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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1056200
審判番号 審判1999-12007  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-05-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-29 
確定日 2002-04-01 
事件の表示 平成 4年特許願第290314号「混流生産システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 5月20日出願公開、特開平 6-139251]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本件審判請求に係る出願は、平成4年10月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、その明細書と図面の記載からみて、特許請求の範囲の記載の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「複数種類の製品を一つづつ単一生産ライン上で組み立て、試験検査し、梱包場へ搬送する混流生産システムにおいて、 該混流生産システムは、
複数の部品からなり組立順に配送された1つの製品をなす前記部品を組み立て作業する組立場(1)と、
組立完了後の製品の性能および品質を試験検査し、不良品と判別された製品をリタイアへ向けて、良品と判別された製品を梱包場へ向けて搬送する試験場(2)と、 前記組立場、前記試験場の各々に少なくとも1つ設けられる複数のライン端末機(3)と、
物と情報の流れを一致させるため製品または製品を載せるパレットに付加され、搬送中に前記製品毎の機種、号機、等の製造データを前記組立場(1)または前記試験場(2)において読み書きされるデータキャリアであるIDカード(4)と、
前記組立場、前記試験場の各々の作業場において前記IDカード(4)のデータを前記ライン端末機(3)を介して読み取り、読み取ったデータに基づき前記組立場および前記試験場の各々の作業者に対する作業指示書を前記ライン端末機(3)に出力させ、組立試験終了後に良品と判別された製品に対して試験検査記録データを記した試験成績書を最終試験場のライン端末機に出力させ、さらにLAN経由で製品を梱包する梱包作業場における梱包場ホスト制御部に接続され、配送される製品に関する梱包準備の配膳指示書を前記梱包場ホスト制御部の管理用端末機に出力させるラインホスト制御部(5)と、
マスタファイルメンテナンス、作業指示管理、進捗管理、スケジュール編集、機歴管理等に係わるデータを前記ラインホスト制御部(5)に直接入出力するラインホスト管理用端末機(6)と、を備えたことを特徴とする混流生産システム。」

そして、本願の出願時に提出された願書には、「特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとする特許出願」と記載され、さらに本出願の出願日から30日以内である平成4年10月30日に「富士通ジャーナルNO.197.VOL.18 N0.4/1992(平成4年5月発行)pp.60-69」を刊行物(以下、「引用刊行物」という。)とする「発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書」(以下、「当該証明書」という。)が提出されている。

2.原査定の拒絶理由及び請求人の主張

原査定の拒絶理由を要約すると、本願の発明者(坂信夫、尾田順一、石山保明)と引用刊行物の公開者(伊藤弘章、坂本一明)は一致しておらず、公開者が公開時に「特許を受ける権利を有する者」であることを証明する書面が出願から30日以内に提出されてもいないから、この出願は特許法第30条第1項の規定の適用を受けることかできないものであり、本願請求項1乃至3の発明は引用刊行物に記載された発明であるから特許法第29条第1頃第3号に該当し、特許を受けることかできない、というものである。
これに対して請求人は、原審の意見書において、(イ)公開者は株式会社ピーエフユーであり出願人と同一人であること、すなわち、株式会社ピーエフユーは、発明者坂信夫、尾田順一、石山保明及び二宮昭一から特許を受ける権利を取得した後に、伊藤弘章及び坂本一明に社を代表して掲載することを命じ、伊藤弘章及び坂本一明は、株式会社ピーエフユーの社員としての業務を遂行するために引用刊行物に株式会社ピーエフユー名義で掲載したものであること、(ロ)引用刊行物における「当社は〜」という表現、あるいは、偶数ページ右肩にみられる「(株)PFU」という表記からみても株式会社ピーエフユーによる発表であることは明白であること、(ハ)上記事実関係は意見書に添付した参考資料1〜4により明白であること、を主張している。
しかし、参考資料1〜4は出願日から30日以内に提出されたものでないから、特許法第30条第4項にいう「証明する書面」として採用できないので、請求人の上記主張を採用できない、として原審は本願を拒絶査定したため、請求人は、本件出願について特許法第30条第1項の規定の適用を認めなかった点は不当であり、原査定は当然に取消されるべきであるとし、当審においても参考資料1〜4を提出するとともに、上記主張に加えて、(ニ)審査官による実体審査の段階で「証明する書面」の不備を指摘された場合は、当該証明書を補充する書面である上記参考資料1〜4は拒絶理由応答期間内に受け付けられるべきである、と主張している。

3.当審の判断

特許法第30条第1項は、発明の新規性の喪失の例外の適用のための要件として、特許を受ける権利を有する者が刊行物に発表したこと、刊行物に発表された発明が特許出願された発明と同一であること、および当該出願が刊行物発表から6ヶ月以内であることを規定し、特許法第30条第4項には、発明の新規性の喪失の例外の適用を受けるための手続について、「証明する書面を特許出願の日から30日以内に提出しなければならない」と規定されている。
ここで、特許法第30条第1項の規定を受けるためには、公開者が公開時に「特許を受ける権利を有する者」であることが「証明する書面」において証明されていなければならない。
本願に関して言えば、引用刊行物には、本願発明の発明者である「坂信夫、尾田順一、石山保明」の氏名は記載されておらず、第2頁の目次及び第60頁にタイトル「PFU笠島工場におけるCIMへの取り組み」に続いて「株式会社PFU 事業推進部 業務部 第二業務課 伊藤弘章 生産技術部 生産技術課 坂本一明」の記載(以下、「当該記載」という。)があり、当該記載のように明確に氏名が掲載されている以上、引用刊行物の公開者は「伊藤弘章及び坂本一明」であるものと認められるから、公開者は公開時に「特許を受ける権利を有する者」(特許を受ける権利を有する者から公開を依頼された者含む)であることが、特許法第30条第4項に規定する「証明する書面」において証明されていなければならない。

しかしながら、本願手続において提出された当該証明書には、引用刊行物の公開者である「伊藤弘章及び坂本一明」が「特許を受ける権利を有する者から公開を依頼された者」であることを証明する旨の記載はないので、本願出願は、特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとすることができないものである。

なお、上記請求人の主張(イ)及び(ロ)については、社会一般の刊行物の発表者の記載の例からみても、発表者の身分を明確にするために発表者の肩書きに社名、所属を入れることは通常行われていることであるから、この請求人の主張を採用することはできない。
また、上記請求人の主張(ハ)については、審判請求書に添付された参考資料1〜4は平成10年3月9日付け意見書に添付したものであり、本願の特許出願の日から30日以内に提出したものではないから、発明の新規性の喪失の例外の適用のための証明する書面として採用することはできないし、上記請求人の主張(ニ)については、本願は公開者が発明者又は出願人と一部相違している場合には該当しないから、参考資料1〜4を特許出願から30日以後に提出されたものも受け付けるとした「納得できる説明をした書面」に該当するものと認めることはできない。

加えて、請求人は、当該証明書に関して、審判請求書に添付した添付資料1を基に、平成4年11月20日に特許庁相談窓口の担当者から出願人と公開者とが同一人であると解されるので追加の証明書は必要なしとの教示を受けたので、本拒絶査定は不当処分として取消されるべき旨主張しているが、添付資料1は当該証明書の複写物であって、その下部には手書きのメモとして、『公開者(株)PFU 出願人(株)ピーエフユー 「同一と見れる」ので追加の証明書は必要なし.(審査基準室見解)』との記載だけであるから、当該証明書が引用刊行物の発表者が「伊藤弘章及び坂本一明」ではなく「株式会社ピーエフユー」であること、または「伊藤弘章及び坂本一明」が、「特許を受ける権利を有する者から公開を依頼された者」であることを証明するものとして採用することはできない。

以上のように、本願の当該証明書に記載の引用刊行物の発表者は「特許を受ける権利を有する者」と認められないので、本願出願は、特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとすることができないものである。

そこで、引用刊行物について検討すると、これは本願の出願日前である平成4年5月に発行された刊行物であって、その記載中の特に第62頁左欄第3行〜右欄第4行、第64頁右欄第11行〜第69頁左欄第35行、第5図〜第8図には、次のような内容が記載されている。
ワークスステーション混流ラインは、データキャリアとしてIDカードを採用し、製品1台単位に添付し、装機開始から梱包までの一貫管理を実現し、複数機種の組み立てから試験、梱包までを1本のラインで行う。ワークステーション組立試験工程へは、部品倉庫からの部材の払出に始まり、自工程内でのユニット組立、ユニット製造からのユニット完成品、協力工場からの半完成品等により組立/試験作業を行う。システム構成は管理ホストとライン端末からなり、IDカードは、機種・号機・工程別作業情報・エージング時間・ラインアウトフラグ・エージングライン制御情報などの製品一台毎のデータが書き込まれ、この情報を元に、作業指示、ライン制御、ソフトウェア書込み有無判別、エージング時間の管理、障害発生工程の検索などラインの機器制御と生産情報管理が行われる。ライン作業者には、各装機工程で搭載ユニットに添付されたバーコードをシステム入力することにより作業指示等のサービスが行われる。ユニットデータは搭載情報としてシステムに蓄積され、試験成績書の自動印刷と梱包部材配膳指示書を印刷する。
この記載からみて、上記刊行物には本願発明と同一の混流生産システムが記載されているから、本願発明は上記引用刊行物に記載された発明と同一である。

5.むすび

したがって、本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明と同一のもの認められ、また、特許出願の日から30日以内に特許法第30条第4項に規定された「証明する書面」が提出されていないから、本願発明は特許法第30条第1項の規定の適用を受けることができず、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

よって結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2002-01-17 
結審通知日 2002-01-29 
審決日 2002-02-13 
出願番号 特願平4-290314
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼田 耕一  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 岡 千代子
鳥居 稔
発明の名称 混流生産システム  
代理人 石田 敬  
代理人 戸田 利雄  
代理人 西山 雅也  

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