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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1057502
審判番号 審判1999-12755  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-01-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-08-11 
確定日 2002-03-12 
事件の表示 平成 3年特許願第164733号「磁気ディスク装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 1月22日出願公開、特開平 5- 12835]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年7月4日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成11年9月10日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認められる。
「磁気ディスクのリードライトを制御するディスクコントローラ回路と、前記ディスクコントローラ回路と積層配置され、その内部に記録情報を磁気的にリードライト可能な磁気ディスクが内蔵されたディスクエンクロージャと、を含み、
前記ディスクエンクロージャは、
少なくとも、前記磁気ディスクと、この磁気ディスクを高速回転するスピンドルモータと、前記磁気ディスクの径方向にリードライトヘッドを移動させて所望のトラック位置に静止保持させるリードライトヘッドアクチュエータと、リードライトアンプ回路基板と、さらにこれらの各構成要素を気密状態で内蔵するハウジングとを含み、
前記磁気ディスクはその両面に磁気記録面を有する外形が約65mmの大きさからなり、
前記スピンドルモータは薄型軸受けを有し、
前記リードライトヘッドアクチュエータは、コイルを備えた低慣性小型ボイスコイルモータと、ハウジングに固定されたボイスコイルモータ回転軸の外周に回転可能に2個重ねて取り付けられたベアリングの外周部に前記ボイスコイルモータと前記リードライトヘッドとを支持可能に配置されたアーム体であって、前記ベアリングを2個重ねた高さとほぼ同じ高さを呈し、その高さ方向の中間位置が、前記ボイスコイルモータのコイルの厚さ方向の中間位置と前記リードライトヘッドの高さ方向の中間位置と前記2個のベアリングの高さ方向における中間位置とをほぼ一致させたアーム体を含み、
前記リードライトアンプ回路基板は、支持薄板に固定されたフレキシブルプリントサーキットで構成され、
前記フレキシブルプリントサーキットは、電子部品を載置する平面部と、当該平面部と前記アーム体とを結ぶ細長いリード部とからなり、前記支持薄板は、前記平面部を固定するための平坦部と前記平面部とリード部の切り替わり部分を固定するための平坦部から垂直に立ち上がった立ち上げ壁を含み、
前記ハウジングは外面がほぼ平坦なハウジングベースと、同様に外面がほぼ平坦なハウジングカバーと、両ベース、カバー間を気密にシールするパッキンとを含み、その外形は長さ方向約96mm、幅方向約70mmそして厚み方向が約8.5mmに設定され、
前記ディスクコントローラ回路は前記ディスクエンクロージャのハウジングに固定配置されたディスクコントローラ回路基板を有し、
ディスクエンクロージャとディスクコントローラ回路の合計厚みが約12.7mmに設定されていることを特徴とする磁気ディスク装置。」
なお、請求項1には、「前記支持薄片」と記載されているが、「支持薄片」という記載は外になく、これは「前記支持薄板」の誤記と認められるので上記のように認定した。

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成3年2月21日に公開されたPCT公開パンフレット91/02349(以下「引用刊行物1」という。)には、ディスク駆動装置の発明に関して、概略次の事項が記載されているものと認められる。
(1-1)「ディスクの外形が約65mmの大きさである。」(請求項9等)
(1-2)「ベースと、回転可能な記憶手段と、リード・ライト手段と、インターフェースと、外気から密閉するカバーとを有する。」(請求項6等)
(1-3)「ディスク駆動機構は4インチx2.75インチx0.7インチである。」(請求項6等)
(1-4)「ベース20とカバー24との間のガスケットが密閉環境をもたらしている。」(第10頁第24〜27行目)
(1-5)「ヘッド40のピン42はPCB(プリント回路基板)36のコネクタ43に直接差し込まれる。第2,3図に示すように、制御された環境内にはディスク44,ディスク44の第1及び第2面に情報を書込み、そして読み出すトランスデューサ(またはヘッド)46、トランスデューサ46をディスク44に対して位置決めするアクチュエータ48、そしてディスク44を支持し回転させるスピンモータ50を有する。」(第15頁第10〜17行目)
(1-6)「アクチュエータアーム56を回動させるのに必要な力は、コイル58と磁石100からなるボイスコイルモータによって与えられる。」(第16頁第25〜28行目)
(1-7)「図14において、マイクロコントローラ224と最小数の制御支持回路がディスク駆動装置のすべての機能を指示する。」(第19頁第10から2行目)
(1-8)「スライダーと磁気要素との組合せ機構がヘッドとして知られている。」(第27頁第15〜16行目)
(1-9)「リバースフレックス回路120は、ヘッダーピン42からの電気信号をヘッド46とアクチュエータの部品48へ伝達する。このリバースフレックス回路120は3つの部分からなる。1つ目の部分はアクチュエータコイル58に電流を送る部分であり、2つ目は第3の部分であるデータ搬送部分を第1の部分と分離するための接地面である。」(第29頁第19〜26行目)
そして、引用刊行物1に記載された「ディスク駆動装置」は、そのヘッドがスライダーと磁気要素との組合せからなることから、「磁気ディスク装置」であることは明らかである。また、該磁気ディスクのリードライトを制御する回路を有することは自明の事項である。したがって、上記記載および対応する図面を参照すれば、引用刊行物1には、
「磁気ディスクのリードライトを制御するディスクコントローラ回路と、前記ディスクコントローラ回路と積層配置され、その内部に記録情報を磁気的にリードライト可能な磁気ディスクが内蔵されたディスク駆動機構と、を含み、
前記ディスク駆動機構は、
少なくとも、前記磁気ディスクと、この磁気ディスクを回転するスピンモータと、前記磁気ディスクの径方向にリードライトヘッドを移動させて所望のトラック位置に静止保持させるアクチュエータと、リバースフレックス回路と、さらにこれらの各構成要素を気密状態で内蔵するベースとカバーとを含み、
前記磁気ディスクはその両面に磁気記録面を有する外形が約65mmの大きさからなり、
前記リードライトヘッドアクチュエータは、コイルを備えたボイスコイルモータと、ベースに固定されたボイスコイルモータ回転軸の外周に回転可能に2個取り付けられたベアリングの外周部に前記ボイスコイルモータと前記リードライトヘッドとを支持可能に配置されたアーム体とを含み、 前記リバースフレックス回路は、電子部品を載置する平面部と、当該平面部と前記アーム体とを結ぶ細長いリード部とからなり、
ベースとカバーからなる密閉構造は、ベースは外面がほぼ平坦で、同様に外面がほぼ平坦なカバーと、両ベース、カバー間を気密にシールするガスケットとを含み、その外形は長さ方向4インチ、幅方向2.75インチそして厚み方向が0.7インチに設定され、
前記ディスクコントローラ回路は前記ベースに固定配置されたPCBを有していることを特徴とする磁気ディスク装置。」の発明が記載されている。

対比
本願発明と引用刊行物1に記載された発明とを対比すると、引用刊行物1に記載された「スピンモータ」、「アクチュエータ」「アクチュエータアーム」「ベースとカバー」「ガスケット」および「PCB」は、本願発明の「スピンドルモータ」、「リードライトヘッドアクチュエータ」「アーム体」「ハウジング」「パッキン」および「ディスクコントローラ回路基板」に相当する。また、引用刊行物1に記載された発明では、ベースとカバーとから形成される密閉空間に上記磁気ディスクを内蔵しているのでこれら、ベースとカバー及び磁気ディスクからなる構成が本願発明の「ディスクエンクロージャ」に相当するものと認められる。さらに、引用刊行物1に記載された「リバースフレックス回路120」は、ベースに取り付けられた部分から立ち上がり、湾曲してアーム体に取り付けられているので本願発明の「フレキシブルプリントサーキット」に相当する。
したがって両者は
「磁気ディスクのリードライトを制御するディスクコントローラ回路と、前記ディスクコントローラ回路と積層配置され、その内部に記録情報を磁気的にリードライト可能な磁気ディスクが内蔵されたディスクエンクロージャと、を含み、
前記ディスクエンクロージャは、
少なくとも、前記磁気ディスクと、この磁気ディスクを回転するスピンドルモータと、前記磁気ディスクの径方向にリードライトヘッドを移動させて所望のトラック位置に静止保持させるリードライトヘッドアクチュエータと、リードライトアンプ回路基板と、さらにこれらの各構成要素を気密状態で内蔵するハウジングとを含み、
前記磁気ディスクはその両面に磁気記録面を有する外形が約65mmの大きさからなり、
前記スピンドルモータは軸受けを有し、
前記リードライトヘッドアクチュエータは、コイルを備えたボイスコイルモータと、ハウジングに固定されたボイスコイルモータ回転軸の外周に回転可能に取り付けられたベアリングの外周部に前記ボイスコイルモータと前記リードライトヘッドとを支持可能に配置されたアーム体を含み、
前記リードライトアンプ回路基板は、フレキシブルプリントサーキットで構成され、
前記フレキシブルプリントサーキットは、電子部品を載置する平面部と、当該平面部と前記アーム体とを結ぶ細長いリード部とからなり、
前記ハウジングは外面がほぼ平坦なハウジングベースと、同様に外面がほぼ平坦なハウジングカバーと、両ベース、カバー間を気密にシールするパッキンとを含み、その外形は幅方向約70mmに設定され、
前記ディスクコントローラ回路は前記ディスクエンクロージャのハウジングに固定配置されたディスクコントローラ回路基板を有していることを特徴とする磁気ディスク装置。」である点で一致し、
(ア)スピンドルモータが、本願発明では「薄型軸受け」を有する点、及びボイスコイルモータが、本願発明では「低慣性小型」のものであり、回転軸の外周にベアリングが2個重ねて取り付けられている点、および
(イ)リードライトヘッドアクチュエータが、本願発明では「前記ベアリングを2個重ねた高さとほぼ同じ高さを呈し、その高さ方向の中間位置が、前記ボイスコイルモータのコイルの厚さ方向の中間位置と前記リードライトヘッドの高さ方向の中間位置と前記2個のベアリングの高さ方向における中間位置とをほぼ一致させた」構成であるのに対し、引用刊行物1に記載された発明では、この構成が不明である点、および
(ウ)本願発明では、リードライトアンプ回路基板が、「支持薄板に固定され」ており、この支持薄板が「平面部を固定するための平坦部と前記平面部とリード部の切り替わり部分を固定するための平坦部から垂直に立ち上がった立ち上げ壁を含」む構成としているのに対し引用刊行物1に記載された発明ではこの点が不明である点、および
(エ)ハウジングの外形が、本願発明では「長さ方向約96mm、幅方向約70mmそして厚み方向が約8.5mmに設定され」「ディスクエンクロージャとディスクコントローラ回路の合計厚みが約12.7mmに設定されている」のに対し引用刊行物1に記載された発明では幅方向の数値が一致するのみである点で相違している。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
相違点(ア)
「薄型」および「低慣性小型」という記載は、相対的な表現であって、モータの構成を限定するものではなく、かつ、装置の薄型化あるいは小型化のために薄型モータ、或いは小型モータを用いることは慣用技術であり、また、磁気ディスク装置等のように短時間に位置制御する用途に用いるモータとしては低慣性である方がよいことは、当該分野の技術常識であるので、これらの点は構成の実質的な相違とは認められない。また、「ベアリングが2個重ねて取り付けられ」た点は、回転軸を軸方向に短くする場合にベアリングが大きいままであれば当然得られる結果に過ぎず、この記載で軸方向の高さを限定することにはならないばかりでなく、ベアリング自体を何ら特定することなく単にベアリングを重ねる構成とするだけのことは単に軸方向を短くしたい長さにしたに過ぎないものであって、必要に応じて適宜設計し得る事項といわざるを得ない。
相違点(イ)
「ベアリングを2個重ねた高さ」については、前記したように、高さ自体を限定する意味はなく、かつ、2つの軸受けの両端とほぼ同じ高さのアーム体を有する磁気ディスク装置は周知{例.特開平2-94183号公報(第3図に記載された上下アーム11の形成する高さは2つの軸受け14の両端のとほぼ同じ高さである。),実願平1-25139号(実開平2-117770号)のマイクロフィルム(図9に記載された軸受け部8とスイングアーム9の高さの関係はほぼ同じである)を参照}の技術である。したがって、相違点イは必要応じて当業者が適宜設計し得る事項と認められる。
相違点(ウ)
フレキシブルプリント基板を補強するために支持薄板に固定する構成は周知{例.特開昭63-314884号公報(この文献には、フレキシブルプリント基板4の屈曲部を補強するための補強板5等を有する発明が記載されている。),実願平1-25137号(実開平2-117767号)のマイクロフィルム(この文献には、電子部品を載置する平面部と、この平面部とアーム体とを結ぶ細長いリード部とからなるフレキシブルプリントサーキット101の平面部を固定する平坦部89と、前記平面部とリード部の切り替わり部分を固定するためのケーブルガイド96を取り付ける、平坦部から垂直に立ち上がった立ち上げ壁97を有する発明が記載されている。)参照}の事項であり、フレキシブルプリント基板が平面部と、該平面部から垂直に立ち上がった部分とからなる構成が引用刊行物1に記載されているので、この引用刊行物1に記載されたフレキシブルプリント基板に上記周知の構成を適用して本願発明のような支持構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。
相違点(エ)
ハウジングの外形の寸法は、内部に収納する部品の寸法等に応じて最小値が決まるものであり、内部に収納する部品の大きさはまた、その構成要素に応じて決まるものである。そしてそれらの部品自体については、引用刊行物1に記載されたものと格別には相違しないことは上記のとおりであり、また従来の装置との互換性を得ようとすること自体は常套手段であるから、上記寸法の相違については必要に応じて任意に設計し得る事項に過ぎない。
なお請求人は、審判請求の理由において、本願発明では、アーム体の高さがボイスコイルモータの回転軸に取り付けられたベアリングの高さとほぼ同じになり、ハウジング内部に収納されるリードライトヘッドアクチュエータの高さ寸法を回転駆動に必要とされるベアリングの性能に基づくベアリング高さに応じて必要最小限度に押さえることが可能になり、磁気ディスク装置の厚みの低減に寄与することができる。さらに、アーム体の高さ方向の中間位置を、ボイスコイルモータのコイルの厚さ方向の中間位置と前記2個のベアリングの高さ方向における中間位置と前記リードライトヘッドの高さ方向の中間位置とほぼ一致させることによって、ボイスコイルモータの駆動トルクを効率よくリードライトヘッド側に伝達することが可能になる。等の効果を主張しているが、ベアリングと同じ高さという点については上記のとおり、回転軸の長さと同等の構成と認められるところ、このような構成及び厚さ方向の中間位置に配置する構成は上記周知例に記載されているように周知のもので、この点は格別なものとはいえず、得られる効果もその構成に本来的に備わっている範囲内のものと認められることから、請求人の主張は採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明および上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-10-19 
結審通知日 2000-10-31 
審決日 2000-11-13 
出願番号 特願平3-164733
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 犬飼 宏
田良島 潔
発明の名称 磁気ディスク装置  
代理人 石田 純  
代理人 金山 敏彦  
代理人 吉田 研二  

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