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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特39条先願  C08G
管理番号 1056627
異議申立番号 異議1999-73918  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-19 
確定日 2002-01-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2884046号「紫外線硬化性樹脂の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2884046号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続きの経緯
本件特許第2884046号の請求項1に係る発明は、平成7年3月29日に特許出願され、平成11年2月12日に特許権の設定登録がされたものである。
その後、山川 寧より特許異議の申立てがされ、当審より取消理由を通知したところ、その指定期間内の平成12年4月25日付けで特許異議意見書と訂正請求書が提出された。
そこで、特許異議申立人に対して期間を指定して上記特許異議意見書及び訂正請求書に対する意見を求める審尋書を発したが、応答がなかったものである。
[2]訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容について
訂正事項は次のとおりである。
1.特許請求の範囲の請求項1における
「ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法。」を
「フェノール核の核数が平均5核〜7核であるノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、ここで得られた反応生成物と、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、直接同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法。」と訂正する。
2.明細書第2頁下から第2行〜第3頁第2行(本件特許公報第3欄第36行〜第41行)における「(1)ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法、」を
「(1)フェノール核の核数が平均5核〜7核であるノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、ここで得られた反応生成物と、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、直接同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法、」と訂正する。
(2)訂正の目的、訂正の範囲の適否、特許請求の範囲の拡張、変更について
訂正事項1における「フェノール核の核数が平均5核〜7核である」を挿入する訂正は、訂正前の本件請求項1に係る発明におけるノボラック型エポキシ樹脂をフェノール核の核数が平均5核〜7核であるものに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、また、願書に添付した明細書第3頁第16行〜第24行の記載に基づくものであり、訂正事項1における「ここで得られた反応生成物と、」を挿入する訂正は、本件請求項1に係る発明における反応機構を明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、また、訂正事項1における「直接」を挿入する訂正は、本件請求項1に係る発明における反応機構を明確にするものであるから明りょうでない記載の釈明に該当し、願書に添付した明細書において前記反応生成物との反応の間に他の物質を反応させる記載がないことに基づくものである。
それ故、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項2は訂正事項1による本件請求項1についての訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。
(3)独立特許要件についての判断
訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明はその特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。その理由は下記[3]の特許異議申立てについての判断の項で詳しく述べるのでここでは省略する。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号。以下「平成六年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第百二十条の四第三項において準用する平成六年改正法による改正前の特許法第百二十6条第1項ただし書、第二項及び第三項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]特許異議申立てについての判断
(1)特許異議申立ての概要
特許異議申立人は、甲第1号証〔特許第2896636号公報(特願平7-96000号、出願日:平成7年3月29日、出願人:日華化学株式会社、株式会社アサヒ化学研究所)、甲第2号証(特開平7-33961号公報)及び甲第3号証(特開平7-70289号公報)を提出して、
(イ)特許権の設定登録時の本件請求項1に係る発明は、同日に異なる出願人によって特許出願された甲第1号証の請求項1に記載された発明と同一であるから、特許法第39条第2項の規定により、特許出願人の協議により定めた1の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができ、協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができないものである。
それ故、特許権の設定登録時の本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものであるか、または、
(ロ)特許権の設定登録時の本件請求項1に係る発明は、上記甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明であるか、或いは、上記甲第2号証に記載された発明又は上記甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
それ故、特許権の設定登録時の本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定、或いは、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである
と主張している。
(2)本件発明
訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件発明」という。」)は、訂正明細書における特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「フェノール核の核数が平均5核〜7核であるノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、ここで得られた反応生成物と、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、直接同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法。」
(3)甲各号証の記載事項
(イ)上記甲第1号証について
上記甲第1号証の特許請求の範囲には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤及び希釈剤を含有するソルダーフォトレジストインキ用組成物において、紫外線硬化性樹脂が、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸との反応生成物に、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、同時に反応することにより得られるものであり、さらに熱硬化促進剤が配合されてなることを特徴とするソルダーフォトレジストインキ用組成物。
【請求項2】ノボラック型エポキシ化合物のフェノール核の核数が、平均5核以上7核以下である請求項1記載のソルダーフォトレジストインキ用組成物。
【請求項3】紫外線硬化性樹脂が、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸との反応生成物の有する水酸基1モル当たり、0.4〜1.0モルの二塩基酸無水物を反応させたものである請求項1〜2記載のソルダーフォトレジストインキ用組成物。
【請求項4】紫外線硬化性樹脂が、45〜100mgKOH/gの酸価を有するものである請求項1〜3記載のソルダーフォトレジストインキ用組成物。
【請求項5】光重合開始剤の配合量が、紫外線硬化性樹脂100重量部当たり0.2〜20.0重量部である請求項1〜4記載のソルダーフォトレジストインキ用組成物。
【請求項6】希釈剤が、有機溶剤及び光重合性モノマーの中から選ばれた少なくとも1種であり、かつその配合量が、紫外線硬化性樹脂100重量当たり30〜200重量部である請求項1〜5記載のソルダーフォトレジストインキ用組成物。
【請求項7】熱硬化促進剤が、トリアジン化合物又はトリアジン化合物とイソシアヌル酸の付加物であり、かつその配合量が紫外線硬化性樹脂100重量部当たり0.5〜30重量部である請求項1〜6記載のソルダーフォトレジストインキ用組成物。」。
(ロ)上記甲第2号証について
取消理由に引用された上記甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「これらの性能を向上させるためには光硬化後のソルダーレジストの架橋密度を大きくすることが必要である。従って、光重合前のオリゴマー(光硬化性樹脂と言うことがある)の感光度を増大させなければならない。しかし、低分子量の多官能光重合性架橋剤を配合するなどして単純に光重合性二重結合を増やすだけでは、光硬化後のレジストインキ塗膜がもろくなって密着性が悪化してしまう。また、このことが、タックフリー性を低下させることにもなっていた。このため、まず光硬化性樹脂の分子量を上げ、次に分子量に応じたできるだけ多くの光重合性二重結合を導入するというポリマー分子設計が必要となる。」(第2頁第2欄第13行〜第25行)、
「本発明者らは上記の事情を考慮して、ノボラック型エポキシ樹脂を出発原料とし、充分な分子量と光重合性二重結合を有する光硬化性樹脂を製造することによって、タックフリー性とともに耐熱性、耐薬品性、密着性、解像度に優れた塗膜を形成し得るソルダーレジスト用インキ組成物を提供することを目的として研究した結果、本発明に到達した。」(第2頁第2欄第34行〜第40行)、
「鎖延長剤(IVa)による高分子量化では、核体数を10以上とするのが好ましい。」(第4頁第5欄第1行〜第2行)、
「鎖延長剤(IVb)による高分子量化では、核体数を10以上とするのが好ましい。」(第4頁第6欄第26行〜第28)、
「ノボラック型エポキシ樹脂(I)に対する(メタ)アクリル酸(II)および多官能(メタ)アクリレート(III)の反応割合は前述の通り、化学当量の割合で、9:1〜5:5が好ましく、多官能(メタ)アクリレート(III)がこの範囲より少ないと1分子中に光重合性二重結合を増加させることによる耐熱性や耐薬品性などの改良効果が明確に現われず、また、この範囲より多く反応させても増加させた効果は認められなくなる。」(第5頁第7欄第39行〜第46行)、
「本発明においては前述の光硬化性樹脂(A)に、水溶性を付与することもできる。これは光硬化性樹脂(A)中のヒドロキシル基と酸無水物を反応させることによって、分子中にカルボキシル基が導入された光硬化性樹脂(A1)を生成させるものであり、非露光部分の光硬化性ソルダーレジスト用インキ組成物をアルカリ水溶液で容易に溶解除去することが可能となる。」(第5頁第7欄第48行〜第8欄第3行)、
「酸無水物としては、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラアヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、トリメリット酸等の二塩基酸無水物あるいは前述の脂肪族あるいは芳香族四カルボン酸二無水物等の四塩基酸二無水物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。」(第5頁第8欄第4行〜第12行)、
「このようにして得られた光硬化性樹脂(A2)は、カルボキシル基を有しているため、アルカリでカルボキシル基の一部もしくは全部を中和して塩として使用することにより水溶性を付与できる。また、アルカリ水溶液による現像が可能となる。」(第5頁第8欄第24行〜第28行)、
「本発明による光硬化性樹脂(A)および(A2)は、従来のノボラック骨格を有する光硬化性樹脂に比べ、分子量が大幅に大きくなっているとともに、1分子中の光重合をすることのできる二重結合が著しく増大しているため、わずかな光照射であっても、解像度に優れた硬化塗膜を形成し得る光硬化性ソルダーレジスト用インキ組成物を与えることができる。また、3次元化反応の確率がより高くなることから耐熱性、密着性、耐薬品性にも優れている」(第5頁第8欄第44行〜第6頁第9欄第2行)、
「(合成例4)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂ECN1280(チバガイギー製、エポキシ当量227,n=4.1)454部に、アクリル酸96部、合成例1で得られた多官能(メタ)アクリレート混合物(III-1)141部、テトラブロモビスフェノールA116部、エチルカルビトールアセテート150部、トルエン150部、ジメチルベンジルアミン3.5部およびハイドロキノン0.5部を加え、110℃で16時間反応させ、酸価が4.0になったことを確認後、さらにペンタエリスリトールテトラアクリレート65部を加え、光硬化性樹脂(A)を65%含むエチルカルビトールアセテート、トルエンおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(A-2)を得た。」(第6頁第10欄第50行〜第7頁第11欄第12行)、
「(合成例5)合成例4で得た混合物(A-2)400部に、無水テトラヒドロフタル酸31部、無水コハク酸20部、エチルカルビトールアセテート14部およびトルエン14部を加え100℃で6時間反応させ、酸価73の光硬化性樹脂(A2)を65%含むエチルカルビトールアセテート、トルエンおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(A2-2)を得た。」(第7頁第11欄第13行〜第19行)、
「合成例5の光硬化性樹脂(A2-2)に、希釈剤、光重合開始剤、エポキシ硬化剤などを加えて製造された光り硬化性液状ソルダーレジスト用インキ組成物」(【表1】第8頁第14欄第19行〜第9頁第15欄)。
(ハ)上記甲第3号証について
取消理由に引用された上記甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「本発明は、感光性樹脂組成物に関するものであり、さらに詳しくは、プリント配線基板製造用ソルダーレジスト、無電解メッキレジスト、ソルダーマスク等に適した、紫外線露光に対する感度が高く、アルカリ水溶液による現像性が良好で、かつ現像性の経時変化が少なく、さらに電気特性、機械的特性、耐薬品性等に優れた硬化塗膜を形成し得る感光性樹脂組成物に関するものである。」(第2頁第1欄第38行〜第45行)、
「このフォトレジストインキにはインキ硬化後の塗膜の耐水性や電気特性がカルボキシル基によって低下するのを防ぐために、添加剤として別にエポキシ樹脂を配合して、エポキシ基とカルボキシル基を後加熱で架橋させてしまうという手段を採用している。」(第2頁第2欄第27行〜第32行)、
「本発明は上記従来技術の問題を解決して、導入するペンダントカルボキシル基の量を低くしても、速やかにかつ確実に弱アルカリ水溶液で現像ができ、しかも電気特性、機械的特性、耐薬品性等に優れた硬化塗膜を形成し得る感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。」(第2頁第2欄第49行〜第3頁第3欄第4行)、
「本発明者らは、前記従来技術の問題を解決するために鋭意検討した結果、カルボキシル基のみを多く導入するのではなく、ポリオキシアルキレン基をカルボキシル基と共に光重合性樹脂中に導入すれば、カルボキシル基の量を低減しても弱アルカリ水溶液での現像が可能となることを見出し、本発明に到達したものである。また、光重合性樹脂中のカルボキシル基の低減により、カルボキシル基封鎖のためのエポキシ樹脂配合量も減らすことができることから、フォトレジストインキとしての貯蔵安定性や塗布・乾燥後の現像可能時間(現像性ライフ)の延長化も達成できた。」(第3頁第3欄第34行〜第44行)、
「本発明では、変性エポキシ樹脂(X)中のヒドロキシル基の1化学当量に対して、多塩基酸無水物(iii)を0.1〜0.7モル反応させることによって、カルボキシル基の導入された、弱アルカリ水溶液によって現像可能な光重合性樹脂(A)が製造される。変性エポキシ樹脂(X)中には、前述の化合物(i)あるいは(メタ)アクリル酸との反応によってエポキシ基が開環したために生成したヒドロキシル基が存在しており、ヒドロキシル基と多塩基酸無水物との開環反応によってカルボキシル基が導入される。」(第5頁第7欄第7行〜第16行)、
「上記光重合性樹脂に光重合開始剤(B)および希釈剤(C)を添加することによって本発明の感光性樹脂組成物を得ることができる。」(第5頁第8欄第42行〜第44行)、
「本発明による感光性樹脂組成物中には、さらに必要に応じてタルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、着色用顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤等や、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂およびジシアンジアミド、イミダゾール化合物などのエポキシ硬化剤等を添加することもできる。」(第6頁第10欄第1行〜第9行)、
「鎖延長剤(IIa)の例としては、多塩基酸、多価フェノール、多官能アミン、多価チオール等が挙げられ、鎖延長剤(IIb)の例としては多官能イソシアネート化合物が挙げられる。」(第6頁第10欄第35行〜第38行)、
「合成例7 フェノールノボラック型エポキシ樹脂EPPN-201(日本化薬製、エポキシ当量187)187部に、合成例2で得た混合物(i-2)65部、アクリル酸68部、エチルカルビトールアセテート55部、トリフェニルホスフィン1.5部およびメチルハイドロキノン0.15部を加え、110℃で15時間反応させ、反応物の酸価が2.7になったことを確認し、続いて無水テトラヒドロフタル酸30部および無水コハク酸20部を加え100℃で5時間反応させ、反応終了後トルエン75部を加え酸価64の光重合性樹脂(A)を70%含む、エチルカルビトールアセテートおよびトルエンとの樹脂混合物(A-2)を得た。」(第7頁第12欄第1行〜第13行)、
「合成例7の光重合性樹脂(A)に希釈剤、光重合開始剤、エポキシ硬化剤などを加えて製造された感光性樹脂組成物」(【表1】、第8頁第14欄第32行〜第9頁上欄)。
(4)対比・判断
(イ)特許異議申立人の主張(イ)について
本件発明は「紫外線硬化性樹脂の製造方法の発明」であるのに対して、上記甲第1号証の特許請求の範囲の請求項1〜請求項7に記載の発明は、いずれも、「紫外線硬化性樹脂の他に光重合開始剤及び希釈剤を含有し、さらに熱硬化促進剤が配合されてなるソルダーフォトレジストインキ用組成物の発明」であるから、本件発明は、甲第1号証の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明に対してのみならず、甲第1号証の特許請求の範囲の請求項2〜請求項7に記載の発明に対しても、発明の目的物も発明のカテゴリーも相違するものであって、同一のものであるといえないものである。
それ故、本件発明は特許法第39条第2項に規定する発明に該当するものでない。
(ロ)特許異議申立人の主張(ロ)について
上記甲第2号証及び甲第3号証にアルカリ現像性、塗膜強度、貯蔵安定性等の良好な紫外線硬化性樹脂が得られることが記載されている。しかし、本件発明における「フェノール核の核数を平均5〜7という狭い範囲に特定したノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応生成物と、特定の二塩基酸無水物を特定の比率で併用した併用二塩基酸無水物との直接同時に反応させる点」については上記甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも記載されておらず、また、示唆もされていない。
そして、本件発明は上記の構成を具備することによって、「貯蔵安定性に優れ、ソルダーフォトレジストインキ用組成物に使用するとき、希アルカリ現像性が良好で、その硬化物の塗膜は、密着性、耐熱性、耐湿性に優れる」という明細書に記載されている顕著な効果を奏するものである。
してみれば、本件発明は、上記甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明であるということができないし、また、上記甲第2号証に記載された発明又は上記甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできないものである。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人山川 寧が提出した理由及び証拠方法によっては本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認められない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号)附則第十4条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成七年政令第二百五号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
紫外線硬化性樹脂の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール核の核数が平均5核〜7核であるノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、ここで得られた反応生成物と、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、直接同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線硬化性樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、プリント配線基板を製造する際の銅エッチング用フォトレジスト及び永久保護皮膜としてのソルダーフォトレジストインキ用感光性樹脂として有用であり、貯蔵安定性が良好で、希アルカリ現像性に優れ、耐熱性、密着性及び耐湿性に優れた硬化物を与える紫外線硬化性樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、各種プリント配線基板のソルダーレジストとしては、希アルカリ現像型の液状ソルダーフォトレジストインキが広く使用されている。このようなソルダーフォトレジストインキ用組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤及び希釈剤からなる第1液成分と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である熱硬化性成分及び希釈剤からなる第2液成分とを混合して用いる2液型の組成物が知られている(特公平1-54390号公報)。2液を混合することにより得られるソルダーフォトレジストインキ用組成物を、プリント配線基板に塗布し、仮乾燥工程により塗布表面をタックフリーにしたのち、フォトマスクを用いて紫外線露光を行い、希アルカリ水溶液で現像処理して未露光部分を除去し、さらに加熱により露光部分を完全に熱硬化させる。
このようなソルダーフォトレジストインキ用組成物の第1液成分は、同一液中に反応性の高い不飽和結合、カルボキシル基及び光重合開始剤を含むため、貯蔵安定性が悪く、シェルフライフが短いという問題がある。また、エポキシ基を有する化合物を第2液成分として配合し、2液型レジストインキとして使用した場合、ポットライフを向上させようとすると、得られる塗膜の密着性、耐水溶性フラックス性、耐熱性などの特性が劣化するという欠点を生ずる。
このため、貯蔵安定性が良好でシェルフライフが長く、ソルダーフォトレジストインキ用組成物とした場合、希アルカリによる現像性が良好であり、しかも、硬化物の機械的、化学的特性が優れる紫外線硬化性樹脂が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のソルダーフォトレジストインキ用の紫外線硬化性樹脂の貯蔵安定性を改良し、紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤及び希釈剤を含有する組成物として長いシェルフライフを有し、露光後の希アルカリ現像性が良好であり、硬化物の基板への密着性、耐熱性、耐湿性に優れる、ソルダーフォトレジストインキ用の紫外線硬化性樹脂の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、分子量の異なる2種類の二塩基酸を同時に反応して得られる紫外線硬化性樹脂が、貯蔵安定性と希アルカリ現像性に優れるソルダーフォトレジストインキ用組成物を与え、しかもその硬化物が良好な機械的、化学的特性を有することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)フェノール核の核数が平均5核〜7核であるノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、ここで得られた反応生成物と、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、直接同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(2)ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸を、90〜200℃で反応する第(1)項記載の紫外線硬化性樹脂の製造方法、
(3)ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物と反応させる二塩基酸無水物の量が、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物が有する水酸基1モル当たり0.4モル以上である第(1)〜(2)項記載の紫外線硬化性樹脂の製造方法、及び、
(4)ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物と二塩基酸無水物を、60〜120℃で反応する第(1)〜(3)項記載の紫外線硬化性樹脂の製造方法、
を挙げることができる。
【0005】
本発明において使用するノボラック型エポキシ樹脂は、フェノール又はo-クレゾールとホルムアルデヒドの反応生成物であるフェノールノボラック又はクレゾールノボラックに、エピクロルヒドリンを反応することにより得られる多官能のエポキシ樹脂であり、フェノール核の核数が平均5核以上7核以下であり、エポキシ当量が170〜230であるものを好適に使用することができる。フェノール核の核数が5核未満であると、ソルダーフォトレジストインキ用組成物の硬化物が脆くなるおそれがある。フェノール核の核数が7核を超えると、ソルダーフォトレジストインキ用組成物の希アルカリ現像性とシェルフライフ(貯蔵安定性)が低下するおそれがある。
本発明においては、ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応する。エポキシ基とカルボキシル基の反応により、オキシラン環が開環し、水酸基とエステル結合が生成する。使用する不飽和モノカルボン酸には特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ソルビン酸、桂皮酸などを挙げることができるが、アクリル酸は生成物の光重合性が良好であり、硬化物の特性に優れるので、特に好適に使用することができる。ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応方法には特に制限はなく、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸を、適当な希釈剤中で加熱することにより反応することができる。希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサなどの石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどの酢酸エステル類などを挙げることができる。
【0006】
本発明において、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の量と、不飽和モノカルボン酸の量は、ほぼ当量であることが好ましい。エポキシ基が過剰であっても、不飽和モノカルボン酸が過剰であっても、貯蔵安定性が低下し、硬化物の特性が低下するおそれがある。ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応温度は、90〜200℃であることが好ましく、100〜130℃であることがより好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応に際しては、ノボラック型エポキシ樹脂、不飽和モノカルボン酸及び希釈剤よりなる反応混合物中の、ノボラック型エポキシ樹脂及び不飽和モノカルボン酸の合計量が20〜80重量%であることが好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物は、単離することなく、希釈剤溶液のまま次の二塩基酸無水物との反応に供することができる。
本発明においては、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物に、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物を、2種の二塩基酸無水物のモル比が3/7〜7/3となる割合で同時に反応する。二塩基酸無水物としては、飽和二塩基酸無水物及び不飽和二塩基酸無水物を使用することができる。分子量が120以下の二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、メチル無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水ジグリコール酸などを挙げることができ、これらの中で無水コハク酸を特に好適に使用することができる。分子量が140以上の二塩基酸無水物としては、アリル無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ジフェン酸、ニトロ無水フタル酸、無水フタロン酸などを挙げることができ、これらの中でテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸を特に好適に使用することができる。
【0007】
本発明において、二塩基酸無水物は、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応生成物が有する水酸基と反応し、エステル結合と遊離のカルボキシル基を生成する。ここで生成する遊離のカルボキシル基及びカルボキシル基の主鎖骨格との結合の状態が、希アルカリ現像性、貯蔵安定性及び硬化塗膜の特性に強い影響を有していて、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物を、モル比が3/7〜7/3となる割合で同時に反応することにより、好ましくはモル比が4/6〜6/4となる割合で同時に反応することにより、良好な性能を有する紫外線硬化性樹脂を得ることができる。分子量が120以下の二塩基酸無水物と分子量が140以上の二塩基酸無水物のモル比が3/7未満であり、分子量が120以下の二塩基酸無水物の割合が少ないと、希アルカリ現像性が低下するおそれがある。分子量が120以下の二塩基酸無水物と分子量が140以上の二塩基酸無水物のモル比が7/3を超え、分子量が140以上の二塩基酸無水物の割合が少ないとシェルフライフ、ポットライフが低下すると共に、塗膜の良好な物性が十分発現しないおそれがある。
本発明において、分子量の異なる2種の二塩基酸無水物を、同時にノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物に添加して反応することが重要であり、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物に、2種の二塩基酸無水物を別々に反応する場合には本発明の効果は得られない。その機構は明らかではないが、2種の二塩基酸無水物を同時に反応させることによって、紫外線硬化性樹脂中の同一分子に2種以上の化学的に環境の異なるカルボキシル基が生成し、このことによって、単一の二塩基酸無水物を反応させた紫外線硬化性樹脂では不可能であった上記の性能が、始めて発現したと考えられる。
【0008】
本発明においては、分子量が120以下の二塩基酸無水物を1種使用することができ、2種以上を併用することができる。同様に、分子量が140以上の二塩基酸無水物を1種使用することができ、2種以上を併用することができる。使用する二塩基酸無水物の種類が増加しても、分子量が120以下の二塩基酸無水物と、分子量が140以上の二塩基酸無水物のモル比が3/7〜7/3の範囲にあれば、本発明の効果を得ることができる。
本発明において、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物と反応させる二塩基酸無水物の量は、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物が有する水酸基1モル当たり0.4モル以上であることが好ましい。反応させる二塩基酸無水物の量が、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物が有する水酸基1モル当たり0.4モル未満であると、希アルカリ現像性及び塗膜の特性が低下するおそれがある。
本発明において、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量140以上の二塩基酸無水物は、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物に同時に添加して反応する。ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物が希釈剤の溶液として存在するときは、この溶液に二塩基酸無水物の混合物を添加し、加熱溶解して反応することにより、好適に反応を進めることができる。ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸の反応生成物と二塩基酸無水物を反応する温度は、60〜120℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。
【0009】
本発明方法により得られる紫外線硬化性樹脂は、酸価が45〜90mgKOH/gであることが好ましい。得られる紫外線硬化性樹脂の酸価は、反応する二塩基酸無水物の量を適当に選択することにより、容易に調整することができる。紫外線硬化性樹脂の酸価が45mgKOH/g未満であると、レジスト組成物の希アルカリ現像性及び硬化した塗膜の密着性と耐熱性が劣るおそれがある。紫外線硬化性樹脂の酸価が90mgKOH/gを超えると、硬化物の塗膜の電気絶縁性、耐熱性、耐湿性が劣るおそれがある。
本発明方法により得られる紫外線硬化性樹脂は、光重合開始剤及び希釈剤と混合して、ソルダーフォトレジストインキ用組成物の第1液成分として好適に使用することができる。第2液成分としての熱硬化性樹脂としては、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を挙げることができる。さらに、これらのソルダーフォトレジストインキ用組成物に、硫酸バリウム、酸化ケイ素などの公知の充填剤、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、二酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料、消泡剤、レベリング剤などの各種添加物、あるいはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t-ブチルカテコールなどの公知の重合禁止剤などを配合することができる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、現像性及び塗膜性能は下記の方法により評価した。
(1)希アルカリ現像性
テスト用プリント配線基板製作過程において、ソルダーフォトレジストインキを塗布し、750℃で30分仮乾燥直後のものと、仮乾燥後3日後のものについて、光照射による硬化後に1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用い、20℃で5分間スターラー撹拌により現像した際の現像性を次に示す基準により評価した。
◎:1分以内で現像可能。
○:1分を超え3分以内で現像可能。
△:3分を超え5分以内で現像可能。
×:5分以内で現像不可能。
(2)密着性
JIS K 5400 8.5.2に準じて、それぞれのテスト用プリント配線基板に碁盤目状に縦横10本のクロスカットを入れ、次いでセロハンテープによる剥離試験後の塗膜の剥離状態を目視によって判定した。
◎:100/100で全く剥離が認められないもの。
○:100/100で線の際がわずかにはがれたもの。
△:90/100〜99/100。
×:0/100〜89/100。
(3)鉛筆硬度
JIS K 5400 8.4.2に準じて、「三菱ユニ」鉛筆を用い、塗膜に傷が付かない最も高い硬度をもって評価した。
(4)はんだ耐熱性
それぞれのテスト用プリント配線基板に、ロジン系フラックス[(株)アサヒ化学研究所、商品名GX-7]を塗布し、2600℃に保ったはんだ浴に塗膜面をはんだに接触するようにして15秒間浮かべ、その後塗膜の膨れと剥離を観察した。これを1サイクルとして膨れ又は剥離が生ずるまで繰り返し、膨れ又は剥離が生ずるまでの延べ時間により評価した。
(5)耐水溶性フラックス性
それぞれのテスト用プリント配線基板に、水溶性フラックス[LONCO社、商品名 CF-350]を塗布し、260℃のはんだ浴に塗膜面をはんだに接触するようにして5秒間浮かべ、60℃の温水に15分間つけたのち、セロハンテープにより剥離試験を行った。同時に塗膜表面の光沢の変化、特に白化状態を観察した。評価基準を以下に示す。
剥離試験 ◎:全くはがれないもの。
○:ほんのわずかにはがれたもの。
△:全体の10〜30%がはがれたもの。
×:全体の31%以上がはがれたもの。
白化状態 ◎:全く白化していないもの。
○:ほんのわずかに白化しているもの。
△:全体の10〜30%が白化しているもの。
×:全体の31%以上が白化しているもの。
(6)紫外線硬化性樹脂のシェルフライフ促進試験
紫外線硬化性樹脂をふた付きのプラスチック製のビンに入れ、60℃の恒温槽に浸漬し、25℃における粘度が初期粘度の2.5倍に達するか、あるいは1,000ポイズを超えるまでの日数で評価した。
【0011】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、エチルカルビトールアセテート188g及びエポキシ当量が215で1分子中に平均して6個のフェノール核を有するクレゾールノボラック型エポキシ樹脂215gを仕込んだ。撹拌しつつ120℃まで加熱し、120℃を保ったまま滴下ロートよりアクリル酸72g(1.0モル)を1時間かけて滴下し、さらに10時間120℃で反応を続けた。いったん反応混合物を室温まで冷却し、無水コハク酸25g(0.25モル)及びテトラヒドロ無水フタル酸38g(0.25モル)を加え、ふたたび80℃に加熱して3時間反応した。反応終了後、室温まで冷却したところ、粘稠な溶液が得られた。この溶液の加熱残分は65重量%であり、溶液として53mgKOH/gの酸価を示した。この溶液を、樹脂A-1とする。
樹脂A-1を55g、光重合開始剤[チバ・ガイギー社、イルガキュア907]4g、熱硬化促進剤[四国化成(株)、キュアゾール 2MA-OK]0.5g、希釈剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート5g、フタロシアニングリーン顔料3g、硫酸バリウム12g、酸化ケイ素10g及び消泡剤[日華化学(株)、フォームレックスSOL-30]0.5gを、ロールミル(3本ロール)により混練してソルダーフォトレジストインキ用組成物の第1液を調製した。
また、エポキシ樹脂[東都化成(株)、YDCN-702S]8g及びグリセリンジグリシジルエーテル7gを混合して、ソルダーフォトレジストインキ用組成物の第2液を調製した。
第1液及び第2液を混合し、あらかじめエッチングしてパターンを形成しておいた銅プリント配線基板にスクリーン印刷法にて15〜20μmの膜厚で全面に塗布し、熱風循環型乾燥炉で75℃で30分仮乾燥した。仮乾燥直後に、基板にフォトマスクを当て、3kWメタルハライドランプにより紫外線500mJ/cm2を照射し、光硬化を行った。次いで1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用い、塗膜の未硬化部分を除去した。現像した基板は、さらに150℃で30分間熱硬化を行い、テスト用プリント配線基板を完成した。
このテスト用プリント配線基板について、塗膜の性能評価を行った。結果を第1表に示す。
樹脂A-1についてシェルフライフ促進試験を行った。結果を第1表に示す。
実施例2
実施例1のエチルカルビトールアセテート188gの代わりに、ブチルセロソルブ188gを用い、無水コハク酸25g及びテトラヒドロ無水フタル酸38gの代わりに、無水コハク酸30g(0.3モル)及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸33g(0.2モル)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。得られた粘稠な溶液の加熱残分は65重量%であり、溶液として54mgKOH/gの酸価を示した。この溶液を、樹脂A-2とする。
樹脂A-1を55g用いる代わりに、樹脂A-2を55g用いた以外は、実施例1と全く同様にしてテスト用プリント配線基板を作成し、塗膜の性能評価を行った。結果を第1表に示す。
樹脂A-2についてシェルフライフ促進試験を行った。結果を第1表に示す。
実施例3
撹拌機、還流冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、エチルカルビトールアセテート196g及びエポキシ当量が215で1分子中に平均して6個のフェノール核を有するクレゾールノボラック型エポキシ樹脂215gを仕込んだ。撹拌しつつ120℃まで加熱し、120℃を保ったまま滴下ロートよりメタクリル酸86g(1.0モル)を1時間かけて滴下し、さらに10時間120℃で反応を続けた。いったん反応混合物を室温まで冷却し、無水コハク酸10g(0.1モル)、無水グルタル酸23g(0.2モル)及びテトラヒドロ無水フタル酸30g(0.2モル)を加え、ふたたび80℃に加熱して3時間反応した。反応終了後、室温まで冷却したところ、粘稠な溶液が得られた。この溶液の加熱残分は65重量%であり、溶液として52mgKOH/gの酸価を示した。この溶液を、樹脂A-3とする。
樹脂A-3を55g、光重合開始剤[チバ・ガイギー社、イルガキュア907]3g、光重合開始剤[日本化薬(株)、CAYACURE DETX-S]1g、熱硬化促進剤[四国化成(株)、キュアゾール 2MA-OK]0.5g、希釈剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート5g、フタロシアニングリーン顔料3g、硫酸バリウム12g、酸化ケイ素10g及び消泡剤[日華化学(株)、フォームレックスSOL-30]0.5gを、ロールミル(3本ロール)により混練してソルダーフォトレジストインキ用組成物の第1液を調製した。
また、エポキシ樹脂[油化シェルエポキシ(株)、エピコート828]10g、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル3g及びセロソルブアセテート5gを混合して、ソルダーフォトレジストインキ用組成物の第2液を調製した。
第1液及び第2液を混合し、あらかじめエッチングしてパターンを形成しておいた銅プリント配線基板にスクリーン印刷法にて15〜20μmの膜厚で全面に塗布し、熱風循環型乾燥炉で75℃で30分仮乾燥した。仮乾燥直後に、基板にフォトマスクを当て、3kWメタルハライドランプにより紫外線500mJ/cm2を照射し、光硬化を行った。次いで1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用い、塗膜の未硬化部分を除去した。現像した基板は、さらに150℃で30分間熱硬化を行い、テスト用プリント配線基板を完成した。
このテスト用プリント配線基板について、塗膜の性能評価を行った。結果を第1表に示す。
樹脂A-3についてシェルフライフ促進試験を行った。結果を第1表に示す。
【0012】
比較例1
実施例1のエチルカルビトールアセテートの量を181gとし、無水コハク酸25g及びテトラヒドロ無水フタル酸38gの代わりに、無水コハク酸50g(0.5モル)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。得られた粘稠な溶液の加熱残分は65重量%であり、溶液として55mgKOH/gの酸価を示した。この溶液を、樹脂B-1とする。
樹脂A-1を55g用いる代わりに、樹脂B-1を55g用いた以外は、実施例1と全く同様にしてテスト用プリント配線基板を作成し、塗膜の性能評価を行った。結果を第1表に示す。
樹脂B-1についてシェルフライフ促進試験を行った。結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1のエチルカルビトールアセテートの量を204gとし、無水コハク酸25g及びテトラヒドロ無水フタル酸38gの代わりに、テトラヒドロ無水フタル酸91g(0.6モル)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。得られた粘稠な溶液の加熱残分は65重量%であり、溶液として59mgKOH/gの酸価を示した。この溶液を、樹脂B-2とする。
樹脂A-1を55g用いる代わりに、樹脂B-2を55g用いた以外は、実施例1と全く同様にしてテスト用プリント配線基板を作成し、塗膜の性能評価を行った。結果を第1表に示す。
樹脂B-2についてシェルフライフ促進試験を行った。結果を第1表に示す。
比較例3
樹脂B-1と樹脂B-2を重量比1:1で混合した。得られた粘稠な溶液の加熱残分は65重量%であり、溶液として57mgKOH/gの酸価を示した。この溶液を、樹脂B-3とする。
樹脂A-1を55g用いる代わりに、樹脂B-3を55g用いた以外は、実施例1と全く同様にしてテスト用プリント配線基板を作成し、塗膜の性能評価を行った。結果を第1表に示す。
樹脂B-3についてシェルフライフ促進試験を行った。結果を第1表に示す。
比較例4
実施例1のエチルカルビトールアセテートの量を191gとし、無水コハク酸25g及びテトラヒドロ無水フタル酸38gの代わりに、無水コハク酸45g(0.45モル)及びテトラヒドロ無水フタル酸23g(0.15モル)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。得られた粘稠な溶液の加熱残分は65重量%であり、溶液として62mgKOH/gの酸価を示した。この溶液を樹脂B-4とする。
樹脂A-1を55g用いる代わりに、樹脂B-4を55g用いた以外は、実施例1と全く同様にしてテスト用プリント配線基板を作成し、塗膜の性能評価を行った。結果を第1表に示す。
樹脂B-4についてシェルフライフ促進試験を行った。結果を第1表に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
本発明方法により製造した紫外線硬化性樹脂を用いたソルダーフォトレジストインキ用組成物は、希アルカリ現像性が良好であり、塗膜の性能も、密着性、鉛筆硬度、はんだ耐熱性に優れ、耐水溶性フラックス性もおおむね良好である。これに対して、二塩基酸無水物として分子量100の無水コハク酸のみを使用した比較例1においては、密着性がやや劣り、はんだ耐熱性が劣っている。二塩基酸無水物として分子量152のテトラヒドロ無水フタル酸のみを使用した比較例2においては、現像性をはじめとして、ほぼすべての性能が劣っている。比較例3は、二塩基酸として無水コハク酸を反応した樹脂と、テトラヒドロ無水フタル酸を反応した樹脂を混合した紫外線硬化性樹脂を使用した例であり、樹脂中に無水コハク酸成分とテトラヒドロ無水フタル酸成分は、モル比48/52で存在するにもかかわらず、2種の二塩基酸無水物を同時に反応したものでないために、全般に性能が劣っている。比較例4は、使用した無水コハク酸とテトラヒドロ無水フタル酸のモル比が75/25であり、やはり全般に性能が劣っている。
またシェルフライフ促進試験において、本発明方法による紫外線硬化性樹脂A-1〜3はいずれも優れた貯蔵安定性を示したのに対して、比較例1、3及び4で得た樹脂B-1、3及び4は、いずれも短時間で増粘し、貯蔵安定性に劣っている。
【0015】
【発明の効果】
本発明方法による紫外線硬化樹脂は、貯蔵安定性に優れ、ソルダーフォトレジストインキ用組成物に使用するとき、希アルカリ現像性が良好で、その硬化物の塗膜は、密着性、耐熱性、耐湿性に優れる。
 
訂正の要旨 本件特許第2884046号発明の明細書を本件訂正明細書に添付された訂正明細書のとおりにすなわち、
a.特許請求の範囲の請求項1における
「ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法。」を、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、
「フェノール核の核数が平均5核〜7核であるノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、ここで得られた反応生成物と、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、直接同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法。」と訂正する。
2.明細書第2頁下から第2行〜第3頁第2行(本件特許公報第3欄第36行〜第41行)における
「(1)ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法、」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「(1)フェノール核の核数が平均5核〜7核であるノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応したのち、ここで得られた反応生成物と、分子量が120以下の二塩基酸無水物及び分子量が140以上の二塩基酸無水物をモル比が3/7〜7/3となる割合で、直接同時に反応することを特徴とする紫外線硬化性樹脂の製造方法、」と訂正する。
異議決定日 2002-01-10 
出願番号 特願平7-96002
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08G)
P 1 651・ 4- YA (C08G)
P 1 651・ 113- YA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 均  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 佐野 整博
中島 次一
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2884046号(P2884046)
権利者 日華化学株式会社
発明の名称 紫外線硬化性樹脂の製造方法  
代理人 内山 充  
代理人 内山 充  

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