゼクタの吸引力を用いて逆浸透膜装置の透過水あるいは供給水に含まれている遊離炭酸や酸素等の気体を前記脱気装置の撥水性膜を介して除去する水処理装置に関するものである。」(第1頁右欄第4行乃至第13行)
(c)「しかしながら逆浸透膜装置は原水中に含まれる遊離炭酸や酸素等の気体を除去することができず、これらの気体が混入すると好ましくない場合は、逆浸透膜装置の前段にたとえば真空脱気装置を設置して原水中の気体をあらかじめ除去したり、あるいは逆浸透膜装置の後段に真空脱気装置を設置して逆浸透膜装置の透過水中の気体を除去する必要がある。また逆浸透膜装置の後段に強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂を用いる混床式純水製造装置を設置して、逆浸透膜装置の透過水を当該混床式純水製造装置で処理して純水を得る場合、当該強塩基性アニオン交換樹脂の負荷を低減させるために、原水に酸を添加して原水中の炭酸イオン、炭酸水素イオン等の炭酸塩アルカリ成分を遊離炭酸に分解し、当該遊離炭酸を脱気除去した後、逆浸透膜装置で処理したり、あるいは当該原水を脱気処理することなく逆浸透膜装置で処理した後、その透過水中の遊離炭酸を脱気除去することも行われている。」(第2頁左上欄第1行乃至第19行)
(d)「このように逆浸透膜装置の前段あるいは後段に真空脱気装置を設置し、逆浸透膜装置の供給水あるいは透過水に含まれる気体を除去することが必要となる分野において、従来から用いられている真空脱気装置は種々の問題がある。」(第2頁右上欄第10行乃至第14行)
(e)「また本発明の他の目的は、脱気装置に必要とする真空ポンプを省略し、装置の設置コストおよび運転コストを低減し、しかも運転制御も極めて容易な脱気脱塩水を得ることのできる水処理装置を提供するところにある。」(第2頁右下欄第17行乃至第3頁左上欄第1行)
(f)「第2図は本発明の他の実施態様を示すフローの説明図であり、逆浸透膜装置2の前段に脱気装置5を配置し、先に逆浸透膜装置2の供給水中に含まれている気体を除去するものである。すなわち高圧ポンプ10を駆動して当該ポンプ10の吸引水頭により供給水槽9内の供給水を撥水性膜4て仕切られた一方の室に通流させ、また後段の逆浸透膜装置2より得られる濃縮水の残圧を用いてエゼクタ7を駆動させ、当該エゼクタ7で発生する吸引力を吸引配管8を介して脱気装置5の撥水性膜4で仕切られた他方の室に作用させる。
したがって撥水性膜4で仕切った一方の室に通流する供給水中の気体は撥水性膜4を介して他方の室に吸引され脱気される。当該脱気水を脱気水流出管13を介して逆浸透膜装置2に圧入し、逆浸透膜1で仕切った一方の室に通流させ、逆浸透膜1で仕切った他方の室から塩類が減少した透過水を得、このようにして得た脱気脱塩水を透過水流出管3から得る。」(第3頁右下欄第3行乃至第4頁左上欄第2行)
(g)「なお第1図に示したフローにおいて、逆浸透膜装置2に用いる逆浸透膜1として耐酸性のものを用いる場合は、逆浸透膜装置2の供給水にあらかじめ酸を添加したり・・・供給水中に含有する炭酸塩アルカリ成分を遊離炭酸に分解し、その後に逆浸透膜装置2および脱気装置5で処理することもできる。」(第4頁左下欄第11行乃至第18行)
(2)甲第2号証:実願昭55-107847号(実開昭57-35795号)のマイクロフィルム
(a)「原水中に含有された気体を脱気した後、該原水をイオン交換樹脂膜に透過せしめ含有するイオンを除去する純水の製造装置において、前記原水に圧力を加える加圧装置と、加圧された原水から含有する気体を水の表面張力により分離する気液分離被膜を設けた脱気装置と、加圧された原水から含有する不純物を逆浸透圧により除去する逆浸透圧装置と、原水中に含有するイオンを除去するイオン交換樹脂を設けたイオン除去装置を有することを特徴とする純水の製造装置。」(第1頁実用新案登録請求の範囲の項)
(b)「純水を製造する場合、一般に純水の原料となる水道水のような原水から該原水中の炭酸ガス(CO2)、酸素(O2)等の気体を除去したのち、イオン交換樹脂膜を透過させ、該イオン交換樹脂によって、前記原水中に含有されているNaイオン、やCaイオン等を除去して高抵抗の純水を得ている。ここでこのようなCO2ガス等が炭酸(H2CO3)の形で原水中に溶解していると、イオン交換樹脂に負荷をかけるので、除去するものである。」(第2頁第1行乃至第10行)
(c)「第2図に示すように水道水のような原水の供給用配管11の途中に加圧ポンプ12を設けて前記供給用配管11内の原水を加圧して気液分離被膜13を装着した原水供給用配管11内を通過させる。・・・ ここであらかじめ原水に酸を添加してPHを酸性の状態にし原水中の炭酸をCO2化する。また気液分離被膜に硫酸カルシウム(CaSO4)等が被着形成されないように原水に金属封鎖剤としてのポリりん酸ソーダ等を添加する。」(第4頁第8行乃至第5頁第3行)
(d)「本考案の装置によって原水中に溶解しているCO2のようなガスを除去したのちイオン交換樹脂を透過させて純水を製造すれば、従来のように大規模な装置を必要とせず、また前記気液分離被膜は原水の供給管の途中に容易に設置でき、前記装置を稼動させる動力費も必要としないため、」(第6頁第2行乃至第8行)
(3)甲第3号証:特開昭63-77588号公報
(a)「逆浸透膜・ポリッシャ等を用いた超純水製造装置において、疎水性チューブから成る脱気装置を備えたことを特徴とする超純水製造装置。」(第1頁左欄特許請求の範囲の項)
(b)「脱気装置を構成する疎水性チューブに導かれた水に含まれる炭酸ガス等の溶存ガスは、チューブの外側を真空に引くことにより、外部からの微粒子等の不純物の混入なしで、チューブの微細多孔を通して脱気される。水中の炭酸ガスと炭酸イオンとはその水のPHに応じて一定の比率でバランスしているため、炭酸ガスを除くと同時に炭酸イオンも除くことになる。このためポリッシャに加わる負荷を軽減できる。」(第2頁左上欄第4行乃至第12行)
(c)「本発明のさらに他の実施例を第3図に示す。本実施例において、脱気器4をポリッシャ7,7’および逆浸透膜3の前に設けたことが第1図に示す実施例と異なる。」(第2頁右上欄第16行乃至第20行)
(d)「本発明によれば、微粒子等の不純物の混入なしに脱気できるので、高純度の超純水が得られる。またポリッシャに加わる負荷を軽減でき、ランニングコストを下げることができる。また、脱気器内を真空に引くのに、濃縮水排水ライン等の排水ラインにエジェクタを設けることにより、小形、安価な脱気装置を提供できる。」(第2頁左下欄第10行乃至第16行)
(4)甲第4号証:特開昭62-42787号公報
(a)「活性炭等により前処理した原水に殺菌剤及び/又はpH調整剤を添加する手段と、該殺菌剤及び/又はpH調整剤を添加した原水を逆浸透膜処理する第1の逆浸透膜分離器と、該第1の逆浸透膜分離器の透過水にヒドラジンを添加する手段と、該ヒドラジンを添加した第1の逆浸透膜分離器の透過水をさらに逆浸透膜処理する第2の逆浸透膜分離器と、第2の逆浸透膜分離器の透過水を取り出す系及び第2の逆浸透膜分離器の濃縮水を前記第1の逆浸透膜分離器の原水供給系に返送するための系とを備えてなることを特徴とする高純度水の製造装置。」(第1頁左欄特許請求の範囲の項)
(b)「第1図は本発明の高純度水の製造装置の一実施例を示す系統図である。
図示の実施例に係る装置は、脱ガス塔1、第1の逆浸透膜分離器2、第2の逆浸透膜分離器3及び混床塔4から主として構成されており、活性炭等により前処理した原水を脱ガス塔1に送給する配管11、原水に殺菌剤を添加する配管12、原水にpH調整剤を添加する配管13、脱ガス塔1の処理水を第1の逆浸透膜分離器2に送給する配管14、第1の逆浸透膜分離器2の透過水を第2の逆浸透膜分離器3に送給する配管15、第2の逆浸透膜分離器2の透過水にヒドラジンを添加する配管16、同じく、この透過水にpH調整剤を添加する配管17、第2の逆浸透膜分離器の透過水を混床塔4に送給する配管18、第2の逆浸透膜分離器の濃縮水を第1の逆浸透膜分離器2の上流側に戻す配管19、混床塔4の処理水をサブシステム等に送給する配管20を備えている。」(第3頁右上欄第4行乃至左下欄第1行)
(c)「配管13より添加されるpH調整剤としては、H2SO4、HCl等の酸が用いられ、原水のpHが4〜6となるように調整される。原水のpHを4〜6に調整することにより、後段の第1の逆浸透膜分離器2の逆浸透膜の加水分解が最小限におさえられ、CaCO3等の膜面への析出付着も防止される。また、後段の脱ガス塔1での脱ガスが容易となる。・・・この脱ガス塔1におけるCO2成分の効率的除去の面からは、原水のpHは5〜5.5程度となるように調整するのが特に好ましい。」(第3頁左下欄第19行乃至右下欄第18行)
(d)「配管16より添加されるヒドラジンは、第1の透過水中のヒドラジン濃度が5ppm程度となるように注入される。ヒドラジン添加により、第1の透過水中の酸素や残留塩素等の酸化剤成分が、下記式に従って還元されて速やかに除去される。」(第4頁左上欄第17行乃至右上欄第2行)
(e)「配管17より添加されるpH調整剤としては、NaOH等の塩基が用いられ、第1の透過水のpHが8〜9となるように調整される。
このように、第1の透過水のpHを調整することにより、第2の逆浸透膜分離器3における炭酸成分の除去効率を大幅に向上させることが可能となる。即ち、第1の透過水中の炭酸成分はCO2+H2O→←H++HCO3-のような平衡状態にある。一般に逆浸透膜はCO2の除去性能は低いが、HCOの除去能は高い。このためpHを8〜9に調整して、この平衡を右に移行させて、[HCO3-]/[CO2]を大きくすることによって、炭酸成分の除去効率を向上させることが可能となるのである。」(第4頁右上欄第20行乃至左下欄第13行)
(5)甲第5号証:特開昭61-4591号公報
(a)「入口と製品出口と塩水出口とを有する第1の逆浸透ユニットを用意する工程、入口と製品出口と塩水出口とを有する第2の逆浸透ユニットを用意する工程、前記第2の逆浸透ユニットを前記第1の逆浸透ユニットの下流に配置し、前記第1の逆浸透ユニットの製品出口を前記第2の逆浸透ユニットの入口へ連結する工程、精製すべき水を前記第1の逆浸透ユニットの入口へ供給する工程、前記第1の逆浸透ユニットからの製品を前記第2の逆浸透ユニットの上流位置において、化学的変換により該製品の二酸化炭素濃度を減らすため、7以上のpHを有する溶液よりなる化学処理剤で処理する工程、前記第2の逆浸透ユニットからの製品を精製した水の使用または貯蔵点へ向ける工程を含むことを特徴とする水精製方法。」(第1頁左欄特許請求の範囲の項)
(b)「大部分の原水供給源においては、逆浸透による直接処理は膜表面に炭酸カルシウムの沈澱を発生させ、生産性を減ずるほどカルシウム濃度およびアルカリ度のレベルが高い。沈澱を防止するため、軟化による、または酸の添加による前処理が実施される。両方法は逆浸透膜の有効性を減ずる。・・・もしアルカリ度を低くするため酸を添加すれば、アルカリ分は炭酸へ変換され、膜を自由に通過し、そのため下流処理のコストが上昇する。」(第2頁右下欄第17行乃至第3頁左上欄第11行)
(c)「例証具体例においては、精製すべき水をコンディショニングするため、イオン交換タイプの水軟化器が第1の逆浸透ユニットの上流に設けられる。前記した処理手段は、水酸化ナトリウム溶液のような7以上のpHを持つ溶液を導入することを含む。」(第3頁右上欄第19行乃至左下欄第4行)
(d)「私は、直列に接続した2個の逆浸透ユニットによる水処理は、1個の逆浸透モジュールを使用する場合に比べて品質が2倍も高い水を与えないことを発見した。これは第1の逆浸透ユニット48へ入って行く水の上流処理からの重炭酸ナトリウムが炭酸ナトリウムと二酸化炭素とに解離するからである。この解離は通常10%以下であるが、なお提供される二酸化炭素の認められる量が存在する。この二酸化炭素は逆浸透膜を通過する。このため発生した二酸化炭素は除去されなくて処理した水中に存在する。直列にある第2の逆浸透ユニットを第1の逆浸透ユニットで置換することにより、第1の逆浸透ユニットを通過する二酸化炭素は第2の逆浸透ユニットをも通過するであろう。炭酸塩は逆浸透膜によって重炭酸塩よりももっと容易に排除される。二酸化炭素を炭酸塩へ変換することにより、実質的に改良された性能が得られる。他の塩基も二酸化炭素を除去するために使用し得る。例えば、炭酸ナトリウムは水酸化ナトリウムが除去するほど多量に除去しないが使用することができる。」(第5頁左上欄第4行乃至右上欄第5行)
(e)「例えば軟化器18を使用する代わりに、水は脱アルカリで前処理することができる。この目的のため、強制吸引脱気装置と共に酸供給を使用することができ、」(第6頁左下欄第5行乃至第8行)
V.被請求人の反論
本件訂正発明1乃至3は、2段式逆浸透膜装置とからなる脱塩水製造装置に係り、その第1逆浸透膜装置の前に炭酸水素イオン分解手段と二酸化炭素や溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置を設けたものであるが、これまでの従来技術は、すべて第2逆浸透膜装置の前に脱気手段を設けたものである。また、甲第1号証乃至甲第5号証にも、2段式逆浸透膜装置とからなる「脱塩水製造装置」の第1逆浸透膜装置の前に炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させる炭酸水素イオン分解手段、pH4.0以下とする酸注入ポンプ及び膜脱気装置等を設けることについては記載されていないし、本件訂正発明1乃至3の技術的課題(原水中の溶存酸素の存在による微生物の繁殖や逆浸透膜の酸化の問題と二酸化炭素の除去が不充分という問題)についても何ら記載されていないから、2段式逆浸透膜装置の第1逆浸透膜装置の前に炭酸水素イオン分解手段、酸注入ポンプと膜脱気装置等とを設けることは当業者といえど容易に想到できないことである。
VI.当審の判断
1.本件訂正発明1について
甲第1号証の特に第2図には、逆浸透膜装置の前に膜脱気装置を設けた水処理装置が記載され、そして、この水処理装置は、上記(e)の「容易な脱気脱塩水を得ることのできる水処理装置を提供する」という記載から、「脱塩水製造装置」と云えるものである。また、膜脱気装置については、甲第1号証の上記(c)の「原水に酸を添加して原水中の炭酸イオン、炭酸水素イオン等の炭酸塩アルカリ成分を遊離炭酸に分解し、当該遊離炭酸を脱気除去した後、逆浸透膜装置で処理したり、」という記載や上記(g)の「逆浸透膜装置2の供給水にあらかじめ酸を添加したり・・・供給水中に含有する炭酸塩アルカリ成分を遊離炭酸に分解し、その後に逆浸透膜装置2および脱気装置5で処理することもできる。」という記載に照らせば、その作用・機能は、その配置が逆浸透膜装置の前・後の如何にかかわらず、「原水に酸を添加して炭酸水素イオンを二酸化炭素に変化させて脱気処理する」ことと云えるから、甲第1号証には、本件訂正発明1の記載振りに則れば「原水に存在する炭酸水素イオンを二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置を通過した処理水を処理する逆浸透膜装置とからなることを特徴とする脱塩水製造装置」の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明が溶存酸素を脱気するか否かについては、甲第1号証の上記(b)の「逆浸透膜装置の透過水あるいは供給水に含まれている遊離炭酸や酸素等の気体を前記脱気装置の撥水性膜を介して除去する水処理装置に関するものである。」という記載や「このようにして生じた遊離炭酸および供給水に元々存在する遊離炭酸および酸素等の気体を脱気装置5によって除去する。」(第4頁右上欄第5行乃至第8行)という記載さらには甲第1号証の第5頁上段の「効果」のいわゆる溶存酸素10ppmが0.5ppmに減少したという結果から、甲1発明も溶存酸素を脱気することは明らかである。
そうすると、両者は、「原水に存在する炭酸水素イオンを二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を処理する逆浸透膜装置とからなることを特徴とする脱塩水製造装置」の点で一致し、次の(イ)乃至(ハ)の点で相違していると云える。
(イ)本件訂正発明1は、「2段式逆浸透膜装置とからなる脱塩水製造装置」であるのに対し、甲1発明は、「1つの逆浸透膜装置とからなる脱塩水製造装置」である点
(ロ)本件訂正発明1は、炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるものでありそのために「炭酸水素イオン分解手段」を設けているのに対し、甲1発明は、炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるか明らかでない点
(ハ)本件訂正発明1は、炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるために「炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計」と「処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプ」とを設けているのに対し、甲1発明は、酸を添加するだけであって酸のpHを4.0以下とするものではなく、「pHを計測するpH調節計」や「酸の注入量を調節する酸注入ポンプ」も有していない点
次に、これら相違点に関する他の証拠について検討するに、上記甲第2号証に記載の「純水の製造装置」は、甲第1号証と同様「1つの逆浸透膜装置」だけを使用するものであるから、この証拠は本件訂正発明1の上記(イ)の点を示唆するものではない。また、この証拠には、酸の添加について、「あらかじめ原水に酸を添加してPHを酸性の状態にし原水中の炭酸をCO2化する」(上記(c)参照)と記載されているだけであり、この記載からでは、処理水中の炭酸を二酸化炭素に変化させているものの炭酸水素イオンを二酸化炭素に変化させているのかまでは明らかではなく、また炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させることやそのために処理水のpHを4.0以下とすることについては示唆されていないから、この証拠は上記(ロ)や(ハ)の点について示唆するものではない。
また、上記甲第3号証に記載の「超純水製造装置」は、脱気器4を逆浸透膜装置の前に設置する「超純水製造装置」(第3図参照)をその具体例の一つとするものであるが、この具体例も「1つの逆浸透膜装置」だけを使用するものであるから、本件訂正発明1の上記(イ)の点を示唆するものではない。加えて、この証拠には、炭酸水素イオンの酸による分解については何ら示唆されていないから、この証拠も上記(ロ)及び(ハ)の点については示唆するものではない。
してみると、上記甲第1号証乃至甲第3号証は、いずれも「一つの逆浸透膜装置」とからなる水処理装置に関するものであり、本件訂正発明1の上記(イ)乃至(ハ)の点について示唆するものではないと云える。
さらに、上記甲第4号証と甲第5号証について検討すると、これら証拠は、共に「2段式逆浸透膜装置」とからなる水処理装置に関するものであるから、本件訂正発明1の上記(イ)の点を示唆するものではあるが、本件訂正発明1の上記(ロ)及び(ハ)の点についてまで示唆するものではない。
すなわち、上記甲第4号証について言及すると、この証拠に記載の「高純度水の製造装置」では、上記(c)の記載によれば、第1逆浸透膜装置の前の原水のpHが4〜6に調整されているが、上記(e)の「第1の透過水のpHを調整することにより、第2の逆浸透膜分離器3における炭酸成分の除去効率を大幅に向上させることが可能となる。」との記載によれば、第1の透過水(第1逆浸透膜装置の透過水)にはかなりの炭酸成分が含有され、そしてこの炭酸成分が第2逆浸透膜装置で大幅に除去されていることが明らかであるから、この証拠に記載の「高純度水の製造装置」は、pHを調整するものの二酸化炭素の一部が第1逆浸透膜装置を通過することを前提としたものであり、炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させて積極的にその全部を膜脱気するというものではない。もっとも、本件訂正発明1でも、本件特許明細書に「膜脱気装置6で・・・二酸化炭素を完全に除去することは困難である。」(特許公報第6欄第31行乃至第33行)と記載されているように、第1逆浸透膜装置の透過水には微量の二酸化炭素が残留しているが、二酸化炭素を全部除去した結果やむを得ず微量に残存している本件訂正発明1と、二酸化炭素の通過を前提として後方の第2逆浸透膜装置で積極的に二酸化炭素を除去する甲第4号証に記載の製造装置とは、二酸化炭素の除去に関する技術思想が別異であると云うべきであるから、このような上記甲第4号証は、本件訂正発明1の上記(ロ)及び(ハ)の点についてまで示唆しているものではないと云うべきである。さらに、この証拠に記載の「高純度水の製造装置」では、上記(d)の記載によれば、第1逆浸透膜装置を通過した第1の透過水にヒドラジンが添加され第1の透過水中の酸素等が還元除去されているから、この事実によれば第1逆浸透膜装置の前では原水中の溶存酸素は脱気されておらずそのまま第1逆浸透膜装置を通過していることも明らかである。
そうすると、上記甲第4号証には、2段式逆浸透膜装置における第1逆浸透膜装置の前で原水中の溶存酸素を除去することや炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させて積極的にその全部を膜脱気すること、そのために処理水のpHを4.0以下とすることまでは示唆されていないと云うべきである。
次に、上記甲第5号証について言及すると、上記(c)及び(d)の記載によれば、この証拠に専ら記載されている「逆浸透システム」は、基本的には第1逆浸透膜装置の前にイオン交換タイプの「水軟化器」を設けるものであり、しかも第2逆浸透膜装置の前で水酸化ナトリウム等の化学処理剤を添加してpH7以上にして第1逆浸透膜装置を通過した二酸化炭素を炭酸塩へ変換して除去するシステムであるから、このシステムでは第1逆浸透膜装置の前で溶存酸素や二酸化炭素の全部を膜脱気するものではない。また、甲第5号証の上記(e)には、「例えば軟化器18を使用する代わりに、水は脱アルカリで前処理することができる。この目的のため、強制吸引脱気装置と共に酸供給を使用することができ、」と記載されているが、この記載は、「水軟化器」に替えて「強制吸引脱気装置と共に酸供給を使用することができ」ることを単に示唆しているだけであり、第1逆浸透膜装置の後方での化学処理剤による二酸化炭素の除去工程まで省略できることを示唆しているものではないから、このように代替した「逆浸透システム」の場合でも、依然として二酸化炭素の一部が第1逆浸透膜装置を通過することを前提としていると解するのが相当であると云える。
そうすると、上記甲第5号証には、二酸化炭素の一部が第1逆浸透膜装置を通過することを前提としこの二酸化炭素を化学処理剤で炭酸塩に変換して除去する「逆浸透システム」が記載されていると云うべきであるから、この証拠にも、2段式逆浸透膜装置における第1逆浸透膜装置の前で原水中の溶存酸素を積極的に除去することや炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させて積極的にその全部を膜脱気すること、そのために処理水のpHを4.0以下とすることまでは示唆されていないと云うべきである。
以上のとおり、上記甲第1号証乃至甲第5号証には、本件訂正発明1の上記(ロ)及び(ハ)の点について示唆されていないし、またこれらの点が周知の事項であるとする何らの証拠も提出されていないから、本件訂正発明1は、上記甲第1号証乃至甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
2.本件訂正発明2及び3について
これら発明は、少なくとも請求項1を引用してなるものであるから、上記1.と同様の理由により、上記甲第1号証乃至甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
VII.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正後の請求項1乃至3に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
脱塩水製造装置
(57)【特許請求の範囲】
1.原水に存在する炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、この炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計と、この処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプと、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とする脱塩水製造装置。
2.膜脱気装置の処理水に残留する二酸化炭素を炭酸水素イオンに変化させるためのアルカリ添加手段を付設する請求項1記載の脱塩水製造装置。
3.二次透過水の残留イオンを除去するためのイオン交換装置を2段式逆浸透膜装置の後段に設置する請求項1または請求項2に記載の脱塩水製造装置。
【発明の詳細な説明】
<産業上の利用分野>
本発明は膜脱気装置と2段式逆浸透膜装置とを組み合わせた脱塩水製造装置に関するものである。
<従来の技術>
水中に含有される塩類を除く手段として、蒸留法、イオン交換膜法、イオン交換樹脂法、逆浸透膜法等があるが、河川水、湖沼水、あるいは工業用水、上水等の全カチオン300mg/l(CaCO3換算)前後からそれ以下の水質である原水を対象とした場合、エネルギーコストが比較的安い点、および塩類とともに水中に共存する有機物や微粒子も同時に除去できる点で、逆浸透膜法が採用されることが多い。
また塩類を除くとともに水柱の有機物や微粒子を可及的に除去する必要のある半導体洗浄用水や製薬用水等のいわゆる超純水レベルの純水製造には逆浸透膜装置が不可欠であり、当該超純水レベルの純水製造は原水をまず逆浸透膜装置で処理することにより、全カチオンで10ppm前後ないしそれ以下の透過水を得、次いで当該透過水をイオン交換装置で処理するという、逆浸透膜装置とイオン交換装置とを組み合わせたシステムが主流となっている。
このような逆浸透膜装置とイオン交換装置とを組み合わせたシステムにおいては、前段の逆浸透膜装置で可及的に塩類を除去した方が後段のイオン交換装置の負担を低減できるので、最近になって2段式逆浸透膜装置が採用されるようになって来た。
すなわち原水を第1逆浸透膜装置に供給して全カチオンで10ppm前後ないしそれ以下の一次透過水を得、また当該一次透過水をさらに第2逆浸透膜装置に供給して全カチオンで1ppm前後ないしそれ以下の二次透過水を得、当該二次透過水を後段のイオン交換装置の供給水とするものである。
また原水に存在する硬度成分が逆浸透膜の膜面に付着するのを防止するため、原水に酸を添加してpHを低下させ、当該pHを低下させた原水を第1逆浸透膜装置に供給することが行われている。
なお原水に酸を添加することにより、本来では逆浸透膜装置で除去可能な炭酸水素イオンの一部が、逆浸透膜装置では除去不可能な二酸化炭素となるため、第1逆浸透膜装置の透過水中に含まれる二酸化炭素を除去するために脱ガス塔を設置することも提案されている。
上述した従来から提案されている2段式逆浸透膜装置の具体的フローは以下の通りである。
すなわち必要により凝集沈澱、濾過、活性炭濾過等の処理を行った原水に、酸を添加し、pHを4.5〜5.5とし当該酸添加原水を第1逆浸透膜装置で処理し、一次透過水を得る。次いで一次透過水中の二酸化炭素等の溶存ガスを除去するために窒素ガスによる曝気や真空式脱ガス塔で処理し、当該脱ガス処理した一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理し、二次透過水を得る。なお同時に得られる第2逆浸透膜装置の濃縮水はイオン量がそれ程多く含まれていないので、通常第1逆浸透膜装置の前段の原水に混合循環して回収される。
なお得られた二次透過水は必要に応じ、次いで強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂を用いる2床式や混床式のイオン交換装置で処理され、残留するイオンが除去される。また、超純水レベルの純水とするためには、当該脱イオン水をさらに紫外線照射処理、イオン交換処理あるいは限界濾過処理、逆浸透膜処理等が行われることが多い。
しかしながら上述した従来の2段式逆浸透膜装置には以下のような欠点がある。
すなわち第1逆浸透膜装置に供給される原水は脱気処理が行われていないため溶存酸素が存在し、このため逆浸透膜装置の水の停滞部あるいは膜面に微生物が繁殖し、透過水流量や透過水の水質が低下するという欠点がある。さらに当該溶存酸素の存在により、水中に重金属が共存する場合は重金属が酸化触媒として作用し逆浸透膜が酸化され、その性能が劣化するという欠点もある。また二酸化炭素の除去が不充分であり、2段式逆浸透膜装置の処理水が必ずしも満足する値とならない。
<発明が解決しようとする問題点>
本発明は従来の脱塩装置における上述した欠点を解決し、逆浸透膜装置に微生物を繁殖させることなく、かつ逆浸透膜の酸化を防止できるコンパクトな脱塩水製造装置を提供することを目的とするものである。さらに従来の2段式逆浸透膜装置から得られる処理水と比較してより高純度の脱塩水が得られる脱塩水製造装置を提供することを目的とする。
<問題点を解決するための手段>
かかる目的を実現するためになされた本発明よりなる脱塩水製造装置は、原水に存在する炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、この炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計と、この処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプと、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とするものである。
<作用>
以下に本発明を図面に基づいて説明する。
第1図は本発明の実施態様の一例を示すフローの説明図であり、1は酸貯槽、2は酸注入ポンプ、3はラインミキサー、4はpH調節計であり、酸貯槽1と酸注入ポンプ2とラインミキサー3とpH調節計4とで炭酸水素イオン分解手段5を構成する。6は撥水性膜7を装着した膜脱気装置であり、また8は第1逆浸透膜装置、9は第2逆浸透膜装置であり、第1逆浸透膜装置8と第2逆浸透膜装置9とで2段式逆浸透膜装置10を構成する。なお11は強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂の混合樹脂を充填した混床式純水製造装置を示す。
次に本発明装置の操作を説明すると、必要に応じ凝集沈澱、濾過、活性炭処理等の前処理をした原水を原水流入管12を介して膜脱気装置6に供給するが、膜脱気装置6に至る前の原水に酸注入ポンプ2を駆動して酸貯槽1内の塩酸等の酸を注入し、ラインミキサー3により混合し、混合後のpHを4.0以下とする。
なお図示したようにラインミキサー3の後段にpH調節計4を設置し、ラインミキサー3後の原水のpHを計測し、当該pHがあらかじめ設定したpH(たとえば4.0)となるようにpH調節計4に連動する酸注入ポンプ2で酸の注入量を調節するとよい。
酸を添加する前の原水には通常炭酸水素イオンが含まれており、当該炭酸水素イオンと原水にもともと存在する二酸化炭素の存在比によって原水のpHが決定され、一般に酸を添加する前の原水pHは7前後であるが、当該原水に酸(たとえば塩酸)を注入することにより、酸の注入量に応じ原水中の炭酸水素イオンが(1)式に示すように二酸化炭素となり、炭酸水素イオンと二酸化炭素の存在比が変わり、pHが低下する。
HCO3-+HCl→Cl-+H2O+CO2 ・・・・(1)
たとえば酸注入後のpHを4.0とすると第3図に示したように、系の炭酸水素イオンはその全量が二酸化炭素となり、本来であれば2段式逆浸透膜装置10のイオン負荷となる炭酸水素イオンを後述する膜脱気装置6で除去することができるので有利となる。
このようにして原水に存在する炭酸水素イオンの一部または全部を二酸化炭素に変化させた後、当該原水を膜脱気装置6で処理する。本発明に用いる膜脱気装置6は撥水性膜7を介してその一方に二酸化炭素等の溶存ガスを含む原水を通し、その他方を真空として水中の溶存ガスを撥水性膜7に通過させて脱気するものであり、使用できる撥水性膜としては平膜状、スパイラル状、管膜状、中空糸膜状等種々のものがある。なお多数本の中空糸膜状の撥水性膜を有するエレメントの各中空糸膜内に原水を通過させ、当該中空糸膜の外部を真空とするタイプのものが脱気性能がよい点で好適である。
なお真空発生装置としては通常の真空ポンプを用いても差し支えないが、第1図に示したごとく後述する第1逆浸透膜装置8から排出される一次濃縮水が充分な残圧を有しているので、一次濃縮水管13にエゼクター14を付設し一次濃縮水を駆動流体とし、当該エゼクター14の吸収力によって真空を発生させることにより真空ポンプを省略することができるので好適である。なおエゼクター14は一段にかぎらず必要に応じ複数段として真空度を高めることもできる。
このような脱気処理によって原水中にもともと含まれていた二酸化炭素、酸の添加により原水中の炭酸水素イオンが変化して生じた二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体が除去できる。次いで当該脱気水を脱気水管15を介して、高圧ポンプ16にて加圧し第1逆浸透膜装置8に供給する。当該逆浸透膜装置8によって一次透過水と一次濃縮水が得られるが、一次濃縮水は前述したごとくエゼクター14の駆動流体とし用い、一次濃縮水管13、エゼクター14を介して系外に排出する。
一方第1逆浸透膜装置8によって水中の塩類を95%程度まで除去した一次透過水を一次透過水管17を介して第2逆浸透膜装置9に供給する。
第2逆浸透膜装置9においても二次透過水と二次濃縮水が得られるが、二次濃縮水の水質は比較的良好なので、二次濃縮水管18を介して、たとえば膜脱気装置6の処理水と混合し、二次濃縮水を回収することが好ましい。このようにして二次濃縮水を系内に回収することにより、系外へ排出する濃縮水の全量を低下させ、脱塩水の回収率を増大させることができる。
一方二次透過水は一次透過水中の塩類をさらに95%程度まで除去できるので、従来の2床3塔式イオン交換装置で得られる処理水の電気比抵抗あるいはそれ以上となっており、これを脱塩水として種々の用途に用いることができる。また必要に応じ図示したごとく二次透過水管19を介して混床式純水製造装置11でさらに残留イオンを除去することもできる。
なお2段式逆浸透膜装置10の後段に設置するイオン交換装置としては混床式純水製造装置11に限定されるものでなく、複床式純水製造装置でも差し支えない。またたとえば処理容量が比較的小さい場合は、非再生型の混床式カートリッジポリシャーを用いることができる。
なお第1図に示した炭酸水素イオン分解手段5は、酸貯槽1と酸注入ポンプ2とラインミキサー3とpH調節計4とで構成される。いわゆる単なる酸添加方式によるものであるが、本発明に用いる炭酸水素イオン分解手段5はこれに限定されるものでなく、たとえばH形弱酸性カチオン交換樹脂塔を用いる脱アルカリ軟化装置、あるいはH形強酸性カチオン交換樹脂塔に原水の一部を通水してその処理水と原水の他部とを混合した後、Na形強酸性カチオン交換樹脂塔に通水する脱アルカリ軟化装置等のカチオン交換樹脂を用いる公知の脱アルカリ軟化装置を用いることができる。
第2図は本発明の他の実施態様のフローを示す説明図であり、膜脱気装置6の処理水に残留する二酸化炭素を炭酸水素イオンに変化させるために、アルカリ注入ポンプ20とアルカリ貯槽21とpH調節計22とからなるアルカリ添加手段23を付設したものであり、他の構成は第1図に示したフローと同様である。
前述したごとく膜脱気装置6で二酸化炭素、溶存酸素等の溶存気体を除去するが、二酸化炭素を完全に除去することは困難である。
したがって膜脱気装置6の処理水には微量の二酸化炭素が残留する。当該二酸化炭素は逆浸透膜装置で排除することができず最終的に二次透過水に含まれることとなるが、当該二酸化炭素の存在によって二次透過水の電気比抵抗が低下する。
たとえば他の無機イオンの存在を無視した場合、二酸化炭素5ppm(CaCO3換算)で水の電気比抵抗は0.3MΩ-cm(25℃)前後となり、1ppm(CaCO3換算)で1MΩ-cm(25℃)前後となる。
したがって二次透過水の電気比抵抗を上昇させるためには残留する二酸化炭素を逆浸透膜装置で除去できる炭酸水素イオンや炭酸イオンに変化させる必要がある。
第3図に示したごとく二酸化炭素を含む水のpHを8.5前後とすると二酸化炭素のほとんどを炭酸水素イオンに変化させることができる。
したがって第2図に示したごとくアルカリ貯槽21内のアルカリ(たとえば水酸化ナトリウム)をアルカリ注入ポンプ20を用いて膜脱気装置6の処理水に注入し、pHを8.5前後に上昇させて二酸化炭素を炭酸水素イオンとする。
具体的には第2図に示したごとくアルカリ添加後の処理水のpHを調節計22で計測し、当該pHがあらかじめ設定したpH(たとえば8.5)となるようにpH調節計22に連動するアルカリ注入ポンプ20でアルカリの注入量を調節するとよい。
なお使用できるアルカリとしては水酸化ナトリウムに限定されるものでなく、脱気水のpHを上昇させて二酸化炭素を炭酸水素イオンに変化させることができるアルカリであればいかなるアルカリでも用いることができ、場合によってはアルカリとしてアンモニアガスを用いることもできる。
このように2段式逆浸透膜装置10の供給水中の二酸化炭素を炭酸水素イオンに変化させることにより、当該炭酸水素イオンは他のイオンとともに第1逆浸透膜装置8、第2逆浸透膜装置9とで処理されるので、二次透過水の水質をより以上に高めることが可能となる。
<効果>
以上説明したごとく本発明の脱塩水製造装置は原水中に存在する炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素とし、これをあらかじめ膜脱気装置で除去するので2段式逆浸透膜装置のイオン負荷を低減させることができる。
また原水のpHを4.0以下としてから膜脱気装置で処理することにより、2段式逆浸透膜装置のイオン負荷を可及的に低減することができ、得られる脱塩水の電気比抵抗を上昇させる効果を奏する。さらに2段式逆浸透膜装置の前段で二酸化炭素とともに原水中の溶存酸素も除去するので逆浸透膜装置の水の停滞部や膜面に微生物を繁殖させることを防止でき、また逆浸透膜の溶存酸素による酸化を効果的に防止し得る。
また本発明に用いる膜脱気装置は撥水性膜を用いるので従来から用いられている真空脱気装置のように高い構築物とする必要がなく、その構造を極めてコンパクトとすることができる。また膜脱気装置に用いる真空発生装置として、第1逆浸透膜装置の一次濃縮水を駆動流体とするエゼクターを用いることにより真空ポンプを省略することができ、よりコンパクトとすることができる。
また第2図に示した実施態様のごとく、膜脱気装置の処理水に微量残留する二酸化炭素を炭酸水素イオンに変化させるためのアルカリ添加手段を付設することによって2段式逆浸透膜装置で得られる脱塩水の比抵抗をさらに上昇させることができる。
このように本発明の脱塩水製造装置は全体としてコンパクトであり、設置面積を多く必要とせず、かつ安定して高純度の脱塩水が得られるので産業に与える利益は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施態様の一例を示すフローの説明図であり、第2図は本発明の他の実施態様を示すフローの説明図であり、第3図はpHにおける二酸化炭素と炭酸水素イオンと炭酸イオンのモル比を示す説明図である。
1…酸貯槽 2…酸注入ポンプ
3…ラインミキサー 4…pH調節計
5炭酸水素イオン分解手段
6…膜脱気装置 7…撥水性膜
8…第1逆浸透膜装置 9…第2逆浸透膜装置
10…2段式逆浸透膜装置
11…混床式純水製造装置
12…原水流入管 13…一次濃縮水管
14…エゼクター 15…脱気水管
16…高圧ポンプ 17…一次透過水管
18…二次濃縮水管 19…二次透過水管
20…アルカリ注入ポンプ
21…アルカリ貯槽 22…pH調節計
23…アルカリ添加手段
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正の要旨は、本件特許第2137367号発明の特許明細書を平成13年3月27日付け訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、特許請求の範囲の減縮と明りょうでない記載の釈明を目的として、次の訂正事項a乃至訂正事項eのとおりに訂正するものである。
(1)訂正事項a:請求項1の「1.原水に存在する炭酸水素イオンの一部または全部を二酸化炭素に変化させるための炭酸水素イオン分解手段と、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素とその他の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とする脱塩水製造装置。」を、「1.原水に存在する炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、この炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計と、この処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプと、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とする脱塩水製造装置。」と訂正する。
(2)訂正事項b:特許明細書(本件特許公告公報第4欄第18行乃至第25行)の「原水に存在する炭酸水素イオンの一部または全部を二酸化炭素に変化させるための炭酸水素イオン分解手段と、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素とその他の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とするものである。」を、「原水に存在する炭酸水素イオンの全部を二酸化炭素に変化させるために原水に酸を注入する炭酸水素イオン分解手段と、この炭酸水素イオン分解手段の処理水のpHを計測するpH調節計と、この処理水のpHが4.0以下となるようにpH調節計に連動して前記酸の注入量を調節する酸注入ポンプと、炭酸水素イオン分解手段の処理水中に存在する二酸化炭素および溶存酸素等の溶存気体を脱気するための膜脱気装置と、膜脱気装置の処理水を第1逆浸透膜装置で処理して一次透過水を得、次いで一次透過水を第2逆浸透膜装置で処理して二次透過水を得る2段式逆浸透膜装置とからなることを特徴とするものである。」と訂正する。
(3)訂正事項c:特許明細書(本件特許公告公報第4欄第43行)の「pHを5.5以下好ましくは4.0前後とする。」を、「pHを4.0以下とする。」と訂正する。
(4)訂正事項d:特許明細書(本件特許公告公報第7欄第22行)の「炭酸水素イオンの一部または全部を」を、「炭酸水素イオンの全部を」と訂正する。
(5)訂正事項e:特許明細書(本件特許公告公報第7欄第26行)の「また原水のpHを4.0前後としてから」を、「また原水のpHを4.0以下としてから」と訂正する。
審理終結日 2001-11-21 
結審通知日 2001-11-27 
審決日 2001-12-10 
出願番号 特願昭63-201961
審決分類 P 1 112・ 121- YA (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 万里中野 孝一  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 野田 直人
山田 充
登録日 1998-07-17 
登録番号 特許第2137367号(P2137367)
発明の名称 脱塩水製造装置  
代理人 岸田 正行  
代理人 寺崎 直  
代理人 寺崎 直  
代理人 高野 弘晋  
代理人 小花 弘路  
代理人 高野 弘晋  
代理人 岸田 正行  
代理人 小花 弘路  
代理人 柳原 成  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ