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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1061260
異議申立番号 異議2001-71160  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-13 
確定日 2002-07-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第3101132号「熱処理装置」の請求項4、5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3101132号の請求項4、5に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3101132号(平成5年7月30日出願、平成12年8月18日設定登録)の請求項4、5に係る発明(以下、「本件発明4、5」という)は、その特許請求の範囲の請求項4、5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項4】被処理体を熱処理する処理容器と、この処理容器内で被処理体を支持するボートと、このボートを保持すると共に前記処理容器を密閉可能な蓋体と、前記処理容器内の温度を測定する温度測定手段とを備えた熱処理装置において、前記温度測定手段を収容した石英チューブを前記蓋体に形成された通孔を通して前記処理容器内でほぼ垂直に着脱可能に支持すると共に、前記処理容器内の気密性を保持する支持手段を設け、該支持手段は、前記通孔に固着されて一端にねじ山が形成されると共に、内部に前記石英チューブを挿通させる内孔を有するガイド部材と、前記内孔内に円筒状のワッシャーを介して所定距離離間させて装着した2つのリング状のシール部材と、前記内孔に前記石英チューブを挿通させた状態で前記ガイド部材のねじ山に螺合させて手回しにより締め付けることにより前記2つのシール部材を押し潰して前記石英チューブを弾性的に把持固定させるキャップねじとよりなることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】前記キャップねじと前記2つのシール部材の内の一方のシール部材との間には、押えワッシャーが介在されていることを特徴とする請求項4記載の熱処理装置。」

2.申立ての理由の概要
特許異議申立人東京応化工業株式会社は、甲第1号証(特開平3-227018号公報)、甲第2号証(特開昭50-78743号公報)、甲第3号証(特開平2-173495号公報)を提示し、本件発明4、5は、甲第1号証1〜3号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明4、5は、特許法第113条第2項に該当すると認められるので、取り消されるべきものである旨主張している。

3.甲第各号証に記載の発明
(1)甲第1号証
(1ー1)第1頁右下欄2行〜12行に
「本発明は、…中略…縦型熱処理炉に関する。…中略…この炉心管1に、基板mを配列支持する基板ボート2が収納される。」が記載されている。
(1ー2)第2頁左上欄2行〜右上欄3行に
「ボート昇降機構10は、ボート支持部材6に連結する昇降アーム11と、昇降アーム11の基部に螺合するネジ棒12と、このネジ棒12を正逆回転駆動するモータ13と、このモータ13を回転制御する制御装置などから構成されている。…中略…第7図に示すように、小径の石英ガラス管7aに熱電対7bを収納した温度検出手段8を、ボート支持部材6に形成された貫通孔9を通して炉芯管1内に挿入し、この温度検出手段8を管軸方向にスライドさせることにより、炉心管1内の温度分布を測定する。温度検出手段8を管軸方向にスライドさせる手法として、従来、以下のような手法が採られている。(1)オペレーターが手動によって、温度検出手段8をスライドさせる。(2)温度検出手段8をスライドさせるために、温度検出手段昇降機構を設け、この温度検出手段昇降機構の昇降動作によって、温度検出手段8を管軸方向にスライドさせる。」が記載されている。
(1ー3)第2頁右下欄16行〜右下欄18行に
「温度検出手段を炉芯管の管軸方向に沿って移動させて管内の温度分布を測定する。」が記載されている。
(1ー4)第3頁左上欄16行〜右上欄11行に
「炉芯管1内の基板ボート2を支持するとともに、炉口キャップとしての役目を担っているボート支持部材6は、…中略…ボート昇降機構10の昇降アーム11に着脱可能に連結されている。…中略…昇降アーム11の一端部には、石英ガラス管7aに熱電対7bを収納した温度検出手段8の基部が取付けられている。この温度検出手段8は、ボート支持部材6に形成された貫通孔9を通って炉芯管1内に挿入され、後述するように上下動することによって、炉芯管1内の温度分布を検出する。」が記載されている。
(1ー5)第4頁左上欄9行〜右上欄4行に
「炉芯管1内の温度分布を測定する場合には、ロック機構30をボート支持部材6の下空間に位置するように回動させ、ハンドル39を回転させてネジ棒35の先端をボート支持部材6の凹部6aに係入させて、ボート支持部材6が炉口5から脱落しないようにロックしておく。この状態で、ボルト22を取り外して、接合部23a、23bとを離間可能な状態にする。そして、ボート昇降機構10を駆動して昇降アーム11を昇降させると、ボート支持部材6が炉口5を閉塞したままで、昇降アーム11だけが昇降し、この昇降アーム11に取付けられた温度検出手段8を管軸方向に沿って移動させることができる。このとき、ボート昇降機構10の制御部14からモータ13に制御信号を与えて、昇降アーム11を一定の速度で降下させて炉芯管1内の温度分布を測定する。」が記載されている。
(1ー6)第4頁右下欄3行〜第5頁左上欄4行に
「上述した実施例では、温度検出手段8を昇降アーム11の一端部に固定して、炉芯管1の内周面近傍の温度分布を検出しているが、昇降アーム11の中央部に固定して、炉芯管1の中央部の温度分布を検出するようにしてもよい。なお、その場合には、温度分布の測定時にボート支持部材6に基板ボート2を支持させないか、あるいは、基板ボート2にも温度測定手段8を貫通させる孔を形成しておけばよい。…中略…また、前記実施例における温度検出手段8は、熱電対7bを上端の1箇所にだけ設けているが、中間の高さの所に熱電対をもう一つ設けてもよく、そのようにすれば、炉芯管1内の温度分布を測定するのに温度検出手段8を一定の温度で昇降するストロークを1/2にできる。なお、熱電対7bはもっと沢山、他の高さの所に設けてもよく、その数や、設ける所を限定しない。」が記載されている。
(2)甲第2号証
(2ー1)第1頁左下欄16行〜末行に
「従来は、Oリング等によるシール方法…中略…は図1に示すようにパイプ(1)にOリング(2)、金属リング(3)を交互に重ね、押え金具(4)でOリング(2)をつぶすことによってシール本体(5)をシールする方法が用いられていた。」が記載されている。
(3)甲第3号証
(3ー1)第1頁右下欄14〜19行に
「第4図は、熱処理装置の反応容器とガス導入管との接続に用いられる配管接続部の構成を示す図で、反応容器下部を構成するマニホールド1壁に穿設された連通孔1aには、一端がマニホールド1壁に固着された連通孔1aと連通する円筒体2が突設されている。」が記載されている。
(3ー2)第2頁右下欄14〜17行に
「マニホールド16外周壁には複数のL字形ソースガス導入管21が夫々ガス吐出部を内筒13内に突出させて配管接続装置22により気密を保持して設けられている。」が記載されている。
(3ー3)第3頁右上欄6行〜右下欄9行に
「この筒体31内にガスミキシング用導入管21のたとえば外径10mmを有する導入管水平部21aが挿通されている。…中略…また筒体31の段付部31bの側面方向には、円盤状のフランジ部36aを有する筒体である連結アダプタ36が嵌合されており、この連結アダプタ36の一端部端面は、筒体段付部31bの小Oリング33と当接し、フランジ部36a側面は大Oリング35と夫々当接している。…中略…この底部に連結アダプタの円筒部を挿通させる挿通孔38aを有するステンレス等からなる袋ナット38が取付けられており、この袋ナット38は、上記筒体31の捩子部31aと螺合するように構成されている。…中略…まず、マニホールド16の挿通孔16a、筒体31 、連結アダプタ36内にマニホールド内側からガスミキシング用導入管21の導入管水平部21aを挿通させた後、袋ナット38を回してこれを筒体31に締付ける。このとき、連結アダプタ36のフランジ部36aが袋ナット38により押圧されるため、連結アダプタ36は筒体31側に移動し、連結アダプタ36端面が小Oリング33をフランジ部36aが大Oリング35を夫々押圧して筒体31と連結アダプタ36間が押圧された小Oリング33および大Oリング35により気密される。」が記載されている。

4.対比・判断
記載事項(1ー1)〜(1ー6)を総合すれば、甲第1号証には
炉芯管1、基板支持ボート2、ボート支持部材6、温度検出手段8、前記ボート支持部材6に設け、前記温度検出手段8を管軸方向にスライドさせる貫通孔9、および、ボート支持部材6に連結する昇降アーム11、前記昇降アーム11の基部に螺合するネジ棒12、このネジ棒12を正逆回転駆動するモータ13、このモータ13を回転制御する制御装置などから構成されているボート昇降機構10、ならびに、炉芯管1内の温度分布を測定する場合に設けられたロック機構30などからなる縦型熱処理炉であって、温度検出手段8は昇降アーム11の一端部に取付け、温度分布の測定時に、ボート支持部材と昇降アームの係合を解いて温度検出手段が貫通孔内を管軸方向にスライド可能とし、また、小径のガラス管7a内にn個(nは、0を含まない自然数)の熱電対を収納しており、1/nのストロークで移動させることにより温度分布を測定することが記載されているといえる。
4ー1 そこで、本件発明4(以下、「前者」という)と、甲第1号証に記載の発明(以下、「後者」という)とを対比すると、後者の「基板」、「炉芯管」、「基板支持ボート」、「ボート支持部材」、「貫通孔」、「温度検出手段 」、「縦型熱処理炉」、「熱電対を収納した小径のガラス管」は、前者の、「被処理体」、「処理容器」、「ボート」、「蓋体」、「通孔」、「温度測定手段 」、「熱処理装置」、「温度測定手段を収容した石英チューブ」にそれぞれ相当するから、両者は、「被処理体を熱処理する処理容器と、この処理容器内で被処理体を支持するボートと、このボートを保持すると共に前記処理容器を密閉可能な蓋体と、前記処理容器内の温度を測定する温度測定手段とを備えた熱処理装置において、前記温度測定手段を収容した石英チューブを前記蓋体に形成された通孔を通して前記処理容器内でほぼ垂直に支持する」点で一致しており、以下の点で相違している。
相違点
前者では、石英チューブを蓋体に着脱可能に支持すると共に前記処理容器内の気密性を保持する支持手段が、通孔に固着されて一端にねじ山が形成されると共に、内部に石英チューブを挿通させる内孔を有するガイド部材と、前記内孔内に円筒状のワッシャーを介して所定距離離間させて装着した2つのリング状のシール部材と、前記内孔に前記石英チューブを挿通させた状態で前記ガイド部材のねじ山に螺合させて手回しにより締め付けることにより前記2つのシール部材を押し潰して前記石英チューブを弾性的に把持固定させるキャップねじとよりなる点を有しているのに対して、後者では、温度分布を測定する温度検出手段は昇降アームに取り付けられており、温度検出手段を管軸方向にスライドさせることにより前記温度分布測定を行う点、および、支持手段に相当するものがない点。
そこで、上記相違点について検討する。
甲第2号証には、本件発明4の2つのリング状のシール部材、キャップねじに相当する2つのOリング(2)と2枚の金属リング(3)、押さえ金具(4)が記載され、甲第3号証には、本件発明4のガイド部材、2つのリング状のシール部材、キャップねじに相当する筒体31、Oリング、袋ナット38が記載され、いわゆるシール構造が記載されているものの、後者に記載のものは、熱電対を収納した石英ガラス管からなる温度検出手段を単にボート支持部材に設けた貫通孔に通して炉芯管に挿入するだけであって、貫通孔にシール部材を設けるものではないし、ましてや後者には、温度検出手段の取付け取外しを手回しで行うことにより、石英ガラス管の洗浄や交換を容易に行うことを技術的課題とすることは何も示唆するところがないから、甲第2、3号証に記載されたものを適用するための動機付けとなるものは存在しない。
したがって、本件発明4は、上記甲第1〜3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
4ー2 本件発明5と、甲第1号証に記載の発明とを対比すると、
本件発明5は、実質的に本件発明4を引用して記載されたものであるところ、前記「4ー1」で認定したとおり本件発明4に記載された点の構成が、甲第1〜3号証の記載から容易になしえたものと認められない以上、たとえ、甲第2、3号証に、キャップねじと2つのシール部材の内の一方のシール部材との間に、押えワッシャーが介在されていることが示されていたとしても、本件発明5は、上記甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由および証拠によっては、本件発明4、5に係る特許を取消すことはできない。
また、他に本件発明4、5の特許を取消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-06-10 
出願番号 特願平5-208216
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 敬士  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 中西 一友
市川 裕司
登録日 2000-08-18 
登録番号 特許第3101132号(P3101132)
権利者 東京エレクトロン株式会社
発明の名称 熱処理装置  
代理人 浅井 章弘  
代理人 小山 有  

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