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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1059401
異議申立番号 異議2001-70615  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-23 
確定日 2002-02-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3087493号「ファクシミリ装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3087493号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第3087493号に係る出願は、平成5年1月13日に出願されたものであって、平成12年7月14日に特許の設定登録がされ、その後その特許請求の範囲における請求項1に係る発明について、異議申立人林久美子により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年10月25日に訂正請求がなされたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正の内容
訂正事項a
明細書における特許請求の範囲の請求項1中の「されたこと」を「されているとともに、前記符号復号化部を構成したチップは、ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものであること」と訂正する。
訂正事項b
明細書の段落【0004】中の「されたこと」を「されているとともに、前記符号復号化部を構成したチップは、ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものであること」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張、変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項bは、上記訂正事項aに付随的に生じる記載不備を解消するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法120条の4第2項、及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3 特許異議の申立ての概要
異議申立人は、甲第1号証(特開平2-168770号公報、以下、「刊行物1」という。)、参考資料(特開平4-189055号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項3号、または同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、さらに、本件発明の請求項1は明細書の記載と矛盾するから、特許法第36条第4項、又は同法第36条第6項の規定により特許を受けることができないと主張している。
4 特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
本件訂正明細書の請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「モデム部、符号復号化部、周辺機器制御部をそれぞれ個別のチップで構成したファクシミリ装置であって、前記符号復号化部を構成したチップと周辺機器制御部を構成したチップ部との間には、イメージメモリに接続されたイメージデータバスが設けられて、イメージ信号を伝送するようにされているとともに、前記符号復号化部を構成したチップは、ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものであることを特徴とするファクシミリ装置。」
(2)引用刊行物
当審が通知した取消しの理由に引用した刊行物1(前記甲第1号証)には、「画素情報処理方法,装置,システム,及びファクシミリ・システム,データ処理システム」の発明に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「本発明は、高解像度,高品質の画素情報処理及びこの処理を含むファクシミリ・システム,データ処理システムに関する。」(5頁左上欄5行〜7行)
イ「CCD604の各センサ素子は、原稿601又は白色板600の主走査方向の一ライン分の画素の濃度情報(第一次濃度情報)を含む光学信号を(中略)アナログ信号に変換する。(中略)このアナログ電気信号は、後述する様に、ラインメモリ607を用いてビデオ信号生成部608で、画素部分の濃度を示す歪のないデジタル信号に変換される。このデジタル信号は、イメージバスB1を介して符号化・復号化部610に送られ、ここでイメージメモリ609を用いてCCITTの標準規格に基づいて、MH,MR等に符号化される」(5頁右下欄3行〜19行)
ウ「この符号化されたデジタル信号は、システムバスB2,モデムインターフェイス部620,モデム622,モデムアナログ処理部623,電話制御部624,NCU625を介して通信回線に伝送される。」(5頁右下欄19行〜6頁左上欄3行)
エ「ファクシミリ・システムが送信局より通信回線627を介して符号化されたデジタル信号を受けとり、符号化,復号化部610で復号化され、デジタル画像信号に変換される。このデジタル画像信号はビデオ信号生成部608を介して感熱プリンタ,レーザプリンタ,液晶プリンタ等の記録部615で送られ、受信モータ608によって供給される紙617等の記録部材に記録される。」(6頁左上欄4行〜12行)
オ「第2図は、ビデオ信号生成部608を主として示す実施例である。破線で囲まれたビデオ信号生成部608は好ましくは、単一の半導体基板に集積化され、ワンチップLSIを構成する。」(6頁右上欄14行〜17行)
カ「ビデオ信号生成部608は、アナログ・プロセッサ506,デジタルプロセッサ507,センサ・インターフェイス508,レコーダ・インターフェイス509、そして図示しないCPUインターフェイスを含む。(中略)送信モードでは、センサインターフェイス508は、ドライバ510を介してイメージセンサ604を駆動する。」(6頁右上欄18行〜左下欄6行)
キ「受信モードでは、ビデオ信号生成部608は、符号化,復号化部610からデジタル画像信号を受け、処理後、シリアル・デジタル信号は記録部615に伝送される。」(6頁右下欄9行〜12行)

(3)対比・判断
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と刊行物1に記載された発明とを対比すると、
(あ)刊行物1に記載された発明は、ファクシミリ・システムに関し(上記ア参照)、モデム622(本件発明のモデム部に相当)、符号化,復号化部610(本件発明の符号復号化部に相当)、及びビデオ信号生成部608を含み(上記イ参照)、ビデオ信号生成部608は、ワンチップLSIで構成され(上記オ参照)、センサインターフェイス508により、イメージセンサ(周辺機器)を駆動するものであり(上記カ参照)、本件発明の周辺機器制御部に相当するから、モデム部、符号復号化部、をそれぞれ個別のチップで構成した点を除き、「モデム部、符号復号化部、周辺機器制御部で構成したファクシミリ装置」である点で、本件発明と差異がない。
(い)刊行物1に記載された発明は、ビデオ信号生成部608(周辺機器制御部)で変換したデジタル信号を、イメージバスB1を介して符号化・復号化部610(符号復号化部)に送り、ここでイメージメモリ609を用いて符号化するものである(上記イ、ウ参照)から、符号化・復号化部(符号復号化部)がチップ化されている点を除き「前記符号復号化部を構成したチップと周辺機器制御部を構成したチップ部との間には、イメージメモリに接続されたイメージデータバスが設けられて、イメージ信号を伝送するようにされている」という点で、本件発明と差異がない。
したがって、両者は、
「モデム部、符号復号化部、周辺機器制御部で構成したファクシミリ装置であって、前記符号復号化部を構成したチップと周辺機器制御部を構成したチップ部との間には、イメージメモリに接続されたイメージデータバスが設けられて、イメージ信号を伝送するようにされているファクシミ装置」である点で一致し、次の点で相違する。
(a)本件発明は、個別のチップで構成されるものが「モデム部」、「符号復号化部」、及び「周辺機器制御部」であるのに対して、刊行物1に記載された発明は、チップで構成されるのは周辺機器制御部(ビデオ信号生成部)だけであり、「モデム部」、「符号復号化部」については、チップで構成されることの明記がない点。
(b)本件発明は、符号復号化部を構成したチップが、「ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものである」のに対して、刊行物1に記載された発明は、符号化,復号化部が、ハードCODECとプリントデータ制御部でなることについて記載されていない点。
そこで、前記相違点(a)について検討すると、
回路装置の一部を集積化して、ワンチップ化することは、当業者に周知であり、そして、どの回路部分を集積化するかは、設計に際して適宜決定し得ることであるから、個別のチップで構成されるものを「モデム部」、「符号復号化部」、及び「周辺機器制御部」とすることは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。
次に、相違点(b)について検討すると、
ハードCODECで構成された符号復号化部は、当業者に周知であるから、符号復号化部をハードCODECで構成することは、当業者が容易になし得ることである。また、復号化されたファクシミリ画像信号は、プリントデータとしてプリンタに送られるものであり(上記エ、キ参照)、刊行物1には明記されていないが、復号化部(符号復号化部)に対応してプリントデータ制御部が必要となることは明らかであること、そして、回路装置の一部を集積化してワンチップ化する際には、動作上関連の近い回路部分を集積化することが設計上当然に考慮されるものであること、等を総合考慮すると、復号化部(符号復号化部)とこれと動作上間連の近いプリントデータ制御部をワンチップ化すること、すなわち、符号復号化部を構成したチップを「ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものである」とすることは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。
なお、この点について、特許権者は、「符号復号化部を構成したチップにプリントデータ制御部を内蔵させたことによって、プリントデータ制御部は、ハードCODECの復号化動作に対応して、印字データと転送クロックを出力することをチップ内で行うことができるから、回路構成を簡単化できる。しかも、符号復号化部の構成に対応したプリントデータ制御部を組み合わせてチップ化できるから、機種展開を容易にしているものである」と主張しているが、これらの効果は、刊行物1に記載された発明、及び前記周知技術から当業者が容易に予測可能であって、格別のものではない。
(4)むすび
したがって、本件訂正明細書の請求項1に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ファクシミリ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 モデム部、符号復号化部、周辺機器制御部をそれぞれ個別のチップで構成したファクシミリ装置であって、前記符号復号化部を構成したチップと周辺機器制御部を構成したチップとの間には、イメージメモリに接続されたイメージデータバスが設けられて、イメージ信号を伝送するようにされているとともに、前記符号復号化部を構成したチップは、ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものであることを特徴とするファクシミリ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、画像データを送受信するファクシミリ装置、特に、ファクシミリ装置のチップ構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ファクシミリ装置は、原稿を読み取りながら送信し、また、受信しながら印字出力できるので、文書、図形を即時的に送受信できるので、広く普及し、一般家庭にまで利用されるようになりつつある。それだけに利用の形態はさまざまであり、簡易型が開発される一方、高速、高機能、多機能化も進んでいる。
ファクシミリ装置の開発は、このような多様な要求に対処して、多機種への機種展開が要求されている。新規機種の開発には、機種の多様化によって、機種ごとにハードウェア、ソフトウェアの開発をする必要があり、機種が多くなると、開発に時間がかかるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、チップ構成を工夫することによって、機種展開が容易なファクシミリ装置を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、モデム部、符号復号化部、周辺機器制御部をそれぞれ個別のチップで構成したファクシミリ装置であって、前記符号復号化部を構成したチップと周辺機器制御部を構成したチップとの間には、イメージメモリに接続されたイメージデータバスが設けられて、イメージ信号を伝送するようにされているとともに、前記符号復号化部を構成したチップは、ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものであることを特徴とするものである。
【0005】
【作用】
本発明によれば、モデム部、符号復号化部、周辺機器制御部をそれぞれ個別のチップで構成したことによって、チップを差し替えることにより機種展開を行なうことができ、開発が容易となる。
【0006】
【実施例】
図1は、本発明のファクシミリ装置の一実施例の要部の概略構成図である。図中、1はNCU(網制御部)、2はモデム(チップA/チップB)、3は画像メモリ、4はRAM、5はROM、6はCPU、7はイメージメモリ、8はハードCODEC部(チップD)、9はハードCODEC、10はプリントデータ制御部、11は周辺機器制御部(チップC)、12はセンサドライバ、13は画像処理部、14,15はラインメモリ、16はイメージ-RL符号変換部、17はRL-イメージ符号変換部、18はイメージ出力部、19はサーマルヘッド印字制御部、20はモータドライバ、SW1〜SW5は信号切換部である。NCU1は、図示しない回線との接続制御を行なう。
【0007】
モデム2は、ファクシミリ信号を変調してNCU1を介して回線に送出し、また、回線から受信した信号を復調するものであり、ワンチップで構成され、この実施例では、最高速度が14.4kbpsおよび9.6kbpsの通信速度(CCITT勧告V.17、V.29)に対応できる。このチップをチップAと呼ぶことにする。また、14.4kbpsの通信速度を要求しない機種においては、例えば、9.6kbpsを最高通信速度(CCITT勧告V.29)としたチップを用意してこれを差し替えるようにできる。図では、これをチップBとして図示した。なお、いずれのチップでも、バイナリの通信手順信号(CCITT勧告T.30)を変復調するためのFSKのモデム機能(CCITT勧告V.21)を有している。
【0008】
画像メモリ3は、画像データを符号化した形で記憶するRAMであり、符号メモリということができる。RAM4は、ワーキングRAMであり、一次的なデータをメモリする。ROM5は、固定データやプログラムを蓄積している。CPU6は、ROM5のプログラムを実行し、また、図示しない操作部からの指令等を判別してファクシミリ装置各部の制御を行なう。
【0009】
イメージメモリ7は、ハードCODEC9により符号化する際のビットイメージデータを蓄積し、また、ハードCODEC9で復号化したビットイメージデータを蓄積する。メモリ容量は、順次メモリを更新しながら符号化・復号化が行なわれるので、6ライン程度あれば十分である。したがって、イメージメモリ7は、ハードCODEC部8のチップに組み込むようにしてもよい。しかし、イメージメモリ7の例えば、0番地から256バイト(2048ビット分)、すなわち、1ライン分は、全白のデータが蓄積されて、後述する参照ラインとして利用される。この256バイト分はROMで構成してもよく、あるいは、RAMとして構成し、ファクシミリ装置の起動時に全白のデータを書き込むようにしてもよい。つまり、1ライン分の全白データが、イメージメモリに固定的に記憶されているのである。プリンタとして、LEDプリンタやレーザプリンタ等、高速のプリンタを用いる場合には、イメージメモリ7には、ページメモリを用いることもできる。ページメモリは、イメージメモリ7の増設メモリとして構成するようにしてもよい。
【0010】
プリントデータ制御部10は、ハードCODEC9の復号化動作に対応して、印字データと転送クロックを出力する。ハードCODEC9とプリントデータ制御部10よりなるハードCODEC部は、ハードウェア、例えば、DSPとして、ワンチップで構成されている。このチップをチップDとして表す。ハードCODEC9は、14.4kbpsの符号化・復号化が可能な高速CODECである。ハードCODEC9では、イメージ出力部18からの入力データのほか、イメージ-RL符号変換部16等からのRLデータをMH,MR,MMRに符号化し、また、MH,MR,MMRデータをRLデータに復号化できる。
【0011】
周辺機器制御部11は、センサからの読み取りデータおよびプリンタのための印字データの処理やモータ制御を行なうもので、ASICとしてワンチップで構成されている。このチップをチップCとして表すことにする。センサドライバ12は、図示しないCCDセンサに駆動信号を送り、画信号を受け取る。画像処理部13は、センサドライバからの画像データを、2値化処理、あるいは、ディザ中間調処理、あるいは、誤差拡散法による中間調処理など、適当な画像処理を行なう。画像処理された1ラインのデータは、信号切換部SW1とSW2を反転させて、ラインメモリ14と15とに交互に書き込まれ、交互に読み出されて、1ラインごとの画像データを得ることができる。画像データは、信号切換部SW3で選択されて、イメージ-RL符号変換部16で、RL符号に変換され、画像メモリ3に蓄積できる。また、画像メモリ3に蓄積した画像データを読み出して、イメージ-RL変換部16でイメージデータに変換して信号切換部SW4を介して、サーマルヘッド印字制御部19に加えられ、印字パルス信号を図示しないサーマルプリンタに出力するとともに、SW5に印字データと転送クロックを出力して、図示しないサーマルプリンタで印字出力される。モータドライバ20は、送信の際の原稿の駆動や、記録紙の駆動を行なうモータの制御を行なう。
【0012】
信号切換部SW3の選択により、RL符号変換をすることなく、ラインメモリ14,15の出力を、直接サーマルヘッド印字制御部19に加えることもできる。イメージ出力部18に導入されたラインメモリ14,15の出力をイメージメモリ7に導入しながら、ハードCODEC9で符号化し、画像メモリ3に蓄積したり、モデム2からNCU1を介して回線に送出することができる。画像メモリ3に蓄積する場合には、MMRに符号化して蓄積することができる。MMRデータに符号化する場合には、第1番目のラインは、全白ラインを仮想してMRデータに符号化される。この場合、全白ラインとしては、イメージメモリ7の0番地から256バイト分の領域に格納された全白データを参照ラインとして符号化される。
【0013】
最高通信速度が9.6kbps以下である場合には、ROM5に格納されたプログラムによって、符号化・復号化を行なうことができる。これをソフトCODECと呼ぶ。ソフトCODECで、RLデータをMH,MR,MMRデータに符号化し、また、MH,MR,MMRデータをRLデータに復号化できる。ソフトCODECに用いるイメージメモリとしては、RAM4が用いられる。ソフトCODECの起動時には、RAM4の所定のアドレスに、1ライン分の全白のデータが書き込まれ、同様に参照ラインとして利用される。
【0014】
CODECを2つ設けたことによりデュアル処理が容易となる。1つの処理でハードCODECが使用中であれば、もう1つの処理は、ソフトCODECを用いることができる。例えば、画像メモリ3にMMRで蓄積された画像データをハードCODECを用いて、14.4kbpsで受信中に、送信原稿を読み込み、ソフトCODECを用いて、MMRで画像メモリ3に蓄積するというように、デュアル処理が可能である。ハードCODECとソフトCODECを設けたことにより、高速の処理はハードCODECが担当できる。また、ハードCODECの使用中は、ソフトCODECでデュアル処理に対処でき、ハードCODECを2つ備える場合に比較して、装置のコストアップを抑えることができる。印字処理や蓄積処理でハードCODECの使用中に着信した場合には、9.6kbpsを通信最高速度としてDISで宣言するようにすれば、ソフトCODECを用いて受信できる。
【0015】
図2は、図1で説明した実施例のファクシミリ装置を基本として構成した第1の展開機種のファクシミリ装置のブロック図である。図中、1はNCU(網制御部)、4はRAM、5はROM、6はCPU、21は操作パネル、22はクロック部、23はI/O、24はカッタ、25はCCDセンサ、26は光源、27はステッピングモータ、28はサーマルヘッド、29はデータバス、30はイメージデータバスである。チップAは、最高速度が14.4kbpsの変調・復調が可能なモデムのチップであり、NCU1を介して、回線に接続される。チップCは、読取および印字のための入出力データの制御を行なう周辺機器制御部のチップであり、データバス29とは、RLデータで信号の授受を行なう。チップDは、ハードCODEC部のチップである。チップCとチップDとの間には、イメージデータバス30が設けられ、イメージ信号を伝送する。
【0016】
ROM5には、この機種に対応するプログラムや固定データが格納されており、ファクシミリソフトウェアライブラリとして用意されたものである。ソフトCODECも有している。操作パネル21は、ファクシミリ装置に対して外部からの入力信号を与えるものであり、クロック部22は、クロックパルスのカウントを行なって、時刻または日時のデータを出力するものである。カッタ24は、I/O23を介して与えられる切断指令により、記録紙の切断を行なう。CCDセンサ25は、光源26により照明された原稿データを読み取るためのものであり、ステッピングモータ27は、原稿や記録紙を駆動するものである。サーマルヘッド28は、発熱素子のアレイとして構成されており、印字データに従って、感熱記録を行なうものである。
【0017】
したがって、この機種は、最高通信速度が14.4kbpsであり、感熱記録紙を用いた機種である。また、ドナーフィルムを用いた熱転写方式による記録を行なう機種への展開も容易である。この場合には、カット紙を用いるため、I/O23とカッタ24は不要となる。
【0018】
図3は、図1で説明した実施例のファクシミリ装置を基本として構成した第2の展開機種のファクシミリ装置のブロック図である。図中、図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。31はLEDプリンタ、32はページメモリである。第1の展開機種と同様に、最高通信速度は14.4kbpsである。LEDプリンタ32としては、レーザプリンタや他の高速プリンタを用いることができる。
【0019】
図4は、図1で説明した実施例のファクシミリ装置を基本として構成した第3の展開機種のファクシミリ装置のブロック図である。図中、図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。この機種では、9.6kbpsを通信最高速度とし、感熱記録紙を用いたものである。変調・復調には、ハードCODECを用いる必要はないので、チップDは搭載しない。サーマルヘッドへの印字制御は、チップCにより行なわれる。
【0020】
図5は、図2乃至図4で説明した機種展開のソフトウェア部分を概念的に図示した説明図である。図中、33は機種対応アプリケーションソフトウェア、34はI/O制御ソフトウェア、35は駆動回路、36はモデムである。図2乃至図4で説明した機種展開に対応して、ソフトウェアの部分も、機種対応アプリケーションソフトウェア33が適用される。この機種対応アプリケーションソフトウェア33は、I/O制御ソフトウェア34を介して上述したハードウェアを制御する。I/O制御ソフトウェア34としては、コピー制御、メモリへのデータの蓄積、プリンタ、他のCPUとの通信等を行なうためのソフトウェアがソフトウェアライブラリとして用意されており、それぞれのソフトウェアが必要な駆動回路35を制御し、または、駆動回路35に指令し、それぞれの機能を実現する。駆動回路35は、図1乃至図4で説明したハードウェアであり、例えば、ハードCODEC9や、プリントデータ制御部10、サーマルヘッド印字制御部19、画像メモリ3、各種のスイッチ類等を含む。また、機種対応アプリケーションソフトウェア33は、モデム36を直接制御するとともに、ソフトCODECとしての機能も有する。
【0021】
機種対応アプリケーションソフトウェア33およびI/O制御ソフトウェア34は、ROM5として供給される。これらのソフトウェアは、機種に応じて、機能を取捨選択して搭載させることができる。このとき、機種対応アプリケーションソフトウェア33およびI/O制御ソフトウェア34を別々のROMとして構成し、I/O制御ソフトウェア34は共通として、全ての機種に搭載し、機種対応アプリケーションソフトウェア33のみを機種毎に交換可能に構成することができる。もちろん、I/O制御ソフトウェア34も交換可能に構成してもよいし、両方のソフトウェアを1つのROMに収納してもよい。また、I/O制御ソフトウェア34は、上述の各機能毎のソフトウェア部分と、駆動回路35を直接制御するデバイスドライバ部分とに分けて構成することも可能である。これらのソフトウェア構成は、周知の技法により適宜構成することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、モデム部、符号復号化部、周辺機器制御部をそれぞれ個別のチップで構成したことによって、チップを差し替えることにより機種展開を行なうことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のファクシミリ装置の一実施例の要部のブロック図である。
【図2】
第1の展開機種のファクシミリ装置のブロック図である。
【図3】
第2の展開機種のファクシミリ装置のブロック図である。
【図4】
第3の展開機種のファクシミリ装置のブロック図である。
【図5】
機種展開のソフトウェア部分を概念的に図示した説明図である。
【符号の説明】
1 NCU(網制御部)
2 モデム(チップA/チップB)
6 CPU
7 イメージメモリ
8 ハードCODEC部(チップD)
11 周辺機器制御部(チップC)
33 機種対応アプリケーションソフトウェア
34 I/O制御ソフトウェア
35 駆動回路
36 モデム
 
訂正の要旨 訂正事項a
明細書における特許請求の範囲の請求項1中の「されたこと」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「されているとともに、前記符号復号化部を構成したチップは、ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものであること」と訂正する。
訂正事項b
明細書の段落【0004】中の「されたこと」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「されているとともに、前記符号復号化部を構成したチップは、ハードCODECとプリントデータ制御部よりなるものであること」と訂正する。
異議決定日 2001-12-11 
出願番号 特願平5-20479
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H04N)
最終処分 取消  
前審関与審査官 堀井 啓明  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 江頭 信彦
関川 正志
登録日 2000-07-14 
登録番号 特許第3087493号(P3087493)
権利者 村田機械株式会社
発明の名称 ファクシミリ装置  
代理人 石井 康夫  
代理人 石井 康夫  

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