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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65H
管理番号 1059547
異議申立番号 異議2001-70654  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-07-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-28 
確定日 2002-03-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3081995号「画像形成機のジャム処理装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3081995号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯の概要
本件特許3081995号発明は、平成11年1月7日に特許出願され、平成12年6月30日に設定登録(平成12年8月28日特許公報発行)がなされ、その後、平成13年2月28日付けでキャノン株式会社より特許異議の申立がなされ、平成13年5月15日に取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成13年7月11日に意見書の提出とともに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に係る記載、
「転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置が、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成された画像形成機において、
該転写紙搬送路に配設され該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、
該定着装置が該装着位置に位置付けられているか否かを検出する定着装置検出手段と、
該転写紙検出手段および該定着装置検出手段からの信号に基づいて該転写紙搬送路に転写紙がジャムしているか否かおよびジャムが解消したか否かを判定する制御手段と、
該制御手段による判定結果を表示する表示手段と、を具備し、
該制御手段は、該転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出した場合は該転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行い、その後該転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても該定着装置検出手段が該定着装置の該装着位置からの離脱と該装着位置への位置付けを検出しないときは該表示手段へのジャム表示を継続する、
ことを特徴とする画像形成機のジャム処理装置。」
を、
「転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置が、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成された画像形成機において、
該転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含む、該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、
該定着装置が該装着位置に位置付けられているか否かを検出する定着装置検出手段と、
該転写紙検出手段および該定着装置検出手段からの信号に基づいて該転写紙搬送路に転写紙がジャムしているか否かおよびジャムが解消したか否かを判定する制御手段と、
該制御手段による判定結果を表示する表示手段と、を具備し、
該制御手段は、該転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出した場合は該転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行い、その後該転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても該定着装置検出手段が該定着装置の該装着位置からの離脱と該装着位置への位置付けを検出しないときは該表示手段へのジャム表示を継続する、
ことを特徴とする画像形成機のジャム処理装置。」
に訂正する。
訂正事項b
明細書第3頁第16行乃至第17行の、
「該転写紙搬送路に配設され該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、」
を、
「該転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含む、該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、」
に訂正する。
訂正事項c
明細書第4頁第4行の「につて」を、「について」に訂正する。
訂正事項d
明細書第9頁第13行の「(例えば μsec)」を削除する。
訂正事項e
明細書第711頁第4行の「したなれば」を、「したならば」に訂正する。
訂正事項f
明細書第14頁第5行の「50:定着装置」を削除する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1中の、「該転写紙搬送路に配設され」を、明細書第5頁第17〜20行及び第6〜9行及び図2の記載に基づいて、より下位概念である「該転写紙搬送路における、該定着装置の上流側及び下流側に配設された検出スイッチを含む、」に限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。

上記訂正事項bは、訂正された請求項1の記載と、発明の詳細な説明との整合を図るために、明細書第3頁第16〜17行の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

そして、上記訂正事項a,bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

上記訂正事項c〜fは、明かな誤記を訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。

そして、上記訂正事項c〜fは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項の規定、及び第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、該訂正を認める。

3.特許異議の申立の概要及び取消理由通知
(1)特許異議の申立の概要
甲第1号証:特開平9-48539号公報
甲第2号証:特開平6-171794号公報

(2)取消理由通知
当審は、本件の請求項1に係る特許発明は、本件特許出願前に頒布された下記刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨の取消理由を通知した。

刊行物1:特開平6-171794号公報(特許異議申立書の甲第2号証)
刊行物2:特開平9-80943号公報

4.特許異議申立についての判断
(1)本件訂正発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置が、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成された画像形成機において、
該転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含む、該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、該定着装置が該装着位置に位置付けられているか否かを検出する定着装置検出手段と、
該転写紙検出手段および該定着装置検出手段からの信号に基づいて該転写紙搬送路に転写紙がジャムしているか否かおよびジャムが解消したか否かを判定する制御手段と、
該制御手段による判定結果を表示する表示手段と、を具備し、
該制御手段は、該転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出した場合は該転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行い、その後該転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても該定着装置検出手段が該定着装置の該装着位置からの離脱と該装着位置への位置付けを検出しないときは該表示手段へのジャム表示を継続する、
ことを特徴とする画像形成機のジャム処理装置。」

(2)引用刊行物の記載事項
当審が通知した、取消理由に引用した刊行物1(特開平6-171794号公報:特許異議申立人キャノン株式会社の提出した甲第2号証)には、画像形成装置であるページプリンタについて、図面とともに、以下のことが記載されている。
記載事項a.(2ページ段落【0002】)
「【0002】 【従来の技術】従来より、複写機や電子写真プリンタ等の画像形成装置においては、用紙詰まり(用紙ジャム)が発生すると、その用紙ジャムを装置が検知して印刷動作を自動的に停止する制御が行われている。」
記載事項b.(2ページ段落【0005】)
「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来例の場合、いずれもシェルを開けて容易にジャム用紙を確認できる場合には支障はないが、例えば用紙ジャムの発生位置が、カバーで覆われているような定着部等の箇所ではジャム用紙の確認がしづらく、且つ定着ロール等に用紙が巻き付いた状態で停止している時、装置の印刷動作停止は用紙ジャムではなく、給紙装置の用紙供給のし損ないであるとしてジャム用紙を取り除かないまま再起動してしまうことが多い。」
記載事項c.(3ページ段落【0016】)
「【0016】 図1において、定着部1は用紙上のトナー像を熱定着する加熱ロール2、定着部1全体を覆う定着カバー3、この定着カバー3の支持部3aに回転自在に支持される回転軸4、この回転軸4のほぼ中央部に固定され、詳しくは後述するが、通過する用紙Pに接触して先端が同図に示す矢印Bの方向に円弧運動を行なう用紙検知手段としての排紙アクチュエータ5、上記回転軸4の先端に取り付けられ、この回転軸4を介して排紙アクチュエータ5に連動し、排紙アクチュエータ5の円弧運動と共に同図に示す矢印Cの方向に円弧運動を行う遮光部材6、その遮光部材6の円弧運動により入光路を遮蔽または開放されてオン/オフする搬送路開放検知手段及び用紙検知手段としてのフォト・インタラプタスイッチ7、上記加熱ロール2に用紙Pを下から押圧するプレスロール8で構成されている。」
記載事項d.(3ページ段落【0021】)
「【0021】 このように、本実施例の定着部1の構成においては、フォト・インタラプタスイッチ7は、一方で、定着部1における巻き込まれていない状態の用紙Pの有無を検知し、他方では、定着部1の定着カバー3の開閉を検知する構成である。」
記載事項e.(4ページ段落【0028】)
「【0028】 CPU25は、ROM26に記憶されているプログラムに基づいて、各々対応する駆動回路を介して装置各部を制御する。また、上記シェル開閉センサ28、及びフォト・インタラプタスイッチ7のオン/オフを検出して、その検出結果に基づいて、上記モータ駆動回路29を介してモータの回転を制御し、定着ヒータドライバ30を介して定着ヒータのオン/オフを制御する。」
記載事項f.(4ページ段落【0032】の28〜30行)
「不図示の表示装置、例えば本体カバー10b上に設けられた液晶表示装置に、用紙ジャムの発生を報知する表示を行う」
記載事項g.(5ページ段落【0036】の13〜14行)
「表示装置に、故障が修復されて正常になったことを示す正常表示を行う」
記載事項h.(5ページ段落【0038】34〜37行)
「図8に示す処理(ST8)で定着カバー3が閉じられたままでなく、ユーザにより一旦開かれた後、すなわち、巻き付いたジャム用紙の有無が確認されてから閉じられたものであるか否かが判断される。」
記載事項i.(5ページ段落【0046】)
「【0046】 このように制御すれば、例えばユーザが本体カバー10bの開閉のみを行って、定着カバー3を閉じなかった場合、フォト・インタラプタスイッチ7がオンからオフに変化する信号のエッジが検出されないため(ST11-2がN)、条件1フラグが設定されず、かかる場合フラグクリア処理は実行されず(ST11-8)、用紙ジャムの表示(ST4)はされたままとなる。したがって、ユーザは本体カバー10bを閉じたにも係わらず、用紙ジャム表示が消えないので本体カバー10bを再度開放し、さらに定着カバー3を開放してジャム用紙の有無の確認をするよう促すことができる。」
記載事項j.(6ページ段落【0054】)
「【0054】 尚、上述した2つの実施例において、定着器のカバーの開閉を検出するようにしているが、これに限ることなく、開放操作又は取り外し操作によらないとジャム用紙の確認ができない構造部分であれば同様に適用できることは勿論である。」

また、当審が通知した、取消理由に引用した刊行物2(特開平9-80943号公報)には、印字装置の定着装置について、図面とともに、以下のことが記載されている。
記載事項k.(2ページ段落【0004】)
「【0004】本発明は、ユーザーが安全に着脱操作できるとともに、構成の簡易化並びにジャム処理の容易化向上を図れる定着装置の提供を、その目的とする。」
記載事項l.(2ページ段落【0006】の47〜50行)
「図1に示すように、定着装置2は、概略、加熱定着器4と、この加熱定着器4の上面側に一体に形成された合成樹脂製の取っ手6とからなるユニットとして構成されている。」
記載事項m.(3ページ段落【0007】の6〜11行)
「【0007】取っ手6は、印字装置12に対する着脱方向(矢印P方向)に沿って延びる長板状に形成されており、これに対応して印字装置12側にはガイドレール14,14が形成されている。すなわち、取っ手6は、取っ手としての機能を有するとともに着脱の際のガイド部材としての機能を有するように構成されている。」

(3)対比・判断
本件訂正発明(以下「前者」という)を、刊行物1記載のもの(以下「後者」という)と比較すると、上記記載事項cより、後者の定着部1は用紙上のトナー像を熱定着する加熱ロール2を有するので、前者の「転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置」に相当する。
また、上記記載事項cより、後者の用紙検知手段としてのフォト・インタラプタスイッチ7は、前者の「転写紙検出手段」に相当する。
また、上記記載事項dより、後者のフォト・インタラプタスイッチ7は、一方で、定着部1における巻き込まれていない状態の用紙Pの有無を検知し、他方では、定着部1の定着カバー3の開閉を検知するものであるから、後者のフォト・インタラプタスイッチ7は、定着部の定着カバーが所定の位置に位置づけられているか否かを検出する手段となっているので、前者の「定着装置検出手段」に対応する。
また、上記記載事項fより、後者の表示装置は、用紙ジャムの発生を報知する表示を行うものであるので、前者の「表示手段」に相当する。
さらに、上記記載事項eより、後者のCPU25は、フォト・インタラプタスイッチ7のオン/オフを検出して、その検出結果に基づいて制御を行うものであり、上記記載事項h,iより、定着カバー3が閉じられたままでなく、ユーザにより一旦開かれた後、すなわち、巻き付いたジャム用紙の有無が確認されてから閉じられたものであるか否かを判断するものであり、ユーザが、定着カバー3を一旦開いて閉じなかった場合、用紙ジャムの表示(ST4)をしたままにするものであるので、前者の「制御手段」に対応する。
そこで、両者は、次の一致点で一致し、相違点1ないし4で相違する。

(一致点)
「転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置が、機体ハウジングの所定の装着位置に構成された画像形成機において、
該転写紙搬送路における、該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、
定着装置検出手段と、
該転写紙検出手段および該定着装置検出手段からの信号に基づいて該転写紙搬送路に転写紙がジャムしているか否かおよびジャムが解消したか否かを判定する制御手段と、
該制御手段による判定結果を表示する表示手段と、を具備し、
該制御手段は、該転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行い、その後該転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても該定着装置検出手段が該定着装置でのジャム確認操作を検出しないときは該表示手段へのジャム表示を継続する、
ことを特徴とする画像形成機のジャム処理装置。」

(相違点1)
前者の転写紙検出手段は、転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含むものであるのに対し、後者の転写紙検出手段は、定着部に配設されたフォト・インタラプタスイッチ以外のものを含むものか否か不明である点。

(相違点2)
前者の制御手段は、転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出した場合は、転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して、表示手段にジャム表示を行うものであるのに対し、後者のCPUは、転写紙検出手段からの信号に基づいて、どのように転写紙のジャムを判定するのか、明かでない点。

(相違点3)
前者の定着装置は、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成されているのに対し、後者の定着部は、定着カバーが定着部本体に対して開閉可能に構成されているが、定着部自体は機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成されていない点

(相違点4)
前者の定着装置検出手段は、定着装置が装着位置に位置付けられているか否かを検出するものであり、前者の制御手段は、ジャム判定後、定着装置検出手段が、定着装置でのジャム確認操作を示す、定着装置の装着位置からの離脱と装着位置への位置付けを検出しないときは、表示手段へのジャム表示を継続するものであるのに対し、後者のフォト・インタラプタスイッチは、定着カバーが定着部本体に対して開いているか否かを検出するものであり、後者のCPUは、ジャム判定後、フォト・インタラプタスイッチが、定着部でのジャム確認操作を示す、定着カバーの開及び閉動作を検出しないときは、表示手段へのジャム表示を継続するものである点。

(相違点1についての判断)
上記記載事項aには、「従来より、複写機や電子写真プリンタ等の画像形成装置においては、用紙詰まり(用紙ジャム)が発生すると、その用紙ジャムを装置が検知して印刷動作を自動的に停止する制御が行われている」とあるが、ジャムが発生し得る場所は、転写紙搬送路の唯一の部位に限るものではなく、その複数部位に存在するものであることは、一般に良く知られているので、コピー機等の画像形成機においては、転写紙搬送路のいずれの部分においてジャムが発生しても、これを適切に検出できるように、定着装置の上流側及び下流側を含む転写紙搬送路の複数ヶ所に、転写紙検出手段を設けることが周知である。
この点について、例えば、本件明細書の【従来の技術】にも引用されている、特公平5-37313号公報には、定着ローラ7,7aの上流側の紙搬送路に給紙センサ10及び紙の通過センサ12を、そして、定着ローラ7,7aの下流側の紙搬送路に排紙センサ11をそれぞれ設けるとともに、該センサ10〜12による紙の検出時間を、各センサにつながるタイマー17,18,27で計測し、タイマからの出力信号を利用して、ジャムの発生を検出するようにしたものが記載されている。
そこで、転写紙検出手段が、転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含むように構成することは、当業者が必要に応じ適宜なし得た設計的事項にすぎない。

(相違点2についての判断)
ジャム有りの判定を、転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出したことを条件に行うことは、周知の事項にすぎない。
この点については、例えば、上記特公平5-37313号公報の記載を参照されたい。

(相違点3についての判断)
本件訂正発明において、定着装置を、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成している理由は、本件訂正明細書の【0019】に、「定着装置50を装着位置から取り出して、装着状態では確認困難な定着ハウジング51内でのジャムの有無の確認およびジャムした転写紙を除去した後に装着位置に再び位置付け」と記載されていることから、定着装置内のジャムの有無の確認及びジャム処理を容易にするためと解することができる。
ところで、刊行物1記載のものにおいて、定着部の定着カバーを開閉可能に構成している理由も、上記記載事項b等より、定着部内のジャムの有無の確認及びジャム処理を容易にするためであると解することができる。
一方、刊行物2には、記載事項k〜mからみて、ジャム処理の容易化向上を図れる定着装置の提供を目的とした、印字装置に対して着脱可能な定着装置が記載されている。
そこで、刊行物2に記載されたものに倣って、ジャムの確認及びその処理を容易にする目的で、刊行物1記載の定着カバーが開閉可能な定着部に代え、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能な定着装置を選択することは、当業者が適宜なし得たことであるが、この場合、ジャムの確認が行われたことは、定着カバーの開閉ではなく、定着装置の着脱により検知することになる。
そして、刊行物1には、上記記載事項jに「定着器のカバーの開閉を検出するようにしているが、これに限ることなく、開放操作又は取り外し操作によらないとジャム用紙の確認ができない構造部分であれば同様に適用できる」との示唆があることからも、着脱式の定着装置を選択するにあたって、定着装置検出手段として、カバーの開閉を検出するものに代え、定着装置の着脱を検出するものを採用して、相違点3に係る本件訂正発明の構成のようにすることは、当業者が、格別困難なく想到し得たことである。

(相違点4についての判断)
刊行物1記載のものにおいて、定着カバーが開閉可能な定着部に代え、刊行物2記載のものに倣って、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能な定着装置を採用するにあたっては、上述のように、定着装置内のジャムの有無の確認が行われたか否かを、定着装置の着脱を検出することにより判断することになるから、ジャム判定後、定着装置検出手段が定着装置の離脱及び位置づけを検出しない場合には、CPUが表示手段へのジャム表示を継続するようにして、相違点4に係る本件訂正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、本件特許権者は、特許異議意見書において、概略、刊行物1記載のものには、定着装置以外において転写紙がジャムした場合の処理については全く記載されておらず、これに対して、本件特許発明は、定着装置内でのジャムか否かにかかわらず転写紙のジャムが発生した場合の処理に関するものであり、定着装置内における転写紙のジャムを検出することができない場合の問題を解決するものであるから、本件特許発明の本質的特徴は、刊行物1には全く記載も示唆もされていない旨主張している。
しかしながら、引用例1記載のものは、ジャム処理にあたり、ユーザが定着装置内の用紙の存否を確認しないままに、画像形成装置を再起動してしまうことを防止することを、その課題とするものであり(引用例1、段落【0005】〜【0007】参照)、一方、周知のように、画像形成装置でのジャムの発生可能個所は、転写紙搬送路に沿った複数の部位にわたるのであって、そのいずれの部分で発生したジャムを処理する場合についても、上記課題は存在するのであるから、引用例1記載の技術思想を、複数ヶ所でのジャムの発生を検出することのできる、周知の画像形成装置に適用することに、格別な困難性は認められないので、本件特許権者の上記主張は採用できない。

(4)むすび
以上のとおりであるので、本件訂正発明は、刊行物1,2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論の通り決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像形成機のジャム処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置が、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成された画像形成機において、
該転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含む、該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、
該定着装置が該装着位置に位置付けられているか否かを検出する定着装置検出手段と、
該転写紙検出手段および該定着装置検出手段からの信号に基づいて該転写紙搬送路に転写紙がジャムしているか否かおよびジャムが解消したか否かを判定する制御手段と、
該制御手段による判定結果を表示する表示手段と、を具備し、
該制御手段は、該転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出した場合は該転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行い、その後該転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても該定着装置検出手段が該定着装置の該装着位置からの離脱と該装着位置への位置付けを検出しないときは該表示手段へのジャム表示を継続する、
ことを特徴とする画像形成機のジャム処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電式複写機や静電式印刷機等の画像形成機のジャム処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電式複写機や静電式印刷機等の画像形成機においては、所定方向に回転される感光体ドラムの周表面にトナー像が形成され、このトナー像が転写紙搬送路を通して搬送され転写域を通過する転写紙に転写される。上記転写域より下流側の搬送路には定着装置が配設されており、トナー像が転写された転写紙が定着装置を通過する際に上記トナー像が加熱定着される。このようにしてトナー像が定着された転写紙は、転写紙搬送路の下流側端部に配設された排出ローラ対を通して排出トレイに排出される。このような画像形成機において、上記転写紙搬送路中に転写紙が紙詰まり(ジャム)が発生した場合には、このジャムの発生を表示し、ジャムした転写紙を取り除きリセットスイッチを押すとジャム表示を消去するようにした画像形成機が、例えば特公平5ー37313号公報に開示されている。即ち、この公報に開示された技術は、転写紙搬送路に配設された各搬送ローラ間に通過する転写紙を検出する転写紙検出手段を各々配設し、この転写紙検出手段のいずれかが所定時間以上転写紙の存在を検出したらジャム(紙詰まり)が発生した位置を表示手段にジャム表示するとともに、画像形成動作を停止する。そして、ジャムした転写紙を取り除きリセットスイッチを押すとジャム表示を消去し、画像形成機の画像形成動作を可能とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
而して、転写紙搬送路の各搬送ローラ間においてジャムが発生した場合は、機体ハウジングの前カバーを開くことにより、ジャムした転写紙を比較的容易に確認することができるため、これを確実に取り除くことができる。しかしながら、定着装置内でジャムが発生した場合には、ジャムした転写紙を確認することが非常に難しい。即ち、定着装置は定着ローラとこの定着ローラと協働する加圧ローラが定着ハウジング内に配設されているので、定着ローラと加圧ローラとのニップ部を通過した転写紙が定着ハウジング内でジャムすると、複数枚の転写紙が蛇腹状となる。この蛇腹状ジャムの発生により後続の転写紙が定着装置の上流側でジャムすると、転写紙搬送路に配設された転写紙検出手段がこれを検出して、ジャムの発生を表示する。このジャム表示によりオペレータが前カバーを開ければ、定着装置の上流側でジャムした転写紙を確認することができるため、この転写紙を取り除くとジャム表示は消去される。即ち、定着ハウジング内には転写紙検出手段を配設することは構造上困難であるため、定着ハウジング内でジャムしていてもこれを検出することができない。従って、ジャム表示が消去されたことにより画像形成が可能となり、複写開始キーが押されて複写動作が行われると、上記のように定着ハウジング内でジャムしているため、定着装置の上流側で再度ジャムが発生する。
【0004】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、転写紙搬送路でジャムが発生した場合には、定着装置を一旦装着位置から外して再度装着位置に位置付けなければ、ジャム表示を継続することにより、ジャム発生時には定着装置内を確認するようにした画像形成機のジャム処理装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記主たる技術的課題を解決するために、本発明によれば、転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置が、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成された画像形成機において、
該転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含む、該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、
該定着装置が該装着位置に位置付けられているか否かを検出する定着装置検出手段と、
該転写紙検出手段および該定着装置検出手段からの信号に基づいて該転写紙搬送路に転写紙がジャムしているか否かおよびジャムが解消したか否かを判定する制御手段と、
該制御手段による判定結果を表示する表示手段と、を具備し、
該制御手段は、該転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出した場合は該転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行い、その後該転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても該定着装置検出手段が該定着装置の該装着位置からの離脱と該装着位置への位置付けを検出しないときは該表示手段へのジャム表示を継続する、
ことを特徴とする画像形成機のジャム処理装置が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に従って構成された画像形成機のジャム処理装置の好適実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0007】
図1および図2には、画像形成機としての静電複写機が示されている。静電複写機は機体ハウジング2を有し、この機体ハウジング2の上面には、複写すべき原稿が載置される静止透明板4が配設されている。また、機体ハウジング2の上面には、自動原稿搬送装置5が透明板4の後側縁に沿って延びる旋回軸線を中心として図1に実線で示す閉位置と2点鎖線で示す開位置との間を旋回自在に装着されている。静電複写機の透明板4上に手動で原稿を載置する場合には、自動原稿搬送装置5を開位置にして透明板4を露呈させ、透明板4上の所要位置に原稿を載置し、そして自動原稿搬送装置5を閉位置にして透明板4およびその上に載置された原稿を覆う。自動原稿搬送装置5を使用して透明板4上に原稿を自動的に搬入し、そして透明板4上から自動的に搬出する場合には、自動原稿搬送装置5は閉位置に位置付けられる。
【0008】
上記機体ハウジング2の前面には、図1に示すように前カバー2a、2aがその側縁を支点として開閉可能に装着されている。前カバー2a、2aの開閉に関連して作動するカバースイッチ6(SW1)が、機体ハウジング2の前面に配設されている。このカバースイッチ6(SW1)は、前カバー2aが閉じられるとON信号を、また前カバー2aが開放されるとOFF信号を後述する制御手段に送る。図示の実施形態においては、機体ハウジング2の手前側上面には操作盤7が配設されている。この操作盤7には複写開始キー8(SW2)、両面複写指定キー9(SW3)、複写部数設定キー10(SW4)、テンキー11(SW5)等の各種キーおよび表示手段12(DSP)が配設されている。
【0009】
機体ハウジング2内の略中央部には、図2に示すように感光体ドラム8が回転自在に配設されている。この感光体ドラム20は、図示しない駆動手段によって矢印20aで示す方向に回転駆動される。この感光体ドラム20の周囲には、矢印20aで示す回転方向に見て順次に、帯電用コロナ放電器21、現像装置22、転写用コロナ放電器23、剥離用コロナ放電器24、クリーニングユニット25および除電ランプ26が配設されている。図示の静電複写機は、上記感光体ドラム20の上方に配設された照射ランプ27、第1のミラー28、第2のミラー29、第3のミラー30、レンズ31、第4のミラー32からなる光学系を具備している。この光学系は、照射ランプ27によって静止透明板4上に置かれた原稿に照射し、その反射光像を第1のミラー28、第2のミラー29、第3のミラー30、レンズ31および第4のミラー32を介して上記感光体ドラム20の外周面上に結像するように構成されている。
【0010】
図示の静電複写機は、上記転写用コロナ放電器23と感光体ドラム20との間の転写域を通して転写紙を搬送する転写紙搬送路35を備えている。転写紙搬送路35における感光体ドラム20より上流側の搬送路351には、搬送ローラ対36と37およびレジストローラ対38が配設されており、これら各ローラ対は図示しない駆動手段によって図において矢印で示す方向に各々回転駆動せしめられる。上記搬送ローラ対36と37との間および搬送ローラ対37とレジストローラ対38との間には、搬送路351を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段としての転写紙検出スイッチ40(SW6)および41(SW7)が配設されている。この転写紙検出スイッチ40(SW6)および41(SW7)は、転写紙を検出しているときはON信号を、また転写紙を検出していないときはOFF信号を後述する制御手段に送る。
【0011】
上述した搬送路351の上流側には、該搬送路351に転写紙を送給する転写紙送給装置43が配設されている。この転写紙送給装置43は、転写紙を収納する転写紙カセット44a、44b、転写紙送出ローラ45a、45b、捌きローラ対46a、46bを具備している。このように構成された転写紙送給装置43の上記各ローラ対は、図示しない駆動手段によって図において矢印で示す方向に各々回転駆動せしめられる。
【0012】
上記転写紙搬送路35における感光体ドラム20より下流側の搬送路352には、転写紙搬送ベルト機構48、定着装置50および排出ローラ対60が配設されており、これら搬送ベルト機構48と定着装置50を構成する後述する定着ローラおよび加圧ローラと排出ローラ対60は、図示しない駆動手段によって図において矢印で示す方向に各々回転駆動せしめられる。上記転写紙搬送ベルト機構48と定着装置50との間および定着装置50と排出ローラ対60との間には、搬送路352を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段としての転写紙検出スイッチ61(SW8)および62(SW9)が配設されている。この転写紙検出スイッチ61(SW8)および62(SW9)は、転写紙を検出しているときはON信号を、また転写紙を検出していないときはOFF信号を後述する制御手段に送る。
【0013】
次に、上記定着装置50について説明する。
図示の定着装置50は、下ハウジング511と上ハウジング512とからなる定着ハウジング51を具備している。この定着ハウジング51内には定着ローラ52と、該定着ローラ52と協働する加圧ローラ53が互いに対向して配設されている。定着ローラ52は上ハウジング512に回転自在に支持され、加圧ローラ53は下ハウジング511に回転自在に支持されている。定着ローラ52は中空状に形成されており、その内部に加熱手段としてのハロゲンランプ54(HET)が配設されている。図示の定着装置50は、上記定着ローラ52の周表面に対向して配設されたローラ温度検出手段としてのサーミスタ55(THM)を備えている。このサーミスタ55(THM)は、定着ローラ52の周表面に近接ないし接触して配設され、その検出信号を後述する制御手段に送る。なお、定着ローラ52の周表面の温度は、定着時にはトナー像の定着に最適な所定の定着温度例えば185°Cに維持され、待機時には該定着温度より低い値に設定された予熱温度例えば150°Cに維持されるようになっている。
【0014】
上述した定着装置50の定着ローラ52および加圧ローラ53は、消耗品であり、従って、所定期間使用されると新しいものに交換される。このため、定着装置50はユニット化され機体ハウジング2内の所定の装着位置に着脱可能に構成されている。図3は、定着装置50が装着位置に位置付けられた状態を示すものである。定着装置50を装着位置に位置付ける際には、機体ハウジング2の前カバー2aを開け、定着装置50を機体フレームを構成する載置台65に手前側から奥側(図3において右から左側)に向けて挿入する。そして、図3に示す装着位置に位置付けられると、定着装置50の定着ハウジング51を構成する下ハウジング511の奥側端壁511aに取り付けられた位置決めピン70が機体フレームを構成する奥側側板66に設けられた位置決め穴661に嵌合する。このとき、定着装置50の定着ハウジング51を構成する上ハウジング512の奥側端壁512aに取り付けられた上記ハロゲンランプ54(HET)のコネクタ71および上記サーミスタ55(THM)のコネクタ72が上記奥側側板66に取り付けられたコネクタ端子73および74と各々接続される。なお、図示の実施形態においては、定着装置50が図3に示す装着位置に位置付けられているか否かを検出する定着装置検出手段としての定着装置検出スイッチ75(SW10)が、上記奥側側板66に配設されている。この定着装置検出スイッチ75(SW10)は、定着装置50が図3に示す装着位置に位置付けられているときはON信号を、また装着位置に位置付けられていないときはOFF信号を後述する制御手段に送る。
【0015】
図示の画像形成機は、図4に示す制御手段100を具備している。制御手段100は、マイクロコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラムを格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、タイマ104(T)と、カウンタ105と、入力インターフェース106および出力インターフェース107とを備えている。このように構成された制御手段100は、機体ハウジング2の側板に配設された電源スイッチ76(SW11)(図2参照)が投入(ON)されると制御プログラムに従って作動するようになっている。制御手段100の入力インターフェース106には、上記カバースイッチ6(SW1)、複写開始キー8(SW2)、両面複写指定キー9(SW3)、複写部数設定キー10(SW4)、テンキー11(SW5)、転写紙検出スイッチ40(SW6)、41(SW7)、61(SW8)、62(SW9)、定着装置検出スイッチ75(SW10)、サーミスタ55(THM)等からの検出信号が入力され、出力インターフェース107から定着ローラ52に配設された加熱手段としてのハロゲンランプ54(HET)、表示手段12(DSP)および上記各部材を駆動するために駆動源である各電動モータ(図示せず)等に制御信号を出力する。
【0016】
以上のように構成された静電複写機は、感光体ドラム20が矢印20aで示す方向に回転駆動せしめられる間に、帯電用コロナ放電器21が感光体ドラム20上の感光体を特定極性に実質上均一に帯電し、次いで、照射ランプ27によって静止透明板4上に置かれた原稿に照射し、その反射光像が第1のミラー28、第2のミラー29、第3のミラー30、レンズ31および第4のミラー32を介して前記感光体ドラム20上に走査露光され、感光体ドラム20上に静電潜像が形成される。しかる後、感光体ドラム20上の静電潜像が現像装置22によってトナー像に現像される。一方、転写紙送給装置43の転写紙カセット44aまたは44bに収納された転写紙が転写紙送出ローラ45aまたは45bから搬送路351に送り出される。搬送路351に送り出された転写紙は、搬送ローラ対36、37によって搬送され、レジストローラ対38で一端停止し、上記感光体ドラム20に形成されるトナー像と同期して転写域に搬送される。転写域に搬送された転写紙は、トナー像が形成された感光体ドラム20と転写用コロナ放電器23の間を通過することによってトナー像が転写される。そして、トナー像が転写された転写紙は、剥離用コロナ放電器24の作用によって感光体ドラム20から剥離され、転写紙搬送ベルト機構48によって定着装置50に搬送され、定着ローラ52と加圧ローラ53との間を通過することによって加熱定着され、排出ローラ対60から排出トレイ63に排出される。また、上述のようにして転写工程が終了した感光体ドラム20は、クリーニングユニット25によってその外周面に付着しているトナーが除去され、更に、除電ランプ26によって感光体表面に除電光が照射され、除電される。
【0017】
次に、上述した画像形成時に転写紙搬送路35中でジャム(紙詰まり)が発生した場合の、制御手段100のジャム処理について、その動作手順の一実施形態を図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
制御手段100は、転写紙搬送路35中に配設された転写紙検出スイッチ40(SW6)、41(SW7)、61(SW8)、62(SW9)のいずれかがONしたか否かをチェックし(ステップS1)、全ての転写紙検出スイッチがONしていなければ他の制御へ移行する。ステップS1において転写紙検出スイッチ40(SW6)、41(SW7)、61(SW8)、62(SW9)のいずれかがONしたならば、制御手段100はステップS2に進んでタイマ104(T)をT1にセットする。このセット時間T1は、転写紙の搬送周期より長い所定の値に設定されている。ステップS2においてタイマ104(T)をT1にセットしたならば、制御手段100はステップS3に進んで転写紙検出スイッチ40(SW6)、41(SW7)、61(SW8)、62(SW9)の全てがOFFしたか否かをチェックする。ステップS3において転写紙検出スイッチ40(SW6)、41(SW7)、61(SW8)、62(SW9)の全てがOFFしたならば、制御手段100は転写紙がジャムすることなく搬送されていると判断して他の制御へ移行する。
【0018】
ステップS3において転写紙検出スイッチ40(SW6)、41(SW7)、61(SW8)、62(SW9)の全てがOFFしなければ、制御手段100はステップS4に進んでタイマ104(T)をセットしてからの経過時間TSがセット時間T1に達したか否かをチェックする。ステップS4において上記経過時間TSがセット時間T1に達しない場合は、制御手段100はステップS3に戻ってステップS3およびステップS4を繰り返し実行する。ステップS4において上記経過時間TSがセット時間T1に達したならば、制御手段100は転写紙搬送路35中で転写紙がジャムしていると判断し、ステップS5に進んで表示手段12(DSP)にジャム表示を行う。なお、ジャム表示は転写紙検出スイッチ40(SW6)、41(SW7)、61(SW8)、62(SW9)のONが継続している箇所を番号等で表示される。
【0019】
上記のようにして転写紙搬送路35中でジャムが発生したと判定して表示手段12(DSP)にジャム表示すると、制御手段100は複写開始キー8(SW2)を押しても画像形成動作を行わない。表示手段12(DSP)にジャム表示されることにより、オペレータはジャムした転写紙を取り除く作業を実施する。以下、制御手段100はジャムした転写紙が取り除かれたか否かを判定するためステップS6乃至ステップS10を実行する。制御手段100は、先ずステップS6においてカバースイッチ6(SW1)がOFFしたか否か、即ち前カバー2aが開けられたか否かをチェックする。カバースイッチ6(SW1)がOFFしなければ前カバー2aが開けられていないので、制御手段100は転写紙を取り除く作業が開始されていないと判断して待つ。ステップS6においてカバースイッチ6(SW1)がOFFしたならば、制御手段100は前カバー2aが開けられて転写紙を取り除く作業が開始されたと判断して、ステップS7に進んで定着装置検出スイッチ74(SW10)がONしてからOFFしたか否かをチェックする。これは、定着装置50を装着位置から取り出して、装着状態では確認困難な定着ハウジング51内でのジャムの有無の確認およびジャムした転写紙を除去した後に装着位置に再び位置付けたかを判定するためである。なお、図示の実施形態においては定着装置50の脱着の判定をするために定着装置検出スイッチ74(SW10)を用いたが、定着装置50の脱着の判定は定着ローラ52の周表面の温度を検出するサーミスタ55(THM)からの温度信号に基づいて行うことことができる。即ち、定着装置50が装着位置から取り出されると定着ローラ52を加熱するハロゲンランプ54(HET)のコネクタ71とコネクタ端子73との接続が外れて定着ローラ52の温度が低下し、定着装置50が装着位置に位置付けられるとコネクタ71とコネクタ端子73とが接続されて定着ローラ52が予熱温度まで加熱されるので、定着ローラ52の温度を検出することによって定着装置50の脱着を判定することができる。
【0020】
ステップS7において定着装置検出スイッチ74(SW10)がONしてからOFFしなければ、制御手段100は定着装置50の脱着が行われていないと判断して待つ。ステップS7において定着装置検出スイッチ74(SW10)がONしてからOFFしたならば、制御手段100は定着装置50の脱着が行われ定着ハウジング51内でのジャムの有無の確認およびジャムした転写紙が除去されたものと判断してステップS8に進む。制御手段100はステップS8において、転写紙検出スイッチ40(SW6)、41(SW7)、61(SW8)、62(SW9)の全てがOFFしたか否かをチェックする。即ち、転写紙搬送路35中でジャムした転写紙が取り除かれたか否かを確認する。ステップS8において上記転写紙検出スイッチの全てがOFFしていなければ、転写紙搬送路35中でジャムした転写紙が全て取り除かれていないので待ち、ステップS8において上記転写紙検出スイッチの全てがOFFしたならば、制御手段100は転写紙搬送路35中でジャムした転写紙が全て取り除かれたものと判断して、ステップS9に進み、カバースイッチ6(SW1)がONしているか否かをチェックする。ステップS9においてカバースイッチ6(SW1)がONしていなければ前カバー2aが閉められたので、制御手段100は未だ転写紙取り除き作業が終了していないと判断して待つ。ステップS9においてカバースイッチ6(SW1)がONしたならば前カバー2aが閉められていないので、制御手段100はジャムした転写紙の取り除き作業が終了したものと判断して、ステップS10に進んで表示手段12(DSP)へのジャム表示を消去する。そして、制御手段100は、ステップS11に進んで表示手段12(DSP)に複写可能表示を行う。
【0021】
以上のように、図示の実施形態においては転写紙搬送路35中でジャムが発生し表示手段12(DSP)にジャム表示されると、転写紙搬送路35にジャムして転写紙を取り除いても定着装置50の脱着を確認しない限り、ジャム表示は消去されない。従って、ジャムが発生した場合は定着装置50を装着位置から一旦取り出すことが義務つけられるため、定着装置50を取り出すことにより、定着ハウジング51内でのジャムの有無の確認およびジャムした転写紙の除去が容易となる。
【0022】
【発明の効果】
本発明による画像形成機のジャム処理装置は以上のように構成されているので、以下の作用効果を奏する。
【0023】
即ち、本発明によれば、制御手段は、転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行うと、その後転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても定着装置検出手段が定着装置の装着位置からの離脱と装着位置への位置付けを検出しないときは表示手段へのジャム表示を継続するので、ジャムが発生した場合は定着装置を装着位置から一旦取り出すことが義務つけられることになる。従って、定着装置を一旦取り出すことにより、定着ハウジング内でのジャムの有無の確認およびジャムした転写紙の除去が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に従って構成された定着装置を備えた画像形成機の一実施形態を示す斜視図。
【図2】
図1の画像形成機の概略構成断面図。
【図3】
図1の画像形成機の装備される定着装置が装着位置に位置付けられた状態を示す要部側面図。
【図4】
図1の画像形成機の制御手段を示すブロック図。
【図5】
図4に示す制御手段のジャム処理動作の一実施形態をフローチャート。
【符号の説明】
2:機体ハウジング
2a:前カバー
4:静止透明板
5:自動原稿搬送装置
6:カバースイッチ(SW1)
7:操作盤
8:複写開始キー(SW2)
9:両面複写指定キー(SW3)
10:複写部数設定キー(SW4)
11:テンキー(SW5)
12:表示手段(DSP)
20:感光体ドラム
21:帯電用コロナ放電器
22:現像装置
23:転写用コロナ放電器
24:剥離用コロナ放電器
25:クリーニングユニット
26:除電ランプ
27:照射ランプ
28:第1のミラー
29:第2のミラー
30:第3のミラー
31:レンズ
32:第4のミラー
35:転写紙搬送路
36:搬送ローラ対
37:搬送ローラ対
38:レジストローラ対
40:転写紙検出スイッチ(SW6)
41:転写紙検出スイッチ(SW7)
43:転写紙送給装置
44a、44b:転写紙カセット
45a、45b:転写紙送出ローラ
46a、46b:さばきローラ対
48:転写紙搬送ベルト機構
50:定着装置
51:定着ハウジング
52:定着ローラ
53:加圧ローラ
54:ハロゲンランプ(HET)
55:サーミスタ(SW6)
60:排出ローラ対
61:転写紙検出スイッチ(SW8)
62:転写紙検出スイッチ(SW9)
63:排出トレイ
71:コネクタ
72:コネクタ
73:コネクタ端子
74:コネクタ端子
75:定着装置検出スイッチ(SW10)
75:電源スイッチ(SW7)
100:制御手段
101:中央処理装置(CPU)
102:リードオンリメモリ(ROM)
103:ランダムアクセスメモリ(RAM)
104:タイマ
105:カウンタ
106:入力インターフェース
107:出力インターフェース
 
訂正の要旨 【訂正の要旨】
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に係る記載、
「転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置が、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成された画像形成機において、
該転写紙搬送路に配設され該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、
該定着装置が該装着位置に位置付けられているか否かを検出する定着装置検出手段と、
該転写紙検出手段および該定着装置検出手段からの信号に基づいて該転写紙搬送路に転写紙がジャムしているか否かおよびジャムが解消したか否かを判定する制御手段と、
該制御手段による判定結果を表示する表示手段と、を具備し、
該制御手段は、該転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出した場合は該転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行い、その後該転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても該定着装置検出手段が該定着装置の該装着位置からの離脱と該装着位置への位置付けを検出しないときは該表示手段へのジャム表示を継続する、
ことを特徴とする画像形成機のジャム処理装置。」
を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「転写紙搬送路に配設され転写紙に転写されたトナー像を加熱定着するための定着装置が、機体ハウジングの所定の装着位置に着脱可能に構成された画像形成機において、
該転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含む、該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、
該定着装置が該装着位置に位置付けられているか否かを検出する定着装置検出手段と、
該転写紙検出手段および該定着装置検出手段からの信号に基づいて該転写紙搬送路に転写紙がジャムしているか否かおよびジャムが解消したか否かを判定する制御手段と、
該制御手段による判定結果を表示する表示手段と、を具備し、
該制御手段は、該転写紙検出手段が所定時間以上転写紙を検出した場合は該転写紙搬送路に転写紙がジャムしていると判定して該表示手段にジャム表示を行い、その後該転写紙検出手段が転写紙を検出しなくても該定着装置検出手段が該定着装置の該装着位置からの離脱と該装着位置への位置付けを検出しないときは該表示手段へのジャム表示を継続する、
ことを特徴とする画像形成機のジャム処理装置。」
に訂正する。
訂正事項b
明細書第3頁第16行乃至第17行の、
「該転写紙搬送路に配設され該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、」
を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「該転写紙搬送路における該定着装置の上流側及び下流側に配設された転写紙検出スイッチを含む、該転写紙搬送路を通過する転写紙を検出する転写紙検出手段と、」
に訂正する。
訂正事項c
明細書第4頁第4行の「につて」を、誤記の訂正を目的として、「について」に訂正する。
訂正事項d
明細書第9頁第13行の「(例えば μsec)」を、誤記の訂正を目的として、削除する。
訂正事項e
明細書第711頁第4行の「したなれば」を、、誤記の訂正を目的として、「したならば」に訂正する。
訂正事項f
明細書第14頁第5行の「50:定着装置」を、誤記の訂正を目的として、削除する。
異議決定日 2002-01-24 
出願番号 特願平11-2142
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B65H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 渡邊 真
山崎 豊
登録日 2000-06-30 
登録番号 特許第3081995号(P3081995)
権利者 京セラミタ株式会社
発明の名称 画像形成機のジャム処理装置  
代理人 世良 和信  
代理人 小野 尚純  
代理人 小野 尚純  
代理人 和久田 純一  

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