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審決分類 審判 一部申し立て 特174条1項  E04H
管理番号 1058184
異議申立番号 異議2001-70960  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-07-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-26 
確定日 2002-04-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3092466号「床暖房付き浴室ユニット」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3092466号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 〔1〕手続の経緯
本件特許第3092466号発明についての出願は、平成7年1月12日に特許出願され、平成12年7月28日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その請求項1に係る特許について、桜井小夜子より特許異議の申立てがなされ、平成13年7月4日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内の平成13年9月11日に訂正請求がなされ、平成13年11月5日付けで訂正拒絶理由が通知された。

〔2〕訂正請求について
1 訂正請求の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許第3092466号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
訂正事項a
明細書の特許請求の範囲の請求項1の「前記前記発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部中央部または壁立ち面部に設けた」を、「前記前記発熱体の端子取り出し部を発熱体裏面部中央部または洗い場の壁立ち面部に設けた」と訂正する。
訂正事項b
明細書の段落【0005】の記載を、「【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、第1の手段として樹脂の平板をプレス成形するシートモールディングコンパウンド及び樹脂のブロック塊目をプレス成形するバルクモールディングコンパウンド製法により発熱体をプレス一体成形して埋設し、前記発熱体埋設部に接続部を有しない構成とするとともに前記前記発熱体の端子取り出し部を発熱体裏面部中央部または洗い場の壁立ち面部に設けた構成とする。」と訂正する。
訂正事項c
明細書の段落【0013】の記載を、「【作用】本発明は第1の手段の構成によりSMCおよびBMC成形方法において発熱体をその中に一体成形し当該発熱体の裏面部中央部に端子取り出し部を設けることにより容易に発熱体の端子を取り出すことができるとともに成形時の樹脂の流れをスムーズにできる。」と訂正する。
訂正事項d
明細書の段落【0035】の記載を、「SMC及びBMCの一体成形ユニットにおいても浴室(特に洗い場)の暖房を行なうことができるため冬季の「洗い場が冷たい」という不満を解消できる。またヒータの端子取り出し後の処理を容易に行なうことができる。すなわち、従来の樹脂材料を金型に置いて一体成形するSMCおよびBMC成形方法において発熱体をその中に一体成形したものは、発熱体の端子を取り出すことが難しく量産化は困難であった。またプレス時の樹脂の流れにより発熱体には高い引っ張り力が加わるため成形体内に発熱体とリード線等の接続部があると成形時に接続部が断線したり樹脂の流れが悪く表面にひけが発生するのであった。本発明はこのような課題を解決したものでありSMCおよびBMC成形方法において発熱体をその中に一体成形し当該発熱体の裏面部中央部に端子取り出し部を設けることにより容易に発熱体の端子を取り出すことができる。」と訂正する。

2 訂正の適否
まず、上記訂正事項aが、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書各号に掲げる事項のいずれかを目的としているか否かについて検討する。
この訂正は、発熱体の端子取り出し部を設ける位置を、「洗い場裏面部中央部」から「発熱体裏面部中央部」に変更するものであり、訂正前の請求項1に直列的に構成要件を付加するものでも、同請求項1に記載された事項のいずれかを上位概念から下位概念に変更するものでもなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められず、また、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものとも認められない。
したがって、他の訂正事項について検討するまでもなく、本件訂正請求は、平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書各号に掲げる事項のいずれかを目的とするものではないので、認めることができない。

〔3〕特許異議の申立てについて
1 出願の審査における補正
本件特許第3092466号発明についての出願の審査において、平成12年5月29日付けの手続補正書により明細書が補正され、その補正において、特許請求の範囲の請求項1、詳細な説明の段落【0005】、【0013】、【0035】の記載が、次のように補正された。(以下、平成12年5月29日付けの手続補正書による補正を、「本件補正」という。)
a「【請求項1】 樹脂の平板をプレス成形するシートモールディングコンパウンド及び樹脂のブロック塊目をプレス成形するバルクモールディングコンパウンド製法により発熱体をプレス一体成形して埋設し、前記発熱体埋設部に接続部を有しない構成とするとともに前記前記発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部中央部または壁立ち面部に設けた床暖房付き浴室ユニット。」
b「 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明は上記目的を達成するために、第1の手段として樹脂の平板をプレス成形するシートモールディングコンパウンド及び樹脂のブロック塊目をプレス成形するバルクモールディングコンパウンド製法により発熱体をプレス一体成形して埋設し、前記発熱体埋設部に接続部を有しない構成とするとともに前記前記発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部中央部または壁立ち面部に設けた構成とする。」
c「【0013】 【作用】 本発明は第1の手段の構成によりSMCおよびBMC成形方法において発熱体をその中に一体成形し樹脂の流れが最も少ない位置に発熱体の取り出し部を設けることにより容易に発熱体の端子を取り出すことができるとともに成形時の樹脂の流れをスムーズにできる。」
d「【0035】 SMC及びBMCの一体成形ユニットにおいても浴室(特に洗い場)の暖房を行なうことができるため冬季の「洗い場が冷たい」という不満を解消できる。またヒータの端子取り出し後の処理を容易に行なうことができる。すなわち、従来の樹脂材料を金型に置いて一体成形するSMCおよびBMC成形方法において発熱体をその中に一体成形したものは、発熱体の端子を取り出すことが難しく量産化は困難であった。その理由はSMCおよびBMCというプレス成形時は樹脂の流れにより発熱体の端子がセッティングした位置から大幅にずれてしまい成形後に端子が探し出せない場合が多く発生するためであった。またプレス時の樹脂の流れにより発熱体には高い引っ張り力が加わるため成形体内に発熱体とリード線等の接続部があると成形時に接続部が断線したり樹脂の流れが悪く表面にひけが発生するのであった。本発明はこのような課題を解決したものでありSMCおよびBMC成形方法において発熱体をその中に一体成形し樹脂の流れが最も少ない位置に発熱体の取り出し部を設けることにより容易に発熱体の端子を取り出すことができる。」

2 補正の適否の検討
そこで、本件補正が、特許法17条の2、2項において準用する同法17条2項に規定する要件を満たしているのか否かを、以下、検討する。
(1)まず、上記aの特許請求の範囲の請求項1に記載された「発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部中央部に設けた」との事項が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のもの、すなわち、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項、或いは同事項から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項であるのか否かについて検討する。
願書に最初に添付した明細書又は図面には、「発熱体の端子取り出し部」に関して、【請求項9】に「発熱体の端子取り出し部を裏面部又は壁立ち面部に設けた」との記載、段落【0011】に「ヒータの端子取り出し部を洗い場付き浴槽の洗い場の裏面部又は壁立ち面部に設けた」との記載、、段落【0027】に「図3は図2の布9にヒータ2を縫いつけたヒータユニット13の斜視図である。」との記載、段落【0029】に「ヒータ2はヒータの端子取り出し部15にヒータ2をそのまま取り出しており」との記載、段落【0030】に「図4は洗い場付浴槽の一体ユニットの洗い場部分の裏面部への断熱及びヒータの端子取り出し位置図である。」との記載、段落【0031】に「ヒータの端子取り出し部15aから取り出したヒータを温度過昇を検出するサーモスタット16、リード線17と接続した」との記載、段落【0032】に「ヒータの端子取り出し部は一体成形ユニット裏面部15aに設けている。」との記載、図面の簡単な説明に「【図3】 同ユニットのヒータユニットの斜視図」、「【図4】 同ユニットの洗い場部分の裏面部へ施した断熱及びヒータの端子取り出し位置を示す部分断面図 」との記載がある。また、図3から、ヒータユニットの概ね中央部にヒータの端子取り出し部15が設けられていることが読みとれる。
以上のように、願書に最初に添付した明細書又は図面には、発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部の「中央部」に設けることは記載されていない。また、図3から、ヒータユニットの概ね中央部にヒータの端子取り出し部15が設けられていることが読みとれるものの、該ヒータユニットが埋設される浴室ユニットの洗い場と、ヒータユニットとが同一の形状であるなら兎も角、それらの形状については、明細書にも、他の図面にも明確に記載されていないし、例えば、図3に示されているような正方形に近いヒータユニットを図6に示されているような長方形の洗い場に埋設した場合、洗い場の中央よりも前寄り、あるいは後寄りにヒータユニットが埋設されることも考えられることから、発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部の「中央部」に設けることが、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項から、当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項ともいえない。
同様に、上記bの段落【0005】の「発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部中央部に設けた」との事項も、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項、或いは同事項から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項とはいえない。
(2)次に、上記cの段落【0013】及び上記dの段落【0035】に記載された「樹脂の流れが最も少ない位置に発熱体の取り出し部を設ける」との事項について、同様に検討する。
上記c及びdの補正は、上記aの特許請求の範囲の請求項1の補正にともなって、作用又は発明の効果の項を補正したものであり、同請求項1の「発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部中央部に設けた」との技術的事項に対応した作用又は効果を記載したものと解される。
願書に最初に添付した明細書又は図面には、「発熱体の端子取り出し部」に関して、上記(2)に示した記載があるのみで、「樹脂の流れが最も少ない位置に発熱体の取り出し部を設ける」ことは記載されていない。また、「発熱体の端子取り出し部を洗い場裏面部中央部に設けた」ことも、上記(1)で述べたように記載されていないから、「樹脂の流れが最も少ない位置に発熱体の取り出し部を設ける」との事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項ともいえない。
(3)次に、上記dの段落【0035】に記載された「SMCおよびBMCというプレス成形時は樹脂の流れにより発熱体の端子がセッティングした位置から大幅にずれてしまい成形後に端子が探し出せない」との事項について、同様に検討する。
上記dの補正は、上記aの特許請求の範囲の請求項1の補正にともなって、発明の効果の項を補正したものである。上記事項は、従来の成形方法における問題点を述べたものであるが、この補正において同時に、効果を、この問題点を解決する「樹脂の流れが最も少ない位置に発熱体の取り出し部を設けることにより容易に発熱体の端子を取り出すことができる。」との効果に補正(上記d参照。)している。このように、従来の成形方法における問題点を述べた上記事項は、請求項1に記載された発明の効果に密接に関連するものであり、しかも、この効果は、上記(3)で述べたように、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項、或いは同事項から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項とはいえないものであるから、上記事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項、或いは同事項から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項とはいえない。
(4)したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではなく、特許法17条の2、2項で準用する特許法17条2項に規定する要件を満たしていない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2、2項で準用する特許法17条2項に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。
よって、本件特許第3092466号の請求項1に係る特許は、特法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)4条2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-03-04 
出願番号 特願平7-3265
審決分類 P 1 652・ 55- ZB (E04H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 土屋 真理子  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 公子
登録日 2000-07-28 
登録番号 特許第3092466号(P3092466)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 床暖房付き浴室ユニット  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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