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審決分類 |
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない A47H 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 無効としない A47H |
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管理番号 | 1059374 |
審判番号 | 無効2001-35517 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-06-04 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-11-28 |
確定日 | 2002-06-03 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2588160号発明「カーテン吊り具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
〔1〕手続の経緯 本件特許第2588160号発明についての出願は、平成6年11月16日に特許出願され、平成8年12月5日にその発明について特許権の設定登録がなされ、平成13年11月28日にその請求項1〜3に係る発明の特許について本件無効審判が請求され、平成14年2月22日に答弁書が提出された。 〔2〕当事者の主張 1 請求人の主張 請求人は、「特許第2588160号の明細書の請求項1〜3の各請求項に記載された特許発明についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、甲第1号証を提出して、無効理由として次のように主張する。 (1)無効理由1 ア 明細書の特許請求の範囲の請求項1における「この凹所と前記貫通ピンには、貫通ピンが凹所へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部が設けられ」との記載は、「係合」に関して、相互に弾性的に撓んで係合する構成に限定している。 イ しかし、明細書の発明の詳細な説明には、貫通ピンが弾性的に撓む構成は説明されている(甲第1号証5欄7〜11行)が、凹所が弾性的に撓む構成が説明されていない。そもそも凹所は貫通ピンの先端側を受け入れる「空間」であるため撓まないはずであり(図2〜4参照。)、この撓まない空間を「撓む」と限定して説明する発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施できる程度に構成、効果が記載されているとは到底思えない。凹所が撓む構成自体も自明ではない。 ウ 発明の詳細な説明中に、相互に弾性的に撓んで係合する構成について、「相互に弾性的に撓んで」(同3欄43行)、「次いで両者又は一方が弾性的に撓んで」(同4欄5行)、「貫通ピン5が凹所6へ進入するときに、両者あるいは何れか一方が弾性的に撓んで」(同5欄30〜32行)、「相互に弾性的に撓んで」(同6欄14行)との記載がある。これらの記載は、いずれも請求項1の記載と同じか或いは請求項1とは異なるが簡単な表現で記載されているに止まり、空間である凹所がどのようにして撓むかについて説明するものではなく、当業者が、凹所が弾性的に撓んで係合する構成を、容易に実施することができない。 エ 仮に「相互に」が「相互に……係合する」と解釈し、「相互に弾性的に撓んで」を、「貫通ピン5が凹所6へ進入するときに、両者あるいは何れか一方が弾性的に撓んで」(同5欄30〜32行)と解釈又は訂正がなされたとしても、この「両者」の一つが凹所であり、或いは「何れか一方」の一つが凹所となることは明白であり、いずれにしても凹所が「弾性的に撓む」ことには変わりがなく、当業者が凹所が弾性的に撓んで係合する構成を容易に実施することができない。 オ 請求項1の「弾性的に撓む」について、撓むのが貫通ピンでも凹所でもなく、何が撓むかを特定していないとすれば、発明の構成が不明瞭ないし不明確であって、当業者はどこを撓ませるのかが理解できないことから容易に実施できない。 カ したがって、本件請求項1に係る発明の「相互に弾性的に撓んで係合する」構成に関して、発明の詳細な説明に、当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されていないから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法36条4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。 キ 本件請求項2及び3に係る発明は請求項1を引用するから、本件請求項2及び3に係る発明の特許も同様に無効とすべきである。 (2)無効理由2 ア 明細書の発明の詳細な説明には、貫通ピンが弾性的に撓む構成は開示されている(同5欄7〜11行)が、凹所が弾性的に撓む構成は十分開示されておらず、またそもそも凹所は空間であり撓まない。 イ 発明の詳細な説明中、相互に弾性的に撓んで係合する構成についての記載は、既述したとおりである(上記(1)のウ参照。)。この記載では、請求項1の凹所が「弾性的に撓んで」を十分裏付ける技術的手段としての開示とはなっていない。 ウ 請求項1の「相互に弾性的に撓んで」は機能的表現であるから、この機能的表現を達成する技術的手段は発明の詳細な説明に記載されていなければならず、同手段が記載されてこそ、請求項1の「相互に弾性的に撓んで」を裏付ける開示がなされているというべきである。しかも、既述の通り、凹所は空間であるから、元来、撓むものではなく、請求項1ではこれを「撓む」と機能的に限定する以上、そこには周知技術乃至自明技術では達成されない格別の構成が発明の詳細な説明に記載されていなければ、請求項1の「この凹所と前記貫通ピンには、貫通ピンが凹所へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部が設けられ」との構成要件が開示されているとはいえない。 エ 既述したように、「相互に」を「相互に……係合する」と解釈するか、或いは、「相互に弾性的に撓んで」を「貫通ピン5が凹所6へ進入するときに、両者あるいは何れか一方が弾性的に撓んで」(同5欄30〜32行)と解釈又は訂正がなされたとしても、この「両者」の一つが凹所であり、或いは「何れか一方」の一つが凹所となることは明白であり、いずれにしても凹所が弾性的に撓むことには変わりがなく、発明の詳細な説明に請求項1の「相互に弾性的に撓んで」を裏付ける開示がなされていないことになる。 オ 既述したように、請求項1の「相互に弾性的に撓む」について、撓むのが貫通ピンでも凹所でもなく、何が撓むかを特定していないとすれば、発明の構成が不明瞭乃至不明確であり、当業者はどこを撓ませるのかが理解できず、請求項1の「弾性的に撓む」に関して、これを裏付ける開示が発明の詳細な説明に記載されていない。 カ したがって、請求項1の「相互に弾性的に撓む」との機能的表現を裏付ける技術的事項が発明の詳細な説明に開示されておらず、よって、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されておらず、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法36条5項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。 キ 請求項2及び3は請求項1を引用するから、本件請求項2及び3に係る発明の特許も同様に無効とすべきである。 (3)無効理由3 ア 請求項1には、貫通ピンと凹所が「相互に弾性的撓む」とあるが、当該凹所は空間であるので撓まないため、発明の構成要素として不明瞭、不明確であり、請求項1には、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが十分に記載されているとはいえない。 イ 既述のとおり、「相互に」を「相互に……係合する」とするならば、請求項1には「弾性的に撓む」構成要素が特定されていないことになり、この場合でも請求項1は発明の構成に欠くことができない事項のみが充分に記載されているとはいえない。 ウ 仮に、請求項1の「相互に弾性的に撓む」が既述のとおり、貫通ピンと凹所の両者あるいは何れか一方が撓むとした場合でも、当該凹所が空間であるので撓まないため、凹所が弾性的に撓むという点で構成が不明瞭、不明確となり、請求項1は発明の構成に欠くことができない事項のみが十分に記載されているとはいえない。 エ したがって、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法36条5項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。 オ 請求項2及び3に係る発明は請求項1を引用するから、本件請求項2及び3に係る発明の特許も同様に無効とすべきである。 甲第1号証:特許第2588160号公報(本件特許公報) 2 被請求人の主張 被請求人は、答弁書において、概ね以下のように反論する。 本件特許の明細書における「凹所」とは、文字どおり「凹んだ所」であって、限定的に「空間」を意味するものではなく、「空間を形成する実体部分」を含む意味であることは、明細書の、例えば、「凹所6の内側には、主杆2側の上縁に膨出して開口を縮小する係合部6aを備えている。」(段落【0010】、本件特許公報4欄38〜39行参照。)との記載から明らかである。そして、「凹所」が撓みうることは、「貫通ピン5は、カーテン21を隔てて対向位置する挿入杆3の凹所6内に進入するが、この過程で、まず両者の係合部5a,6a同士が当接し、次いで両者又は一方が弾性的に撓んで係合部5a,6a同士が相互に係合する。」(段落【0005】、本件特許公報4欄2〜6行参照。)、「貫通ピン5が凹所6へ進入するときに、両者あるいは何れか一方が弾性的に撓んで進入を許容した後、相互に係合し」(段落【0015】、本件特許公報5欄30〜32行参照。)の記載並びに明細書及び図面の記載全体から、当業者がきわめて容易に理解できる。また、係合部同士が当接すれば、全体が弾性合成樹脂製であることから、強度的に体力の小さい方が撓むこと、例えば、構造的に肉薄となっている凹所が撓みうることは、当業者としての合成樹脂製のカーテン吊り具を製造する者が容易に理解できる。 したがって、本件特許の明細書の記載は、特許法36条4項、5項1号及び同項2号に規定する要件を満たしているから、特許法123条1項4号に該当しない。 〔3〕当審の判断 1 無効理由1について 審判請求人は、要するに、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に、請求項1に記載されている「この凹所と前記貫通ピンには、貫通ピンが凹所へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部が設けられ」における、凹所が弾性的に撓む点の構成、或いは凹所がどのようにして撓むのかについて説明がされておらず、凹所が弾性的に撓んで係合する構成を、当業者が容易に実施することができない、と主張する。 そこで、本件特許の明細書の記載をみると、 a 特許請求の範囲の請求項1に、「【請求項1】 カーテンに挿入して取付けるための縦方向に伸びる挿入杆と、この挿入杆に対して下部でほぼU字状に連続し、挿入杆の前方を挿入杆に沿って縦方向に伸び、前部にカーテンの吊り環に掛け止めるためのフックを有する主杆とを具備し、前記挿入杆をカーテンに挿入し、挿入杆と主杆との間でカーテンを挟んでカーテンに装着される弾性合成樹脂製のカーテン吊り具において、前記主杆の後部には、装着時にカーテンを貫通できるように前記挿入杆に向かって突出する貫通ピンを有し、前記挿入杆は、前記主杆を挿入杆に接近させたときに、前記貫通ピンの先端側を受け入れることができる凹所を有し、この凹所と前記貫通ピンには、貫通ピンが凹所へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部が設けられ、前記貫通ピンと凹所との係合により、カーテンに対する揺動、離脱を阻止することを特徴とするカーテン吊り具。」と記載され、 b 同明細書の詳細な説明の段落【0003】には、「 【発明が解決しようとする課題】上記従来のカーテン吊り具においては、カーテンに対する揺動防止について改善が見られるものの、なおそれが左右に振れる強い外力を受けると、主杆と挿入杆とが左右にねじれ、突き刺し体がカーテンから抜けて、結局揺動してしまう問題点が残っている。従って、本発明は、上記従来のフックの問題点を解決し、上部がカーテンに確実に係止され、揺動することのない合成樹脂製のカーテン吊り具を提供することを課題としている。」(本件特許公報3欄20行〜28行参照。)と記載され、 c 同段落【0004】に、「本発明においては、上記課題を解決するために、カーテン21に挿入して取付けるための縦方向に伸びる挿入杆3と、この挿入杆3に対して下部でほぼU字状に連続し、挿入杆3の前方をこれに沿って縦方向に伸び、前部にカーテンの吊り環に掛け止めるためのフック4を有する主杆2とを具備し、挿入杆3と主杆3との間でカーテン21を挟んでカーテン21に装着される弾性合成樹脂製のカーテン吊り具1において、主杆2の後部に、装着時にカーテン21を貫通できるように挿入杆3に向かって突出する貫通ピン5を設け、一方、挿入杆3には、これを主杆2に接近させたときに、貫通ピン5の先端側を受け入れることができる凹所6を設け、この凹所6と貫通ピン5には、貫通ピン5が凹所6へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部5a,6aを設け、貫通ピン5と凹所6との係合により、カーテン21に対する揺動、離脱を阻止するように構成した。」(本件特許公報3欄30行〜46行参照。)と記載され、 d 同段落【0005】に、「【作用】本発明のカーテン吊り具1は、カーテン21への装着時に、挿入杆3と主杆2との間を弾性的に拡開しつつ、挿入杆3をカーテン21のひだ部22に挿入する。挿入杆3を所定位置まで差し込んだところで、貫通ピン5をカーテン21に突き刺す。貫通ピン5は、カーテン21を隔てて対向位置する挿入杆3の凹所6内に進入するが、この過程で、まず両者の係合部5a,6a同士が当接し、次いで両者又は一方が弾性的に撓んで係合部5a,6a同士が相互に係合する。この結果、挿入杆3と主杆2とが、貫通ピン5を介して結合され、相互のねじれが阻止されると共に、吊り具1は、その上部においてカーテン21に確実に係止されることになる。従って、カーテン21を移動させるとき等に容易に揺動することがない。」(本件特許公報3欄48行〜4欄11行参照。)と記載され、 e 同段落【0010】には、「凹所6の内側には、主杆2側の上縁に膨出して開口を縮小する係合部6aを備えている。」(本件特許公報4欄38〜39行参照。)と記載され、 f 同段落【0012】に、「貫通ピン5の先端部は、カーテン21を貫通し、対向する挿入杆3の凹所6内に進入する。貫通ピン5の先端部は、まず係合部6aの下縁に当接し、斜面5aを摺動させながら、進入に従って徐々に下方に撓む。図4に示すように、係合突起5aの頂部が、膨出した係合部6aの下縁を越えると復元して両者が相互に係合する。カーテン21を貫通する貫通ピン5を介して、主杆2と挿入杆3とが結合される結果、吊り具1は、カーテン21に確実に係止され、カーテン21を移動させるとき等に容易に揺動しないし、抜け落ちることがない。吊り具1は比較的柔軟なプラスチック素材から成り、挿入杆3の基部が撓みやすいが、挿入杆3と貫通ピン5との係合により確実に振れ止めされる。」(本件特許公報5欄6〜18行)と記載され、 g 同段落【0016】に、「この凹所6と貫通ピン5には、貫通ピン5が凹所6へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部5a,6aを設けたため、貫通ピン5と凹所6との係合により、カーテン21に対する揺動、離脱を確実に阻止することができるという効果を有する。」(本件特許公報6欄12〜17行参照。)と記載されている。 まず、特許請求の範囲の請求項1に記載されている「この凹所と前記貫通ピンには、貫通ピンが凹所へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部が設けられ」における、「弾性的に撓んで」は、何が弾性的に撓むのかについて検討すると、上記cの「貫通ピン5は、カーテン21を隔てて対向位置する挿入杆3の凹所6内に進入するが、この過程で、まず両者の係合部5a,6a同士が当接し、次いで両者又は一方が弾性的に撓んで係合部5a,6a同士が相互に係合する」の記載によれば、「両者」は、貫通ピンと凹所を指していることは明らかである。 このうち、「貫通ピン」が弾性的に撓む点の構成については、審判請求人も認めているように、発明の詳細な説明の段落【0012】に、「貫通ピン5の先端部は、まず係合部6aの下縁に当接し、斜面5aを摺動させながら、進入に従って徐々に下方に撓む。」(上記eの記載参照。)と具体的にその態様が説明されている。 次に、「凹所」が撓む点の構成について検討すると、上記a〜gの記載によれば、弾性合成樹脂製のカーテン吊り具は、挿入杆に設けられた凹所6の内側に係合部6aを備えており、該係合部6aは弾性合成樹脂製であるから、貫通ピン5の先端部がカーテン21を貫通し、対向する挿入杆3の凹所6内に進入する過程において、係合部6aが撓むことが当業者であれば理解できる。そして、この係合部6aは凹所6の輪郭の一部を構成しているのであるから、本件特許の明細書には、凹所が弾性的に撓む点の構成について、当業者が理解し容易に実施できる程度に記載されているということができる。 このように、本件請求項1に係る発明の「相互に弾性的に撓んで係合する」構成について、発明の詳細な説明に、当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されている。 また、本件特許の明細書の詳細な説明には、本件請求項1に係る発明のその他の構成、及び、本件請求項1に係る発明の目的、効果についても、当業者が容易に実施てきる程度に記載されているものと認められ、さらに、請求項1を引用する本件請求項2及び3に係る発明において限定された構成についても、当業者が容易に実施できる程度に記載されているものと認められるから、特許法36条4項に規定する要件を満たしている。 2 無効理由2について 本件特許の明細書に、請求項1に記載されている「この凹所と前記貫通ピンには、貫通ピンが凹所へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部が設けられ」における凹所が弾性的に撓む点の構成及びその他の構成について、当業者が理解し実施てきる程度に記載されていることは、上記1で述べたとおりであり、また、本件特許の明細書の詳細な説明の段落【0004】の記載(上記cの記載参照。)からみても、本件請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるということができる。さらに、請求項1を引用する本件請求項2及び3に係る発明において限定された構成についても、上記1で述べたように、当業者が容易に実施できる程度に記載されており、本件請求項2及び3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許法36条5項1号に規定する要件を満たしている。 3 無効理由3について 特許法36条5項2号に規定する「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」が記載されているとは、請求項に記載された事項に基づいて特許を受けようとする発明が明確に把握できることを意味する。 そこで、請求項1について検討すると、請求項1に記載されている「この凹所と前記貫通ピンには、貫通ピンが凹所へ進入するときに、相互に弾性的に撓んで係合する係合部が設けられ」における凹所が弾性的に撓む点の構成については、上記1で述べたように、発明の詳細な説明に、当業者が容易に実施できる程度に記載されており、それらの記載を参照すれば、当該請求項1に記載されている事項の意味する内容は明確である。そして、請求項1に記載されているその他の事項の意味する内容も明確であり、請求項1に記載された事項に基づいて、特許を受けようとする発明が明確に把握できる。また、請求項1を引用する請求項2及び3に記載された事項に基づいて、特許を受けようとする発明が明確に把握できるから、特許請求の範囲の請求項1〜3には、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているということができ、特許法36条5項1号に規定する要件を満たしている。 〔4〕むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由によっては、本件請求項1〜3に係る発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項で規定する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-04-03 |
結審通知日 | 2002-04-08 |
審決日 | 2002-04-19 |
出願番号 | 特願平6-306943 |
審決分類 |
P
1
112・
534-
Y
(A47H)
P 1 112・ 531- Y (A47H) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
鈴木 憲子 鈴木 公子 |
登録日 | 1996-12-05 |
登録番号 | 特許第2588160号(P2588160) |
発明の名称 | カーテン吊り具 |
代理人 | 大塚 忠 |
代理人 | 宮崎 伊章 |