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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03B
審判 全部申し立て 特174条1項  G03B
管理番号 1059644
異議申立番号 異議2001-73066  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-07-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-06 
確定日 2002-06-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3187748号「ゴルフボールの運動測定方法」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3187748号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3187748号の請求項1〜8に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明8」という。)についての出願は、平成9年8月4日(優先日;平成8年10月30日)に特許出願され、平成13年5月11日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人 川瀬 清子より特許異議の申立てがなされたものである。

2.特許異議申立ての概要
(1)本件発明
本件発明1は、特許第3187748号の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「表面に文字又はマークを施したゴルフボールを所定位置にセットし、セットされた該ボールをヒットするクラブヘッドのヒット前の通過をセンサー手段で検知し、
このセンサー手段が検知した後に検知信号を制御ユニットのトリガー手段に送り、
このトリガー手段が検知信号を受けてヒットされた前記ボールを撮影するためにセットされたボール位置より所定距離隔たり互いに間隔を置いて横向きにセットされた第1及び第2カメラにタイミングを図り時間をずらして夫々にシャッター信号を送ることにより、第1及び第2カメラが互いに独立してカメラの正面にボールが来たときにボールを撮影し、
撮影されたボールの第1カメラで側方からとらえた打球の映像と第2カメラで側方からとらえた打球の映像とを比較し、これら両映像間に現れた、ボール表面に施された前記文字又はマーク上の少なくとも1点の両映像間における動きに基づいてヒットされたボールの運動を解析することを特徴とするゴルフボールの運動測定方法。」

(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人は、本件発明1〜本件発明6、及び本件発明8は、甲第1号証(特開平7-43152号公報)、甲第2号証(特開平3-210282号公報)、及び甲第3号証(特開平6-22320号公報)に記載された発明をもとに容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、その特許は、特許法第113条第2号に該当するので取り消されるべきであり、また、本件発明1〜本件発明8は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるので、その特許は、特許法第113条第1号に該当するので取り消されるべきである旨主張している。

3.特許法第17条の2第3項について
異議申立人は、本件請求項1における「第1及び第2カメラが互いに独立してカメラの正面にボールが来たときにボールを撮影し」の記載が、当初明細書または図面(以下、「当初明細書等」、という。)に記載されたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないと主張している。
まず、第1及び第2カメラが互いに独立してボールを撮影することが、当初明細書等に記載されていたかどうかをみると、段落【0010】、【0011】の「・・・次にセンサー13Bによる検知信号を受けて各カメラ14,15,18及びストロボ19へトリガー出力が作用する。トリガー出力は適用するヘッドスピードを、例えば複数予め測定しておき、これらヘッドスピードに対応するディレイタイムt2及びシャッター間隔t3,t4をセットする。【0011】図4は制御ユニット16のモニター部分に映し出された打球の表示を示す。モニター画面40を4分割し、第1画面40Aに第1カメラ14で側方からとらえた打球、第2画面40Bに第2カメラ15で側方からとらえた打球がそれぞれ映し出され、」の記載、及び図2,3,4から、当初明細書等に記載されていたことは、明らかである。
次に、カメラの正面にボールが来たときにボールを撮影することが、当初明細書等に記載されていたかどうかを検討する。「正面」の意味は、「まっすぐ前。互いに正しく向き合う方向。」(大辞林第二版)である。この意味を、カメラとの関係で理解したとき、カメラのまっすぐ前、すなわちカメラで正しく撮影できるような位置と解するのが適当である。当初明細書等には、段落【0011】に「図4は制御ユニット16のモニター部分に映し出された打球の表示を示す。モニター画面40を4分割し、第1画面40Aに第1カメラ14で側方からとらえた打球、第2画面40Bに第2カメラ15で側方からとらえた打球がそれぞれ映し出され、」と記載されており、そのような画像を得るために段落【0010】に具体的撮影方法が、図2,3を参照して説明されている。したがって、カメラの正面にボールが来たときにボールを撮影することが、当初明細書等に記載されていたことは、明らかである。
したがって、本件発明1は、当初明細書等に記載された発明であり、本件発明2〜8も、本件発明1を引用するもので、上記の異議申立人の指摘した構成を含むものであるが、本件発明1で検討したものと同様の理由により、当初明細書等に記載された発明である。

4.特許法第29条第2項について
(1)甲第1号証乃至甲第3号証記載の発明
甲第1号証には、「視界を通る物体の飛行の初期状態をモニタリングするシステムであって、
(a) 物体を支持する支持手段と、
(b) 少なくとも2つのカメラをその中に固定したポータブルハウジングと、
(c) 前記ポータブルハウジング内に配置された、感光パネルを有する第1のカメラ装置であって、前記物体がその飛行の初期の間に通過する視界に焦点を合わせられている第1のカメラ装置と、
(d) 前記ポータブルハウジング内に配置され、前記視界に焦点を合わせられている、感光パネルを有する第2のカメラ装置と、
(e) 前記物体が前記視界を通過するときに少なくとも2度前記第1と第2のカメラ装置をシャッタリングまたはゲーティングする手段と、
(f) 前記物体上に位置する3つ以上の対比区域であって、前記第1と第2のカメラ装置のシャッターが開いているときに、該対比区域から放出される光が前記感光性パネルに達して該感光パネル上に光パターンを形成し、その結果アナログイメージ信号が発せられるように位置した対比区域と、
(g) 前記ポータブルハウジング内またはその近傍に配置された、前記アナログイメージ信号を受信して、前記物体の飛行の初期状態における弾道、速度およびスピンを求めるためのイメージデジタル化手段、
とからなることを特徴とするシステム。」(【請求項1】)、及び「校正を完了して、カメラ18、19から約76cm(約30インチ)に位置したボール8を、三次元視野35を通じて打上げる(図2)。打上げにより、打撃音が音響センサ6により拾われ、この音響センサ6が、カメラ18とカメラ19のシャッターを開きカメラ18およびカメラ19内のイメージセンサパネルを6つのボールドットからの光に露出させる信号を送信する。100マイクロ秒後、フラッシュライト22および23が6つのボールドットを照らすフラッシュを放つ。800マイクロ秒後、フラッシュライト24および21が視野35内の初期飛行路に沿って約10から15cm(約4から6インチ)移動している6つのボールドットを照らすフラッシュを放つ。フラッシュは、千分の一から十秒と百万分の数秒との間持続する。カメラ18および19において、非常に小さな窓を用いることにより、周囲の光を弱くしてストロボの光を強くする。2つの位置でドット20a-fで光が反射すると、その光はセンサパネル18p、19pに達して対応するパネル区域25a-fが得られる。
既知のボール8の寸法、カメラ操作間の既知の時間およびカメラ間の既知の幾何学関係を用いて、外部コンピュータ回路は、各々のスナップショットの時間での共通の座標系における各々の強調されたスポットのX、YおよびZ位置を計算することができる。」(段落【0018】【0019】)が記載されている。

甲第2号証には、「打撃直後の球体に関してその中心の所定方向の線速度と所定直径のまわりの角速度とを計測する装置において、
外周面上の対向する2点で互いに交差するように2本の線状の標識が付された球体と;
打撃直後のこの球体をその移動速度に応じた時間間隔で真上方向と、この真上方向および前記打撃の方向に直角な方向とからそれぞれ少なくとも2回撮像する2個の撮像手段と;
この各撮像手段の映像信号から、前記球体の中心位置の移動量を求め、この移動量と前記時間間隔とから前記球体の所定方向の線速度を演算する第1演算部と;
前記各撮像手段の映像信号から、前記標識の所定箇所の所定直径まわりの移動角度を求め、この角度と前記時間間隔とから所定直径のまわりの角速度を演算する第2演算部と;
を備えることを特徴とする打撃直後の球体に係る速度計測装置。」(公報第1頁「特許請求の範囲」)、が記載されている。

甲第3号証には、「そのため、例えば、上記時間(1/60sec )間隔以内で撮像するために、複数台のCCDカメラを設置し、時間をずらして1つの球状物体を撮像しようとすると、撮像する視点が夫々異なるため、それによって得られた画像では球状物体の移動速度等の解析が至難となり実用的ではなかった。」(段落【0005】)、「しかして、2は3板式固体撮像素子───以下CCDと略記する───カメラであって、撮像レンズ3、3色分解プリズム4及び第1・第2・第3撮像素子5a,5b,5cを備えている。」(段落【0011】)、「次に、上述の如く第1タイマー回路12a及び第2タイマー回路12bにより第2・第3撮像素子5b,5cが、順次、所定の短い時間(例えば1/1000sec)間隔で作動し、打ち出されてゴルフクラブヘッド16より少し離れた位置の(符号Bで示す)ゴルフボール、及び、ゴルフクラブヘッド16よりさらに離れた位置の(符号Cで示す)ゴルフボールが撮像される。」(段落【0024】)、「この図3の符号Aのゴルフボールとゴルフクラブヘッド16の画像によって、インパクトの状態、例えば、ゴルフボールがゴルフクラブヘッド16のフェース19のどの部位に当たっているか、及び、ゴルフクラブヘッド16の向き(フェース19の傾き具合等)をチェックできる。」(段落【0025】)、「あるいは、符号B,Cのゴルフボールの画像によって、例えば、符号B,Cのゴルフボールの中心点を結ぶ直線Sから、地面18(又は水平面)に対するゴルフボールの打ち出し角度θ1を求めることができ、符号B,Cのゴルフボールの中心点間の距離Lとゴルフボールが距離Lを進む間の時間───即ち第2・第3撮像素子5b,5cの作動時間差───から、ゴルフボールの打ち出し速度(初速)を求めることができる。」(段落【0026】)、及び「さらに、符号B,Cのゴルフボールのマーキング17の傾き(回転)角度θ2と上記第2・第3撮像素子5b,5cの作動時間差から、ゴルフボールの回転数(即ちスピンのかかり具合)を求めることができ、その回転方向や、上記打ち出し角度θ1及び打ち出し速度等により、ゴルフボールの弾道等を数値的に解析できる。」(段落【0027】)が記載されている。

(2)対比・判断
そこで、本件発明1と甲第1〜3号証に記載の発明とを対比すると、後者は、「第1及び第2カメラにタイミングを図り時間をずらして夫々にシャッター信号を送ることにより、第1及び第2カメラが互いに独立してカメラの正面にボールが来たときにボールを撮影」した点についての記載がなく、示唆もない。
異議申立人は、甲第3号証の段落【0005】の記載事項から、上記の構成が記載されていると主張しているが、該記載事項は、複数台のCCDカメラを設置し、時間をずらして1つの球状物体を撮像するというのみで、それ以上の具体的構成を開示しておらず、しかも、その方法では、球状物体の移動速度等の解析が至難となると記載されているので、甲第1,2号証と組み合わせを阻害する要因になると判断される。
したがって、本件発明1は、異議申立人が提出した証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

また、本件発明2〜6、8は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、上記甲第1〜3号証に記載の発明から当業者が容易に発明できたものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の理由及び証拠によっては、本件発明1〜8についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1〜8についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-06-05 
出願番号 特願平9-208793
審決分類 P 1 651・ 55- Y (G03B)
P 1 651・ 121- Y (G03B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 柏崎 正男
北川 清伸
登録日 2001-05-11 
登録番号 特許第3187748号(P3187748)
権利者 ブリヂストンスポーツ株式会社
発明の名称 ゴルフボールの運動測定方法  
代理人 畑中 芳実  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 牧村 浩次  
代理人 高畑 ちより  
代理人 鈴木 亨  

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