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審決分類 審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C23C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C23C
審判 一部申し立て 発明同一  C23C
審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 一部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1061161
異議申立番号 異議2000-70837  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-03-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-02-29 
確定日 2002-04-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2941850号「耐摩耗被覆膜及びその形成方法」の請求項1〜9、及び、11〜17に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2941850号の請求項1〜8、及び、10〜16に係る発明の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2941850号は、平成元年7月20日に出願されたものであって、平成11年6月18日に特許の設定登録がなされ、その後、日立ツール株式会社から特許異議の申立がなされ、これに基づいて、取消理由通知がなされ、平成12年11月30日付けで特許権者より明細書の訂正請求がなされ、その後、再度、取消理由通知がなされ、指定期間内である平成14年3月4日に、先の訂正請求が取り下げられ、そして、新たに、明細書の訂正請求がなされたものである。
なお、先の取消理由通知後に、特許異議申立人より特許異議申立取下書が提出されたが、特許法第120条の3第1項の規定に適合せず、同法第120条の6第1項によって準用する同法第133条の2第1項の規定により却下されたものである。

II.訂正の適否
II-1.訂正事項
本件明細書につき、訂正請求書に添付された訂正明細書に記載されるとおりの次の(a)〜(f)の訂正を求めるものである。
(a)特許請求の範囲の請求項1における、
「摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の平面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜において、各エッジ部の表面領域における該被膜の組成は各エッジ部から離れた表面領域における該被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少くとも2%の差を有する事を特徴とする被膜。」を、
「摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の表面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜において、各エッジ部の表面領域における該被膜の組成は各エッジ部から離れた表面領域における該被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少くとも2%の差を有し、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する事を特徴とする被膜。」と訂正する。
(b)特許請求の範囲の請求項12における、
「少くとも一つのエッジ部を有し摩滅にさらされる工具その他の部品に対して真空室内で硬質化合物膜を物理蒸着法又はプラズマ化学蒸着法により被覆する方法において、該硬質化合物は少くとも1種の金属元素を含みエネルギーに富む放射によりイオン化されプラズマを形成し電位差により生じる電場によって該工具その他の部品に適用され、該工具その他の部品の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により生じるイオン衝撃は各エッジ部の表面領域において高密度の電場によって強められ、その結果各エッジ部から離れた表面領域に比較して各エッジ部の表面領域に形成された膜の金属元素濃度は原子百分率で少くとも2%の差を有する事を特徴とする方法。」を、
「少くとも一つのエッジ部を有し摩滅にさらされる工具その他の部品に対して真空室内で硬質化合物膜を物理蒸着法又はプラズマ化学蒸着法により被覆する方法において、該硬質化合物は少くとも2種の金属元素を含みエネルギーに富む放射によりイオン化されプラズマを形成し電位差により生じる電場によって該工具その他の部品に適用され、該工具その他の部品の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により生じるイオン衝撃は各エッジ部の表面領域において高密度の電場によって強められ、その結果各エッジ部から離れた表面領域に比較して各エッジ部の表面領域に形成された膜の金属元素濃度は原子百分率で少くとも2%の差を有し、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域より耐摩耗性が高くなる様にする事を特徴とする方法。」と訂正する。
(c)特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(d)請求項6〜18の請求項を一つずつ繰り上げる。
(e)訂正後の請求項5の本文中で引用する請求項番号を「4又は5」から「4」へ訂正し、訂正後の請求項12、13、14、15及び17の各本文中で引用する請求項番号を「12」から「11」へそれぞれ訂正し、訂正後の請求項16の本文中で引用する請求項番号を「16」から「15」へ訂正する。
(f)明細書の第9頁第19行〜第10頁第6行(特許公報第5欄第33〜39行)目における、
「本発明によれば、金属元素組成に関し、エッジ部の表面領域をその他の表面領域に比較した場合少くとも原子百分率で2%(2at%)の濃度差を与える事ができる。又本発明にかかる方法によれば、基板の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により上述した濃度差が、自動的にエッジ部の表面領域における電場集中によって生じるイオン衝撃によって達成される。」を、
「本発明によれば、金属元素組成に関し、エッジ部の表面領域をその他の表面領域に比較した場合少くとも原子百分率で2%(2at%)の濃度差を与える事ができ、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する。又本発明にかかる方法によれば、基板の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により上述した濃度差が、自動的にエッジ部の表面領域における電場集中によって生じるイオン衝撃によって達成される。」と訂正する。

II-2.訂正の目的の適否
上記(a)の訂正では、蒸着される部品の部位を、「部品の平面」から「部品の表面」と限定するものであり、また、被膜につき、「エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する」という物性を更に付加するものであり、いずれの訂正事項も、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記(b)の訂正では、硬質化合物の組成につき、「少くとも1種の金属元素を含み」から「少くとも2種の金属元素を含み」とその規定する内容を限定するものであり、また、被覆方法につき、「エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域より耐摩耗性が高くなる様にする」という条件を更に付加するものであり、いずれの訂正事項も、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記(c)の訂正は、請求項を削除するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記(d)及び(e)の訂正は、上記(c)の請求項5の削除に伴い、それ以降の請求項を表現する番号を、繰り上げて整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記(f)の訂正は、上記(a)及び(b)の特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載をこれに整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

II-3.新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(a)の訂正における、工具その他の部品の表面に蒸着することは、明細書第13頁第8〜11行(特許公報第6欄第44〜47行)等の記載に基づくものである。
次いで、上記(a)の訂正における「エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する」こと及び上記(b)の訂正における「エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域より耐摩耗性が高くなる様にする」ことは、明細書第11頁第8〜18行(特許公報第6欄第9〜18行)等の記載に基づくものである。
次に、上記(c)の訂正は請求項を削除するだけのものであり、また、上記(d)〜(f)は、明細書の記載を整合させるだけのものであり、いずれも、明細書の記載に基づくものである。
よって、上記(a)〜(f)の訂正は、明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、新規事項の追加には当たらない。
そして、上記(a)〜(f)の訂正は、発明の目的の範囲内でなされるものであり、ないしは、明細書の記載を整合させるだけのものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

II-4.訂正の適否の結論
よって、上記訂正請求は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について
III-1.本件発明
本件特許第2941850号の請求項1〜8及び10〜16に係る発明は、上記したとおり、平成14年3月4日付で訂正請求がなされ、その請求どおり訂正された明細書の特許請求の範囲に記載される次のとおりのものである。
【請求項1】摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の表面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜において、各エッジ部の表面領域における該被膜の組成は各エッジ部から離れた表面領域における該被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少くとも2%の差を有し、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する事を特徴とする被膜。
【請求項2】該硬質化合物は窒素、炭素、ホウ素、硅素又は酸素から選ばれる1種又は2種以上の非金属元素を含む請求項1に記載の被膜。
【請求項3】該硬質化合物はアルミニウムとチタンの2種の金属元素を含む請求項1に記載の被膜。
【請求項4】該硬質化合物はAl-Ti-N成分系である請求項3に記載の被膜。
【請求項5】該硬質化合物は追加の金属又は非金属元素を含む請求項4に記載の被膜。
【請求項6】部分的若しくは全体的に高速鋼からなる工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項7】部分的若しくは全体的に硬質金属からなる工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項8】部分的若しくは全体的にセラミックと金属の複合材料であるサーメットからなる工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項10】部分的若しくは全体的に下塗り層としてTi-N系、Ti-C-N系又はTi-C系の膜を有する工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項11】少くとも一つのエッジ部を有し摩滅にさらされる工具その他の部品に対して真空室内で硬質化合物膜を物理蒸着法又はプラズマ化学蒸着法により被覆する方法において、該硬質化合物は少くとも2種の金属元素を含みエネルギーに富む放射によりイオン化されプラズマを形成し電位差により生じる電場によって該工具その他の部品に適用され、該工具その他の部品の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により生じるイオン衝撃は各エッジ部の表面領域において高密度の電場によって強められ、その結果各エッジ部から離れた表面領域に比較して各エッジ部の表面領域に形成された膜の金属元素濃度は原子百分率で少くとも2%の差を有し、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域より耐摩耗性が高くなる様にする事を特徴とする方法。
【請求項12】該プラズマはイオン化された金属原子及び非金属原子からなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】該プラズマを支える為に真空室内に希ガスを導入する請求項11に記載の方法。
【請求項14】該硬質化合物の少なくとも1種の成分を反応性ガスとして真空室内に導入する請求項11に記載の方法。
【請求項15】物理蒸着法において高温によりイオン化を促進し、該電位差を-50Vから-150Vの範囲に下げる請求項11に記載の方法。
【請求項16】該電位差は約-100Vに設定される請求項15に記載の方法。

III-2.特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として
甲第1号証:J.Vac.Sci.Technol.A5(4),Jul/Aug1987,p2173-2179
甲第2号証:Surface and Coatings Technology,33(1987),
p117-132,
甲第3号証:特開昭62-56565号公報、及び、
甲第4号証:特開平1-252304号公報を引用し、
(イ)本件請求項1〜9及び11〜17(訂正後の請求項1〜8及び10〜16)に係る発明は、甲第1、2又は3に記載された発明であり、また、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであって、それらの特許は、特許法第29条第1項第3号、また、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり(理由-イ)、
(ロ)本件請求項11(訂正後の請求項10)に係る発明は、甲第4号証をもって引用された本出願の日前に出願され出願後に出願公開された明細書に記載された発明と同一であって、その特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり(理由-ロ)、
(ハ)本件請求項1、5及び6項(訂正後の請求項1及び5)に係る発明の特許は、特許法第36条の規定を満たしていない特許出願についてなされたものであり(理由-ハ)、したがって、それらの特許は取り消されるべきものである旨と主張するものと解される。
なお、特許異議申立書中、特許異議申立の理由について、(3)申立の根拠の項、(6)本発明と証拠の対比の項、及び(7)結びの項の記載が一致しておらず、したがって、その理由を最も網羅的に含む該(3)申立の根拠の項の記載内容を基に、該(6)本発明と証拠の対比の項の記載も参照したうえで、特許異議申立の理由を、上記のとおりのものとした。

III-3.証拠の記載内容
甲第1号証には、チタニウム元素、ジルコニウム元素、及びアルミニウム元素からなる二元系、三元系及び四元系窒化物の工業的沈積と題し、次のことが記載されている。
(A-1)「高速鋼と結合カーバイドの基体に用いられた(Ti,Al)N,(Ti,Zr)N及び(Ti,Al,V)Nの被膜の耐摩耗性は、化学蒸着(CVD)及び物理蒸着(PVD)されたTiNの被膜に比べ、改善されることが見出された。Ti:Alが50:50のat.%ターゲットより製造された(Ti,Al)Nフィルムにより被覆された高速ドリルは、ある場合には、TiNで従来型のイオンプレートされた工具よりも3倍までも良い性能を示す。・・・・。製法と新多成分硬質被膜の特性との基本的な相関関係は確立されている。工業的に有用なイオンプレーティング方法において、プラナーマグネトロン源と粉末冶金学的に調製したターゲットは開発され、生産条件において実証されている。この書類の最初の部分は、新しい被覆物質の基礎研究開発について記載する。二番目の部分には、ダブルカソード配置のマグネトロン源によるスパッタイオンプレーティング方法を用いた、バッチタイプ及びインラインPVDコータにおける工業的応用が含まれる。最後には、種々の設定から導かれた被覆切断工具の耐摩耗性テストが、新多成分皮膜の顕著な耐摩耗性の挙動を示す。」旨(第2173頁第10〜24行)
(A-2)「この調査は、マグネトロンスパッタイオンプレーティングによる新硬質化合物物質の開発を含む。先のTiNの調査に基づいて、Ti-Al-N,Ti-Zr-N,Ti-Al-Zr-NとTi-Al-V-N系の新物質が研究された。」(第2173頁左欄下から第11行〜下から第7行)
(A-3)「III.実験研究作業
dc反応モードでマグネトロンスパッタリング源を用い、結合カーバイド-タイプM15[82at.%WC,11at.%(Ti,Ta,Nb)C,7at.%Co]上に、薄層が沈積された。Leybold-HeraeusZ400のスパッタリングプラントにより、その被膜が調製された。主要なパラメータと実験的手法は先に(文献)述べられている。種々のターゲット物質が用いられた・・・・。
高密で均質な被膜が、全てのターゲットにより蒸着している。X線回析及びマイクロプローブ分析によれば、不均質性や濃度の違いが見出されなかった。」旨(第2174頁左欄第24〜42行)
(A-4)「IV.Ti-Al-Nの三成分化合物被膜
Ti-Al-N化合物については有利なことに沈積速度が高いことが実証された。6W/cm3のパワーで焼結ターゲットによる沈積速度は、TiNが4μm/hであるのに対し、7μm/hに達する。パワーを増すことにより、10μm/h及びそれ以上の沈積層度が容易に実現できる。
アルミニウム含有量に応じて種々の窒素分圧の下で、微細強度は2200と2400HV0.05の間の値を達成する。Ti-Al-N被膜の付着力は、スクラッチテスト器具により実証された。60Nの臨界的負荷は、最大微細硬度を示す被膜につき検査された。
構成組織の調査は、X線回析とエレクトロンプローブミクロ分析(EPMA)により行われた。最初に予想したTi2AlN型のH相は、回析試験で測定されなかった。その代わりとして、キュービック-フェース-センター構造の干渉バンドが顕れた。図1は、良く知られたTiNのX線パターンと、(Ti,Al)N固溶体のシフトピークを示す。TiN格子のTi原子はアルミニウム原子によって置き換わり、そして(Ti,Al)Nの型に至る。
より小さなアルミニウム原子によって、アルミニウム含有量の高まりと共に、TiNセルがますます減縮される(図2)。(Ti,Al)Nの構成物には、EPMAにより29at.%までのアルミニウムが検出できるであろう。真空下、1000℃/3hでアニーリングテストが実施され、被膜のピーリング及びクラッキングは観察されなかった。」旨(第2174頁左欄下から第6行〜右欄第21行)
(A-5)「適切な付着力を達成するため、純粋のアルゴン雰囲気中で、マグネトロンで高められたイオンエッチングがスパッタリングに先行して行われる。スパッタイオンプレーティングプロセスの間、カソードで放散されるパワー密度は7.5W/cm2であった。50:50ターゲットからのTiAlフィルムの沈積のためのバイアス電位は-110Vであり、他の全てのターゲット構成では-150Vであった。TiAlZrターゲットの場合、放電時の全圧は2×10-2mbarに調節された。結果のスパッタリング電位は、-500と-520Vの間で変動した。」旨(第2176頁右欄第3〜11行)
(A-6)「四成分系の(Ti,Al,V)Nと(Ti,Al,Zr)Nが被覆されたカーバイド工具の切断特性テストが、先の特性テストに比べて過酷な条件である224m/minで、行われた。・・・。図11には、PVD-(Ti,Al,V)N被覆カーバイドインサートの優位性が示される。」旨(第2177頁左欄本文第19行〜右欄本文第2行)
(A-7)「X.工業的硬質化合物被膜の耐摩耗性テスト
Leybold-Heraeus(LH)の上記したスパッタイオンプレーティングプロセスにより、(Ti,Al)N被膜がHSSドリルの上に沈積した。三つの工具製造者のところと同じように、被覆品につき、穴あけテストが工具製造者のところで実施された。6mmの直径のドリルはTiAl50:50のターゲットにより被覆された。・・・・。図12はこれらのテスト結果を示し、その(Ti,Al)Nの被覆ドリルの優れた特性を示す。」旨(第2177頁右欄本文第7〜20行)
(A-8)インラインスパッタイオンプラントA1000.の例(第2175頁右下段の図5)。カソードの配列の例(第2176頁の左上段の図6)。窒素フローの(Ti,Al,Zr)Nの沈積速度に与える影響を表すグラフ(同頁左下段の図7)。TiNと(Ti,Zr)Nの切断後の被膜のAES表面分析を表すグラフ(第2177頁左下段の図10)

甲第2号証には、イオンプレートされたNbN,ZrN,TiN及び(Ti,Al)Nの被膜の切断性能の比較と題し、次のことが記載されている。
(B-1)「四元系の(Ti,Al,V)Nと同じように、チタニウム、ジルコニウム及びニオビウムの3つの耐火材料の二元系窒化物、そして三元系の(Ti,Al)Nの被膜が、反応性3極イオンプレーティングにより、粉末冶金学的に調製された高速度鋼(PM-HSS)インサート上に、沈積された。被覆工具は、それから、硬化し、焼き戻されたAISI4140鋼の乾式削りによりテストされた。・・・。しかし、TiN及び(Ti,Al)Nのようなチタンベースの窒化物フィルムは、増加する切断性能を示し、基体電流密度の増加に伴ってより微細な構造を示すので、非常に適していると思われる。・・・。最も高い削り特性は、-100Vの基体バイアスで達成された。」旨(第117頁第9〜20行)
(B-2)「図3に示されるように、PM-HSS上のTiNフィルムはその性能において大きな変化を示した。TiN被膜は、削り試験において観察されるそれらの性能に応じて容易に二つのグループに分けられる。グループ1は低い性能に該当し、被膜8-12を含んでいた。それらは、高い基体バイアス(-150V)と低い電流密度のもので、一般に薄く、基体は回転していた。基体バイアスの効果は、被覆12(-150V)と13(-100V)とを比べることにより(他の全ての点では、ほとんど同じ製法要素で)、研究できる。・・・。TiNフィルム12は、13より相当に厚い(それぞれ、3.7μm及び2.8μm)けれども、被膜13の削り性能はずっと優れている。」旨(第128頁第1〜14行)

甲第3号証には、以下のことが記載されている。
(C-1)「この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであって、WC基超硬合金や、TiC基サーメットなどの各種のサーメット、さらに高速度鋼などで構成された基体部材の表面に、(Ti,Al)C,(Ti,Al)N,および(Ti,Al)CNのうちの1種の単層または2種以上の複層からなる硬質被膜層を0.5〜10μmの層厚で形成してなる耐摩耗性のすぐれた表面被覆硬質部材に特徴を有するものである。」(第2頁左上欄第9〜17行)
(C-2)「切削チップを用意し、この切削チップを公知のイオンプレーティング装置内に装入し、またこの装置内に置かれたるつぼにはTiとAlの固溶体を入れ、この状態でまず装置内の真空度を5×10-3mmHgの雰囲気として、基体部材に-1000Vの電荷をかけて、これを十分に洗浄し、500℃に加熱した後、Arを脱気し、代わりにN2およびC2H2(アセチレン)のうちのいずれか一方、あるいは両方を200cc/minの割合で流して、前記切削チップの表面に、・・・硬質被覆層を形成することによって、本発明表面被覆硬質部材としての本発明表面被覆切削チップ1〜8をそれぞれ製造した。」(第2頁右上欄第11行〜左下欄第5行)
(C-3)「上述のように、この発明の表面被覆硬質部材は、・・・硬質被覆層で被覆されているので、これを切削工具や耐摩工具などとして使用した場合に、すぐれた耐摩耗性を示し、長期に亘ってすぐれた性能を発揮するのである。」(第4頁左下欄第9〜14行)
甲第4号証には、以下のことが記載されている。
(D-1)「炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、および高速度鋼のうちのいずれかで構成された硬質材料基体の表面に、炭化チタン、炭窒化チタン、および窒化チタンのうちの1種の単層または2種以上の複層からなる平均層厚:0.5〜10μmの付着強化層を介して、TiとAlの複合炭化物、複合炭窒化物、および複合窒化物のうちの1種の単層または2種以上の複層からなる平均層厚:0.5〜5μmの硬質被覆層を形成してなる表面被覆硬質材料製切削工具。」(特許請求の範囲)
(D-2)「実施例2
基体として、・・・TiCN基サーメットで構成され、かつJIS・SNPR432の形状をもった切削チップを用意し、この切削チップの表面に、イオンプレーティング装置にて、通常の条件で、付着強化層としてのTiN:3μmと、硬質被覆層としての(Ti,Al)N:2μm(いずれも平均層厚を示す)を形成することによって本発明被覆切削工具11を製造した。」(第3頁左下欄第17行〜右下欄第7行)

III-4.対比、判断
III-4-1.理由-イ(特許法第29条第1項第3号、及び第29条第2項)について
訂正後の本件請求項1に係る発明(以下、適宜、「訂正発明1」という)について
本件明細書の記載によれば、訂正発明1は、エッジ部を有する工具その他の部品の基板の耐摩耗性を改良することを目的とするものであり(特許公報第5欄第18〜31行等を参照)、その構成として、2種以上の金属元素を含む硬質化合物からなる被膜において、「エッジ部の表面領域における被膜の組成はエッジ部から離れた表面領域における被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少なくとも2%の差を有する」という構成を具備することにより、その余の構成と相俟って、エッジ部を有する工具その他の部品に対して高い寿命を付与することができたものであって(特許公報第5欄第48行〜第6欄第18行、実施例の記載)、かかる少なくとも2%という金属元素の濃度差に関する構成を採択することによって、上記発明の目的を達成できたものである。
これに対して、甲第1号証には、スパッタイオンプレーティングプロセスによりHSSドリルの表面に(Ti,Al)N被膜を形成すること〔前記(A-1)、(A-2)及び(A-7)を参照〕、及び、PVDによりカーバイド工具に(Ti,Al,V)N被覆を施すことが記載されており〔前記(A-1)、(A-2)及び(A-6)を参照〕、したがって、甲第1号証に記載の発明は、訂正発明1の構成のうち、
「摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の表面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜」の構成を、実質上、具備するものである。
しかし、甲第1号証のものでは、訂正発明1の「エッジ部の表面領域における被膜の組成はエッジ部から離れた表面領域における該被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少なくとも2%の差を有する」という構成については示唆されない。
甲第1号証のものは、むしろ、前記(A-3)により、「高密で均質な被膜が、・・・蒸着している。・・・、不均質性や濃度の違いが見出されなかった。」とされるように、被膜が均質なものを製造しており、したがって、その被膜中の金属元素についても均質なものが形成されるだけであって、訂正発明1の如く、金属元素の濃度差を設けること、更には、2%という金属元素の濃度差を設けることにつき配慮するところが何もない。
次に、甲第2号証には、前記(B-1)により、削りないしは切断機能を有する被覆工具につき、その被覆物を、(Ti,Al)Nの窒化物で構成し、反応性3極イオンプレーティングにより沈積させたことが記載されており、したがって、甲第2号証に記載の発明は、訂正発明1の構成のうち、
「摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の表面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜」の構成については具備するものである。
しかし、甲第2号証のものでは、金属元素の濃度の不均一化に着目するところはなく、したがって、甲第2号証のものからは、訂正発明1の「エッジ部の表面領域における被膜の組成はエッジ部から離れた表面領域における被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少なくとも2%の差を有する」という構成が何も示唆されない。
次いで、甲第3号証には、基体部材の表面に、イオンプレーティング装置により(Ti,Al)C,(Ti,Al)N,および(Ti,Al)CNの層からなる硬質被膜層を形成してなる耐摩耗性の優れた切削工具が記載されており〔前記(C-1)〜(C-3)〕、したがって、甲第3号証に記載の発明は、訂正発明1の構成のうち、
「摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の表面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜」の構成を、実質上、具備するものである。
しかし、甲第3号証のものでは金属元素の濃度につき着目するところはなく、したがって、甲第3号証のものからは、訂正発明1の「エッジ部の表面領域における被膜の組成はエッジ部から離れた表面領域における被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少なくとも2%の差を有する」という構成が何も示唆されない。

特許異議申立人は、プラズマと基板又は工具との間の電位差につき言及し、当該電位差が訂正発明1のものと共通するから、金属元素濃度が原子百分率で少なくとも2%の差を有するという構成は、甲第1及び2号証による蒸着プロセスにより作製された公知な被膜を言い換えたに過ぎない旨主張する。しかし、蒸着に際しては、当該電位差の条件のみで被膜の最終的な特性が決定されるものではなく、これら電位差の条件の外に、電流密度等の各種の多数の条件が深く関与するものである。そして、甲第1及び2号証においては、当該電位差の選定に加え、金属元素濃度の差を少なくとも2%とするところの電流密度等の条件を選定したとする事実も示されないものである。したがって、甲第1及び2号証において、訂正発明1の被膜を製造するためのプラズマとバイアス電位差又は基体バイアス電位差に関する条件が開示されるとしても、それだけで、訂正発明1の膜が甲第1及び2号証で公知な膜であるとすることはできない。

このように、甲第1号証〜甲第3号証のいずれにも、2種以上の金属元素を含む硬質成分系被膜において、高い寿命を付与するために、「エッジ部の表面領域における被膜の組成はエッジ部から離れた表面領域における該被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少なくとも2%の差を有する」という構成を採択することが示唆されず、また、そのことを導き出す動機付けもなく、当該構成に当業者が容易に想到できるものではない。
したがって、訂正発明1は、甲第1、2又は3号証に記載された発明であるということができないばかりでなく、甲第1〜3号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明することができたということができない。

訂正後の本件請求項2〜8及び10に係る発明(以下、適宜、それぞれ、「訂正発明2〜8及び10」という)について
訂正発明2〜8及び10は、請求項1の記載を直接又は間接的に全て引用するものであり、したがって、訂正発明1について記載した理由と同じ理由により、甲第1、2又は3号証に記載された発明であるということができないばかりでなく、甲第1〜3号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明することができたということができない。

訂正後の本件請求項11に係る発明(以下、適宜、「訂正発明11」という)について
本件明細書の記載によれば、訂正発明11は、エッジ部を有する工具その他の部品の基板の耐摩耗性を改良することを目的とするものであり(特許公報第5欄第18〜31行等を参照)、その構成として、工具その他の部品に対して物理蒸着又はプラズマ化学蒸着により2種以上の金属元素を含む硬質化合物の膜を被覆する方法において、「エッジ部から離れた表面領域に比較してエッジ部の表面領域に形成された膜の金属元素濃度は原子百分率で少くとも2%の差を有する」ようにするという構成を具備することにより、その余の構成と相俟って、エッジ部における硬質化合物膜が高度に固体化され、そして、工具その他の部品との接着性が改良され(特許公報第5欄第48行〜第6欄第18行を参照)、このことにより、エッジ部を有する工具その他の部品に対して高い寿命を付与することができたものであって(特許公報の実施例の記載)、かかる金属元素の濃度差を少なくとも2%とするという構成を採択することによって、上記発明の目的を達成できたものである。
これに対して、甲第1号証〜甲第3号証のいずれにも、金属元素の濃度差を少なくとも2%とするという構成、すなわち、「エッジ部から離れた表面領域に比較してエッジ部の表面領域に形成された膜の金属元素濃度は原子百分率で少くとも2%の差を有する」ようにするという構成については何も示されず、このことは前記したとおりである。
そして、甲第1号証〜甲第3号証に記載のものから、高い寿命を付与するために、金属元素の濃度差を少なくとも2%とすることに関する当該構成を採択することの動機付けもない。
したがって、訂正発明11は、甲第1、2又は3号証に記載された発明であるということができないばかりでなく、甲第1〜3号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明することができたということができない。
訂正後の本件請求項12〜16に係る発明(以下、適宜、それぞれ、「訂正発明12〜16」という)について
訂正発明12〜16は、請求項11の記載を直接又は間接的に全て引用するものであり、したがって、訂正発明11について記載した理由と同じ理由により、甲第1、2又は3号証に記載された発明であるということができないばかりでなく、甲第1〜3号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明することができたということができない。

III-4-2.理由-ロ(特許法第29条の2)について
甲第4号証をもって引用された本出願の日前に出願され出願後に出願公開された明細書(以下、「先願明細書」という)には、前記(D-2)により、「切削チップの表面に、イオンプレーティング装置にて、通常の条件で、付着強化層としてのTiNと、硬化被覆層としての(Ti,Al)Nを形成してなる被覆切削工具」が記載されている。
そこで、訂正発明10と甲第4号証のものとを対比する。
甲第4号証のものは、イオンプレーティングを用いるのであるから、物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法を利用するものであり、また、TiNからなる付着強化層は、訂正発明10における下塗り層としてのTi-N系の膜に相当し、そして、(Ti,Al)Nからなる硬質被覆層は、訂正発明10における2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜に相当する。
よって、両者は、
「摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の表面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜において、部分的若しくは全体的に下塗り層としてTi-N系の膜を有する工具その他の部品の表面に形成される被膜」である点で共通する。
しかし、訂正発明10は、更に、「エッジ部の表面領域における被膜の組成はエッジ部から離れた表面領域における被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少なくとも2%の差を有する」という構成を具備するものであるが、先願明細書には、金属元素の濃度差を設けること、更には、2%という金属元素の濃度差を設けることにつき記載されることはなく、その示唆もない。
そして、訂正発明10において、当該「エッジ部の表面領域における被膜の組成はエッジ部から離れた表面領域における被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少なくとも2%の差を有する」という構成は、前記III-4-1.の訂正発明1の判断の箇所で説示したとおり、工具その他の部品に対して高い寿命を付与するために設けられるものであって、発明の目的を達成するための必須の要件である。
してみれば、訂正発明10は、先願明細書に記載された発明と同一であるということはできない。

III-4-3.理由-ハ(特許法第36条)について
ここでの特許異議申立人の主張は、次のようなものである。
(イ)本件明細書の実施例の箇所において、比較例としてドリル工具を用いているが、その具体的な製法が記載されておらず、さらに、切削試験結果では、切削速度をはじめ何らその諸元が記載されていない。
(ロ)訂正前の請求項5には、硬質化合物はZr-Ti-N成分系である請求項3に記載の被膜と記載され、一方、請求項5で引用される同請求項3には、アルミニウムとチタンの2種の金属元素を含む請求項1に記載の被膜と記載されるので、請求項5において請求項3を引用することは、その規定内容を不明瞭にする。また、訂正前の請求項6は訂正前の請求項5の従属項となっており、同様に不明瞭である。
以下、これらの主張につき、検討する。
(イ)について
本件明細書では、訂正後の請求項1に係る発明につき理論的に説明する記載(特許公報第5欄第48行〜第6欄第14行)があり、また、その請求項1に係る発明につき、実施条件も開示されており(特許公報第6欄第15行〜第7欄第5行)、そして、そこでの実施例(特許公報第7欄第6行〜第8欄第9行)によりその効果も確認されるものである。
このように、本件明細書には、本件請求項1に係る発明に関し、その理解と実施に際し、必要な事項が示されていないといえないものである。
してみれば、その比較例につき、詳細な説明があれば本件請求項1に係る発明をより一層理解できるものであるとしても、その比較例につき諸元が示されないことのみをもって、本件請求項1に係る発明を容易に実施することができないといえるものではなく、また、本件特許請求の範囲には発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないとはいえない。
(ロ)について
本件明細書の特許請求の範囲の請求項5は、前記したとおり、平成14年3月4日付けの訂正請求により、削除され、また、訂正前の請求項6(訂正後の請求項5)は、訂正前の請求項5を引用しなくなったものである。
したがって、訂正前の請求項5及び6に関する特許異議申立人の指摘は、もはや、当たらないものである。

したがって、本件明細書の記載が、特許法第36条第3項、第4項及び第5項の規定を満たしていないといえるものではない。

IV. まとめ
訂正請求は認める。
特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1〜8及び10〜16に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1〜8及び10〜16に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
耐摩耗被覆膜及びその形成方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の表面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜において、各エッジ部の表面領域における該被膜の組成は各エッジ部から離れた表面領域における該被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少くとも2%の差を有し、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する事を特徴とする被膜。
【請求項2】 該硬質化合物は窒素、炭素、ホウ素、硅素又は酸素から選ばれる1種又は2種以上の非金属元素を含む請求項1に記載の被膜。
【請求項3】 該硬質化合物はアルミニウムとチタンの2種の金属元素を含む請求項1に記載の被膜。
【請求項4】 該硬質化合物はAl-Ti-N成分系である請求項3に記載の被膜。
【請求項5】 該硬質化合物は追加の金属又は非金属元素を含む請求項4に記載の被膜。
【請求項6】 部分的若しくは全体的に高速鋼からなる工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項7】 部分的若しくは全体的に硬質金属からなる工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項8】 部分的若しくは全体的にセラミックと金属の複合材料であるサーメットからなる工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項9】 部分的若しくは全体的にセラミックからなる工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項10】 部分的若しくは全体的に下塗り層としてTi-N系、Ti-C-N系又はTi-C系の膜を有する工具その他の部品の表面に形成される請求項1に記載の被膜。
【請求項11】 少くとも一つのエッジ部を有し摩滅にさらされる工具その他の部品に対して真空室内で硬質化合物膜を物理蒸着法又はプラズマ化学蒸着法により被覆する方法において、該硬質化合物は少くとも2種の金属元素を含みエネルギーに富む放射によりイオン化されプラズマを形成し電位差により生じる電場によって該工具その他の部品に適用され、該工具その他の部品の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により生じるイオン衝撃は各エッジ部の表面領域において高密度の電場によって強められ、その結果各エッジ部から離れた表面領域に比較して各エッジ部の表面領域に形成された膜の金属元素濃度は原子百分率で少くとも2%の差を有し、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域より耐摩耗性が高くなる様にする事を特徴とする方法。
【請求項12】 該プラズマはイオン化された金属原子及び非金属原子からなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】 該プラズマを支える為に真空室内に希ガスを導入する請求項11に記載の方法。
【請求項14】 該硬質化合物の少くとも1種の成分を反応性ガスとして真空室内に導入する請求項11に記載の方法。
【請求項15】 物理蒸着法において高温によりイオン化を促進し、該電位差を-50Vから-150Vの範囲に下げる請求項11に記載の方法。
【請求項16】 該電位差は約-100Vに設定される請求項15に記載の方法。
【請求項17】 プラズマ化学蒸着法において高温によりイオン化を促進し、該電位差を数百Vから二千Vの範囲に下げる請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、少くとも一つのエッジ部を有する工具若しくは部品に適用される物理蒸着被覆或いはプラズマ化学蒸着被覆に関する。これら被覆は複合組成を有する耐摩耗性の硬質化合物からなり、2種類以上の金属元素を含む。
本発明はさらにかかる工具若しくは部品を被覆する方法に関する。
〔従来の技術〕
摩耗にさらされる切断工具、平削り工具、打抜工具、ドリル工具及びあらゆる種類の部品の性能を向上させる為に、耐摩耗性の硬質化合物からなる被覆膜が用いられている。この被覆膜は数μmの厚みを有する非常に薄い膜からできており、工具表面における耐摩耗性を著しく改良する事ができる。かかる硬質化合物被覆膜は酸素、窒素、炭素、ホウ素若しくは硅素から選ばれる1種若しくは数種の非金属元素及び1種若しくは数種の金属元素から構成されている。これら硬質化合物被覆膜のコストは比較的高いにもかかわらず、ある種の応用例において耐摩耗性を著しく向上する事ができるのでその使用は結果的にみて経済的である。
かかる硬質化合物膜の形成は真空室内において行なわれる。真空室内においてイオン粒子からなる気体即ちプラズマが生成され、このプラズマは電場により若しくはマグネトロン磁場の助けを借りて被覆されるべき基板表面に運ばれる。これらの処理はマグネトロンスパッタリング或いはスパッタイオンプレイティングとして知られているものである。プラズマを生成する為に、アーク放電を用いたり、電子線ビームを用いたり、或いは処理の種類に応じてターゲット若しくはカソードに対する希ガスイオンの衝撃によって行なわれる。プラズマは液相をともなう事なく若しくは液相を介する事なく生成される。
場合によっては、真空室内には反応性ガスが満たされ、このガスは後に形成される硬質化合物系の成分となる。後に形成される硬質化合物系の成分がガス状態において導入された真空室内においてプラズマが生成される場合には、この処理はいわゆるフラズマ化学蒸着法と呼ばれる。化学蒸着法は時にCVDとも呼ばれる。
当初の開発段階においては、窒化タンタルが主として硬質化合物膜として用いられていた。通常のHSS-スチールや硬質金属に比べて、耐摩耗性が著しく改善された。これら硬質化合物被覆膜の一層の開発により、2種類以上の金属成分を有する硬質化合物を用いた場合に、より良好な結果が得られる事が明らかになった。例えば、アルミニウムとチタンと窒素からなる複合系や、クロムとチタンと窒素及び安定化の為に必要に応じて加えられる金属若しくは非金属元素からなる複合系である。この様にして得られた工具その他の部品の耐摩耗性はさらに向上された。しかしながら複合系の化合物被膜を用いる事によって耐摩耗性が向上した理由について理論的な説明は得られていない。しかしながら重要な点は、全ての物理蒸着処理及びプラズマ化学蒸着処理において、工具その他の部品のエッジ部領域に硬質化合物系の成分に関して異質性又は不均一性が生じるという事である。異質性の発現は容易に説明する事が可能であり、現在に到るまで実際上かかる異質性の発現は極力避ける様にしていた。
工具その他の部品表面に対して、目的とする組成に含まれる気体化された粒子を気体相から供給する場合、電場を利用したり、磁場を重ねる事により通常の電場の効果を増強する為のマグネトロン磁場を利用する。この時、エッジ部は電荷密度が他の部分に比べて高いので、より強い電場を発生しその結果電束がエッジ部領域に集中する。この集中の結果、エッジ部はイオンの集中的な衝撃を受ける。この現象は工具の被覆の為に原子状態に変換されるべき硬質化合物膜の粒子に関して起こるとともに、希ガスを利用してターゲットのスパッタリングを行なう場合に用いられる例えばアルゴンイオン等の単なるターゲットイオン若しくはキャリアイオンについても発生する。これらアルゴンイオンは基板に対してすでに吸着している硬質化合物膜を構成する粒子群を圧縮する効果を有する。
エッジ部領域における被覆膜組成の異質性を防止する為に、比較的弱い電場が用いられる。そしてその弱い電場を補正する為に、真空室の内容物をかなり強力にイオン化する事が行なわれている。この様にして得られた被覆膜は一定の良好な結果を示している。エッジ部領域における高い電場密度の影響は印加される電場を弱める事により低減され、エッジ部から離れた領域に比較した場合エッジ部の領域においても又均一な被覆膜を形成する事が可能である。
〔発明の目的〕
本発明の目的は基板の耐摩耗性を改良する為に用いられる物理蒸着被覆膜及びその形成方法を提供する事である。又本発明の他の目的は、この改良を基本的に従来と同一の設備及び実質的に同一のコストで達成する事である。
〔発明の概要〕
上記目的を達成する為に、本発明によれば、少なくとも2種類の金属元素成分を有する硬質化合物系を基板に対して適切に適用する事により、エッジ部の領域に積極的に被覆膜組成の異質性(inhomogeneity)を発現させ、基板物質に対する接着性を向上させるとともに工具の寿命を改善する事ができる。硬質化合物フィルム内に化学量論的な均衡が存在しないにもかかわらずである。
〔発明の説明〕
本発明によれば、金属元素組成に関し、エッジ部の表面領域をその他の表面領域に比較した場合少くとも原子百分率で2%(2at%)の濃度差を与える事ができ、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する。又本発明にかかる方法によれば、基板の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により上述した濃度差が、自動的にエッジ部の表面領域における電場集中によって生じるイオン衝撃によって達成される。
最も驚くべき事には、硬質化合物系の金属成分の濃度差によって測られるエッジ部領域の被覆膜の異質性又は不均一性がこの領域における従来の均一で且つ平坦な被覆膜よりも相当程度高い耐摩耗性を有する硬質化合物被覆膜の形成をもたらす。これらエッジ部領域における組成に化学量論的な欠陥があるにもかかわらずである。かかる驚異的な現象を理論的に説明する必要はないが、発明者は個人的な見解として以下に述べる説明を試みた。即ち、イオン化の量及び電場の強さを適切に設定する事により均一な被覆を形成する為に許容される程度を超えてエッジ部が強力に衝撃を受けた場合、高度に活性化された大量の個数のイオン粒子が既にエッジ部に定着していた粒子群をたたき、その結果これら粒子群を圧縮する。加えてこのイオン衝撃の間に、比較的低い原子量を有する粒子が被覆膜から取除かれ、その結果上述した濃度差が生ずる。かかるイオン衝撃が粒子自体によって行なわれるのか或いは気体イオンによって行なわれるのか或いは自由電子によって行なわれるのかは重要ではない。
化学量論的にみてバランスのとれた組成ではないが、エッジ部における硬質化合物系は他の領域に比べてより高度に固体化される。過剰な圧縮によって得られる利益即ちこれらの部分における硬質化合物膜の改良された接着性によって得られる利益は、被覆膜の化学量論的不均衡によって生ずる不利益を補って余りあるものがある。実験結果によれば、本発明によって被覆処理を施されたドリル工具は同一の組成若しくは類似の組成の硬質化合物系によって均質的に被覆された場合に比べて、相当程度良好な耐摩滅性を有していた。
特に好ましいのは、2種類の金属元素即ちアルミニウムとチタンを含有する硬質化合物系を用いる場合である。被覆処理を行なった後に、得られた濃度差はエッジ部においてアルミニウム含有量で原子百分率でみると10%(10at%)に及ぶ減少であった。硬質化合物は系全体として、アルミニウムとチタンと窒素を含みさらに安定化の為にクロムとバナジンが添加される場合もある。一般的に、周期律表においてIVa族ないしVIa族に属する元素を用いた場合に最良の結果が得られた。その理由は、これらの元素が互いに類似しているからであり、固体相において互いに混合可能であるからである。物理蒸着処理において、ターゲットのスパッタリングにアルゴンを用い且つ所定の分圧において窒化物を生成する為に真空室内に反応ガスとして窒素を加えた場合、非常に良好な被覆結果が得られる。既知のイオン化手段により高いレベルに維持された良好なイオン化状態においては、プラズマと基板若しくは工具の間の電位差は-50Vから-150Vに設定する事ができ、特に電位差を約-100Vに設定した場合非常に良い結果が得られる。本発明によっていかなるエッジ部領域においても異質性を有する被覆膜が形成される。この異質性又は不均一性は従来本発明の概念に到るまでむしろ避けるべきものとされていたのである。プラズマ化学蒸着により被覆を行なう場合には、プラズマと基板の間に100Vないし2000Vの範囲のより高い電位差を加える必要がある。
本発明にかかる硬質化合物膜はスチール、硬質金属、セラミックと金属の複合材料であるサーメット、セラミック及びこれら材料の複合物の表面に用いる事ができる。
ある条件下においては、特に外的に衝撃負荷に対する抵抗を改善し従って被覆膜の脆さを小さくする為に、下地層としてまずチタン窒素系、チタン炭素窒素系、チタン炭素系等の薄膜を形成し、その後本発明に従って硬質化合物を用いて工具若しくは部品を被覆する事が望ましい。かかる下地膜も大きな硬度を有するが、基板材料界面からエッジ部領域における固体化された硬質化合物被覆膜界面への移行を滑かにする事ができる。
〔実施例〕
アルゴンで満たされた真空室内において直径8mmのドリル工具がターゲットスパッタリングにより1時間被覆処理を施された。ターゲット(カソード)の材料は焼結されたチタンとアルミニウムの組成物からなる。目的とする硬質化合物系を形成する為に、反応性ガスである窒素があらかじめ定められた分圧の下で真空室に導入された。良好なイオン化状態においてプラズマと基板(ドリル工具)の間に-100Vの電位差を加える事により、1時間に及ぶ処理期間の間に3μmの厚みを有する被覆層を形成する事ができた。
処理の後、全てのエッジ部に沿って赤色ないし黄色の薄膜の存在が観察された。この色は硬質化合物系の典型的な色調である黒灰色からは明らかに異なっていた。チタン窒化物が赤色又は黄色の色調を示すので、これらエッジ部領域においてはアルミニウムの濃度が薄められているという事がわかる。エッジ部領域におけるアルミニウムの濃度差は、エッジ部から離れた領域にある残りの黒青色若しくは黒灰色層に比較して、原子百分率で約6%(6at%)であった。この様にして処理され被覆されたドリル工具を用いて摩滅特性試験を行なった。比較例として、同一の硬質化合物系を用いて同一の膜厚により均質な組成を有する膜で被覆されたドリル工具を用いた。換言すると、比較例はエッジ部とエッジ部から離れた平面部において平坦且つ均一な外観及び組成を有する膜で被覆されている。さらに他の比較例として、同一の直径を有し窒化チタンで被覆されたドリル工具を用いて試験を行なった。
本発明にかかる被覆膜を有するドリル工具は、均質な膜によって被覆されたドリル工具に比べて50%高い寿命を有し、窒化チタン膜によって被覆されたドリル工具に比べた場合には、300%高い寿命が得られた。この様に良好な寿命期間が得られた理由の一つは、被覆膜が基板材料に対してより強固に密着している為であった。
〔発明の効果〕
色調の違いにより既に外観的に認められたアルミニウム濃度の低下の事実を確認する為に、角型の試料を用いて例示したドリル工具に対して行なわれた上述の条件と実質的に同じ条件で被覆処理を行なった。主に被覆された角型試料上面の全ての4つのエッジ部は赤色ないし黄色の色調を有し残りの上面平面部は黒灰色ないし黒青色を呈していた。
第1図はアルミニウム濃度の変化を示し、角型の試料の上面において一つのエッジから中央に向かって2.5mmの範囲で測定された。この範囲は2,500μmに相当する。明らかに、エッジ部においてアルミニウムの濃度が質量百分率で約2%(2mass%)程低下している事が分かる。
又第2図に示す様に、チタンの濃度については、アルミニウム成分の低下に対応して測定領域に沿ってその増加が認められた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明にかかる耐摩滅性被覆膜に含まれるアルミニウム成分の濃度分布を示すグラフ、第2図は同じくチタン成分の濃度分布を示すグラフである。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2941850号の明細書につき、(a)〜(f)のとおり訂正する。
(a)特許請求の範囲の請求項1における、
「摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の平面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜において、各エッジ部の表面領域における該被膜の組成は各エッジ部から離れた表面領域における該被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少くとも2%の差を有する事を特徴とする被膜。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「摩耗に対して保護されるべき領域において少くとも一つのエッジ部を有する工具その他の部品の表面に物理蒸着法若しくはプラズマ化学蒸着法により形成され、2種以上の金属元素を含む複数成分系の硬質化合物からなる被膜において、各エッジ部の表面領域における該被膜の組成は各エッジ部から離れた表面領域における該被膜の組成に比較して金属元素濃度が原子百分率で少くとも2%の差を有し、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する事を特徴とする被膜。」と訂正する。
(b)特許請求の範囲の請求項12における、
「少くとも一つのエッジ部を有し摩滅にさらされる工具その他の部品に対して真空室内で硬質化合物膜を物理蒸着法又はプラズマ化学蒸着法により被覆する方法において、該硬質化合物は少くとも1種の金属元素を含みエネルギーに富む放射によりイオン化されプラズマを形成し電位差により生じる電場によって該工具その他の部品に適用され、該工具その他の部品の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により生じるイオン衝撃は各エッジ部の表面領域において高密度の電場によって強められ、その結果各エッジ部から離れた表面領域に比較して各エッジ部の表面領域に形成された膜の金属元素濃度は原子百分率で少くとも2%の差を有する事を特徴とする方法。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「少くとも一つのエッジ部を有し摩滅にさらされる工具その他の部品に対して真空室内で硬質化合物膜を物理蒸着法又はプラズマ化学蒸着法により被覆する方法において、該硬質化合物は少くとも2種の金属元素を含みエネルギーに富む放射によりイオン化されプラズマを形成し電位差により生じる電場によって該工具その他の部品に適用され、該工具その他の部品の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により生じるイオン衝撃は各エッジ部の表面領域において高密度の電場によって強められ、その結果各エッジ部から離れた表面領域に比較して各エッジ部の表面領域に形成された膜の金属元素濃度は原子百分率で少くとも2%の差を有し、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域より耐摩耗性が高くなる様にする事を特徴とする方法。」と訂正する。
(c)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(d)明りょうでない記載の釈明を目的として、請求項6〜18の請求項を一つずつ繰り上げる。
(e)明りょうでない記載の釈明を目的として、訂正後の請求項5の本文中で引用する請求項番号を「4又は5」から「4」へ訂正し、訂正後の請求項12、13、14、15及び17の各本文中で引用する請求項番号を「12」から「11」へそれぞれ訂正し、訂正後の請求項16の本文中で引用する請求項番号を「16」から「15」へ訂正する。
(f)明細書の第9頁第19行〜第10頁第6行(特許公報第5欄第33〜39行)目における、
「本発明によれば、金属元素組成に関し、エッジ部の表面領域をその他の表面領域に比較した場合少くとも原子百分率で2%(2at%)の濃度差を与える事ができる。又本発明にかかる方法によれば、基板の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により上述した濃度差が、自動的にエッジ部の表面領域における電場集中によって生じるイオン衝撃によって達成される。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「本発明によれば、金属元素組成に関し、エッジ部の表面領域をその他の表面領域に比較した場合少くとも原子百分率で2%(2at%)の濃度差を与える事ができ、該エッジ部の表面領域が該エッジ部から離れた表面領域に比べて高い耐摩耗性を有する。又本発明にかかる方法によれば、基板の電位に対してプラズマの電位を適当に設定する事により上述した濃度差が、自動的にエッジ部の表面領域における電場集中によって生じるイオン衝撃によって達成される。」と訂正する。
異議決定日 2002-03-25 
出願番号 特願平1-190383
審決分類 P 1 652・ 161- YA (C23C)
P 1 652・ 531- YA (C23C)
P 1 652・ 113- YA (C23C)
P 1 652・ 121- YA (C23C)
P 1 652・ 532- YA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 城所 宏三宅 正之  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 山田 充
唐戸 光雄
登録日 1999-06-18 
登録番号 特許第2941850号(P2941850)
権利者 トニ ライエンデッカー
発明の名称 耐摩耗被覆膜及びその形成方法  
代理人 鈴木 晴敏  
代理人 鈴木 晴敏  
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