ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G06F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G06F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G06F 審判 全部申し立て 特174条1項 G06F |
---|---|
管理番号 | 1056794 |
異議申立番号 | 異議2000-70789 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-02-23 |
確定日 | 2002-03-06 |
異議申立件数 | 4 |
事件の表示 | 特許第2939723号「インターネットの時限利用課金システム」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2939723号の請求項1ないし12に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2939723号の請求項1〜12に係る発明についての出願は、平成8年7月11日に特許出願され、平成11年6月18日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人久門保子、同申立人栗林三男、同申立人的場成夫、及び、同申立人渡辺忠夫より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年2月19日に訂正請求がなされるとともに特許異議意見書が提出され、平成13年2月20日、及び平成13年6月18日付けで特許権者より上申書が提出され、訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成13年9月10日に手続補正書が提出されるとともに特許異議意見書が提出されたものである。また、上記各異議申立人に特許権者が提出した訂正請求書、特許異議意見書及び上申書を送付して審尋したところ、指定期間内に何らの回答もされなかった。 2.訂正の適否について 〔2-1〕訂正請求に対する補正の適否について 特許権者は、訂正拒絶理由に対し手続補正書を提出して訂正請求書について特許請求の範囲に関する次の補正事項を含む補正をしようとするものである。(なお、特許権者は訂正請求書の補正書ではなく手続補正書として全文訂正明細書を提出しているものであるが、訂正請求書と全文訂正明細書を対比して補正事項を抽出した。) 補正事項 訂正請求書における請求項1に係る「拡張認証データベースと、テンプレートログイン名を生成する認証データベース」とある(訂正請求書における訂正事項aを参照。)のを、「拡張認証データベースを各レコード単位毎に有し、前記拡張認証データベースとアクセスするためのテンプレートログイン名を生成する認証データベース」と補正する。 上記補正事項は、補正前の認証データベースについて拡張認証データベースを各レコード単位毎に有することを限定し、併せて補正前の認証データベースにおけるテンプレートログイン名について拡張認証データベースにアクセスするためのものであることを限定するものであり、新たに訂正事項を加える、もしくは訂正事項を変更するものであることは明らかであるから、訂正事項の削除、請求書の要旨を変更しない範囲での軽微な瑕疵の補正に該当するものとは認められない。 したがって、当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであり、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合しない。 よって、当該訂正請求に対する補正は認められない。 〔2-2〕訂正の適否について 特許権者が提出した平成13年2月19日付けの訂正請求(これについては、平成13年2月20日付けで上申書が提出されている。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を訂正するものであるところ、特許請求の範囲を以下の(1)〜(3)のように訂正することを求めるものである。 (1) 請求項1において、「拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベース」を、「拡張認証データベースと、テンプレートログイン名を生成する認証データベース」と訂正する。(訂正請求書における訂正事項a) (2) 請求項2において、「各認証データの識別を可能とする多数のログイン名をそれぞれ生成する、連続した数字を表現する文字もしくは記号を用いた任意の桁数の組内番号をレコード単位毎に有する多数の認証データから構成されるようにした」を、「各認証データの識別を可能とする連続した数字を表現する文字もしくは記号を用いた任意の桁数の組内番号をレコード単位毎に有する多数の認証データから構成され、該組番号は該組内番号と組み合わさることで多数のテンプレートログイン名をそれぞれ生成する」と訂正する。(訂正請求書における訂正事項e) (3) 請求項3において、「多数の認証データの識別は、組番号と、組内番号に該当しない任意の桁数の文字もしくは記号とを組み合わせることによりテンプレートログイン名を生成し、さらに、ログイン名を検索する」を、「多数の認証データの識別は、クライアントが入力したログイン名の組番号部分と該組内番号とを組み合わせることによりテンプレートログイン名を生成し、さらに、該拡張認証データベースからログイン名を検索する」と訂正する。(訂正請求書における訂正事項f) 上記訂正事項(1)は、「認証データベース」に関し、拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する、すなわち認証データベースの中に拡張認証データベースを含むものとしていたのを、拡張認証データベースは認証データベースとは独立のものとするとともに、認証データベースはテンプレートログイン名を生成するものであることを付加するものである。これは、認証データベースについてその概念もしくは範囲を変更するものであることは明らかであるから、特許請求の範囲を実質上変更するものである。 また、請求項2、3は何れも請求項1を引用するものであるから、請求項1についての上記訂正事項(1)が特許請求の範囲を実質上変更するものである以上、請求項2、3についての上記訂正事項(2)、(3)も、特許請求の範囲を実質上変更するものである。 したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第3項の規定に適合しない。 よって、当該訂正は認められない。 3.特許異議申立てについて 〔3-1〕本件発明 本件特許第2939723号の請求項1〜12に係る発明は、特許査定時の明細書の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 クライアントにインターネットとの接続サービスを提供す るターミナルサーバと、該ターミナルサーバからの指示によりクライアントから入力された個別情報に基づいてインターネットとの接続可否を確認する認証サーバと、該認証サーバに連動し各クライアントの個別情報及び予め設定された利用可能な時間を示す接続度数から構成される認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベースと、該拡張認証データベースに連動し各クライアントの接続利用時間に合わせて接続料金を計算して接続度数を逐次更新する課金サーバとを備え、該拡張認証データベースで管理されるクライアントの接続度数が0になるまでの間に限りインターネットの接続サービスを提供してなることを特徴とするインターネットの時限利用課金システム。 【請求項2】 拡張認証データベースは、認証サーバにおける認証データベースのレコード単位毎に設けられた唯一の組番号と組み合わさることで各認証データの識別を可能とする多数のログイン名をそれぞれ生成する、連続した数字を表現する文字もしくは記号を用いた任意の桁数の組内番号をレコード単位毎に有する多数の認証データから構成されるようにしたものであることを特徴とする請求項1に記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項3】 多数の認証データの識別は、組番号と、組内番号に該当しない任意の桁数の文字もしくは記号とを組み合わせることによりテンプレートログイン名を生成し、さらに、ログイン名を検索することによりなされるものであることを特徴とする請求項2に記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項4】 認証データは、全て同一長さの固定長レコードであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項5】 認証サーバは、クライアントから入力された個別情報に基づく対応する認証データが拡張認証データベースから抽出された否かによってインターネットとの接続可否を確認し、その結果をターミナルサーバに知らせてなるものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項6】 課金サーバは、ターミナルサーバに対し一定時間毎に各クライアントの接続状況を問い合わせることにより接続時間を確認し接続料金を計算して接続度数を管理するとともに、利用継続の可否を該ターミナルサーバに知らせてなるものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項7】 課金サーバは、ターミナルサーバから一定時間毎に送られてくる知らせにより接続時間を確認し接続料金を計算して接続度数を管理するとともに、利用継続の可否を該ターミナルサーバに知らせてなるものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項8】 拡張認証データベースと連動しクライアントの自由なアクセスにより自己の接続度数の確認検索を可能とするプログラムを動作するhttpサーバを設けてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項9】 拡張認証データベースと連動しクライアントの自由なアクセスにより複数の情報を所有するクライアントのそれぞれの接続度数を一つに合算することを可能とするプログラムを動作するhttpサーバを設けてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項10】 拡張認証データベースと連動しインターネットにおける有料情報の料金の徴収を該クライアントの認証データにおける接続度数から行うことを可能とするプログラムを動作するhttpサーバを設けてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項11】 インターネットとの接続のためにクライアントから入力される情報は認証データ毎にカードに印刷されることにより管理され、該情報をキーボードから入力することにより接続可能としてなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のインターネットの時限利用課金システム。 【請求項12】 インターネットとの接続のためにクライアントから入力される情報は認証データ毎にカードに磁気信号をもって記録されることにより管理され、該カードをパソコンに接続したレコーダに読み込ませることにより接続可能としてなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のインターネットの時限利用課金システム。」 〔3-2〕申立ての理由の概要 特許異議申立人久門保子は、証拠として、甲第1号証(特開平5-260220号公報)、甲第2号証(特開平3-270459号公報)、甲第3号証(「ジャングル・インターネットカード」の1996年3月現在のカタログ、マップジャパン株式会社、及びジャングル・インターネットカード)、及び、甲第4号証(「インターネット カード使い接続」、日刊工業新聞、1996年(平成8年)6月27日、3面中央上)を提出し、本件特許の請求項1〜8、及び請求項10〜12に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜8、及び請求項10〜12に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである旨、主張する。 特許異議申立人栗林三男は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があり、請求項3〜12に係る発明の特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである旨、また、本件特許の請求項1〜12に係る発明の特許は、請求項の記載内容が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものである旨、主張する。 特許異議申立人的場成夫は、本件特許の明細書は、補正により願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものでない内容を含むものであるから、請求項1〜12に係る発明の特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1項第1号の規定により取り消すべきものである旨、主張する。 特許異議申立人渡辺忠夫は、証拠として、甲第1号証(「インターネット カード利用で100分体験」日刊工業新聞、1996年(平成8年)3月14日、14版、9面右上)、甲第2号証(「インターネット カード使い接続」日経産業新聞、1996年(平成8年)6月27日、3面中央上)、及び、甲第3号証(特開平6-244993号公報)を提出し、本件特許の請求項1〜12に係る発明は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜12に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである旨、主張する。 〔3-3〕当審の判断 (3-3-1) 第36条第4項及び同条第6項第2号について 特許査定時の明細書の記載不備に関し、当審で通知した取消しの理由において指摘した点は次のとおりのものである。 「(1)請求項1について (a) 請求項1に「認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベース」とあるが、「レコード単位」とはどのようなことを指しているのか明らかでなく、また、「各レコード単位毎」のレコードが、拡張認証データベースのレコード、又は認証データベースのレコードの何れを示しているのかも不明確である。 (b) 請求項1の記載の「該認証サーバに連動し・・・認証データベースと」における「認証サーバに連動し」とは、技術的にどのような意味なのか不明確である。 (2)請求項2について (a) 請求項2の記載における「認証サーバにおける」は、どの語にかかるのか不明確である。 (b) 請求項2の記載の「組番号と組み合わさることで各認証データの識別を可能とする多数のログイン名」において、「ログイン名」によりどのように認証データが識別できるのか不明確である。 (c) 請求項2には「・・・各認証データの識別を可能とする多数のログイン名をそれぞれ生成する、連続した数字を表現する文字もしくは記号を用いた任意の桁数の組内番号をレコード単位毎に有する多数の認証データ・・・」と記載されているが、「組内番号」と「多数のログイン名をそれぞれ生成する」こととの関係が不明確である。 (3) 請求項3について (a) 請求項3には「多数の認証データの識別は、・・・テンプレートログイン名を生成し、さらに、ログイン名を検索することによりなされる・・・」と記載されているが、ログイン名を検索することにより認証データをどのように識別するのか不明確である。 (b) 明細書の段落【0010】には「テンプレートログイン名によりログイン名を検索することで多数の認証データの識別が行える」と記載され、段落【0021】には「認証データの構成手段としては、認証データベースの一つのレコード単位毎に唯一の組番号と連続した数字を表現する文字もしくは記号を用いた任意の桁数の組内番号とを組み合わせることにより生成したものをログイン名、そして、該組番号と組内番号に該当しない任意の桁数の文字もしくは記号とを組み合わせることにより生成したものをテンプレートログイン名とし、該テンプレートログイン名により検索されるログイン名に対応した多数の認証データを作成することによりなされる。」と記載されているが、テンプレートログイン名によりログイン名がどのように検索されるのか不明りょうである。したがって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項3に係る発明を実施することができる程度に記載されていない。 (4) 請求項4〜12について 上記のように請求項1〜3における記載が不明確のため、請求項4〜12に係る発明も不明確である。 (5) むすび 以上のとおり、請求項3〜12に係る発明の特許は、特許法第36条第4項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1〜12に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定に違反してされたものである。」 上記取消しの理由に対し、特許権者は、平成13年2月19日付けの訂正請求書及び特許異議意見書(これらについては、平成13年2月20日及び平成13年6月18日付けで上申書が提出されている。)において、何ら具体的な理由を示すことなく、単に訂正により取消理由が解消した旨主張するに過ぎないものであるが、当該訂正は上記〔2-2〕において示した理由により認められないものであるから、依然として、請求項1〜3における記載が不明確であり、請求項4〜12に係る発明も不明確である。 よって、請求項3〜12に係る発明の特許は特許法第36条第4項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1〜12に係る発明の特許は特許法第36条第6項第2号に規定に違反してされたものである。 (3-3-2) 第17条の2第3項について 新規事項の追加に関し、当審で通知した取消しの理由において指摘した事項は次のとおりのものである。 「(1)請求項1についての補正 (a) 手続補正書(平成10年12月22日付)により、「・・・該認証サーバに連動し各クライアントの個別情報及び予め設定された利用可能な時間を示す接続度数から構成される認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベースと、・・・」と補正された。 (b) 当初明細書の段落【0020】には、「拡張認証データベースは、多数のクライアントに対応する多くのログイン名、パスワードといった個別情報や利用可能な接続時間を示す接続度数からなる認証データをログイン名をキーに1つのレコード単位として管理してなるものであり、認証サーバにおける認証データベースの1つのレコード単位を、多数の前記認証データから構成されるようにしてなる。」と記載されている。 (c) 当初明細書と補正後の明細書との比較 当初明細書には、「多数のクライアントに対応する多くのログイン名、パスワードといった個別情報や利用可能な接続時間を示す接続度数からなる認証データをログイン名をキーに1つのレコード単位として」と記載されており、この記載には、補正後の明細書の「各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する」との内容が記載されていない。また、図1においても当該内容については記載されていない。 また、当初明細書の段落【0020】の記載は、「・・・を管理してなるものであり」、「・・・多数の前記認証データから構成されるようにしてなる」という用言があり、文章の構成からこれら用言の主語は、「拡張認証データベースは、」と解釈できる。従って、上記段落【0020】では、拡張認証データベースは、認証サーバにおける認証データベースの1つのレコード単位を、多数の前記認証データから構成されるようにしてなるということが記載されている。この記載には、補正後の明細書の「拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベース」という認証データベースが拡張認証データベースを有する内容は記載されていない。また、図1においても、認証データベースが拡張認証データベースを各レコード単位に有する内容は記載されていない。図1において、認証データベースから出ている矢印(4)は、明細書の説明によると、「ログイン名が見つかった場合には、ログイン名を元に拡張認証データの中から該当する内容を読み込み」ということを示しており、認証データベースが拡張認証データベースを有する内容は記載されていない。また、図1においては、矢印の起点部分はテンプレートログイン名の組番号以外の部分として示されている。このことからも、この矢印は、認証データベースに拡張認証データベースが含まれていることを示していない。従って、当初明細書には、補正後の明細書の「拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する認証データベース」という内容は記載されていない。 (d) したがって、補正により当初明細書に記載されていない新規な事項が追加されていることは明らかである。 (2) 請求項3についての補正 (a) 手続補正書により、「多数の認証データの識別は、組番号と組内番号に該当しない任意の桁数の文字もしくは記号とを組み合わせることによりテンプレートログイン名を生成し、さらに、ログイン名を検索することによりなされる・・・」と補正された。 (b) 当初明細書の段落【0022】には、「2.・・・該ログイン名の組番号部分を元にテンプレートログイン名を生成し、・・・ログイン名を検索する」と記載されている。 (c) 当初明細書と補正後の明細書との比較 当初明細書の段落【0022】には、「2.・・・該ログイン名の組番号部分を元にテンプレートログイン名を生成し、・・・ログイン名を検索する」と記載されているが、この記載の中には、テンプレートログイン名については、ログイン名の組番号部分を元に生成される内容だけしか記載されておらず、「組番号と組内番号に該当しない任意の桁数の文字もしくは記号とを組み合わせることによりテンプレートログイン名を生成し、」という内容は記載されていない。 (d) したがって、補正により当初明細書に記載されていない新規な事項が追加されていることは明らかである。 (3)【0007】についての補正 (a) 手続補正書により、「・・・各クライアントに対応する唯一のログイン名、パスワードといった・・・識別容易に管理することのできる拡張認証データベースを各レコード単位毎に有する該認証サーバに連動する認証データベース・・・」と補正された。 (b) 当初明細書と補正後の明細書との比較 上記した請求項1の補正と同様である。 (c) したがって、補正により当初明細書に記載されていない新規な事項が追加されていることは明らかである。 (4)【0008】についての補正 (a) 手続補正書により、「・・・各クライアント毎に一つのレコード単位として・・・を各レコード単位毎に有する該認証サーバ・・・」と補正された。 (b) 当初明細書と補正後の明細書との比較 上記した請求項1の補正と同様である。 (c) したがって、補正により当初明細書に記載されていない新規な事項が追加されていることは明らかである。 (5)【0010】についての補正 (a) 手続補正書により、「・・・レコード単位毎の該組番号と該組内番号に該当しない任意の桁数の文字もしくは記号とを組み合わせることによりテンプレートログイン名を生成させ・・・」と補正された。 (b) 当初明細書と補正後の明細書との比較 上記した請求項3の補正と同様である。 (c) したがって、補正により当初明細書に記載されていない新規な事項が追加されていることは明らかである。 (6)【0020】についての補正 (a) 手続補正書により、「・・・各クライアント毎に・・・前記多数の認証データを管理する拡張認証データベースから・・・」と補正された。 (b) 当初明細書と補正後明細書との比較 上記した請求項1の補正と同様である。 (c) したがって、補正により当初明細書に記載されていない新規な事項が追加されていることは明らかである。 (7)【0021】についての補正 (a) 手続補正書により、「・・・ログイン名、そして、該組番号と組内番号に該当しない任意の桁数の文字もしくは記号とを組み合わせることにより生成したものを・・・」と補正された。 (b) 当初明細書と補正後明細書との比較 上記した請求項3の補正と同様である。 (c) したがって、補正により当初明細書に記載されていない新規な事項が追加されていることは明らかである。 (8)むすび 以上のとおり、補正により願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲に含まれていない内容を含んでおり、請求項1〜12に係る発明の特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものである。」 上記取消しの理由に対し、特許権者は、平成13年2月19日付けの訂正請求書及び特許異議意見書(これらについては、平成13年2月20日及び平成13年6月18日付けで上申書が提出されている。)を提出して種々主張するが、当該訂正は上記〔2-2〕において示した理由により認められないものであるから、依然として、補正により願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲に含まれていない内容を含むものである。 よって、請求項1〜12に係る発明の特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものである。 なお、特許権者は、平成13年2月19日付けの訂正請求書において、「補正により追加された当初明細書に記載されていない新規な事項を削除した」旨述べており(同書「(4) 訂正の原因」の 1)、2)、3)、5)、及び、6)を参照。)、また、同日付けの特許異議意見書においても、「平成10年10月27日発送の拒絶理由通知書に対する補正において生じた当初明細書に記載されていない新規な事項を削除した訂正後の内容に基づいて意見を述べる」として説明しており(同書「5.意見の内容」の(3)を参照。)、さらに、平成13年9月10日付けの特許異議意見書においても「平成10年10月27日発送の拒絶理由通知書に対する補正において生じた当初明細書に記載されていない新規な事項を削除し」とあり(同書「6.意見の内容」の【13】を参照。)、 補正により願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲に含まれていない内容を含むものであることを自認しているものである。 (3-3-3) 第29条第2項について (1)請求項1に係る発明 本件特許の請求項1に係る発明は、上記〔2-2〕に示したとおり訂正が認められないことにより、特許査定時の明細書の請求項1に記載された事項により特定される上記〔3-1〕の請求項1に示されたとおりのものである。(以下、「本件発明」という。なお、本件理由について、請求項1に係る前記記載不備に関しては、請求項1の記載に則して対比・判断した。) (2) 取消理由において引用した刊行物に記載された発明 これに対し、当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物は次のとおりである。 刊行物1:特開平5-260220号公報 (異議申立人久門保子が提出した甲第1号証) 刊行物2:特開平3-270459号公報 (異議申立人久門保子が提出した甲第2号証) 上記刊行物1は、交換機の通話料金利用限度額指定方式に関するものであり、次の事項が記載されている。 i) 「通話料金の利用限度額を設定する場合の動作を説明する。電話機1の利用者は、通話料金の利用限度額を設定するための所定の番号をダイヤルする。交換機3はその番号を受信すると、交換機5に電話機1を接続する。これにより、交換機5の情報取得部51は、電話機1の利用者に対して電話番号と、その電話番号に対応する特定番号の送出を指示する。その指示に対して利用者が電話番号および特定番号をダイヤルすると、情報取得部51はそれらを受け取り、受け取った両番号がメモリ6に対応づけて記憶されているか否かを調べ、記憶されている場合には、利用者に通話料金の利用限度額の送出を指示し、その額を利用者より受信する。そして、情報格納部52は、情報取得部51が取得した上記通話料金の利用限度額を、電話番号と対応づけてメモリ6に格納する。 このような利用限度額の設定の後、電話機1の利用者が例えば電話機2に発信すると、交換機3は電話機1の電話番号を交換機5に送出し、電話機1の通話料金の利用限度額の送信を要求する。交換機5はその要求を受け取ると、メモリ6より電話機1の電話番号と対応して記憶されている利用限度額を取り出し、交換機3に送出する。そして、交換機3は、利用限度額を交換機5より受信後、交換機4を経由して電話機2に着信する。 電話機2で応答があり、通話が開始されると、交換機3は公知の料金体系にもとづいて、通話に対する公知の課金を電話機1の利用者に対して行う。その際、減算部31は、交換機5より受信した利用限度額より課金額を減算する。通話が終了すると、交換機3は電話機1の電話番号と、減算部31による減算結果である通話料金の利用限度額の残額を、交換機5に送出する。交換機5では、情報更新部53がそれを受け取り、新たな通話料金の利用限度額としてメモリ6に電話機1の電話番号と対応させて格納する。このメモリ6に格納された額が、次回通話時の利用限度額となる。 一方、通話中に、減算部31による減算結果がゼロになった場合には、通話打ち切り部32は、通話料金切れを示す所定の音あるいはアナウンスを送出し、通話を打ち切る。」(段落【0010】〜【0012】の記載を参照。) ii) 「本発明の・・・交換機では、通話料金が予め指定された通話料金の利用限度額を越えた場合には、通話が打ち切られ、そのため、歯止めなく電話をかけることを防止できる。また、電話番号に対応した特定番号を知っている者だけが利用限度額を設定できるので、正当な利用者以外の者が際限なく電話を利用することを防止できる。さらに、利用者は通話の打ち切りによって通話料金切れを認識でき、その結果、通話料金の管理も容易となる。」(段落【0018】の記載を参照。) 上記記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、結局、上記刊行物1には次の発明が記載されているものと認める。 利用者に電話回線との接続サービスを提供する加入者交換機3と、該加入者交換機3からの指示により利用者から入力された電話番号に基づいて電話回線との接続可否を確認する通話料金用交換機5と、該通話料金用交換機5に連動し各利用者の電話番号及び予め設定された利用限度額とを対応付けて記憶するメモリ6と、上記加入者交換機3中には各利用者の通話時間に応じて通話料金用交換機5より受信した利用限度額より課金額を減算する減算部31と、該減算結果が0になった場合に通話料金切れを示す通話打ち切り部32とを備えた交換機の通話料金利用限度額指定方式。 また、上記刊行物2は、通話料金管理機能付通信装置に関するものであり、次の事項が記載されている。 i) 「本発明は、網から通知された通信料金をサブアドレスや端末属性などの単位に累積し、予め設定した通信制限料金を超えたときにメッセージを表示/必要に応じてそれ以降の送信を禁止し・・・きめ細かな通信料金管理を行うことを目的としている。」(第2頁右上欄第9〜15行目の記載を参照。) ii) 「第2図(イ)は、通信制限料金テーブル例を示す。サブアドレスは、通信装置単位に付与された網上のアドレス(宛先)であって、これをもとに送受信を行うようにしている。端末属性1ないしMは、1つの通信装置が複数の属性を持つ機能を組み込んだ場合のものであって、例えば複合通信装置が電話、FAX(ファクシミリ装置)、テレテックスなどを持つ場合である。また、装置全体の欄は、全部門(各サブアドレスの合計)の設定を行う(記憶する)フィールドと、各端末属性の合計を設定するフィールドがある。」(第3頁左上欄第17行目〜同頁右上欄第7行目の記載を参照。) iii) 「第2図(口)は、累積料金テーブル例を示す。これは、第2図(イ)通信制限料金テーブル例と同じようにサブアドレス(装置全体、部門)や端末属性などに対応づけて料金を設定するフィールドを設け、これに使用した料金の累積(累積料金)を記憶するものである。従って、この累積料金テーブル5-2を参照することにより現在の累積料金を知ることができる。」(第3頁右上欄第14行目〜左下欄第1行目の記載を参照。) 上記記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、結局、上記刊行物2には、次の発明が記載されているものと認める。 各端末属性情報び予め設定された通信制限料金、累積料金を示すデータを各端末属性毎にフィールドとして管理するテーブルを各サブアドレス毎に備え、各サブアドレス、端末属性の累積料金が通信制限料金を超えたときに送信禁止を行う通信料金管理機能付通信装置。 (3)対 比 本件発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比する。上記刊行物1に記載された発明は電話機の回線における通信接続技術に関するものであり、インターネットの接続技術とは電話回線の接続技術を用いる点で共通するので、以下、刊行物1に記載された電話機の回線における接続技術に関する発明をインターネットの接続技術として本件発明と対比する。刊行物1に記載された発明における「交換機3」は、利用者(本件発明における「クライアント」に相当。)に電話回線との接続サービスを提供するものであるから本件発明における「ターミナルサーバ」に相当し、刊行物1に記載された発明における「交換機5」は、交換機3(本件発明における「ターミナルサーバ」に相当。)からの指示により利用者から入力された電話番号(本件発明における「クライアントの個別情報」に相当。)に基づいて電話回線との接続可否を確認するものであるから本件発明における「認証サ-バ」に相当し、刊行物1に記載された発明における「メモリ6」は、交換機5(本件発明における「認証サーバ」に相当。)と連動し各利用者の電話番号(本件発明における「クライアントの個別情報」に相当。)及び予め設定された利用限度額(本件発明における「利用可能時間な時間を示す接続度数」に対応。)を記憶する(有する)点では本件発明における「認証データベース」と共通する。さらに、刊行物1に記載された発明における「減算部31」は、各利用者の通話時間(本件発明における「接続利用時間」に相当。)に応じて交換機5(本件発明における「認証サーバ」に相当。)より受信した利用限度額(本件発明における「利用可能時間」に対応。)より課金額を減算する(接続料金を計算する)ものである点で、本件発明における「課金サーバ」と共通する。刊行物1に記載された発明における「通話打ち切り部32」は「減算部31」による減算結果がゼロになった場合に通話料金切れを示すものであるから、本件発明における「クライアントの接続度数が0になるまでの間に限りインターネットの接続サービスを提供してなる」ことに相当する。そうすると、本件発明と上記刊行物1に記載された発明とは、次の点で一致する。 クライアントにインターネットとの接続サービスを提供するターミナルサーバと、該ターミナルサーバからの指示によりクライアントから入力された個別情報に基づいてインターネットとの接続可否を確認する認証サーバと、該認証サーバに連動し各クライアントの個別情報及び予め設定された利用可能な時間を示す接続度数から構成される認証データを有する認証データベースと、該認証データベースに連動し各クライアントの接続利用時間に合わせて接続料金を計算して接続度数を逐次更新する課金サーバとを備え、該認証データベースで管理されるクライアントの接続度数が0になるまでの間に限りインターネットの接続サービスを提供してなることを特徴とするインターネットの時限利用課金システム。 そして、次の点で相違する。 「認証データベース」に関し、本件発明においては、認証サーバに連動し各クライアントの個別情報及び予め設定された利用可能な時間を示す接続度数から構成される認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有するものであるのに対し、上記刊行物1に記載された発明をインターネットの接続に適用したものにおける「メモリ6」(本件発明における「認証データベース」に対応。)は、交換機5(本件発明における「認証サーバ」に相当。)と連動し各利用者の電話番号(本件発明における「クライアントの個別情報」に相当。)及び予め設定された利用限度額(本件発明における「利用可能時間」に対応。)から構成されるデータ(認証データ)を記憶する(有する)ものであるが、認証データを各クライアント毎に一つのレコード単位として管理する拡張認証データベースを各レコード単位毎に有するものではない点。 (4)判断 そこで、上記相違点について検討する。 上記刊行物2には、通信装置単位で付与されたサブアドレスにおける各端末属性毎の通信制限料金、累積料金のフィールドを示すテーブルが記載されている。刊行物2に記載された発明における「端末属性」は、該端末(電話、FAX等)によるサービスを受ける場合を表すものである点で本件発明における「クライアント」と共通する。刊行物2に記載された発明における「通信制限料金、累積料金を示すデータ」より利用限度額が通信制限料金から累積料金を減算すれば得られることは明らかである。刊行物2に記載された発明における各サブアドレスの「各端末属性のフィールド」は、一種の「レコード単位」と考えられる。また、刊行物2に記載された発明におけるサブアドレス毎の端末属性情報と各端末属性毎の通信制限料金、累積料金のフィールドは一つの「レコード単位」を形成しているものである。 そうすると、刊行物2に記載された発明は、各端末属性情報(本件発明における「各クライアントの個別情報」に対応。)及び予め設定された通信制限料金、累積料金を示すデータ(これより利用限度額が算出されることは明らか。)を各端末属性(本件発明における「各クライアント」に対応。)毎に端末属性のフィールド(一つのレコード単位)として管理するテーブル(データベース)を各サブアドレス(各レコード単位)毎に有するものであるから、上記刊行物1に記載された発明をインターネットの接続に適用したものにおいて、メモリ6(本件発明における「認証デ-タベース」に対応。)のデータを上記刊行物2に記載された発明のように各クライアント毎に一つのレコード単位として管理するデータベース(なお、このデータベースを「拡張認証データベース」と称するかどうかは単に呼び方の問題に過ぎない。)を各レコード単位毎に有するものとすることは当業者が容易に想到できたものである。 (5)むすび 以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、上記刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 〔3-4〕むすび 以上のとおりであるから、請求項1〜12に係る発明についての特許は、特許法第113条第1号、同法第113条第2号及び同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-01-16 |
出願番号 | 特願平8-201166 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
ZB
(G06F)
P 1 651・ 55- ZB (G06F) P 1 651・ 121- ZB (G06F) P 1 651・ 536- ZB (G06F) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 菅原 浩二 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
今井 義男 吉村 宅衛 |
登録日 | 1999-06-18 |
登録番号 | 特許第2939723号(P2939723) |
権利者 | 株式会社インターナショナルサイエンティフィック |
発明の名称 | インターネットの時限利用課金システム |
代理人 | 萩原 誠 |