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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
審判 全部申し立て 特174条1項  B65B
管理番号 1056572
異議申立番号 異議2001-70618  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-03-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-28 
確定日 2002-02-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3080347号「PETボトルの殺菌方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3080347号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3080347号に係る発明についての出願は、平成6年8月22日に特願平6-196699号として出願され、平成12年6月23日にその特許の設定登録がなされ、その後杉本昌也より特許異議の申立てがなされ、平成13年6月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年9月3日に意見書の提出と訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1ないし4における過酢酸系殺菌剤の加温温度が各「60℃以上」、「55℃以上」、「50℃以上」、及び「45℃以上」となっているのを、温度の上限をそれぞれ「95℃」にする。
イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
ウ.訂正事項c
特許明細書の段落【0012】の「ならびにPETボトルの耐熱性の点」という記載を削除する。
エ.訂正事項d
発明の名称を「PETボトルの殺菌方法」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
ア.上記訂正事項aについて検討すると、過酢酸系殺菌剤の加温温度の上限は、特許明細書第2頁右欄段落【0012】の第30行目に「95℃以下の温度であることが好ましい。」と記載されていたものである。そして特許請求の範囲記載の請求項1の「60℃以上」を「60℃ないし95℃」、請求項2の「55℃以上」を「55℃ないし95℃」、請求項3の「50℃以上」を「50℃ないし95℃」、及び、請求項4の「45℃以上」を「45℃ないし95℃」とすることは、温度範囲を小さい概念の温度範囲の構成にそれぞれ限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当するものと認める。
イ.上記訂正事項bについて検討すると、この削除は、特許請求の範囲に記載された請求頃5にかかる発明を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当するものと認める。
ウ.上記訂正事項cについて検討すると、この削除は、当初明細書に記載されていなかった一義的に導き出すことのできない事項を削除するためのものであり、当初明細書に記載されたものと整合させるための訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当するものと認める。
エ.上記訂正事項dについて検討すると、特許請求の範囲の請求項5を削除したことにともない、整合性を図るために、発明の名称から『及びその装置』を削除するものであると認める。
そして、上記訂正事項a〜dは、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)申立ての理由の概要
異議申立人杉本昌也は、概略「本件の請求項1〜4にかかる発明は、甲第1号証記載の発明と実質的に同一(以下、「申立の理由1」という。)であるか、または当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたもの(以下、「申立の理由2」という。)である。また、請求項5にかかる発明は、甲第2号証および甲第1号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたもの(以下、「申立の理由3」という。)である。したがって、本件特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 また、本件特許について平成10年10月29日付けで行われた手続補正は、出願当初明細書の記載範囲を逸脱する新規事項を含んでいるから、本件特許は同法第113条第1号により取り消されるべきもの(以下、「申立の理由4」という。)である。」旨主張している。
<証拠方法>
甲第1号証;特開平4-30783号公報
甲第2号証;特開平6-92329号公報
甲第3号証;特開昭60-2487号公報
甲第4号証;特公平6-22532号公報
甲第5号証;特開平5-132041号公報
甲第6号証;特開平4-44938号公報
甲第7号証;平成10年10月29日付け全文補正明細書【0012】
甲第8号証;本願出願当初明細書【0012】
(2)本件特許発明
上記2.のように訂正が認められるので、本件の請求項1〜4に係る特許発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される下記のとおりのもの(以下、「本件特許発明1〜4」という。)である。
「【請求項1】 過酸化水素が配合されるとともに過酢酸の濃度が1000ppmないし1500ppmの過酢酸系殺菌剤を60℃ないし95℃に加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。
【請求項2】 過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が1500ppm以上で2000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を55℃ないし95℃に加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。
【請求項3】 過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が2000ppm以上で3000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を50℃ないし95℃に加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射すせることを特徴とするPETボトルの殺菌方法。
【請求項4】 過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が3000ppm以上とされた過酢酸系殺菌剤を45℃ないし95℃に加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。」
(3)甲各号証の記載事項
甲第1号証には、食品容器類の殺菌方法に関して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
1-a;「過酢酸濃度1,000〜10,000ppm、液温100℃以上の過酢酸水溶液を食品容器類に噴霧することを特徴とする食品容器類の殺菌方法。」(特許請求の範囲)
1-b;「液量を少なくし短時間殺菌ができるように濃度を高くして、加熱噴霧して殺菌する」(第2頁上左欄9行〜11行)
1-c;「1.5lPETボトルを用いてつぎのような条件で実施した。……中略……3)過酢酸噴霧:噴霧量0.16g/s、噴霧温度100℃」(第2頁上左欄末2行〜同右欄6行)
1-d;「過酢酸殺菌では……中略……、過酸化水素殺菌ではPETボトル(1.5l)内に2〜3ppmの過酸化水素が残留することとなる。[比較例] 従来法の、液温20℃で所定濃度の過酢酸水溶液を充填したときの殺菌効果を表5に示す。………中略………、従来法では、殺菌に長時間を必要とする。」(第3頁上右欄〔比較例〕の記載及び表4)
甲第2号証には、殺菌装置に関して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
2-a;「殺菌液供給源10の中には適宜の殺菌液、例えばオキソニア・アクティブ(商標名;へンケル白水社製、過酢酸;酢酸;過酸化水素を主成分とする)が貯留され、その殺菌液が殺菌液供給路20へ圧力下で送り出される。」(段落【0013】及び図1参照)。
2-b;「殺菌液供給源10から送り出される殺菌液が3方向バルブ11から熱交換機7の低温流体通路6へ供給される。一方、スチーム源9から送り出されるスチームが温調バルブ12を介して熱交換機7の高温流体通路5へ供給される。低温流体通路6へ供給された殺菌液は、高温流体通路5を流れるスチームによって加熱されて、例えば80℃に昇温する。この昇温した殺菌液が液体供給路19及び液吐出口3を通ってチャンバ4の内部に吐出され、そのチャンバ4内が殺菌液によって殺菌される。このとき、温度センサ23、制御装置24及び温調バルブ12によって構成された温度制御系により、熱交換機7から送り出される殺菌液の温度が常に一定に保持される。」(段落【0019】)
2-c;「被殺菌体であるチャンバの適所に1つまたは複数個の液吐出口を設置し、その液吐出口からチャンバ内に殺菌液若しくは温水またはその両者を噴射することによって行われる。」(段落【0003】)
甲第3号証には、ロータリー式リンサーに関して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
3-a;「第7図に示すごとくノズル(57)から壜(1)内に洗浄水が噴射され、壜(1)の内周面が洗浄される。」(第3頁左下欄第14行〜第15行)
甲第4号証には、殺菌済みプラスチックボトルの製造方法に関して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
4-a;「第1図に示すように、ボトル1の口部2を下方、好ましくは真下に向け、この状態のプラスチックボトルの口部2から、熱水注入ノズル3を該ボトルの内部に挿入する。次いで、熱水4がボトルの底壁5から側壁6、6を伝わって口部2から外部に流失するように熱水を上方に放出させて、ボトル内壁の温度を殺菌温度に昇温させる。」(第2頁左欄42行〜48行)
甲第5号証には、酸性飲料のPETボトル充填法に関して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
5-a;「洗浄域2には、下方から上方に向けて噴射する複数個の噴射ノズル10が設けられており、」(段落【0011】)
5-b;「滅菌ないし殺菌を充分に行うために複数回行われ(すなわち、洗浄域には洗浄回数分のノズルが設けられる)、」(段落【0011】)
甲第6号証には、容器蓋の滅菌方法及び装置に関して、図面とともに次の技術事項が記載されている。
6-a;「ジグザグコンベヤ3に沿って蓋の内面に滅菌液を噴射する内滅菌ノズル群を有する内滅菌パイプと蓋の外面に滅菌液を噴射する外滅菌ノズル群を有する外滅菌パイプとが設けられている。」(第3頁左上欄第19行〜同頁右上欄第2行)
6-b;「搬送中に蓋内面に内滅菌ノズルからコンベヤ3の下方斜めから滅菌液が噴射され推力が付与され、コンベヤ3上を滑りながら移動する。」(第3頁左下欄第8行〜第11行)
(4)対比・判断
1)申立の理由1に対して
<本件特許発明1について>
甲第1号証と本件特許発明1とを比較検討すると、甲第1号証の「噴霧する殺菌用の水溶液」、「食品容器類の殺菌方法」は、それぞれ本件特許発明1の「ノズルによって噴射する加温された殺菌剤」、「PETボトルの殺菌方法」に相当するから、本件特許発明1の用語を用いて表現すると、両者は「殺菌剤を加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。」で一致し、
本件特許発明1の殺菌剤が過酸化水素が配合されるとともに過酢酸の濃度が1000ppmないし1500ppmの過酢酸系殺菌剤を60℃ないし95℃に加温してるのに対して、甲第1号証記載の発明のものの殺菌剤は過酢酸濃度1000〜10000ppm、液温100℃以上の過酢酸水溶液を用いたものであって過酸化水素を配合することを明記していない点(以下「相違点」という。)で相違する。
甲第1号証と本件特許発明1とは上記の相違点を有する故、異議申立人の主張する両者が同一であるという申立の理由1の主張は、正鵠を射た主張であるとは言えず、採用できない。
<本件特許発明2ないし4について>
甲第1号証と本件特許発明2ないし4とを比較検討すると、本件特許発明2ないし4についても、過酢酸の濃度の範囲や過酢酸系殺菌剤加温の範囲が少し異なるが上記の本件特許発明1で指摘したのとほぼ同様にそれぞれ一致点と相違点が認められるので、異議申立人の主張する両者が同一であるという申立の理由1の主張は、正鵠を射た主張であるとは言えず、採用できない。
よって、異議申立人の申立の理由1の主張を採用することはできない。
2)申立の理由2に対して
<本件特許発明1について>
甲第1号証と本件特許発明1とを比較検討すると、上記1)で対比して指摘したのと同じように一致点と相違点が認められる。
異議申立人は甲第1号証ないし甲第6号証まで提示しているので、本件特許発明1が甲第1ないし6号証から容易に発明をすることができたものであるかどうかについて検討する。
相違点について検討すると、本件特許発明1は、過酸化水素と過酢酸と配合した溶液を用いる構成(以下、「構成A」という。)、及び、過酢酸の濃度を1000ppmないし1500ppmとし、60℃ないし95℃に加温して用いる構成(以下、「構成B」という。)を有し、構成A及びBを開示していない甲第1号証の発明とは明らかに異なる殺菌方法であって、該殺菌方法が当業者において自明の事項であるとも言えないし、当業者が容易に想到できる程度の事項であるとも言えない。そして、本件特許発明1は、甲第1号証記載の殺菌剤溶液が有しない、本件特許明細書に記載したとおりの「実用上の観点、及び、殺菌効果を十分に発揮できる程度に、分解することなく過酢酸を残存させるという」作用効果を奏するものである。
したがって、申立人が異議申立書の対比表で指摘するように、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする申立人が対比表で指摘した主張は採用できない。
次に、異議申立人は甲第2ないし6号証を合わせて証拠として提示しているので、これら甲第2ないし6号証発明の記載事項を甲第1号証に記載の発明に適用することによって本件特許発明1を当業者が容易に発明することができるかどうかについて検討すると、甲第2号証にはオキソニア・アクティブ(商標名;へンケル白水社製、過酢酸;酢酸;過酸化水素を主成分とする)殺菌剤を例えば80℃に温調し、昇温した殺菌液をチャンバ内部に吐出することは記載されているが、上記相違点の構成についての記載はなされていないし、相違点の構成が当業者の自明事項であるとも言えないから、甲第2号証記載の技術事項を甲第1号証記載の発明に合わせて適用したとしても本件特許発明1を容易に想到することができるとは認めがたい。さらに、甲第3、4号証に記載されたボトル内部にノズルを挿入して殺菌剤を噴射するという慣用技術、および、甲第5、6号証に記載された殺菌剤を噴射するノズルを複数設ける慣用技術を甲第2号証に記載された技術事項と合わせて甲第1号証に適用したとしても本件特許発明1を容易に想到することができるとは認められない。
<本件特許発明2について>
本件特許発明2と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件特許発明1について対比検討したのと同様に、両者は、「殺菌剤を加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。」で一致し、本件特許発明2では「殺菌剤が過酸化水素が配合されるとともに過酢酸の濃度が1500ppm以上で2000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を55℃ないし95℃に加温し」の構成を有するのに対して、甲第1号証記載の発明のものの殺菌剤は過酢酸濃度1000〜10000ppmの水溶液を用いたものであることを記載しているのみで、過酢酸と過酸化水素を配合することについては明記していない点で相違する。
相違点について検討すると、本件特許発明2は、過酸化水素と過酢酸と配合した溶液を用いる構成(以下、「構成A」という。)、及び、過酢酸の濃度を1500ppm以上で2000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を55℃ないし95℃に加温して用いる構成(以下、「構成B’」という。)を有し、構成A及びB’を開示していない甲第1号証の発明とは明らかに異なる殺菌方法であって、該殺菌方法が当業者において自明の事項であるとも言えないし、当業者が容易に想到できる程度の事項であるとも言えない。そして、本件特許発明2は、甲第1号証記載の殺菌剤溶液が有しない、本件特許明細書に記載したとおりの「実用上の観点、及び、殺菌効果を十分に発揮できる程度に、分解することなく過酢酸を残存させるという」作用効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする申立人が異議申立書の対比表で指摘した主張は採用できない。
また、異議申立人は甲第2ないし6号証を合わせて証拠として提示しているので、これら甲第2ないし6号証発明の記載事項を甲第1号証に記載の発明に適用することによって本件特許発明2を当業者が容易に発明することができるかどうかについて検討すると、甲第2号証にはオキソニア・アクティブ(商標名;へンケル白水社製、過酢酸;酢酸;過酸化水素を主成分とする)殺菌剤を例えば80℃に温調し、昇温した殺菌液をチャンバ内部に吐出することは記載されているが、上記相違点の構成についての記載はなされていないし、相違点の構成が当業者の自明事項であるとも言えないから、甲第2号証記載の技術事項を甲第1号証記載の発明に適用したとしても本件特許発明2を容易に想到することができるとは認めがたい。さらに、甲第3、4号証に記載されたボトル内部にノズルを挿入して殺菌剤を噴射するという慣用技術、および、甲第5、6号証に記載された殺菌剤を噴射するノズルを複数設ける慣用技術を甲第2号証に記載された事項と合わせて甲第1号証に適用したとしても本件特許発明2を容易に想到することができるとは認められない。
<本件特許発明3について>
本件特許発明3と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件特許発明1について対比検討したのと同様に、両者は、「殺菌剤を加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。」で一致し、本件特許発明3では「殺菌剤が過酸化水素が配合されるとともに過酢酸の濃度が2000ppm以上で3000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を50℃ないし95℃に加温し」の構成を有するのに対して、甲第1号証記載の発明のものの殺菌剤は過酢酸濃度1000〜10000ppmの水溶液を用いたものであることを記載しているのみで、過酢酸と過酸化水素を配合することについては明記していない点で相違する。
相違点について検討すると、本件特許発明3は、過酸化水素と過酢酸と配合した溶液を用いる構成(以下、「構成A」という。)、及び、過酢酸の濃度を2000ppm以上で3000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を55℃ないし95℃に加温して用いる構成(以下、「構成B”」という。)を有し、構成A及びB”を開示していない甲第1号証の発明とは明らかに異なる殺菌方法であって、該殺菌方法が当業者において自明の事項であるとも言えないし、当業者が容易に想到できる程度の事項であるとも言えない。そして、本件特許発明3は、甲第1号証記載の殺菌剤溶液が有しない、本件特許明細書に記載したとおりの「実用上の観点、及び、殺菌効果を十分に発揮できる程度に、分解することなく過酢酸を残存させるという」作用効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする申立人が異議申立書の対比表で指摘した主張は採用できない。
また、異議申立人は甲第2ないし6号証を合わせて証拠として提示しているので、これら甲第2ないし6号証発明の記載事項を甲第1号証に記載の発明に適用することによって本件特許発明3を当業者が容易に発明することができるかどうかについて検討すると、甲第2号証にはオキソニア・アクティブ(商標名;へンケル白水社製、過酢酸;酢酸;過酸化水素を主成分とする)殺菌剤を例えば80℃に温調し、昇温した殺菌液をチャンバ内部に吐出することは記載されているが、上記相違点の構成についての記載はなされていないし、相違点の構成が当業者の自明事項であるとも言えないから、甲第2号証記載の技術事項を甲第1号証記載の発明に適用したとしても本件特許発明2を容易に想到することができるとは認めがたい。さらに、甲第3、4号証に記載されたボトル内部にノズルを挿入して殺菌剤を噴射するという慣用技術、および、甲第5、6号証に記載された殺菌剤を噴射するノズルを複数設ける慣用技術を甲第2号証に記載された事項と合わせて甲第1号証に適用したとしても本件特許発明3を容易に想到することができるとは認められない。
<本件特許発明4について>
本件特許発明4と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件特許発明1について対比検討したのと同様に、両者は、「殺菌剤を加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。」で一致し、本件特許発明4では「殺菌剤が過酸化水素が配合されるとともに過酢酸の濃度が3000ppm以上とされた過酢酸系殺菌剤を45℃ないし95℃に加温し」の構成を有するのに対して、甲第1号証記載の発明のものの殺菌剤は過酢酸濃度1000〜10000ppmの水溶液を用いたものであることを記載しているのみで、過酢酸と過酸化水素を配合することについては明記していない点で相違する。
相違点について検討すると、本件特許発明4は、過酸化水素と過酢酸と配合した溶液を用いる構成(以下、「構成A」という。)、及び、過酢酸の濃度を3000ppm以上とされた過酢酸系殺菌剤を55℃ないし95℃に加温して用いる構成(以下、「構成B”’」という。)を有し、構成A及びB”’を開示していない甲第1号証の発明とは明らかに異なる殺菌方法であって、該殺菌方法が当業者において自明の事項であるとも言えないし、当業者が容易に想到できる程度の事項であるとも言えない。そして、本件特許発明1は、甲第1号証記載の殺菌剤溶液が有しない、本件特許明細書に記載したとおりの「実用上の観点、及び、殺菌効果を十分に発揮できる程度に、分解することなく過酢酸を残存させるという」作用効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとする申立人が異議申立書の対比表で指摘した主張は採用できない。
また、異議申立人は甲第2ないし6号証を合わせて証拠として提示しているので、これら甲第2ないし6号証発明の記載事項を甲第1号証に記載の発明に適用することによって本件特許発明4を当業者が容易に発明することができるかどうかについて検討すると、甲第2号証にはオキソニア・アクティブ(商標名;へンケル白水社製、過酢酸;酢酸;過酸化水素を主成分とする)殺菌剤を例えば80℃に温調し、昇温した殺菌液をチャンバ内部に吐出することは記載されているが、上記相違点の構成についての記載はなされていないし、相違点の構成が当業者の自明事項であるとも言えないから、甲第2号証記載の技術事項を甲第1号証記載の発明に適用したとしても本件特許発明4を容易に想到することができるとは認めがたい。さらに、甲第3、4号証に記載されたボトル内部にノズルを挿入して殺菌剤を噴射するという慣用技術、および、甲第5、6号証に記載された殺菌剤を噴射するノズルを複数設ける慣用技術を甲第2号証に記載された事項と合わせて甲第1号証に適用したとしても本件特許発明4を容易に想到することができるとは認められない。
よって、異議申立人の申立の理由2の主張を採用することはできない。
3)申立の理由3の主張に対して
上記2.の(1)イ.の訂正事項bで記載したように特許請求の範囲の請求項5は、平成13年9月3日付けで削除されたので、申立の理由3で主張する対象は無くなった。
4)申立の理由4の主張に対して
平成10年10月29に付けの特許明細書の段落【0012】の「ならびにPETボトルの耐熱性の点」という記載の補正については、上記2.の(1)ウ.の訂正事項cで記載したように平成13年9月3日付けで削除されたので、申立の理由4で主張する対象は無くなった。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1ないし4の特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1ないし4の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
PETボトルの殺菌方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 過酸化水素が配合されるとともに過酢酸の濃度が1000ppmないし1500ppmの過酢酸系殺菌剤を60℃ないし95℃に加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。
【請求項2】 過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が1500ppm以上で2000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を55℃ないし95℃に加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。
【請求項3】 過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が2000ppm以上で3000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を50℃ないし95℃に加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射すせることを特徴とするPETボトルの殺菌方法。
【請求項4】 過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が3000ppm以上とされた過酢酸系殺菌剤を45℃ないし95℃に加温し、ノズルによってPETボトルの少なくとも内面に噴射することを特徴とするPETボトルの殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、飲料水、ジュース、ウーロン茶、ミルクコーヒーなどの各種飲食品が充填されるPETボトルの殺菌方法に関するものであり、より詳しくは、殺菌剤の濃度を高くすることなく短時間にPETボトルを殺菌できるPETボトルの殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】
従来、過酢酸系殺菌剤を用いてPETボトルを殺菌する場合、殺菌剤をPETボトル内に充填することによりPETボトルを殺菌することがなされている。この殺菌後には、PETボトルから充填された殺菌剤を排出すると共に、PETボトル内を無菌水によって洗浄し(洗浄工程)、PETボトル内の殺菌剤を除去する。
【0003】
ところで、上記洗浄工程後に、過酸化水素や過酢酸が残留しないようにするために、使用する過酸化水素や過酢酸の濃度を低く抑えたいという要請がある。しかしながら、使用する過酸化水素や過酢酸の濃度を低く抑えると、殺菌剤は強力な殺菌効果を発揮し得ないため、十分な殺菌をしようとする場合は、どうしても、殺菌時間が長くなってしまうという時間的な不経済性が問題となる。
【0004】
【発明の目的】
そこで、本発明の目的は、殺菌剤の濃度を高くすることなく、短時間にPETボトルを殺菌できるPETボトルの殺菌方法、及びPETボトルの殺菌装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために提案されたものであり、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、過酸化水素が配合されるとともに過酢酸の濃度が1000ppmないし1500ppmの過酢酸系殺菌剤を60℃以上に加温し、PETボトルの少なくとも内面に接触させることを特徴とするPETボトルの殺菌方法が提供される。
【0006】
また、本発明によれば、過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が1500ppm以上で2000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を55℃以上に加温し、PETボトルの少なくとも内面に接触させることを特徴とするPETボトルの殺菌方法が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が2000ppm以上で3000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を50℃以上に加温し、PETボトルの少なくとも内面に接触させることを特徴とするPETボトルの殺菌方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、過酸化水素が配合されると共に過酢酸の濃度が3000ppm以上とされた過酢酸系殺菌剤を45℃以上に加温し、PETボトルの少なくとも内面に接触させることを特徴とするPETボトルの殺菌方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、過酸化水素が配合された過酢酸系殺菌剤を45℃以上に温調する温調手段と、該温調手段によって温調された過酢酸系殺菌剤をPETボトルの少すくとも内面に供給する複数個の殺菌剤供給手段と、を備えていることを特徴とするPETボトルの殺菌装置が提供される。
【0010】
【発明の具体的な説明】
本発明は、過酸化水素が配合された過酢酸系殺菌剤(以下、単に過酢酸系殺菌剤と記すことがある。)を所定の温度以上、あるいは、過酢酸系殺菌剤の濃度に対応して所定の温度以上に加温し、この加温された過酢酸系殺菌剤をPETボトルの少なくとも内面に接触させて殺菌することに特徴を有するものであり、これによって、過酢酸系殺菌剤の濃度を高くすることなく、極めて短時間でPETボトルの殺菌ができるようになる。
【0011】
本発明において、過酢酸系殺菌剤としては、ヘンケル白水社製のP3-oxonia aktiv、P3-oxonia aktiv 90等を例示でき、過酢酸と過酸化水素の混合比が、重量比で過酢酸1に対して過酸化水素1ないし4となるように混合するのが薬剤の安定性の点で好ましい。
【0012】
また、過酢酸系殺菌剤の温度は、PETボトルの殺菌に使用する過酢酸系殺菌剤の過酢酸の濃度が、通常1000ないし1500ppmであることを考慮して、60℃以上とするのが好ましい。また、実用上の観点、及び、殺菌効果を十分に発揮できる程度に、分解することなく過酢酸を残存させるという観点から95℃以下の温度であることが好ましい。
【0013】
また、過酢酸の濃度が1500ppm以上で2000ppmよりも小さい過酢酸系殺菌剤を使用する場合には、過酢酸系殺菌剤を55℃以上に加温するのが好ましい。過酢酸系殺菌剤の温度が55℃よりも低い温度とすると、殺菌時間が長くなる傾向にある。
【0014】
また、過酢酸の濃度が2000ppm以上で3000ppmよりも小さくされた過酢酸系殺菌剤を使用する場合には、過酢酸系殺菌剤を50℃以上に加温するのが好ましい。過酢酸系殺菌剤の温度が50℃よりも低いと、殺菌時間が長くなる傾向にある。
また、本発明では、過酢酸系殺菌剤をPETボトルの少なくとも内面に接触させることにより殺菌するが、この方法として、PETボトル内にノズルにより、過酢酸系殺菌剤を噴出する方法を採用できる。また、PETボトル内に過酢酸系殺菌剤を噴出することなく、PETボトル内に過酢酸系殺菌剤を流入させて満注状態とすることにより殺菌することも可能である。
【0015】
また、上記の噴出方式によって、PETボトルを殺菌する場合には、噴出を複数回に分けて行ってもよく、また、一回に連続的に噴射してもよい。噴出を複数回に分割して行う場合には、第1回目以降に噴出された薬剤の汚れを抑えることが、でき、薬剤を回収し再利用できる等の利点がある。また、噴出を1回で行う場合には、殺菌時間の短縮、殺菌剤の噴出の制御が簡単になる等の利点がある。
また、殺菌剤を噴出することにより、殺菌を行う方式においては、過酢酸系殺菌剤の流量は、殺菌しようとするボトルの容積等によっても異なるが、100ないし300ml/secとするのがボトル内面全面を殺菌する点において好ましい。
【0016】
また、殺菌剤をボトルに満注する方式によって、殺菌を行う場合においては、過酢酸系殺菌剤の量は、殺菌しようとするボトルの容積等によっても異なるが、満注にするのが、ボトル内面全面を殺菌する点において好ましい。
また、本発明に係るPETボトルの殺菌装置は、温調手段によって温調された過酢酸系殺菌剤をPETボトルの少なくとも内面に供給する殺菌剤供給手段を複数個備えていることを特徴としている。
すなわち、本発明に係るPETボトルの殺菌装置は、特定の殺菌剤供給手段によって、殺菌する前に、他の殺菌剤供給手段によって殺菌する構成である。したがって、他の殺菌剤供給手段による殺菌工程が、特定の殺菌剤供給手段による殺菌工程前の予備洗浄工程を兼ねるため、予備洗浄手段が不要となり、装置の小型化を図ることができる。
【0017】
以下に、本発明に係る過酢酸系殺菌剤方法を実施するための装置を図1にしたがって説明する。
図1において、1はベルトコンベア等によって構成されるボトル搬送装置であり、2はボトル殺菌部である。
ボトル殺菌部2は、クラス10000の無菌レベルに保持されると共に、第1殺菌用ノズル(図示省略)、及び第2殺菌用ノズル(図示省略)が設けられており、さらに、過酢酸系殺菌剤を所望の温度に加熱して保持する温調手段が設けられている。第1殺菌用ノズル及び第2殺菌用ノズルの各々からは、温調手段によって温調された過酢酸系殺菌剤が噴射されるようになっている。なお、前記第1殺菌用ノズル及び第2殺菌用ノズルは、ボトル搬送装置1によって倒立状態で搬送されるボトルの内容物充填用口に対向する位置に配置されている。
【0018】
また、ボトル殺菌部2のボトル搬送方向(図1右方向)下流側には、無菌エアー搬送部3が設けられている。この無菌エアー搬送部3では、ボトルに無菌エアーを吹きつける無菌エアー吹きつけ手段(図示省略)が設けられている。
また、無菌エアー搬送部3のボトル搬送方向下流側には、ボトル洗浄・充填密封部4が配置されている。このボトル洗浄・充填密封部4は、クラス100の無菌レベルに保持されている。このボトル洗浄・充填密封部4は、無菌水を噴出するための無菌水噴出ノズル(図示省略)を有する洗浄機5が設けられている。
さらに、ボトル洗浄・充填密封部4は、洗浄機5のボトル搬送方向下流側に、充填部6を備えている。この充填部6は、ミルクコーヒー等の飲食品をボトル内に供給するための、飲食品供給手段(図示省略)を備えている。
【0019】
また、ボトル洗浄・充填密封部4は、充填部6のボトル搬送方向下流側に、キャッパー7を備えている。
また、本発明に係るの殺菌装置は、ボトルの食品充填用口を閉止するキャップを殺菌するための、キャップ殺菌装置8を備えている。このキャップ殺菌装置8は、クラス1000の無菌レベルに保持されている。
【0020】
殺菌前のボトルは、ボトル搬送装置1によって、倒立状態でボトル殺菌部2に搬送される。ボトル殺菌部2では、まず、第1殺菌用ノズルからボトルの内面及び外面、あるいは内面のみに、温調手段によって所定の温度に温調された過酢酸系殺菌剤が噴出される。これにより、ボトルの内面及び外面、あるいは内面に付着していたごみ等の異物が洗い流されると共に、ボトルの内面及び外面、あるいは、内面が殺菌される。次いで、ボトル搬送装置1によってボトルが、第2殺菌用ノズルに対向する位置に至ると、ボトルの内面及び外面、あるいは内面に、第2殺菌用ノズルより、所定の温度に温調された過酢酸系殺菌剤が噴出される。これによって、第1殺菌用ノズルによっては殺菌されなかった菌が殺菌される。
【0021】
上記のボトル殺菌部2における殺菌においては、過酢酸系殺菌剤を所定の温度に加熱した状態、すなわち、過酢酸系殺菌剤の殺菌力を高めた状態でボトルに噴出しているので、殺菌時間が短縮される。
【0022】
ボトル殺菌部2で殺菌されたボトルは、ボトル搬送装置1によってボトル洗浄・充填密封部4へと搬送される。この搬送過程において、無菌エアー搬送部3の無菌エアー吹きつけ手段によって、無菌エアーがボトルの内面及び外面に吹きつけられる。
【0023】
上記の如く搬送されたボトルは、洗浄機5の前記無菌水噴出ノズルによって、ボトル内外に無菌水が噴出されて、ボトルに残留している過酢酸系殺菌剤が除去される。
この場合、本発明では、上記の如く、加熱状態とされた過酢酸系殺菌剤を用いて、すなわち、殺菌力が高くされた過酢酸系殺菌剤を用いてボトルを殺菌しているので、過酢酸系殺菌剤の過酢酸の濃度を低く抑えることができるので、洗浄後に過酢酸系殺菌剤が残留する心配はない。
【0024】
洗浄後のボトルは、充填部6において、前記飲食品供給手段によって、ミルクコーヒー等の飲食品が内部に充填されると共に、キャップ殺菌装置8によって殺菌されたキャップがキャッパー7によって装着される。キャップ装着後のボトルは、製品検査され、これにより全工程が終了する。
なお、上記では、ボトル殺菌部2において、第1殺菌用ノズルと第2殺菌用ノズルとによって、2回に分けて殺菌を行っているが、殺菌用ノズルを単一個とし、さらに、殺菌時間を第1殺菌用ノズルと第2殺菌用ノズルによる2回分の殺菌時間をかけることにより、殺菌を1回で行う構成とすることができる。
また、本発明では、過酢酸系殺菌剤を加熱して殺菌を行っているため、悪臭が発生することが予測されるが、殺菌装置に、吸引・排出手段を設けることにより、クリーンな環境を維持できる。
【0025】
【実施例】
実施例1
Bacillus subutilis芽胞を、内容量が1500mlのPETボトル(JUC-1500)内面に均一に106cfu/ボトルトとなるように付着させ、試験用ボトルとした。
殺菌条件は以下の通りとした。
▲1▼使用する殺菌剤;過酢酸系殺菌剤(商品名:P3-oxonia aktiv)
▲2▼殺菌剤における過酢酸濃度;1000ppm
▲3▼過酢酸系殺菌剤の温度;60℃
▲4▼殺菌剤のボトルへの供給方式;ボトルの内面に殺菌剤を噴射する方式
▲5▼殺菌剤の流量;100ml/sec
▲6▼殺菌時間;1sec、3sec、5sec、8sec、10sec、15secの各々の時間
上記の条件で、ボトル内面を殺菌し、殺菌結果を表1に示した。
【0026】
実施例2
殺菌剤の温度を65℃にする以外は、実施例1と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表1に示した。
【0027】
実施例3
殺菌剤における過酢酸の濃度を1500ppmとし、過酢酸系殺菌剤の温度を55℃とすること以外は、実施例1と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌結果を表2に示した。
【0028】
実施例4
殺菌剤の温度を60℃にする以外は、実施例3と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表2に示した。
【0029】
実施例5
殺菌剤の温度を65℃にする以外は、実施例3と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表2に示した。
【0030】
実施例6
殺菌剤における過酢酸の濃度を2000ppmとし、過酢酸系殺菌剤の温度を50℃とすること以外は、実施例1と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌結果を表3に示した。
【0031】
実施例7
殺菌剤の温度を55℃にする以外は、実施例6と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表3に示した。
【0032】
実施例8
殺菌剤の温度を60℃にする以外は、実施例6と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表3に示した。
【0033】
実施例9
殺菌剤の温度を65℃にする以外は、実施例6と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表3に示した。
【0034】
実施例10
殺菌剤における過酢酸の濃度を3000ppmとし、過酢酸系殺菌剤の温度を45℃とすること以外は、実施例1と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌結果を表4に示した。
【0035】
実施例11
殺菌剤の温度を50℃にする以外は、実施例10と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表4に示した。
【0036】
実施例12
殺菌剤の温度を55℃にする以外は、実施例10と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表4に示した。
【0037】
実施例13
殺菌剤の温度を60℃にする以外は、実施例10と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表4に示した。
【0038】
実施例14
殺菌剤の温度を65℃にする以外は、実施例10と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表4に示した。
【0039】
比較例1
殺菌剤の温度を45℃にする以外は、実施例1と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表1に示した。
【0040】
比較例2
殺菌剤の温度を50℃にする以外は、実施例1と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表1に示した。
【0041】
比較例3
殺菌剤の温度を55℃にする以外は、実施例1と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表1に示した。
【0042】
比較例4
殺菌剤の温度を45℃にする以外は、実施例3と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表2に示した。
【0043】
比較例5
殺菌剤の温度を50℃にする以外は、実施例3と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表2に示した。
【0044】
比較例6
殺菌剤の温度を45℃にする以外は、実施例6と同様の条件で試験用ボトルの殺菌を行い、殺菌効果を表3に示した。
【0045】

【0046】
上記表1において、「◎」は生残菌数が100cfu以下であること、「○」は生残菌数が100cfu以上で101cfu以下であることを示しており、いずれも生残菌数が法定の生残菌数よりも少なくなっている(適切な殺菌がなされている)ことを示している。また、「△」は生残菌数が101cfu以上で103cfu以下であること、「×」は生残菌数が103cfu以上であることを示しており、生残菌数が法定の生残菌数よりも多くなっている(殺菌が不十分)であることを示している。
上記表1から実施例1では、15secという短時間で、十分な殺菌効果が得られ、実施例2では、さらに短い8secで十分な殺菌効果が得られることが明らかになった。
一方、比較例1ないし3では、いずれも、15sec以内の短時間では、十分な殺菌効果が得られなかった。
【0047】

【0048】
表2において、「◎」、「○」、「△」、「×」は、表1と同様の内容を示している。
実施例3ないし5では、いずれも15sec以内という短時間で十分な殺菌効果が得られ、特に、実施例5では5secという極めて短時間で十分な殺菌効果が得られた。
一方、比較例4及び5では、15sec以内という短時間では、十分な殺菌効果は得られなかった。
【0049】


【0050】
表3において、「◎」、「○」、「△」、「×」は、表1と同様の内容を示している。
実施例6ないし9では、いずれも15sec以内という短時間で十分な殺菌効果が得られ、特に、実施例9では5secという極めて短時間で極めて有効な殺菌効果が得られた。
一方、比較例6では、15sec以内という短時間では、十分な殺菌効果は得られなかった。
【0051】

【0052】
表4において、「◎」、「○」、「△」、「×」は、表1と同様の内容を示している。
実施例10ないし14では、いずれも15sec以内という短時間で十分な殺菌効果が得られ、特に、実施例14では3secという極めて短時間で、十分な殺菌効果が得られた。
【0053】
【発明の効果】
以上のように構成されているので、本発明によれば、殺菌剤の濃度を高くすることなく短時間にPETボトルを殺菌できるPETボトルの殺菌方法及びPETボトルの殺菌装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るPETボトルの殺菌方法の工程図である。
【符号の説明】
2 ボトル殺菌部
4 ボトル洗浄・充填密封部
 
訂正の要旨 訂正事項
a 特許請求の範囲の請求項1ないし4における過酢酸系殺菌剤の加温温度の上限を「95℃」に減縮する。
b 特許請求の範囲の請求項5を削除する。
c 特許明細書の段落【0012】の「ならびにPETボトルの耐熱性の点」という記載を削除する。
d 発明の名称を「PETボトルの殺菌方法」と訂正する。
異議決定日 2002-01-15 
出願番号 特願平6-196699
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B65B)
P 1 651・ 55- YA (B65B)
P 1 651・ 113- YA (B65B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森林 克郎  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 杉原 進
市野 要助
登録日 2000-06-23 
登録番号 特許第3080347号(P3080347)
権利者 東洋製罐株式会社
発明の名称 PETボトルの殺菌方法  
代理人 大場 充  
代理人 古部 次郎  
代理人 庄子 幸男  
代理人 庄子 幸男  

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